これからもよろしくお願いします!
魔剣科学者であるノワールは、珍しく外へと出ていた。
博士という役職をしている以上、運動は専門外でありマラソンなどやらされてしまえば疲労で撃沈することなど目に見えている。
しかし彼が現在歩いているのは屋外ではなく、むしろ施設の中だった。
何らかの工業施設の跡地。本来は自動車を製作する為に造られていたものだったが、ある日を境にそこを運用していた会社が潰れて以降、誰も使わなくなった。停止して動かなくなった機械の羅列を無視して、博士は巨大なコンクリートの壁の前に立つ。
「────ノワール・スターフォンが来た。『門』を開けてもらおうか」
音もなく、壁が開いた。隠し扉というよりも、ここを作り替えた急造の扉に近い。音声判断機能とかいうものがあった訳ではない、この扉は誰にも開けられないように仕組まれている。それはノワール博士も例外ではない。
その中へと足を踏み入れた途端、壁が音もなく閉まりノワールは閉じ込められる。そして、ズゥーーーッ という重音が鼓膜を刺激してきた。これは部屋ですらなく、遥か地下へ辿り着く為のエレベーターだった。
そして一分で扉が大きく開き、ノワールは外へと出た。上にあった工場よりも整備された通路を歩き、彼はそこに足を踏み入れた。
小国規模の広間────────『深層 ABYSS』、と呼ばれる領域だ。青白いライトで照らされた不気味なホール。魔剣士の肉体に流れる魔剣との繋がりとなる未知のエネルギーを生み出す、魔剣士にとって心地よい場所。
無論、『深層 ABYSS』はこれだけではない。地下公道のように無数の道と道に、このような広い空間が繋がっている。ここは『第十四区域』と呼ばれる、破棄された空間だ。
ここの事をノワールは絶対に忘れない。何故ならこの場所は、彼がある物を発見した場所なのだ。それと同時に、とある実験が実行された現場。
自最愛の娘が暴走させられ、無理やり友人の手で
「計画の中心であった序列ナンバーはこの世界から完全に消失した。これで【
巨大なチューブに流れる深い青色の液体が、目に収める。それが流れている場所を特定する事は難しい。もしかしたら、世界中の何処にでもない────亜空間に繋がってるのかもしれない、そう思うのはこれまでの異常な超常現象を知っているからだ。
「だが、未だ【魔剣計画】は動き続けている。解体される筈の組織が、まだまだ野望を抱き、悪意を振り撒こうとしている─────微塵にも、躊躇や困惑が見られない」
一人ポツンと、ノワールは呟いているように見えるだろう。強ち、間違いではない。この空間に彼以外の人間は存在しない。こんな場所に来れる人間など、普通でなら有り得ない。
だが、ここにいるモノは彼だけではない。人間を除くならば、該当するモノは一つだけ存在する。
この『ABYSS』を掌で操るような存在が、たった一人だけいるのだ。
「彼の消失も全て、貴方の筋書き通りという訳か。魔剣計画中枢総統、ヤルダバオト」
『────これはこれは。随分と皮肉を言ってくれる事だ、「魔剣の始祖」ノワール・スターフォン博士』
広い空間の中で何かが蠢いていた。無数の機械のケーブルやコードの集まりが、生き物のように動いていたのだ。
ヤルダバオト。
それが偽名であるのは確かだ、そんな名前の人間が普通に実在してる筈がない。だが、名前だと重要ではない。
問題なのは、彼が【魔剣計画】を主軸に動かす人間であるということ。数十万を越える子供を代償として、十数人の『魔剣士』を生み出したあのおぞましい計画を、引き起こした研究者達を束ねるトップ。
多くの魔剣士や世界中に憎まれてると同時に、畏怖されてる正体不明の人物だ。
『物事はね、何事も上手くいかないものさ。私のような男が外に出てみろ、狙撃どころか爆撃すら有り得るのだ。そこの所を、理解して貰えたかな?』
今も尚、本人はこの場にはいない。姿を現してノワールと会話しているのは機械、彼の手足の一部に過ぎない。きっと安全な施設の中でこの話を静かに聞いているのだろう。
「姿を見せないのもその一端と?君達に追われてる私もこうして会談に応じてるというのに。随分と気を張っているね、そんなに後ろめたい事があるのかね?」
『軽口は止めて欲しいね。私は意外と緻密なのだ、計画も念入りに何十年を掛けてでも実行するタイプだからこそ、細かいところにも用心してしまうのだよ。世界というものは勿論、物事は完全な数値では表せない。だからこそ私は必要以上に神経質にならねばならないのだ』
どの口が言う、と吐き捨てたかった。この男の厄介な所は、慎重でもあるのが一因だった。
あまりにも用心深く、あまりにも警戒心が強い。人間も誰も彼も信用しない。故に、彼の素顔を知る者は誰一人としていない。【魔剣計画】の主軸とされる精鋭の研究者達もヤルダバオトの正体を掴めていない。
噂によると、彼は自分の親戚を一人残らず皆殺しにしたという話もある。当然、自分の正体に気付かれない為に。
「私が世間話をしに来たのではないのは、分かってる筈だ」
しかし、博士は先程までの話をどうでもいいと断ずる。彼はあまりにも不機嫌だ。自分の心配している子が精神的に追い詰められるような事をされたかと思えば、今度は対談の場所に因縁しかない場所を用意してきた。
悪趣味な考え方に怒り狂いそうなのを我慢しながら、彼は話を続ける。
「『アルビオン』、魔剣を組み込まれた兵器の存在が確認された。ご丁寧に、君達【魔剣計画】のイニシャルまで刻まれていたようだが?」
『何が言いたい?』
だが、相手も一筋縄ではいかなかった。提示された話を聞き終えると、鼻を鳴らすように嘲った。
『悪いが、私とて完全に組織を把握している訳ではない。私の傘下にいる科学者達の事は分かってる筈だ、彼等みたいなのが私の許可を取らずに隠し事をしてるのは有り得ない事ではないだろう』
要は、不干渉を気取るのだろう。
部下の勝手な暴走で自分は何にも手出しをしてないと。それをされてしまえば何も出来ない。相手は組織のトップ、適当な人員を生け贄として処分さればそれで終わってしまう話なのだから。
「無論、私が知りたいのは貴方への責任問題ではない。あれをやった相手など、ある程度は想像できているとも」
なに? と聞き返す声を無視して、ノワールは白衣からある写真を取り出す。何者かが写ったそれを、無数の機械が目に収めようとしていた。
「貴方を除き、組織の中枢に位置する───────セフィラを冠する十人の魔剣科学者、《セフィロト》の一人に用がある」
「…………まさか」
合成された機械越しのヤルダバオトの声音が少しだけブレた。息を呑むように、ノワールからのアクションを待っている。当然だろう、今から語る相手は恐ろしく厄介な存在なのだ。上司であるヤルダバオトですら嫌と言うほど警戒している部下の一人。
「三番目のセフィラ、『理解』の魔剣創始者 エリーシャ・レイグンエルド。剣クンを魔剣士へと作り替えたあの男、数年前あの事故に巻き込まれたであろう科学者。奴の所在を教えて貰おうか、ヤルダバオト総統」
ノワールはその名を、憎々しげに噛み締める。
自分の娘や多くの子供達を死なせ、無空剣を苦しませ、絶望と憎悪という感情を植え付けた元凶の一人。何より、彼の存在に固執していたあの男なら別世界にすら干渉してくると─────ノワールは確信していた。
◇◆◇
あの出来事、剣とクリスの和解から一日が経ち。
無空剣は何も知らないクリスを連れて、ある場所に訪れた。不安げにしていた彼女に気にするなと告げてから数十分後、集まってきた
「それで、俺の知り合いかつパートナーの雪音クリスだ。一応こう見えてもシンフォギアを使えるのでよろしくお願いします」
「───ちょっと待てぇっ!!」
だからこそ、叫ぶ雪音クリスの反応は間違ってない。彼等は数日前に話し合っていた。その時クリスは剣は信じるが、二課やその仲間は信じないと断言していた。
なのに剣は何も言わずにクリスを二課の皆に会わせたのだ。強引どころの話ではない、もしかして天然なのかと疑いたくなる程の事だった。
「何だいきなり。耳元で騒ぐことはないだろ」
「お、お前馬鹿か!? あたしはこいつらを信用しないって前言ってただろうが!なのに、何であたしを連れ込んでんだよ!?」
「連れ込んだという言い方は止めろ。別の意味に聞こえてくる」
「そう意味で言ってんじゃねぇよ!?」
軽く流してる所か見て、彼からしたら気にする事態ではないらしい。何とか出来る策でもあるのだろうかと思ったが、そもそもこいつが余計な事をしなければ済んだ話なのだと、果たして気付いているのか?
「ていうか、良いのかよ?」
「何が?」
「あたしは前から二課と敵対してたんだぞ?普通なら捕まって終わりじゃねぇのか?」
「そこは安心しろ、俺に考えはある」
ふん、と鼻を鳴らしドヤ顔をさらす剣。
「ネフシュタンの鎧の少女と仮定されている相手は名前を名乗っていない。つまり一々詮索しなければお前があの少女と同一人物だとまだ決まってはいない。なら問題ない………………と思ってたが、やっぱり無理だな」
「あ?何でだよ?」
「────たった今、俺が口に出した事が全員に聞かれてるからだよ」
ピシッ、と話を聞いてたクリスが文字通り硬直した。ていうか普通に考えたら、さっき会わせたばっかりだから近くにいて当たり前だろう。
僅かな沈黙から一転、華奢な両手が彼の胸倉へと伸びた。
「お前ッ、本当に馬鹿じゃねぇの!?前から普通じゃねぇと思ってたけど、本っ当に何してやがんだよ!?」
「気にするな、過去は振り返るべきじゃない」
「少しくらいは気にしろぉ!!」
………こんな性格だったかこいつ? と思うでしょうが、そういうところもあるのが人間なのだ。難しく考え過ぎた結果、あまりにも予想外な答えに辿り着く事があると聞く。それと同じだ(違う)
「ハッハッハッ!仲が良いな二人とも!どうやら俺達の知らない間に色々あったみたいだな」
「まぁな、察して貰って助かる」
端から聞いていた弦十郎に剣は軽くそう答える。それでも尚気にすることなく、受け入れる辺りこの人はやはり良い人だと実感させられる。
「なぁクリス君。君は二課に、俺達と共に動く気はないか?」
「ッ、勘違いすんな。あたしは無空剣を信じただけで、お前らを信じるなんてご免だ。認めたりなんて絶対にしねぇぞ。そもそも、敵かもしれねぇってのによくこんな風に気楽でいられるな」
「そうか、だが君は剣くんの事を信じてるんだろう?彼が君を連れてきたということは、君は良い人間さ。前から分かっていたが、俺も出会ってすぐに理解できたさ」
「………」
「ほら、言っただろう。この人達には敵わないって」
絶句するクリスの隣で剣は肩を竦めていた。彼はやれやれというように、呆れたようだった。弦十郎だけではない、ここの大人達は同じように心が綺麗なのだ。
「──────違うよな、あの世界とは」
「………」
小さく囁いていた独り言にクリスは黙り込む。彼女は知っている、剣がどのような生き方をしてきたかを。クリスのように他人を信じられない生き方をしてきた彼にとって、二課の大人達は眩しいくらいの存在だ。
だからこそ、見劣ってしまう─────彼が守ってきた人間達の本質というものが。
「…………む、叔父様。そう言えば櫻井女史はまだ来てないのですか?」
「そうだ。何やら問題があったらしくてな、連絡が来てないから他の職員を自宅に向かわせていた所だが」
適当にクリスを響に押しつけておいた剣は、翼と弦十郎の話を耳にしていた。途中から聞いていた彼は、徐々に眉をひそめる。
「本当ですよね。数年前に紛失した『イチイバル』の確認もしたがると思っていましたが………何時来るのでしょうか、不安です」
「それは無理だな」
バッサリと、剣が切って捨てた。
突然話に入ってきた事に三人が思わず振り返るが、剣は無視して達観したように遠くを見つめる。
「クリスがここに入ってきたのもあるが、俺が気付いた訳だしな。『奴』もこれ以上ここにいるのは不味いと考えたんだろうさ」
「………待て、『奴』だと?」
剣は、他人への信頼が厚い。何よりそれは仲間なら当然だ。何ヵ月か過ごしているが、彼が年上だとしても同じ仲間を『奴』などと吐き捨てることなど滅多な事がなければ有り得ない。
その理由に、弦十郎はある程度察することが出来た。前々から考えていた、嫌な可能性を脳裏に浮かべていたからだ。
「博士から聞いていただろう。この二課の中にいるであろう裏切り者に関して。俺の存在をクリスに明かして、襲わせた張本人だ」
「─────まさか」
「櫻井了子、奴が情報を流していた裏切り者だ。フィーネ本人とはまだ決まっていないが」
◇◆◇
街から遠く離れた森林の奥。
その景色の中に紛れ込むように、施設が用意されていた。政府や二課すら認知してない─────フィーネと呼ばれる敵の拠点だ。
勿論、ここだけが拠点という訳ではなく他にも複数ある。違いがあるかと言えば、現在使用している者がいるかというくらいだろう。
カチャカチャ、と静かな空間に金属音が響いてくる。機械を弄くるような音だろう。それが連続して、短いテンポを開けながら繰り返される。
白い装甲に身を包んだ金色染みた茶髪の青年。彼は机に並べられた無数の器具と部品の山から、ドライバーやボルトなどを取り出していく。彼はあるモノを直している最中だった。
それは────自分の腕。
生身のものではなく、全てが機械へと変化されているものだ。分解されてるのもあり、チューブや部品が露出している。
風鳴翼からの攻撃を防ぐためにわざと貫かせることで動きを止めたのだが、見事に肘まで貫通したのは痛い話だった。
魔剣士は、何より全身を機械へと変換したタイプは自分の身体を自身の手で修復する必要がある。他の医療機関に頼らないのも、専門外であるのが起因している。寿司屋に来てラーメンを注文するのと変わらないから、当然ではあるが。
そして、嘆息して次のパーツに手を伸ばそうとした所で青年が動きを止めた。何か気付いたように、ピタリと呼吸すら停止させる。
カツン、という後ろから聞こえてきた靴音に反応するように。
「───調子はどう?タクト」
「問題ありません、マスター」
青年に声をかけたのは、フィーネと呼ばれていた女性であった。今は黒服ではなく、普段過ごしている姿をしている。
青年───タクトは一瞬だけ唖然としていたが、すぐさま表情を整える。冷静な声音で作業を止めて、フィーネに呼び掛ける。
「直で来られるとは、都合が合いましたね。ちょうど質問がしたかった訳ですがよろしいでしょうか?」
「敬語の必要はないわ。素のままで話しても構わないわよ」
「───そんじゃ、そうさせて貰うか」
無表情から一転して、青年っぽい雰囲気へと変わった。座っていた椅子に足をかけて頬杖をかくという、あまりにも悪い態度でフィーネに向き直る。
手に握ったドライバーを手の中で転がしながら、すらすらと難しい言葉を口にしていく。
「立花響の融合現象の確認、それの結果から排除を命じられてたが、これに関しては失敗。オレのしくじりが計画に誤差を生んじまった可能性があるが、どう修正するつもりで?」
机の上に並べてある資料の数枚を目に通したフィーネはクスリと笑う。
「別に然したる問題でもないわ。立花響の融合現象について興味はあるけど、計画の方に何も支障が無い以上、気にする必要はないわ」
「なるほど」
「雪音クリスの方は?僅かにも情報を有してんなら、さっさと排除しとく方が良いと思うが」
「それもいいわ。クリスには計画の主体を詳しく教えていないしね、遠回しな例えくらいは伝えてたけど、あれだけで理解できるとは思ってないわ」
「だが、一応不確定因子の排除も検討しておくべきじゃあねぇのか?」
「むしろダメね。計画の主柱である『カ・ディンギル』は既に完成段階まで来てるの。ここで私や貴方が大暴れしてしまえば、余計に支障が出る可能性の方が有り得るわ。だから、今は大人しくしておくべきよ。あと数日の辛抱だし」
「なるほど、把握したぜ」
コンピューターよりも精密かつ高機能の演算処理機能を持つ青年はそう言って納得した。そして、再度フィーネに目を向ける。何か言いたげな顔で思い悩んでいたが、口に出す事にしたらしい。
「そして、これに関してはあまり必要ない質問と判断してるが……………」
「なにかしら?」
「全ての衣服や下着を排除した、完全裸体になっている理由は?」
それが、タクトの懸念の正体だった。今、フィーネは服も下着も着てない。何なら言うと全裸にすらなっている。相手がほぼ機械だから良いのだが、普通であれば予想外の事でもある。
フィーネはそう言われると あぁなるほど、と頷く。しかし身動きする様子も見られず逆に怪訝そうにする青年に向けて、一言。
「─────そう気にする事かしら?」
「………………………………………常識の齟齬を確認」
「ねぇ、タクト。貴方は知ってるかしら?人間は昔服なんてモノすら無かったのよ。あまり変わらない事じゃない」
「何故数千年前の話をされるのですか。今は現代です、原始時代でもないので露出は控えるべきかと。気品や年季を疑われても─────申し訳ありません、年季という言葉は使わないと保証します」
あまりの衝撃に敬語になるタクトに、フィーネはクスクスと(ある単語を聞いた直後に禍々しく変質した)笑みを浮かべ受け答えている直後だった。
壁際に並べられた無数の画面。その内の一つが急に消えたのだ。それも一つだけではなく、徐々に消えていく。
「…………」
「問題が発生」
青年の顔が無機質なものへと変わる。両方の瞳からも光が喪失し、流暢かつ丁寧に述べていく。
「この拠点への侵入を確認。監視システムへの干渉も発覚。再起動まで十分もかかる模様。すぐさまこの部屋に急行しております」
「何者かしら?」
「米国の特殊部隊です。明かな装備の良さから政府による差し金ではあるのは確実かと」
タクトは立ち上がり、近くにあった白衣をフィーネに差し出す。彼女がそれを着込む様子もなく、ただ羽織るのを見届け、机にあった腕を持ち上げると、肩の部位に押し当てた。
「…………どうやらそろそろ私を切り捨てに掛かったみたいね。前から強引な所はあったけど、ここまでやってくるとはね」
「如何いたしましょうか」
「結構よ、この拠点も捨てるとしましょう。『鎧』もこの手にあるわけだしね」
そうですか、とタクトは自らの手を見下ろす。接着したばかりだったが、どうやら普通に繋がったらしい。開閉を行い、調子が悪くないのを確認する。
「それじゃあ、エスコートを頼むわよ」
「了解しました、マスター」
直後、青年が扉を大きく蹴り破って廊下へと飛び出した。彼の目の前には複数の米国の兵士がいる。特殊な装備を身に纏って、いかにも戦い慣れしてるというような姿だ。
だからこそ、突然現れた青年への驚きも少ない。すぐさま手元のサブマシンに手を伸ばしたのは流石だろう。
しかし青年はその内の一人の頭を掴み、壁に叩きつけた。生々しい音と飛沫が舞うが、悲鳴すら出ずに力なく崩れ落ちる。─────たった一発で死んだ、それは明らかだ。
「───!」
残りの兵士三人が怒りに顔を歪めながら、サブマシンを構えて引き金を引こうとする。しかしタクトは無視して、二人の兵士をヘルメットごと掴むと強引に捻り切った。装備の繊維すら関係なく、一瞬で引き裂いた。
「クソ!」
英語で罵ったもう一人のサブマシンガンが火を吹く。至近距離(と言っても数メートル近く)からの連射は流石のタクトでも避けられず、額に直撃した。
「無駄だ」
だが、血すら出ていない。そもそも傷すらないのだ、戦艦を撃ったような無意味さしかない。あまりの状況に兵士は絶句する。
敢えて伝える為に、英語で語りかかけるタクト。浅い笑みを浮かべながら、わざと絶望させ諦めさせる為に。
「オレを傷つけたいなら、対戦艦貫通砲を持ってこい。確実に殺すなら核ミサイルなんてものじゃない。同じ魔剣士は連れてこねぇとなぁ」
「く、クソッタレがぁぁぁぁああッ!!!」
罵倒の意味合いの叫びを受けても、無限の弾丸の雨を浴びても、タクトは顔すら歪めない。彼にとって目の前の兵士は大した障害とすら認知されてない。
たった一振、拳を振るっただけで吹き飛び、肉片へと化したのだから。最早何も気にすることなく、彼は後ろを振り返る。
コートに身を包むフィーネの姿を目にし、淡々と言葉を紡ぎ出す。
「……………敵は分隊に分かれてる模様。その目的はマスターの無力化もしくは抹殺と異端技術の回収だと思われます」
「────そうだったわね。貴方の事を話してなかったから、対策できなくても無理もないでしょうね。」
「それで、どうしましょうか?」
フィーネは自らの髪を軽く払う。死体の数々を冷たい目で見下ろして、青年に言った。
「───『アルビオン』の使用も許可するわ。彼等に格の違いというものを教えてあげなさい」
了解、という声と共に。
施設内を轟かせる程の重機音が響き渡る。続くように悲鳴と銃声が木霊するが、途切れてはまた繰り返していく。
これは蹂躙だ。何より、それは奇襲を仕掛けようとしていた特殊部隊の特権ではなかった。戦力差を覆す二体の兵器、『魔剣』に選ばれたモノだけが許されたものだ。
───年明けとは思えないほどシリアス!!
黒幕が序盤に出てくるのに、こんなに雑とか普通にヤバイんだよなぁ。餅食ってる場合じゃねぇ!!
はー、時間と執筆力が欲しいー。神様ー、おらにやる気と時間と執筆力を分けてくれー(欲張り)