戦姫絶唱シンフォギア 神装魔剣   作:虚無の魔術師

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悪くない

先日の謎の二課襲撃事件はアッサリと幕を引いた。

襲撃した張本人であるエリーシャ・レイングンエルドが姿を消している以上─────何より、連れ拐われた小日向未来と間接的に標的とされていた剣が無事だった事もあり、事件について詳しいことを調べる必要はないと言うことになったのだ。

 

 

 

そして、変わった事が他にもある。

 

小日向未来、彼女が二課の一員となった。………一員とは言ったが、正規のメンバーではなく、どちらかと言えば協力者のような関係だろう。これも親友である響への思いがあってのことだろう。

 

 

 

もう一つ、これでついでのようなものだが、ノワール博士との連絡が繋がった。エリーシャの襲撃事件の間、連絡が取れなかったが、どうやら何処かへと向かっていた最中だったらしい。詳しい話を聞こうとしたが、『何、大人の用事だよ。気にしないでくれたまえ』と圧殺された。

 

 

 

 

そして、最後に一つだけ。

 

 

 

 

 

 

無空剣が二課の全員を呼び出したのだ。『話したい事がある』と付け足して。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「………よし、全員集まってくれたか」

 

急がしくて来れないであろうメンバーを除き、全員がこの場にいる事を確認した。装者達は勿論、司令や緒川、オペレーターの藤尭さんや友里さんまでもが集まっていた。

 

 

ただ一人、無空剣の呼び掛けに対して────。

 

 

 

『………剣クン』

「大丈夫だ、博士」

 

不安そうに聞いてくるノワールの声に、剣は落ち着いた声音で告げた。至って冷静、そう見えるが、内側では恐ろしい程の怯えと怖気がある。ノワールの考え通り、少しだけ身体が震えているのも確かだ。

 

 

今まで隠してきた事実を開示する。それがどれだけ恐ろしい事かは分かっている。もしかしたら、これで二課との関係にヒビが入るかもしれないし、どんな風に扱われるかも分からない。

 

 

しかし、それら全ては可能性に過ぎない。可能性だからこそ、起こり得る事象であるのは確かだが、何もそれらだけが絶対ではないのだ。

 

 

なら、全てを話そうと思った。例えどんな扱いをされようが、少しでも良いから正直になろうと思った。例え一歩だろうと歩み寄ろうと、僅かにもそう決意させられた。

 

 

 

「忙しい中、時間を作ってくれて申し訳ない。俺から皆に──────隠し事を話したかったからだ」

 

 

 

無空剣は落ち着いた声でそう宣誓した。この場の全員が気を引き締めるように感じられる。まぁ、当然と言えば当然なのかもしれない。今まで秘匿された情報が開示されるのだから…………いや、これは少し違うのかもしれない。

 

 

 

「まず─────俺は人間と定義される存在ではない。生物学的にも倫理的にも、その道から外れたものだ」

 

 

 

冷え始めた室内の中で、剣は口を開く。まだそれだけでは終わらない。話すべき事は沢山あるのだ。

 

 

 

「魔剣、それに適合できた俺を【魔剣計画】はそれだけで済ませなかった。当初の奴等の目的は魔剣を有効的に使える兵器を作り出す事だ。その為には、ただ適合させただけでは駄目だった。もっと強い力を得る必要があった」

 

 

 

全てを語り、一つずつ説明する。かつて話したであろう自分の素性や生き方、一部ひた隠しにしていた真実を。

 

 

自分がどのような経緯を経て魔剣士になったのか。

 

 

自分や仲間達が大人達の手によって、実験体として悲惨な扱いをされたこと。

 

 

そして、自分が本当は─────こんな風にした【魔剣計画】への復讐を抱いていて、この世界から離れようと考えていたことも。

 

 

そして何より、小日向未来を連れ拐った男は、自分を魔剣士へと変えた憎むべき敵、エリーシャだということも。

 

 

全ての事実を話した。本来、自分がどのように言われるのかを恐れたから。そんな小さな恐怖を、無関係だからという詭弁で隠蔽してきたのだ、無空剣という魔剣士は。

 

 

 

「体の六割以上が、金属端末やナノマシンにサイボーグなどといった、科学テクノロジーで補われている。骨や脊髄に脳、体の多くが既に弄くられたものだ。その為に、何度も切り開かれて埋め込まれて、切り開かれて埋め込まれて─────それを何度も何度も繰り返してきた」

 

 

最早生身である部分を数えるよりも、機械やナノマシンなどの影響を受けた部分の方が遥かに上回っている。言葉で表現するものとしてはサイボーグに近いのかもしれない。人間としての在り方を残しながら、人体を人工物に変換した存在。

 

 

まあ彼は、そんな軽々しく表現できるものではなく、もっと複雑だ。よりにもよって科学的な常識を逸脱した『魔剣(ロストギア)』という代物を埋め込まれてる時点で。

 

 

 

「元の世界でも、『魔剣士』にも人権を与えるべきだという政治的運動が起こされている。抗議デモやクーデターと、国際問題にもなっている。この根幹にあるものは分かるか?…………俺達が人と認められてないからだ。法律的にも人間としてではなく、兵器として扱いを受けてる」

 

 

多くの人が抗議をしていたのを端から聞いていたことがあった。“彼等も人間と認めるべきだ”、“兵器扱いをしている各国には然るべき対処を”などと。

 

 

───気にしてくれるのは嬉しいが、彼等はどのように思って行動していたのだろうと思う。口では正しい事を言いながらも、心の奥底ではあまり良い感情を抱いてないのかもしれない。多くの魔剣士達もそう思っている事だろう。

 

 

かつての自分も、そうだったから。

 

 

 

「だから俺は人間と言うかは分からない。あちら側だと一応確定はしていたが、此方だとどう判断されるべきかは難しいだろうしな」

 

 

話し終えて一息つく。それから両目を伏せ腕を組みながら、黙り込んでいた。相手からの反応を待つスタンスだ。どう言われようとも剣は素直に受け入れているつもりなのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………やはり前から思ってましたが、剣君達の世界では科学が発展してるんですね」

「まぁ剣君も『アルビオン』も見た後ならあまり驚かないどころか、納得できるんだけどね」

「だがそれにしても、司令はその科学よりも強いからな。少なくともあの人との次元が違うのは確かだ」

 

 

 

…………予想していたが、それでも唖然としてしまう。オペレーターや職員達が話しているのは剣への悪態や罵倒ではなく、彼の話した事実への驚愕が大きい。決して彼に対して責めようとする気概が見られなかった。

 

 

だがそれでも、瞬時に平静を保ったのは剣という青年の胆力だろう。前から鍛えられていた精神的な強さというものが出てきた。それ故に、ずっと呆然とする失態はせずに済んだ。

 

 

 

「……………何故だ?」

 

 

不安な声音で彼等に問いかける。

自分自身の罪を告白するように、重苦しい言葉が続く。

 

 

「俺はそんな事を、信頼を紡ぐ上では大事な事を貴方達に隠していたんだぞ。自己の保身の為だ。軽蔑されるかもしれない、そんな風に勝手に決めつけて、怯えてたんだぞ。人間扱いされなくなるのを恐れて」

 

 

兵器としての前提故に、人権の限定されない存在。当然だ、他者からしたら簡単に人を殺し………戦争を一体だけで終わらせるような存在などに人権など与えたいとは思わないだろう。それなら兵器として扱って疎遠させてたいのが普通だ。

 

 

だから、彼等も兵器として見てくれれば良い。そうすれば納得できる。心から諦められる。

 

 

 

 

「………私からどう言えば良いかはよく分からないな。かつて自分も(つるぎ)であればいいと望んだ身。このような言い方は相応しくないだろうが…………己が人ではなく、兵器だと決めるのは良くない。無空が人でなければ、お前の仲間である彼等も人ではないと言うのと同じだ。自分の為にも」

 

 

「あたしは………前から教えてもらったから大丈夫だが、それでもお前は人間だと思うよ。普通に人間らしいと思うな」

 

 

「安心してください。ここは貴方の知る世界とは別の世界です。兵器などの法律はありますが、決して人を兵器と決めるようなものは一つもありません。そもそも、恩人である貴方をそんな風に扱わせる事は、僕達が絶対にさせませんよ」

 

 

 

なのに、そうは言ってくれない。人として見て、人として受け入れてくれる。かつての自分なら、どのようにしていただろう? 馬鹿にするな、と。理解できるものか、と彼女達を頭越しに否定していたかもしれない。

 

 

 

それでも無空剣は、『彼』は変わった。多くの言葉や願いがあったからこそ、それを踏みにじる訳にはいかない。

 

 

この優しさを拒んではいけない。それだけは良く理解できた。

 

 

 

 

「────(エリーシャ)は、【魔剣計画】はきっと俺を狙ってくる。この世界…………皆にも確実に迷惑をかける事になる。それでもか?」

 

「…………それは違うぞ、剣くん」

 

 

近寄ってきた弦十郎が言う。

 

 

 

「君をノイズとの戦いに、俺達の世界の事情に巻き込んだ。辛かったであろう君を卑怯な言い方をしてな。今まで君には多くの迷惑を掛けてきたんだ。それなのに自分達だけ厄介事は嫌だなんて思わんさ。もしもの時に、俺達も力になるのは当然だ」

「…………っ」

 

 

崩れ落ちそうになる剣だったが、まだ終わらない。まだ伝えたい事がある少女が居る。受け入れようとしてくれる子がいる。

 

 

 

「………剣さん」

 

 

そうして、立花響は歩み寄ってくれた。かつて自分の救いとなってくれた、二人の親友のように。

 

 

「私や翼さんもクリスちゃんも師匠や緒川さん、藤尭さんもあおいさんも!剣さんと一緒に居たいと思ってます!だから……………駄目ですか?」

 

「────」

 

 

 

もう、これで良いだろう。

ここまで言われて答えないのは、最早人どころか魔剣士としても問題だ。彼女達は受け入れてくれる。その事実は簡単だが、後少しだけ知りたい。自分の心を突き動かせるには、後少し。

 

 

 

 

「─────あー、なんだ。こういう時は何て言えばいい?………………あまり苦手で、よく分からないな」

 

 

困ったように無空剣は頭を掻く。しかしその後の言葉はすぐに出てきた。

 

 

「これから貴方達の仲間として世話になりたい。それでも良いのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────もちろん!」

 

 

響は快く、答えてくれた。

 

彼女だけの意見であるのは間違いないが、皆も響と同じ答えであるのは確かだ。

 

 

肯定という、意味。当たり前に見えるそれは、数少ない経験しかなかった。出自や正体で拒絶されてきた数が多い中、こうして受け入れられたのは三回目だった。

 

 

それでもやはり、前と似た感じなのは変わらない。

 

 

 

 

 

 

「───────ふ、そうか」

 

 

 

息を呑む音が聞こえた。

通信越しのノワールからだ。彼は画面越しに見たものに驚愕してるようだった。数ヶ月か数年間、無空剣を見てきた博士は───────目の前で起きていた事に、眼を奪われる。

 

 

 

 

笑っていた、小さくだが。

口角的には仮定できないかもしれない。それでも少しだけ、小さく上がっている口が笑ってるように思えた。

 

 

 

今まで見たこともない─────綺麗な笑み。青年らしさのある顔で、彼は呟いた。望んでいたものを目の前にした、嬉しさの含む声で。

 

 

 

 

 

「悪くないな、こういうのも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

それから紆余曲折を経て、パーティーを始められた。新しく協力者として入った小日向と装者のクリス、そして改めて一員になる事の決まった剣達のお祝いの催しだ。

 

 

大袈裟と言うか、元気で何よりだなと思いながら剣はパーティーを過ごしていた。食事を頂きながら、心から楽しむとまではいかないが、それでも満喫しているのは確かだった。

 

 

 

「一応気になったんだけどさ」

 

 

そんな最中、隣にいた藤尭が気さくな様子で剣に声をかけてきた。因みに元気だが、お酒は呑んでないので安心してほしい。そもそも子供のいる場では酒は遠慮してるのがマナーなのかもしれない。

 

 

彼が聞いてきたのは、普通の疑問だった。

 

 

「剣君ってどのくらい強いんだい?」

「……どのくらい?定義が分からないな」

「いやぁ、普通に動きも素早かったし、何より強いって印象が大きかったからね。魔剣士の中では何番目の強さなのかなーって」

 

 

何だそんな事か、と剣は納得する。

確かに【魔剣計画】の存在とそいつらに狙われてるのは計画の要だとは説明していた。しかし魔剣士の中でどれ程なのかは話してすらいない。それなら藤尭の疑問も素直に頷ける。

 

 

 

別にもう隠しておく事でもない。もう仲間であるのなら話しても問題ないだろう。そう判断した剣はあっさりと答えた。

 

 

「序列三位。昔で言えば上から数えて三番目、だが今は俺が魔剣士としては頂点。つまり『今現在』は俺が最強という事になる」

「何々?“今現在は最強”だと?」

 

 

話そうとした話題が興味を引いたらしく、何処からともなく翼が近付いて来ていた。驚愕する事なく見返した剣だったが、他にも皆が近くに来ていたことに気付く。

 

どうやら全員の興味を引く話だったらしい。そんなものかと、彼は思っていた。

 

 

「序列三位ってことは、他にも二位と一位が存在してるんですか?」

 

 

その見解に剣はあぁ、と頷く。彼等の前で人差し指と中指だけを見せる。ピースしてるように見えるそれは、数を表す動作だ。

 

 

それを目の前でゆっくりと戻しながら、彼は説明していく。

 

 

「序列二位 セカンド、序列一位 ロストワン。俺を含めて【魔剣計画】の要として重要視されていた魔剣士だ。同時に俺ですら相手できない怪物でもあった」

「………それって実名ですか?」

「コードネームだな。セカンドは“二番目の存在”、ロストワンは“絶対の一”を意味してる。つまる所、最強という事だ」

 

 

自信のある言葉だった。

無理もない、剣は上位に存在する二名と対面した事がある。純粋にレベルが違う、格上の存在達であった。

 

 

無空剣のクローンが百体造り出された所で、彼等には敵わない。そう確信させる程には。敵として現れたら、どう戦うのかではなく、どうやって戦わずに生き延びれるか、その段階を想定する必要がある相手なのだ。

 

 

剣以上の剣の実力者。二課でも相当優れた彼が勝てないと断言する二人の存在に、全員の顔が険しくなる。

 

 

 

「その後、あの二人は『聖遺物』の適合実験で暴走している。そして、その場にいた研究者達の大勢を殺した後、複数の『聖遺物』を強奪して何処かへと逃亡した」

「………仲間を殺され、所有物を奪取されて逃亡か。彼等からしたら良い話ではないな」

 

 

無論、同情なんてしてる筈がない。

子供を人と思わない非道な実験の数々、被験者である序列一位と二位が不満を抱き、離反するのも頷ける。彼等だけで済んだのが奇跡なくらいだ。本来なら十数人も越える魔剣士達が反乱を起こしてもおかしくない程の悪列な環境だったのだから。

 

 

自業自得と言えばそれだけで済む。しかしそんな連中が、自分にとって価値のある存在を二人も逃がす訳がない。

 

 

「勿論、【魔剣計画】は大勢の追手を送ることで二人を探そうとしたが、たった数日でそれを止めた。反撃を食らったのもあるが、奴等は都合上諦めるしかなかった」

「?それは何故だ?」

『私達が脱走したからさ』

 

 

ノワールは軽く言う。感傷らしきものは感じられない。おおよそ気にしてすらいないのだろう。

 

 

『二人の暴走により警備はある程度緩くなった。私は最初から無かったが、剣クンの方は厳重でね。序列二人の逃走は彼等を戸惑わせる程だったらしい。その隙をついて彼を連れ出し、重要書類の全てを燃やして逃げてきたという訳だよ』

「俺がいなくなれば【魔剣計画】の要は完全に失われる。つまりあんな実験を起こせない、起こす事が出来なくなる」

 

 

 

 

「それでは、無空と小日向を狙い、叔父様や緒川さんが接触した男…………エリーシャでしたか?奴は【魔剣計画』の遂行の為に無空を狙ったのですか?」

『いいや、彼は違うようだ』

 

 

優しい言い方でノワールは即答した。

 

 

『奴、エリーシャは独断行動に走っているらしい。【魔剣計画】も、彼を追っているようだが見つかりはしないだろう。何せ彼がいるのは、この世界なのだからね』

「追われてる?仲間なのにですか?」

『………黒幕である人物は、彼の事を警戒していたよ。まぁ、あんな被害を沢山出したのだから当然と言えば当然だがね。だから利用できるだけ利用した後は処分する、蜥蜴の尻尾切りとはよく言うものだ。

 

 

 

 

きっとあれだろうね。エリーシャ本人もそれを理解していたから、こちら側に来たのかもしれない』

 

 

利用して、利用される。

【魔剣計画】を束ねる存在にとって、自分の配下などそんなものだ。何より、魔剣士を作るために数万人の子供を平然と殺すような男だ。上からしたら今すぐにでも処分したい案件でもあったのだろう。

 

 

すぐに排除しなかったのは、エリーシャの才能と研究者としての腕が優秀だったからだと思われる。

 

 

 

 

 

「…………なら、逃走したとされる彼等は何処に行ったのだろうか」

「さぁな。あの二人が何を考えてるのかなんて理解できない。だが、もしかしたら────」

 

 

ヒッソリと。

それ以降はあまり聞こえないように、小さな声で囁いた。現に誰の耳にも入らないような言葉を。

 

 

「俺のように、あの世界から逃げ出したかったのかもな」

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

そして、彼等とは違う別世界では。

 

 

「…………ふむ」

 

研究室の中でノワールはコーヒーをゆっくりと飲んでいた。熱かったようですぐに口を放すと、難しく悩んだ顔でコップを持って椅子に腰掛けた。

 

 

一応食事代わりにパンを何枚か口の中に放り込み、今度はミルクを僅かに入れたコーヒーを味わう。冷たいミルクと混ざった事もあり、今度は飲めなくない温さだった。

 

 

「さて、始めようとするかね」

 

 

飲みかけのコップを何もない机に置き添え、ノワールはもう一つの卓上に眼を配る。沢山の資料の山を背景とした空間。博士の目の前には複数に並んだキーボードと三つの画面─────その奥にあるのは何台も連結したコンピューターだ。

 

 

 

カタカタカタカタカタッ!

無言でキーボードを打ち込み始める。ただの遊び等ではない、むしろ重要な作業の一つだ。

 

 

(シンフォギア─────シンフォニー、交響歌という意味を有する。歌を力とした兵装であるのは確かだが………)

 

 

試しに『シンフォギア』と検索エンジンで調べてみたが、一つも関係してる情報は見つからない。当然と言えば当然だろう。

 

 

だが、情報が出てこないのは気にしてない。一番重要なのは一つの事実だ。

 

 

シンフォギアとロストギア、それぞれ別世界で造られた兵装には共通する点が多い。基礎的な部分が似通り過ぎている。違和感など無いと普通の科学者なら言うかもしれないが、ノワールはやはり不審な所しか感じなかった。

 

 

「シンフォギアとロストギア。片方は歌を奏で鎧を纏い、片方は魔剣からの力で鎧を纏う武装……………この構造は一体何だ?何故ここまで類似している?」

 

 

ノイズというこの世界で共通の敵。シンフォギアはそれに対抗して造られたのは分かる。しかしロストギアもどういう訳かノイズの炭化を無効化させている。

 

 

 

それは、元からノイズを相手にすることを考えていると取ってもおかしくない。他にも、気にする所が多く存在している。

 

 

「これを造った櫻井了子、フィーネは何を考えていた?偶然シンフォギアシステムとロストギアが同じ構造だった?─────それは有り得ない。かと言って、フィーネがロストギアを真似たとは思えない」

 

 

考えられる可能性は、“【魔剣計画】がシンフォギアシステムを利用して魔剣士を造った事”。本来なら有り得ない、此方の世界に来たのは剣とエリーシャ、そして数体の兵器だけだ。

 

 

そしてエリーシャはこうも言っていた。『世界と世界を繋ぐゲート』だのなんだの。

 

 

つまり、此方と彼方を行き来する方法があると思われる。それも相当前から、シンフォギアというものが造られる同時期にロストギアを造り出す事も有り得るのだから。

 

 

 

 

 

もし本当にそうならば、自分達の敵は未知の領域に位置しているのかもしれない。こうも自分達を翻弄する程に。

 

 

 

「やれやれ、私もまだまだ未熟という訳か。理解はしていたが、こうも無力を感じさせられるのは辛いものだ」

 

キーボードを叩く手を止め、椅子から立ち上がる。余っていたコーヒーを飲みながらノワールは机に立て掛けられていたものを手に取る。

 

 

写真掛けだ。

一枚の写真が大事そうに、厳重そうに保管されている。ノワールはそれを、懐かしそうに………そして悔いるように見つめていた。

 

 

 

 

 

「願った通り、『彼』は居場所を得られたよ────ノエル」




無空剣、『彼』が本当の意味で二課の一員になった話と魔剣士の順位についてや【魔剣計画】へのある程度の補足でした。


一応更に補足ですが、魔剣士はロストギアを纏わなくても頑丈です。普通に全身がサイボーグに近い状態ですし、ただの銃弾や機関銃程度なら何とか防げます。ロストギアを纏うことで全身の機械系統が強化され、倍以上の強さになります。


でも性質的に完全聖遺物やロストギア、もしくはシンフォギアの攻撃は通用します。完全聖遺物の場合は容赦なく通用するので。何話か前にあったデュランダルの攻撃を受けたのも、それが理由です。
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