戦姫絶唱シンフォギア 神装魔剣   作:虚無の魔術師

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区切りどころが!分からねェ!!どこで切れば話が上手く続くか、分からねェッ!!!(迫真)


襲撃、魔剣兵器

「タクトがリディアンを襲ってるだって?」

 

 

ホテルの室内で。

冷静に、片耳を押さえていた剣は呟いた。彼に無線機は必要ない。耳の一部分は小型のスピーカーとなっていて、通信を行う際の音声などは自然と耳の中に届いていく。盗聴を防ぐための技術の一つだが、今はそんなものを気にしてるつもりはない。

 

 

すぐ真横で、買ってきていたアイスクリームを頬張っていたクリスは剣の呟きに目を見開く。驚きながらも問い詰めることなく、剣の反応を伺ってる。

 

 

───助かる、と心の中で礼を述べ、剣は通信の声を耳にする。連絡してくれた弦十郎は自分の問いにちゃんと答えてくれた。

 

 

『あぁ、先程大規模な広範囲攻撃がリディアンに直撃している!何より彼だけじゃない!ノイズの反応も数体確認されている!全てがリディアン周辺を攻撃している!』

 

「チィッ!ノイズもタクトも総戦力か!ここまで出し惜しみをしないとなると、俺達を誘き寄せる気なのは確かみたいだな!」

 

 

すぐ向かう!とだけ伝え、通信を切る。隣にいるクリスに声をかけながら、窓を開け放つ。

 

 

「着いてこいクリス!奴が、タクトが動き出した!複数のノイズを連れてな!」

「あぁ!分かってる!」

 

共に外へ飛び出す二人。それぞれ別種のギア、シンフォギアとロストギアを纏い、並ぶ建物の上を跳んで進む。

 

 

 

「フィーネが、動いたのか」

「だろうな。大方ノイズも動いてるって事は、『あれ』も使ってるんだろう」

「…………『ソロモンの杖』」

 

 

コードネーム サクリストS、ソロモンの杖。

クリスが起動させた完全聖遺物。それ自体に相手を殺すような破壊能力は存在しない。剣からしても、完全聖遺物の中で一番自分を傷つけることの出来ない物だと考えている。

 

 

しかし、厄介なのはその能力───ノイズを召喚する力だ。複数のコマンドを打ち込むことで難解な仕組みも行える、魔剣士以外の人間全てに特化した殺戮兵器。

 

 

魔剣士(ロストギアス)タクトに、統率の取れたノイズの大群。十中八九ソロモンの杖、それを扱うフィーネの仕業であるのは間違いないだろう。

 

 

 

そして、リディアンに向かう道中で悲鳴を聞いた。二人が思わず屋上で足を止めると、周囲の光景を目にした。

 

 

 

燃え盛る街。

そこら一帯を逃げ惑う人々の姿。

そんな彼等を追うように迫る────複数のノイズ。

 

 

司令は言っていた。リディアン周辺をノイズが襲っていると。自分達を封殺するだけでなら当然の所業だが、到底納得できるものではない。

 

 

顔を険しくしてその場に向かおうとするクリス。しかし、そんな彼女を剣が止めた。振り返る直前に、彼はこう叫んだ。

 

 

 

「行けクリス!リディアンに!」

「……っ」

「一般人を助けながらノイズを倒すのは俺の方がやりやすい。何より、響と翼の二人でタクトを倒すことは難しい!だがお前がいれば拮抗するのは確かだ!」

「………でもよ」

 

 

言い淀む少女の肩に拳を当てる。任せる、とでも言ってやるように。

 

 

「すぐに合流する!響と翼、他の皆も誰一人として殺させるな!」

 

 

そう告げ、彼は建物から飛び降りた。降りる最中、壁を蹴り跳ばし、弾丸のような勢いで群衆へと襲いかかろうとするノイズへと突っ込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

踏み潰し、薙ぎ払う。たった二つの行動で人々への脅威は一瞬で排除された。灰と化し、消失するノイズに逃げ惑っていた民衆は困惑を隠せない。

 

 

自分が助かったのかも分からずに、突然現れた青年を見つめていた。

 

 

 

「あの……」

 

その中で一人、女の子が声をかけてきた。どこか不安そうになりながらも、剣に近づいてこう聞いてきた。

 

 

 

「おにいちゃんは、だれ?」

 

 

自分の名前を、何者かを聞いてるのだと思い至った。口元に展開された装甲を解除して、小さい笑みを作る。

 

 

ゆっくりと背を向け、ふーっと息を吐く。まだ終わってない、他のノイズが此方へと近づいてきていた。そいつらの排除に取りかかる必要がある。

 

 

しかし動く前に、女の子の疑問に答えることにした。

 

 

 

 

「────魔剣士(ロストギアス)、無空剣だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

そして、騒動の中心となるリディアンにて。

 

 

悲鳴が響き渡る校内で、三人の少女達が廊下を走っていた。安藤創世(あんどうくりよ)寺島詩織(てらしましおり)板場弓美(いたばゆみ)、響や未来と友達である彼女達は何が起きたのかも分からず逃げていた。

 

 

 

 

「君達!大丈夫か!?」

 

とにかく走ろうとしていた三人の前に、誰かが飛び出してきた。思わず顔を青くして足を止めてしまう彼女達だったが、その姿を見てすぐさま安堵した。

 

 

───二人の自衛官だ。

リディアン内の避難者を探していたのだろう。ふとした安心感から落ち着きそうになるが、二人に強い声で急かされ、慌てて着いていく。

 

 

「この騒動、一体何があったんですか!?」

「分からない!だが襲撃されてるのは確かだ!敵は一人、ノイズと共にこの学校とその周辺を襲ってるらしい!」

 

 

自衛官はアサルトライフルを両手にそう叫ぶ。明らかな武器を持つ彼等の様子は険しかった。例えそれだけの武器があろうとも、ノイズという脅威には敵わない。出会ってしまえば自分を盾にするしかないのだから。

 

 

 

「どうなってるわけ……!?学校が襲われるなんてアニメじゃないんだから!」

 

 

必死に走りながらも弓美の言葉に、誰もが答えられない。何故リディアンを襲撃したのか、この場にいる面々では分かる筈がない。

 

 

 

 

「取り敢えず君達はこの先に行くんだ!地下へのエレベーターを使ってシェルターに避難すれば、ノイズに襲われずに─────」

 

 

声が途切れた。

同時に彼女等を先導していた自衛官がピタリと足を止める。

 

 

壁が、廊下の壁が外側から吹き飛ばされていた。何か削岩機を打ち込まれたような、瓦礫が沢山飛び散っていく。

 

舞い上がる粉塵が強引に払われる。ゆっくりと浮かび上がった人影が吹き散らし、その姿を現した。

 

 

純白の鎧に身を包んだ、後ろにいる女子学生達よりも少し歳上に見える青年が。

 

 

 

 

 

 

「………見つけたぜ、生存者」

 

ギョロリと、眼球だけが動き弓美達に視線が向けられる。人を人として見るモノの眼ではない。楽しみながら人を追い回す殺人鬼でも、相手を人として認識してる。だからそれとは違う、全く別のベクトルの感情。

 

 

少女達の中で弓美という少女は、アニメを愛する少女はその青年を、『機械』だと錯覚してしまった。普通に見れば人間に見えるのに、得物を障害物として認識するその価値観から、同じ人間には見えなかった。

 

 

 

何の偶然か、彼女の咄嗟の考えは強ち間違ってはいなかった。笑みを浮かべているその顔も、元気そうな声音も、全てが機械的に入力されたパラメーター。『虹宮タクトという故人』から抽出された性質を表側に出し、機械で構成された内側を隠す…………『擬態』という言葉が合うようだ。

 

しかし、普通に考えてみても正気ではない。

 

 

何故なら使われているのは元人間。改造されて死んだ人間を更に改造し、死んでも役立てるというおぞましい思想から生み出された、負の遺産。同じ人間であったものを、何の躊躇無く歪めた悪意の行く先。その一つが今この場にいる青年の姿をするモノの正体だった。

 

 

 

ニタニタと笑うタクトの不気味さに隊員達は不審そうにしていたが、彼の持つ得物を見て顔色を変えた。警戒というものに。

 

 

 

西洋の物と思われる両刃のある剣。

その刀身は濡れていた、生々しい赤い液体が少しずつ滴っている。同じように、青年の顔には同じ色の液体が飛び散っていた。当然ながら、平然と突っ立っている青年のものではない。

 

 

目の前に提示されたその事実が二人の自衛官の認識を改めさせた。女子だけの学校に普通はいないであろう不審者から、この襲撃に関係している明確な犯罪者へと。

 

 

 

「───武器を捨てて両手を上げろッ!さもないとここで射殺するぞ!!」

「ハッ!このオレが、んな真似をするとでも?」

 

 

アサルトライフルの銃口を向けながらの警告にも、青年は応じる様子は見られない。それどころか小馬鹿にしたように、手元の剣を軽く振り回す。

 

 

それだけで液体が周りに飛び散る。後方の少女達が後ずさる最中、彼女達を守ろうとする自衛官は逆に一歩、前に踏み出した。

 

 

「………貴様、一体何人の民間人を襲った?」

「十一人教師や用務員七人、そしてお前らの仲間四人程。生徒の方は全然殺せなかったな、教師とかお前らに邪魔されたし………あっちにあるから見てみる?」

「ッ!!」

 

 

歯軋りを、怒りを抑えられない。仲間を殺された、何より多くの人が犠牲になった事に怒りを燃やしながらも、二人の自衛官は目の前の青年を見据える。激昂して攻撃する事などせずに、ただ牽制しておく。

 

 

やはり笑いを止めることはない、なのにおぞましい事実を淡々と語っている。その様子は喜んでる様子も楽しんでる様子もなく、ただただ冷徹だった。

 

 

彼等は、自衛官達は確信する。

この青年は同じように人を殺していたのだ。感情もなく、工場で何度も行われる作業のように淡々と。楽しんでいるよりもある意味では悪質で、手の着けようがない。

 

 

 

だからこそ彼等は、まず民間人だけでも逃がそうとした。一人が後ろに目を配り、大きな声で叫ぶ。

 

 

「君達!何をしている!今すぐ逃げるんだ!!」

「は、はい───」

「いや、まぁ逃がさねぇよ? だって人的被害に関しては問題ないし」

 

 

あっさりと言ってタクトは一歩踏み込む。それが確定的な引き金となった。

 

 

 

 

二人の自衛官は向けていたアサルトライフルを乱射する。相手が人間であるという考えは頭から消えていた。

 

目の前の青年は何人も人を殺してる。何より自分達が殺されてしまえば、後ろにいる少女達も同じように手に掛けられる。

 

 

彼等はそんな所業を許すわけにはいかなかった。何故なら民間人をこの手で守る為に自分達から自衛官へと志願したのだから。相手を殺してしまってもいい、ただそれで他の人が犠牲ならずに済むなら………自分達が手を汚す意義はある、と。

 

 

 

 

 

 

が、しかし。

 

 

 

 

 

 

 

「少し、嘗めすぎじゃねぇか」

 

 

青年────虹宮タクトは容赦しない。目の前の自衛官達を敵へと見定め、刀剣を引き抜く。何十発をも越える銃弾を直に浴びるが、傷一つ付かない。全くの無傷という状態だった。

 

純白の鎧が理由ではない。それでは素肌に直撃してるのに弾かれてるのが説明できない。自分達では説明できない常識を越えた力の一端かと彼等は考えしまう。

 

 

 

「んな豆鉄砲を乱射しただけで俺が殺せるかよッ!自惚れんなァ!!」

 

 

が、流石に面倒だと感じたらしく、乱雑そうに剣を大きく振るった。自衛官達はそれを見て警戒するが、すぐに安堵の表情を見せる。数メートルも距離が開いてるから、近接武器である刀は何の意味も為さないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スパァンッ! と。

 

 

 

小切れの良い音と共に、血飛沫が舞った。

自衛官の一人が音を立てて崩れ落ちる。しかし地面に転がる音は二つ。これが何を意味するか分かるだろうか?

 

 

 

体を文字通り、銃弾を防ぐための防護服ごと分断された自衛官。上半身と下半身が床に転がり、赤色の池を作る。

 

 

 

「────────え?」

 

 

少女達は、唖然とする。

さっきまで話していた大人が殺された。身体が切断されるという、現実離れした殺され方で。

 

 

ノイズによる炭化。それがおぞましい事だと言うのはよく分かる。目の前で人が灰になる光景なんて想像もしたくない。だから殺されるだけならマシ。

 

 

 

そう思う事実が、一転する。

やはり死は死。目の前で人が惨殺される光景に、人が死ぬ環境から欠け離れていた者が堪えられる筈がない。

 

 

 

 

「きゃぁあぁぁぁああああっ!!!」

「き、貴様ァッ!!」

 

 

悲鳴をあげて蹲る弓美という少女。そんな彼女に二人が駆け寄り、落ち着かせようとしていた。だが、彼女達も凄惨な人の死を簡単に受け入れられそうではなく、怯えるように顔は青くなっていた。

 

 

そして、仲間が目の前で殺された事でついに自衛官は激情する。とにかくアサルトライフルを撃ち続けて目の前の青年を殺そうと、引き金を全力で押し込んだ。

 

 

 

「無駄だってのに」

 

自分の身体を叩く弾丸を無視して嘲笑う。タクトは笑みを浮かべたままで滑るように歩いていく。その動きが止まることも制限されることもなく、ゆっくりと銃弾の雨を押し流して突き進む。

 

 

そして、ある程度近づいた所で青年は手を伸ばした。鋼のような金属質な掌に顔を鷲掴みにされる自衛官。(だい)大人(おとな)が持ち上げられる異様な光景が広がるが、更にその状況は変わってしまう。

 

 

 

 

ズドォッ!!!! と。

抵抗をしようとする自衛官をタクトが床へと叩きつけた。それだけだった。弾切れのアサルトライフルが転がり、頭が潰れた死体が崩れ落ちる。

 

 

 

そして、タクトは今度こそ歩みを始めた。血濡れの剣を軽い動作で構えながら、三人との距離を縮めていく。ビクッ! と震える彼女達は逃げることが出来ない。このままだと殺されてしまうのが分かっていても、動くことができなかった。

 

 

 

 

が、しかし。

何歩か近づいたタクトが足を止める。射程距離に入った、という訳ではない。ジロ、と眼球が綺麗に横を向いた。

 

 

廊下の窓ガラス、そこから見える───飛び込んでくる人影に。

 

 

 

 

 

 

そして、窓から校舎へと突っ込んだ響は全力でタクトの顔面に拳を叩き込んだ。

 

 

「せぃぃやぁぁぁあああああッ!!」

 

ただ殴るだけでは終わらない。拳に全身全霊の力を送り込み、ありったけ力をぶつける。相手は何かを言おうとしたが、それは出来なかった。

 

そのまま勢いに任せて横へと吹き飛ばされたからだ。壁をぶち抜き、教室の奥へと転がっていく。机や椅子など、キチンと並べられた物に突っ込んで破壊する。

 

 

…………起き上がってくる様子はなかった。さっきの一撃は思いの外タクトに効いていたらしい。けど、響は安堵することはなかった。

 

 

 

────まだ終わってない。()()()はまだ暴れられるんだ。

 

 

 

「び、ビッキー!?その姿は何なの!?」

「皆!ここは私が何とかするから早く避難して!」

 

 

叫ぶように言うと、彼女達は困惑しながらも走っていく。普通ならまだ止まっていたが、先程の惨状に精神が追い詰められていたのと、響の今まで見たことないような剣幕に気負されたのだろう。

 

 

その背中が角を曲がって見えなくなった所で、瓦礫が崩れるような音がした。教室の中を眼にした響は思わず息を呑み、目を見開く。

 

 

タクトはゆっくりと起き上がっていた。しかしその起き上がり方が不気味かつ異様だった。

 

 

まるでマリオネットのように、糸で操られた人形みたいな動きで立ち上がる。しかし全身の接続部を組み直される事で常軌を逸した動きが、人間のようなものへと戻る。

 

 

彼は口を開いて大きく笑っていた。しかしその瞳は笑わずに忙しなく蠢いている。矛盾という違和感の中で、彼は楽しそうな声を出した。

 

 

あまりにも普通な、表情と一致するような。それすらも模造されたものかもしれないと思わせる声音で。

 

 

 

「ハハァッ!綺麗な一発食らっちまったなぁ立花響!不意打ちなんて良い趣味してくれるじゃねぇか!」

「……っ!タクトさん……!」

「再開のついでだ!あの時の続きといこうぜ!付き合ってくれるよ、なァッ!!?」

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

響と別れた後、板場弓美、安堂創世、寺島詩織の三人は廊下を走っていた。向こう側、自分達がいた場所から激しい轟音が何度も響いてくる。

 

 

戦っているのだ。響が、あの冷たい機械のような青年と。

 

 

「な、何が起こってるの……!?大人の人が殺されて、それで響が戦い始めて!」

「分かんない!けど今は避難するのが一番でしょ!?」

 

 

そう言い合いながら、何とか走っていく。何処に逃げれば良いか、彼女達にも分かっていない。けれど逃げなければいけないのはよく理解している。

 

 

一刻も早く、あの無機質な敵が此方を狙ってこないように逃げなければ─────

 

 

 

そう思っていた彼女達に再度悲劇が訪れる。先程と同じくどうしようもないほど過酷な状況が。

 

 

それは、角を曲がった瞬間に姿を見せた。

 

 

「の、ノイズ!?」

「嘘………こんな時に」

 

 

廊下に彷徨いていた四体のノイズ。

それぞれ別の形状をしている、けれども脅威である事には変わりない。

 

この場にいるのは三人、そしてノイズは四体。しかも全部の個体が廊下の真ん中を陣取っているのだ。どうやってもこの先を進むことは出来ない。

 

 

 

 

だが。

 

 

彼女達はまた脅威から救われる。前回のが友人の手助けなら、今回は本当の運だろう。

 

 

 

 

複数のノイズが一瞬で崩れる。

何が起こったのか、具体的には分からなかった。何か光のようなものが煌めいた瞬間だったので、言葉に表現することが出来ない。

 

 

 

「───あ?生存者か」

 

廊下の角から声が聞こえてきた。炭化したノイズの残滓が消える最中、その声の主はゆっくりと歩いてきていた。

 

 

全身コートの青年だった。足元までもを覆ってしまう程の面積の厚布。両手には何本もの白い筋が浮かぶ黒い手袋をしている。しかし先程彼女達が出会った敵とは何処か違う。

 

目つきは鋭く威圧ような感じがあるが、それでもあの青年よりは人間味が強かった。

 

 

その青年はジロリと創世達を睥睨する。それぞれ互いに寄り添っている彼女達に手を差し出す事もせず、自分の来た方向を指で指し示す。

 

 

 

「この先に地下施設へのエレベーターがある。そこにいる連中に保護して貰え。どうせシェルターとかを用意してるだろうし、テメェらを助ける事は出来る筈だ」

「で、でも貴方は………?」

 

 

最後まで聞こうとしたが、意味がなかった。

不安そうに声をかける寺島の声は空気を焼くような音に遮られる。数秒して真後ろの廊下が爆発した。

 

 

慌てて振り返ると、背後から近づこうとしていたノイズが消し炭になっていた所だった。消えかけていた形から見ると胴体に大きな穴が開けられていたのだ。それも一つではない、穴だらけの塊はオーバーキルと喚ぶべき程に蹂躙されていた。

 

 

実行したと思われる青年はつまらなさそうだった。掌を見下ろしながら鼻を鳴らすと、今度こそ腰を抜かしかけていた創世達を睨みつける。

 

射抜くような鋭い眼光を向け、強めの声で告げる。

 

 

 

「早くしとけ、俺だってテメェらを好きで守ってる訳じゃねぇ」

 

 

それを受けて、創世達はわたわたと走り出す。もう大丈夫かと青年は思う。あの先のノイズは既に排除している、何より近づく反応があれば自分に理解できている以上、彼女達は無事に地下に着けるだろう。

 

 

 

どこまで甘いものだ、と青年は吐き捨てる。八つ当たり気味にノイズであった灰を蹴り飛ばす。塵となって消えていくそれを眼にすることなく、廊下を歩いていく。

 

 

 

 

歩きながら、青年はポツリと声を漏らす。独り言と言うよりは、誰かに話す事だと思われる様子で。

 

 

「───エリーシャ、これはどういうつもりだ?」

『どういうつもりとは?質問の意図が読めないね』

「奴等のやり方だ。何故わざわざここを襲撃する?欠陥品とノイズで民間人を襲わせるのは、あまり得策には思えねぇが」

 

 

苛立ってないと言われれば嘘だ。

こんなような惨劇、普通に考えても容認できるものではない。現に彼はここら辺でノイズに襲われそうな人々を何人か助けている。

 

間に合わなかった人間がいたわけではない。普通に動いていた二課の面々が助けてる状況だったので、手助けは不要と判断したまでに過ぎない。

 

 

だが、通信を繋いでいるであろう男───エリーシャは落ち着いていた。無関係、自分には被害を被らないからか、気にする素振りが微塵にもない。

 

 

『無空剣が相手なんだ。彼の巫女殿も遠回しな時間稼ぎは無意味と理解しているのだろう。何なら自分で何とか出来る範囲で足止めさせておきたいのかもしれんよ?そもそも、私も彼を殺すなと忠告してるしね?』

「………それでも笑える話じゃねぇのは確かだ。戦いのたの字も知らねぇガキ共を襲う時点で反吐が出る」

『その方が良いからだよ。彼等、二課は人々の人命を優先する。仲間や民間人を狙えば彼等は必然的に戦わざるをえない。それが仕組まれたモノだとしても、ね?』

「流石外道。クソの考え方をクソなりに良く理解してるようだ」

『頭脳明晰、と言って褒めてくれても構わないよ?』

「死ね、気取って死に晒せ」

 

 

これは手厳しい、と相手は小さく笑う。真に受けてる訳ではない。六割以上は子供の戯れ言と取っているだろう。四割は自分は死なないという余裕か自信か。

 

 

ふと、青年は真後ろを見返す。

先程女子学生達が向かった地下のエレベーター。その最下層に彼が求むものがある。

 

 

『者』ではなく、『物』でもない。あれは『モノ』と表現するのが正しい。青年にとって『アレ』さえ手に入ればどうでも良かった。

 

 

しかし、

 

 

『あぁ、そうそう。二課に攻め込むのは後にしてくれよ』

「あ?テメェ、一体何抜かしてやがる?」

『少し面白いものが見れるからね。大人しくしていた方が良い。何より、君の求める「アレ」は後でも手に入るだろう?』

「…………………」

 

 

首の骨を鳴らし、青年は考えに耽る。優先するべきはどちらか、どのようにするのが効率や自分にとって都合が良いのか。

 

 

 

考えて考えて────エレベーターのある通路に背を向けた。そして、校舎の外へと続く道へと進んでいく。

 

 

「───見れなかったら、適当にぶっ潰して奪わせて貰うからな」

『ふふ、ならば期待して見ておくといい。君がこれから越えるべき敵というものを』

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

拳と拳のぶつかり合い。

格闘漫画や映画でもよく語られる手法だが、この現状はそれよりも激しく、戦況は進んでいく。

 

 

響は何発もの打撃を叩き込む。それら全てが相当の威力を有している。両腕に展開されたアームドギアを用いて、勢いを押し殺すことなく拳を放つ。

 

 

 

「ハハッ!ハハハハハハハハハハハハッ!!」

 

 

対するタクトは異様だった。片手に剣を持っているのにも関わらずそれを使うことなく、片方の素手で響の拳を受け止め、弾き返している。

 

 

遊ばれてる、そう思ってしまうが違う。相手にとっては本気であるのは間違いない。それでも響を押しきれないのは、彼女が成長した証拠だった。

 

 

「立花響ィ!見間違えるように鍛えたな!計画の邪魔をする為か!?このオレとマスターを殺す為かァ!?」

「違う!私は了子さんとタクトさんと話し合いたい!その為に戦うんです!!」

「ハッ!なら殺されそうになっても、そう言えるかよォ!!」

 

 

片腕の剣で校舎の壁を破壊し、外へ飛び出すタクト。わざわざ逃げ出そうとするタクトを追うように、響もそこから校庭へと移動する。

 

 

広大な場所へと線上を移したタクトは、ニヤリと笑いながら両目を細めて静かに観察している。

 

 

(オレの動きに僅かな遅れだが着いてきている。鍛えたのは伊達ではない、か。まぁ、まだまだ余力の範囲内だがな……………って、油断した方が返って危ねぇ訳だし)

 

 

 

 

(いっそのこと、絶技で決めるか。この分だと半分というよりも七、八割が妥当だな。下手に経験積まれても面倒この植えねぇから)

「…………出し惜しみ不要!そんじゃ、前回の続きとして一発叩き込んで────────」

 

剣を持ち上げ、突きのように水平に構える。自らの切り札である絶技、それを放とうとエネルギーを全身から回したその時だった。

 

 

 

 

 

ゾンッ!! と。

鋭い速度で飛んできた何かがタクトに直撃し、今にもエネルギーを収束させた剣を放とうとした肩を容赦なく貫通した。

 

 

「あ!?」

 

避けることも叶わなかったタクト。彼の片腕が力なく垂れ下がる。接続部ごと破壊されたのか小さな火花を散らしていた。

 

 

突然の不意打ちに怪訝そうであった彼は明らかに笑みを消す。そして片腕からその剣を引き抜き、ある方向へと投げ飛ばした。

 

 

 

「不意打ちってぇ、やるようになったじゃねぇか。風鳴翼ァ!!」

 

 

校舎の上に立つ人影────『アメノハバキリ』を纏う翼の姿。彼女を認視したタクトは嘲笑のような言葉を投げ掛け、垂れ下がった片腕を掴み彼女の方へと向ける。

 

 

力など流れてない手には剣が握られている。このまま放っても当てることなど出来ないが、それはもう片方の手で照準を補える。

 

 

しかしそこで、タクトはハッと振り返った。新しい反応を会得したのだ。自分のすぐ近くに向かってくる、もう一つのシンフォギアの反応を。

 

 

『イチイバル』。

赤いシンフォギアを纏い、銃火器の全てを展開して此方に向けてくる少女─────雪音クリスを。

 

 

 

 

「そいつだけじゃねぇッ!どこに注目してやがる!」

「ッ!おいおいまさかてめぇもかよ!?」

 

 

自分を狙ってるであろう銃弾の雨に、タクトは行動を中断し地面を砕いて回避する。その様子に先程までの余裕さは見られない、目に見えた動揺が明らかだった。

 

 

マシンガンを防いだ事で安心しきっていたタクトだったが、すぐに真上に視線を向ける。自分のいる場所が影に覆われたからだった。

 

 

 

 

大型ミサイル。電柱よりも太く巨大なミサイルが間近に接近していた。直撃すれば、無事では済まない程の大きな爆発物が。

 

 

 

 

「嘗めやがってェェェェェッ!!」

 

 

初めて相手への悪態をつき、タクトは垂れ下がった自分の腕を強引に掴む。全力の力で引っ張り────肩の接続部位ごと、強引に引き千切る。

 

 

ブチブチブチィッ! と機械の部品と共にケーブルが何本も切断される。尋常ではない激痛に顔を歪めながら、タクトは分断した腕を迫り来るミサイルへと放り投げた。

 

 

先端の部分を投擲された腕がへし折ったと同時に、大規模な爆発が生じる。直撃しないにしろ、真下にいたタクトは爆風と衝撃をその身に受けて、爆炎に呑み込まれた。

 

 

大きくないにしろ、クレーターのように抉られた校庭の中に白煙が漂う。霧のように散布されている為に相手がどうなったのかすら窺えない。

 

 

 

しかし、動く影が見えた。

煙の中で確かに、立ち上がるような人間の影模様が存在していた。

 

 

「………っ!」

「あれを受けて、まだ動くのかよ」

 

 

だが相手も、無事という訳ではなかった。

顔以外の全身を覆う純白の鎧には煤や傷跡がつき、片腕は完全に失くなっていた。後ろ側には腕だったものと思われる残骸が転がっている。

 

 

もう修復できない。既存であれば片腕を接続させていただろうが、それ自体が破壊されてしまった以上、タクトの戦闘行動は大きく制限されてしまった。

 

 

「……………ぎぃ、ぐっ」

「ようやく腕一本。それでも、押せているのは確かね」

「………互角、だろ?よく余裕でいられるな。それと、誰を押せてるって?」

 

 

異変が起き始めた。

背中に装着されていた金属の塊が分解される。機械のアームが動き出し、塊の奥から何かを取り出した。

 

 

 

腕だった。

先程彼が分断したものと、瓜二つの腕。

白い装甲を纏う機械の腕。背中の複数のアームがその腕を彼の肩の部位に近づける。

 

千切れていたケーブルが、息をしたかのように動き始めて、用意された腕の中へと入り込んでいく。そして、内側から再接続された。

 

 

戻ってきた腕を振り回し、馴染ませるように動かす。彼女達の咄嗟の連携すらも嘲笑うような、あっさりとした結果だった。

 

 

 

「お前らには、オレを倒せない」

 

 

息を呑んで此方を見据えてくる少女達にタクトは言う。笑顔を浮かべる様子もなく、本当に機械のような、冷たい表情で。

 

 

「オレはそのように、どんな敵をも倒すことを前提として設計された魔剣士。人間というものの限界を科学という領域で突破した存在だ。てめぇらみたいに、仲良しこよしで倒せる相手じゃあねぇんだよ」

 

 

 

 

 

 

「───それは、三人だけならだ」

 

 

短い声と同時に、新しい人影が着地した。それを目にしたタクトは、逆に笑みを浮かべていた。

 

 

余裕とは欠け離れた、どちらかと言うと達観に近いように見える。

 

 

相手はそんな事を気にしない。

周囲の惨状に目を細め、冷静に事実を口にしていた。

 

 

「例えお前がどんな切り札を有していたとしても、関係ない。響達と俺が同時に相手すれば、今のお前を倒せない訳ではないだろう」

 

 

そう言った無空剣は疲れすら見せない様子で、小さく息を吐く。溜め息に近いものだ。

 

 

「剣さん!」

「剣!襲われてた奴等は!他のノイズは!?」

「全て始末してきた。民間人をシェルターに連れていくのに大分時間を掛けた。だが、タクトの方は何とか止められてたようだな………特訓の成果はあったか」

 

 

簡単に言うが、現実はそう上手くはいかないだろう。

リディアン周辺の人々を地下のシェルターへと避難させる。ノイズと戦いながら、短時間でそれを実行したのだ無空剣は。

 

魔剣士の中でも最高峰と呼ばれるその強さ。シンフォギア三人とその一人がこの場に訪れた。もうこれで、虹宮タクトの勝つ確率は最低のものへとなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────本当に、そうかァ?」

 

 

しかし、純白の魔剣士は笑っていた。

追い込まれている筈なのに、ピンチである筈なのに、確かに笑みを浮かべていた。自暴自棄ではなく、自分の思い通りである事への喜びを示すような、違和感しかない笑顔を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────タクト」

「よぉ、お前が無空剣か。始めまして、いや久し振りか?話に聞くんならなぁ」

 

 

 

 

ここで久しく─────この世界では始めて、無空剣と虹宮タクトは相対した。かつての世界では親友同士であった二人が、今度は敵同士として。




人が死ぬ!描写的に二人だけど!良いOTONAが!!


それに名前すら無いキャラクターを登場させてるし!原作と路線がズレたり戻ったりしてるよぉぉぉぉぉ!!!


………………ふぅ。



ついでですけど、剣さんが序盤で名乗り上げてましたけど、あれノリで動いてたんですよね。まぁそのノリのせいで後々色んな事があるですが………




感想や評価、お気に入りして貰えないかなー。やる気が出るんだけどなぁー(情緒不安定)
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