予定では昨日投稿するつもりでしたが、部屋が荒れてたので掃除していました(汗)もう足の踏み場がねぇほどの惨状でしたし…………。
巨大な震動。地震と思われるような轟音を聞き、弦十郎は目を覚ました。視界に映ったのは先程までの二課の廊下ではなく、見慣れた本部内のものだとすぐに理解する。
「司令!」
『目が覚めたか、風鳴司令』
そう声をかけたのは、横にいる二人だった。厳密には一人と一体────オペレーターの友里あおいと、『ユニオン-A1』を操るノワールだ。
起き上がろうとして、僅かな痛みを感じる。痛覚の生じた腹部を見やるとそこには何重にも包帯が巻かれていた。それでも血が滲み出しており、応急処置であるのには代わりない。
「………博士か、すまない」
『別に気にする事ではない。 どちらかと言えば、私よりも緒川クンを労うべきだよ』
「いえ僕は…………肝心な時に動けなかったんですから。博士の助力があったからこそです」
時は少し、二課本部まで侵入してきたフィーネの策で弦十郎が腹を貫かれた時にまで遡る。一気に形勢逆転したフィーネは確信の笑みを浮かべながら、弦十郎から鞭を引き抜いた、直後。
『────緒川クン!』
『ッ!』
自らの名を呼び掛けに、倒れ伏してた緒川は飛び起きる。気絶させられていたにも関わらず、目覚めてすぐに装填をし終えた拳銃で何発か銃弾を撃ち込む。
フィーネ本人にではなく、彼女達が暴れていた廊下の天井を。
そこに『ユニオン-A1』は追撃というように榴弾を撃ち込み、大規模な爆発で廊下に巨大な瓦礫の山という臨時のバリケードを作ったのだ。
「………しかし、それで彼女もそう簡単に諦めるとは思えないが」
『現に諦めたよ、いや見逃されたと言うが正しいか。君の腹を貫いた時に制御装置を奪われてね、止められなくて申し訳ない』
「………………いや、全ては俺の責任だ。肝心な所で躊躇ってしまった。了子君、いやフィーネは俺達が止めるべきであったのに」
悔しそうに呟く弦十郎。同じように一同は顔を俯かせていた。しかし、機械越しに聞いていたノワールは一息をつく。
(─────確かに甘いのは事実。だが、そういうあなた方だからこそ、彼を託せられた。理解をしてくれると私個人としては嬉しいね)
ノワールにとって、弦十郎達────二課は感謝してもしきれない程の恩人の集まりだ。無空剣という青年を心から受け入れてくれたのだ、しかも同じ人として。
「それよりも………そこの子達は」
『リディアンの生徒だろう。二課の本部内に避難しようとしていたのを見掛けて保護してきたのだよ。それでも凄いものだな、ここまでノイズに襲われずに来るとは』
彼の視線の先にいるのは、リディアンの生徒安藤創世、寺島詩織、板場弓美の三人だった。今は同級生である未来の近くで不安そうに此方の様子を窺っていた。
強い子達だ、とノワールは『ユニオン-A1』を手繰り、感心したような動作をする。しかしその話を聞いていた三人の中でリーダーのような立ち位置である創世が手を上げてこう伝えてきた。
「あの……私達、助けられたんです。男の人に」
『─────何だって?』
「えぇ、確か不思議な人でした。寒いのか分かりませんが、分厚そうなコートを着込んだ………私達と同じくらいの人でした」
『分厚いコートに、君達と同年代くらいの………男?』
覚えがあるのか、『ユニオン-A1』はピタリと動きを止めた。それからして、機械の合成音声が小さな言葉を作り出す。ノワール博士の真剣な考え、その呟きをだ。
『………まさかとは思わんが、ノイズを倒していたのか?武器や、装備は?』
「は、はい!どんな風に倒してたかは見えませんでしたが………素手、でした」
思い当たったらしく、今度こそ言葉を失うノワール。彼はこの世界とは離れた自分の研究室で、激しく困惑していた。
『……………『彼』、までも? いや、そんな筈は………いや、エリーシャまでも来ているのだから可能性は。だがしかし、『彼』はそんな性格では無いと聞いていた。あのエリーシャと手を組むなど────』
様子の変わってしまったノワールの様子に怪訝そうな顔を浮かべる弦十郎。彼女達を助けていたのは一瞬無空剣だと思っていたが、ノワールの様子から違うとは判断できる。
それなら、彼女達を助けた人物とは一体誰の事なのか────
「モニターの再接続完了!こちらから操作出来そうです!」
『………う、うむ。すまない、少しだけ取り乱した』
作業を行っていた藤尭が報告を口にする。二課の端末をモニターへと接続させ、大画面に映像が移される。
映し出されたのは、すぐ真上での光景だった。山かと思ってしまう程、巨大な体躯を有した何か。月明かりが当たっていないのか、その全貌が見えずにいた。
相対するようにしているのは、それぞれのギアを纏った、剣、響、翼、クリスの四人。
「響!剣さん!」
「ビッキー!?………それに、あの人は!」
親友の名を叫ぶ未来に釣られ同じように画面を目にした創世は、かつて出会った事がある剣に瞠目していた。二課の大人達も最初は彼等の姿を目に通していたが、もう一つの存在に意識が向いた。
満月の光に照らされ────巨神はその姿を見せる。全身が純白で包まれた大型の怪物。人型に見えるが、上半身しか存在しない。それに頭部の造形からして、どちらかと言うと竜に近かった。
「な、何あれ!?あんな、アニメみたいなの!?」
困惑するような叫ぶ弓美。彼女の反応は最もだろう。自分の知る同級生と知人、そして有名人も何らかの鎧のようなものを纏っている。更に敵対してるらしいのは、巨大な竜のような怪物。現実には到底存在しないような異形なのだから。
「竜……?でも、それにしては……機械にも見えなくないですけど……」
「な、なら…………いや、そもそも、ビッキー達が相手してるアレは」
『────強化外装』
ポツリと、ノワールの呟きだけがその場に浸透した。全員の視線が、声を発した『ユニオン-A1』に集中する。だが、小型ドローンは気にした様子ではなかった。
『………ヤルダバオトめ、あんな物を実用化させていたか!剣クンですら扱えない、じゃじゃ馬だぞ!私達のいない間にそこまで進めて────クソ!やはりあの連中の事など信用出来ん!!忌々しい!想像するだけでも不愉快だ!!』
勝手に脱線して、勝手に怒りに悶える博士の様子を、『ユニオン-A1』は動きで表現していた。他の物に当たろうとはせずに、ジタバタと腕を振り回すその姿は小柄故に可愛く見えるが、動かしてるのは大人なのでそんなに特別な事ではない。
あまり動けない弦十郎は、困ったように息を吐く。普通ならそのままにしておくのが一番だが、博士の口から出た『強化外装』について知りたかった。
「博士、詳しく説明を」
『…………あれは「強化外装」。
魔剣士は
『しかし、現存する魔剣士の誰もが制御できた訳ではない。剣クンの「強化外装」も、今の彼には手に負えない程強力すぎる……………機械が人間を振り回す、その言葉を実現するほどには、ね』
画面に映る巨体を見据えたノワールの説明は続く。とあら青年と共に保護していた青年の変わり果てた姿に、思うところがあるのだろうが、それをひた隠しにして。
『あれは、ほぼ機械と化したタクトクンだからこそ出来たものだよ。普通なら出来はしない、そもそも危険すぎて実用化不可能とされ封印されていた筈だが……………なるほど、剣クンに対抗する為の切り札というのも頷ける』
「それじゃあ、響達は…………」
相手が凄まじい、異様なまでの実力があると。その事実に不安げな表情を浮かべる未来。安全な場所からでも、この重圧だ。近くで戦ってる彼等は、どれ程の緊張感と覚悟でいるのかなど、普通に考えて想定も出来ない。
『────魔剣とは、英雄と共にあるとされている。伝説の武器に選ばれた者達だ、英雄に相違はあるまい』
「……?」
『分からないか?なら分かりやすく説明すると、
英雄達は、そう簡単に負けない。何より、仁義や守る者のいない敵にはね』
◇◆◇
白い巨神は、ゆっくりと動き出す。胴体だけしか存在しない【アルビオン=カラドボルグ】は、その場で片腕を大きな動作で振り上げた。
目視で確認した剣は振り返ることなく、鋭い声をあげる。
「────散開しろッ!」
そう言った時には、それぞれの動きで距離を取っていた。剣自身も既にその場から離れていた。それを、
『──まとめて、砕けろォ!!』
寸前の地面を、剛腕が薙ぎ払った。それだけで発生した強風が、周囲の建物を吹き飛ばし、破壊し尽くす。数メートルなんてものではない、人が避難したとは言え、周囲の建造物の多くが蹂躙された。
───腕を振るっただけでもこの惨状。何よりあれはまだ魔剣の力を完全に引き出してない。ただ巨体による利点を利用しただけの破壊に過ぎない。
「ちくしょうっ!あの野郎、ここまでやるかよ!?」
「これ以上、奴を暴れさせる訳にはいかない!」
「ッ!待て!!」
目を見開き唖然とする雪音。翼は激励でも投げ掛けるような強めの声を放ちながら、飛び出していく。咄嗟に剣が制止しようとするが、彼女達は既に動いていた。
自らの歌を口にしながら、刀剣を振るう翼。巨大な体躯を駆使して【アルビオン=カラドボルグ】の頭部へと斬撃を叩き込む。
一発だけでは終わらせず、更には。
──【蒼ノ一閃】
巨大化させたアームドギアによる、刃の形状をした青色のエネルギーが直撃する。持ち上げられた顔、白い装甲に包まれた龍の頭部に狙いを定め、命中する。
直撃だ。
翼の本気の一撃。防御すらする事なく、あれはただ攻撃を受けた。
なのに、
「何……っ!?」
『ハハッ、流石はシンフォギア』
龍の双眼が光を灯す。白い装甲には傷がつけられていた。しかし、予想よりも小さな傷だ。掠り傷程度の、技を叩き込んだように思えない程の。
【アルビオン=カラドボルグ】は首を動かし、駆動音を鳴り響かせる。
『だが───効かねぇんだよ!今のオレにはなぁ!!』
笑い声と共に、内部にいるタクトは嘲り笑う。直後に、宙にいた翼は吹き飛ばされた。白い巨龍が何かをした訳でもない、実際巨龍は身動きすらしなかった。
だからこそ翼も見切る事が出来ず、避ける間も無く、不可視の攻撃を受けてしまった。
砲弾のように、勢いよく校舎へと叩きつけられそうになる翼を、剣が身をもって止めた。背中に展開されている二本の剣翼をアンカーのように射出し壁に突き立てるようにし、この場から離れないようにする。
それでも、不可視の攻撃を受けたのは変わりのない事実。彼は自分が何とかして庇った翼の身を案じた。
「翼っ!」
「……ぐっ、平気だ……無空は!?」
「生憎、そんな柔な作りはしてないから大丈夫だ」
それよりも、と剣は翼に目を向ける。無言で頷く彼女と剣は、既に不可視の攻撃を理解していた。
何故なら、何度か目にしていたり、直に味わっていたのだから。
「『アルビオン』の、衝撃波……」
「合体したからには特性を受け継いでるのは理解していたが、想像以上に威力が上昇しているな」
『アルビオン』に搭載された主要武装。反響させた音波を特別な機器で衝撃へと変換するという、科学技術による兵器の力。
本体であるタクトと接続、融合した事により、その武装はタクトの力となっている。魔剣、【カラドボルグ】の力で強化されている事には変わりない。
その間も、響とクリスは【アルビオン=カラドボルグ】相手に立ち回っていた。大振りで放たれる巨大な腕、それに一撃を何度も叩き込んだり、無防備となった顔面にミサイルをひたすら撃ち込んでいく。
そんな最中─────巨体故に、翻弄されている巨龍の中から、苛立つような声が聞こえてくる。
『────小賢しい歌だなぁ』
同時に白き巨龍の装甲が展開され、内側にあるものが露出する。───────スピーカー、それが八基程。丁度両肩の部位に武装として組み込まれていた。
攻撃に使えるとは思えない装備。しかし明らかに起動して、効果を発揮しようとしているのは確かだった。
『そんなもん、オレに聞かせるんじゃねぇッ!!』
耳障りな高音。思わず耳を塞ぎたくなるような、高い周波数を極めきったような音が。展開された複数のスピーカーから巨龍の周囲に、見えない空気の波となって生じていた。
異変は明らかだった。歌を奏でていた少女達にだけ、明確な変化が明らかになる。
───弱くなっている。歌う事で得られるフォニックゲインが、減少しつつあった。
明白な変化に戸惑う響。しかしクリスは───遠くから認視していた剣と翼も、その現象に気付いていた。
「その音波っ!微弱な波で、歌に干渉して………ッ!」
『対策くらい、講じてるってんだよ。間抜け』
歌というものは、数式に似てる。一つ一つの節を組み合わせることで一つの歌へとなるが、そうなる為には完璧でなければならない。
その間に、全く合わない数式が組み込まれてしまえば、それだけ歌というものは歪んでしまう。微弱な波で歌自体を揺らし、既存の力を引き出せないように。
『オレのマスターが一体誰だか忘れたか?────シンフォギアシステムの開発者!あの人に従ってるオレが、シンフォギアへの対処法を用意してねぇ訳もねぇよなぁ!?』
更に、剛腕が振るわれる。彼女達はすぐさま回避して攻撃に転じるが、全く効いてる様子は見られない。
どれだけ歌を奏でても、割り込まれるように高音が、歌を変質させる。純白の装甲に小さな傷を与える程度の威力へと貶めて、自分の好き勝手に暴れ、暴力を乱雑に振り回す。
状況の不利が、どこまでかは、誰でも理解できる。
だが、
「───シンフォギアを弱めてるだけなら!」
地を蹴る影があった。尋常じゃないスピードで残骸から残骸へと跳び、砲弾のように疾駆する人影。
視界の隅にそれを捉えた巨龍が腕を持ち上げる。下からゆっくりと振り上げ、自分の前へと突っ込んできた無鉄砲な相手を叩き潰さんとして────タクトは気付いた。
無空剣。
自分よりも遥かに格上。この鎧を纏ってなければ、近づく事の出来ない存在。青紫色に光る義眼を輝かせ、もう片方の眼で相手を射抜く。
「
回転しながら、剛腕を蹴りつけた。ただ脚力を込めた一撃は【アルビオン=カラドボルグ】の腕を大きく後ろへと弾く。
一瞬、無防備になった巨竜の顔に狙いを定める。首の部位に装着された小型の武装、機関砲台が此方に向くが、その横を、縦横無尽に舞う『
今度こそ、竜のような頭部に拳を打ち落とす。メギャッ!! と凹む音が響き、後方へとその体が弾かれる。
最強の魔剣士の一撃を受けたタクトは、巨龍は口を震わせて────
『───気持ち良いぜ、この感覚って奴ァ』
心地良さそうに笑う姿に、剣は舌打ちをしてすぐさま距離を取る。ダメージは与えられた。だが、奴にとってまだまだ許容範囲に過ぎない程だ。
倒すには、まだ決定打となる一撃が必要だった。
『そうだ、そうだよ。これだ、これがオレの求めてたものだ!絶対的、敵はこの世界全て!マスターの邪魔をする連中!そいつらを皆殺しにする、誰だろうと殺してやる!爽快だァ、満足そのものだぜェ!!』
「………ッ!」
誰かに必要とされたい。
それが
───本当にそうか?
無空剣は咄嗟にそう思ってしまった。あれが彼の思考そのもの、それは間違いないだろう。だが、それが純粋なものだと決定出来るだろうか? 何かが関係してるとは、言えるはずだ。
(まさか………)
嫌な予感が、脳裏を過る。
【魔剣計画】がタクトを復活させたのは、自分を狙わせる為。ならばただ復活させ、この力を与えるだけに止めるだろうか?
どれだけ力を与えたとしても、次のタクトが無空剣と殺し合う事など確実に有り得る筈がない。むしろ一度親しくしていた親友なのだから、友好的になる事を警戒するだろう。
ならば、殺し合わせるにはどうするべきか。
(奴等、その為だけに?オレを殺す、オレと戦わせる為だけに、
『だからよぉ』
白き竜の内部に、コアとしての役割を担う青年は笑う。
『どの道全員殺すんだ。まとめて消し飛ばしてやる、地下の連中も生き埋めになるくらいにはなぁ』
二本の巨腕が、地面を掴む。踏ん張るように、背中から射出したアンカーを、周囲の地面へと突き刺し、固定する。
何をする気か、そう思っていたが、答えは奴の本体が口にしていた。
『─────魔剣、絶技』
ガシャコン、と内部で何かが装填される。白い龍は口を開く、より大きく、盛大に。顎が外れたと思える程にして展開されたのは──────一本の虹色に光る剣と、それを囲むように並ぶ四つの砲門だった。
ゾワリ、と剣の中で嫌な感じが増幅していく。発生源は片目、グラムの残骸にして欠片の一部が大きく震えている。ズキズキと疼き始める義眼を押さえながら、彼は目の前の巨龍を睨つける。
『魔剣絶技』
魔剣士にとっての必殺技。ただの攻撃でしかないものもあれば、それだけで戦況を揺るがしかねない強力なものもある。
が、それは一般的な魔剣士だからこそ。『強化外装』を纏った魔剣士なら、その一撃がどれほどのものかは、想像するにも易い。
莫大なエネルギーを前に、剣は思考を加速させる。この場を、この状況を乗り越える最適解を答えとして出す為に。
(避けるのは不可能ではない…………だが、)
今の自分には、守るべき仲間と、人々がいる。ここで戦ってくれている大切な仲間が、地下で懸命に現状を変えようとしてくれている二課の皆が、同じように避難している一般人がいるのだ。自分だけ回避など断固として有り得ない。
ならば、どうするべきか。
選択肢に迷うことなどなかった。
「───絶技には!同じ絶技をッ!!」
つまり────相殺。
《
腕の装甲を組み換え、漆黒のブレードを展開する。『龍剣グラム』、人類ではなく、形の無い脅威を討ち滅ぼす為に実装された魔剣を。
剣が身構えた時には、【アルビオン=カラドボルグ】も、既に準備が出来ていた。
ここら一帯を吹き飛ばす、高火力かつ広範囲の殲滅攻撃を。
『───────カラドボルグ・ゼストッッ!!!』
龍の息吹のように、開かれた口から四つの光が生じる。膨大なエネルギーの塊。魔剣カラドボルグから最大限に引き出した力の奔流だった。
球体状にまで膨れ上がったエネルギーは耐えきれずに、爆散する。無論、四の砲門の中央に位置する、剣から放たれる虹色の極光によって。
同時に、五つの光が螺旋となる。捻れ、捻れ、捻れながら、一つの極光になろうと回転を繰り返す───剣の波動。
絶大な光の奔流が、街や周囲ごと敵となる障害を排除せんと迫り来る。あらゆるものを呑み込み、食い潰そうとする純粋でいて、禍々しくも感じられる光の波が。
「───魔剣絶技ィッ!」
そうはさせないと剣が一歩前へと踏み込む。右腕に展開された『龍剣グラム』を大きく振り上げ、深く、更に深く腰を落とす。
義眼が、紫色に妖しく輝く。同じ色のラインが彼の身体を走り、右腕の『龍剣グラム』へと収束する。ビキビキ、と血管が浮き出し、筋肉が増強され、右腕に全ての力が込められていく。
シィィィーーーンッ!! と紫光を纏いし剣が、黒曜石のような色合いへと変じる。刀身も通常の数倍、二メートル以上へと伸びて、横から何枚もの刃が展開される。
踏み込んだ地面が爆発し、地盤を揺るがす。それでも止まらず、限界にまで振り上げた『龍剣グラム』に全ての力を入れる。
目の前にまで迫ってきた光の奔流。視認出来る程のエネルギーの波を、
────【
たった一振で、薙ぎ払う。
真上からゆっくりと下へ。それだけの動作でも、伴われる力に比例はない。
虹色に輝く光を黒耀の剣で斬り伏せ、エネルギーの波に絶大な力を衝突させる。
魔剣と魔剣。
分類的には同一とは言い難い威力の攻撃が激突し、大地を、世界を震動させる。
その結果─────
───相殺。
それぞれの一撃は互いの威力を削り合い、それぞれのエネルギーと力を相手へと叩き込んだ。
『バッ………ガゴァ!!?』
白い巨体が大きく後退する。仰け反り、そのまま倒れ込みそうになる。強力な虹色の光を放っていた口内の砲門に、力の波動が叩き込まれ、防御不可能の衝撃に身を揺るがせた。
内側にいるタクトも、神経的なダメージを受け、小さな呻きを漏らす。だが、彼はまだ終わってはいない。
対して。
「───ぎ、」
凄まじいエネルギーの圧を浴びた剣も、無事ではなかった。一振を解き放った腕は引き千切れんばかりに押し戻され、形容しがたい痛覚が剣の脳髄に響いてくる。
【アルビオン=カラドボルグ】のような巨体ではない故に、その身体は勢いよく吹き飛ばされる。地面に叩きつけられ、そのまま建物の残骸へと転げ落ちた。
だが、その直後で。
自分を何とか引き留める手があった。お陰で壁に叩きつけられる結果は防がれる。
「助かった、響。ありがとう」
「は、はい!でも、腕が……」
「───あぁ、悪いが限界だな」
彼の右腕はまだ健在だ。しかし、それは時間の問題。肩の接合部は乖離しかけており、装甲も剥がれそうになっている。現に、今も神経経路が負傷しており、鈍痛が連続して響いてくる状態だ。
次あの火力の一撃を放てば、片腕を喪失することは間違いない。確信的に、今までの戦いで養われてきた勘というものが、そうだと理解していた。
瓦礫の山を盾のように隠れていた剣と響に、翼とクリスが合流する。【カラドボルグ=アルビオン】は追撃をしてこない。あれも、『魔剣絶技』を放った代償として、動きを大きく制限されている。
もう一度起動するには、それなりの時間が必要な筈だ。
「あたしの『イチイバル』や先輩の『アメノハバギリ』が全く効いてねぇ! 何なんだあの機体!」
「それが『強化外装』だ。少なくとも元のタクトの三倍はいってるだろう…………無闇に挑んだ所で、どうしようもない」
「ならば、『絶唱』しかない────」
全員が言葉を失い、翼に視線を向けた。この場の誰もが、その言葉を知っている。それがどれだけ強力で、危険性を秘めているのかも。
『絶唱』は、シンフォギアによる切り札。しかし魔剣士の絶技とは比べ物にはならない、命を賭けなければならない。適合率が高い人間でも、それを使えば死ぬとさえ言われる程。
…………かつて、風鳴翼と共に戦っていたという少女。天羽奏は薬物を使い何とかギアを纏っていた。その彼女が『絶唱』を歌った結果が──────死体を残さず、塵と消えた。
そんな危険なものを、使うわけにはいかない。だが、このまま【アルビオン=カラドボルグ】を放置していれば、地下で見守っている二課の皆を生き埋めにしようとするだろう。それだけは、何としても阻止しなければならない。
険しい空気の中で、剣が彼女達の名を口にした。突然の事に振り向く少女達の顔を見据え、彼は告げた。
「俺に、奴を倒す策がある。代償は軽いもんだが、失敗するとチャンスは無くなる。お前らに俺の命を賭ける───────だから、お前らの命を俺に賭けろ」
仲間の命と勝利。
天秤に賭けてどちらかを優先するなど有り得ない。どちらも掴みとって見せる。それが、無空剣という青年のやり方だ。
取り敢えず!お気に入り、感想評価!よろしくお願いします!
所で思うんですけど、フィーネといい後々の皆さん(ネタバレ防止)といい、何でまぁ面倒なまでに吹っ切れてんですかねぇ。まぁ、言葉や正論で止まらない敵達ですからね。伊達に何百年も生きてるBBAではな(殴殺