小説確認。
評価オレンジ色。
作者「ふぁ!!?」
…………くだらない話は止めておくとして、改めて皆様にお礼を。この小説を読んでいただきありがとうございます!これからも小説を書いていきますので、どかよろしくお願いします!
巨大化は負けフラグ。前々の話から言うべきでしたよね(バッサリ)
────一方で。
白い巨神は倒れたまま、起き上がろうとはしてなかった。無空剣からの一撃に応えたのはあるが、限界という事ではない。
内部、コアに当たる所で────彼、タクトは頭を抱えていた。背中や腕、ケーブルに接続された身体を乱雑に振り回しながら、顔を歪めて呻く。
「…………が、ァ………ぁあ、アァッ!」
見開かれた瞳孔が、何処かを見詰める。本来、彼の視界は【アルビオン=カラドボルグ】と同調している為に、映る光景は、巨龍の見渡す全てだ。
だが、今彼が視ているのはそんなものではない。頭の中に直接叩き込まれる映像。それは、記憶と呼ばれるものだった。
場面は、一つの集落に移り変わる。夜中の集落の外れ、そこで『彼』は小さな男女と話していた。
『───なぁ、兄ちゃん』
少年と少女、兄弟というのは何故か理解できる。少女は目尻に涙の跡を残し、少年へと寄り添う。対して少年は両拳を握り締め、泣きそうな顔をしていた。
その理由は、瞬時に光景を視ていたタクトの頭に入ってくる。
『あの時、あの人に酷いことを言っちゃった。妹を助けてくれたのに、傷つけた。謝りたい、ごめんなさいって伝えたい…………どうしても』
少年は、ある人物に心無い言葉を浴びせた。その人に助けられたという事を知らず、妹に手を出されたと思った故に、全てが勘違いであり、家族を守る為の行いだった。
しかし、ある人物は妹を助けていただけだった。何より、自分の事をよく理解していた。咄嗟に少年が吐いた言葉は、彼の心に深く突き刺さった。
────妹に近寄るな、化け物
少年が今も話している『彼』にとって、ある人物は親友でもあり、相棒でもあった。心無い一言は、自分達『魔剣士』にとって、人間とは違うと示す証明だった。
───馬鹿馬鹿しい、タクトはそう切り捨てた。今、自分が表情を浮かべてるとしたら、きっと明らかに顔をしかめていただろう。
無関心、興味のない────既に理解している旧知の事実故に。
しかし、この光景を覚えている『彼』は違う反応を示した。しゃがみこんで、少年の顔に目線を合わせる。その光景を視て、タクトは言葉を失った。
自分と同じ顔をした青年────彼は、心の底から嬉しそうに笑っていた。それも純粋に、自分には到底真似できない程に。
『大丈夫。相棒はオレよりも優しいんだ。きっとちゃんと謝れば許してくれるさ』
『………本当に?』
『あぁ、約束するさ。兄ちゃんに任せてくれ!』
これは、魔剣への同調による副作用。タクトは魔剣カラドボルグを一定のラインまで使い続けると、このような記憶を見る事が何度もある。
記憶と言っても、本人のであって本人のものではない、何とも曖昧な判定だ。しかしただ視るだけなら彼にとって何ら影響はない。ただの記憶でしかない、映像媒体なのだから。
「───違うッ」
しかしタクトは、その光景を否定する。それが自分なんて、この記憶の持ち主が、自分と同じなんて肯定したくなんてなかった。
受け入れてしまえば、自分が惨めに見えてしまうから。何者かに拘って、それ以外の事を考えられないタクトが憐れになってくる。
「これはオレのものじゃねぇ。オレじゃあねぇんだ!死人、故人!オレの前に死んだ奴の記憶だろうが!抹消された記憶が、何も為せなかった奴の思い出が、未練がましいメモリーが!このオレを惑わせてくるんじゃねぇよッッ!!!」
ただ別の
だが、この景色を視ていた青年は───自分だ。虹宮タクトという名前を持つ個体であり、前のタクト。他ならぬ自分自身であり自分自身ではない存在、
────羨ましい、そう思った。思ってしまった。自分という在り方を気にする事もなく、ただ善性を信じて、誰かにその手を差し伸べる事が出来る。
何故、ここまで歪んでるのだろう。同じ名前を有して、同じ姿をしているのに、人格は、心は───『彼』の比にはならない。
『自分』を求め、渇望する………何とも浅ましい自己顕示欲でしかないのだ。
「………………落ち着け、落ち着けよ虹宮タクト。お前は誰だ?マスター フィーネの、唯一にして忠実な
自分に言い聞かせ、落ち着こうとする。
「全てを潰すそれが、オレの──────?」
言って、タクトは目を細めた。自分の目の前に360度、全方位に浮かぶ画面。【アルビオン=カラドボルグ】の展開された視界だ。まだ何とか形を残したリディアンの校舎の残骸、その屋上に青年の姿があった。
無空剣でも、シンフォギア装者でもない。
ロングコートに体を包み隠した青年は素手で、何の武器も鎧も纏ってはいない。だが、機械的に示される画面は、その青年と捉えた途端に、けたたましい赤色へと変化した。
つまり、重要警戒のセンサーを。最も注意すべき障害であることを。
「──────────アイツは」
自らの思考が加速していき、相手の情報を正確に知る。その瞬間、タクトも巨龍の体躯を動かしていた。口を大きく展開して、『魔剣絶技』の用意をしておく。
相手は、タクトにとって最重要に警戒すべき力を有する。それもシンフォギア以上に…………或いは、無空剣以上に。
そのタクトの警戒を機械越しに受け取ったのか───青年は巨龍の方を見上げてきた。
「───っ」
それだけで、気圧される。引き締めていた全身が、圧倒的な敵意によって、更に固く締まる。言葉を返すことも出来ずに、乾上がった喉を振るわせることしか出来ない。
しかし青年は鼻を鳴らすと、タクトから視線を変えた。そして、最早原型のない屋上の瓦礫に背を預けている。無関心な様子、興味など微塵も見られない。その動作に、タクトは彼が何を言いたいのか、その意味を理解した。
(…………“好きにしろ”、見学のつもりか?脅威にならないのなら、構わないが)
勿論、鵜呑みにする気はない。油断した隙に後ろから攻撃をされる可能性も考慮している。そうされた場合、対処する用意はしておく。
そして意識を青年から外した途端、
───Gatrandis babel ziggurat edenal
「…………なんだ?」
歌が、聞こえてきた。周囲に並ぶ瓦礫の山から。歌を奏でて自分の力を上げてる、タクトは瞬時にそう判断してかかった。
だが、その歌詞は聞き覚えがあった。何より、わざわざ隠れたのに歌を歌う理由が分からない。自分が
その疑惑は、次の歌詞を聞いた時に晴れた。いや、より分かりやすく言うと、気付いた。
───Emustolronzen fine el baral zizzl
「まさか─────絶唱!?」
(しかもこの波長や声音…………風鳴翼か!?)
脳内から、その情報をピックアップする。かつての『ガングニール』適合者 天羽奏が最後に使ったわざであり、彼女の命を奪った直接的な理由でもある。
絶唱は、あまりにも強力すぎる技。絶大なエネルギーの放出によるバックファイアで、装者本人を殺す刃にも成り得る。
故に。命を使う程の技だからこそ、タクトはシンフォギアを警戒していた。万が一、絶唱を受けてしまえば、どうしようもないから。
(だとすれば不味い!あれだけは、一撃でも喰らえない!!)
【アルビオン=カラドボルグ】はシンフォギアへの対抗策を用意していた。歌に干渉し力を軽減する超高周波、音を震動させ衝撃へと変換する装置。しかし、それも『絶唱』を使われてしまえば意味を為さない。
たった一人の『絶唱』でも、装甲を引き剥がされる可能性がある。そうなってしまえば、タクトは完全に敗北してしまう。それはシンフォギアの適正のある翼のものだから、敗北の可能性が一段と増えてしまう。
(ならばッ!歌う猶予すら残さず─────一撃で仕留めるのみ!!)
決意を固め自らの腕を───ケーブルを介して、巨神の右腕を動かす。歌の響く方向、発生源を特定して、震動を集中させる掌を翳す。音波や衝撃を大きな掌へと収束させ────
歌の発生源を、吹き飛ばす。シンフォギア装者に大ダメージを与えられるように、最大限にまで高めた衝撃波を、瓦礫の山を巻き込む形で放つ。
白い巨体が大きく揺れる。自らの放った衝撃波に圧倒されたのではない。【アルビオン=カラドボルグ】の衝撃収束砲による反動。機体全体が大きくブレるからこその震動だった。
そう想定していたからこそ、気付けなかった。
ザンッ!! と。
【アルビオン=カラドボルグ】のうなじが、一瞬で切り裂かれた。
「な、にィ───!??」
巨体と神経をリンクさせているタクトは、目を白黒させた。首を斬られたような激痛が脳にガンガンと響いてくる中、彼は攻撃をしてきた下手人を慌てて見つけ出そうとする。
時間はそう掛からなかった。相手は巨体のうなじの部位に立ち、此方を見下ろしている。
問題は、自分に傷をつけた相手の正体だった。
「──ようやく、一撃が効いたな」
(風鳴…………翼!!)
剣先を向ける彼女に気圧されるように息を飲むタクト。何故近づけた、と疑問を抱いたが、瞬時に答えを得た。
衝撃波を放った直後、巨体の全てを揺るがす程の反動によって、認識機能が接近してくる彼女を確認できなかった。だが、同時に新たな謎が生じる。
「馬鹿な!?奴は今しがた絶唱を歌っていた!オレの後ろに回り込むチャンスなど無かったはず!」
そう、タクトは間違いなく彼女の絶唱を耳にした。間違いなどある筈がない、彼は敵対する装者三人の声音やシンフォギアの能力などを脳内にインプットしてある。一番速く、彼女だと気付けたのもそれが理由だ。
だが、風鳴翼は【アルビオン=カラドボルグ】の首を取ろうとしていた。瞬時に後方に回って死角を取るなど、今の彼女の身体能力でも不可能に近い。
そう思っていた矢先。
自分が吹き飛ばした瓦礫の山から、出てくる影を見た。
「無空、剣……ッ!?」
出てきた青年の姿に、タクトは更に困惑を大きくする。彼が出てくるのはまず有り得ない。絶唱は装者でしか使えない。認めたくはないが………百歩譲って、タクトが他の誰かの歌と聞き間違えたとして、それは女性であることが大前提だ。男である無空剣が彼女と瓜二つの歌を歌えるなど─────
だが、彼の視界は彼の姿や状態を、より正確に映し出す。そこに浮かび上がる彼は─────自らの喉に手を添えていた。自らの声の調子を整えるように。
「まさか───シンフォギアの絶唱を真似たのか!?」
通常であれば。
どれだけ練習しても、他者の声を真似ることなど出来ない。それを聞き取るのが機械ならば尚の事だ。機械は人間よりも精密かつ厳重だ、どんなに似せていたとしてもすぐに違和感を理解する事など容易い。
ただし、例外が一つ。
同じ───より高性能の機械ならば、誤魔化し切れるのではないか?
(まさか、奴等は『アレ』を─────ッ!?)
気付いた時にはもう遅い。
フッ……と。
彼の全方位にある光の画面が消失した。視覚、巨龍と接続している神経の一つが強制的に断絶された。戦闘では重要とされる『視力』を、彼は失ってしまった。
『────奴の視覚、それを潰す事が出来れば、奴の行動を制限する事が出来る』
『視覚………目って事ですか?それなら何とか出来るかもしれませんけど』
『あの巨体の目を潰すのは無理だ。それに、潰した所で予備の眼がある可能性が高い…………だが、唯一の例外が一つだけある』
『例外?あんなバカみたいにデカイ化け物にか?』
『あの巨体でも、構造は魔剣士と………人間に似せているのは大体把握している。
狙うのは首筋のケーブルだ。巨大な脊髄ごと切り捨てろ、そうすれば奴の視界は完全に遮断される。何より、鎧との接続も弱まる』
翼の振るうアームドギアによって首筋を切り裂かれた巨体は前屈みに倒れ込んだ。脚は無く、上半身しかない体型だが、完全に倒れずにいる。
それでも、動きは鈍い。翼によって視覚を潰されたのは、充分効いていたらしい。
「───やった!」
「いや!まだだ!タクトはまだ動いているぞ!」
計画通りに動きを制限出来た事に喜ぶ響だが、剣や他の二人も同じように警戒をしていた。
相手の視覚は遮断した。奴はもう、自分達を捉える視力を得ることが出来ない。万全な状態で戦っていた兵士も、自らの眼を潰されれば相手を狙いようがないから。
『視覚を、どうにかしたから………なんだ』
ユラリと、巨龍は身体を揺らしながら起き上がった。
『見えなくても……ッ!てめぇら全員をブチ殺してェ、木っ端微塵にしてやる事も出来んだよクソがァ!!』
怒りの声と共に、双対の砲撃。
機龍の両腕、その掌から放たれた白き極光は、分裂し、分裂し、分裂する。
光の雨が、周囲の瓦礫諸とも消し飛ばしていく。だが、狙いである彼等を捉える事が出来ない。分裂して迫る閃光は徐々に増え続けていく。
それでも、彼女達に当たることはない。飛来する光を切り捨て、撃ち抜き、ただひとすら打倒していく。
「出し惜しみをするな!全力をぶちかませッ!!」
迫りくる弾幕の全てを撃ち落とした剣が、そう叫ぶ。彼の声を聞き届けた二人は、迷うこと無く各々の武装を身構える。
「覚悟しろ!貴様をその鎧から引きずり出す!!」
「正真正銘!全力で全部のミサイルだぁっ!歯ぁ食いしばって噛み締めやがれぇっ!!」
剣戟と、爆炎が炸裂する。至近距離から、巨龍に集中砲火を浴びせていく。
抵抗は出来ない。したとしても、相手が見えないから攻撃のしようがない。歌を妨害できない。先程の翼の奇襲で首の回路諸ともスピーカーへの接続も途切れてしまった。
つまり、ジリ貧。
タクトは、【アルビオン=カラドボルグ】は、彼女達の全力の猛攻を、その身を呈して受けるしかなかった。
『ぐがァァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!!』
本体である青年の、苦痛の声が響く。今、彼を襲うのは肉体を破壊されるような想像を絶する痛みだ。例え魔剣士と言えど、機械の身体があったとしても、その痛みは本物だ。制限できる筈も、遮断できる筈もない。
そもそもの話、【アルビオン=カラドボルグ】の構造に関して話しておく必要がある。
奴はあの巨体と神経を接続している。意識も痛覚も、人体に備わっているであろう仕組みの多くを、機体に繋げているのだ。
だが、もしも。
想定範囲とされているダメージが蓄積されれば、機械で判断できる損傷を受け続けてしまえば、機械は痛覚を与える処理を出来なくなる。つまり、
「──奴は鎧を剥がさざるを得なくなる!」
直後、白い巨龍に変化が生じた。装甲を照らしていた純白の発光が消えたかと思えば、鋼の装甲がカシャカシャと戻っていく。巨体がみるみると削られ、小さくなっていく。
巨体を作り出していた無数の鋼鉄の残骸は地上に落下していく。残ったのは、自律起動する『アルビオン』と、それと繋がっていたタクト本体だ。
纏っていた鎧を引き剥がされ、生身となってしまったタクト。もう、彼は【アルビオン=カラドボルグ】を纏えない。彼を、強力たらしめていた鎧は、限界となったダメージにより分離されてしまっている。
空中に解放されたタクトは気を失ったように身動ぎはしなかった。しかしそれも一瞬。瞳に翡翠色の光を宿した青年は、大きく歯を噛み締める。
「──────ッッッ!!! むかつくンだよォ!!綺麗事ばかりの、正論ばかりの、くだらねぇ常識しか言えねェ!!偽善者どもがァ!!!」
お前らはそうやって、否定する。
自分達の望む考えを、思想を認めようとしない。だからこそ、分かり合う事など出来ない。遺伝子単位で生じる拒絶と否定で、他者を認めない。
それが歪みだと何故分からない?手を取れば、言葉でなら受け入れられる。それがかつては出来た、そうならなかったのは───創造主が与えた呪いのせいだ。
それが、それのせいで、どれだけ世界が歪んでることか。それのせいで、あの人がどれだけ苦悩した事か。決して理解できない、自分にも、敵であるお前達にも。
理論的にはそういう意味合いがあるのは事実。だが、その叫びには私情があるのは否定できない。ある、ほんの一つだけの、私情が。
───単純に、気に入らなかった。
自分と生い立ちの違う人間が、認められなかった相手がいた人間が、元々敵であった人間が────そして、人間とは決して言えない構造の存在が、互いに手を取り合って、今自分に立ち向かってきてる事が、無性に気に入らなかった。
自分は、そこに居られないというのに─────
「か゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああああああああ!!!」
鉤爪のように開いた手で、自分の胸を貫く。部品やパーツが散らばるのを無視して、内側に取り込んだ剣を引き抜いた。
その剣を───握り潰す。
残骸を手の中に取り込むと、片腕が肥大化していった。いや、違う。巨大化した巨龍の骸、既に乖離して離れた『アルビオン』を除く、機械と鋼の残骸。
そして、彼の腕が巨大な剣へと化す。虹色の光を放ちながら、様々な鋼で形成された、禍々しい刃。【カラドボルグ】という名には相応しくない、
それの姿こそが『魔剣』と呼べるという、おぞましい程の狂気と憎悪を体現した最後の武装。内側から虹色の光を放出し続ける巨大な手のような狂刃を振るい、タクトは喉の奥から吼える。
「オレの前から消えろォォォォォォオオオオオオオオオオ!!!」
乱暴に、タクトは肥大化した片腕を振り回した。消し飛び、切り裂かれ、薙ぎ払われる。今までの戦い方とは違う、暴走したようにタクトはとにかく暴れ回る。
そんな彼の暴虐に乱入するように剣は、彼の顔を蹴り飛ばした。
「ぎぃ……ッ!」
しかし、タクトは仰け反る事無く迎撃に躍り出る。巨大な凶刃をとにかく叩きつけるようにして振り回して、破壊を引き起こす。直撃しなくても良い、何せ衝撃波を起こせば相手は離れなくてはならないのだから。
眼が、合う。
吹き荒れる砂塵を間に、視線を交差させていた───かつての親友同士。けれどそれは肉体の話、その中にある魂は既に他者となっている。故に、彼等は別人でしかない。
それなのに、或いはだからこそか。
「「魔剣絶技」」
二人は同時に構えを取っていた。
魔剣士にとっての切り札。全力の必殺にして、戦況を反転させる程の強力無類の技を。
右腕に『龍剣グラム』を展開した剣は、ダァン! と前に踏み込んだ。黒耀の刀身から、神秘的な紫色の閃光が煌めく。魔龍を殺したと言われる魔剣、グラムの真価を示すように、刃そのものが唸りをあげていた。
禍々しい刃からは、虹色の光が灯る。けれど、それは人の心を暖かくするような光ではなく────全てを飲み込む、純粋な火力としての光だ。
二人は片腕に光を溜め込み、抑え込む。莫大なエネルギーを、それぞれの腕へと収束させ、相手へと狙いを定め
。
後は、解き放つだけ。
その合図は、瓦礫の山が崩れ落ちた音となった。
「《
「カラドボルグゥ!!
黒耀の紫閃と、虹の狂刃が衝突する。
弾け、食らい、抉れる。ぶつかり合う直前、エネルギーの奔流はあらゆる障害物全てを薙ぎ払い、相手を殺そうと迫り、同等の力と衝突した。
無空剣は、黒耀の龍剣を貫くように放ち、タクトはそれを喰らうように凶刃を敢えて正面から叩きつける。火花と同時に果てしない程の力が生じる。
ビキ、ガキンッ! と。
刀身にヒビが入り、右腕が軋む。限界だ、これ以上力を出すと剣は片腕を失うことになる。
だが、そうしないとタクトを押し返せない。親友の姿をして、自分を求めなければいけなかった『彼』を止められない。
────守りたいと思った人達を、今度こそ守れなくなる。
「はぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ああああああああああああああああああああああああああああああああああっっっ!!!!」
そして─────剣の刃の方が打ち勝った。
双方に起きた効果としては、破壊。タクトは片腕に纏った鋼の凶刃を失い、剣は右腕を喪失した。
両方の片腕を分解された破片が飛び散る中、彼等の行動はそれぞれ違った。
片腕を押さえた剣は苦痛に顔を歪めながらも、剣は口を開く。そこから大きく叫んだ。
「今だぁ!響っ!!」
「────っ!!!?」
今度こそ、タクトは慌てて距離を取る。すっかり忘れていた。本来何より警戒すべき相手だった、自分を一番不愉快だと思わせた相手だったのに。
彼女は無空剣の後ろから飛び出してきた。まるで彼から、最後にやる事を託されたように。
「立花、響!!」
主神の槍、ガングニールを纏いし少女。タクトはその名を叫ぶ。後退したが、それでも今の自分が無防備な状態だと気付く。
鎧から引き剥がされた時、無空剣との魔剣絶技、今のタクトのダメージは限界まできている。彼女の拳を受ければ、ここで倒れてしまうのは確かだ。
(どうする!?どうすればいい!?コイツを、この女から気を反らせる!?)
命乞いも駄目だ。彼女は覚悟が決まっている、そんな事をしても彼女は武装解除するだろう。自分を無力化させるのが先かもしれないが。
(一瞬で良い!立花響を油断させ、奴等全員を勝たせない手段は─────
─────ある)
そこで、脳裏に浮かんだ勝率を吟味した。誰もが想定できない、出来たとしても止められない確率での勝敗。
彼はそれを選択することを決めた。躊躇いもなく。
「アルビオォォォォォンッ!!一撃だ!一撃でも良いからとにかくぶちかませ!最大出力の砲撃を地面に!地下の連中を巻き込む形でなァァァ!!!!」
そう叫んだ瞬間、目の前の少女の動きが止まった。ハッとした様子で視線をタクトから、『アルビオン』という兵器に向けようとする。
それ自体がタクトの策であった。そして既に、響はその策略に陥ってしまっている。彼女の動きに、タクトはニヤリと口角を緩めた。
(意識が向いた!───もう遅い!てめぇはオレの仕留める隙を失ったァ!今、左腕は既に武装を展開している!)
勿論、例の指示は嘘ではない。彼の命令を受けたアルビオンは最大出力の砲撃を地面へと放つ。それで全員は倒せなくても、地下への損害は大きくなる。
地盤が崩れ、彼等は地中に生き埋めになる。例えこれでタクトが負けても問題ない。タクトを倒したとしても、守るべき人達を守れなかった時点で、彼等にとって勝利ではなくなるのだから。
(誰も防げねェ!アルビオンは地下の連中を生き埋めにしてェ、オレは立花響を確実に殺す!これで良い!全員は無理だが、マスターの邪魔者は死ぬ!喜べ立花響!てめぇも大事な奴等と同じ………あの世行きだァ!!)
しかし、
「…………………………………………は、?」
いつまで経っても、目の前の光景は変わらない。予想していた惨劇は、何故か幕を開けない。想定通りなら地盤が砕けている筈なのに。
一瞬の隙を狙い、響を殺そうとしたタクトはその猶予を無視してしまう。最大のチャンスを、自分が作り出した好機を、失ってしまった事も頭にはない。
『アルビオン』は、動いてない。
確かに命令は下した、あの兵器はそれを聞いていた。間違いのない事実。ならば、何故あの兵器は命令を実行していない─────?
「────そうか」
諦めたように、笑う。今度こそ、呆然としてしまったタクトに、響は動き出し、拳を握り締める。
タクトは『アルビオン』を見て、響は見る。そうして、ただ笑う。笑うしかなかった。
その瞳は、何を視ていたのか────彼しか知らない。
「『貴様』までも………、このオレの邪魔を────」
鈍い音が響き渡る。鼓膜に、そして彼の脳内に。自分に叩き込まれた一撃に、タクトは吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。
部品が飛び散り、身体が軋む。地面に激突した衝撃ではなく、自分を殴り飛ばした感覚を受け、虹宮タクトは今度こそ意識を落とした。
「…………終わったか」
片腕を紛失した剣がそう呟いた時には、響達が駆け寄って来ていた。
「剣さんっ!」
「ばっ、おい!本当に腕が無くなってんじゃねぇか!?何、平然としてんだよ馬鹿!」
響とクリスは心配そうな声をあげる。気にするな、とは言っても通じないと思い、悪いなと謝礼を述べる。
三人の中で特段に冷静な翼に、声をかける。
「………タクトの方は?」
「意識はないな。騙してるようにも見えない、少なくとも今のところはあのままだろう」
倒れたタクトの姿を横目に、剣は語る。
シンフォギア三人の本気の猛攻、そして無空剣の魔剣絶技。あれを受けても尚タクトはまだ動いていた、強化されていたからか。或いは、それを上回る程の執念か。
「それじゃあ早く司令と合流──────」
ジロリ、とタクトは隻眼を動かす。唯一健全な瞳で、何処かを睨み付けた。
「───とは、いかないな」
三人もそれに続いてその場所を見ると、新しい人影があった。肩の接合部位をもう片方の手で押さえる剣は、相手の正体を口にする。
「櫻井了子…………………いや、フィーネ」
黄金の鎧、ネフシュタンを纏う女。タクトを配下として動かしていた、今回の騒動の全ての元凶。彼女は四人の視線を受け、ただ妖しい笑みを浮かべるだけだった。
次の話は山場、この章で本気の山場だぞ!!
……………胃が痛ェ、死ぬほど辛いぃぃ…………所詮はオリジナルだから原作のあのシーンには届かない。それは想定済み!だけどさぁ……………(悩ましい溜め息)
あの人、無茶しすぎだな。自分が魔剣士だからってボロボロになり過ぎてるよなぁ。