戦姫絶唱シンフォギア 神装魔剣   作:虚無の魔術師

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一週間過ぎてて謝罪します。言い訳しますと何書こうか考えてたのと遊んでました。番外編にしてはギャグ要素が少ないですけどよろしくお願いします!!!


絶唱しないシンフォギアみたいな幕間 2

先史文明の巫女フィーネが起こした月を破壊しようとした大規模な騒動────白と赤、二体の怪物が出現した事から双竜事変等と呼ばれ掛けていたその事件は、各国の談話によって“ルナアタック”と呼ばれることなった。

 

 

 

一般的にはその事件は()()()()()に繋がるだけで済んだが、国際的にはそうは留まらない。

 

 

 

日本国内で引き起こされた事件。その全貌はあまりにも規格外、常識など遥かに越えていた。

 

 

フィーネの配下であった魔剣士(ロストギアス)虹宮タクト、彼の纏う【アルビオン=カラドボルグ】という、理論上の兵器を超越した存在。想定では日本国の戦力では勿論、米国の軍事力を以てしても脅威と呼ぶしかない敵だった。

 

 

それを打ち倒したのはシンフォギアという、ノイズという自然災害への対抗策とされていた兵器を纏う少女達。そして、敵と同じ魔剣士(ロストギアス)の一人である青年。

 

 

 

米国を主体とした各国は日本に対して────日本が秘匿してきたシンフォギアシステムの完全開示と同じく黙秘されている青年についての情報を要求してきた。しかし、それだけでは終わらない。他の国とは違い、米国は更に要求を増えそうとしていたらしい。

 

 

もしその要求を聞き入れなければ、日本に対する対応も考えるという─────明確な脅しをかけ、日本はどうしようもなくその要求を認めるしかなかった。

 

 

そんな風な政治的な陰謀が動く以上、“ルナアタック”の立役者である四人には命の危険がある。それ故に、だろうか。彼等の身柄は今現在、行方不明とされていた。………………実際の所は、全ての問題が解決するまで自粛という事なのだが。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

───一つの惨劇を見た。

 

 

普通では有り得ない────しかしこの世界ではそうではない、特殊ではない悲劇を。

 

 

少なくない人間の集まりが、ノイズに襲われている光景。塵となって消えていく大人の残影に、最後までその場にいた一人の少女が手を伸ばす。

 

 

 

思わず、その手を掴もうとした。何の躊躇も迷いもない。少女の泣き顔、絶望した顔を見て、咄嗟に大丈夫だと励ましてやりたかった。

 

 

しかし、その手を掴んでやることも許されない。今の自分には体がない、だからこそ動いても意味がなかった。大切な人を失い泣き叫ぶ少女を、どうしてやる事も出来なかった。

 

 

 

そして、世界が暗転する──────

 

 

 

 

 

 

『あたしの家族の仇は、あたししか取れねーんだ!あいつら───ノイズは全部!あたしがぶち殺してやる!』

 

 

『…………例え、地獄に堕ちることになってもか?』

 

 

『奴等を皆殺せるのなら!あたしは望んで地獄に堕ちる!』

 

 

 

───何だこれは、と思う。誰かの記憶が、思い出が、映像として頭の中に叩き込まれる感覚。

 

 

 

(あぁ、そうか)

 

 

これは彼女の、■■■の生き様なんだ。自分が知る中でも数少ない英雄─────様々な人の心に意思を与えてきた少女。その覚悟と決意は、少なからずだが理解はしている。それでも、絶対とは言えないが。

 

 

 

色んな光景が焼き付けられる。ノイズへの復讐の為、ギアを纏う為、文字通り血反吐を塗れてまで進もうとする痛々しい姿。

 

 

多くの戦いの中で、復讐以外の何かを見つけ────本当の笑顔を取り戻し、共に戦っていた相棒との幸せそうな生活。

 

 

 

 

 

だが、それは終わりを迎える。

当然の帰結であった。彼が知る少女は既にこの世にいない。つまりこの物語には終わりが存在する。少女の進む人生には、唐突な幕切れが存在していた。

 

 

 

 

 

暗転したその先で、明かされる光景────

 

 

 

『───おい!死ぬなぁ!』

 

 

物語の主である少女は武器を放り捨ててまで、誰かに駆け寄る。それを見て、呼吸が止まりかけた。少女が声をかけている相手は本人からすれば知らない人物だったが、この場に於いて無関係である自分は知っている。

 

 

相手は、今にも死にそうだった。胸元にナニかが突き刺さり、溢れ出る血が止まらない。今にも死にそうなのは目に見えていた。現に、相手の眼から光は消えていき、力尽きそうになっているのが分かる。

 

 

 

 

『─────生きるのを諦めるなぁ!!』

 

 

だが、少女は諦めていなかった。死が間近であろう相手に強い活力に満ちた言葉を投げ掛ける。

 

 

 

そして、彼女は最後に歌を歌った。

死にかけた自分よりも年下の少女を助けて、かつこの場を乗り越える事が出来る────胸に浮かび上がる歌を。

 

 

 

 

それこそが──────少女、天羽奏(あもうかなで)の結末だった。誰かを助ける為、彼女は心の底から歌を歌うことにした。

 

 

しかし彼女が歌ったのは、『絶唱』だ。シンフォギア装者の命を賭けた切り札。適合率が高くても、『絶唱』を歌えば死ぬ可能性が高いくらいだ。元々強引にシンフォギアを物にしていた彼女の体は、跡形もなく消え去った。

 

 

 

 

とてつもない情報量、しかし限界を迎えることもない。脳が焼き切れる痛みや感覚も何時まで経っても来ない。代わりに訪れたのは─────自分の意識が暗闇に染まっていく、何度か感じた事のある喪失感。

 

 

 

───戦姫の朽ち果てる光景だけが、その内側に深く浸透していた。染み着くように、沈むように。本人の意図とは関係なく、心の奥底へと─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───無空剣の意識は、真っ白な世界にあった。それ以外の色は何一つ存在しない、正直な話眼に悪いとは思うだろうが、実際にはそうではない。そもそも、この世界であるのは意識のみだ。彼もある程度はそれに気付き、深い考えに囚われないようにする。

 

 

 

(夢、いや違うな。魔剣による…………深層世界への干渉か)

 

 

深層世界への干渉、より正確には自己意識の浸透化──死んだ同胞との魂と遭遇するという事案。魔剣士の中では、少なくない話でもある。

 

 

 

しかし─────

 

 

(さっきまでのは、何だ?)

「………記憶、か。前の俺の時みたいに………一部を再現して見せたのか?俺に、見せる為だけに?」

 

 

だが、あの記憶に覚えはない。あんな過去、悲痛にも思えるような物語は、無空剣の脳内メモリーに存在していないのだから。

 

 

何より、あの記憶には自分の見知る人が少なからずいた。司令や二課の面々、何より共にいる事が多かった少女────風鳴翼の存在が、この記憶の持ち主の正体を理解させた。

 

 

 

 

 

「─────“天羽奏”」

 

 

彼が口にしたのは、一人の少女の名だった。風鳴翼の相棒……………二人だけのアイドルグループの一人という事ぐらい、そしてシンフォギア装者である事が、剣の知る天羽奏だ。

 

それ以外の話は剣も知らない。そもそも、彼は天羽奏に会ったことがない。──────この世界に来る二ヶ月前から、彼女は亡くなってしまっていたのだから。

 

 

ならばこそ、抱くべき疑問が脳裏に浮かび上がってくる。

 

 

「何故、この記憶が出てくる?俺にこれを見せる理由は…………なんだ?」

 

 

意図が、理由が、答えが分からない。こういう事をするのには何か訳が、意味がある筈だと、青年は結論を決めるしかない。何故なら意味がない事をやるなどとは想像もできない。

 

 

しかし、彼がその理由を知るよりも前に、誰かの声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────やぁ、久しぶりだね。こうしてアンタと話すのは」

 

 

真後ろからの声に、剣は即座に反応した。声の主は、あまりにも目立っている。真っ白な空間の中には見られない、そんな大胆な色合いが彼の目に止まる。

 

 

 

腰まで伸びたボサボサとした赤い髪………寝癖や整える気がないと言うよりも、そういう髪型なのかもしれない。年齢は剣と同年代くらい、それにしては元気そうな風貌の少女。

 

 

服装は普通のものではない。オレンジ味た赤色と白、黒の三色で構成されたギアインナー。その姿には違和感どころか、既視感しかなかった。

 

 

響の纏うガングニールと同一。それらの特徴を踏まえて剣は確信した。目の前にいる少女はあの記憶の持ち主である、“天羽奏本人”だと。

 

 

しかし、彼は普通に穏和な人間ではない。突然現れた天羽奏に対して、並々ならぬ警戒を注ぐ。この場所が何処かも頭に入れずに、戦闘態勢を取っていた。

 

 

 

 

「待て待て、あたしは何かしに来た訳じゃないよ。どちらかと言うと、話したかっただけさ」

「………」

 

 

そんな彼の敵意に対して、両手あげながら言う天羽奏。警戒しながらも、その言葉が本気であると理解した剣は少しずつ気を緩めていく。

 

 

「………話って?」

「普通の話だよ、ほら例えば……………翼の事とか、詳しくさ」

 

 

嘘、とは思えない。

そんな風に考えても警戒を解かないでいる自分にどうしようもない程の呆れが込み上げてくる。だが、実際に表面上に出す事のないように、そんな重い気持ちを振り払う。

 

 

 

「別に構わないが………それで?具体的に何を聞きたいんだ?風鳴翼に関する事なら、特に大きな事は無いが」

 

「いやぁ…………翼、元気にしてるかなぁってさ」

 

「?」

 

 

 

「ほら、翼。アタシのこと信頼してたから、ちゃんと友達作ってるのかなーって……」

 

「………………………」

 

 

 

これは、この話聞いてはいけない事だったかもしれない。だって今現在剣は、あの生真面目な少女に明らかな憐憫を抱いている。彼とて鈍感ではない、隠された言葉の真意を察することは出来る。

 

 

天羽奏の言い方は心を気遣っていて、同時に抽象的だ。彼女からしたら大切な親友の事を想っての事だろう。故に、だからこそ、意図を隠した言葉を使ったのだ。それに対して剣は「なるほど」と、神妙な顔つきで指を鳴らし─────、

 

 

 

 

 

 

「つまり天羽奏、お前は翼が独りぼっちになる事を懸念しているんだな?」

 

「おぉいっ!!? 今アタシが遠回しに伝えた意味がなくなったぞ!?」

 

「確かに翼は何処か拗れてる所がある。『だからとてッ』とか『防人』とか、稀にそういう事を聞く。他の皆も特に言わないからそんなものかと考えていたが………」

 

「いやいやいや!そういうのは言わんでもいい!!」

 

 

それに対して、剣は気遣いも糞もない真面目な言葉……捉えようによっては辛辣としか言い様のない言葉をさらっと吐く。

 

 

自分の知っていることを詳しく伝えようとして………ん? と剣は怪訝そうになった。何処かおかしいと感じた所があった。

 

 

 

「お前、魂だけなら色々と見れるんじゃないのか?翼や他の人達の様子とか、幽霊と同一の状態と言っても過言じゃないんだろ?」

「…………それが出来たら苦労はあまりしないんだよなぁ………」

 

 

言い淀む奏に、今度こそ剣は顔をしかめて(いぶか)しむ。彼女の言い方には、やはり引っ掛かる所がある。

 

 

「いやぁ…………あの時、覚えてる?あんたに初めて声をかけた時」

「そう言えば会ったな。俺が自分自身を追い込んでた頃だったか、あの時は迷惑をかけたな」

「気にすんなって、アタシとしても好きにやった訳だしさ─────まぁ、話を戻すけど。おまえに声をかけようと少しだけ近づいたんだよ。心の中に出てくるように、さ」

 

 

なるほどな、と思った。どうしてあの時、無関係な彼女が剣の夢に現れたのか理由が明確になった。

 

 

「それで意識朦朧としたおまえと出会って色々言って帰ろうとしたら…………」

 

「したら?」

 

 

「────何故か、離れられなくなった」

 

 

 

 

黙り込むしかなかった。

簡潔に告げられた後に語られた話を分かりやすく要約すると─────。

 

 

 

あの時、自分を追い詰めてた剣を見てられなかった天羽奏はある程度言いたいことを言って帰ろうとした。けど魔剣が、魂である天羽奏を「戦い馴れた戦士(魔剣士)」として勘違いして、彼女の魂を勝手に取り込んだらしい。

 

 

普通ならそのまま魂は消失し、その力は無空剣へと受け継がれるのだが…………天羽奏は普通とは違う。同じ力ではない───そもそも魔剣士ですらない────彼女は異物としてその魂が何故か、無空剣の中へと残り続けてしまったのだ。

 

 

魔剣や魔剣士(ロストギアス)に詳しい剣からすれば、これは明らかにイレギュラー───バグの一つだ。そもそも無空剣が別世界に来てることもイレギュラーだろうと言われてしまえば反論のしようがなくなってしまう。

 

 

ともかく、剣にとってこの事態はあまり重要視すべき事ではないと分かった。元に戻りたいか? と天羽奏に聞いたが、別にいいやと返ってきた。

 

 

曰く、そんなに悪い事がないならアタシは問題ない。むしろそっちは良いのか? と。剣も別に大した事ではないと考えていた。

 

 

自分の体に別の人間の魂があるのは面倒な事だろうが、それに対するデメリットも今のところは存在しない。ならばあまり気にするのは不要だろう。

 

 

故に、剣はあっさりと心を許すことにした。そう簡単に納得して良いものではないかもしれない。彼女が敵である可能性も頭に入れておくのが普通だ。

 

しかし、そんな気難しい生き方はもう止めている。これからはそんな心の無い薄情なやり方は、この世界の人達に受け入れられてから──────改めようと、決意したから。

 

 

 

「当初の頃は険しかったな。俺に対しても………特に響には当たりが強かった。やっぱり天羽奏、お前のガングニールを引き継いでたのが理由だと思うが」

「…………やっぱそうかぁ」

 

 

額に手を添え、溜め息を漏らす奏。その後の剣が知る、『お部屋』(意味深)の話をした時には更に深い溜め息を吐き出していた。

 

 

色々、彼がこの世界に来てからの出来事を話してからどれくらい経っただろうか。話を聞き終えた奏は満足に笑う。最初対面した時よりも────あの時の記憶よりも心のからの笑顔だった。

 

 

「────久しぶりに、誰かと話せたなぁ。こんな体になってなら他人と話すのは、何時ぶりだったっけ」

「………まるで俺以外にも話した事があるみたいな言い方だが」

「まぁね。一人だけだけどさ、似たようなもんだから何度か話したりしてたよ」

 

 

それについては驚きはした。しかしそれと同時に大きな疑問が脳裏に浮かび上がる。

 

彼女が話したのは一人、()()()()()だ。その相手が普通の一般人ではない可能性もある。有り得るとしたら、天羽奏と似たような環境下の存在。

 

 

───亡くなったシンフォギア装者。その確率の方が高いと見れるだろう。

 

 

 

「────今度はその子、連れてきてあげよっか?」

「………………手間にならないなら。それと、本人の許可を取っておけよ」

「分かってるって。アタシはそんな風に自分勝手じゃないしね…………ま、連れてくるって言っても。アタシはあんたから遠くまで離れられないけど!」

 

 

ひらひらと手を振るい、彼女はやはり楽しそうに笑う。何かを言うつもりもなく、剣も小さく口先を緩めた。

 

 

───最中、剣は変な感覚に陥った。自分の意識が途切れ欠けて、すぐに戻るという違和感が。

 

 

 

 

 

「時間みたいだね………いや、寝てる現実のあんたが起きようとしてるのかな? 早く起きても良いんじゃないの?」

 

 

彼女の言葉に、ここが何処なのかを再認識する。自分自身の精神世界のようなもの、つまり現実の剣が意識を失っている状態─────例えるなら睡眠中の時とか。

 

 

彼女の言葉通りなら、無空剣はそろそろ目覚める時なのだろう。だが、それよりも先に、目覚めを押し退けてでも、知りたいことがある。

 

 

 

「お前…………いや、奏は大丈夫か?このままでも」

「アタシは心配ないね!何ヵ月あんたの中で過ごしてたと思ってんのさ!消えたりしないから安心していいよ」

 

 

彼女の魂の消失の可能性を懸念したが、本人からは心配いらないらしい。それなら構わないだろうと、剣は自分の意識が戻るのを待つ。

 

 

 

自分がこの意識世界と共に消えていく感覚を味わいながら、そこでふと、思い出した事があった。

 

 

「天羽奏」

 

「ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────ありがとうな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

瞬時に意識が覚醒する。普通の睡眠とは違う、倦怠感のようなものがあった。通常よりも遅く、寝起きから立ち直る。壁に寄り掛かり、しゃがむようにして寝ていた剣は体勢を気にすることなく、パチクリと眼を見開いた。

 

 

その後に映り込んできた光景は───────

 

 

 

「「………っ!!?」」

「む、起きたな無空」

 

 

至近距離まで近づいてたから一転、驚愕して硬直する少女二人、響とクリス。彼女達から少し距離を置いてた所で座禅をしていた翼だった。

 

 

絶句しているのか動けずにいる二人、そして座禅を解いて剣達の方を見つめてくる。

 

 

言葉にし難いような空気の漂う中、剣はやはり疑問を口にした。

 

 

「これは…………どういう状況だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《とある時の話》

 

 

 

まずは現状について説明するべきだろう。ルナアタックという事件から二週間が経っている現在、無空剣とシンフォギア装者の四人は二課の仮説本部の個室で過ごしていた。

 

 

それも、二週間も前から。理由は上の話で説明しただろうから、ここでは簡潔に伝える。物事の処理が終わるまで、彼等の身柄は安全な所にあるべきだ。故に、表側では彼等は行方不明という事にして、自粛…………悪く言えば軟禁されていた。

 

 

 

これは、そんな最中の小さな事の話である。本当に小さな、ぶっちゃけどうでもいいような。

 

 

 

 

 

「………」

 

 

「………」

 

 

「………」

 

 

「………」

 

 

全員が、沈黙を貫き通す。しかし、誰もが同じ理由ではない。青髪の凛々しい顔立ちの少女、風鳴翼。彼女は両目を伏せて座禅を組み、心構えを整えている。しかし真剣故に話に入ってこないので今回の彼女に関してはあまり気にすることはない。

 

 

 

問題は他の二人、立花響と雪音クリスだった。彼女等は黙り込んで、互いを見ていたりもする。凄い集中してる。音すら立たないのはむしろ褒めるべき事なのかもしれない。

 

 

 

そんな彼女達が、息を殺している理由とは…………。

 

 

 

 

 

 

 

「………寝てる、よね?」

「……あぁ、あたしらがここまで近付いても反応しないんなら本気で寝てるさ」

 

 

さて、ここでもう一人、沈黙を貫き通している人間について話そう。

膝を立てて、壁に背を預けるような形でいる青年 無空剣。頬杖をかきながら座っている彼は一言も発さない。それも当然、今の彼は睡眠中だった。

 

 

 

申し訳ないが、時間を少し巻き戻す。ちょうど三、四分くらい前に。

 

 

 

『五分くらい寝る。何かあったら起こしてくれ』

 

 

それだけ言って剣は睡眠状態へと入った。一見疑っていた響達だったが、こうして近付いても手を出されないのなら本気で寝てる。前回の時とは違う、響はそう判断した。

 

 

 

前、似たような事があったのだ。仮眠中の剣の姿を見て、響は駆け寄って起こそうとした。そこまでは覚えてる。

 

 

 

だが一瞬、記憶がぶっ飛んだ。

気付いた時には響の前で剣は綺麗な土下座をしていた。訳が分からなかったが、彼から短く説明を受けて理解した。

 

 

 

───駆け寄ってくる響にカウンター(手刀)を打ち込んでしまった、と。

 

 

曰く、彼は元々から仮眠中でも攻撃されたら対応できるように訓練されているらしい。響が無傷だったのは、無意識に非殺傷に定めたからだ。

 

 

しかし、今の剣は接近されてもカウンターをかましてくる様子はない。つまり、本当の意味での無防備を晒しているのだ。それが信頼してくれてると思うと、胸が痛いことこの上ないが。

 

 

 

さて、何故彼女達が理不尽な反撃を食らう事を危惧してるのにも関わらず剣に近付こうとするのか。理由は至極単純にして難解でもある。

 

 

 

 

────無空剣の寝顔を近くで見てみたい、まぁそんなものでもある。そもそも彼は普通の人間とは違い、短い時間でしか睡眠を取らない。兵器であることを前提とはいえ、あまりにも非人道的なやり方だ。だからこそ、彼が本気で寝てる顔なんてレア所の話ではない。

 

 

考えても見るべきだ。普通なら攻撃してくるが、ちゃんと睡眠しているのが少ない。何ならこのチャンスが何時来るかなんて分からない。少女達の好奇心を刺激するには十分な事だ。

 

 

後少し、ジッと見いるように顔を覗き込む二人。距離の事が頭になかったのは、彼の寝顔に対する興味であるだろう。

 

 

 

「……………」

 

 

しかし、彼女達も気付くのが遅れた。真剣に見つめていたのが仇になったのだろう。

 

 

銀色の前髪に隠れた瞳。結晶の義眼とは違う、片方の瞳が開かれていた。その中に映された自分達の顔が目に入り、

 

 

 

「「………っ!!?」」

 

 

そして、今に至る。

戸惑って言い訳をする二人に当の本人である剣と無関係な翼が不思議そうにしていた。




剣と奏さんって意外と共通点が多いんですよね。


▪当初は復讐を目的として戦ってた
▪掛け替えのない相棒と共に過ごす
▪親はいない(奏さんはノイズに殺されて、剣は親に売られた)

他にも大分似てる伏が多い………相性いいんじゃない?


次回、ちょっと番外編らしくしましょうか。


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