戦姫絶唱シンフォギア 神装魔剣   作:虚無の魔術師

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ようやっと投稿できた………っ!

一週間以上も待たせてしまい申し訳ございませんでした!これからも投稿を続けていこうと思いますので、どうかよろしくお願いします……ッ!!


所でですが、コーラとフライドチキンって一緒に食べてると最高の感じしますよね(唐突)


G編
次なる脅威


燃える。炎が、全てを焼き尽くすように辺りに燃え広がる。けたたましく鳴り響く警報の音も、炎や破壊によって途切れ、静かに消えていく。

 

 

 

【──────ッ!!】

 

 

ユラリ、と。

地獄のような光景の中で、人間よりも一際大きな影が動いた。真っ白な、アルビノのような怪物。二本の脚で立ち上がるその怪物には顔と判断できる部位────目や鼻が存在しない、あるのは獣のような牙を剥き出しにした大きな口。

 

 

この地獄を体現するに相応しい怪物は、誰かと相対していた。

 

 

 

少女、どちらかと言えば未だ幼い女の子だろう。怪物の相手になるとは思えない。むしろ今すぐ殺されてもおかしくない。そうならない理由は、少女の纏うモノにあった。

 

 

白と銀色の衣装。少女らしきドレスのようなそれは一つの兵器であった。その名をシンフォギア────歌を力とする、此方の世界で生み出された武装。

 

 

 

 

 

「────」

 

少女は静かに、そして心からの唄を歌い出した。こんな状況で子供の歌が何の意味になるのか。そう思うのは普通の一般人か、この世界ではないもう一つの世界の者達だろう。

 

 

しかし、この場にいる者の誰もが…………少女ですら知っている事実がある。

 

 

歌には力がある。それは戯れ言ではない、確固たる事実として証明されてるではないか。シンフォギアという、兵器に運用されてる時点で。そう言えば単純だ、簡単だろう。しかし少女の歌に心が、願いが乗せられていた。

 

 

忘れてはならない事が一つある。人の想いは弱くはない、少女の願いの籠った歌には、確かな力と想いが込められていた。

 

 

 

 

─────ここにいる人達の命を護りたい、と。

 

 

幼い少女が願うには、途方もなく大きく、年相応ではない願い事。だが、少女は確かに、それを力としてこの場に立っていた。

 

 

だからこそ、歌を歌える。

 

 

 

 

例えそれが、命を削る唄─────『絶唱』だとしても。

 

 

 

 

「────っ!!」

 

 

誰かが、唄を歌う少女と似たようなもう一人の少女が叫ぶ。後ろから呼ばれた少女は振り返ることなく、歌い続けていた。燃え盛る地獄の中で、幼い少女の歌声が響いていく。

 

 

 

変化はすぐに現れた。

謎の力が白い怪物を押し潰し、叩きつけられる。苦悶に呻くような咆哮があげられるが、その力に抗いきる事が出来ないらしい。

 

 

歌声が途切れたが最後、怪物の雄叫びと共にその姿も失われた。残されたのは、拳サイズの塊。本来の怪物のモノ、動物で言うなら冬眠のような状態。

 

 

 

歌い終えた少女は自分の名を呼んでいた少女の方に振り返る。それを見て、見届けていた少女は言葉を失った。

 

 

生気の失われたような青白い顔。目や口から止めどなく流れ出す血。将来美人になると思える端正な顔つきは、変貌していた。今にも死にそうな、もうどうやっても助からない。そう確信する、してしまう。

 

 

 

そして次の瞬間───天井のヒビが大きくなり、ついに崩れ落ちた。人間を潰せる程の瓦礫が雨のように、降り注いでいく。

 

 

 

それを見て、動けずにいた少女は何とか駆け出そうとした。逃げるためではない。炎の中心で『絶唱』を歌い、動けないであろう少女────自身の妹を助け出そうと、走り出そうとする。

 

 

 

 

しかし、少女は駆け寄ろうとしてくる自分の姉を見て微笑み────何事かを呟いた。その内容は、誰にも分からない。向けられた本人である、姉以外には。

 

 

 

更に姉は横から突き飛ばされ、バランスを崩した。同時に誰かが瓦礫に巻き込まれた事に気付き、自分が庇われたことも理解する。

 

 

 

もう間に合わない。足を止めてしまった以上、彼女には手を伸ばしても、妹は助けられない。それでも、何とかなると願い──────姉は、手を伸ばした。

 

 

 

 

が、現実は変わらない。

願っただけで変わるのならば、誰も苦労はしない。

 

 

 

 

降り注ぐ瓦礫に妹が押し潰される光景を前にし、姉は慟哭をあげ、世界に、全てに絶望した。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「─────立花と雪音は来れない、ということ?」

「そうだ。どうやらノイズが出現したらしくてな、今それを何とかしてるらしい」

 

 

一室、有名人が本番前にいるような部屋の中で、二人の男女が話していた。

 

 

一人は、風鳴翼。日本国内が誇る歌姫、アーティストであり、極秘とされている─────シンフォギア装者の一人。その中でも戦い慣れた歴戦の人物である。

 

 

しかし今、彼女の姿は髪と同じような青の衣装に包まれていた。今回の彼女はシンフォギア装者としてではなく、アイドルとして重要な事をしようとしているのだ。

 

 

 

そしてもう一人─────無空剣は銀色の髪を軽く弄り、そう話した。

 

 

彼の正体を知る者は数少ないが、短く説明するなら、シンフォギア装者よりも改造人間に近い存在だ。体内に旧世代の遺物────『魔剣』を宿し、適合した兵装 ロストギアの使い手。

 

 

無論、この世界の住人ではなく、彼はもう一つの世界出身だ。自分のいた世界から離れて何ヵ月も経っているが、無空剣は昔よりも充実として────人としての生活を得られていた。

 

 

一応補足しておくが、ここは風鳴翼専用の控え室だ。当然ながら、無関係な人間としているのではない。彼も風鳴翼の関係者─────表面上としてはボディーガードとして通している。

 

 

 

勿論、正式に公表などしてる筈がない。

無空剣は多くのノイズを殲滅し────“ルナアタック”という大規模な事件を解決したのではないか、と世間から信じられてる人物だ。もし彼が風鳴翼と共に行動してる事が知られれば、問題が広がることなど目に見えている。

 

 

「ノイズの出現………やはりあの事件と言い、まだソロモンの杖が使われてるのかもしれないわね」

「まぁな、ただでさえ行方不明でもある訳だ。そう疑うのも無理はない」

 

 

冗談めいたような発言に見えるが、二人はどちらかと言えば真剣だった。

 

 

ソロモンの杖。

ルナアタックの際、何者かに奪取された『デュランダル』。剣と響の全力の一撃で破壊された『ネフシュタンの鎧』という、痕跡すらない完全聖遺物の中で、唯一無事だったもの。

 

 

その能力は、ノイズを召喚し、自由自在に操ることが出来る。唯一シンフォギアやロストギアの敵ではない代物。かと言って厄介な事には変わらず、対人に激しく特化した聖遺物だ。

 

 

米国から要求され、護送されていたが突如としてノイズの襲撃にあい、行方不明になったらしい。同時に、同行していた米国の研究者が巻き込まれたとも。

 

 

今も捜索中らしいがら結局見つからないのが現状だとの事。後忘れていたが、響達がこの場にいないのにはさっきの話は関係していない。むしろ偶々発生したノイズの排除の為、ノワール博士引率(巻き込み)の元、向かわされているのだ。

 

 

 

「………やはり私も動くべきか」

「止めろ。わざわざ響やクリス、ノワール博士も動いているんだ。翼が向かった所で過剰な事には変わりはない」

「しかし………」

「翼、今回のステージは世界中に配信される大型ライブだ。お前の歌を聞きたいと、多くの人が楽しみにしているんだ。勿論、俺もな」

 

 

口ごもる翼は投げられた言葉を、黙って受け入れる。

 

 

「そう言えば、今回はコラボレーションライブだったな。確か相手は────」

「マリア・カデンツァヴナ・イヴ。デビューしてから二ヶ月だが、そう甘く見てはいけないようね」

「あぁ、今や世界中でも有名だからな。今回のコラボライブではどれ程の視聴率になるのか、俺も少しは興味はあるぞ」

 

 

そう言いながら、剣は持っていたビニール袋の中に手を伸ばした。当然ながら、翼の持ち物ではない。掌に収まる袋を開き、中身の肉に食らいついた。

 

 

ほんの一部だけを口に()んで、すぐにビニール袋から何かを取り出した。ペットボトルの蓋を開け、口に含み────

 

 

「─────あ゛ぁー、上手いっ。フライドチキンを食いながら飲むコーラって美味しいんだよなぁ。何時食っても飽きない」

「…………無空、貴方はもう少し食生活を気にするべき…………」

「あ、翼の分もあるぞ。戴くか?」

「────戴くわ」

「流石に今は()めてくださいね?」

 

 

目の色を変えて手を出してくる翼。どうやら彼女もフライドチキンという、あまり食べたことのない物に興味があるらしい。

 

 

だが、フライドチキンの入った袋を手渡そうとした所で、部屋に入ってきたスーツ姿の緒川に止められた。因みに今の彼は翼のマネージャーとして動いている。どうやら眼鏡のあるか無しかで意味合いが違うらしい。

 

 

「どうした?緒川さんの分もあるぞ?」

「後で戴きます。もうすぐライブなので、それが終わるまで控えてください」

 

 

分かってる分かってる、と剣は袋詰めされたフライドチキンをビニール袋の中に戻す。それを見て翼が心底怨めしい視線を向けてきたが、緒川から色々言われるのも面倒なので翼には諦めて貰う。

 

 

フライドチキンを食い終わり、指についた油を軽く舐め取った所で、剣はふと顔を上げる。片目を細め、扉の方を睨みつけた。

 

 

 

「────何者かが、この部屋に近づいてきている」

「敵………という訳ではないか」

「ですが、警戒をお願いしますよ?」

「あぁ、分かってる」

 

 

一応、センサー上にあるのは女性の反応だった。何らかの凶器は携帯しているようには見えないし、その反応はない。

 

 

しかし僅かにも警戒を緩めることなく、扉を開けた。するとそこに立っていたのは────やはり女性で間違いなかった。

 

 

 

背丈は剣の少し下。しかし低いという訳でもなく、170近くはあると判断できる。ピンク色にネコミミ風の長髪の、白や銀に近いドレスを身に纏った女性。剣や翼、この場にいる全員は彼女が何者かを理解していた。

 

 

 

マリア・カデンツァヴナ・イヴ。

今回のコラボレーションライブの目玉の一人、二ヶ月で成り上がってきた歌姫が、今この場にいた。

 

 

翼のように、凛々しい顔立ちをした彼女は部屋に入るや否や扉を開けた剣の顔を見る。するとその顔がみるみる驚愕に包まれていく。

 

 

 

「──────貴方は」

「……?」

 

 

しかし彼女はとやかく言うつもりはなかったのか。すぐさま顔を引き締めると、翼に視線を向け、髪をかきあげた。

 

 

「今日は宜しく、風鳴翼。この後のライブで精々私の足を引っ張らないように頑張ってちょうだい」

 

 

堂々と、挑戦的な言葉を贈るマリア。普通ならばそれを受てしまいそうだが、翼は不敵に笑い返す。

 

 

「えぇ。今日は共に、最高のステージを飾りましょう」

 

 

そう言うと、二人は互いに握手して笑みを返した。先程の感じは見られず、こらからのライブを楽しませようとする気概がよく分かってくる。

 

 

やはり、アーティストや歌姫というのはそういうものかと剣が思案に暮れていると─────

 

 

 

 

「───貴方、無空剣(むそらつるぎ)よね?」

 

 

いつの間にか話を終えていたマリアが、そう声をかけてきた。剣は一瞬だけ翼や緒川に視線を送るが、彼等の反応を気にすることなく、素直に頷いた。

 

 

 

「あぁ、俺が無空剣(むそらつるぎ)本人で間違いない。この世に俺と同じ名前を持った人がいなければな」

 

 

彼なりの皮肉。

その意図はこの世界の中でも限られた者しか知らない。彼が別世界から来た人間という事実は、世界にすら露見されていない。

 

 

だからこそ、マリアはそれをただの皮肉として取ったのだろう。小さな笑みを浮かべながら剣を見つめる。

 

 

「…………驚いたわね、ルナアタックの英雄とここで出会えるなんて。もっと別の場所で会えると思ってたけど、対面できるなんて光栄ね」

 

「謙遜痛み入る、俺はそこまで偉大な存在じゃないさ。ただノイズを倒せるだけの力を持った()()だ。それに、出会えただけでも幸運なのは此方も同じだ。何せ世界で有名なアーティストの一人が相手だしな」

 

「それでも、貴方が出てきてからノイズの被害が格段に減ったと聞いているわ。ノイズを生身で倒せるなんて人間なんて、滅多にいないからね」

 

「…………まぁ、そういうものだしな」

 

 

話の途中、剣は目を細めながらもちゃんと話を聞いていた。それに対して、マリアは調子が良いのかどこか満足そうな笑顔を浮かべていた。

 

 

「それで、貴方も今回のライブを見るつもりなの?」

 

「あぁ、そのつもりだ。ボディーガードとは言え、誘われて来たから」

 

 

剣がそう言うと、マリアは微笑みを浮かべる。そして挑戦的に近い様子で告げた。

 

 

 

 

「────なら、楽しみにしてちょうだいね。私達のステージを」

 

「あぁ、是非とも楽しみにするさ」

 

 

部屋から立ち去っていくマリアに、剣は軽く手を振った。その後、何故か不満そうな翼に脚を軽く蹴られた。首を傾げていると凄く不服そうに顔を反らされたので、剣は申し訳ないと謝罪を口にした。

 

 

 

 

 

 

 

そうして、翼はステージへと赴いていた頃。

緒川はマネージャーとして翼のライブを見守ろうとしていた所、横に移動してきた剣から、小声で告げられた。

 

 

 

「───マリア・カデンツァヴナ・イヴ。彼女に最大限の警戒を」

 

 

驚いたりはしなかった。

自然とした動きで黒縁の眼鏡を外した緒川は姿勢を崩すことなく、同じように小声で聞き返した。

 

 

「………理由を聞いても良いですか?」

 

「『ノイズを生身で倒せるなんて』………おかしいと思わないか?まるでノイズを生身じゃなければ倒せるとでも言えるような言い方だ」

 

「…………それは」

 

「何より、歌姫。歌と来る訳だ。キナ臭い以外じゃあ表現できないな」

 

 

ただの勘違いならそれでいい。

だが、当たっていたとしたらロクな事にはならない。無空剣の予感や勘というのは、嫌な事を的確に当てられる。

 

 

今回のライブ、何かあると見た方が良い。無空剣は自身の勘に従ってそう結論付けた。

 

 

「分かりました。僕も事前に警戒をしておきます」

 

「だが、何も起こらない可能性もある。それも考慮しておくさ」

 

 

緒川と短く話し合い、各々のやる事を優先して別れた。緒川は翼のマネージャーとしてこのライブが無事に終わることを期待し、剣はこの会場に来ている自分の知り合い達に忠告をしておこう、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、ライブは無事に始まった。

翼とマリア、二人の奏でる歌と旋律は会場に集まった多くの人々の心を暖かくした。それも当然、世界最高峰の歌姫が二人で、二つの全く違う歌で、一つの歌へとしていたのだ。

 

 

鎮魂歌にして、応援歌。

理不尽に命を奪われた者達への弔いと安らぎの歌であり、挫折しそうになりながらも今を生きようとする者達への歌でもある。

 

 

 

無空剣も、その歌を会場の隅で静かに聞いていた。隻眼でもある瞳を閉ざし、今ある二人の聖歌を耳に、安らぎを感じさせられる。同時に、胸に沸き上がってくる高揚も。

 

 

 

(───響やクリス、博士には悪いが……………今回ばかりは、俺も楽しませて貰おう)

 

 

入り口の壁に背中を預けながら、満足そうにステージを見届けた。マリアが翼と握手をし、会場は衰えることのない熱に帯びている、このライブを。

 

 

 

 

しかし、その一瞬。

 

 

 

 

「…………?」

 

 

自分のいる入り口の向こう側。もう一つの入り口がある場所に、自然と目線がいった。疑問に思いながらも、剣はそこに誰かがいる事に気付く。

 

 

 

 

白衣を着込んだ男性だった。

顔は良く分からない。暗闇に人影が浮かび上がっている、そう思えるような光景だったが、剣はその人物が何かを持っている事に気付いた。

 

 

 

棒というよりかは、槍に見えるモノ。しかし武装にしてはあまりにも貧弱にして脆弱。当然ながら、それは武器として使うというのが本来の扱い方ではない。それは、『杖』と呼ばれているからだ。

 

 

その先から翡翠の光を生じさせるそれを、剣は良く知っていた。同時にその名称をも。

 

 

 

 

 

 

 

 

───『ソロモンの杖』

 

 

完全聖遺物でもあるそれは、この場に存在してはいけない代物だった。少し前に、響達が米国基地に護送しており、ノイズの大量発生により紛失してしまったと聞いていた。

 

 

 

「─────マズいッ!!」

 

 

動き出そうとした時にはもう遅かった。

ソロモンの杖から放たれた緑色の光は周囲に散開し、地面へと着弾する。その瞬間、光の中から様々なノイズが這い出てきた。

 

 

直後、会場に響いていた歓声が一転し、悲鳴や絶叫に切り替わる。既に無数に発生したノイズが観客席にも発生し、人々はノイズから遠ざかろうとして更に大きな困惑に支配される。

 

 

 

「クソッ!見境無しか!!」

 

 

何時ノイズが人を襲うか分からない。咄嗟に駆け出そうとした。ロストギアを纏わなくても、ノイズ相手に遅れは取らない。

 

 

しかし、彼が動くより先に────ステージ上で、歌姫の一人が動いた。この場の状況にギアを纏おうとした翼ではなく、コラボレーションライブとして参加してたもう一人が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────狼狽えるなッッ!!!」

 

 

突如マリアが放った大声がマイクを通して、会場中に響き渡る。それによって喧騒と混乱に包まれていた観客達の多くが悲鳴をピタリと止めた。

 

 

 

そして、飛び出そうとしていた剣の動きも停止した。壁に手を掛け、深呼吸をする。冷静さを欠きそうになった。たった今飛び出した所で、ロストギアを纏う時間もない。何より、相手の動きがどう出てくるかも分からないのだ。

 

 

だからこそ、今この瞬間、あのように大声で怒鳴ってくれたマリアには感謝しかない。まぁ、おおよそ敵であるのが剣としては心苦しいものではあるが。

 

 

(ノイズが動いていない………マリアの指示か?もしくは人質だとでも?)

 

 

 

ならば好都合、と考える。

相手は何らかの要求を通したいが為にノイズを使い、観客を人質に取った。この会場にいる人々をノイズに襲わせるような真似は、そう簡単にしたくはない筈だ。

 

 

すぐさま剣は背を向け、廊下へと飛び出す。少しだけ離れることに耐え難い激情を抱きながらも、自制してこの場から距離を置く。人気がないのを確認すると、全速力で廊下を疾駆しながら、二課との連絡を取ることにした。

 

 

 

「司令!聞こえているか!?応答をッ!!」

『あぁ!此方も把握している!会場内に発生したノイズの姿は既に確認済みだ!』

「そうじゃない!『ソロモンの杖』だ!会場内でそれが使われた!!」

『何だと!?どういう事だ!?』

 

 

驚愕しながらも疑問を口にする司令に剣は首を振るう。

 

 

「詳しい事情は後で話す!会場内に『ソロモンの杖』を所持している者がいる!多分、予想からして今回の襲撃は一人じゃなくて複数犯と見ていい!」

『分かった!今から響君とクリス君を向かわせている!君は観客の避難を…………難しければノイズの掃討を頼む!』

「了解した!今からノイズを片付けてくるッ!!」

 

 

通信を切り、剣は脚を止めた。反動で床から火花が散ったが、この際は特に気にしない。会場へと続く入り口はすぐ近くにある。そこに向かおうとして、壁に掛けてあったテレビ画面を通り過ぎようとした─────

 

 

 

 

 

 

───その時だった。

 

 

 

 

───Granzizel bilfen gungnir zizzl(溢れはじめる秘めた激情)

 

 

 

「……………ッ」

 

 

思わず、呼吸が止まりそうになった。

ある筈がない聖詠、ある筈のない単語。それらを歌う者が、いる筈がない。何故なら、彼女が口にしたのは『シンフォギア』、その中でも特別なもの。それは彼が知る中でも一人、故人を数えるなら二人だけしか、纏えない物であった筈だから。

 

 

 

目線を向けたテレビ画面の中で、歌姫マリアの姿が変わる。ドレス姿の彼女は一転して、黒い鎧を身に纏っていた。鎧と同じく黒に染まったマントを翻し、彼女はステージに堂々と降り立つ。

 

 

 

そのシンフォギアの名は─────既に聖詠の中に存在していた。

 

 

 

「ガング、ニール………ッ!」

 

 

自分の知る少女と全く違い───同じガングニールを纏う歌姫の姿に、剣は両目を開き絶句してしまう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新しく配備される事になった二課の本部。その部屋の一室でタクトは身動ぎせずに腰掛けていた。瞑想するように、拘留されている事を当然と受け入れていた純白の青年は──────突如、両眼をゆっくりと開いた。

 

 

 

「────何だァ、この感じ」

 

 

脳内やセンサーが微弱な反応を捉えた。普通なら、有り得なかった。しかし彼等、魔剣士の有するセンサーは特筆優れている。

 

何より、タクトはその反応をよく知っていた。だからこそ、間違えではない事を理解し、瞠目する。一瞬だけ、ほんの一瞬だけだが、己の信念を歪め、この部屋をぶち破りそうになった。

 

 

無空剣と同じ場所、その付近から感じられる反応。その一部から確かに─────、

 

 

 

 

 

「……………………フィーネ(マスター)?」

 

 

 

────殺されていた筈の、己の主(マスター)の反応が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ライブ会場にて。

複数のノイズを操り、黒きガングニールを纏った歌姫 マリアは槍を掲げ、高らかと声を張り上げる。

 

 

 

 

 

 

「私達は【フィーネ】!終わりの名を持つ者だ!!」

 




という訳で、G編始まります。原作とは色々と違う点が多いですが、温かい眼で見て貰えると助かります。


原作沿いって簡単に見えるけど、あまり同じ過ぎるのは難しいし…………オリジナルってのも、凄い大変だし…………。


結論、小説は書くのは凄い大変で難しい(私だけ)!!




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