戦姫絶唱シンフォギア 神装魔剣   作:虚無の魔術師

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遅くなりましたぁ!!多分二週間以上空いてたけど申し訳ないですぅぅぅぅぅ!!!!!


戦線集結

全世界中の人間が、その放送を聞いていた。

 

 

或る者は静かに見いっており、或る者は電話を片手に怒声を響かせ、或る者は祈りを捧げていた。

 

 

 

 

そして─────或る者は、ニタニタと笑みを浮かべながら、横の映像を見つめていた。両手に収まった資料の束をまとめながら。

 

 

 

 

 

「フフフッ………。彼女達も遠慮なく動いているね。世界中継で、よりによって『Fineフィーネ』との名乗るとは。……………面子ばかりを気に掛ける米国は黙っていないだろうなぁ」

 

 

 

部屋の主にして、白衣の男─────エリーシャは、やはり楽しそうだった。頬杖をついて、今現在も騒ぎ立ててる各国………主に米国の偉い方の反応を、少しだけ愉快に思っていた。

 

 

 

彼は、今回の騒動には直接的に関係はしてない。そう、直接的には。しかしながら、間接的には原因である事は事実。が、どうせ反省などしてないだろう。多くの子供を実験で死なせておいて、

 

 

 

顔色を変えることなく、エリーシャはニタリと笑みを深めた。自分の背後、部屋の片隅で退屈そうにしている人物に目線を軽く送りながら、映像に映る複数の男女の姿を確認しながら、

 

 

 

「─────折角私が引き起こした騒動なんだ。もっと大きく、壮大に世界を巻き込んでくれたまえよ?そうではないと興が乗らないから、ねぇ?」

 

 

何処か試すように告げると共に、エリーシャは自分の真下を見下ろす。隔離された部屋に、円を描くように配置された六つの棺桶と──────1つだけ開いているので、結果的には五つだが──────その中心にある巨大な黒い塊。

 

 

 

『────No.2、No.3、No.4、起動準備完了。これより外部出力を接続し、各種装者の戦闘データと同期を開始する』

 

 

─────『強化外装』、剣やノワールから評されていた因縁ある兵器が無機質な音声を響かせる。本来の機能を果たせずにいる巨大装置を近くに置き、エリーシャは今後の展開に期待するように、映像の映る画面に目を光らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

ステージ上で、風鳴翼は相対するように堂々としているマリアを睨み付けていた。現状、相手はシンフォギア───『ガングニール』を纏っている状態である。勿論、翼も何も対策をしていない訳ではなかった。今、彼女はギアペンダントを身に付けている。この場で自身のギア───『アメノハバキリ』を纏えば、ノイズを掃討する事も不可能ではない。

 

 

 

しかし、今の彼女にはそれが許されなかった。

今もステージを複数のカメラが凝視して、その映像を世界中に届けている。ここで風鳴翼が秘匿されているシンフォギアの力を使えば、彼女は『歌姫』として終わってしまう。

 

 

それだけは合ってはならないと、すぐさまギアを纏おうとした翼を、無線越しに緒川が止めた。風鳴翼の歌は戦いの為だけではなく、傷ついた心や人々を癒す歌でもあるのだ。それをこの状況でも失う事は出来ない、と。

 

 

 

何より、この会場には()()()()()()()()()()である青年が待機している。この状況に、不器用ながらにも翼の夢を応援していた彼が動かない筈がないのだ。

 

 

 

 

だからこそ、翼はギアを纏えない。

自分の願いに多くの人が期待と想いを乗せてくれてるからこそ、彼女はそれを切り捨てる事が出来ない。

 

 

 

 

 

「────どうした?貴方のシンフォギア、纏わないのかしら?」

 

 

何時までもシンフォギアを纏わない事に、マリアは余裕の笑みを浮かべる。レイピアのようなマイクを翼へと向け、ギアを纏おうとしない彼女に言う。

 

 

 

 

「それは無理よね?何故なら今、ライブの模様は世界中に中継されているのよ。日本政府はシンフォギアについての情報を公開しても、その装者についての情報は秘匿したままじゃなかったかしら? ねぇ、風鳴翼さん?」

 

 

「────甘く見ないで貰いたい、その程度の脅しで私が鞘走る事を躊躇うとでも思っているのか」

 

 

牽制でもない、威嚇に近い言葉。

しかしそれが単なる脅しや牽制でもないのは相手もよく分かっているはずだろう。もしこの状況が良い方に傾いても悪い方に傾いても、風鳴翼は守る為に戦おうとする。

 

 

純粋に尊敬する。マリアはそうてでも思うように翼に向けていたマイクの先を静かに下げた。余裕という表情を変えずに、彼女は翼を見つめ返す。

 

 

「貴女のそういう所、嫌いじゃないわ。貴女のように誰かの為に戦える人がいたなら───」

 

 

 

ボソリ、と。

呟くような声音の言葉は、あまりにも小さかった。それは近くにいる翼ぐらいにしか聞き取れない程に。

 

 

 

「────世界はもう少し、優しく出来たかもしれないのに」

「何………?」

 

怪訝そうに顔をしかめる翼は確かに見た。一瞬だけ、何かを思う表情を浮かべたマリアを。しかし、やはり一瞬。

 

 

 

 

マイクを手に取り、堂々と宣告した。この場の者達ではなく、この光景を見ている各国に向けて。

 

 

 

 

「我々が世界の各国に要求するのは国土の譲渡!」

「ッ!何だと!?」

「私が王道を敷き、私達が住まうための楽土にするのだ。素晴らしいとは思わないか?」

 

 

勿論、そんな要求が簡単に通る筈がない。テロリスト相手に、国土を明け渡すとなればどれだけの損害になるだろうか。…………まぁ一部の国の偉い方からすれば、プライドや面子の事の問題になるのだが。

 

兎も角、世界中の各国がその要求に応じるとは思いがたい。何なら人質を見殺しにする可能性すら有り得る。

 

 

 

 

しかし、相手には要求を通せるだけの力を有している。『ソロモンの杖』、ノイズを呼び出せる聖遺物。その力さえあれば、米国だって落とすことも不可能ではない。通常兵器も通用しないノイズという存在はそれだけで、充分兵器に相応しい。

 

 

 

マリアの要求、そしてノイズによって人質にされた観客達。どうにかすべきだと、翼は決心した。ペンダントを手に掛け、シンフォギアの起動式である聖詠を口にしようとする。

 

 

 

 

 

 

しかし、彼女が動く前に、状況は一転した。たった一人が、明確に動き出したことによって。

 

 

 

直後、会場の入り口の一つから凄まじいスピードで何かが飛び出してきた。弾丸というよりも、何らかのミサイルかと思うような速度で空中に現れたのは────一人の青年。

 

 

 

「な───」

「………ようやく来たか」

 

 

人間離れした動きの青年の登場に、ステージ上の二人はすぐに気付いた。

 

 

ガングニールを纏うマリアは突然の事に驚愕し、翼は青年を見て、安堵したように一息つく。

 

 

しかしその姿は生身ではない。

全身に漆黒の鎧を纏い、背中には翼のような剣を二本携えている。それは正しく、無空剣の戦闘形態───ロストギア:グラムであった。

 

 

 

 

 

「────」

 

 

剣は会場全体を一瞬で見渡すと、一瞬で動いた。背中の剣の片方をアンカーのように、通路に立ち往生しているノイズを穿った。それだけで終わることなく、剣翼に接続している有線ワイヤーを巻き取り、その場所へと移動する。着地すると同時に、胴体を貫かれていたノイズを踏み台として、衝撃を緩和させる。

 

 

一秒以内に動き出した剣は、そのまま通路を疾走した。マラソンのように見えるが、実際には通路を防ぎ逃げられないように配備されていたノイズを容赦なく切り伏せ、叩き潰し、消し飛ばしている。

 

 

円周を回るように通路にいるノイズを走りながら、排除していく剣。会談や他の道、自分がいる所とは違う場所にいるノイズ等を、背中から展開した自由自在に動く剣翼(ガードラック)で突貫し、一匹残らず串刺しにしていく。

 

 

高速で移動する本体から何キロもの長さのワイヤーを伸ばしながら、剣翼(ガードラック)は観客達の間を縫うように、滑らかかつ迅速な動きで空を舞う。ノイズを切り裂き、どんな兵器でも防げないであろう剣翼は、観客達を守るように、ノイズを殲滅した後も、彼等の周囲を漂っていた。

 

 

そして、剣が出てきたから一分以内。

全てのノイズが会場から殲滅された後、彼は弾かれるようにステージへと、翼の隣へと降り立つ。

 

 

ガシャァンッ───!! と。

足元に軽くヒビを入れ、着地地点を中心として突風が吹き荒れる。

 

 

 

「────悪いな」

 

 

 

 

 

「お前達の独壇場など、存在しない。ノイズによる観客の人質は、どうやっても無意味だ」

 

 

 

 

 

「────戦いを望むなら、俺が相手してやる。魔剣士である俺がな」

 

 

 

魔剣士(ロストギアス) 無空剣。

現時点最強の魔剣士の名を冠し、思いのままにする青年は軽々しくそう告げ、新たなる戦場へと降臨した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────無空、剣ッ!!」

 

 

改めて引き締めた表情で、マリアは突如として現れた青年の名を叫ぶ。会場内に放たれたノイズの数は、そう簡単に対処できないようにしている。それはシンフォギア装者でなら当然だ。三人居たとしても、あれだけの数を倒すのには大分の時間は掛かると想定していた。

 

 

なのに、突如出てきた青年はそれを諸ともしなかった。マリアも知らない事実ではあるが、剣は魔剣士最強とされる人物。通常の魔剣士でも軍隊を相手取れるのであれば、彼は国を─────本気となる要素を整えれば、世界すら圧倒できると言われるくらいだ。

 

 

対人類特化であるノイズ。それがどれだけ数を為していても意味がないのはそれが理由である。

 

 

 

「悪いな、動くのが少し遅れた」

 

「………いや、礼を言うのは私の方だ。今の私ではギアを纏う事も出来ないからな」

 

「────なるほど、中継カメラか」

 

 

上方に配置されたカメラを忌々しそうに視線を送る。今現在も世界中に、無空剣がノイズを掃討した映像が生中継されている。こんな非常事態でも放送が止められてないのは、世界中に対する宣告の為に必要であるのか。

 

 

 

静かに、隣に並ぶ翼に声をかける。此方を険しい顔つきで見据えてくるマリアを前に、剣は翼の前へと歩み出す。

 

 

 

「翼、観客の避難を先導してくれ。俺よりもお前の方が手は空いてるだろうし────何より、他の人達からしたら、知ってる人の言葉に従いやすい」

 

「だが、無空………お前は?」

 

「中継カメラは博士や緒川が何とかする。その間は任せておけ」

 

 

分かった、と翼はマイクの音を切り替え、周囲の観客に避難を促した。剣の乱入に困惑していた彼等も、歌姫である翼の言葉を聞き、すぐさま避難をし始めた。

 

 

尚、この場に来ていた剣の知り合い────小日向と安藤達は剣が事前に連絡していた事もあり、今は会場から離れているだろう。或いは、今も出口で避難の手伝いをしてるか。

 

 

人質としていた者達に逃げられている中、マリアは何も言う様子は見られなかった。突如出てきた剣にどう行動すべき考えるように見えるが……………何故か一瞬だけ、彼女の顔に安堵が浮かび上がる。

 

 

 

「さっき以来だな」

 

「…………えぇ。そうね」

 

 

気さくな声に、マリアは警戒を緩めない。ジリッと踏み込む足に微力ながらも力を込める。対する剣は力なく肩を下げていた。

 

 

 

「一応聞きかせて貰うが、投降する気はあるか?」

 

「残念ながら、それは無理ね。私にはやるべき事がある。その為にここに立ち、ガングニールを纏っているの」

 

「そうか」

 

嘆息し、剣は困ったように肩を竦める。そのまま、彼は気軽とでも言う様子で告げた。

 

 

 

 

 

 

 

「────ならここで捕まる理由を与えてやる。俺を相手にした、なら言い訳ぐらいにはなるだろ?」

 

 

 

瞬間、剣は床を蹴り飛ばし、マリアに接近する。その歩幅は計算にして二歩。大分距離が空いていたにも関わらず距離を詰めてきた相手にマリアは咄嗟に片手を虚空に伸ばした。

 

 

光と共に、マリアの手には一本の槍が握られていた。彼女の纏うガングニールと同じ黒色、黄色で構成された刃と矛先。

 

 

馴染ませるように再度強く握るマリアは流れるように、向かってきている剣に突っ込んだ。槍をそのまま目の前にまで迫り来る青年の腹部へと突き立てようとする。

 

 

しかし、直後に剣は地面を蹴り、軽く宙へと舞う。自分を狙っていた槍の矛先に手をおき、そのまま彼女の真上を過った途端────

 

 

 

二、三発程。鋭い蹴りが振り返ろうとしたマリアに叩き込まれた。鈍い衝撃に苦悶の声を漏らすマリアだったが、すぐさま槍を横に薙ぎ払った。

 

 

それを剣は避ける気もないのか、左腕を顔の前に構え、ガングニールによる攻撃を防ぐ。カァンッ! と甲高い金属音が響き──────左腕を下ろすと同時に、無空剣は右手を掲げていた。

 

 

 

「愚策だな」

「ッ!?」

「────槍の持ち分はリーチだ。接近したままで戦わせるのは得策じゃないだろ」

 

 

マリアの使う槍は刃の部分が大きいが、本来の槍としての扱い方は間違いない。槍とは、本来中距離型として使われる武器だ。剣など、接近して攻撃しなければならない武器に対抗できるような。

 

 

だからこそ、剣はあくまで接近戦に準ずるマリアの戦い方を愚策と評した。槍を使うのであればもう少し距離を置いた戦い方をするべきだと。

 

 

振り上げた右手を叩きつけ、マリアの意識をそのまま刈り取ろうとする。

 

 

 

 

「ッ!!」

 

しかし、戦い馴れてきた戦闘センスが何かを捉えた。

その行動を強引に止め、跳び跳ねるように後退する剣。彼が回避行動を取った時には、元いた場所に黒いナニかが叩きつけられた。

 

 

砕け散る舞台の一部を脚で踏み潰しながら、剣は突然攻撃してきた何かについて確認した。目視ならば分からないものではないが、少しばかり驚愕が心を支配する。

 

 

 

 

 

「なるほど………そのマント、まさか武器でもあるとはな」

 

 

マリアの纏っていたガングニールのマント。ただの演出や外装の布だと思っていたが、ステージの床を貫いた所を見るに硬さはギアにも劣らない────まさしく彼女の有するもう一つの武装だろう。

 

 

 

(槍を主軸とした中距離型……………に見せかけた防御特化型か。あのマント、俺の足蹴を防ぐぐらいには頑丈だな)

 

 

瞬時に相手のパターンを推測し、それらがブラフである可能性も計算式として組み込む。同じように周囲の環境、状態、変化、全てのデータを戦術的な対応の為に確認し、解析する。

 

 

 

そして───────人間のものよりも発達した義眼と隻眼が、会場の変化を捉えた。

 

 

理解した剣は構えを解いて、

 

 

「さて、そろそろか」

 

「………?」

 

「俺相手に、気を引き締め過ぎたって事だ」

 

 

返答にもなってない答えにマリアはやはり怪訝そうであった。何かをしたのか、と槍を彼に向けながら周囲に目線を送ろうとした──────その時だった。

 

 

 

 

 

─────Imyuteus amenohabakiri tron(羽撃きは鋭く、風切る如く)

 

 

 

 

「っ!?聖詠だとッ!?」

「俺相手に気を取られ過ぎたな。もう既にこの会場にあるカメラは全て切断された─────これで、思う存分戦える」

 

 

それだけ言って、剣は少しの間沈黙する。そして、次の言葉を口にした。当たり前というか、言ってどうするのかと思うような事を。

 

 

 

「言っとくが、俺じゃないぞ?」

 

 

 

彼が理解した事は二つ。会場内にいた観客の全てが今の間に避難を終えたこと。そしてもう一つは中継カメラの停止───これは緒川や博士の手助けがあっての事だが。これによって人の目は会場から消え去った。つまり、シンフォギアを纏える状況になった訳だ。

 

 

 

 

光から飛び出してきた人影───青いシンフォギアを纏う翼。巨大化させたアームドギアを振り払い、蒼の斬撃を放つ。

 

 

 

「無空………すまない、助かった」

「気にするな、礼を言われる程の事じゃない」

 

会場内部を占拠するように群がっていた無数のノイズを殲滅し、シンフォギア装者との相手をしたのにも関わらず、その落ち着いた様子からは疲れすら見えない。

 

 

 

隣に立つ翼に、剣は前々から抱いていた一つの疑問を口にした。

 

 

「翼、お前から見てあのガングニール………どうだ?」

「…………間違いなく本物のガングニールだ。奏のを模した偽物ではない、あれはシンフォギアの一つだ。」

「俺よりも前からガングニールと近くあったお前が言うなら事実か」

 

 

二種類のガングニール。その実体は剣はある程度は把握している。かつては天羽奏の手に槍として────立花響にはアームドギアの無い、無手として使われている。

 

 

だが、それらは受け継がれたものであり、元々から一つだと剣達も考えていた。ならば、マリアの纏うガングニールは剣達も知るよりも前から存在していたと考えるべきか。

 

 

そう思っていると翼の斬撃によって出来た砂煙を払い、マリアが踏み出してきた。彼女は翼と話す剣を見て顔を険しくする。

 

 

 

「余裕ね、流石はルナアタックの英雄。余所見をしながら戦うなんて…………私程度ではまともに相手する価値は無いのかしら?」

 

 

「そうだな、俺相手に全力で来ない()()()には期待外れだ」

 

 

 

何…………? とマリアと翼が声を漏らした。特に気にすること無く、剣は落ち着いた様子でマリアに問いかける。

 

 

 

 

「────別に、お前一人じゃ無いだろ?お仲間を呼んでみても良いぞ。お前らにとって国家に対する抑止力にして対人戦力である『ソロモンの杖』を使え、とな」

 

「………ッ」

 

「やはり、あのノイズは『ソロモンの杖』の────という事は!米軍基地をノイズが襲撃したのも!!」

 

「大方、協力者だろうな。マリアと違い堂々と出てこずに会場内に隠れてるのを見るに、シンフォギア装者じゃない非戦闘員だ」

 

 

ここでもノイズを出さないのを見るに、あまり場所を特定されたくないと見る。今は前と場所を変えてる可能性はあるが、それはつまり戦う手段を持たないという事になる。

 

 

 

ならば、次にやる事は簡単だ。

 

 

「────それもこれも。詳しい事を吐いて貰うぞ」

 

 

事件の主犯。ソイツを捕まえれば、後々の事件を防ぐことに近づく。何より彼女達はただ無意味に行動を起こした訳ではない、剣も会ってすぐに分かったが───マリアは善人だ。そんな彼女が、こんなテロを起こすのには明確な理由があるだろう。

 

 

 

 

そして、薄ら笑いを浮かべるマリアの意識を刈り取ろうと剣が腕を振るった刹那(せつな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【α式百輪廻】

 

 

 

上空から無数の何かが飛来してきた。空気の振動からそれに気付いた剣はその場から距離を置くことはせず、

 

 

 

 

「────【魔剣双翼(ガードラック)】ッ!!」

 

 

背中に展開された二対の剣翼を前方に弾き飛ばす。しかしその動きは通常時のような、自動的に相手を狙い、殲滅するのとは違う。

 

 

二本の剣は柄の部位を接続させ、薙刀のように連結させると剣の目の前で大きくブーメランのように回転して暴れ回った。それによって、飛来してきた物体の多くは打ち落とされていく。

 

 

それらでも落とせなかった物は剣の手で弾き、掴み取る。切れ味は中々にあるが、剣のアームドフレームを切断できる程ではなかった。

 

 

 

手に取ったそれは、ピンク色の刃をした黒い円盤だった。これもシンフォギアのものかと考えていると、

 

 

 

 

「────行くデス!!」

「っ!!」

 

 

今度は目に見えて分かる年下の金髪少女が飛び出してきた。緑色の魔女帽子を着込んだ全体的に緑と黒の混じったシンフォギアをその身に纏い、剣に向かって身の丈よりもある長さの大鎌を振り上げていた。

 

 

あの攻撃を見れば誰もが回避行動を取るだろう。それが普通だ。しかし、無空剣は魔剣士、普通ではない人間兵器だ。

 

 

金髪の少女が払ってきた鎌の先を片腕で受け止める。カァァァァァンッ!! と甲高い金属音が響き、大鎌が剣のアームドフレームによって防がれる。

 

 

「えぇっ!?イガリマを受け止めるんデスかぁ!?」

(イガリマ………女神ザババの武器の片割れか)

「悪いが、このままへし折らせて貰う」

 

 

もう片方の手でイガリマと呼ばれた大鎌の持ち手を押さえ、防いでいた腕を動かし今度は鎌の刃を掴む。抵抗しようと鎌を振り回そうとする少女だったが、剣は力で鎌を押さえつけ、そのまま大鎌の刃を真っ二つに叩き割ろうとしたが─────────

 

 

 

 

「切ちゃんっ!!」

(ッ!もう一人!あの円盤の使い手か!?)

 

 

飛び込んでくる────あの黒い円盤、丸鋸の使い手かと思われるピンク色の少女に、剣はすぐさま距離を置く。大鎌をへし折る事への躊躇もない。少女は追撃というように、無数の丸鋸を乱発するように放ってきた。

 

 

それら全てを構えてたアームドフレームで弾く。だが切れ味があるらしく、漆黒の装甲に傷がつく音が耳に伝わってきた。

 

 

チッ! と舌打ちを隠さず、自分が弾き落とした丸鋸を掴み取り、ピンク色の少女の近くの地面に投擲した。削り取るというよりも、単なる砲弾でしかない威力は小さな瓦礫を生み出し、ピンク色の少女へと牽制へとする。当然それを受けた瞬間、少女の攻撃の手は止まった。

 

 

 

「やらいでか、デェェェーーーースッ!!!」

 

 

しかし今度は緑色の少女。振り上げられた大鎌に剣は両腕を交差させ、刃の部分を止める。金属というよりも、それぞれ違うギア同士の衝突に激しい火花が散った。

 

 

彼は両腕を勢いよく上にかち上げ、緑色の少女を仰け反らせると、追撃をかますことなく距離を置いた。

 

 

いつの間にか、マリアと交戦していたであろう翼も剣の様子を横目にすると、すぐに戦いを切り上げるように後退してきた。そんな彼女の目の前で、剣は目の前に並ぶ二人の少女を見据え、短く息を吐く。

 

 

「………鎌に丸鋸、どっちも斬撃系統。中々に相性もコンビネーションも良いな」

 

「無空!無事か!?」

 

「問題ない。大したダメージでは無いしな」

 

 

とは言っても、無傷ではない。剣は何とか防御を行った両腕の装甲を確認する。先程の放たれた鎌と丸鋸による斬撃痕が、幾つも残ってしまっていた。

 

 

(───セカンドとは言え、俺のフレームに傷を付けるとは。あのピンク………それよりも深い切れ味の、緑も警戒すべきか)

 

 

考えながら、剣は組み込まれた機能を使い、損傷の多いアームドフレームを解離した。引き剥がされ地面に転がる装甲を他所に、剣の両腕には新しいアームドフレームが生成された。

 

 

 

 

 

「ヤベェデスよ調!アイツ、アタシのイガリマを砕こうとしやがったデス!!何者なんデスか!?」

 

「………切ちゃん、あいつが無空剣だよ」

 

 

攻撃の効いてない様子に困惑する少女達。剣としては充分効いてた(装甲に傷を付けるだけでも)とも言えるのだが。

 

 

少女達二人の近くに歩み寄ったマリア。あの様子からして仲間であるのは最早確実だった。

 

 

「切歌、調。マムからの指示?」

「そうデス!無空剣の乱入で色々面倒な事になったデスけど!」

「このまま続行するって」

「………そう、分かったわ」

 

 

納得させたよう頷くマリアはすぐに不敵な笑みを浮かべ、槍の矛先を剣と翼に向けてきた。しかし、向けられた言葉は翼だけだ。

 

 

「さて、これで二対三。数では明らかに有利になったわ。無空剣だけならともかく、貴方は彼の足手まといになるんじゃないかしら?」

 

「フッ………そうか」

 

 

だが、翼は刀剣状のアームドギアを手にしながらも、逆に笑みを浮かべる。流石におかしいと感じたのか不審そうな視線を向ける彼女達だが、

 

 

 

「ならば此方も───」

「数の差では有利になるという訳だな」

 

 

二人が顔を上がると、ヘリから飛び降りてきた二人の姿があった。響とクリス、それぞれのシンフォギアを纏う少女達も戦線に参戦してくる。

 

 

 

武装組織『Fine(フィーネ)』と二課のシンフォギア装者と唯一と言っていい魔剣士(ロストギアス)。ライブ会場を中心とした戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

轟く爆音。

大規模な施設に炎が広がり、悲鳴や轟音が続いて響き渡る。世界中に公開されたライブで、マリアが宣戦布告をし始めた頃だった。

 

 

 

自動で開く機械的な扉。中にあるのは一つの椅子、それ以外は存在しない。全てが暗闇に包まれた空間に、一人の青年が入り込む。

 

 

彼の顔には血が飛び散っていた。本人には傷がなく、返り血としか言いようがない。それを軽く拭い取り、青年は座席に ズカッ! と腰を掛ける。

 

 

「『フルメタル・エクステッド・アグレッサー』、【魔剣計画】の副産物。魔剣士よりも非効率的だが、強大な火力を有した、新世代の超巨大破壊兵器」

 

 

扉が閉まり、目の前に出てきたコンソールを弄りながら、青年は両眼を細める。が、すぐに鋭い笑みを作り、独りでに呟いた。

 

 

「お手並み拝見といこうか────序列三位とシンフォギア装者」

 

 

 

 

 

 

直後の事だった。

火災に見舞われていた施設が内側から吹き飛ぶ。あるのは建物の残骸の数々。そして、まるで隕石でも落ちたかのように残る────大規模な大穴だった。

 




強いなぁ剣さん(真顔)

こんなに強すぎるのは普通にボスキャラと言ってもおかしくはない。まぁそれよりも格上なOTONAとかが数人いるんですけどね、シンフォギアには(戦慄)


因みに初っぱなからあんなに暗躍してた感じのエリーシャは今回の章では特に活躍しません。うわー、怪しいことしてるなー、ぐらいで見てくれればありがたいっす。


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