戦姫絶唱シンフォギア 神装魔剣   作:虚無の魔術師

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遅くなってすみません、許して………許して……!ゲームなんてやってないから!!(暴露)


閃滅の光

「────刹那、さん」

「………如月刹那、まさかこの場にいるとはな!一体何のつもりだ!?」

 

 

呆然としている響の隣で、翼がペンダントを握り締めながら、そう声を荒らげる。対して彼女達を見下ろす立ち位置にいる刹那はふん、と鼻を慣らしながら告げる。

 

 

「何って、用はお前達だよ。より正確には、お前達と戦う事だ」

 

「私達、だと?」

 

「どうせ理解してるだろ?この俺が、完全聖遺物と同化している事くらいは。ただ肉体に慣らすだけでは上手く適応しない、より適応させる為には戦いでより適応を深める事だ。だからこそ、誰でも相手をしたかった。実力的には格上の序列三位が良かったが…………まぁお前達でも十分な実力はあるだろう」

 

 

やはり、彼がデュランダルと同化したのは間違いではないのだろう。そして響達を相手にしたいのは、デュランダルによって強化された実力を確かめるためか。

 

 

「───ギアくらい纏えよ。別にお前達を殺すのが目的じゃないんだ。それくらいは許容してやる」

「っ」

 

 

あくまでも余裕の態度。

翼とクリスも警戒を緩めようともせずに、響も戸惑いを隠しきれていない。先程の発言全てが嘘で、隙を見て不意討ちするつもりではないかという可能性が浮かび上がるからだ。

 

 

だが、刹那は騙し討ちするような動きは見せていない。そもそもする必要すらないのか。

 

 

「いいから早くしろよ。俺だって我慢は出来るが、聖人じゃあない。それとも、無防備のまま殺して欲しいか?」

 

 

「………先輩」

「……もとより、戦うことには変わりない。猶予をくれるのであれば素直に受け取ろう」

 

 

下手に拒否するような話ではない。相手が待っていてくれるのであれば、響達は遠慮なくシンフォギアを纏うことが出来る。

 

 

 

 

─────Balwisyall Nescell gungnir tron(喪失までのカウントダウン)

 

 

 

─────Imyuteus amenohabakiri tron(羽撃きは鋭く、風切る如く)

 

 

 

─────Killter Ichaival tron(銃爪にかけた指で夢をなぞる)

 

 

 

 

 

 

「…………ふぅん、前々から見てたが、実際に見てみる珍妙なシステムをしてるな。シンフォギアってのは。3億もの封印だったか?それでもしなければ人間は纏えないらしいが、人体に負荷を掛けすぎない為か、或いは制作者にもどうしようもないものか。…………惜しいな、それさえどうにかすれば俺達とも渡り合えるというのに」

 

 

まぁいい、と刹那は吐き捨てる。両手を握り、開き、調子を確かめるように見つめる。そうして、万全の状態であるのか、満足したように響達を見下ろした。

 

 

 

そして、告げる。

 

 

 

 

 

「──────完全聖遺物の試運転だ。少々不足しているが、妥協してやるから感謝しとけよ」

 

 

如月刹那が軽く、指を弾いた。瞬間、彼の周囲から神々しい閃光が生じる。迸る純白の閃光は響達のいる場所へと炸裂した。

 

 

 

咄嗟に回避した響は拳を握り締め、刹那へと向き合う。しかし、そこで異様なものを眼にした。

 

 

閃光の直撃した場所。コンクリートの地面が抉られている所に、何かが落ちていたのだ。もしかしたら、それが着弾したのかもしれない。

 

 

 

それは銀色に輝く鋼で構成された─────

 

 

 

「────球?」

 

 

「……ようやっと気付いたか。まぁ、魔剣士でもなければそれも当然か」

 

 

呆れたように嘯く刹那が人差し指を動かす。すると球体が凄まじい速度で飛来し、彼の元へと向かう。顔にぶつかる、直前にその動きを止めて、ゆっくりと距離を置きながら漂う。

 

 

刹那という青年が球体を重力で操ってる、そうでもなければ説明がつかない現象だ。

 

 

魔剣士(ロストギアス)には主要武装(メインウェポン)があるのを知っているな?お前達が知ってる範囲でなら、無空剣の龍剣グラム、みたいな感じだ」

 

 

一つだけではない。刹那を中心に銀色に光る球体が、円の形を成していた。先程、響の眼前に突っ込んできた物も含めて、合計十個のソフトボール程のサイズをした鋼球。

 

 

不思議な事に、全ての鋼球が統率の取れたような同じ動きで刹那の周囲を回転していく。その速度は全部が常に一定。

 

 

 

「────エクリプス・オールビット」

 

 

パッ、と刹那が振り上げた両手を開く。瞬間、円を描いていた鋼球達がピタリと動きを停止させる。しかしすぐに動き出すと刹那の背後へと移動し、円陣を作り出していた。

 

 

 

「俺が魔剣士として搭載された唯一の武装だ。攻守一体、それら全てに特化した対人対軍特化兵装。まさに無敵とも言える力だろ?」

 

 

クイ、と指を弾くように振るう。

直後、鋼球────オールビットがの一部が、射出された。変則的な軌道をしながらも、三人へと迫り来る。

 

 

その一つ、直進してきた鋼球と響が肉薄する。速度を押し殺す所か、複雑な軌道で突っ込んでくる鋼球を───響は、叩き落とすことを決意した。

 

 

「ていやぁっ!」

 

正面から殴りつけたアームドギア越しに、衝撃が伝わってくる。ただの鋼球だというのに、まるで砲弾を受け止めたかのような一撃。今にも押し返されそうになりながら、響は腕から拳へと力を込めていく。

 

 

 

─────しかし、ふと腕の先から響いていた衝撃が消失した。突然の事に響は前のめりに倒れそうになる。

 

 

 

「あ、あれっ?」

 

「立花!後ろ─────」

 

 

翼の助言を聞き、行動に移すよりも先に。

 

 

振り返ろうと動く響の背中に、視認出来ない程の速度で、鋼球が打ち込まれた。初めて肉体に(ギアを纏ってるとはいえ)直撃した響は、激痛に呻くことも出来ずに工場の壁の向こうへと吹き飛ばされる。

 

 

 

立花、響、と彼女を呼ぶ二人の声が聞こえるが、応答はない。代わりに、オールビットの二基が崩壊した壁の方へと向かっていく。大方、響への追撃狙いだろう。

 

 

「無論、欠点がない訳ではないさ」

 

 

鉄材の上から降り立った刹那は、まだ話を続ける。そんな彼に、走り出した翼が距離を詰めていく。無防備な彼へと躊躇うことなく刀剣のアームドギアを振るう。

 

 

「俺の《デュランダル》は、膨大なエネルギーを費やす。数時間も戦えない、全力を出せば十分が限界だ。だからこそ、四位という枠に居座っていた」

 

 

しかし、彼女の放った斬撃は刹那の操るオールビットの一基に難なく受け止められてしまう。更に斬りかかってくるが、それら全ての攻撃をオールビットが弾き返す。

 

 

「此方側のデュランダルという、完全聖遺物を取り込んだ俺は最早制限など何一つないッ!!」

 

真下からビットが刀剣へと突撃し、上から叩き下ろそうとしていた翼は後方へと仰け反ってしまう。その隙を逃すことなく、刹那は自分を囲むように回転していたオールビットから凄まじい火力を収束させた光線を解き放った。

 

 

左右から迫り来る二つの光に、彼女は勢いよく剣を地面へと突き立てながら跳躍する。直進していく閃光は翼が跳んだ後の場所の壁を削り取るだけに終わってしまう。

 

 

 

距離を置いて着地した翼に、刹那は二基のオールビットを手で軽く撫でる。鋼球に自我は無いのだろうが、彼からすれば自分の身体の一部といっても過言ではないからこその扱いなのだろう。

 

 

 

「俺のオールビットは自由自在に操作する事が出来る。感覚、聴音、触覚、俺の手足や眼や耳のように扱える……………この俺の指先のように。何故だか分かるか?」

 

 

答えない翼。いや、初めて知った事実を聞かされた所でそう簡単には分かる筈もない。何より、翼からすれば相手の言うことに耳を傾けておく必要はないと感じていた。

 

 

「────切り分けた神経の断片を埋め込んであるんだよ。遠隔で作用させる為に、脊髄を切り分けてこの腕とビットの内部に組み込む事で、あらゆる状況や戦況にも適応できるようにな」

「………!人工脊髄か………ッ!」

「正解だ。俺達魔剣士に補強された機械のパーツ、それと機械によって拡張した脳波でビットを完全に制御させる────無空剣の魔剣双翼も似たようなタイプだが、俺の方が明らかに優れている」

 

 

魔剣士には人工脊髄が組み込まれ、様々な改造が施されている。そんな風に話してくれた青年の事が思い浮かび、思わず口に出してしまう。

 

答えてくれた事に満足しながらも話を進める刹那は、自分の両手を────十本の指を開き、見せつけながら言う。

 

 

「俺が十本の指で操れるのは十基が限界。だが、一々全てを操作する必要はない。自動防御用の演算も組み込んでおけば、勝手に俺を守る」

 

 

こんな風にな、と刹那が言うと、彼の横で火花が散った。オールビットが何かを撃ち落としたのだ。見ると、ボウガンを構えたクリスがそこに立っている。自分の攻撃を簡単に受け止められた事にクリスは苦々しく顔を歪める。

 

 

その様子を見て、金髪の青年は嘲笑を浮かべる。

 

 

「豆鉄砲だな。幾ら撃った所で俺には届きもしない。お前のような飛び道具系統なら当然の事だ」

 

「なら───こうしてやらぁ!!」

 

 

勢いよく上へと跳躍したクリスのアーマーの一部が変形していく。背中に取り付けられた大型ミサイルが、目標へと向けられる。

 

 

 

 

【MEGA DETH FUGA】

 

 

 

「まだ分からないのか」

 

 

放たれた一発のミサイルを前にしても、刹那は顔色を変えずに掌を向ける。瞬間、彼の手元に集まった四基のオールビットが回転を繰り返しながら、膨大な熱量を蓄積させた光を放出していく。

 

 

結果、クリスの放ったミサイルは刹那に届く前に刻まれた。直撃することもなく、外れた軌道で着弾した地面に爆発を連鎖させる。巨大な爆発音が複数、廃工場の内部に響き渡った。

 

 

当然、近場にいた刹那も巻き込まれ、爆炎に包まれている。どれだけ強力な防壁に包まれようと、あれ程の炎に呑まれてしまえば無傷では済まない───────

 

 

 

 

「幾ら撃った所で俺には傷一つもつかない。この攻守一体の布陣を破らない限り、な」

 

 

それでも、如月刹那には届かない。オールビットでその身を守っていたのか、四つの鋼球が高速回転をして、周囲の黒煙を吹き飛ばす。

 

 

自分の攻撃を難なくいなされたクリスは、何故かニヤリと笑みを深めていた。怪訝そうになった刹那は目を細めるが、すぐさま何かに気付き真上を見上げる。

 

 

巨大なヒビが入った天井。どうやら彼女の放ったミサイルの一発が天井付近で爆破したのだろう。本来なら違和感に早く気付けたのかもしれないが、刹那がミサイルを切断したからこそ、爆破音が増えてしまっていた。

 

 

如月刹那のあらゆる物を分断する程の光線の火力。それを信じた戦法という事になる。

 

 

「無数の瓦礫で押し潰すか────くだらない」

 

 

腕を振るうと、全てのオールビットが刹那の元へと戻る。上空に降り注ぐ瓦礫の数々を見上げ、分断されている神経回路の一部に脳波を送り、操作を行う。

 

 

 

瞬間、刹那のオールビット十基全てが、閃光を射出する。今までの威力とは変わらない、だがその密度が明らかに違うのが明白だ。そしてもう一つの違い、十本の極光は捻れ回るような軌道をしていた。

 

 

刹那を軸として、オールビットが先程と変わらぬような回転を繰り返している。それによって、直進するしかない光の束は更になる広範囲の殲滅を実行できる。

 

 

飛来する瓦礫を消し飛ばし、散乱する閃光が廃工場の壁を穿ち、細切れにしていく。壁や柱を削られた結果、既に使われてすらいない廃工場は轟音をたてて崩れ去る。

 

 

 

 

完全に崩落した後、瓦礫の山を内側から閃刃によって切り裂いた刹那が出てくる。瓦礫に呑まれて無傷なのもそうだが、埃一つもついてないのは明らかに彼の異様さを示している。

 

 

 

 

 

────【千ノ落涙】

 

 

瓦礫に呑まれずに崩落から離脱していたであろう風鳴翼。彼女は滑るような動きで此方へと近付きながら、無限の短剣の雨を降らせてくる。あの程度は恐れる事ではない。だが、仮にもシンフォギアの技であるのならば、多生のダメージは有り得るかもしれない。

 

 

そう判断した刹那はオールビットの二基を操り、高速で回転させて短剣を弾き落としていく。防ぎきれなかったのか、オールビットの隙間を縫うように飛んできた一本の短剣は片手で払い除けた。

 

 

足元に転がったであろう短剣に意識すら向けず、刹那は翼の行う短剣の雨が途絶えたのに気付く。すぐさま目の前まで迫ってきている翼に、嘲笑を投げ掛けた。

 

 

 

「小細工を!!その程度で俺を捉えきれれるとでも─────」

 

 

ギチリッ! と。

身体が軋むような感覚と共に、1ミリも動きが取れなくなる。その変化に余裕を保っていた刹那が、明らかな動揺が浮かぶ。しかし今自分に起きている現象が、先程弾いたと思っていた短剣によるものだと確信した。

 

 

動けずの刹那は、オールビットに脳波を送る。例え動けずとも、分離された神経回路越しにオールビットを操ることは可能だ。すぐさまの四基の鋼球を操り、翼へと攻撃を放つ。

 

 

 

「嘗めるな!その動きは既に見切った!!」

 

 

遠距離からの閃光、近距離からの高速軌道での突撃。それら全ての攻撃は、風鳴翼によって迎撃されてしまう。高速移動と反射機能による屈折した閃光も、刀剣で打ち払われたり、身軽な動きで避けられ。鋼球の激突も、やはりいなされたり、叩き返されたりする。

 

 

 

すぐさま近くにあった二基のオールビットを動かすが、それでは風鳴翼の動きを止めることは出来ない。どれだけ速く動こうと、オールビットは彼女に攻撃を当たることは出来なかった。

 

 

 

 

「─────覚悟ッ!!」

 

そして、彼女が放った一閃が、無防備な如月刹那へと迫る。斬撃が直撃した瞬間、全ての戦況が一転する。

 

 

 

 

 

 

苦悶の顔を浮かべる者と、確信した笑みを浮かべる者。それら二人が、先の攻防の勝者となる。それは、

 

 

 

 

 

 

 

 

前者が風鳴翼で、後者が如月刹那だった。

確かに翼の刀剣は問題なく届いていた。オールビットの全ては翼の一閃を捉えきれない。

 

 

だが、彼女の一撃を止めたのは───紫色の障壁だった。制止していた刹那のオールビット、それら二つが分解しながら、四角形状に展開した防壁。

 

 

「……………流石だな、まさか俺を出し抜くとは。その珍妙な技も想定外だ」

(斬れて────ないッ!?この光の壁、いつの間に─────)

「残念だったな、小手先は俺の方が上だ」

 

 

もう一基のオールビットによって影へと刺さる短剣を弾いた刹那は、翼の首とアームドギアを掴み取った。回避することも出来ず、持ち上げられる翼は、アームドギアに力を込めるが、それでも刹那の方が上らしく、どうしようも出来ない。

 

 

 

「実際に戦って分かった。お前達三人はどいつも特筆した強さだ。その中でもお前は経験と技術は一番優れている。戦争兵器である俺達に次いでな」

 

 

刀剣の刃の部分を掴んでいた刹那は、軽々しくそれを放り投げる。片手の指を弄ぶように動かしながら、持ち上げた翼に告げる。

 

 

「だが─────実力不足に変わりはない」

 

 

首元を掴む手に力を入れると、彼女の顔が苦しそうに歪んだ。武器を失った翼は刹那の拘束から逃れようと両腕を使い引き剥がそうとするが、それ以上の力によって不可能になってしまう。

 

 

 

「先輩!くそォ!!」

 

 

翼の状態に、クリスがアームドギアを変形させる。とにかく弾幕を当てて、彼女を解放させようと考えているのだろう。

 

 

そんな彼女に、刹那は鬱陶しいと言うようにオールビットを差し向ける。無数の小型ミサイルを放とうとしたクリスは、迫り来る鋼球の対処に迫られる。

 

 

 

「大人しくしていろ。そんなに相手して欲しいならすぐにしてやるから─────」

 

 

 

 

 

「───翼さんッ!!」

 

 

勢いよく跳んできた響。彼女は翼の様子に目の色を変え、刹那へと迫り来る。

 

 

遮られた事に少々の苛立ちを感じたのか不快そうな顔を浮かべる刹那。しかし自分の差し向けたオールビットを掻い潜ってきた事に感嘆すると、空いていた片手を響へと向ける。

 

 

先程と同じように二つのビットを使い、紫色の防壁を張る。それを前に、響は自身のアームドギアである拳を叩き込んだ。

 

 

 

 

「無駄だ。例えお前がどれだけ挑んだ所で───」

 

 

───俺の防壁を破れない。そんな風に嘲笑おうとした途端だった。余裕のあまりに視線すら向けていなかった刹那の耳に、小さな音が反響した。

 

 

 

 

ピシリ、と。

少しだけ動かした視線の先には、オールビットが張った紫色の障壁がある。その向こう側では、障壁に拳を叩き込んでいる立花響の姿。

 

 

彼女が打ち込んだ部分に、僅かな亀裂が入っていた。

 

 

「………何?」

 

 

思わず全ての意識を向ける。風鳴翼の首を締め上げていた力も、それのせいで弱まってしまう。だが、意識を向けずにはいられなかった。

 

 

しかし、その直後。

 

 

 

防壁を砕き打ち破った響の拳が、刹那の顔を叩き込まれた。衝撃によって吹き飛ばされ、風鳴翼もようやく解放される。

 

 

「ゴホッ、ゲホッ……」

「大丈夫ですか!?翼さん!?」

「……えぇ、問題ないわ………ありがとう」

 

 

二人の会話は、瓦礫へと倒れた刹那の耳には入ってない。彼は、呆然と顔を押さえていた。

 

 

 

(────殴られた?俺が?)

 

 

冷静に考えるが、それでも理解が間に合わない。如月刹那の操るオールビット、それによる防壁は強力だ。一番弱い段階のものだろうと、一般兵器の攻撃は受け止められる。例え戦車の砲撃だろうと、爆弾による至近距離の爆発だろうと。

 

 

(あの女…………一体何をした?ただ殴ったように見えたが─────試してみるか)

 

 

クイ、と指を動かす。雪音クリスに向けていたオールビットを操り、合計四基の力で立花響を囲むように防壁を張った。

 

 

しかし彼女はパワージャッキを引き戻し、最大限の力を込めた拳を防壁を打ち付ける。強固である筈の防壁も、次第にヒビが入り、粉々に砕け散った。

 

 

 

(間違いない。やはり立花響は────)

「俺のデュランダルの防壁を破れる、という訳か」

 

 

刹那の防壁はシンフォギア装者には破れない、それは彼自身がそう確信していた。爆発的な火力であれば自分達をも倒せるシンフォギア、しかし制限や安全を考慮した形故に、全力を出しきれない。そして前に話した通り、この世界の兵器では刹那の防壁は破れない。

 

 

 

例外はある。それはたった一つ。この世界にはただ一人しか存在せず、もう一つの世界では十数人しかいない存在。

 

 

 

────自分と同じ存在である、魔剣士しかない。

 

 

 

 

「──────面白い」

 

 

 

何が原理なのか、彼女の身に何が起きているのか、大方予想はできるが、今の際はどうでもいい。

 

 

 

自分に傷を与える可能性を持つ相手、それがまさか自分が小馬鹿にしていた相手だとは思いもしなかった。

 

 

「単なる実力試しの範疇かと思ったが、予想外にも天敵とバッティングしたもんだ。俺としては風鳴翼が一番警戒すべきかと思っていたんだがな」

 

 

 

刹那は宣言すると、十基のオールビットを自分の元へと集める。一斉に集合した十の鋼球、それらの神経回路にとある命令を組み込む。

 

 

 

『機体のエネルギー残量の多い四基は回路を繋げたままに。残る六基は回路を分断すると同時に自律思考パターンを起動、与えられた命令を遂行せよ。各三基へと分かれ、風鳴翼と雪音クリスの足止めを。邪魔はさせるな』

 

 

命令を終えた瞬間、六基のオールビットはそれぞれの相手である二人へと迫る。二人もそれに気付いたのか即座に迎撃し、オールビット達による激しい戦闘へと入る。

 

 

 

「翼さん!クリスちゃん!!」

 

「気にするな。単なる足止めだ。この俺の邪魔をさせないようにな」

 

 

刹那が声をかけると、響は拳を握り締めながら此方へと向き合ってきた。言葉を掛けようとする素振りは見えるが、それよりも刹那の敵意に応えるしかないと感じたのだろう。

 

 

 

 

「────来い、俺とお前。サシでやり合ってやろう」

 

 

 

そして、二人は激突した。

 

 

まず最初に先陣を切ったのは響だった。彼女はすぐさまパワーパーツを押し戻し、拳を叩きつけてくる。

 

しかし刹那は後方へと後退し、回避を取る。そして身体を捻ると、響へと向けてカウンターのように腕を飛ばしてくる。

 

 

響はそれを避けることもせず、受け止めた。衝撃を緩和させる事もなく耐えた少女に、刹那は少し感心したのか唇を緩める。

 

 

ならば、と刹那は地面を蹴り、踵落としを決めようとした。しかし響はそれを一歩下がることで避ける。地面にヒビをいれた刹那の足蹴りに、響は構えを取った正拳突きを打ち込んだ。

 

 

 

胴体に直撃した一撃に、刹那は顔を歪めながら引き下がった。苦痛、というだけではないらしい。

 

 

 

「チッ、んだその戦い方。………拳法か?くだらない技術だな、それで実力差を縮められるとでも?」

「っ!これは師匠から教えて貰ったものです!くだらなくなんかない!」

「教えて貰ったね、無駄には変わり無いだろ…………拳法一つで世界を救えるか?巨大な怪物を倒せるか?─────そういう事だ」

 

 

吐き捨て、響に向けてビットを叩きつける。凄まじい速度をもった金属の突撃。生身の人間ならば肉を抉り、骨を砕く程の一撃となる。

 

 

「剣術も格闘術も、人間が積み重ねた技術は何の意味も成さない。人知を越えた圧倒的な力の前にはな。俺もそれを理解したからこそ、魔剣士へとなる事を選んだ!一国の軍隊も、無数の戦艦も、全てを上回る事の出来る────最強の、この力を!」

 

 

後方へと跳躍し、目の前にオールビットを配置する。円状の形で高速回転を繰り返すビットが放った光線を一点へと収束させ────一つの極光を解き放つ。

 

 

響は手を伸ばして、その光を何とかして受け止めようとする。しかし、内包された熱量と質力から止めきれる事は出来なかった。勢いに任せて横へと腕を弾くと、閃光も其方の方へとズレる。何とかいなすことが出来た響は、今も腕を押さえながら刹那へと声をあげる。

 

 

 

「どうして、ですか!?」

「───」

「刹那さんは何がしたいんですか!?私達やマリアさん達と一人で戦ってまで、何が目的なんですか!?剣さんや色んな人を苦しませた、魔剣士になった理由を!せめて教えてください!」

 

 

言葉を紡ぐ。話を求める。魔剣士であろうと、同じ人間なのだ。きっと分かり合えると、思いを秘めながら。

 

 

「…………あぁ、そう言えばそうだったな。前に教えてやるとか言ってた気がする────まぁいい、別に誤魔化す事でも無いしな」

 

 

前のコンサート会場で話した事を思い出したのか、億劫そうな刹那。それでも問題ないのか、彼はゆっくりと口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の目的は─────絶対的な力を手に入れる事だ」

 

 

 

…………え? と響は、唖然とする。それを理解しているのか、知らずか、刹那は高揚とした様子で上空に手を伸ばした。

 

 

夜空に浮かぶ月を掴み取るように、手を握り締めて笑みを深める。

 

 

 

「序列三位である無空剣や忌々しい序列二位(セカンド)、俺や無空剣すらも足元に及ばない絶対の名を冠する最強の存在 序列一位(ロストワン)。奴等をこの手で倒せる程の、無敵の力!神なんてものが存在するとしたら、ソイツも恐れ、恐怖するような絶対的な力が! 一人で世界を滅ぼすも生かすも決められる! 何もかもをこの手で決められるほどの強さがッ!! 俺は欲しいんだよッッ!!」

 

 

狂ったように叫び続ける刹那。いや、実際に狂気に囚われているのだろう。何かの理由で力というものを求めた彼は、実際にその力を手に入れて、壊れてしまったのかもしれない。だからこそ、力や強さに酔いしれているのだろう。

 

 

無空剣も、前に同じような事を言っていた。現存する魔剣士の一部は完璧に歪んでしまっていると。仲間の犠牲や度重なる改造を経た結果、人格に支障をきたすこともあるらしい。

 

現に虹宮タクト(セカンドタイプ)も劣悪な環境下によって人格が変容してしまい、ついには複数の人格を作り出すにまでなってしまったのだから。

 

 

 

「お前も分かるだろ?強さがこの世界にとってどれだけ意味を成すか。強さがなければ誰も倒せない、誰も守れない。誰も救うことが出来ないんだからなァッ!!」

 

 

「ッ!!そんな事ないですよ!強くなくたって!手を差し伸べる事も、話し合える事も出来ます!………それに、この力は───シンフォギアは誰かを助ける力のはずなんです!だから!」

 

「……………フッ、誰かを助ける力か」

 

 

口に含む笑みは、失笑に近いものだ。いや、見た感じはそう見えても、内側にあるのは嘲りに過ぎないのだろう。彼からすれば立花響の言っている事は馬鹿らしいと言うべきものだ。何故なら、それが彼の理念に従うことなのだから。

 

 

力を全てとする刹那にとっては、弱者を助けることはあまり望ましい行為ではない。弱者は卑怯だ。自分達の弱さを正当化して、あろうことか弱さを盾にして堂々と生きている。そんな連中を助けるという考え、くだらんと吐き捨てるべきだ。そうしなければならない。

 

 

 

なのに、刹那はそうはしなかった。

響の言う、『誰かを助ける』という事に、秘かに納得しているようでもあった。明らかに彼女の言葉を否定しなかったのは、何の意図があるのか。それは彼にしか分からない。

 

 

 

 

 

 

 

だからなのか────刹那が口にしたのは否定の言葉でもなく、とある疑問だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───────その誰かは、お前を()()()と罵った連中も含まれてるのか?」

 

 

ビクッ、と。

気を引き締めていた筈の響は、全身に怖気が走る感覚に陥った。握り締めていた拳から力が抜け、足に震えが生じ始める。

 

 

そこまで────如月刹那の触れた話は、響にとって無視しがたいものだった。彼女の語られていない過去に、踏み込まれたのだから。

 

 

 

「………な、なんで?」

 

「俺は用意周到でな。相手のことは事前に調べておくタイプだ、その時にお前の事も知ったよ。中々に面倒な環境なんだろ」

 

 

如月刹那を含む魔剣士は基本機能として通常のスパコン並みの知識量と情報回収能力を有する。後者に関しては機械端末を使った裏技のようなものだが、インターネット機器さえあればそこから膨大なインターネットから目的の情報を手に入れることなど容易い。

 

 

 

正直な話、この件を進んで口にするつもりはなかった。だが、刹那がその考えを拭い捨てる程、目の前の少々はあまりにも善性が強く出ていた。

 

 

────それが、昔の事を思い出させて、心底不愉快になった。

 

 

 

「ノイズ被災者現象。ノイズ災害から生き延びた人間は聖遺物の秘匿の意味合いも兼ねて補償金が支払われた結果、善良な一般市民はノイズ被災者を弾劾した。人殺し、税金泥棒と。少なくともお前には同情するよ、何とか生き残ったのにも関わらず、何も知らず安全圏にいる連中から心無い罵声を投げ掛けられたんだからな」

 

 

 

 

 

「─────なぁ、お前の善意(ソレ)は本当にお前のものか?」

 

 

容赦のない言葉の刃が、響を切り裂く。違う、と否定の言葉を口に出そうとした響だったが、刹那はそれを許さない。違くないだろ? と、彼女の言葉を先読みし、嘲笑いながら続ける。

 

 

 

「─────人助けなんてものは全て、お前が自身を擁護する為の綺麗事じゃないのか?」

 

 

刹那は言葉を紡ぐことを止めない。響への追撃を続けながら、彼女を心身共に追い詰めていく。

 

 

 

それでも拳を握り締め直す響、彼女の姿に感心したらしく刹那も軽い口笛を鳴らす。だが、見ているだけは有り得ない。彼は知ったような口で、知ったような言葉を吐く。

 

 

それは更に、無視できない内容だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「─────自分の護りたかった人を失っても、そこまで言えるのか?」

 

 

今度こそ、響は明らかに動揺した。

反論しようとした喉が干上がり、口が震えるだけで何も言えなくなる。

 

 

 

「小日向未来だったか?ソイツを顔も知らない誰かが殺しても、許せるのか!?憎むことなく、他の誰かの為に戦えるのか!? 無理だろ!? 無理なんだよ!! 奪われたものは何一つ取り戻せない!

 

 

 

 

 

自分の掲げてた善意が、どんなに脆弱なものかを!どれだけ善意が集まろうと、たった一人の悪意によって全部奪われる! 同じく善意を掲げた仲間達を失い、一人になった時にようやく理解する!!

 

 

 

 

 

 

強さこそが全てだ! 憎い奴を殺すのも、誰かを護るのも、強さが無ければ何も出来ない!!力によって全ての物事が決まる、それこそがどの世界も変わらない、唯一の真理だとな!!」

 

 

歪んでいる、狂ってすらいる。

だが、彼がここまでになってしまった要因は何なのか。たった一人の青年が、狂信的な程に力に、強さに固執する様は見ていられない。

 

 

彼の言葉が本当であれば、話した内容が真実であれば、如月刹那はある意味で言う被害者だ。立花響のように、ノイズ被災者というだけで、生き残っただけで迫害されたように。彼も周囲の環境によって狂ってしまった。虹宮タクトという誰かの名を与えられ、その模造品として扱われ続けた結果、自分を保てなくなってしまった青年。彼のように、何処か大切な所が壊れて、考えがずれてしまったのだ。

 

 

 

そこまで、なのか。

【魔剣計画】とは、自分達の大切な人を道具としか見ずに、彼の保護者である人が激しい憎悪を向け、彼等の安寧を崩そうとする男が与する組織というのは。

 

 

こんなにも色んな人に影響を与え、呪いを刻み込んでいるというのか。

 

 

 

「同情なんていらない。そんなものは俺達に不要だ。まぁ、哀れまれたい、傷を舐めて欲しい、そんな風にお前達に近付いていった臆病者もいるがなぁ?」

 

 

誰の事を言ってるのか、すぐ分かった。すぐさま立ち上がり、向き直ろうとする響。しかし刹那は響を蹴り飛ばすと同時に、その首を掴む。

 

 

 

「良いな、その顔は悪くない」

 

 

響がまだやる気があると気付いた刹那は少しだけ賞賛するが、それだけだ。口に出した言葉とは違って、刹那に執着するほどの興味なんてない。

 

 

「エリーシャの奴がお前の事を研究したいとか抜かしてたが、あの野郎の事は知った事じゃない。俺は自分が強くなれればいい。いずれ序列を越える為の踏み台となって貰おうか。お前を殺せば、無空剣も本気で俺を殺しに来るだろうしな」

 

 

嘲りを顔に刻み込み、刹那はオールビットを操る。鋼球に意思を送り、標的を立花響へと定める。今までとは違う。明らかに本気の殺意の一撃。今も刹那に首を捕まれ、持ち上げられている響にはどうしようもない。

 

 

 

閃光を蓄積させ、今にも解き放とうとする瞬間、刹那は短く言葉を投げ掛けた。

 

 

 

 

 

「じゃあな立花響」

 

 

────何処か懐かしむような、そして哀れむような表情を浮かべ、

 

 

「少しだけの間は覚えていてやるよ。ちっぽけな善意の語ってた偽善者ってな」

 

 

唾でも吐き捨てるように言うと、彼は指を弾いた。それはやはり、処刑の一振でもある。

 

 

 

 

 

ビチャッ!! と。

地面に飛び散った少なくない液体の音。その色は、鮮やかな赤であった。




刹那の武装スペック。


ロストギア:デュランダル

不明。


エクリプス・オールビット


刹那が制御する十基のビット。脳波や指先に組み込まれた遠隔操作式神経回路に操ることが出来る。神経回路の力によって、ある程度の五感(痛覚や嗅覚は除く)を再現されており、偵察や情報収集も可能。そもそも自律思考パターンもあるので基本的に刹那自身も勝手に守れる。

本来はエネルギー消耗が激しく、数十分しか本気を出せない形だったが、完全聖遺物デュラダルとの融合によって無限のエネルギーによる永久機関を手に入れた。



────化け物スペックだなぁ。でも、これで四位なんですよねぇ。序列ですらなく。



刹那の話を聞いてれば大体の人は察すると思いますが、彼も被害者です、【魔剣計画】の。あいつら色々とやりたい放題で被験者達の人生を狂わせてるからなぁ。本当に諸悪の根源でしかない(真顔)




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