戦姫絶唱シンフォギア 神装魔剣   作:虚無の魔術師

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タイトルからして分かる人もいると思うけど、めんどくさい時期の翼さんのお話です。


雑音と不協和音と

この世界に来てから翌日。

 

 

無空剣は何も変わらない生活を送っていた。自身の身体、魔剣の調整をしながら、この世界についての知識を蓄えていく。自分から調べるのは言われてやるよりも効率良く、数時間である程度の情報は分かった。

 

 

 

「───さて、次はシンフォギアの種類についてか」

 

彼自身、シンフォギアについてはあの場で教えてもらった。知りたいのはシンフォギアについてではなく、シンフォギアの種類だ。

 

 

現時点で、どんなものが実在しているのか。詳しく記されている資料を読み進め、

 

 

 

(…………『イチイバル』。第二次世界大戦中にてドイツから日本へと送り出された聖遺物。基本的に二課が管理していたが──────)

 

 

「───十年前、紛失。その責任を取る形で前任司令 風鳴訃堂は辞任し、その後釜………二代目司令として風鳴弦十郎が就任か」

 

 

ふん、と剣は資料から目を離す。彼が注目したのは失態をやらかした前任司令などではなく、何度も出てくる単語だ。

 

 

(風鳴、どうやら組織…………いや、この場合は国か。国家としても重要な立ち位置らしい。機密事項であるシンフォギアを任されるくらいには────まぁ、俺も機密なんだが)

 

 

風鳴翼、風鳴弦十郎、風鳴訃堂。

同じ家系の名が続いている以上、無関係などと決められるようなものではなかった。国に従う特別な一族かもしれない、と ある程度の推測を立てていく。

 

 

「そんな機密事項のこの俺にここまでの情報を見せてくれて良いのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オペレーターの藤尭さん」

「───えぇ?何で気付いたの?」

 

 

呼び掛けに反応したのは今扉を開けてきた男性 藤尭朔也。先日オペレーターとして挨拶をしたくらいだったが、関係者全員の名前を覚えていたのだ。

 

 

疑問の声が藤尭朔也から出たのは当然。彼は剣を呼ぶために資料室に入ろうとノックをしようとしていたが、その前に剣から名指しで呼ばれたのだ。最初から気付いてたと言わんばかりに。

 

 

 

読み進めていた二課に関する書類を片付けながら、彼は単刀直入に言う。

 

 

「廊下から反応がしてた。一応全員を認視した訳だから区別くらいはつく。何ならオペレーター室から歩いてきてるのも把握してた」

「……………君って凄いよなぁ。もうハイテクを通り越して異次元だと思う、司令も若干似たようなもんだけどさ………」

「それで。さっきの疑問だが、答えてくれるのか?」

「あぁ、司令からは特に言われてないよ。知りたいことがあるなら構わないって─────流石に漏洩しちゃいけない重要機密もあるから気を付けて欲しいけど」

「安心してくれ。貴方達の足を引っ張るような真似はしない。そう約束しよう」

 

 

剣はそう言って、

 

 

「貴方が俺の所に来たという事は、用があるんだろ?」

「あ、そうだよ。司令から呼び出しがあってね、君にも来て欲しいらしいよ。特別な用は無いらしいけどね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいは~いッ!響ちゃんのメディカルチェックの結果だけど、身体に異常はほぼ見られませんでした~♪」

 

 

良かったと安堵する響の後ろで、ふーん、と剣は壁に寄りかかって彼女の状態への説明を聞いていた。あんまり聞いてないように見えるが、彼は耳に入れながらも別の方を見ている。

 

 

風鳴翼。

表向きではアイドルである装者の女性、堅苦しい態度の人物を剣は目に捉えていた。

 

 

先程から響に対して否定的というか、敵意ありげな様子に彼女も気にしていた。どうやら相当敵視してるらしい、共同以前の問題だろう。

 

 

というか、ここに来る理由はあったのだろうか?と思ってはいたが、立ち去っては呼んでくれた藤尭さんが無駄骨になってしまうので選択肢から除外した。

 

 

シンフォギアや聖遺物についての話を適当に聞いていた剣はようやく本気で聞くことにした。どうやらほとんど思っていたらしく、結論を言うところだった。

 

 

 

「ガングニールの破片────奏ちゃんの置き土産ね」

「…………!?」

 

ハッキリと事実を告げる櫻井女史とそれを聞いていた顔を歪める翼の姿。あまりにも不安定な様子に、剣は観察する瞳を鋭くしていた。

 

 

 

 

施設内に警報が鳴り響く。それが何を意味しているのか、経験の浅い剣でも理解は出来た。

 

 

 

────ノイズの出現。話を聞くに場所はすぐ近くらしい。

 

 

 

弦十郎の宣言の後に二人が飛び出していく。具体的には、翼が誰よりも先に出ていき響もそれに続くように向かったのだ。一般人であったばかりの響は出るべきではないと弦十郎は進言したが、それでも行きたいと強く示したのだ。

 

 

 

周囲を見渡した剣は彼女達が出ていった扉が閉まり、離れていくのを確認すると重い息を吐いた。壁に寄りかかる青年に、オペレーターの者達と弦十郎が首を傾げた。

 

 

 

「剣君、君は行かなくても良いのか?」

「その前に済ませたい事があったからな………聞きたいことがあるが、いいか?」

「えぇ、構いませんよ。僕達に答えられる事なら」

 

 

じゃあ遠慮なく、と剣は質問をした。

 

 

 

 

「風鳴翼が響へ向ける感情は、二年前に死んだ天羽奏が関係してるんだろ?」

「────ッ!?」

 

 

息を呑んで何も言わなくなる二人。それを前に鎌をかけた張本人である剣は思わず笑いが溢れそうになった。

 

流石に分かりやすすぎではないか、と。

 

 

「………何故、奏さんの事を?」

「俺は情報を知りたがる男だからな。この世界では無知な訳だから、色々と過去の経歴を調べてた訳だ」

 

ここの資料でなくとも、新聞や昔のニュースなどを見返せば分かる。因みにそれらはテレビなどの記録を弄り、勝手に入手したのだが、やり方について話すつもりはない。

 

 

「俺が知っている情報は天羽奏がノイズ災害に巻き込まれて死んだ────というのは表側で本当はノイズとの戦いで死んだって事。そして偶然、もしくは必然かその場にいた響に天羽奏のシンフォギアが宿ったぐらいだな」

「………そこまで、調べていたのか?」

「前者まではな。後者はさっきまでの話で推測したんだが、間違いでもあったか?」

「いえ、その通りです。奏さんは数年前、絶唱を歌った事で────」

 

 

それだけ聞いて剣は もういい、と止める。誰かの死を聞くのはあまり気分が良くない、しかし話す方が一番苦痛だろう。

 

 

「奏君の事を聞いたのは、翼を気にしてか」

「………まぁな。ああいう顔をしていた奴を見たことがある。そういう奴ほど自棄(ヤケ)になって人が変わるから、少し危ないと思っただけだ」

 

 

そう、ただそれだけ。

その筈なのだと剣はそう思い込んでいた。自分は基本的に人を思いやれる性格などではない、誰にも危害を加えなければ手出しをしない─────この世界に来るまではそういう存在だったのだ、無空剣は。

 

 

 

 

「そろそろ二人の元に向かうべきか、現場には数分で着けるしな」

「あぁ、頼む。響君が心配だが、翼がいるから何とかなるだろう」

「────どうかな」

 

 

何だと? と怪訝そうな弦十郎を無視して剣はジロリと睨むように大きな画面を見る。現場に向かう二つの反応を目にした後、扉を通って外へと出ていく。

 

 

誰にも気付かれない場所へと辿り着く。静かに魔剣の詠唱式を告げると、全身をグラムの装甲が纏っていく。完全な戦闘スタイルへと変わった直後────地面を蹴る。

 

 

 

ドッッッッッッッッッ!!!!!

巨大な砲撃に見合う爆音が引き起こされる。走り出す為に動いた直後の大音響は衝撃波となり音速で駆ける青年に続くように周囲に放たれる。

 

 

 

人目など気にしない、そういうのは役割がある人間に任せる。戦闘に優れた人間は自らの仕事だけを優先する。

 

 

 

 

ある懸念を…………胸の内に抱きながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギィィィィン! と道路に火花が散る。どうやらそれだけでは済まなかったらしく、剣が駆け抜けた道には小さな火が燃え揺らいでいた。火の原因が剣が音速スピードを緩めた際の摩擦によるものだと気付くのに時間が掛かる。

 

 

人間単体には実現不可能とも言える荒業を実現して見せた『魔剣士(ロストギアス)』 無空剣は現場の状況を確認して溜め息を隠さない。

 

 

 

 

 

「─────やっぱりか、風鳴翼」

 

向けられた張本人は何も言わなかった。ただ武装の一つである刀を仲間である少女へと突きつけている。

 

そして剣先を前にした少女は呆然としながら剣を見つめていた。正確には、物凄い音速で到着してきた青年に。

 

 

「……………え?走った跡に火が?でも、え?走っただけで?」

 

 

ようやく平常に戻って困惑する響を剣は敢えて無視する。沈黙していた翼は剣を睨みながら冷徹な声音で言う。

 

 

 

「邪魔をしないでもらえるかしら。私は彼女と戦おうとしてたのに」

「響と、ね…………ノイズを倒すのが奏者と俺の目的ではなかったか?同士討ちなど聞かされていないので妨害させて貰った」

 

気負わない様子で剣は肩を竦める。

邪魔しに来た相手がいるというのに、今もなお刀は全くブレる事無く響に向けられていた。

 

 

剣は顔色を変える。無表情に近い機械的な顔で、核心を突くであろう一言を、聞いた。

 

 

 

 

 

「その怒りも、天羽奏を想ってのものか?」

 

「…………」

 

 

一瞬だけ。

刀が揺れた、持ち主の心を意味するように。天羽奏という、かつて存在していたもう一人のシンフォギア使いの名前に大きく反応する。

 

 

 

呆れたように息を吐き、剣は腰に手を伸ばす。装甲から射出された棒を軽い動きで掴み取る。まるで一種のライトセイバーを思わせたが、ある意味では違った。

 

 

 

 

カシャン!

棒から何段階も装填された刀身が出てきた。最大まで出てきた刃はボルトらしきものに高速で固定され、漆黒の刀剣が出来上がる。

 

 

金属で構成されたブレードを試すように振るう剣に、相対していた翼は両目を細める。何かに苛立っている様子は見られず、どうやら興味を抱いただけらしい。

 

 

 

数秒で姿を現した刀剣にではなく、それを振るう剣に。使い慣れてる人物の動きを翼は見抜き、純粋に共学する。

 

 

「剣も使えるのね、意外だったわ。武器無しの体術が得意かと思ってたけど」

「そうか?仮にも『魔剣士』だぞ、剣くらいは扱える技量はあるさ。少なくとも、今のお前ともやり合えるかもしれないぞ」

「────ほざいたな『魔剣士』」

 

 

その言葉が火蓋を切ることになった。あからさまな挑発に乗ったとは思えない……………とすると。

 

 

(俺を倒してから響に集中するつもりか。前提から間違ってるな)

 

 

 

 

まず最初に攻撃を行ったのは翼。体格を低くして地面スレスレを疾走しながら、刀を振り上げる。下からの斬り上げ。

 

 

しかし剣は切り上げられた刀をブレードで弾く。刀の軌道を逸らして地面を乱雑に切り裂いた。翼の足元のコンクリートを乱雑に砕き、破片の雨を彼女に浴びせる。

 

 

 

「はぁぁっ!!」

 

何とか後退することで破片を避けた翼は怯むことなく前へと突き進む。何度も自らの剣技を放ち圧倒しようとするが、漆黒のブレードが音速の勢いで振るわれ、剣戟を永続させる。

 

 

 

「くッ───!?ここまでの実力なの!?」

「当たり前だ。雑魚相手に振るう剣で魔剣を越えられると思ったか?お前のそれにどれだけの自信があるのか分からないが言わせて貰おう─────『魔剣士』を嘗めるなよ」

 

 

剣術を熟知している翼が苦戦するのには複数の要因があった。一つ目は剣という青年の、機能の一つ。彼の神経は通常の人間よりも何十倍に優れたものとなっている。相手の動作や次の攻撃など、予測して対処するなど容易い事なのだ。

 

 

(この男相手にどんな技も通用しない。それ以上に的確な動きで私の剣を防ぎ、ただ無力化していく────)

 

 

手加減されている。

嘗められている、本能的に感じ取った翼は強く歯噛みする。今すぐ目の前の青年に向けて吼えそうになるが、彼の見せる眼がそれを押し止める。

 

 

機械のように無機質な瞳。今行っている戦闘すら流れ作業として進めているように見えてしまう。だからこそ、彼女は自らを律する事が出来た。しかし、彼女とてそこまで我慢強くは無い。

 

 

 

 

だからこそ、

 

 

 

 

 

「軽いな」

 

 

冷静に振る舞う『魔剣士』の呟きが限界を越えさせた。きっとそれは、響への苛立ちもあったからだろう。単なる呆れが嘲笑に聞こえてくるほど、彼女は追い詰められていた。

 

 

 

故に、彼女は怒りのままに技を放った。シンフォギアとして有する強力な技の一つを。

 

 

 

 

 

────雨ノ逆鱗

 

 

空へと投げたアムードギアを巨大化させ、蹴りを叩きつける。彼女の怒りから使われた技にしては全くもって因果しかない。運命というのは、実に複雑だ。

 

 

 

 

上空から飛来する一撃に、剣は息を吐き出す。地面を踏みつけると同時に、杭らしき固定器具が打ち込まれる。両足とも固定した剣は、目の前の巨大な刃を同じ刃で受け止めた。

 

 

 

たったそれだけ。彼に負傷を与える事はなく、翼の技は防がれた。それも、こうも呆気なく。

 

 

 

「───────は」

「だから言ったろう、軽いな、と。威力は十分にあるが」

 

パキ、とブレードの刀身が大きくひび割れた。明らかな損傷に剣はブレードの刃を捨てると、両腕をヒラヒラと払う。受け止めたダメージはあるらしく腕が小刻みに震えていた。だがしかし、それ以上のダメージは無い。

 

 

 

 

「俺は、『魔剣士』は戦争の為にある兵器だ。感情のままに──────それも私怨の刃が簡単に届くと思うな」

 

 

冷徹、無慈悲な言葉。

他人を責め立て批判するように近い口調に、傍観していた響も止めようとしていた。しかし片手で制した剣は、更に続ける。

 

 

 

「過去に囚われるのは勝手だ。俺自身も嫌な過去がある、それをまだ乗り越えられてないからな。共感できる伏しもある」

「…………」

「だが、その感情のままで他者に当たるのは良いと言えないな。向けるべき矛先を間違えるなよ、俺達が倒すべきなのはノイズという脅威の筈だ」

 

 

彼なりの激励だった。

無空剣本人の性格はメンバーの中でもお人好し(本人も良く分からない)らしいが、彼には彼なりのやり方がある。挫けている戦士、ましてや戦う覚悟のある人間を生半可には優しくしない。それが戦士にとってプライドに関係する問題と知っているから、敢えてそのように言うのだ。

 

 

もう何も言うまいと剣が背を向けて少し離れる。立ち尽くす翼を慰めようとしたのか、響は笑顔で声をかけた。

 

 

「あたし、自分がダメダメなのはわかってます。だからこれから一生懸命頑張って、奏さんの代わりになってみせますッ─────」

 

 

その言葉は決して悪気は無かった。むしろ自分の意思を見せようとするものなのだが、剣はそれを悪手だと思った。

 

 

───大切な誰かの代わりになんて、なれないのだから。

 

 

 

 

 

パンッ………!

 

 

翼の平手打ちが、頬を叩いた。そんな軽い音がこの場の全員の耳に伝わる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翼が立ち去った後、響は二課の施設に戻っていた。休憩室らしき場所で一人、力なく座り込み、床を見下ろしていた。

 

 

そんな彼女に声をかける者がいた。ただ一人、何気ない様子で。

 

 

「響」

「あ、剣さん」

「さっきは大変だったな、色々と。これは帰り道で買ってきたオレンジジュースだ、受け取れ」

 

 

片手に持っていた缶を軽く投げ、響に渡す剣。慌てて受け止めた彼女の横に腰かけて、剣はもう一つのコーヒー缶を開けて飲み干していく。本当な絵柄からして相当苦い筈のものだが、何とも無いらしい。

 

 

 

「ごめんなさい、私翼さんに…………」

「………まぁ、あの言葉は流石に悪かった。清々するくらい躊躇なく地雷を踏み抜いたな」

 

 

あまり優しい言葉は掛けない。事実はそうだと肯定的する。そんな剣の横で、響は難しい顔をして思い悩んでいた。

 

 

 

 

「お前の家族、もしくは親友の代わりはいるか?」

「え?」

「言い方を変えよう。お前の掛け替えの無い友人、それを赤の他人が成れると思うか?」

「………いや、成れません」

「だろうな。俺も同じ考え方だ」

 

 

舌打ちをしそうになったが、剣は何とか抑え込む。他ならぬ、自分自身への怒りを。彼女にとって傷口に触れるような事を突然口走った自分の行いを。

 

 

何も話さない中、響は暗い顔で自分の掌を見つめていた。

 

 

無理もない、響は数日前まで戦いのたの字も知らない一般人だったのだ。突然戦うことになっただけではなく、覚悟や変化を求められる。

 

 

ハッキリ言って、相当過酷な現状だろう。人間、そう簡単に変われるようなものではない。

 

 

 

少しだけ黙り込んでいた剣は、ポツリと漏らす。自然と出たものではなく、自分から言いたくなった言葉を。

 

 

 

 

「お前はお前だろ、立花響」

「え?」

 

 

唖然とした顔で見上げる少女に、剣は続ける。響に目を向けることなく、何処か遠くを見つめていた。

 

 

「誰かのように成る必要も、自分を変える必要も無い。他人にどう言われようと、自分が何を望まれてようと関係ない。お前自身のやり方を貫き通せばいい────何と言われようとな。そういう奴は、強いと思う」

 

 

そう語っていた剣だったが、すぐに我を取り戻したようにハッとする。響に振り返った彼は、鼻の頭を押さえながら座り込んだ。

 

 

顔を隠すようにしながら、彼は呟く。

 

 

「…………悪い、出来すぎた言葉だったな」

「い、いえ!そんな事無いです!凄い良い言葉でした!」

「………そうか」

 

元気そうな声で答える響は剣の不安に言葉を掛ける。そうか、と納得しながらも顔は全く変わらない青年はコーヒー缶を最後まで飲み終えた。

 

 

「剣さん!ありがとうございます!私、頑張ろうと思います!翼さんにも思いを伝えてみますから!」

「いや、それはまだ止めておけ。火にも油を注いで爆発させるだけだ」

 

 

全力で引き留めることにした。あんな風に敵意マシマシだったのにまたぶつかれば、今度こそ大乱闘になる事間違いなしだ。その場合、また剣が止めなければならないので本気で勘弁して欲しい。

 

 

それでも笑顔を浮かべて手を振って立ち去っていく少女に、剣は終始苦笑いしかできなかった。ようやく姿が見えなくなった後で、彼は空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………歌、か」

 

 

 

何故か右目、《グラム》と連結した義眼と《グラム》の断片そのものが疼いた。何らかの反応かと思ったがすぐに消失したので彼も気にしなかった。

 

 

 

 

 

 

思えば、歌という単語と─────彼が思い浮かべていた彼女達シンフォギア装者の歌に反応していたようだった。それが何なのか、今に彼には全く見当もつかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………こいつが目的なのか?『フィーネ』」

 

 

暗い倉庫らしき場所で、少女は不思議そうに呟いていた。彼女はその手の中にある写真、画質は荒くも確かに青年の姿がそこにあった。

 

 

街中を歩いているであろう剣。人混みの中にいる彼の眼は真っ直ぐと此方に向けられている。自分が撮られたのにも関わらず彼はあまり大きな反応をしていない。

 

 

 

「そうよ『クリス』。彼は別世界から訪れた存在───『魔剣士(ロストギアス)』 無空剣という名前ね」

「………ロスト、ギアス………」

 

 

『フィーネ』の言葉に『クリス』と呼ばれた少女は口の中でもその名前を復唱し噛み締める。そうは言っても実感が沸かずにただ口に出していただけだった。

 

 

 

「可愛いクリス、私の願いを聞いてくれる?」

 

 

そして、『フィーネ』と名乗る女性は囁くように言葉を掛ける。

 

 

 

 

「────無空剣を連れてきなさい。可能なら融合症例一号も一緒にね。優先事項は彼の方よ、間違えないでね」

 

 

そう告げる女性は『クリス』にナニかを手渡す。受け取った彼女はそれを見て、ハッと驚愕した。

 

 

 

 

それは手に収まるくらいの端末だった。

携帯に見えるそれの画面には0~9ぐらいの数字の羅列のみという単純な形式しか写っておらず、何に使えるのか意図は分からない。

 

 

 

 

「貴方には『鎧』と『杖』…………そして『あれ』があるの。万が一も敗北は有り得ないわ」

 

 

『フィーネ』は笑みを浮かべながら、暗闇の奥に視線を向ける。明かりの無い闇色の奥にある物に、目を向けていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

倉庫の大部分を占める、格納された二つの巨大な兵器。無機質に鎮座する武力の象徴。ケーブルや鎖により動きを制限された兵器、その一機が妖しく瞳を光らせた。

 

 

 

 

 

 




オマケ(因みに司令は何をしてたかと言うと)

弦十郎「翼の一撃を軽々しく止めるとは………彼は相当な実力のようだな」
緒川(………貴方が言いますか、司令)



更にオマケの兵装紹介。


『簡易式メタルブレード』 別称 LG-SW=01(LOSTGEAR-Sub Weapon)

全魔剣士に配給されている特殊ブレード。基本的には柄の部分しか無いが、内部に組み込まれたナノマシンが自動的に金属製のブレードを展開させる事で武器として扱える。

強度は【魔剣士】の主要装甲や兵装よりも弱く脆く、対人の使用を主とされている。


量産型である為、修理や素材の摂取も必要。素材に関しては周囲の金属でも良く、修理の仕方は全魔剣士が熟知しているので心配ない。




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