戦姫絶唱シンフォギア 神装魔剣   作:虚無の魔術師

48 / 65
多分クオリティが下がってるけど許して………許して………他のネタが降り注いでくるの………(必死の言い訳)


蝕む欠片

『それでは、このノワールから話をさせて貰おう』

 

 

特異災害対策機動部二課のメディカルルームにて、ベッドに座る響と剣、そして翼とクリス、未来、司令に緒川────最後に、ノワール博士その人であった。

 

 

まずはこれを見て貰おう、と博士は画像をモニターに展開する。体内にある異常を示したであろう響のレントゲン、彼女の胸元に画面は固定されており、そこから伸びた複数のラインには様々な映像が提示されていた。

 

 

『戦闘データと響クンの身体検査から確認するに、響クンの融合症例が進行してるね。危険までとはいかないが、それでも見過ごせないラインまで』

 

 

誰もが息を飲む最中、未来だけが詳しい話を理解できずにいた。無理もない。彼女は二課の協力者だが、あくまでもサポートする側だ。何より、専門的な話など最初から聞かされていなかったのだろう。

 

 

最初は長々と説明しようと考えていたノワールだが、そこまでしている余裕も時間もないと判断したのか、簡潔に言う。

 

 

『分かりやすい所、剣クン達魔剣士と同じ感じさ』

 

「………剣さんも、響と同じなんですか……?」

 

「まぁな」

 

 

否定せず、彼は右目と左手の甲を見せつけた。肉体の一部として存在する濃い紫色の結晶───魔剣グラムの欠片を。

 

 

 

「だが俺達はあくまでも魔剣に選ばれている形だ。魔剣自身が望んだ担い手にして、ある種の器だ。魔剣は俺達適合者を生かし続けなきゃいけない、人として、担い手としてな」

 

「魔剣が、人を選ぶ………」

 

 

まるでファンタジーそのものだろう。だが、それが理由で何万人も死ぬ理由になったのは誰でも察せられるだろう。無理矢理の適合実験とそれに対する魔剣の拒絶、仲間達を殺したのは奴等【魔剣計画】でもあり、無空剣の体内に組み込まれた魔剣でもあるのだ。

 

 

 

「それに、魔剣士は融合を高めることで強さを発揮している。一時的に融合深度は深まれど、人体に大きな負荷はない。ロストギアは戦闘兵装でもあり、魔剣の融合を制御する装備でもある。人体改造も、それが理由だ」

 

 

『だが、響クンは違う。響クンは生身の人間であり、剣クンのように人工脊髄や金属骨格を組み込まれている訳でもない。だからこそ、魔剣士でも制限された以上の融合を行えてしまった』

 

 

それ故に、肉体を蝕んでいく融合を止めることは出来ない。人の身を兵器として定められるまでに改造された事が、人を止める程の融合を押さえる役割になっている。

 

 

何て話だ、と剣は思わされる。

非道を通り過ぎた悪逆の組織の所業により、自分は魔剣との融合から救われていた。そして、彼等の悪意とは無関係である少女が、聖遺物に飲まれていく事になるとは。

 

 

それでも、彼等の事を赦すつもりはない。

 

 

『聖遺物との融合は強力な力を解き放つ。それは魔剣士がよく示している。だが、彼等でも今現在の響クン程の力までは設定していなかった。理由は明白だ。

 

 

 

彼等でも、深層融合の効果は未知数であった。未知数だからこそ、彼等は深層融合を不要だと断じた。何が起こるか分からない、そんなものは兵器に必要ない。確実な強さと安定さを求め、不確実性を恐れた』

 

 

奴等がそのように仕組んだのは、あくまでも魔剣士という兵器の安定さを求めただけに過ぎない。暴走や副作用、予測できないものに期待などかけない。

 

 

どれだけ強くなろうと確実な強さでなければ意味がない。未知数な効果を有した力など、兵器には無意味だ。そんなもの、誰も使わないだろう。暴走するかもしれない、数字で説明できない代物なぞ。

 

 

 

『つまり今の響クンは、瞬間的な火力であれば魔剣士すら凌駕する状態という訳さ。ただし、聖遺物との更なる融合を以てね。今はまだ大丈夫だが、また莫大な絶唱クラスの出来事があれば彼女は死ぬか或いは聖遺物へと─────』

 

「───ッ!博士!」

 

 

死ぬ以外に響に起こる異常。

鮮明にされていないその言葉が何を意味しているのか、分からない者はいない。

 

それ以上言ってはならないと、翼が鋭い声で張り上げる。博士もすぐさま気付き、『………すまない』と口を閉ざす。

 

 

言葉にもならず、胸元に手をなぞらえる響に、未来が寄り添う。どうにもならない怒りを何処にも向けることができず、クリスは近くの設備を蹴る。そんな最中、ベッドに腰掛け、額を押さえる剣はずっと俯いていた。

 

 

首を上げることもなく、俯いたままの剣がノワール博士へと問い掛ける。

 

 

「博士、響を確実に助ける方法は?」

 

『────現状、確実性のある対抗策はない。私がやれると言っても、治療くらいだ。必要なのはあくまでも融合を引き伸ばす……………つまり、響クンにこれ以上シンフォギアを纏わせない事に限る』

 

「……なるほど、な」

 

 

何を思ったのか、剣はそれだけで引き下がった。口元に込めていた力を僅かに緩め、落ち着きを取り戻したように気を静める。

 

 

博士はふむ、と呟きながら、司令へと告げる。

 

 

『風鳴司令、それで構わんね?』

 

「…………ああ、無論だ。響君を無理に戦わせるつもりはない。危険であるなら尚更だ」

 

 

弦十郎も、当然という風に言い切る。

それでも現状を長引かせるだけに過ぎないのは事実。だが、彼女を助けるにはそれしかないのだ。

 

 

「響も、問題はないな?」

 

「…………はい、分かってます。けど………」

 

 

声をかけられた響は、迷ったように自身の掌を見つめる。剣は僅かに微笑みながら、彼女の頭を軽く撫でる。

 

 

「安心しろ。武装組織Fineの奴等も、響の事も、俺達が何とかして見せる。だから、今はゆっくりと休んでてくれ」

 

 

響は恥ずかしそうにしながら、確かに頷いてくれた。そして横に座る少女に視線を向ける。

 

 

「小日向未来、済まないな。俺が、俺達がいてこんな事になって」

 

「………」

 

 

深く頭を下げる青年に、未来は文句すら言わない。絞り出すように出てきたのは、心配の言葉であった。

 

 

「剣さんこそ、大丈夫なんですか……?背中の傷も、シオンさんの事も………」

 

「────聞いてたのか」

 

 

誰が話したのか、と細めた眼で周囲を見渡す。犯人はすぐに分かった。映像に浮かぶ博士が『すまんね』と肩を竦めていた。過去の事など気にしている場合ではないか、と剣は頭を掻く。

 

 

「傷は大丈夫だ。まだ少し跡は残っているが、治癒するから問題ない。─────シオンも、覚悟は決めた。大丈夫だ」

 

「…………」

 

「響は必ず助けてみせる。俺達の手で」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

『さて、ここからは真剣に今後の話としようかね』

 

 

小日向未来がいなくなり、少し経ってから。

ホログラムの博士はしたり顔で二課の面々にそう告げた。

 

 

やけに余裕な博士の一言に、翼は疑問を投げ掛けた。

 

 

「今後の話………?それは一体」

 

「響の胸のガングニールを何とかする方法、だろ?博士」

 

 

そう答える剣に、響達が驚いたように振り返った。一人だけ博士の真意を汲み取っていた剣は博士に次の対応を求める。博士も、同調したように口を開く。

 

 

『まぁね。私は言ったろ?確実性のある対抗策はないと、それは事実さ。だが、可能性を信じた対抗手段ならあるがね』

 

 

言うや否や、博士は大型モニターの画面を別のものへと切り替える。無数のデータファイル。その中から抜き出したのは、とある山の写真であった。

 

では、始めるよ? と博士が言う。

 

 

『十年前、皆川山にて活動していたとある聖遺物採掘チームがノイズによって殲滅された。生き残りはただ一人、採掘チームの家族として同行していた少女だ。名を、天羽奏という子だね』

 

 

ノワールの発言に、響と翼、弦十郎達、そして剣が反応する。響と翼は息を飲み込み、剣は誰にも悟られないように眼を画面へと向けた。より正確には、画面の映る少女の姿に。

 

 

『この事件の結果、彼等が発掘した聖遺物は行方不明。現場の状況報告から彼等が発見した聖遺物は存在していた事は明らかだね。綺麗さっぱり、その情報は消し去られていた』

 

 

無空剣の脳裏には、記憶がある。

己が体験したものではなく、そもそも別の人間の記憶。その記憶の最初の方に、未だ幼かった天羽奏とその家族が存在していた。

 

 

 

『しかし私が米国の機密ネットワークにハッキングした時、面白いデータを確認したので引き抜いておいた。何故か分からないが、その採掘チームが採掘した筈の聖遺物があったのだよ。不思議だねぇ?』

 

「………」

 

 

大方、奪われたのだろう。

ノイズによる襲撃はソロモンの杖である可能性が妥当ではあるが、その時にはソロモンの杖はまだ起動してすらいない。つまりその事件は人為的な事故であったことを意味する。

 

 

人の命が失われた事よりも、聖遺物を手に入れる事を優先させる。命を軽々と扱うそのやり方は、どの世界でも変わらないのか。

 

 

問題は、その奪われた聖遺物だ。

無関係な代物を、今掘り返す意味があるとは思えない。その聖遺物が、響を助けることが出来る以外には。

 

 

 

モニターの画面に、その答えが映し出される。

 

 

 

『その銘を、「神獣鏡(シェンショウジン)」』

 

 

太古の遺物のような鏡。

しかしあらゆる光景を照らし出す鏡としての反射面は存在しない。はるか昔の人々が、その名の通り神に関する儀式で使うようなものだ。

 

 

何より、割れたように砕けている。それでも尚、保管されている事は、まだ効力が健在であるという証明か。博士はそれを指差しながら、自信満々に告げた。

 

 

 

『それこそが、今回の目当て。響クンを助けることの出来る最後のキーでもある』

 

 

 

 

「質問、良いですか?博士!」

 

『うむ、病み上がりなのに元気だね響クン。ではどうぞ』

 

「そのしぇん………何とか?って聖遺物はどんなものなんですか?」

 

 

響の疑問に、よくぞ聞いてくれたと微笑みかける。数字の羅列やグラフが適用されたデータを映し出しながら、博士は説明を続ける。

 

 

『「神獣鏡(シェンショウジン)」の効力としては、分かりやすい話、ステルスだね。我々の索敵にすら反応しなかったのもこの聖遺物が理由だろう』

 

 

 

「────あの時のステルスか」

 

 

剣自身、何度も体験はしている。

二課の索敵や無空剣の高性能のセンサーすら掻い潜る程の隠密、透過は───やはり推測通り、聖遺物によるものであった。

 

 

(だが、聖遺物だと分かれば対処は容易い)

 

 

第二、第三の可能性────エリーシャの手によるものか、聖遺物でもない異端の力ではなくて安堵した。聖遺物よる能力ならば、どうにかする事も難しい話ではない。

 

 

 

現に、あのステルスを突破する方法が思い付いた。

 

 

 

『「神獣鏡」の真の強さは─────凶祓いにある』

 

 

思案していた剣も、博士の言葉によって意識を戻される。それを知ってか知らずか、聞き逃す事が出来ない話が流れてくる。

 

 

『日本でも昔からあるだろう?鏡は神聖な儀式に使われる代物、魔に由来するものもある中で、「神獣鏡」は最高の対魔と言うべきものだ』

 

 

『詳しく説明するのであれば、聖遺物の無力化。「神鏡鏡」は魔を祓う鏡、その光はあらゆる魔を、聖遺物の力を打ち消すらしい』

 

 

────ようやく求めていた希望が、明かになった。まさか今まで上手いこと自分達から逃げ続けてきた聖遺物が、今になって重要になるとは思わなかった。

 

 

だが、そう理想的な話ではない。

 

 

 

「となれば、奴等から『神獣鏡』を譲渡して貰う必要がある、か──────」

 

「………率直に言って、期待は出来ん。連中にとっても『神獣鏡』は大事な代物だろう。それが無くば俺達や米国に見つかるだろうからな」

 

「じゃあ!奴等をブッ飛ばして手に入れるって話か!」

 

 

顔をしかめる剣と眉間の皺を深める司令に、分かりやすいとクリスがやる気を漲らせる。沈黙を貫く翼も覚悟を決めたようであった。

 

 

 

「…………………」

 

「剣さん……?どうしたんですか?」

 

 

対して、未だ鋭い目つきの剣に、不安そうに響が顔色を伺う。何かを睨み付けているように見えるが、実際に何があるのかは分からない。

 

 

響からの声に剣は………いや、気のせいだ、と返す。

 

 

「………そうだな。だが、気を付けるべきだろう。奴等にはまだシオンと、エリーシャの存在がある。前者は俺がどうにかするにしても、後者は難しい」

 

 

そう言いながらも、彼は眼に宿る敵意を完全に消し去らなかった。彼の視線の先、部屋の天井近くにある排気ダクト。生き物すら入り込めないであろう空間の奥底に、彼はあるものを見つけていた。

 

 

 

───此方を覗き見る、金属の眼を。

 

 

 

◇◆◇

 

 

そして、今に至る。

 

 

「────それが奴等の目標だ」

 

 

刹那の口から語られたのは、未来にとっても信じられないようなものだ。なんせそれが二課の今後の目的に関する話だったからだ。

 

 

何故、自分にその話が伏せられたのかと思う。

もしかして単なる協力者として区別され、未だ認められてないのかという不安も過る。だが同時に、彼等はそんな風な人達じゃないという気持ちも湧き出る。

 

 

内側に増幅し出す様々な不安を隠すように、未来は刹那へと聞く。

 

 

「どうして、その事を………?」

 

 

「生憎、眼と耳の代わりがあるからな」

 

 

彼はアッサリとそう答えた。両手の指をパキパキと鳴らし、そう呟くが、詳しいことを話そうとはしない。己の力までは軽々しく話すつもりはないという事だろうか。

 

 

 

 

 

「だが、奴等の目論みは叶わない。『神獣鏡』を用いたとしても、立花響の身を蝕むガングニールを取り除くことは出来ない」

 

冷徹に、達観した第三者として刹那はそう嘲笑する。刻まれた笑みには他者を侮蔑するような負の感情はない。全てを理解した者の、諦めたようなものだ。

 

 

 

「どうして、そう言えるんですか」

 

「出力不足だ」

 

 

答えはやはり、一言で説明できるような単純なものだった。

 

 

「あの鏡単体は当然として、機械で補ったとしても聖遺物を取り除くまでには至らない。至ったとしても、それは不完全なものだ。お前とて分かるだろう?シンフォギアやロストギアが良い例だ。いくら効果があれど機械で引き出せる力には制限がある」

 

「………それじゃあ、響は」

 

「言っただろう、お前がキーだと」

 

 

助けられない、と絶望を前にする未来に、刹那がそう言い指を突きつける。

 

 

それだけで、未来は動けなくなった。死を錯覚させるような威圧感が彼から発されている。普通であれば呼吸も干上がってしまうような感覚。

 

 

身動きも取れない未来を、更に困惑させるような事を刹那は告げた。

 

 

 

 

 

 

「『神獣鏡』のシンフォギア、お前がそれを纏え」

 

 

息が止まる感覚であった。絶句して言葉も出ない未来に、刹那は余裕の笑みのまま話し始める。

 

 

「単なる聖遺物本体で無理ならば、歌を力としたシンフォギアならば可能だろう。簡単な話だが、これが一番効果的だ」

 

「……でも、私はシンフォギアを……」

 

「纏えない、か?どうだろうな。お前はリディアンの真実は知らないだろう────あそこの生徒は、シンフォギアの適合者を選ぶために政府が引き抜いた奴等だ。引き抜かれたからには適合率は僅かにもある……………無論、お前にもな」

 

「…………」

 

「それだけじゃない。かつて二課にいたシンフォギア装者 天羽奏、奴もお前と同じ適合率が低い人材だった。しかし特殊な薬品───『LINKER』を用いた結果、命を削りながらも装者へとなった。…………どうだ?これが俺の考える、お前が装者になれる理由だ」

 

 

どうやら、刹那は本気で未来を装者にしたいらしい。

余裕に満ちた笑みの割には真剣かつ鋭い眼光を向けながら、未来の返答を待っている。

 

 

噛み締め、迷い────ふと、未来はある疑問を投げ掛けた。

 

 

 

「私が、この情報を、貴方の事を二課に話すとは思わないんですか?」

 

 

言われた刹那はピクリと動きを止める。怒りに触れたのかと警戒し身を引き締めた未来だったが、

 

 

 

 

 

 

 

 

「────お前に、それをするメリットはあるか?」

 

 

まさか、と刹那は鼻で笑う。未来本人がそんな真似をしないと確信しているように。

 

 

「『LINKER』は命に関わる。過剰接種は死に近づくことを意味する。それは立花響の前で死んだ天羽奏本人がそれを物語っている」

 

 

ならば、それをよく知っているのは二課の一同であろう。かつてその光景を眼にした者達だからこそ、そんな真似を黙って見ているとは思えない。

 

 

 

「生優しい奴等に、お前を装者にする程の決断が出来るか?」

 

 

その優しさのせいで全てを失った者が叫ぶ。誰かを思う心を甘さとして切り捨て、一つの道へと突き進む修羅が。

 

 

「立花響を助けたいというお前の思いを優先してくれるか?………そんな筈はない。連中は甘い、優しいんだ。だからこそ、命を掛ける真似を、お前一人にやらせる筈がない!」

 

 

言い切った刹那は、自身が余裕を失いかけた事に気付き冷静さを保つようであった。

 

 

「これは提案だ、脅迫じゃあない。お前の好きなようにすればいい。お前がどう選択しようと俺は攻めることなどしない。必要ないし、その権利などない」

 

 

ならば何故自分を選んだのか、そんな問いを口にする事すら出来ない未来。彼女の心を読み取ったのか、刹那は確かに答えた。

 

 

 

 

 

 

 

「大切な親友が、大切な仲間が、命を賭けて戦う姿を見て、お前は思うだろう?自分にも力があれば、と」

 

 

否定できない。出来る訳ない。

それが確かな事実、明白な答えだったから。親友の戦う姿を初めて見た時、迷っていた最中に脳裏に過ったのが、先の言葉であった。

 

 

 

───『自分にも力があれば』

 

 

 

「そう思える時点で、お前は俺の話に乗る。無視など出来ない」

 

 

あぁ、それとと、刹那が言う。

 

 

「俺がお前を選んだ理由はもう一つある。………俺は弱者が嫌いだ。弱い人間は卑怯かつ悪辣だ、法律を盾にして己の弱さを正当化するからだ。何より弱者は弱い、何も出来ないのを受け入れるしかない。強者に全てを奪われようと、それが弱さが理由になる──────だが!お前は違う!!」

 

 

拳を張り裂けんまで握り締め、刹那は吼える。己の意思を、隠すことなく解放するように。

 

 

「お前のように誰かの為に戦いたいという強い心を持つ弱者だけは別だ!そういう奴は嫌いじゃない!むしろ俺はお前を一目見た時から気に入った!だからこそ、お前にもチャンスを与える!かつての俺のように、己の手で未来を切り開く覚悟があるのならば、な!!」

 

 

盛大に情動を口に出したことで落ち着いたのか、刹那は深呼吸をする。未来に信頼と……僅かに籠められた羨望の眼差しを向け、

 

 

 

「悔いのない選択をしろよ、小日向未来。同じ力を求める弱者として、お前には期待しているんだ」

 

 

その言葉を最後に、刹那はその場から消え去った。跳躍した事はかろうじて分かったが、その姿までは認識できなかった。

 

先の話を噛み締めた未来はこの場で結論を出そうにも出せず、早い足取りで立ち去っていった。その背には、明かな迷いが浮かんでいる。

 

 

 

 

 

積み上げられたコンテナの上で、刹那は憐憫の視線を未来へ集中させながら、独りでに呟く。まるで己に向けるように。

 

 

「───お前はまだ取り戻せる。全てを失い、残された正義すら棄てた俺とは違ってな」

 

 

夜空を見上げる刹那。薄暗い夜闇に照らされるのは幾つもの星の光。かつての記憶を連想させ────未だ過去に囚われている自分に呆れながらも、それを当然として受け入れるように闇夜へと溶け込んでいった。

 




刹那が393を誘った理由は、393の心境をある程度察してたから。393本人の意向と自分の目的のためにも利用しようと考えたのでした。



ま、信じてるのは確かですけどね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。