戦姫絶唱シンフォギア 神装魔剣   作:虚無の魔術師

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ソラより現れるモノ

飛空するエアキャリアを操縦していたマリアは自動操縦へと切り替えた。それは彼女達が、目的地に着いたことを意味する。F.I.Sの本来の目的である────フロンティアの眠る地へと。

 

 

「マムの調子はどうデスか………?」

 

「一先ず落ち着いたようね………病状の進行は、やはり抑えられないようだけど」

 

「そんな…………じゃあやっぱり」 

 

 

自然と呟いた調は慌てたように口を噤む。同じように慌てた切歌の様子を見たマリアは困惑しながら二人を案じるが、やはり少女たちは何でもないと言い張った。

 

 

「────そう!つまりのんびり構えていられないということです!月が落下する前に人類は新天地にて一つに集結しなければならない。その旗振りこそが、僕らに課せられた使命なのですからッ!」

 

 

そんな切歌と調の様子に興味を持たず、Dr.ウェルは酔いしれるようにそう告げる。二人が明確に不安と警戒心を顕にしているが?子供のソレとして特に気にしているつもりはないらしい。

 

 

「エリーシャ博士は?前から姿を見ないのだけれど」

 

「博士は博士なりにやるべきことがあるのですよ。フロンティアを開く鍵を調整する仕事が、ねぇ?」

 

マリアの疑問に、ウェルは愉快そうに笑いながら肩をひそめる。明らかにはぐらかしているのは明確である。ウズウズと興奮を抑えきれない様子のウェルからして、その場にいる全員が嫌な予感を感じていた、その時。

 

────警報のようにアラートが鳴り響く。反応したマリアが液晶を操作すると、センサーが感知した反応を拡大させる。

 

 

「米国の哨戒艦艇デスかッ!?」

 

ソレが何故現れたのか、理由は単純なものであった。

F.I.Sを追い掛けてきたという訳ではなく、米国にとって再重要機密であるフロンティアを他勢力に干渉させないための哨戒艦艇。たた数隻の艦隊であれど、エアキャリアを撃墜し、殲滅するには十分な戦力が集まっている。

 

 

「こうなるのも予想の範疇ッ!…………精々連中を派手に葬って世間の目を此方に向けさせるのはどうです?」

 

「そんなのは、弱者を生み出す強者のやり方」

 

「そうね。世界に私たちの主張を届けるには格好のデモンストレーションかもしれないわ」

 

 

半分は合理的に、半分は我欲による享楽からそんな提案をするDr.ウェル。そんなウェルのやり方に、調は露骨に反発を顕にするが、操縦桿を握るマリアがあろうことかドクターのやり方を肯定したのだ。

 

 

「マリア………」

 

「で、デス………」

 

「私は────私たちはフィーネ、弱者を支配する強者の支配構造を終わらせる者。この道を往くことを恐れはしない、決して」

 

 

自らにそう言い聞かせるように、マリアは頑なにそう宣言を示す。それは血に塗れた自身を自覚したことで抱いた決断────見殺しにした男から贈られた激励を、呪いに変えてしまった彼女自身の自棄か。

 

そんな彼女の姿に心配しかない調や切歌の前で、Dr.ウェルがソロモンの杖を持ち出す。その杖から生成したノイズを空中から放った、その瞬間。

 

 

────艦艇に着地しようとしたノイズの軍勢が、光に焼かれて消え去る。無数に空を走る閃光が振り注ぐノイズを炭に変えた直後にその光で消し尽くす。それどころかは、その光は艦艇の一つを切り裂き、爆炎を引き起こす。

 

 

「っ!?ノイズが撃破された!?」

 

「シンフォギア、ではありませんね。この反応────成程、彼ですか」

 

愕然とするマリアの傍らでソロモンの杖を手にしたウェルが、眼鏡を押し上げる。その顔に冷や汗が滲んでいるのは、一度対峙し、殺された記憶が懐かしいものだからか。不意にマリアは画面を拡大させて、炎を噴き出す艦艇の上に立つ影を捉えた。

 

 

「────如月刹那ッ!?」

 

◇◆◇

 

「高エネルギー反応────『デュランダル』です!」

 

「如月刹那の襲撃と確認!米国艦艇から応援の要請です!」

 

「この海域から遠くはない!急行するぞッ!」

 

 

二課の仮設本部である潜水艦にて、その反応も確認された。モニターされるのは、襲撃されたであろう米国の艦隊の絵図。そして、モニタリングされたその画面が拡大されたかと思えば、甲板に立つ一人の男の姿を顕にした。

 

 

『────シンフォギア装者ァッ!!どうせ聴いているのだろう!?俺は、魔剣士第四位如月刹那は此処にいるぞッ!!』

 

「…………刹那ッ」

 

「刹那さん………!」

 

 

序列の枠組みを除けば最強クラスの魔剣士。第四位に位置する如月刹那、デュランダルの因子を取り込んだ魔剣士が大声でそう叫んでいた。それは二課だけではなく、F.I.Sにも向けたものであることは明白だった。

 

 

『お前等が出ないのであれば、米国の哨戒艦艇を沈める!!無論、逆らう者は一人残らず鏖殺だッ!!』

 

「な────ッ!?」

 

『見殺すような連中ではあるまいが、俺の本気を知らしめる必要もあるのでな────それとも、二課は来ないか?三人で勝てなかった相手に、二人で来るのが恐ろしいか?頼りの無空剣にでも縋る訳でもあるまい?ロクにギアを纏えん奴に』

 

「ッ!誰がテメェに!」

 

(………俺が戦えないことも知っているのか)

 

 

あからさまな挑発に、クリスは感情を顕にして怒鳴り返す。しかし聞こえていないはずの刹那は不敵に笑いながら、余裕の表情で見下ろした。

 

 

『なら早く来るんだな────さもないと、米国の奴等の骨も残らず海に沈むぞ?』

 

 

そう告げた瞬間、刹那の身体に無数の銃弾が浴びせられる。米国艦艇の兵士達が迎撃を始めたのであろう。弾丸を浴びても怯む様子を見せない刹那は腕を振るい、戦艦を破壊し尽くしていく。その場にいる兵士達を、容赦なく殺して。

 

 

「応援の準備に入ります!」

 

「つ、翼さん!」

 

「死ぬ気かお前ッ!」

 

 

出撃の準備を始めるために飛び出す翼に、続こうとする響。そんな響を無理矢理止めたクリスは制服のネクタイを手繰り寄せ、強く怒鳴る。しかし、すぐに心配を顕にした彼女は諭すように穏やかに語りかける。

 

 

「ここにいろって、な?…………お前は居なくなっちゃいけないんだからよ────頼んだぞ」

 

「…………司令、やはりタクトは」

 

「駄目だ、今の彼は意固地でも動かないだろう。戦闘の意思のない以上、彼の意を汲む以外に無いが」

 

 

二課の捕虜という立ち位置にいるが、実質的には協力者の立ち位置であるタクトは馴れ合う気はない、と二課との協力を拒否している状況にある。少し前に響を助ける前に動いてくれたが、金輪際しないと言わんばかりに彼は二課の独房に閉じ籠もっている。

 

 

(やはり、あの二人に頼るしかないか………)

 

「……………頼んだぞ」

 

心配そうな響の方に手を添え、剣は静かに見守るしかなかった。

 

 

◇◆◇

 

艦上にて、如月刹那は百人以上の米国の兵士を一掃していた。ライフルを構え弾幕を浴びせる米国の屈強兵士たちの壁に、刹那は手を翳す。迫る弾丸の雨は、刹那の魔剣士としての装備────エクリプス・オールビットが展開したバリアに防がれる。

 

四機のビットが展開した四方のバリアに、米国兵士の数人が手榴弾やロケットランチャーを用意し出す。投げられた爆弾や弾頭が連鎖的に爆発を引き起こすが、バリアに守れた刹那には届かない。

 

 

「弱い、弱いな────お前達人間は脆弱で、弱過ぎる!」

 

 

指を鳴らした刹那の意思に応えるように、四機のビットがバリアを解除して飛び出す。変則的な動きで飛び回るビット、ソフトボールよりも少し大きいサイズの鉄球がライフルを構える兵士たちへと襲い掛かる。それがどんな結果を齎すか、想像に難くない。

 

 

「ぐはァアアアッ!!?」

 

「ぎゃあああ!あ、脚が────あ」

 

 

直撃した兵士の大半は、即死であった。頭部や胴体を抉られ、一瞬の内で絶命する。最悪なのは身体の一部を抉られ、辛うじて生き残った者。助けを呼ぼうにも即座に反応したビットから放たれた光線により、トドメを刺される。

 

 

「呆気ない。米国最新鋭の艦と言えど、魔剣士もいなければこの程度か」

 

「────捕らえた!」

 

つまらなさそうに歩いていた刹那に、背後から迫った米国の兵士が組み伏せる。屈強な両腕で首を抑え込み、そのまま締め上げた。普通であれば、簡単に呼吸を圧迫されて制圧されるだろうが────刹那は不敵にほくそ笑むだけだった。

 

 

「おいおい、随分柔いな。欠伸が出るくらいだ────な」

 

「ぐッ、ぎゃああああッ!!?」

 

 

首を押さえ込む腕を掴み、無理矢理引き剥がす。簡単に引き剥がれたことに目を見開く米国兵士の腕を力強く、握り潰す。ブチン、と弾けた手────潰された腕を抱え、兵士は悶え苦しむ。返り血を拭い、刹那は地面に転がる兵士を蹴り飛ばし、近くの壁に叩きつけた。

 

 

「────自らの弱さを呪え。戦場では常に、弱者が死に、敗者となる」

 

 

右手を掲げ、全てのエクリプス・ビットを手元に集める。空中で陣形を取ったビット十機を回転させ────そこから光線を放射させる。屈折、反射を繰り返したレーザーは周囲へ撒き散らされ、万物を切断する刃として振るわれた。

 

回避できなかった兵士は光の熱量に焼かれる者もいれば、身体を溶断された者までいた。甲板を貫通し、内部の装置にまで切り裂いたデュランダルの光の刃を収束させ、刹那は艦橋をその熱量のままに焼き払った。

 

────爆発と共に、艦艇の一隻が割れた。燃え盛る爆炎の中、刹那は艦艇を冷たく見下ろし、次に残った艦艇への攻撃を再開する。

 

 

◇◆◇

 

「…………ッ」

 

「いやぁ流石は魔剣士。圧倒的戦力差、絶望的な差ですねぇ。しかしお陰で、わざわざノイズを使う必要も無さそうだ。これだけの騒ぎならば、米国以外に目を向けさせるには良い余興でしょう」

 

 

その圧倒的な蹂躙に、Dr.ウェルはソロモンの杖を戻して満足そうに見守る。彼等の目的としては十分であった。これだけの事態を引き起こせば、世界の目がここに集まる────それが自分達の力でなくとも、問題はなかった。

 

 

「………こんなことが、マリアの望んでいることデスか?」

 

「弱い人たちを守るために、本当に必要なことなの?」

 

 

虐殺を目にしたマリアの口から血が滲む。悔しいはずだ、止めたいはずだ。そんな事を認めるはずはない、と二人の少女はマリアの本心に語り掛ける。

 

だが、それでも彼女は笑う。不敵に、悲壮感を、己の私情を押し殺すように。そんな少女の姿に、二人は遂に決心を示す。

 

 

「それなら、デス」

 

「切歌?………調?」

 

「マリアが苦しんでるのなら、私たちが助けてあげるんだ」

 

 

エアキャリアの扉を明け放ち、二人はマリアを優しく見つめて飛び出した────二人同時に。マリアが呼び止めるのも虚しく、切歌と調はマリアの為に戦場に出る。

 

 

────Various shul shagana tron♪

 

────Zeios igalima raizen tron♪

 

空から飛び降りる二人の少女が、聖詠を歌う。空中でシンフォギアを纏う切歌と調。イガリマとシュルシャガナのギアの存在を感知した刹那が手を止め、じろりと見つめる。

 

 

「来たのはF.I.Sの子供装者か。丁度いい────立花響の手で阻止された、あの時を続けよう」

 

────【α式・百輪廻】

 

 

ツインテールのヘッドコンテナから無数の丸鋸を射出する調。振り注ぎ、回転する円刃の雨に、刹那は身動きもしない。

 

その代わりに、レーザーリーダーを展開したビットが三基、高速回転しながらレーザーの傘を形成する。そのバリアによって、シュルシャガナの丸鋸は全て弾き返された。

 

 

「児戯だな。その程度の得物では、ノイズしか殺せないぞ?」

 

「余裕綽々!舐められたもんデスッ!」

 

「ならば本気にさせてみろ────お前ら如き、出来るものなら」

 

 

イガリマを振るい、接近戦を仕掛ける切歌。その間も調のシュルシャガナによる丸鋸の投射を続いている。最低限のビットで上空を守りながら、刹那は淡々とイガリマの鎌をビットで的確に防いでいく。

 

 

「その余裕に喰らい付く!デェスッ!!」

 

 

瞬間、刹那が後方に跳んだのを切歌は見逃さなかった。アーマーから伸ばした鎖で刹那の全身を締め上げる。ロングコートごと両手を縛られた刹那は、「ほう?」と感心したように目を細める。動けなくなった刹那へ追撃せんと、切歌は飛び上がる。

 

 

「取った、デス!!」

 

────【断殺・邪刃ウォTtKkK】

 

 

巨大化した大鎌の両足で蹴り、バーニアで加速して突貫する。断頭台のギロチンのようにして両断する刃を、切歌は刹那目掛けて放つ。勝利を確信した切歌は────刹那の笑みを見過ごしていた。

 

 

「切ちゃん!ダメ────」

 

 

それに気付いた調の声が響いた瞬間、それは一瞬で起きた。刹那を縛る鎖は内側から生じた力による打ち砕かれ、迫る巨刃を刹那はその手で受け止めたのだ。さっきまでの義手のような腕とは違う、銀色の籠手と思われる装備を纏ったものであった。

 

 

「なんデスか!?腕に変なのが付いたデ────うッ!」

 

「褒めてやるぞ、小娘共────Linker仕立ての消耗品が、この俺を新たなフェーズに移行させたことを」

 

「切ちゃんを、離して────ッ!?」

 

 

愕然とした切歌に、刹那は急接近する。慌てて鎌を振るおうとした切歌に伸びた手が、彼女の首を掴む。そのまま首を絞め上げ、片手で持ち上げた刹那が嘲笑うようにそう告げた。

 

親友の危機に、調は冷静さを失い、巨大化した丸鋸を展開して肉薄する。しかし冷静になれなかったことで、彼女は四方からビットの射撃を浴びた。周囲から放たれるレーザーは調の全身を攻撃し、展開した丸鋸が爆発して地面に転がる。

 

何とか立ち上がろうとした調の首を、刹那は空いた手で掴み持ち上げる。二人の装者を掴み上げた刹那は、不敵に笑い、首を圧迫されて苦しそうに抵抗する二人を見下ろす。

 

 

「惜しかったな。今の連携、少し前の俺であればダメージを受けていたことだろうが、残念ながら今の俺には届かない。お前等の頑張り過ぎだ」

 

「少し前………?」

 

「参考までに教えてやろう。この如月刹那は、完全聖遺物であるデュランダルと融合を果たした。元々ロストギアとしてデュランダルの欠片と適合した俺にだからこそ出来た芸当だ」

 

 

如月刹那は、元の世界で聖剣デュランダルの因子を埋め込まれた魔剣士(ロストギアス)である。刹那はその適性により魔剣計画から選ばれ、戦場で回収され魔剣士へと成った。かつては殺される運命にあったが、それを中止にするほどの聖剣との適性が、刹那にはあったのだ。

 

だからこそ、別世界に渡った刹那はこの世界に存在していた完全聖遺物────デュランダルの存在を知り、運命を理解した。そして、何が何でも手に入れることを優先し、遂にその力を取り込んだ。

 

 

「完全聖遺物との融合。それが齎す強さは絶大だ、かつてのフィーネも自らの肉体をネフシュタンの鎧と融合させることで半不死を実現させていた。生身の人間の肉体であれど、力を発揮するのだ。魔剣士である俺が完全聖遺物を取り込めば、絶大な力を得ると理解できないはずもあるまい」

 

 

貪欲までに力への執着を見せる刹那。

強さに拘り、弱者を異常なまでに嫌い、強くなることを優先する彼の根底にあるのは、切歌と調には理解しきれなかった。だが、その時の彼から感じたのは────異常なまでの誰かへの憎悪と殺意、それ以上の怒りが滲んでいた。

 

しかし、刹那はそれを塗り替えるように、平然に振る舞う。

 

 

「…………だが、少々予想外があってな。完全聖遺物であるデュランダルの力が強過ぎたことだ。お陰で完全に肉体に融合しても、その力を自在に引き出せない。下手に出力を上げれば、俺の肉体がデュランダルのエネルギーによって破壊されてしまうからな」

 

「………」

 

「皆まで言うな。では折角の完全聖遺物も無駄骨、とでも思っただろう?────だがな、肉体が耐えられないのであれば、耐えられるようにすればいいだけだ。何度も何度も、再生してな」

 

 

そうやって、刹那は今の強さにまでデュランダルの力を引き出した。膨大なエネルギーをその身に流し、自壊する肉体の再生を繰り返し、壊れゆく身体を無理矢理適応させていったのだ。その過程で、どれだけの血が流れたか、想像に難くない。

 

 

「だが、まだ足りない。俺が絶対的な力を得るには、まだ何かが足りない。それを埋めるピースが、この先にある気がする。俺を最強に、絶対に導く鍵が!お前達の目覚めさせようとしているフロンティアに、あるんだよ!

 

 

────ソレを掌握すれば!この如月刹那は最強になる!無空剣を超えた、全てを超えた存在に!どんな敵にも、どんな災難にも、どんな理不尽も────世界すら圧倒する程の力を得られる!!お前達の言う救済も可能とする、俺の望みを叶える力がなぁ!!!」

 

「そんなの………私たちが欲しい力じゃない………!」

 

「そうデス!力は、誰かを守る為のものデス…………お前みたいに、自分の為に求めるものじゃないデスよ!」

 

「────ふんッ。ガキめ、お前たちには理解できんか。ならばいい、勝手に理想を妄想していろ。正義気取って世界を掻き乱した偽善者ども」

 

 

興味が失せたのか、切歌と調を掴む手の力を強める。喉を圧迫し、呼吸が出来なくなるほどの力を込めた刹那に、二人の抵抗は届かない。

 

「ぐ、うぅぅぅ…………っ!」

 

「し、調ぇ……………うぅッ!」

 

「所詮この世は弱肉強食。強い者が勝ち、弱い者が全てを失う。それが世界の真理、世界共通の理だ!それが分からないお前達が、どうして俺に勝てる?

 

 

 

それでも俺を倒したければ、絶唱でも歌ってみろ。どちらかが歌えば、片方は生き残れるかもな────まぁ、お前達二人の絶唱でなければ、大して恐ろしくも無いがな」

 

 

挑発を吐き捨てるほどに、余裕を見せた刹那。しかしその瞬間、彼はその意識を二人から離した。迫り来るその反応を、機械により拡大された五感が感じ取ったのだ。

 

────海中から、ソレが突き抜ける。吹き荒れる波を破って現れたのは、一本の大型ミサイル。刹那の周囲を漂うビットが上空に飛来するミサイルへレーザーを放ち、迎撃する。

 

空中で落とされたミサイルは即座に爆発し、分解される。その爆炎から、二人の少女が姿を見せる。風鳴翼と雪音クリス、二課の奏者二人が。

 

 

「ようやく来たか────遅い登場だな!」

 

「出会い頭の鉛玉ぁ!食らいやがれッ!!」

 

────【BILLION MAIDEN】

 

 

空中でアームドギアをガトリングへと変化させたクリスの、銃弾の雨が振り注ぐ。切歌と調を投げ捨てた刹那は手を向け、指先で操作したビットによるバリアを展開する。防壁の張ったバリアでクリスの弾幕を防いだ刹那に、翼が肉薄する。

 

振るわれる天羽々斬の刀剣に、刹那は右腕の籠手を操作する。展開された装置から放出される光の刃。デュランダルのビームブレードで、翼と斬り合う。

 

 

「逃がさんぞ、如月刹那ッ!」

 

「ならば捉えてみせろ!風鳴翼ッ!」

 

「戯れ言をッ!!」

 

 

ビームブレードと斬り結ぶ翼。しかしやはりパワーで押し負けているのか鍔迫り合いでは否応もなく後退ってしまう。それを狙い刹那が力任せに押し込もうとした所で、翼は不意に力を抜いて刀を滑らせる。

 

────力任せにビーム刃を振るっていた刹那は突然の行為にバランスを崩し攻撃を逸らされる。そのまま身を捩った翼は両腕で構えた刀を勢いよく振り抜き、重い斬撃を放った。

 

 

「────なッ!?」

 

『侮ったなァ!この如月刹那をッ!』

 

 

翼の放った天羽々斬の斬撃は刹那に命中した。それは確かに。アームドギアの刀は刹那の顔に直撃し、頬から口にまで届いていた。しかし、そこまで届いた所で歯によって刃は固定されて止められていた。

 

あくまでも胴体を狙った翼は狙いがズレたことに動揺を隠せない。そしてすぐに、刹那が敢えて位置を調整して当てさせたことに傷ついた時には、彼はアームドギアを歯で固定しながらビットに内蔵したスピーカー越しに叫ぶ。

 

振り上げた右手の五指からレーザー刃を展開する。最大出力のソレは明確な殺意とあらゆるものを切り裂く絶対性が伴う閃光が、翼に目掛けて放たれる───────。

 

 

「アタシの前で!そんな真似ぇ!!」

 

────【RED HOT BLAZE】

 

 

スナイパーライフルに変形したアームドギアを構えるクリスの狙撃が、刹那の腕を撃ち抜く。ズパァンッ!!と、肘から抉られた腕が宙を舞い、ギロリと目を向けた刹那がビットを操り攻撃を再開させる。迫り来るレーザーを防ごうとしたクリスの前に、二つの物体が立ち、レーザー攻撃を防ぐ。

 

 

「大丈夫デスか!?」

 

「お前等…………やっぱり剣の言う通りみてぇだな」

 

「半信半疑であったが、協力関係となったのは本当みたいだな」

 

「…………博士達のやり方には付いていけないだけ。それより、無空剣は?」

 

「二課の仮設基地だ────では、あの話は本当だと信じていいのだな?」

 

「二言はない…………切ちゃん、この場はお願い」

 

「任せるデェス!調も早く戻ってくるデスよ!」

 

 

敵対関係であるはずの自分を守った切歌と調に、クリスに翼は驚くことなく納得を顕にしていた。それどころか突如何処かへと向かおうとする調を見逃し────あろうことか、彼女を狙うビットを迎撃すらしていた。

 

 

「成程────お前等、手を組んでいたか」

 

 

その事実に特に驚くことなく、刹那は平然と笑う。裂けた筈の口元は綺麗に戻っており、千切られた右腕も完全に再生を終えていた。そんな魔剣士を前に、翼にクリス、切歌の三人は身構えるのだった。

 

 

◇◆◇

 

「切歌………調…………貴方達…………」

 

「────へぇ、あの子達が裏切るんですねぇ。お子様と甘く見ていたから、これは少々予想外です」

 

 

操縦桿を握る力を強めたマリアの動揺は深かった。あの二人が裏切ったのは、他でもない自分の為であることはよく分かっていた。だからこそ、彼女達にそんな決断をさせてしまった自分の不甲斐なさに腹が立つ。そして、自分の道が正しいのか、という迷いが過ぎる。

 

隣に立つウェルは、本気で驚いているであった。それほどまでにあの二人を子供と侮っていたのだろう。精々出来たとしても自分に危害は加わらないだろうと思っていたが、まさか二人して離反して二課に与するとは思わなかった。

 

 

「…………シオン・フロウリングは切り札。彼を投入して、全員を殲滅する腹づもりかしら?最適解ではあるけれど、それ即ち、私達の守りを薄くことを意味するわ」

 

「妙に饒舌ですねぇ、マリア。あのお子ちゃま達のことがそんなに大事ですか?それとも、エリーシャ博士の用意してくれた人形が可哀想ということで?」

 

「……………ッ」

 

「安心してください、彼は使いませんよ。折角の切り札なんです。使い所を弁えないと────彼は、ね」

 

 

ジロリと此方を観測するウェルの視線に、マリアは息を呑む。内心の迷いを見透かされて動揺した彼女を冷たく見つめるウェルは、しかしすぐに笑みを深めた。

 

 

「しかしまぁ、この状況。敵である二課と外野の魔剣士に掻き回される状況は良くないですね────ならばこそ!傾いた天秤を元に戻すとしましょうよッ!できるだけドラマティックに!できるだけロマンティックにッ!──────そうでしょう?エリーシャ博士!!」

 

『────Dr.ウェル、丁度調整も終わったところさ。彼女を出すが、構わないだろう?』

 

「えぇ、存分。派手にやらせてあげてください」

 

 

叫んだウェルの声に、通信越しにエリーシャが応える。眼鏡を押し上げたウェルの言葉に、エリーシャは「言われずとも」と笑って通信を切る。マリアはそんな彼らを怪訝そうに睨み、詰問した。

 

 

「…………何をするつもり?」

 

「シンフォギアとロストギア、本来は似てるようで明確に違う二つのギアのハイブリッド。新たな七番目の魔剣────それがどれほどのものだと思います?」

 

答えになっていない、そう叫ぼうとしたマリアは────歌を聴いた。一度も聴いたこともない、新たなる聖詠を。

 

 

◇◆◇

 

 

────Rei shen shou jing rei zizzl♪

 

 

突如、その歌が戦場に響き渡る。穏やかでいて厳かに、無機質にして冷徹なまでな聖詠。直後、ソレは戦場に飛来した。

 

 

「ッ!?」

 

「全員、避けろ!」

 

【ォォォォ───────ッ!!】

 

 

刹那と対峙していた翼達が即座に飛び退く。空を突き抜け、現れた巨影が眼前を過ぎ去る。巨大とは思えぬ速度を誇るソレは上空にまで飛び上がったかと思えば、翼達のいる甲板へと着地した。

 

────その姿は、異形そのもの。

漆黒の装甲に身を纏うその巨体はアルビオンよりも一際大きく、明らかに人の姿からかけ離れていた。二対の関節を有する歪な脚、鋭い爪を備えた大型一対のアーム。全身に備えられた重キャノン砲に小型砲身等の武装の数々。

 

そして、頭部と思われる鳥の頭のように鋭利に伸びております、全身から合わせて見ると竜のように思える。ソレは横に呼びたラインからモノアイを浮かべると、全身を震わせる。

 

 

【キュォォォォ────ンッ!!!】

 

 

咆哮を上げるように、ソレが鳴き声を響かせた。音からしても怪獣を思わせるその存在が、戦場に君臨したことを知らしめているようであった。

 

 

その存在を観測していたのは、二課も同じであった。潜水艦の内部は突如現れた存在の解析で騒がしくなっていた。

 

 

「アンノウンの反応!観測できました!」

 

「アンノウン内部のパターンから────そんなっ!?」

 

「どうした!何が分かった!?」

 

「二種類あります!その一種類が……………」

 

 

オペレーターの友里あおいが言い淀んだのも無理はない。何故ならソレは自分達にとって仲間の一人と同じ反応だったのだ。しかし、黙っているわけにもいかない。モニターに表示されたその反応には、弦十郎も驚きを隠せなかった。

 

 

「────グラム、だとぉッ!!?」

 

「グラムって…………剣さんっ」

 

「シオンじゃない。エリーシャが新たに作った魔剣士か…………だが、何だ?この嫌な感じは」

 

 

心配そうに剣の腕を掴む響に、剣もその頭を優しく撫でながら警戒心を深める。恐らく、シオンと同じグラムシリーズだ。No.からしても新しい個体であることに間違いないが、一体誰なのか。

 

そんな剣の警戒心は無意味であった。

突如、モニター上で巨体の竜に変化があった。胴体部分の装甲が音を立てて移動したのだ。スライドしていく装甲の中から、姿を見せたのは────一人の少女だった。

 

紫色と黒いスーツを肌に纏う少女は漆黒の装甲に全身を繋げていた。彼女こそが、あの巨竜の本体────グラムシリーズの魔剣士だ。動揺する二課の空気は、少女が顔を覆うバイザーを開いたことで、絶句したものになった。

 

 

「────え」

 

「そんな…………嘘」

 

「なん………だと………ッ!?」

 

 

「アレは……………小日向」

 

「…………………未来(みく)?」

 

 

画面に浮かぶその姿は、響の陽だまりであるはずの親友、剣にとって守るべき大切な人の一人であった。光を失った瞳を開き、黒竜の鎧を纏う少女の首元────うなじには、黒い装置と埋め込まれた紫の結晶が妖しく光る。魔剣グラムの欠片が。

 

 

そんな最中、エリーシャの声が響く。楽しそうに、愉快そうに自分の作品を語りたがっているように。

 

 

『紹介しよう。彼女こそが、グラムシリーズNo.7。無空剣と同じ魔剣グラムに適合したシンフォギアにしてロストギア────いや、唯一無二のデュアルギア。

 

 

 

その名も小日向未来────いや、「強化外装」ファフナー・ユニットを纏ったその姿は、ドラグノートと呼ぶべきかな』

 

「────う、おおおおおおおおおおおぉぉおおおおおおッ!!!!」

 

【────キュォォォォオオオオオオオオオオオンンンッ!!!!!】

 

 

戦場に、少女と黒竜の咆哮が木霊する。

敵を排除するという明確な意思のもと、小日向未来は戦場に君臨した。その身を戦闘兵器へと組み込まれ、利用される形で、利用する形で。




原作とは違い、未来さんがシンフォギアと同時に魔剣士になりました。原作に魔剣士はいねぇし、悪化してるじゃねぇか!!

しかもグラムシリーズのNo.7という立場すらもらってる。まあ適合したのがよりによってグラムなのでね。

No.7ことドラグノート────未来さん+ファフナー・ユニットの解説は次話にて。今回は刹那について解説を。


如月刹那
シンフォギアの世界に訪れた魔剣士。順位は序列の直下である四位であり、序列を除いた最強クラスの魔剣士。

強さと力を絶対視しており、貪欲なまでに強さを重視している。この世界に来て完全聖遺物デュランダルを取り込み絶大な力を得たが、それだけでは満足しておらず、ある目的の為にさらなる力を求めている。

武装

『エクリプス・オールビット』

刹那の主武装ともなるアームドギア。両手に接続した十基のビットに組み込まれた神経の一部と脊髄に埋め込まれた装置により、3次元的領域を支配する程の機動性と自動操作能力を得ている。

ビット自体も高出力のレーザー攻撃を可能としており、ビットは防御やハッキング、そのまま突撃することで物体の破壊も可能としている。

『スターライト・ソング』

刹那が身に纏うロングコート。コート自体にビームを弾く素材を織り込まれており、戦闘には使用しないが有効性は強い。ビットはコート内部の装置にビットを格納することができる。


『エルグレイズ』

刹那の両腕に展開した籠手。戦いの最中で発言したアームドギア。より強度を誇る装甲を纏っただけではなく、ビットと同じようにレーザー刃を展開したりビームを撃ち出すことができる。


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