戦姫絶唱シンフォギア 神装魔剣   作:虚無の魔術師

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喪失までのカウントダウン

「────神獣鏡をギアとして、ヒトの身に纏わせたのですね………」

 

「マムッ!まだ寝てなきゃッ!」

 

 

戦場に降臨した新たな魔剣士。その姿に目を奪われていたマリアの隣の床が開き、専用の車椅子に身を預けたナスターシャ教授が現れる。その身を心配するマリアに目配せをしたナスターシャは、未だ興奮抑えきれないというウェルやこの場にいないエリーシャを睨んだ。

 

 

「あれは封印解除に不可欠なれどヒトの心を惑わす力………そして彼女から現れる反応は一つではない。我々の知る、あの魔剣士と同じ魔剣の因子────あなた達の差し金ですね、ドクターッ!」

 

「使い時に使ったまでですよ。エリーシャ博士も、ね」

 

『その通り。必要不可欠だったのさ、彼女自身もそれ了承してくれたよ』

 

 

あくまでも、本人の意思を優先したという立場を崩さないエリーシャ。どの口で、と目を細めるナスターシャの非難の眼差しすら気にせず、意気揚々とエリーシャ博士は語り出した。

 

 

『処理を始めてから数日だったからね、無空剣や如月刹那のように全身を人工部品に組み替えることは出来なかった。だからこそ彼女の後頸部────うなじに埋め込まれた魔剣グラムの欠片をベースに組み込んだ『戦闘領域帯拡張装置(C.Z.E.D)』によって、一非戦闘員だった彼女も、一人の兵器としての真価を発揮する』

 

 

Combat Zone Expansion Device 、戦闘領域帯拡張装置と呼ばれるソレは無空剣や如月刹那にも使われている装置の一つでもある。人間の五感、第六感と呼ばれる領域を機械技術で拡張するユニット。より戦闘に特化するように意識や肉体を動かせるようにするシステムである。

 

無空剣のように人工脊髄を組み込むことで、さらなる強さを引き出すが、生憎時間は無かった為、『C.Z.E.D』の取り付けだけしか出来なかった。その代わり、彼女のうなじに魔剣グラムの欠片と共に埋め込まれていたが。

 

 

『そして、この世界で発掘した竜の遺骸から生成、改造することで造り出した火力支援式強化外装ファフナー・ユニットにより、生身の肉体であっても魔剣士レベルの戦闘力を維持できる────正しく私が作り出したグラムシリーズ最後のナンバー。神獣鏡の力もあり、ある意味最強のギアと言っても過言ではない』

 

あくまでも彼女本人に魔剣士の技術を与えたが、ベースはシンフォギア。その上に補強するように与えたファフナー・ユニットの高火力もあり、彼女は魔剣士としての性能を顕になった。そんな自分の発明品かのように自慢するエリーシャに、ナスターシャは嫌悪に満ちた瞳をさらに鋭くするのであった。

 

 

「…………リディアンに通う生徒はシンフォギアへの適合が見込まれた装者候補達。つまり貴方達はLinkerやロストギアの技術を使い、あの娘をわけも分からぬままに────」

 

「んっんっんっー、そんな簡単にシンフォギアや魔剣士が作れたら苦労はしませんよ。Linker使ってそれなら装者量産し放題です」

 

『魔剣士も同じさ。誰だって魔剣に適応するとは限らない。拒絶反応で死ぬのも大変なんだ。彼女がグラムに適合出来たのは、彼女自身の意志があったからだ』

 

だからこそ、シンフォギア装者は未だ六人のみであり、エリーシャは数万人を切り刻んで数人の魔剣士しか造り出せなかった。にも関わらず、小日向未来がシンフォギアの力を、ロストギアの力を得ることができたのは、彼らの力だけでは無い理由があったのだ。

 

 

「ではどうやってあの娘を────」

 

「『愛、ですよッ!/と呼ぶべきかな?』」

 

「何故そこで愛ッ!?」

 

エリーシャとドクターの答えに、ナスターシャは動揺を顕にして驚く。無理もない。愛、それがどうして答えになるのか。そんな教授の様子を無視して、彼等は平然と話を続ける。

 

 

「級友をこれ以上戦わせたくない、恩人に傷付いて悲しんで欲しくない!そんな彼女に願いに、神獣鏡と魔剣グラムが応えた!!もうそんなの、ヤバいくらいに麗しいじゃないてすか!!」

 

『ふふふふ、ドクターの言う通りさ。たとえ私を利用してでも、世界を敵に回してでも、彼女は力を求めた。あの二人を救えるほどの力をね。愛、やはり人間は面白いねぇ。人は愛故に戦い、憎しみ、殺し合う。理解が深まるよ』

 

下衆め、とマリアは歯を食い縛って罵倒を呑み込む。そんな罵倒を吐く資格も権利もないはずだ。自分はこの道を選ぶと誓ったはずだ。揺らぐな、と自分自身を奮い立たせる。

 

 

『にしても、魔剣グラムがあそこまでの適応率を見せるとは…………無空剣以来だよ』

 

「へぇ?そうなんです?」

 

『今まで適応したグラムシリーズでも50%帯だったんだが、彼女の適応率は無空剣の99.9%に追随する90%…………魔剣グラム、彼女にとっても無視出来ない存在だったのか』

 

(…………彼女?)

 

◇◆◇

 

「小日向………ッ!?」

 

「何でアイツが戦ってんだよ………何でアイツから、魔剣グラムの反応がすんだよ………ッ!?」

 

「まさか、エリーシャ博士が姿見せなかったのも、これが理由ってんデスか!?」

 

 

甲板にて、突如現れたグラムシリーズNo.7────小日向未来に驚愕を顕にするのは、翼やクリス、彼女達と協力関係にある切歌も同じであった。

 

 

「行方不明となっていた小日向未来の無事を確認。ですが………」

 

「無事だとッ!?あれを見て無事だと言うのかッ!?だったらあたしらはあの馬鹿や剣に、どう説明すりゃいいんだよッ!!?」

 

 

翼は動揺を顕にしながらも、本部と通信を繋げる。冷静に振る舞う彼女であったが、それにクリスが怒鳴った。無理もない。あんな姿になった友人の姿を、無事とは呼びたくないのも当然だ。

 

 

「エリーシャに改造され、意識も支配されたか。………いや、それもお前の意思だな?小日向未来」

 

「…………」

 

「端から見れば無惨な傀儡────だが、美しいぞ!今のお前は、お前自身の望む力を得た!その黒き竜の躯体こそ、その身に纏う二つのギアこそ、お前の願いを果たす力だ!その力を以て、お前の目的を果たすといいッ!!」

 

 

小日向未来の変わり果てた姿に僅かに同情と迷いの様子を見せた刹那だったが、すぐに不敵に笑いながら告げた。今の彼女の姿を称賛するように褒め称える言葉に、クリスはキッと睨みつけた。

 

 

「美しい、だと!今のアイツの姿が美しいと抜かすかよッ!?」

 

「美しいとも!アイツは自らの無力さを、力の無さを絶望していた!もう何も出来ないのは、嫌だとな!そんな奴の絶望が、力を持たぬ者の苦悩が、今叶ったのだ!これを美しいと、素晴らしいと言わずして何と言うッ!

 

 

 

さぁ!全ての敵を倒すがいい!お前の手で!お前の望む、二人の平和のために!!」

 

「お、おおおおおぉぉぉぉおおおおッ!!!」

 

【キュォォォォオオオオオオオオオオオッ!!!】

 

 

再び雄叫びを上げた未来が、鎧に取り込まれる。スライドした装甲の中に留まった小日向未来とファフナー・ユニット────No.7ドラグノートは怪獣のような音を響かせて翼を広げる。

 

 

「こういうのはアタシの仕事だッ!」

 

「先走るな!雪音!」

 

「いいんデスか!?如月刹那を放っておいても…………」

 

 

不意に見ると、刹那は近くの壁に寄り掛かっている。背中を預けた彼は此方を警戒する翼達に、ドラグノートの方を指差す。そっちの相手をしてろ、とでも言わんばかりに。

 

 

「手出しはしない、か。舐められたものだ」

 

「だが今は好都合────さっさと倒して、連れ戻すぞ!!」

 

────【QUEEN's INFERNO】

 

アームドギアを両手で持てるように二つの連装式の弓へと変形させたクリスが、無数の矢を放つ。迫り来る矢にドラグノートは翼をはためかせ、全身に取り付けたスラスターを吹かし、上空に飛び上がる。

 

【キュォォォォ────ッ!】

 

「なんだあの速さッ!?あれだけのデカさでかよッ!?」

 

 

翼部と腰部に連結した大型ブースターにより重量と巨体とは思えぬ速度で海上を駆け抜け、クリスの放つ矢の雨を潜り抜ける。これにはクリスも愕然とするしかなかった。

 

しかし即座に艦隊の上を飛び跳ねて追い掛けるクリスはアームドギアを変形させる。【BILLION MAIDEN】、四門のガトリングでの一斉掃射によりドラグノートへの弾幕を増やす。

 

流石に避けきれなかったのか、一度被弾したドラグノートは両肩に展開したシールドアーマーを盾のようにして背中を保護する。小型スラスターや大型ブースターを動かして空中でホバリングしたドラグノートは一瞬にして振り向き、上空にいるクリスに目掛け、肩部に備えた一対のビームカノンを放つ。

 

 

「くぅっ!?なんつー火力ッ!だが火力勝負なら此方も!」

 

────【MEGA DETH PARTY】

 

高出力ビームを何とかリフレクターで防ぎ、腰部アーマーから無数の小型ミサイルの雨嵐を叩き込む。ドラグノートはそのミサイルの雨嵐を防ぎきれなかったらしく、無数の爆発に呑まれ、海面を荒らすほどの爆裂を引き起こした。

 

 

「ッ!沈めちまったのか!?不味い!」

 

「違う雪音ッ!奴は今、姿を消したぞ!!」

 

「は?何言って────嘘だろッ!?」

 

 

未来を墜としてしまった、と動揺を顕にしたクリスだったが遠くから見ていた翼が艦を足場に迫りながら叫ぶ。困惑したクリスの前の空間が歪み、アームドギアであったガトリングの銃身を斬り裂いたのは、直後の出来事だった。

 

迫る空気の歪みを防いだのは、既の所で割って入った風鳴翼。彼女のアームドギアが、不透明な何かと衝突して火花を散らす。不可視であったソレはようやく姿を現し────腕部にブレードを展開したドラグノートが、そこにいた。

 

 

「神獣鏡のステルス能力ッ!ギアの状態でも使えるのかよ!」

 

「だが、動きは慣れてるものではないッ!そこを突けばッ!」

 

 

刃と刃の衝突の中、突如弾き返したドラグノートが翼とクリスを吹き飛ばす。その二人に目掛け、装甲を開いたドラグノートから無数のマイクロミサイルが一斉掃射される。クリスのガトリングによる弾幕で、ドラグノートの弾幕を押し返す。

 

その隙に飛び付いた翼の一太刀が、ドラグノートに一閃を浴びせる。僅かに出来た隙に、クリスは再度【MEGA DETH PARTY】を使い、ミサイルの雨をドラグノートに今度こそ直撃させる。

 

爆撃を浴びたドラグノートが、近くの艦に墜落する。バウンドして甲板に墜ちた黒竜が起き上がろうとするが、その全身が鎖によって締め上げられる。拘束された竜は、甲板に縫い付けられるように固定された。

 

 

「捕まえた、デスッ!」

 

「よくやった!そのまま離すなよッ!」

 

 

ギアから展開した鎖による拘束を行った切歌に、クリスは感謝を述べながら即座にドラグノートへ近付く。胸元の装甲に指を掛け、無理矢理にでもその装甲をこじ開け、中にいる未来の存在を捉える。

 

顔を覆うバイザーと首元のギア引き剥がそうとしたクリスだったが、それを見計らったかのような声が響き渡る。エリーシャ・レイグンエルドの、通信音声だ。

 

 

『────彼女を助けたいのであれば、ソレは止めておくことだね』

 

「なッ!?エリーシャ!」

 

『バイザーの制御装置は全て魔剣グラムの欠片に接続されている。無理矢理にでも引き剥がせば、肉体に深刻なダメージを与えるだろう。仮にも脳や脊髄に接続するように繋げた端末を、手術も無しに抜け取れば────よくて廃人、悪くて魔剣の暴走で死ぬよ』

 

「…………ッ!!?」

 

 

怒りよりも先に、動揺がクリスの思考を蝕む。自分にとって守るべき大切な仲間の生命が掛かっている、その動揺がクリスにギアを剥がす手を止めさせた。その躊躇いの数秒、小日向未来は再起動した。

 

────そのギアに禍々しいほどの妖しい光を灯して。

 

◇◆◇

 

(流石、クリスちゃんに翼さん………二人は強いなぁ)

 

仄暗い世界で、小日向未来はそう笑った。

あまりにも強かった。自分が魔剣士になった所で、ギアを纏った所で勝てるような相手ではない。そもそも、自分は無空剣のような完全な魔剣士ではないと、よく分かっていたはずだ。

 

 

(でも、ごめんなさい…………二人には、負けられない。私が得たこの力で、響を救わなきゃいけないの。こうしなきゃ、響は死んじゃうんだ)

 

魔剣士に変えられた小日向未来の意識は健在であった。しかし、それは彼女自身の純粋なものではない。エリーシャが刻み込んだ魔剣の副次効果────精神汚染の影響である。

 

与えられた欠片を肉体に埋め込み、完全に身体に馴染ませなければならない。そうしなければ肉体に不調を来す。精神汚染も、それが理由である。彼女は本来魔剣を埋め込まれてすぐに戦ってはならなかった。

 

────より深く、意識と精神が魔剣に結合してしまうのだから。

 

(このギアの、神獣鏡のギアの力は全ての魔を祓う。聖遺物も、ギアの力も奪う。私の力があれば、戦いを無くすこともできる────響や剣さんを傷つける、力を消し去ることができる)

 

不調を起こした身体では、シンフォギア相手に勝てるものではない。しかしそれでも、小日向未来には勝たねばならない理由が、意志があった。

 

たとえ、今その精神が歪んでいたとしても、小日向未来はあの時自分自身の意思で望んだのだ。立花響が戦わなくてもいい世界を、無空剣が傷付かなくてもいい世界を。その為ならば、どんな苦難も怖くはない。

 

─────そんな風に思っていた彼女に、ソレは語り掛けた。

 

 

『────可哀想な娘』

 

 

ずっと手を伸ばしたその手を、誰かが手に取る。黒い少女、黒いドレスに身を包んだ黒曜石のような漆黒に染まる少女。彼女はマトモに身体を動かせない未来に寄り添い、その頬に手を添える。

 

 

『どれだけ願っても、どれだけ祈っても、貴女の願いは叶わない。人は理不尽で、世界は残酷。どんなに幸せを望んでも、貴女の愛する人だけが傷付いていく────貴女は、彼等は全く悪くもないのに』

 

(…………貴女は、誰?)

 

『私は────■■■。担い手の意志を叶えるモノにして、■を殺すモノ。私は祈り手にして、神器。私と貴女は合わせ鏡、人の身を持つ貴女と肉体を持たぬ私────同じ願いを秘める同士。だから、そんな可哀想な貴女に、力を貸してあげる』

 

不意に姿が消えた少女は、未来の背後に居た。そのまま両手で優しく、抱き抱えるように手を添える少女。彼女は意識も定かではなく、ただ一つの意思を叶えようと望む未来に、語り掛けた。

 

 

『────その身を委ねて。貴女の望むように、与えてあげる』

 

 

◇◆◇

 

【キュォォォォオオオオオオオッ!!!】

 

「ッ!まだそんなちょせえのをッ!!」

 

 

再起動したドラグノート、小日向未来。変形した駆動用は竜としての姿よりも、小日向未来の強化装甲としての姿へと切り替わる。胴体部に露出した部位に組み込まれた小日向未来のギアの光に呼応するかのように、ファフナー・ユニットは両肩のシールドアーマーを展開する。二つのシールドからミラーが展開され、円形状に構えられる。

 

そんな最中、鎧を纏う小日向未来の口が開く。彼女の口から、歌が溢れた。

 

 

「────閃光、始マル世界………漆黒、終ワル世界………殲滅、帰ル場所ヲ────陽ダマル場所ヲ♪

 

「これは、聖詠………ッ!?」

 

「まさか、神獣鏡の力を使う気デスか!?」

 

 

ファフナー・ユニットの脚部が開き、杭が打ち付けられて固定される。それと同時に肩部のビームカノンが展開され、ミラーシールド部分の光と共にエネルギーを収束し始める。

 

禍々しい光を集める目の前の存在に、クリスは一か八かの防御を選んだ。回避を選べなかったのは、下手に避ければ周囲の艦隊を巻き込むほどのことになると判断したからだ。

 

 

「くそッ!だったら、リフレクターでぇッ!!」

 

「ッ!ダメデス!消し去られちゃうデスよ!」

 

「消し去られる、だとッ!?」

 

 

敢えて防御体勢に入ったクリスに、切歌が慌てたように呼び止める。翼が聞き返したが、既にクリスは避けられる状況ではなかった。

 

 

流星、アノ日は遠ク────追憶、全テガ遠ク────返シテ……返シテ────残響ガ温モル歌♪────」

 

────【凶星】

 

 

ミラーシールドとキャノン砲から放たれる、圧倒的なエネルギー砲。如月刹那のデュランダルの威力を上回るであろうその閃光に、クリスは展開したリフレクターで何とか防ぎ切る。弾かれたビームの余波が、周囲の艦を削り取る。そんな状況の中で、クリスは何とか防ぎつつあった。

 

「────指をすり抜ける キミの左手────私だってキミを 守りたいんだ────!」

 

「イチイバルのリフレクターは如月刹那のデュランダルすらも偏光させられるッ!ソイツが剣と同じグラムと聖遺物を備えたモンだろうが────って、押されてるだとッ!?」

 

「無垢にして苛烈…………魔を退ける輝ける力の奔流────これが、ノワール博士の言っていた神獣鏡の真髄ッ!?」

 

 

改めて事前に聞かされていた話を思い出す。神獣鏡、その効力は聖遺物を中和するというもの。響の融合症例を治す手段として見られていたその能力はシンフォギアに転用すれば、聖遺物を消し去る殲光と成りうる。

 

────これこそ、エリーシャが彼女を最凶のNo.7と評した理由。魔剣士でありながら、同じ魔剣士やシンフォギアすらも無力化するであろう力を秘める彼女は、ギアキラーとしての真価を誇っていると言っても過言ではない。

 

「────あの懐かしのメモリア 二人を紡ぐメロディーを────過去も今日も…………そう、そして未来も!」

 

「リフレクターが、分解されていく────ッ!?」

 

 

砕けていくリフレクターに、改めてクリスは衝撃は隠せない。分かっていたとしても、やはり自分の予想をひっくり返されると動揺は拭えなかった。【凶星】によるエネルギーの奔流にギア自体が沸騰し始めた所で、二人が動いた。

 

 

「呆けないッ!」

 

「デェェェェッスッ!!」

 

リフレクターが完全に破られる瞬間、巨大な大剣がクリスの前に壁となる。天ノ逆鱗でも使用する巨大なアームドギアである。その合間に切歌が鎖でクリスを縛り上げ、そんな切歌を翼が抱えて後方へと飛び退く。

 

甲板を滑り疾走する翼に、巨大剣を破壊した【凶星】の光が迫る。防ぐように無数に配置した巨大剣は、悉く閃光の奔流に灼き貫かれていく。横へ避けようとした瞬間、スピードを緩めれば巻き込まれる。ならば手は一つしかない。

 

そんな最中、走り抜ける翼は大剣を再度生成した。今度は背後ではなく、むしろ前方に。これには二人も愕然とする。

 

「────私は絶対譲らない もう遠くには行かせない♪

 

「どん詰まりッ!?」

 

「背水どころじゃないデスよッ!?」

 

「喋っていると────舌を噛むッ!」

 

こんなに好きだよ ねえ────大好きだよ♪

 

 

慌てる二人に一喝し、風鳴翼はそのままアームドギアを足場にして、空へと飛んだ。連れられた二人も同じ空中に浮かび、それによって【凶星】の光から難なく逃れられた。

 

 

「────ギアを滅する鏡のギア。いいな、流石は小日向未来。俺の見込んだ通り、お前は弱者に徹するような奴ではなかった…………………ん?」

 

高所から見届けていた如月刹那は、満足そうにその光景を見届けていた。しかし、何かが気に留まる。怪訝そうに顔をしかめた刹那は不意に艦橋の真上から飛び降りて、甲板へと着地した。そして息も絶え絶えとなっている翼達を無視して、未来に語り掛けた。

 

 

「────誰だ、お前は」

 

「……………」

 

「小日向未来の肉体の影に潜み、奴の意識と意思を動かしているお前は、誰だと言っている」

 

「────」

 

 

その瞳に宿る敵対心に、彼女は首だけを向けた。その瞬間、ファフナー・ユニットのレーザーが放射される。刹那はそれを咄嗟に回避してデュランダルのレーザーで相殺する。

 

 

「チッ、そういうことか────この際俺も消し去る気か。随分過保護なギアだな」

 

「どういうことだ………如月刹那、貴様小日向に何が起きているッ!?」

 

「────それを知る余裕がお前等にあるとでも?」

 

 

何かを悟り、厄介そうに吐き捨てる刹那だったが、その真相を伝えるつもりはないらしい。彼は今も尚攻撃を始めようとするドラグノートへ意識を集中させており、翼達も聞きたいことがあったが目の前の敵を止めることを優先させることにした。

 

再びドラグノートがミラーシールドを展開する。再度、あの【凶星】を放とうとするドラグノートこと未来に、クリスも攻撃を仕掛けようとして、迷う。下手な火力では彼女を傷つけてしまうが、このままでは此方がやられてしまう。

 

────その直後だった。

 

 

 

空を切り、風を裂き────漆黒のブレードが、ドラグノートを撃ち抜く。真上から飛来したブレードを回避できず、射撃体勢を崩される未来。しかし彼女はすぐさま鎧を動かし、迫るブレードを掴み、何処かへと両肩のキャノン砲のビームを掃射した。

 

ワイヤーに連結したブレードを操る、その人物はビームの狙撃を回避して肉薄する。そして鋭い蹴りで黒い竜の鎧を、哨戒艦の壁へと叩きつけた。

 

 

その人物は、その身に黒と紫色の鎧を纏い────背中に連結したワイヤーを引き寄せて、漆黒の剣を背中に収める。見覚えのあるギアを纏ったその姿に、翼達は驚きながらも安堵の様子を見せた。

 

「すまない。皆、短い間だが、迷惑を掛けた」

 

「無空………!」

 

「遅過ぎんだよ………ッ!」

 

「無空剣、現着した!────作戦行動を開始するッ!」

 

 

◇◆◇

 

【オマケ・独房の二人】

 

「…………」

 

「…………」

 

「………いやぁ独房って言っても普通に過ごせる部屋とはねぇ。日本も中々福利厚生に厚い………いや、彼等が優しいというべきかな?」

 

「…………」

 

「HEY、そこのボーイ。お兄さんと世間話くらいしようよ。黙ってばかりだと陰気になっちゃうよ。いや、それ自体悪いことじゃないけど、まだ若いんだから元気にしないと」

 

「………今、そういう気分じゃねぇよ。黙ってろオッサン」

 

「オッサンじゃないってぇッ!!なに、君達!人の事オッサンオッサンって!こう見えてもまだピッチピチの23歳!まだ婚期すら来てない大人なりたてなの!せめてお兄さん呼びしてくれないかなぁ!!?」

 

「うるせぇ。黙らねぇと殺すぞ」

 

「殺すとか言わないッ!あー、はいはい、オジサンが悪いよね黙りまーすッ!ったく、近頃の若い子はどうして人を年寄り扱いするのかね…………俺そんなに加齢臭する?」

 

「話し掛けんなクセェ」

 

「臭くねぇよッッ!!!!」

 

────無空剣現着前、二課仮説基地の独房二部屋の会話。




393は原作よりも強化されてますので、技名も強化入ってます。まあ単体で使えば同じですけど、あくまでも技名の変化はファフナー・ユニットとの連結時の強化技だと思っていただければ。 

そして、無空剣の復活。何故封印されていたギアが解除されたのかは次回にも明かしていく所存です。


次回もお気に入りや評価、感想などよろしくお願い致します!それでは!!
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