「剣君、翼、クリス君────行けるか」
「勿論、動けなかった分まで働くつもりです」
「ええ、叔父様」
「今度こそあの馬鹿は動けないしな、アタシらで頑張らないと」
フロンティアが浮上して数十分後、作戦会議を終えた二課の一同は動き出そうとしていた。無空剣を筆頭にした、翼やクリス、唯一戦闘が可能であるメンバーが戦場に出ようとしていたが、それでも不安要素は少なくなかった。
「剣君がいるとはいえ、三人相手で解決にするには問題が多いな。フロンティアにドクターウェル、シオン・フロウリングに如月刹那」
『場合によってはエリーシャも動くときたものだ。流石に心許ないこの上ないよ』
やるにしても、対応する相手が多過ぎる。無空剣に類する戦闘力を秘めるシオンに刹那、オマケにフロンティアを完全掌握したドクターの相手は流石に負担が大き過ぎる。どうにか対処を減らせないかと考える司令と博士に、響が声高らかと告げた。
「いえ、シンフォギア装者はまだ居ます!」
「言っておくが、ギアのない響君を戦わせるつもりはないからな」
「戦うのは私じゃありません」
無論、神獣鏡の光で遺物の欠片を消したことでギアを失った響に戦闘力は無い。しかしそれでも響は諦めてはいなかった。彼女には、頼れる相手がまだいたのだ。
「捕虜に出撃要請なんて………」
「どこまで本気なんデスか…………」
「勿論全部ッ」
二課に捕虜として確保されていた切歌と調。協力関係を結んだと言えど、あくまでも敵対勢力であるため二人も納得した対応であった。にしても、手錠をつけずにある程度の自由を許すくらいには甘い対応であったが。
そんな彼女達も、捕虜に戦闘の協力を求める状況に困惑を隠せなかった。そして、気丈かつ笑顔で手を差し伸べる目の前の少女のことも。
「………貴女のそういう所、好きじゃない。正しさを振りかざす、偽善者の貴女が」
調はやはりその手を取れない。
不服そうに、不満を露にする調の反発に、切歌は何も言えずにどうするべきか迷っているようであった。苦笑いしながら言葉を紡ごうとした響に、不意に声が響き渡る。
「────偽善か。お前等がそれを言うかよ、チビガキども」
声がしたのは、通路の扉側。
そこに立っているのは、独房に閉じ込もっていた青年────無空剣や刹那とは違い、肉体を機械へと置き換えたサイボーグタイプの魔剣士。虹宮タクト、ある青年の姿で造られた別人の魔剣士が、そこに立っていた。
◇◆◇
話は、数分前に遡る。
月読調がまだ彼女の意思を持っていたその時、響は独房にて閉じ込もっていた青年に語り掛けていた。
「タクトさん」
「……………ンだよ、またテメェか」
部屋の中で蹲っていたタクトが響の存在に目を細めて反応を示す。しかしすぐに彼は響の様子に気づき、彼女の変化に明確に理解を顕にした。
「融合、何とかできたんだな」
「はい!お陰様で!元気百倍であり余り気味ですッ!」
「そうかい。ならとっとと消えな。俺はテメェらと馴れ合う気はねぇんだ。金輪際失せろ」
「えっと、私が会いに来たというよりは、タクトさんに会いたいって人がいまして…………」
「却下だ、俺は有名人じゃねぇんだぞ。一々面会なんてする気は微塵も────」
「────久し振り、相変わらずいじけてるようね」
それでも拒絶を示し、対話を拒否するタクトに、その声は呆れたように漏れ出た。怪訝そうに顔をしかめたタクトの視界に映ったのは、黒髪ツインテールの少女である。敵愾心を剥き出しにした彼は、不機嫌そうに少女を睨んだ。
「あ?誰だテメェ。俺はテメェみたいなガキなんざ知り合いでもねぇよ。馴れ馴れしくすんな」
「酷い言われよう。泣いちゃいそうだわ、前々ではマスターなんて健気に慕ってくれていたのに」
「あ?何言って…………テメェ、いやお前…………貴方は」
敵対心を示していたタクトは少女の言葉の意味を呑み込み始め、動揺を示す。明らかに異質であり、自分を知る初対面の少女とかつて主と慕った相手の素性を脳内で計算し直したタクトは、目の前の相手が誰なのか悟った。
「────フィーネ?」
「久し振りね、タクト。意地張って素直じゃないって聞いたわ」
「マスター、オレは………」
「自らのした事を罪と考えて、距離を取ろうとしているなら、ソレは貴方の責務ではないわ。それを背負うのは私であって、貴方は貴方のしたいことをすべきよ」
優しく、それでいて厳しく突き放すように告げるフィーネ。少女の姿であったとしても、タクトには痛いほど突き刺さる事実であった。
「胸にある想いを信じなさい。貴方はどうしたいの?どう在りたいのか、貴方には分かるはずよ」
「────少し、考えさせろ」
蹲ったタクトは、それだけ言って沈黙した。フィーネは最後に「元気に過ごしなさいね」と告げ、その場を立ち去る。心配そうな響の視線を余所に、タクトは一言も喋らずに黙り続けていた。
それから数分後、彼は決断する。タクトは閉じ込もっていた独房、特に閉められていなかった部屋から出ていき、彼等のいる場所へと向かうことにした。
◇◆◇
「タクトさん!じゃあやっぱり!」
「勘違いすんな、テメェらと馴れ合う気はねぇよ。オレは言ったろ」
元気そうに抱き着こうとする響の顔を、タクトの手が抑える。アイアンクローで黙らせたタクトは弦十郎へと振り向くと、淡々と告げる。
「オッサン、オレも戦わせろ。換装ユニットを使うが構わねぇだろ」
「タクト君………いいのか?」
「マスターからお叱りを受けたしな………罪を償うってんなら、やることやらねぇと。報われた気がしねぇってもんよ」
ぶっきらぼうに、タクトは肩を竦める。
自分だけではなく、永劫を生きてきたはずのフィーネの心すら変えた立花響のお人好しに思うところがあるのたまろう。悪い意味ではなく、良い意味で。
「おい、チビガキども」
「チビガキって、私達のことデスか!?」
「…………チビガキって言われる謂れはない」
「ハッ、自分が一丁前に正義だと思ってるテメェらにはお似合いだ。あの馬鹿が偽善者とか抜かしたな、テメェ」
ガキ呼ばわりされたことに反発するきりしらコンビに、タクトは露骨に鼻で笑い見下す。響達との敵対時の記録を把握している彼からすれば、未熟な子供と見下すのは無理もない話だ。私情など、ありはしない。
「確かにこの馬鹿は大馬鹿だ。どんなに苦しくても辛くてもヘラヘラと笑って、他人に手を伸ばすことしか考えられない能天気女だろうよ」
「能天気じゃありません!他の事も考えてますよ!ご飯のこととか!」
「駄目だよ、響。今真剣な話なんだから」
「私も真剣なんだよぉ!?」
指指して大馬鹿と言われた響は違う所で突っ込み、未来に宥められる。当のタクトは邪魔されたことに無言でキレていたが、すぐに落ち着いたように首を振って話を続けた。
「だが、コイツはただの馬鹿で偽善者じゃねぇ。この馬鹿は辛いことを呑み込んで、他人の為に戦える筋金入りの大馬鹿野郎だ。そういう奴ってのはテメェらだって分かってんだろ」
「…………」
「そりゃあまぁ、そうデスけど………」
「オレやフィーネだけじゃねぇ。アイツは無空剣が心を許した奴だ。野郎を信じなくても構わねぇが、テメェがテメェの考えを信じなくてどうする」
彼女達だって、敵である自分達のために命を懸け、融合症例の状態悪化で死にかけながらも親友を救わんとした響の覚悟は理解している。ならばこそ、認めない理由はない。そこまで出来ないのは、一度決めたことを簡単に覆したくないという、子供特有のプライドか。
そんな最中、タクトが話を区切ったその時に響が二人に歩み寄る。苦笑いをこぼしながら響はポツポツと語り始めた。
「わたしも、自分のやってることが正しいだなんて思ってないよ」
「…………」
「以前大きな怪我をした時、家族が喜んでくれると思ってリハビリを頑張ったんだ。けど、わたしが家に帰ってからお母さんもお婆ちゃんも暗い顔ばかりしてた。────それでも、わたしは自分の気持ちだけは偽りたくない。偽ってしまったら誰とも手を繋げなくなると思うから」
ほんの一瞬、剣が悔しそうに目を細める。しかし、それは小さな変化であり、誰にも分からないものであった。ただ一人、響の過去を同じように知る、未来以外には。
その間にも、響は話を続ける。二人の手を取り、笑顔で語り掛けた。
「だから、切歌ちゃんや調ちゃんにもやりたいことをやり遂げて欲しい。もし、それがわたし達と同じ目的なら────少しだけ力を貸して欲しいんだ」
「私達の………」
「やりたい、こと…………」
響の言葉を呑み込み、切歌と調は互いに見合う。自分達のすべきこと、やりたいことなど決まりきっている。顔を見合わせた二人はすぐに口を開いた。
「仕方ないデス、ちょっと付き合うデスよ………その代わり」
「────マリアを、マムを助ける。その為なら手伝ってもいい」
「当たり前だ。その為にも俺達はここにいる」
────そして、フロンティア攻略に装者四人と無空剣が出撃する。全てを救うために、彼等は最終決戦へと飛び出していくのだった。
「………ったく、俺の装備だけ換装式なんて面倒だな────?お前」
「タクトさん!お願いがありますッ!」
後から遅れて戦場に現れたタクト。換装ユニット、アルビオン・フォートレスα────陸戦仕様の重装兵装に身を包んだ彼は無空剣達とは遅れる形で参戦した。────その背に見覚えのある少女を乗せて。
「響ッ!?」
「何をやってるッ!タクト君!響君を戦わせる気はないと言ったはずだッ!?」
『────オレに言うな。この馬鹿が煩いで乗せてってやるだけだ!』
『戦いじゃありません────人助けですッ!』
「減らず口の上手い映画など見せた覚えはないだろッ!」
厳しい声で呼び止める弦十郎だったが、当のタクトは巻き込むなと言わんばかりに溜息を吐き捨て、響の純真な声が響き渡る。減らず口だと呆れながら叱る弦十郎を宥めたのは、戦いの場に出れない保護者二人であった。
「行かせてあげてくださいッ!人助けは────一番響らしいことですから!」
『まぁ、それが彼女らしいと言えば…………軽くお叱りで済ませてあげなよ、司令』
「こういう無茶は俺の本分だったんだがな────子供ばかりにいい格好させてたまるか」
不意に笑いを零した弦十郎は指を鳴らし、準備を整えた緒川と共に出撃する。彼等が少しでも対応がしやすいように、Dr.ウェルの捕縛を最優先として動き始める。
こうして、フロンティアにて大きな戦いの火蓋が切られる事となった。
◇◆◇
一方その頃。
フロンティアのブリッジにて力に酔い痴れていたドクターの衝撃的事実が、マリアから完全に余裕を奪い去った。
「フロンティアの浮上は成功。しかしまぁ、行きがけの駄賃に月を引き寄せちゃいましたよッ」
「────月をッ!?落下を早めたのか!?救済の準備は何もできていないッ!これでは本当に人類は絶滅してしまうッ!!」
エリーシャの策謀により落下しそうに思われていた月は、本当に落下軌道に入ってしまったのだ。それは他ならぬフロンティアの浮上が理由。月にアンカーを放ち、それで持ち上げたことで本当に月が落ちるのを早めてしまうことになった。
ウェルを押しのけ、操作盤に指を這わせるマリア。しかしどれだけ叩いても、どれだけ動かそうとしても、フロンティアを制御できない。
「どうして!?どうして私の操作を受け付けないのッ!?」
「LiNKERが作用している限り、制御権は僕にあるのです。人類は絶滅なんてしませんよ────僕が生きている限りはね。これが、これこそが僕の提唱する一番確実な人類の救済方法です!」
「そんなことのために、私は悪を背負ってきたわけではないッ!!」
叫び、掴みかかるマリアだったが、ウェルはそんなマリアをビンタ一発で払いのける。地面に倒れ転がった少女を見下ろし、ウェルは侮蔑と悪態を吐き捨てる。
「ここで僕に手をかけても地球の余命があと僅かなのは変わらない事実だろッ!ほんっとうにダメな女だなぁッ!!」
「ッ………!」
「────フィーネ気取ってた頃でも思い出してぇ、そこで恥ずかしさに悶えてな」
世界を救う力を得た事でウェルからすれば最早仲間などどうでもいい。協力し、従うならばまだしも、反発する者にそこまで期待も希望も持ってはいない。
そして、マリアはそんなウェルの罵倒を受けて立ち上がる気力を失う。自分は、いったい何をしていたのか。世界を救いたい、破滅の危機に瀕する世界を守ると、誓ったはずだ。なのに、あろうことか自らを慕う少女たちの批判を招き、挙句の果てに世界を危機に追いやってしまった。
────これでは自分が死なせた命は、見殺しにした彼の命は、どうなるのか。抑えきれない感情に渦巻いたマリアは立ち上がることもできず、その場で泣き崩れた。
「セレナ………セレナぁ………私は…………」
「気の済むまで泣いてなさい。僕だって英雄だし、逆らう気がなければ殺したりはしませんから、安心してくれて結構ですよ。事が終わったら、僅かに残った人類をどうやって増やすかも必要ですから、少しは考えててくださいね」
最早ウェルにとっては殺す価値も無い、哀れな少女でしかないのだろう。彼女は泣き崩れるマリアに適当に言葉を投げかけ、その場から離れる。
「シンフォギアに無空剣に如月刹那、そして────エリーシャ博士。僕の作る理想の世界には過ぎた連中。奴等をまとめて消し去る切り札は、僕の手にある」
目には目を、歯には歯を。シンフォギアにはシンフォギアを────魔剣士には、同じ魔剣士を。ウェルの手には、どんな命令を従う無機質な兵器がある。その兵器、魔剣士を使えば、如月刹那の相手もできる────あの無空剣の相手にならなくとも、彼の精神を揺さぶるのも容易い。
「────シオン・フロウリング!世界を導く英雄たる、この僕からの命令です!このフロンティアに踏み入った者を全て敵として、殲滅しなさい!その力全てを、命全てを使い潰してでもッ!」
『────』
ウェル博士からの命令に、魔剣士は顔を上げる。抵抗の意思を見せる余裕もなく、無機質の仮面と尻尾が不気味な音を響かせて呼応する。制御装置により肉体を支配された魔剣士、シオン・フロウリングはウェルの命令を果たすため、空に舞った。
◇◆◇
「ここに来て、ノイズの軍勢かよッ!」
「ドクターしかいないだろうな、こんな真似をするのは。余程俺達を近付けたくないか」
二課の仮説基地から出撃した剣達一同を出迎えたのは、広大なフロンティアの地に群れるノイズ。Dr.ウェルが足止め感覚で配置していたのだろう。現に翼達や剣に容易く屠られている状況下だ。
「やはり如月は居ないな!叔父様や皆も観測しているが、反応はないようだ!」
「あれだけ動いていた刹那が今更逃げるはずもない…………何を企んでいる?如月刹那」
迫るノイズを一刀の元に斬り伏せる翼が気付いたことで、剣も疑問を持ち始める。如月刹那、彼の存在が感知できないのは明らかにおかしい。まさか、今更になって姿を隠す理由があるのか。
(アイツの狙い、まさかフロンティアか?フロンティアをドクターの手から奪う為に機会を伺っていると?どちらにしても厄介だが、警戒を緩めないようにすれば────ッ!?)
「全員!下がれ!」
一早くそれに気付いた剣が全員に向けて叫ぶ。
直後、上空から無数の斬撃が振り注いだ。青い光を秘めるエネルギーの斬撃。それは見覚えのある相手の攻撃方法であった。
眼前に、空を突き抜けたソレが迫る。全身を折り畳み、装甲を纏った重厚な飛行形態。蒼白い日からを各所から放つ戦闘機のようなソレは装甲をスライドさせ、その姿を人型へと変えていった。
「────シオン」
『────』
短く、噛み締めるように呟いた剣の表情は険しい。対する蒼と黒の鎧を纏うシオン・フロウリングはかつてのような機械音声を発することなく、戦闘態勢を取っている。
かつて対峙した時、暴走した剣はシオンを殺す一歩手前まで追い込んだ。かつての後輩を、慕ってくれたあの少年を。だからこそ対峙する彼の手が微かに震える。したくない、やりたくないという感情が渦巻く中、剣はそれを噛み殺してシオン・フロウリングと対峙しようとする。
だが、そんな彼の前に青い刀が伸びた。翼の振るう天羽々斬のアームドギアである。
「翼…………?」
「────先へ行け、無空。お前の後輩の相手、私達が承る」
そうして前に出る翼の言葉に、剣は動揺を隠しきれなかった。しかしそれでも食い下がる。シオンは、元より自分の後輩だ。自分のやってきたことは、自分でケジメをつけると。しかし翼以外の三人も前に出て、各々が語り出した。
「お前には色々と無理させ過ぎてるしな。偶にあたしが代わってやるよ。だからドクターとソロモンの杖は、任せた」
「こういう時こそ私らの出番デスッ!シオン・フロウリングも仲間の一人ですからね!解き放って連れ戻すのも私達のやるべきことデス!だから────」
「────マリアを、マムを助けて。無空剣。貴方なら、出来るはずだから」
「………………」
それは、彼女達の優しさ故だろう。
剣が覚悟を決めたのは、たとえ後輩を殺してでも止めるという意思を感じたから。それをさせない為に、シオンも救うために彼女達はこの場で戦うことを選んだのだ。
そんな四人の意思を、剣は重く、深く噛み締めた。
「────分かった。シオンは、頼むッ!」
そう言って、ロストギアを纏う剣はその場を後にする。背中のガードラックのブースターを吹かし、最大出力でフロンティア中心部へと向かう剣に、シオンは無造作に手を伸ばす。
その腕に、複数の蒼刃が剥き出しになる。シオン・フロウリングの適合した魔剣────あちら側の『天羽々斬』。全身から刃を生成し、敵を斬り裂く斬撃を放つ能力で、無空剣の背中を狙い撃とうとする。
『────!』
「お前の相手は、私達だと言ったはずだッ!」
そんなシオンに、翼が斬り込む。振り抜かれる一太刀を回避したシオンは両腕を向け、蒼刃を射出する。地面を滑り抜けながら迫る刃を切り弾く翼がそのまま突撃し、右腕に一際大きな刃を展開したシオンと斬り結ぶ。
『敵性、因子────複数。自動演算機能、不具合、確認………緊急対応の為────「
翼を押しのけ、距離を取ったシオンはその場にいるクリス達の事を警戒したのか、次なる武装を展開する。背中の装甲をパージして、剥がれるように現れる竜の頭のような尻尾。ソレはバックリと開いた口から怒号のような不協和音を響かせる。
【────グオォォォォォォォォォォォォンッ!!!】
「出やがったな!やっぱりコイツが出たってことは────あたしを狙うよなッ!」
ギアを構えて距離を詰めるクリスに、尻尾の部位にある竜の頭部が唸りながら迫る。自律思考の人工知能である竜尾が狙うのは遠距離に特化したクリス。彼女を優先的に狙うのは、既に知れた手である。
「だけど今度は────ッ!」
「三人どころか、まさかの四人デスッ!」
【ッ!!?グオォォォオオオオオッ!!!】
直後、左右から現れた切歌と調が同時に斬り込む。大鎌による一撃と丸鋸の刃に斬り裂かれた竜頭が悶える。それは自我を持っているかのような反応であったが、すぐにその身を振り払い、切歌と調を押し退ける。
「効いてる、けど………!」
「ダメージを受け流してるみたいデスよ!まるで考えて動いてるようデ────」
『────君達の言う通りだよ、月読クンに暁クン』
重厚な装甲に身に纏う竜は未だ攻撃を簡単には受けようとしない。それに気付いた二人の疑問に応えたのは、ノワール博士である。彼は通信越しにその場にいる三人に呼び掛ける。
『長らくようやく、解析が改良した。今のシオンクンはただ撃破するだけでは無力化できない』
「どういうことだよ、ノワール博士」
『────前に話したろう?シオン・フロウリングを操っているのは、顔面部の制御装置と。しかしアレは真の制御装置ではない。恐らくは、サブの端末────さしずめ「
かつて暴走した無空剣に顔面の装甲────制御装置を破壊されても、シオン・フロウリングは復活した。その際にエリーシャは彼等の努力を、戦いの結果を笑った。同時に語ったのは、もう一つの制御装置の存在。
ノワール博士が解析したように、シオン・フロウリングのフェイスバイザーは受信機にして指令を肉体と神経に伝達させるシステムを組み込まれた小型の制御装置。もう一つの役割、彼の肉体に指令を与える本来の制御装置があるはずであった。
「じゃあこのやってもジリ貧ってワケデスか!?」
『いや、それは無い。アレはあくまで中継機であり、最終的な制御を行うママルの指令を受けている。つまり、ママルこと────彼を操る本来の制御装置は、彼のすぐ近くに存在している』
「すぐ近く……………それって」
全員の視線が、ソレに向けられた。
目の前にあるのは────巨大な竜の頭を持つ尻尾。シオンの背中に接続された人工脊髄から連結した、独立した意志を持つ尻尾。
『初めて見た時に追加されていたあの装備、ただの武装ではないと思っていた。半永久的に稼働するコアに自律思考する人工知能────
【───────対象の変化を、確認。
廃人と化した魔剣士の肉体とソレを操作する尻尾による、二体一対型。その状態を看破したことに、尻尾の人工知能も勘付いたのだろう。その全身に光を宿し始める────天羽々斬以外の魔剣の反応も、感じられる。
『クリスクン!暁クンに月読クン!尻尾を破壊し給え!シオンクンを助けるには、それしかないッ!』
【対象を────排除スル】
◇◆◇
その一方で、戦闘の変化を感じていたのは、シオン・フロウリングと激戦を繰り広げていた翼も同じであった。いや、この場合は、激戦というよりも戦況は大きく傾いていた。他ならぬ────風鳴翼の優勢で。
『────』
「無空の次に並ぶ実力────だがそれは本人のものであり、機械に操られた強さではないッ!」
伸縮自在縦横無尽に刃を生成し操作するシオンの『天羽々斬』。しかしその称号は、無空剣の強さを量産するためのグラムシリーズのNo.1の実力は、シオンという少年が刻んだものであり、今の彼と同じものではない。そう断言する翼は容易くシオンを圧倒し、追い込んでいた。
それは、シンフォギア装者の中で最も長く戦ってきた実力者としての経験やセンスあってのもの。風鳴家の人間として、防人として、装者として鍛えてきた彼女は並大抵の実力ではなかった。
だがしかし、シオンは人間ではなく、魔剣士である。強化改造され、その果てに無理矢理魔剣を埋め込まれた反動で廃人化した少年。彼にはまだ『天羽々斬』以外の力が残っていた。
『ッ、────ッ!!』
「まだ抗うかッ!いや、これは────ッ!」
顔面のフェイスバイザーを破壊せんとする翼に、シオンの様子が変化する。悶え苦しむように顔を抑え込んだ魔剣士は直後、胸元のコアに五色の光が灯った。
咄嗟に飛び退いた翼、彼女の前にシオンは腕を振るう。蒼白い光刃はそのまま空振るはずであった────が、腕を振るった先の地面から無数の鋭い刃が生成されていき、翼への追撃を始める。
「この攻撃────天羽々斬ではないなッ!」
────【逆羅刹】
地面から迫る無数の刃を、翼は後ろに飛んで逆立ちと同時に横に回り、両足のブレードで刃を切り裂いた。着地した翼はシオンを見据えたままアームドギアを握り締め、確信したように告げる。
「シオン・フロウリングの意識を殺す遠因となった、新たな魔剣────天下五剣の欠片か」
ノワール博士からその情報は得ている。シオン・フロウリングに埋め込まれた新たな魔剣────天下五剣の名を冠する遺物の欠片、その能力も。
液状化、気化による変化を伴う柔剣『童子切安綱』、高周波による防御不可能の一撃を誇る断刀『鬼丸国綱』、変則的に飛来する斬撃として飛ばすことができる秘剣『三日月宗近』、斬激自体を空間上に沈め、時間差攻撃が可能な奇剣『大典太光世』、設置する部分ならば何処からでも生成した刃による攻撃を可能とする暗刃『数珠丸恒次』────それらと同時に使用する、全身から出現させられる縦横無尽の神刀『天羽々斬』。
「六本以上の魔剣を使用した戦闘スタイル────ッ!厄介なものだが、私とて負ける訳にはいかない!」
『────ッ!』
「無空と約束した!必ず後輩を、お前を連れて帰ると!無空の下へ、帰る場所へッ!」
『──────せん、輩………?』
臆することなく刀を構え、告げる翼の言葉に反応を示すシオン。しかしそれでもその肉体は人形のように不気味に操られているようであった。翼はそんなシオンの様子に気付いたのか目を細めながら、一切の戦意を緩めることなく、複数の魔剣を扱うシオンへと斬り結んだ。
情に絆されまくったツンデレタクトときりしらコンビが仲間になりました!あとマリアだけだけど、この人本当にこの頃メンタル大変なことになってるな…………まぁ子供に背負わせ過ぎってのはある。もう二十代?充分子供よそりゃ。
ドクターウェルだけどサラッとエリーシャも始末しようとしてる…………表向きには仲良くしてたけど、ウェル的には無空剣を造った一人だし、何をするか分からんのも事実だけども。博士連中仲良くしながら裏側で利用するだけ利用して始末する算段組んでるのホントに悪い意味で大人してるな…………
そして、フロンティア編での障害の一つシオン・フロウリング。原作ではまだクリスや切歌などを従わせてたけど、正直装者四人ならコイツで充分と自慢するレベルは普通にある。因みに翼達が相手してるせいで、アンチLINKERやソロモンの杖で止められない無空剣がフリーになってる模様()
翼さん強過ぎ………っていうか原作の時点でも戦い慣れてるエースだしね。実力的にも安心できる剣もいるから頼れるし頼られることも学んでるので、多分絶好調の領域にあると思う………やっぱ防人やな()
お気に入りや感想、評価などもよろしくお願い致します!次回もお楽しみくださいませ!それではッ!