戦姫絶唱シンフォギア 神装魔剣   作:虚無の魔術師

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ホントに長くなってしまった…………分割するほどの技量がないのが辛いなぁ…………


始まりの(バベル)

「ガングニールに、適合………そんな『奇跡』みたいなことが」

 

「────『奇跡』、だと?」

 

 

シンフォギア、裂槍ガングニールを再構築してその身に纏った響に愕然とするマリア。自然と、信じられないと言わんばかりに呟いた彼女の言葉に、低い声が反応する。

 

震えるほど、不気味な感情を秘めたその声は、刹那のものであった。顔を抑えた刹那はブツブツと呟きながら、ドス黒い感情を抑え込もうとしていた。

 

 

「違う、『奇跡』ではない。『奇跡』などでは、あるものか………ッ」

 

「…………如月刹那?」

 

「こんな土壇場で、奇跡など起きはしない………ッ!奴の高まったフォニックゲインが、マリア・カデンツァヴナ・イヴの戦意の低下したギアを分解、再構築したのだ!それ以外にない!『奇跡』などと、夢みたいな話ではないッ!!」

 

 

感情的に、奇跡という可能性を否定する刹那。

それは奇跡に救われず、理不尽に奪われた過去からか。奇跡を願い、神に祈り、それら全てに裏切られたことで生まれた────力への執着を保つ為か。少なくとも、今の刹那が正気とも理性的とも呼べる様子ではないのは明らかだ。

 

 

「そのギアで、この俺の邪魔をするか!あの無空剣、無様に海に散った魔剣士のようにッ!」

 

「はい!たとえ断れようとも、話し合います!全力で!刹那さんを止めます!刹那さんと、分かり合えるまでッ!」

 

「────ならば!止めてみるがいいッ!貴様のその度が過ぎた理想論も、俺の力で捻じ伏せるのみだッ!!」

 

 

覚悟を揺るがせない響に、刹那はそう告げてその身を光輪の中に消す。姿を完全に消したように見える刹那だが、屋内から外へとワープしただけらしい。見晴らしのいい外に感じる気配に向き合う響に、膝をついたマリアは項垂れるようにしながら吐露し始める。

 

 

「今やフロンティアは如月刹那そのもの………今の彼は、その力を世界に振り翳さんとしている…………お願い、戦う資格もない私に代わって…………お願い………ッ!」

 

 

ナスターシャを失い、自らに歩み寄ってくれた剣すらも失ったせいか、マリアの自己肯定感はゼロに等しかった。自分には何もない、何もできないと諦めてしまっている。だからこそ自分とは違い、何かを持っている、持つことができる覚悟と意志を秘めた響に託そうとしたのだ。

 

しかし縋ることしかできないマリアに、響は膝を付いて向き合う。

 

「調ちゃんや切歌ちゃんにも頼まれてるんです。マリアさんを助けてって────だから、心配しないでくださいッ!」

 

「あの二人が………」

 

「待ってて────ちょーっと行ってくるから」

 

 

いつものように笑いかけ、響はガングニールと共に戦場へと向かう。手と手を取り合える未来の為に。そんな彼女の背を見つめ、マリアは自身の掌を、壊れたペンダントを見つめることしか出来なかった。

 

◇◆◇

 

「くそッ!あのお節介馬鹿女めッ!勝手も勝手、適当に飛び出しやがって!」

 

 

フロンティアの内部通路を、苛立ちながら駆け抜けるのは魔剣士こと────サイボーグの虹宮タクト。重装甲かつ重武装の彼は少し前、フロンティアに突入したばかりのことを思い出していた。

 

 

『────チッ、ノイズの大群かよ。俺の足止めってか!上等────ってオイ馬鹿!何してやがるッ!!』

 

『すみませんタクトさん!私、マリアさんと話し合いに行ってきますッ!』

 

『アホかテメェ!ノイズいるこの状況で────ああもうっ!』

 

 

「あの馬鹿、後で絶対にシめる………ッ!…………あ?生体反応?アイドル大統領はもっと遠くのハズ…………誰だ?」

 

 

少し前の事を思い浮かべ、振り回されたタクトは響へ苛立ちとも呼べぬ呆れを抱いていたが、そんな彼は不意に近くに生体反応を感じ取る。マリアは無空剣が対処しているはず、ドクターウェルも今風鳴司令達が追っているはず────では、一体誰の反応なのか。

 

 

「────ッ!?アンタは────」

 

角の向こうにある反応を追い、近付いたタクトは制圧できるように武装した腕を振りかざす。しかしソレを向けたタクトは、その相手の姿を見た瞬間、驚きを隠しきれなかった。

 

 

◇◆◇

 

 

「はぁあああ────ッ!」

 

拳を握り、前へと突き進む響────彼女に無数の星剣が放たれる。飛翔する星剣の数々が、無数の生命体の群れのように殺到していく。それら全てを制御する、疑似神装・如月刹那は不適にほくそ笑んでいた。

 

「ククク………」

 

(いいぞ、あと少しだ。あと少し、この力を使いこなせば、俺もこの力の核心に触れられる気がする────この力の真価!本質に至る更なる極点に!!)

 

 

光輪を回転させ、刹那は無数の星剣を生成し続ける。創り出された星剣は刹那の意思によってコントロールされ、全てが彼の操るビットであるかのように世界を覆い尽くしていく。

 

次第に健闘していた響も、その質と数に押され始める。いくら砕いても尚、無尽蔵のエネルギーを秘める刹那が創り出す以上、厄介なことに変わりはない。

 

 

「は……ッ!はぁ………ッ!………このままじゃ、どれだけやっても────!」

 

「質は力、数も力!俺の生み出すこの力は、世界すらも捻じ伏せ掌握するッ!貴様も、俺の強さの前に跪くがいいッ!!」

 

 

迫り来るデュランダル・エクリプス、刹那の生成し支配する無限の星剣の嵐。それは統率された一群となって、響を制圧せんと迫る。振り注ぐ星剣が煌めいた────その瞬間。

 

 

「そうは、させない────ッ!」

 

────千ノ落涙

 

「やらせるかってんだッ!」

 

────MEGA DETH PARTY

 

 

デュランダルの奔流を、二つの弾幕が撃ち抜く。空から振り注ぐ青いブレードの雨嵐と、赤いミサイルの爆撃が無数に迫る星剣の群体を蹴散らしていく。見覚えのある技の数々に、響は嬉しそうに声を上げた。

 

 

「翼さん!クリスちゃん!来てくれたんだッ!」

 

「────二人だけじゃあないデスよッ!」

 

「────シュルシャガナにイガリマ、一緒に到着」

 

「切歌ちゃんに調ちゃんも!二人も一緒なら百人力だよッ!」

 

 

この場に現れた翼にクリス、切歌や調、4人のシンフォギア装者が集う。シンフォギア装者五人、これだけでも普通であれば過剰戦力に等しい。しかしこの戦場、目の前の相手を前には────余裕とは言い難い。

 

 

「シンフォギアが五つ。この場に並ぶのは壮観………だが、滑稽だな。所詮はロストギアにも届かない劣化式のギア────いくら数を束ね所で!この如月刹那の敵ですらないッ!」

 

『………仮にも製作者がここにいるのだけれど。随分と失礼極まりないわねぇ、彼も』

 

 

シンフォギア相手にも、刹那の余裕は揺るがない。ロストギアの下位互換、と見下す刹那の態度に呆れるのは調の中にいるフィーネである。言い分に思うところはあるが、概ね事実なのはそうである。

 

 

「更に出力を上げてやる。貴様らが、最強に至ったこの俺の相手に相応しいか、ここで試して──────ッ」

 

 

意気揚々と語らんとした刹那、だが直後に青年の姿は爆炎に飲み込まれた。いや、先ほど上空から飛来した砲弾を直撃して爆発を直に浴びたのだ。その攻撃は、装者達によるものですらなかった。何処から来たのものか、それに気付いたのは打ち上げられた二課の潜水艦内のオペレーター達であった。

 

 

『これは、艦隊からの遠方砲撃ッ!?まさか────』

 

「────確認取れました!米国の艦隊による強襲攻撃ですッ!」

 

「米国からの通信です!フロンティアを強奪し、世界への明確な敵意を向けた如月刹那を敵と判断し、殲滅する。協力されたし、とのこと」

 

『…………事前連絡も無しに撃っておいて何が協力だ。米国政府め、事の展開に焦ったな?明らかに彼女達を巻き込む意思のある攻撃だったぞ』

 

 

オペレーターである藤尭や友里の報告を聞いたノワール博士はその場にいないながらも、米国政府のやり方の真意を見抜いていた。自分達の行為────月の落下の可能性を知り得ていながらをそれを隠匿、あろうことか自分たちだけ生き残ろうとした────隠蔽の真実を暴露された挙句、その生存の要であるフロンティアすら如月刹那に奪われたのだ。

 

本当に月の落下が近づくのであれば、是が非でもフロンティアを取り返したい。彼等が焦り、武力で制圧に出たのも頷ける。しかし、相手が相手だった。

 

 

「────米国、所詮は人間………だが、武力で物を言うのは嫌いではない。元より人間はこのような状況でこそ手段を選ぶことはない種だからな────だが、理は理。貴様らが力で黙らせようとするように、俺はさらなる力で貴様らを叩き潰そう」

 

 

砂煙、割れたフロンティアの大地から起き上がった刹那は、破壊された全身を修復させていく。手足や身体、顔すらも抉られても尚、彼は死ぬことはない。フロンティアの力、デュランダルのエネルギーによる再生は留まることを知らず。

 

再生した顔を上げた刹那は、両手を広げる。すると背中に展開された光輪、十本の輝星剣も高速回転を繰り返し、刹那の背中から真上へと移動していく。

 

 

「────見るがいい!世界を救済するこの力!それが何たるか!この如月刹那にこそ相応しき、世界を思うがままに導く絶対的な力をッ!!顕現せよ────デュランダル・アステリオス!極星に集う、神の巨兵よッ!!」

 

 

空高く飛翔した刹那の叫び声に呼応するように、フロンティアが再び脈動する。何が起こったのか、身構える響たちであったが、突如フロンティアの大地から無数の星剣が生成され始める。エネルギーの塊たるその星剣は全て、刹那が上空に浮かべた光輪の方へと収束していき────一塊の存在へと変化していく。

 

頭のない、光輪を纏う巨体。胴体だけでも数十メートルは優に上回るソレは純粋なるエネルギーの光で構成された巨神。六本の浮遊する腕を持ち上げたその巨神────デュランダル・アステリオスは、頭のあるべき場所に光輪を備え、刹那の背後に佇んだ。

 

 

「アレは、巨神………ッ!?」

 

『馬鹿な………!あれだけのエネルギーを体外に纏い具現化するなど、本来ならば不可能────完全適応した完全聖遺物デュランダル、その真価がここまでとは………』

 

「────世の理に習わい、強者に牙を剥いた愚か者どもに────神の光を、星を灼き尽くす閃光を見せてやる」

 

 

愕然とする一同、その異常性に戦慄するフィーネを背に、刹那は満ち溢れた全能感を噛み締めながらその力を振るう。彼が振り上げたその手が、フロンティア全体から力を放射させる。大陸、箱舟から放出される無限のエネルギーは一つに、巨神の眼前へと収束していく。

 

具象化できるほどに濃厚なエネルギーの塊となったソレを、巨神は四本の腕で掴む。そのエネルギーが自然と形を整えていったかと思えば、黄金の聖剣へとその姿を変えた。巨神に匹敵する巨大な聖剣────デュランダルの刀身が、空高く掲げられる。

 

 

「天に至る黒夜の空、絶望と暗黒へ染まる世界を照らす────十の光星────サーシャ、アンネ、フェレット、カナタ、フェイ、ミリアム、クローゼフ、リィン、ダグマ────リセリア」

 

デュランダルの刀身に光が宿るごとに、刹那の背後に浮かぶ光輪、十本の星剣が回転し始める。その刀身に凄まじい力が集まっているのか、響く音は人の鳴き声のように甲高い音を響かせていた。

 

「────思い知るがいい、星をも灼く神の光を!『十なる極星、虚空裂いて界理刻む(ディ・エル・アスティレーゼ・アルドラーガ)』ッ!!」

 

 

巨神から放たれる一振りは、巨大な閃光となって────世界を呑み込んだ。斬撃というよりも、超高出力のエネルギーを圧縮した光の刃が、海を切り裂く。

 

米国の艦隊十数隻が、光に消える。その閃光は戦艦を灼き消し、砲弾すらも灰燼に変え、人の形すらも消滅させる。水平線の向こう側に伸びる光の柱は、その大規模な破壊を示すソレであった。

 

 

「────米国の艦隊、消失………生存者、ゼロ………」

 

「太平洋方面、数百キロ先でようやくエネルギーの停止を確認!周辺の空間の熱膨張、一部エネルギーの結晶化も確認!」

 

『…………これも、魔剣士の真価というのか?ヤルダバオト』

 

「刹那さん………」

 

「─────ハハハハハッ、アハハハハハハハハハハッ!!」

 

 

光の柱を見据え、刹那は興奮を抑えきれずに高笑いを響かせる。自らの会得した世界を救済する力、思い通りの力に酔いしれた如月刹那はその力のままに世界を蹂躙すること選んだ。かつて己が、何の為に力を求めたのか、それすらも忘れて。

 

 

◇◆◇

 

 

「────私では、何もできやしない」

 

 

フロンティアのブリッジにて、一人取り残されたマリアは懐からある物を取り出す。無空剣が自ら渡した魔剣グラムの欠片、黒曜と紫色の欠片を見つめたマリアは、静かに涙する。

 

 

「セレナの歌を、セレナの死を無駄なものにしてしまう」

 

『────マリア姉さん』

 

「………セレナ?」

 

 

何も救えず、何も変えられない。自分はどうすればいいのか、自分には何もできないのか。そんな風に、深い暗闇に落ちていたマリアの心を晴らしたのは、聞こえるはずのない家族の声。

 

微かな光を放つグラムの欠片を握り、声の方を見上げたマリアは────かつて目の前で失ったはずの妹の姿を見た。あの時と変わらない、まだ幼さの残ったセレナはマリアの目を見つめて、優しく問う。

 

 

『マリア姉さんがやりたいことは何?』

 

「…………歌で、世界を救いたい。月の落下がもたらす厄災から、それ以外の不条理や理不尽から、皆を助けたい…………でも、私は………」

 

 

心の奥底の真意、自らの本当の気持ちを吐露したマリア。しかしそれでも、自分にはそうする資格すらないと言おうとした所でセレナはマリアの手を掴む。優しく手を引く彼女の姿は、穏やかに微笑んでいた。

 

 

『────生まれたままの感情を隠さないで』

 

「セレナ………」

 

『────りんごは浮かんだお空に♪』

 

 

繋いだ手を握ったセレナが歌う。それは、幼い頃から家族から聞かされてきたマリアとセレナにとって思い出に残る始まりの歌。その名を、『Apple』。懐かしきその歌を、マリアも共に口ずさむ。

 

 

「────りんごは落っこちた地べたに♪」

 

『「星が生まれて歌が生まれて────ルルアメルは笑った、常しえと」』

 

 

その歌は、フロンティアから世界中へと浸透していく。誰もが手を止め、その歌に耳を傾け、心を合わせていく。共鳴していくその思い、その祈りがフロンティアへと収束していき────ある一つの奇跡の寄辺となろうとしていた。

 

 

星がキスして歌が眠って、かえるところはどこでしょう………?

 

『────マリア、マリア!』

 

「っ!マム!?無事なの!?月に打ち上げられたんじゃ………」

 

『えぇ、すんでの所で助けられました。今は予備区画のコントロールルームに居ます』

 

「助けられた………?打ち上げられた遺跡の区画から………!?」

 

 

不意にマリアを呼びかけたのは、月の遺跡に打ち上げられたはずのナスターシャ。マリアの困惑も当然であり、ナスターシャがいるのはフロンティアの予備区画の一つ。助けられたと言っても誰に救われたのか、そんなマリアの疑問はナスターシャの話によって掻き消された。

 

 

『貴女の歌に世界が共鳴しています。これだけフォニックゲインが高まれば月の遺跡を稼働させるには十分です。月は私が責任を持って止めます────ゴホッ!?』

 

「マム!?」

 

『────おいオバサン!!重体なんだ、無理はするな!月の遺跡の操作は俺がやる!少し休んでおけよ!』

 

『………休むわけにはいきません。私には、あの娘に背負わせた重荷を取り払う義務が…………』

 

 

通信越しに、吐血したであろうナスターシャを案じる誰かの声が響く。その声は弱っても尚諦めようとしないナスターシャを宥め、マリアとの通信を代わった。

 

 

『────おい、アンタがマリア・カデンツァヴナ・イヴ。アイドル大統領サマだな?』

 

「え、えぇ………そうよ。そういう貴方は……?」

 

『ただのタクト、あの馬鹿に当てられたサイボーグだよ。教授は無事だ、今のところはな。………それと、今アンタと話したいってやつから通信が来てる。悪いが繋げさせてもらうぞ』

 

 

そう言って、タクトは何らかの通信と切り替えた。困惑しながらも耳を傾けていたマリアに聞こえてきた声は、生存を諦めかけていたある人物の声であった。

 

 

『────あー、テステス。聞こえるかな?歌姫様』

 

「貴方は────ガブリエルっ!?」

 

『死んだと思ったか?残念、生きてたよ…………アンタに言われたからな。また会おうって、柄にもなくしぶとく行き延びちまったよ』

 

スカイタワーの惨劇にて、亡くなったと思っていたガブリエル・マックススター。マリアが救おうとして、見殺しなければならなかった彼の死は、彼女にとって重く深いものであり、彼女がフィーネの名を背負うと悲壮の覚悟を秘めた一因でもあった。

 

 

『色々と背負い込んで潰れそうになってるんで、激励ついでに知ったしてやろうと思ったが…………その必要はなさそうだな』

 

「…………ガブリエル」

 

『俺は約束を果たした。お前も約束を果たせよ────その歌で、世界を救う時が来たぜ』

 

 

そう言うガブリエルの言葉に、マリアの背は押される。そして背を押すのは彼だけではない。育て親であるナスターシャの、優しい言葉が、彼女にかけられた。

 

 

『もう何も貴女を縛るモノはありません────行きなさい、マリア。行って私に、貴女の歌を聴かせなさい』

 

「………オーケー、マム、ガブリエル────聴いていて!世界最高のステージの幕を開けましょうッ!!」

 

 

肉親であるセレナやナスターシャ、ガブリエルの言葉により、打ちひしがれて立ち上がれずにいたマリアは遂に立ち上がる。その瞳に滲んだ涙を拭う彼女は、握った魔剣の欠片を懐に仕舞い、高らかと宣言する。

 

────今度こそ、世界を救う戦いの始まりであると。

 

 

◇◆◇

 

「────終わりだな、装者ども」

 

「………ぐッ、くそっ」

 

「どれだけ足掻こうと無駄なこと。絶対的な力を手に入れたこの俺には勝ち目すらないというのに………無意味なことをしてくれるが、もう無意味だ」

 

 

疑似神装となった如月刹那は、その力で蹂躙した響たちを冷たく見下ろす。無尽蔵のエネルギーと圧倒的な破壊力に、シンフォギアすらも手出しのできない、それすらも圧倒する破壊を引き起こした刹那。彼はその手を空に伸ばし、空に浮かぶ月を掴むように掌を握り締める。

 

 

「────フロンティアの力を使い、更に月を引き寄せる!それにより、地球上の生命体の半数が死滅するッ!生き残るのは弱者どもではなく、強者のみ────生き残った者のみが強者であり、それ以外の弱者は死滅を以て根絶するのだッ!!」

 

「…………そんなことは、させませんッ!」

 

 

力に溺れ、人類の選別すらも行おうとする刹那の凶行に、響は止めようと立ち上がる。ボロボロに打ちのめされたが、負ける訳にいかないと力一杯地面を踏みしめる、それは翼やクリス、切歌に調も同じだった。

 

 

「────無駄だと言っただろう。お前達には何がある?その程度の力ではこの俺に勝てはしない。たとえ絶唱を歌おうとも、この俺には勝てない────この俺を倒す力など、何もないと言うのに!」

 

「────だけどまだ!歌があるッ!!」

 

 

冷酷に見下ろす刹那の言葉に、強い声が響き渡る。それは、岩の上へと立っていたマリアの言葉であった。彼女の登場に驚きながらも喜ぶ切歌に調、響も同じである。

 

 

「マリアさんッ!」

 

「ほう………あの時の腑抜けが、よくもまぁそんな眼を出来るものだ。今際の間、何かあったとでも言うのかな」

 

「もう迷わない────だってマムが、月の落下を防いでくれる」

 

「………成程、な。これで装者が六人に増えた訳だ────それで?この状況で、それだけの要因で、勝てるとでも思ったのか?装者が一人、ましてや歌うギアすら持たない者が増えた所で、何だと言うのだ!?」

 

 

マリアの参戦に、刹那は目を細めて薄ら笑いを浮かべる。彼女の参戦、六人の装者すらも驚異たらない。それだけの強さを、力を手に入れた、と如月刹那は確信していた。

 

 

「そんな程度で、何も変わらない!奇跡など起こりはしないッ!理不尽も不条理も絶望も!覆せるのは力だけ、力こそが全てだ!!お前達の希望とやらも、俺の力の前には塵芥に等しいッ!!────地に墜ちろ、シンフォギア!この如月刹那がこの世界もろとも、虚空に落としてくれるッ!!」

 

 

叫んだ刹那の周囲から、無数の星剣が生成される。その複数本が剣先を構えると、その刀身を煌めかせ────星の光とも呼べる最高クラスの火力のレーザーを掃射した。放たれる閃光の雨を前にマリアたちは避けることもなく、その光が一帯を焼き払った。

 

 

「ふ、はははははッ!ハハハハハハハハハハッ!!」

 

────Seilien coffin airget-lamh tron♪

 

「ハハハハハ────っ、これは、聖詠………歌だとッ!?」

 

 

高らかと笑っていた刹那は、不意にその聖詠を聞く。ピタリと動きを止めた彼の視線の先に────それはあった。光に包まれるマリア、胸元に破壊されたペンダントを身に着ける彼女の周りには五人の装者達と、彼女達を包むフォニックゲインのエネルギーの領域があった。

 

 

「ッ!馬鹿な!このデュランダルの一撃を、耐えただとッ!?」

 

(調がいる、切歌がいる。マムもセレナもついている。皆がいるならこれくらいの奇跡────)

 

「────安いものッ!!」

 

 

光に溢れる領域の中で、マリアは確信めいた声で告げる。自分は一人ではない。隣には今、大切な家族同然の仲間がいる。そして、たとえこの場にいなくとも支えてくれる人がいる。ならばこそ、彼女たちに、彼らに報いる奇跡を起こすことも容易いと、マリアの元でその歌は始まった。

 

 

「────託す魂よ 繋ぐ魂よ♪

 

「────天を羽撃く光♪

 

「────弓に番えよう♪

 

「そうか、そういうことか。装着時のエネルギーをバリアフィールドに変換した究極の防御域…………だがソレはいつまでも使える芸当では無かろうがッ!!」

 

 

その歌に、刹那は苛立ちを隠しきれなかった。

自分の力が圧倒的であることを、絶対的であると信じ切った刹那からすれば、それに臆することのない彼女たちの姿は不愉快極まりないはずだ。怒りのままにに吼える刹那が、複数の星剣を差し向ける。フォニックゲインのバリアフィールドごと、装者達を打ち砕かんと────放った星剣は、届かなかった。

 

 

「セット!ハーモニクスッ!」

 

「S2CA!フォニックゲインを力に変えてぇ────ッ!!」

 

 

絶唱によるエネルギーを纏う響の拳が、無数のデュランダルを打ち砕く。その合間にも、歌は広がっていき、領域は拡大していく。

 

 

「「「────何億の愛を重ね我等は時を重ねて────原初の鼓動の歌へと我らは今還る♪」」」

 

「────引かれ合う音色に、理由なんていらない」

 

「…………」

 

「アタシも、つける薬がないな」

 

「それはお互い様デスよ」

 

「────調ちゃん!切歌ちゃん!」

 

 

かつては敵対していたシンフォギア装者たち。光に包まれた領域の中で、彼女たちはその手を取り合う。打算なく、理由なく────心からの理解と歩み寄りを以て、手を握り合う彼女たちの歌は続いていく。

 

 

「────紡ぐ魂よ、掴む魂よ♪

 

「あなたのやってること、偽善でないと信じたい。………だから近くで見せて。貴女の言う人助け、私達に」

 

「────太陽のように強く♪

 

「────月のように優しく♪

 

 

最初は響を否定した調は、そんな風に告げて今度は信じることを選んだ。頷く響の芽を見据えた調は静かに目を伏せ、歌を口にする。分かり合い、触れ合う想いが集まるその歌の中、マリアはその光を感じて目を開く。

 

 

(────繋いだ手だけが、紡ぐモノ)

 

「耳障りな、歌────目障り、不快極まる眼を向けるッ」

 

 

最中、ただ一人触れ合うことを望まぬ拒絶の意志が響き渡る。力に魅入られ、力に溺れた如月刹那。かつての悲劇を連想させる歌を嫌悪し、希望に満ちた諦めぬ瞳を向ける少女たちの姿に、刹那は溢れんばかりの苛立ちから、憎悪に至る激情を向けていた。

 

 

「言ったはずだ!たかが装者六人!その絶唱が何だと言うのだッ!たかが六人、されど六人!それだけの命を使う歌程度で!この俺に、絶望を覆せるものかァ──────ッ!!!」

 

 

無数の星剣を操る刹那は、マリア達に集中砲火を放つ。デュランダル、星剣によるレーザーの放射、雨嵐を越えた弾幕の数々はエネルギーフィールドでも防ぎ切れるものではなく、バリアの中で少女達のギアが崩れ始める。

 

 

「────6人じゃないっ!」

 

「………なに?」

 

「私が束ねる、この歌は────ッ」

 

 

それでも、歌は止まらない。

苛立ち募った刹那のもたらす最大火力の集中砲火の中、分解されゆくギアの光を纏い、歌う響が声を上げる。互いの手を握り合う彼女達は強まる光に染まっていき────、

 

 

「────70億のッ!絶唱ォオオオオオッッ!!!」

 

 

────デュランダルの閃光の嵐を破り、空へと昇る6つの光。赤と青、緑とピンク………そして、黄色と銀色。高まるフォニックゲインを纏い、少女達は姿を現す。

 

少女達の纏うそのギアは、白く輝く装甲を纏っている。限界を上回るフォニックゲインによる、シンフォギアの決戦機能。その事実を知る刹那は、理解し難いものを見るように目を見開く。

 

 

「『限定解除(エクスドライブ)』………ッ!?」

 

「この、ギアは………」

 

「なんデスか?不思議と力が溢れるデスよ………!」

 

「これはまさか、皆の歌を、世界中の歌を束ねた力………?」

 

「────はい!マリアさんのお陰で届いた、皆の歌が、世界中の絶唱が集めてくれた力ですッ!」

 

 

変化したそのギアに戸惑うマリアや切歌、調の三人。そんな彼女にその姿に覚えがある響が、そう言う。隣で微笑む翼とクリスは、刹那を見る────異様に動揺した刹那へと。

 

 

「馬鹿な………馬鹿なッ!これは、何かの間違いだ!世界中の、七十億の人間の意志が呼応した!?そのフォニックゲインが、すんでの所で奴等を救い、限定解除に至らせたというのか!?そんなのまるで────」

 

 

────『奇跡』じゃないか、そう呟こうとした刹那は頭を掻きむしる。かつて心が折れた彼のトラウマ、過去の記憶が想起される。あの時、絶望の中で刹那は『奇跡』などないと知った。

 

そんな彼にとって、目の前の光景を、『奇跡』を信じたくはなかった。もしこれが『奇跡』ならば────リセリア達を救わなかった『奇跡』は、こんな時に起こるのか。

 

 

「────ふざけるなァアアアアアアアアッッ!!!」

 

 

顔を抑えた刹那の口から、張り裂けんばかりの慟哭が響く。呼応するように、フロンティアから無限生成されていくデュランダルの奔流。無数の星剣で世界を覆い尽くさんとする刹那は光輪を回転させ、激情のままに吼える。

 

襲い掛かる無数のデュランダルを、迎撃する装者達。限定解除した彼女達の出力は凄まじく、翻弄されていたはずのデュランダルを圧倒し、一掃していく。

 

 

「絶唱が、七十億が何だと言うのだッ!所詮は烏合の、雑魚の集まったフォニックゲイン!その程度でこの俺を!如月刹那をッ!絶対強者を倒せるものかァッ!!!」

 

「────ッ!烏合などではない!響き合う歌が、彼等の胸にある想いに、優劣など有りはしないッ!」

 

「いいや雑魚だ!!烏合の衆、雑魚の巣窟ッ!貴様ならば兎も角、この世界の人間なんぞ!どれだけ集い、集まろうがチンケな歌に変わりはないッ!雑魚の想い程度で、世界が変えられるものかァ!!」

 

「変えられるさ!お前の野心、世界を捩じ伏せようとする意思を、覆せるほどの力がッ!!この歌に、想いにはあるんだよ!!」

 

「────ッ!この世界を守る意思だと!?考えてみろ!自分より弱いものを平然と傷付け、強者の立場になったと思い上がる奴等に、そんなものはありはしないッ!貴様らの歌に、束の間の偽善に酔っているだけだッ!自分たちの生存だけを求めた奴等が、傷付く誰かを無視して平和を謳歌する弱っちい奴等に────そんな『良心』など、欠片もないッ!!!」

 

 

憎悪に走り、怒声を上げる刹那に戦う翼とクリスが反論を示す。だが刹那は綺麗事だと吠え、彼女らの言葉に耳を貸さない。そこまで彼が憤るのは、人間の醜さを、弱さを、愚かさを知っているからか。

 

 

「奴等は変わらない!変わることなどないッ!これからも、この先も!貴様らの理想論は、弱者の存続を許すだけだ!他人との理解をし合わず、自らの利益や幸福だけを求めるだけのゴミみたいな弱者が、溢れ返るッ!そうやってまた、他人を踏みつけ────虐げられるだけの奴等を作る!!それが人ッ!弱さというものだッ!!」

 

「そういう人達を助ける為に────」

 

「────私達は、戦うと決めたんデスッ!!」

 

「弱肉強食の理念を理解せぬ────ガキどもがァッ!!!」

 

 

限定解除により巨大化した大鎌を振るう切歌、ロボットのように変形したアームドギアに乗り込む調の二人が、デュランダルの弾幕を掻い潜って、刹那へと挑む。

 

光輪に展開された十本の星剣を放ち、ビットのように繰り出す刹那に、二人は勢いよく斬りかかる。辻斬りのように過ぎ去った二人の後ろで、刹那は全身を斬り裂かれる。しかし、「小賢しいッ!」と怒鳴った刹那が操作するビットによる斬撃とレーザーの掃射が、切歌と調を追撃する。

 

 

「どれだけ傷付けようと!この如月刹那には届かないというのがまだ分からないのかッ!いくら貴様らが傷を与えようと、俺には無限のエネルギーが──────ご、ぶッ!?」

 

 

無限再生を繰り返す刹那だったが、突如彼の口から大量の血が噴き出す。同時に、空を飛び交う星剣が力を失ったように消失していく。その変化は、刹那の身に起きた異変を示していた。

 

 

「何故だ………ッ?まだ俺には無限の力が、残っているはずだ…………それに、何故だ。何故、急に力が────」

 

『────ふふふッ、はははははッ!とうとう、弱り始めましたねぇ!如月刹那ぁ!』

 

「貴様────ドクターウェルかッ!?何の真似………いや、何をしたッ!」

 

 

フロンティア越しに伝わるその声は、互いにしか通じない。通じていることを理解した上で、制御端末の一部からフロンティアを操作するドクターウェルは高らかと笑った。

 

 

『貴方がネフィリムの心臓と同化し、フロンティアを掌握したことで圧倒的かつ無尽蔵の力を手に入れたことは承知の上。僕を排除しようとしたのは、ネフィリムとの繋がりを持ち、妨害の可能性を秘めるからこそ!支配権限はそっちの方が上だとしても、戦いの最中────意識を向けられない状況下でなら、奪い返すことは無理でも、邪魔するのには問題ない!』

 

「────貴様ァッ!!」

 

『僕からフロンティアの制御権を奪うことは容易くても、そんなことしたらシンフォギアどもに叩き潰されるのは明白!かと言って目の前に集中してたら、フロンティアだけでも奪われる!どっちに転ぼうとも、お前にとっては邪魔でしかないっ!はははッ、嫌がらせは最高に面白いなぁッ!!』

 

 

弦十郎達に保護された直後、予備のLINKERによって腕を再生させたウェルは、刹那からフロンティアの支配権を奪おうとしていた。現に響達との戦いで動揺した刹那の意識からフロンティアの制御権の一部を奪ったことで、無敵とされた刹那の力────その一角が崩れ去った。

 

しかし、追い詰められた刹那は────手段を選ばずに戦うことを選んだ。

 

 

「どいつもこいつも、雑魚の分際で俺に盾突きやがって────もういいッ!遊びも余裕もここまでだッ!!全ての力を!この俺にぃッ!!」

 

「ダメだよ刹那さん!それ以上やったら、刹那さんの方が耐えられないッ!!」

 

 

フロンティアに残った全ての力を、自分自身へと集中させようとしていく刹那。一点集中、増幅していくエネルギーの脈動に、響は思わず制止する。だが、刹那は止まらない。活動を再開したデュランダルの奔流で世界を覆い返し、溢れ漏れるエネルギーに肉体を壊されながらも、彼は強さに、力に固執する。

 

 

『リセリアがよく言ってたわ。自分の後継になれるのは、セツナ────貴方だって』

 

「────そうだっ!力だ!」

 

『弱い貴様には、それがお似合いだ!精々生き延びろッ!!』

 

「もっと────更なる力をッ!」

 

『貴方のせいじゃないの、セツナ………』

 

「絶対的な、圧倒的な────力ヲをォオオオオオッ!!!!」

 

 

瞬間────刹那の胸を、黒曜の魔剣が貫いた。完全に、全ての力と同化しようとする刹那の邪魔をするように。

 

 

◇◆◇

 

(────歌が、聞こえる)

 

『………起きなよ、剣。アンタの戦いはまだ、終わってないんだろ?』

 

(────俺は、一体何を………駄目だ、身体が………もう動かせない────)

 

『────諦めないで』

 

(………君、は)

 

『今も、マリア姉さんたちが戦ってます。貴方はここで、諦めるような人じゃないはずです』

 

(────ああ、そうだな。俺が、俺だけが諦めるわけにはいかない、俺は…………)

 

「────俺は無空剣だ」

 

◇◆◇

 

 

「無空、剣ッ!?馬鹿な!貴様は確実に殺したッ!?何故まだ生きているッ!」

 

「そうだな…………歌が聞こえた」

 

 

刹那の胸を貫く黒曜の魔剣、その魔剣を振るう漆黒の魔剣士 無空剣の復活に、刹那は完全に戸惑う。心臓を抉り、全身を灼き尽くし、海に叩き落とした。なのに何故まだ生きているのか。そんな刹那の問いに、剣はそう答えた。

 

「…………は?」と呆然と呟く刹那に、剣は穏やかに笑いながら零した。

 

 

「彼女達の歌を、胸に響く歌を聴いたから………死ぬわけにはいかなくなった」

 

「ふ────ふざけてるのかァ────ッ!!?」

 

 

穏やかに、心優しい目でそう呟く剣の言葉に、刹那は激情のあまり猛追を仕掛ける。デュランダルのレーザーの一斉掃射を浴びながら、剣はひたすらに叫んだ。

 

 

「────隙は作ったぞ!皆ァ!!」

 

「っ!?狙いは最初から────」

 

「勝機を零すなッ!!」

 

「────掴み取れぇええええええええッッ!!!!」

 

 

空から飛来する6つの光。虹色のようになるソレは、一つになって突撃する響達のもたらすものであった。大量のフォニックゲインを纏う彼女達に、その出力に恐れを感じた刹那は無数の星剣を差し向ける。

 

 

「────何億の愛を重ね 我らは時を重ねて♪」

 

(押し返されるッ………防ぎ切れないッ!)

 

「ならばッ!貴様らの希望ごと、世界を滅ぼしてくれるッ!!」

 

 

無数の星剣が群体が成す嵐すらも消し飛ばし、少女達は迫る。より硬度に展開した防御結界も撃ち抜かれていく状況に、刹那は全力で迎撃することを選んだ。

 

米国の艦隊を滅ぼした巨神による閃光。最大出力のこれは、世界全土を灼き尽くす。刹那は目の前の勝利を掴み取るために、その星剣を振り下ろすことを迷わなかった。

 

 

「何物かも、全て灼き滅ぼせッ!『十なる極星、虚空裂い(ディ・エル・アスティ)────」

 

『────もうやめて』

 

 

しかし、その瞬間に身体が止まる。

ピタリと停止するソレは、刹那の身体を、手足の動きを阻害していた。それはまるで────複数人に掴まれているように。

 

 

「なんだ………ッ!?これは、身体が────」

 

『止まって』『セツナ』『これは、君の望みじゃない』『これは、君の願いじゃない』『このままじゃ壊れちゃう』『貴方が耐えられない』『君の正義を思い出して』『怒りに、憎しみに囚われないで』『過去の幻影に、呪いに縛られるな』

 

「────ぅぅぅるさァいッ!!過去の分際で、如月刹那()を否定するなッ!!俺は、俺は強くならなければならないんだ!!俺は、勝たなければ!勝利しなければァぁあああああああッッ!!!!」

 

 

脳裏に響く声を、刹那は拒絶する以外になかった。

それほどまでに、彼にとって勝利は絶対的なのだ。それほどまでに、彼にとって敗北は有り得てはならないものなのだ。

 

自らの身体を縛る拘束を解き、刹那は手を振り上げる。既に星剣に力は収束させた。その刀身に溢れるその力は、世界そのものを破壊し尽くすものである。

 

その刀身を振り下ろさんとしたその瞬間に────虹色の光は、目の前まで迫っていた。

 

 

「────奇跡はやがて歴史へと 誇り煌めくだろう♪」

 

「負けて、たまるかァアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!」

 

 

如月刹那が、彼の化身たる巨神デュランダル・アステリオスが、世界を照らし尽くすほどの極光を纏う星剣を振るう。直撃すれば全てを焦土に、光に呑み込む苛烈なる閃光の刀身と、シンフォギアがぶつかり合う。

 

そして────無限の力を秘める聖剣が、打ち砕かれた。

 

 

「一直線にぃいいいいいいいいいいッ!!!!」

 

「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!!!!」」」」」」

 

「────ば、馬鹿なっ!?俺が、敗れるというのか!?そんな馬鹿なことがあるか、あってたまるか!この、如月刹那がアアアアアアアアアアアアアアアア────────ッ!!!!!」

 

 

迫り来る虹色の光、フォニックゲインの奔流に、巨神の姿が崩れる。その光を前に、刹那は否定を顕にして叫ぶ。その姿が、天へと昇る虹の嵐に消えていき────全ては終わる。

 

そして、ボロボロになった一人の魔剣士がフロンティアの大地に墜落する。全力を出し尽くし、全てを利用してでも最強へとなろうとした魔剣士、如月刹那の敗北は…………誰もが疑わぬものであった。




実質的にフロンティア編のラスボスとも呼べる疑似神装・如月刹那。本人が力に振り回され、精神が不安定になってるだけでスペックだけなら原作と比べても最強クラスのやべーやつなんですよね。

後に出てくる魔法少女と局長もタイマンで倒せるレベルのポテンシャルがある。響達が倒せたのは刹那のメンタルが不安定だったのと剣やウェルの援護射撃が効いたから、という様々な要因が重なった、というもの。

因みに、刹那を最後に止めた仲間達の幻影は刹那の幻ではなく、紛うことなく本人達の意思そのものです。では彼等は一体何処にいるのか。ヒントはすぐ近く。


さて、長く続いた(執筆期間が空いたとも言う)G編もそろそろ終わりが近い頃合いです。新章についても考えてますので、次回もお楽しみくださいませ!できればお気に入りや感想、評価などもいただければ幸いです!それでは!!
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