戦姫絶唱シンフォギア 神装魔剣   作:虚無の魔術師

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お久しぶりです!…………数ヵ月くらい投稿できなくても申し訳ないっす。作るのに時間が掛かったのと時間が無かったのが本音です。


これ今年中には無印終わんねぇーぞ……………もういっそのこと何年掛かろうが関係ねーわ!!(吹っ切れた)


目指す先

アルビオンの襲撃事件から数日が経ち。

最近はノイズの襲撃が少なくなった一方で、変化は少なからずあった。

 

 

 

一つは響と翼の関係。

あの後、互いの意見を口にしたあったらしく、前よりかは充分マシな方へとなっていた。まぁ、まだ友達未満ではあり、仲間として仲良くなっているのだが。それに関しては、まだまだ時間を掛けていく必要があるだろう。

 

 

そしてもう一つは、響を強くすることだ。

彼女自身も強くなる事を望んでおり、弦十郎の特訓へと明け暮れていた。その合間に剣も響の特訓に力を貸していたのは確かだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今現在、職員の多くが集められた大規模なミーティングが行われていた。少しばかり休暇を取っていて事情が把握できなかった剣だったが、響や翼、弦十郎から状況を詳しく教えてもらった。

 

 

 

二課、特異災害対策機動部は政府からはあまり好まれてないらしい。もっと悪く言えば、忌みもの扱いされてるのだろう。情報秘匿故に、その活動すらも明かせないから。

 

 

だが、そんな二課が上手く活動できていたのは広木防衛大臣と呼ばれる人物の助力があったかららしい。話しか分からなかったが、聖遺物を欲しがる米国を牽制したりして二課のサポートを全面的にもしてくれた、要するに協力者なのだ。

 

 

 

 

 

 

結論から言うと、その広木防衛大臣が暗殺された。護衛や秘書諸とも、皆殺しだったらしい。

 

 

写真から確認するに、全員が銃殺されていた。より話を聞くと、どうやら複数の革命グループから犯行声明が出されているようだが、現状を詳しく把握できてないようだった。

 

それまでの話を聞いて、考えへと明け暮れた無空剣の意見はというと、

 

 

 

 

 

 

(……………そんな単純なものか?)

 

何処か不審な所が様々あった。

二課の協力者である広木防衛大臣が殺された後、新しい防衛大臣へと代わるとも聞いた。その次の防衛大臣が親米と聞き、最初はその大臣を疎ましく思った米国の犯行を疑っていたのだが、

 

 

 

 

 

(いいや、米国にとってこの行動はあからさま過ぎる。証拠次第で自分達が不利になる可能性が高いのに、ここまでの危険を冒す理由が無い。だとすれば、米国を利用した誰かがいるな。そいつが今回の事件の黒幕と見ていい)

 

 

そこまで考えていた剣は聞こえてくる会話に、すぐさま耳を傾け始めた。途中までは知ってることばかり、つまり広木防衛大臣の事だったので思考を続けていたが、ここからは新しい情報が教えられると判断したのだ。

 

 

その情報を入手したのは櫻井女史。国会議事堂などがある永田町に赴き、政府の面々の対応に回っていたらしいが─────そこで機密資料を持ってくると共に、新しき任務が与えられたそうだ。

 

 

 

「私立リディアン音楽院高等科………つまり特異災害対策機動部二課本部を中心に頻発しているノイズ発生の事例から、その狙いは本部最奥区画、アビスに厳重保管されているサクリストD────デュランダルの強奪目的と政府は結論付けました」

 

「デュランダル?」

 

「EU連合が経済破綻した際、不良債権の一部肩代わりを条件として日本政府が管理、保管することになった数少ない完全聖遺物の1つよ」

 

 

不思議そうに首を傾ける響に、翼は横からそう補足した。ふぅん、と剣は何も言わずにそれを聞いていた。

 

 

直後に漏らした言葉は、何処か哀愁らしきものがあった。

 

 

 

「アビスは分かるが………デュランダル、か」

 

 

「あら?少し興味湧いたみたいな反応ね。もしかして剣君の世界でもあるのかしら?」

 

 

「正解だよ。こっちの方でも『デュランダル』はある。現にその断片を埋め込まれた魔剣士を、俺は知ってる」

 

 

その話を聞いて、数人が興味深いように彼を見てきた。主に、響と翼に了子、緒川などの数人だった。響や翼からしたら、無空剣と同じような存在がどのような人物か気になるのかもしれない。了子はデュランダル関連で、緒川は何故か分からないが、単純な興味かもしれない。

 

 

しかし続きを語る前に、弦十郎が咳払いをした。話を戻したいのだろう。肩を竦めて剣は「続きを」と短く告げた。

 

 

「デュランダルの強奪、それを防ぐために急遽移送されることになった。場所は永田町最深部の特別電算室、通称、記憶の遺跡」

 

 

「それは───」

 

 

危険ではないだろうか、という言葉を呑み込む。相手はそういう移送の場合を絶対に逃すとは思えない。襲撃があるとすればその時しかないだろう。戦争特化である魔剣士(ロストギアス)なら確実に、自分ですら襲撃する場合はそうする自信はある。

 

 

間違いなくネフシュタンの鎧の少女はあの場に現れる。【魔剣計画】の兵器、アルビオンを連れて。

 

 

 

しかし、それを実際に指摘することはなかった。何故そうしたかと言われれば理由があったのは確かだ。………言った所で変わる訳がない。今回の作戦は彼等ではなく、その上からの命令によるものだ。機密組織でありながらも、国の役人である以上、従う他にない。

 

 

 

強引に取り止めたとして、この二課が解体される可能性が高い。それは剣自身も望まない事だった。

 

 

違和感に気付きながらも、手が出せない立場にいる。その事実に歯噛みしながら、剣はその後の話を聞き入れていく。

 

 

────こうして、デュランダル護送作戦は開始された。後戻りに出来ない、どうしようもない程上手く誘導された形で。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「…………よし、今のところは順調だな」

 

二課本部、大画面のモニターではデュランダルを護送する車が橋へと辿り着く。先頭車両が橋を通る最中、オペレーター達も顔を引き締めて反応を探っている。

 

 

 

「しかし、悩ましいな」

 

独りでに呟く弦十郎。彼の返答はあまりにも小さいもので、答える者は誰一人もいなかった。

 

 

しかし、そんな彼のポケットから短い電子音が鳴る。メールが来たらしい。この状況で誰から送られたのか心当たりがなく、弦十郎は眉をひそめながらも携帯を開きメールの内容を確認した。

 

 

 

 

『それは、この組織にいるであろう裏切り者についてかな?風鳴司令殿』

 

 

思わず息を呑み込む。すぐさま携帯を閉じて、近くにいたオペレーターに断りを入れて、司令室から廊下へと出る。

 

 

 

扉を閉め、誰も聞いてないのを確認すると、重たい声で問い掛けた。誰もいない廊下、話を聞いているであろう人物に向けて。

 

 

 

「…………気付いていたのか?ノワール博士」

『生憎、私は彼とは付き合いが長くてね。このような状況で、何を疑うかは分かる方だと思っているよ』

「博士の考えを聞かせて貰いたい………これらの件についてどう思う?」

『手の込んだやり方、としか思えんね』

 

 

答えたのは、携帯からの男性の声だった。ノワール・スターフォン博士。無空剣と同じく、此方ではない別世界に在中する人間。しかし彼とは違い、博士はこの世界には来てない。まぁ、別世界であるのに通信が繋がるのはおかしいと思うが、通信を繋げる為のアンテナを配置したから(剣が)問題ないらしい。

 

 

博士は端末越しにため息を漏らす。苦手なものを、やらされてるようだった。

 

 

『防衛大臣を暗殺させ、デュランダルを護送させる。その隙を狙って襲撃をしかける。

 

 

 

 

随分と遠回しじゃあないか。ノイズという大量殺人兵器を操れるなら、実際に本部(ここ)を襲撃してしまえば簡単に強奪できると思わないかね?』

「だが、敵は────ネフシュタンの鎧の少女は現に本部を襲わなかった。周囲にノイズを出現させるなどの行いは何度もあったが…………」

『それだよ』

 

突然の事に弦十郎は眉をひそめる。一部を指摘した博士は、その意味を語り始める。

 

『本部を襲わなかった。襲わないのではなく、実際には襲えないんじゃあないのかな』

「襲えなかった、か」

『それは彼女自身の意思とは考えがたい。彼女を裏から操る存在────話を戻せば、裏切り者の目論みと考慮した方が良いだろう。しかし、完全聖遺物を二つも所有する存在か…………まさか「彼等」ではないよな?』

 

 

「彼等」、については弦十郎もある程度は予想できた。彼等が逃げているという組織、名を【魔剣計画(ロストギア・プロジェクト)】。先日現れた兵器もその組織が造り出したものらしく、因縁を疑うのは無理もないだろう。

 

 

 

『ま、私にはこの程度の推測しか出来んがね。ただの科学者、探偵じゃないからそういうのを期待されても困るよ』

 

困ったものだよ、と博士は愚痴る。数秒くらい沈黙が続いていたが、端末からの声が弦十郎を軽く促した。

 

 

『あぁ、ほら。早く司令室に戻った方が良いんじゃないかな?』

「………まさか」

 

言われるがままに、司令室に飛び込む。ピッタリ同時に警報が鳴り響いた。

 

 

 

大画面のモニターにはデュランダルを護送する車が通っていく様子が写される。その最中でオペレーター達が大声を張り上げていく。

 

 

「緊急報告!進行方向の通路である橋の崩落!護衛車両の一、二台が巻き込まれました!」

「敵襲か!橋を崩した所を見るに、ノイズか!対象の数は!?」

 

画面には崩された橋が映っている。これほどの破壊は爆弾やミサイルというものではない、通常の経験からノイズの仕業だと考えていた。

 

 

しかし、他にいるオペレーターの数人が否定の声をあげた。

 

 

「いえ!ノイズの反応は確認できません!繰り返します!ノイズは橋付近にはいません!」

「馬鹿な!ノイズ無しで橋を崩すことなど────」

『出来るとも。お忘れかね?』

 

連絡が続いていたらしく、端末から声が静かに響き渡る。思わず息を飲み込む彼に、博士は達観した声音で語った。

 

 

 

『ネフシュタンの少女は中々優秀な兵器(オモチャ)を持っていただろう?』

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

クソ! と悪態をつきながら、車の扉を強引に蹴り破る。部品を散らして横に吹き飛ぶ鋼板のドアは勿論、黒服の運転手の泣き言なども気にせず、(つるぎ)は外に出て前方に目線を向けた。

 

 

 

デュランダル護送の為に通ろうとしていた橋。真ん中に来た所で、進行方向である前方が爆散した。被害にして、数十メートル規模の破損。頑張っても車での移動は不可能な状況だった。

 

 

「随分と近くから狙撃してきやがったな。バレようとお構い無しって訳か」

「………狙撃?」

 

黒服の男性は思わず剣と前方を何度も見る。これ程の惨状を引き起こしたのを、狙撃と言うのに疑問しかないのだろう。

 

 

しかし剣は自身に向けられた疑わしいような視線を無視する。歩行者専用の道、その側面に掛けられた柵から真下をゆっくりと見下ろした。

 

 

そこで、動くものを見つけた。

 

 

 

「お出ましか、『アルビオン』」

 

 

視線の先─────橋の真下にある海の水面に、何かが出てきていた。浮かぶというよりも、辺りを覗いてるのが正しいのだろう。

 

 

 

純正の金属で加工された装甲を有する大型兵器。『アルビオン mark-α(アルファ)』が、真下から狙撃してきたのだ。砲弾代わりと言わんばかりの、衝撃波の砲撃を用いて。

 

 

剣は片手で円を作り、片目の義眼を細めさせる。機能として強化された視力で『アルビオン』を睨みつけていると──────巨体の兵器が口を大きく開いた。

 

 

 

 

ガシャコン ! と再び内部から太い砲身が展開される。照準は『アルビオン』から見たら真上────自分達ではなく、橋の方へと定められていた。

 

 

 

不味い、そう思う間もなく剣は咄嗟に取り出した無線に声を荒らげた。

 

 

 

「全員聞こえるか!『サクリストD』から六番目以降の車は出来る限り前へ!それ以降は全て後退しろ!!」

『──ッ!しかし防衛の為の戦力は───』

「橋ごと吹き飛ばされる気か!?良いからさっさと言う通りに動けェッ!!!」

 

 

応じるように、後方の車両が一斉に動き出す。しかしそれでは間に合わない。水面から顔を出しているアルビオンの砲身に、()()()()()()()()()

 

 

 

(───間に合うか!?いや、間に合わせる!!)

 

魔剣(ロストギア)!《グラム》 起動!!」

 

瞬時に、『魔剣』を纏いながら駆け出す。漆黒に輝く装甲が形を持って顕現した時には、剣は橋から飛び出していた。

 

 

 

 

 

 

 

─────直後、不可視の砲撃が青年の身体に炸裂する。何十にも反射と収束を繰り返した、衝撃波の爆発が。一見何が起こったのか分からないのが普通だが、一度経験している、見たことがあるものなら、よく分かる一撃だった。

 

 

幸いな事に、直撃ではなかった。そのまま橋の向こう側へと飛ばされる事なく、バウンドを繰り返してコンクリートに叩きつけられた。

 

 

その威力を物語るクレーターから起き上がり、青年は呻く。それも遠くにいる兵器に向けて、苦い笑みを浮かべながら。

 

 

「…………やってくれる、な…………」

 

彼の纏う鎧は大したダメージを受けてはいない。しかしその奥にある生身の体には、確かに痛みがあった。そんな大きな損傷ではなく、鈍痛という形だが。

 

 

魔剣士(ロストギアス)を追い込めるのは、完全聖遺物くらいだ。そうですらない、『アルビオン』は剣を殺す手段は存在しない。

 

 

 

けれども、殺す事は出来なくても、足止めは出来る。何発も真空の砲撃を連発してれば、この場に固定することも容易い。

 

 

 

アルビオン自体を潰しに行く事も頭に入れていた。しかしもしそうすれば、あの砲撃から橋を守れる者はいなくなってしまう。実際にアルビオンの元に辿り着く前に、最低二発は砲撃を許してしまうだろう。

 

 

だからこそ、剣は身構えていた。あの兵器がどのような行動を取るのか。瞬時に予測して対策し、叩き潰す策を編み出す為にも。

 

 

 

 

 

しかし、ずっと静寂が続く。先程のような砲撃音と爆発が炸裂してこない。

 

 

 

 

 

「………………あ?」

 

数分もの間、追撃が来ることはなかった。その事実に驚いたのは、他ならぬ剣本人だ。今、攻撃をしかけるのが常識な筈だ、むしろそうしないのには理由があるのか? と疑ってしまいそうになる。

 

 

何故だ? と考える最中、海面から此方を見上げていた『アルビオン』が動いた。胴体から展開した砲身を戻し、静かに潜水を行った。背を向けて、戦場からの離脱を開始したのだ。

 

 

「………」

 

力を抜くと同時に、彼はアルビオンの砲撃の惨状を見つめていた。

 

 

『アルビオン』は、何故撤退した?

海面ならば幾らでも攻撃は出来た。最低でも二発、最大でも六発は撃ち込めるチャンスを無にしたに等しい。

 

 

海中に潜って隙を伺っていると思っていたが、すぐに否定した。自身の脳内に組み込まれた高性能センサー。自動で対象を捉える事が出来る機能に、アルビオンの反応は確認出来てない。この場から離れているのは確かだ。

 

 

 

 

或いは──────

 

 

「………俺を足止めする必要が無くなった、って訳か」

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

剣が『アルビオン』を発見した時、車から飛び降りした響は、襲撃者である人物を見つけることが出来た。

 

 

「………先日以来だ」

「あぁ、その通りだな。お高く止まった人気者さんよ」

 

 

杖らしきものを片手に持つネフシュタンの鎧の少女。

今はシンフォギアを纏った翼と相対しており、彼女に煽るような言葉を投げ掛ける。

 

 

対して翼は、単刀直入と言うように告げる。

 

 

「デュランダルは渡さん。そしてここで貴様から鎧を取り返す」

「ハッ!『アルビオン』に手も足も出なかったお前が、あたしを倒すだって? 笑えねぇ冗談ってのはさぁ、まっったく面白くねぇよなぁ!!」

 

先日の事を口にして嘲笑うクリスに、翼は否定することなく無言を貫く。その様子を見てクリスは挑発が効いてないと理解すると、不愉快そうに杖らしき物を取り出した。

 

 

「ゴチャゴチャ口で語るのも面倒だ。さっさとデュランダルを奪わせて貰うか!」

 

杖を掲げると同時にノイズを召喚していく。それが戦いの火蓋を切った。

 

 

翼は群がってくるノイズを切り伏せながら、ネフシュタンの少女への攻撃も忘れない。凄まじい程の再生機能を誇る鎧を有する少女は諸ともしないが、不愉快そうに顔を歪めて更に鞭を乱雑に振り回す。

 

 

少し離れた所で、響はノイズ達を倒していく。正拳突きや膝蹴りで、辺りのノイズをまとめて粉砕する。

 

 

 

そんな時、小さな音が聞こえた。

しかしそれだけの音に、響や翼、ネフシュタンの少女は意識を奪われた。全員の視線の先には、デュランダルを収納したケースがある。

 

 

「この反応………二人のフォニックゲインに反応してる?─────まさか、起動するの!?」

 

 

護衛車から降りて、戦いを見ていた了子は思わずといった様子で漏らした。彼女の目の前で、ケースが内側から吹き飛ぶ。中に収納されていたであろうデュランダルが姿を現し、固定されたように上空に浮かぶ。

 

 

「……!響!貴方に任せるわ!デュランダルを!」

「は、はい!」

 

少女との戦いをしていた翼は、響に声をかける。応じるや否や、響はデュランダルを回収せんと動く。

 

 

それを、ネフシュタンの少女が許すつもりはなかった。

 

 

「ふざけんじゃねぇ!んな真似させるわけ───」

「させないと言っている!」

「チィッ!邪魔すんじゃねぇよ!!」

 

走り出す響に追い縋ろうとするネフシュタンの少女。荊の如く鞭で縛りつけようと伸ばすが、横からの翼の一閃に咄嗟に飛び退く。

 

 

 

そして、その間に。響の伸ばした手が、デュランダルの柄を──────

 

 

「────確保!」

 

握った。デュランダルが、響の手の中に収まる。瞬間、周囲に強大な波動が発生した。

 

 

「………はっ!?」

「ッ、これは───」

 

とてつもないオーラを前に戦闘を行っていた二人も視線をデュランダルを手にした響へと向ける。

 

 

更に、天上から光の柱が伸びる。ただの光ではない、科学的には説明不可能に近い閃光。神の威光だのなんだの、そんな神秘で語らねばならないもの。

 

 

響本人の様子もおかしい。瞳孔を大きく開き、全身を震わせる。自分の意思ではない何らかの力が働いてるのか、響は剣を天へと掲げた。

 

 

錆びていた筈の刀身に、光が宿る。金属的な光沢と、黄金に輝く剣──────完全聖遺物(デュランダル)の起動が、今為された。

 

 

「───ヴ」

 

同時に、担い手である響の様子も変貌する。両方の瞳は不気味光る赤色と化し、禍々しく揺れる。

 

ガチガチと歯を鳴らしていたが、口を紡ぐと大きく開き───────叫んだ。

 

 

 

「ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴァァァァァァァァ!!」

「こいつ、何しやがった!?」

 

人のものには思えない、獣の雄叫びにネフシュタンの少女は狼狽える。ハッと何か気付き、後ろにいる了子の姿を一瞥した。

 

 

それほどの光景を、何処か嬉しそうな笑みを浮かべながら見つめている。了子の様子に気付いた翼は不気味に感じてしまった。いつもの櫻井了子とは違う、異常さを見せつけられたようだった。

 

 

しかし少女は怒りを押さえられないと言うように、歯軋りして響に向き直る。腰にあった杖を手にするや否や、雄叫びに負けない声量で叫んだ。

 

 

「その力を、見せびらかすなぁぁぁぁ!!」

 

ノイズを数体召喚しようとしたその時、理性なき響の視線が少女を捉える。

 

射抜かれた途端、少女の全身に恐怖が殺到する。不味い、このままでは殺されると、鋭い直感が過った。

 

 

だが、もう遅い。

すぐさま逃げようとしても、遅い。

掲げていたデュランダルを深く振り上げて、少女に狙いを定める。人命なんて気にしてない、確実に殺す程の力を込めて。

 

 

 

 

 

 

─────しかし、その次に炸裂したのは強大な破壊ではない。

 

 

 

 

「─────響ぃぃぃぃぃぃィィィィッ!!!」

 

凄まじい程の速度で突っ込んできた青年と、腹の底から吐き出したであろう咆哮であった。

 

 

無空剣。

最強の魔剣 グラムを宿す青年が、戦場へとただ突撃していく。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

数秒前、剣はその光景を離れた場所から目にしていた。デュランダルの覚醒。それの影響か様子をおかしくさせる響の姿。

 

 

 

(あの状態も、長くは続かない)

 

カチリ、と冷徹な部分がそんな風に決定づけた。彼の脳内組み込まれた、自立的に補足するコンピューター。最適な行動を彼の脳として最適化する機能が、答えを出す。

 

あくまでも冷徹な、答えを。

 

 

(取り敢えず、時間を稼げばいい。エネルギーだって限界もある。暴れさせ続ければ響はいずれあの状態から戻る─────)

 

 

 

 

 

 

────また、諦めるのか?

 

 

 

 

脳髄に、声が響く。凛とした少女の声、それが自分の声と重なって聞こえたのは気のせいなのか?しかし、現実的に耳に入ったらしく、剣の目は大きく開かれた。そして─────、

 

 

 

 

「………いいわけ、ないだろうがァッ!!」

 

全力を込めて、寄り掛かっていた柱を殴りつける。拳の内に響く鈍痛に眉を潜めることすらせず、ただ痛みを受け入れる。

 

 

自分への、軽蔑しかなかった。あんな風な破壊を、立花響は望まない。むしろそれを行っていたと知ったら、絶対に悲しむだろう。

 

 

 

それなのに、自分は。無空剣は冷酷に、倒れるのを待とうとしていた。感情的な考えではなく、機械的な考えを優先しようとしていたのだ。

 

 

 

少女に関しても同じだ。敵だから見捨てようと、助けようともしなかった。あくまでも、被害を考えて効率的に利用しようとしていた。

 

 

 

馬鹿馬鹿しい、何が『魔剣士』、最強の兵器だ。最強の兵器である自分が、相手をすべきだろう。他人に全てを任せるなど機械の思考だ、何の為にこの身体になった?人を救う為の筈だ、人を守る為の筈だろ、無空剣。

 

 

 

最強の兵器など、もう止めだ。

そんな称号、簡単に捨ててみせる。

目の前の悲劇を止めるためなら、どんな風になったって構わない。

 

 

 

かつて捨てたと思っていた、痛みなど感じない程に乾いてしまった心がそう叫ぶ。

 

 

彼は知らない。

自身の動力源となる激情、それに起因するものが響達との出会いにあると。磨耗した心が少しだけ癒え、本来の自分の意思を抱くようになれた事を。

 

 

まるで滅多に起こらない奇跡のように、ちっぽけな意地と命すら掛ける覚悟が無空剣を突き動かした。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

速度を緩めることなく、剣は響へと突撃していく。彼女もそらに気付き、激しい敵意と殺意を眼に乗せて放つ。

 

肌にビリビリと感じてくるオーラに気圧されそうになるが、何とか押し殺し─────振り下ろされるデュランダルを、漆黒の装甲を纏う腕を前に出して防ぐ。

 

 

ビギビギ! と装甲が砕かれるが、剣はニヤリと笑う。デュランダルの強度が魔剣(ロストギア)を上回っている。けれど完全に切断に至れなかった所を見ると、ギリギリに見える。

 

 

 

「……な、なんで?」

 

思わずといった様子で呟くネフシュタンの少女。剣が飛び出した事で標的だった彼女は何とか助かったらしい。確かに今の動きだと少女を庇ったように見えなくもない。……………元から助けるつもりだったからこうつごうではあるが。

 

 

 

「────翼!周囲の人の避難を!出来るだけ早く頼む!!」

「────了解した!立花を頼むぞ!」

 

呼び掛けられた翼は応じると、そう言ってこの場から離れていく。周囲には少女が生み出した?らしきノイズが在中している。もしあれが護衛達の元まで向かえば被害は増大する事だろう。

 

 

翼が行ったのを確認すると、目の前で攻撃を行おうとする響の腕を掴み、遠くへと投げ飛ばす。そして今度は、ネフシュタンの少女を見た。

 

 

「おい、お前。早くここから退け。巻き込まれて死にたくないだろ」

「な、なんであたしを………」

「早くしろ。お前を守って戦うのも大変なんだ。理解して欲しいな」

 

少女は何か言いたげだったが、すぐに背を向ける。姿が見えなくなった途端、目の前で瓦礫が大きく吹き飛んだ。

 

 

投げ飛ばしていた響が、禍々しい眼光を向けてくる。獣のような唸り声を漏らしながら、剣に本格的な敵意と殺意を滲ませる。

 

 

「ヴヴヴヴヴヴッ!!ヴヴヴヴヴヴェェェェァァァァァァァァッ!!!」

「少し、待たせたな」

 

 

何故か、そんな風な一言を口にしていた。試すような言葉を告げる彼の頭は高速の勢いで動いていた。どうやって立花響を救うか、彼女を無傷で救う方法を見つける。

 

 

(暴走の原因、それは目に見えてデュランダルだ。あれからの力が、響を暴走状態に陥らせてる)

 

 

ならば、と結論を出す。響を傷つけさせない、何より惨劇を酷くせずに平和的に終わらせる方法を。

 

 

(─────デュランダルを引き剥がす!グラムの力を使ってでも!!響を無傷であの状態から解放するにはそれしかない!)

 

「………………来い」

 

 

顔に笑みを張りつける。破壊衝動の獣でも分かるであろう、挑発的な笑みを。掌を翳し、クイクイと手招きも追加する。

 

 

「俺がお前を止めて(救って)やる。だから来いよ、お前にだってこれくらいの意味は分かるだろ?」

「ガ、ガァァァァァァァアアアアアアァァァァァァァァァァァァッッ!!!!」

 

 

そして、響と剣は戦いを始めた。響自身の戦い方も、前とは桁違いだった。いや、破壊衝動に飲まれてる以上、何事も顧みずにただひたすら敵を殺すことしかないからこそ、これほどの強さを発揮するのだろう。

 

 

 

 

───俺は、誰も救えなかった!

 

 

自分と同じく魔剣士(ロストギアス)へとなる為に死んでいった同年代の少年少女。

 

 

そして─────大切な二人の親友。

 

 

知ってる者なら数十人、あの計画で死んでしまった。けれどもし、立ち向かえていれば結果が変わったかもしれない。どうあがいても、変えられなかったかもしれない。

 

 

 

だが、今は違う!

無空剣には力がある。例えそれが国を滅ぼせる程の力だとしても、それをどのように使うかは彼の手に掛かっている。それならば、少しでも、現実を変えられることが出来る筈だ。

 

 

 

───だから、伝説の魔剣(グラム)!その力を示せ!最強と謳われたお前の力を使ってでも!!

 

 

 

 

暴走する響が、片手を振り下ろす。爪が、鋭い爪が戦艦の砲撃すら耐えきれる装甲を引き裂いた。肩近くの皮膚も同じように裂け、赤い血が舞う。

 

 

それでも、剣は止まるつもりはなかった。この程度の痛みなど、全く辛く感じない。かつての実験の方が辛かった、守れなかった時、絶望した時の方が苦しかった!

 

 

 

 

 

───魔剣は破壊と殺戮の為にあるのではないと、人を傷つけるだけの力ではないという事を! 俺が、俺達が、ただの兵器ではないことを!

 

 

 

ザシュッ!! と。

 

ついに、響の爪が、剣の装甲を貫く。比較的に防御の薄い腹部を容赦なく抉っている。しかし、剣は笑みを作る。唇の端から血を流しながらも、響の腕を掴む。

 

 

「ガァッ!?」

「………これなら、確実に止められるな」

 

身体から自分の腕を引き抜こうと抵抗する響だが、それ以上の力で押し止める。例え暴走してようと、魔剣士(ロストギアス)が簡単に押し負ける訳がない。

 

 

このまま一撃で葬ろうとしてるのか、金色に輝くデュランダルを構える。勿論、全力の一撃を受ければ剣だってただで済まない。だが、ただで受けるつもりもない。

 

 

 

 

GLAM(グラム)主要武装展開(アームド・オン)──────『龍剣グラム』、抜刀》

 

片腕の装甲が複雑な機構と共に変形する。掌を覆うように、装甲以上の美しき漆黒を宿す刃。デュランダルと同じく神代の遺物の一種と言われても納得できるような、感じが内包された剣。

 

 

『龍剣グラム』

その一振が解放される。ただ敵を殺すためではなく、ただ龍を討ち滅ぼす為ではなく。

 

 

 

 

救うべき人が、今目の前にいるからこそ──────

 

 

「その力でっ!守ってみせろッ!一人の女の子を助けて!証明してみせろォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!─────ロストギアァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッッ!!!!」

 

 

黄金の聖剣と、漆黒の魔剣が衝突する。信じられない程の轟音と衝撃波が荒れ狂う。二つがぶつかり合った場所には尋常ではないクレーターが発生し、

 

 

 

黄金の剣が─────遠くの地面に転がる。グラムがデュランダルを圧倒した事が、証明された。

 

 

 

デュランダルが放れた事で、響の様子が戻る。先程までの破壊衝動の獣のオーラは消え、そのまま倒れ込みそうになる。その直前に抱き抱えてやると、静かに眠ってるのが分かった。

 

 

コンクリートの地面に寝かせる訳にはいかない。そう思い、彼女の頭を脚に乗せる事にした。彼は気付いているかもしれないが、この体勢は膝枕に近い。羞恥心も無いのは、そんなものを抱く余裕がないのだ。

 

 

 

「…………大丈夫かしら、剣君?」

 

眼鏡を掛け直しながら駆け寄ってきた了子はそんな風に聞いた。剣は一瞬首を傾げる。逃げたと思っていたがこの近くにいたらしい。よく巻き込まれずに済んだな、と。

 

 

…………ふん、と小さく笑う。それはそれで、どことなく満足そうな笑顔で。ボロボロとなった身体で、いつものクールさを保った様子で。

 

 

 

「─────楽勝だ」

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

『司令、最後にだが一つだけ教えておきたい事がある』

 

 

成功の余韻に浸る二課本部。すぐに救援を送るように指示を出した弦十郎の携帯に、そんなメールが送られてきた。

 

 

先程の会話のように音声を使わないのは、裏切り者の存在を本格的に警戒してるのかもしれない。用心深いとも言える慎重さは、彼等が組織の追手に捕まらずに過ごしてきた事を意味している。

 

 

『私としても暇でね。君達の施設回線からネットワークにハッキングをしたみた訳だ。その結果、米国の機密ネットワーク内から君達に関する警戒ランクなどの情報が見つかった。ついでに、興味深い単語も確認できてね』

 

 

…………聞きたいことが山程あるが、処理できないので止めることにした。

 

 

 

「その、単語とは?」

 

小声で呟く弦十郎。

答えるように送られてきたメールの内容が更新される。文章の羅列、その下にあるのは新しく用意した言葉であると同時に。

 

弦十郎が口にした、疑問に対する答えが記されていた。

 

 

 

Fine(フィーネ)…………気になったのだが、これは名前か何かかね?』

 




気になったんすけど、デュランダルって凄いっすよね。無限のエネルギーとか使いようによれば世界が変わるじゃないですか。まぁ聖遺物だから世間に露見する訳にはいかないですけど。


そう言えばノイズ被害者も聖遺物の正体を隠すしかないのが原因なんでしたっけ。理不尽な話ですよね、ほんとに。
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