正直気分屋なところがあるので書くペースにはどうしてもムラが出てしまいます。
ただどんなに時間がかかってもこの小説は絶対に完結させると決めているのでそれでも良ければ今後ともご愛読いただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。
読んでいただいた方で覚えていない方もいると思うのでアビゲイル登場からの流れをまとめると
フェリシアとアビゲイルが出会う→一緒に住むことになる→囮作戦でフェリシアとアビゲイルが街に出かける→フェリシアの知らぬところで魔理沙とオリジナル魔法少女ベラが戦闘開始→ワルドとフェリシア戦闘開始→才人の救援によりフェリシアとアビゲイル離脱→アリナ登場
という流れになっています。
それでは本文どうぞ。
謎の男ワルドから逃げたフェリシアの前に現れたのは黄緑色の髪の魔法少女だった。
それを見たアビゲイルは険しい顔をしながらその少女を見つめる。
「アリナさん…あなた魔法少女だったのね…」
「知り合いなのか!?」
「えぇ…私を攫おうとした人の一人よ」
「ってことはやっぱ敵か!」
「別にアリナがあなたのエネミーになるとは限らないんですケド。アリナはウィッチガールさえゲットできればそれでオーケー。あなたもデリートされずにすむってワケ」
「何か英語ばっかでよく分かんねーけどアビーは絶ってー渡さねー!」
「じゃあデリートするしかないヨネ」
いきなりアリナは何かキューブのようなものをフェリシア達の目の前に投げる。
するとフェリシア達の周りの光景が何やら不気味な絵のようなものへと変化していった。
「魔女の結界!?ってことは…!」
すると何か巨大なものが落ちてくる大きな音が辺りに響き、思わず目を閉じてしまうような強風が起こる。
「魔女…!」
フェリシアは今にも魔女に今にも飛びかからんとする剣幕で魔女を睨みつけている。だが飛び掛かりたい衝動を抑えその場でとどまっていた。
(今はアビーがいる。魔女を倒すよりこいつを守らねーと!)
岩の魔女と戦って以降、フェリシアは自分の感情の制御ができるようになっていた。憎しみこそ消えはしないがその場に合わせてある程度は判断が出来るようになっていた。
「これが魔女…」
いきなり現れた巨大な魔女を見てアビゲイルは呆然としていた。そんなアビゲイルを守らんとすべくフェリシアは前へと立ちはだかる。
「どう?この魔女、適当に拾ってきた割には中々ビューティフルだと思わない?」
「は?何言ってんだオマエ?」
「えっとフェリシア、ビューティフルっていうのは美しいって意味よ」
「いやますます意味分かんねーよ!?魔女に美しいとかねーだろ!?」
「アナタにはこの魔女の美しさが分からないってワケ…?まぁ別に分かってもらう必要もないケド」
そしてフェリシアがその場で身構えていると魔女が棒のような腕で振り払うように攻撃を仕掛けてきた。
それをハンマーで受け止める。
「へへ、大したことねーぞ…。これなら…っ!」
攻撃を受け止めたフェリシアに突如いくつもの小さなキューブのようなものが弾丸のように飛んでくる。
「アリナもいること忘れないヨネ」
咄嗟にかわし事なきを得る。
「くそっ…!」
続き、魔女が再び攻撃を仕掛けてくる。またしてもハンマーで防ぐが攻撃は一撃にとどまらず連続で仕掛けてくる。
攻撃がやんだ瞬間腕にハンマーを振るうがかわされる。
「さっきのひげ親父と同じことしやがって…!」
その素早い動きからフェリシアは先ほど戦ったワルドのことを思い出す。
続きアリナのキューブが飛んでくる。それをかわすとその先に魔女が回りこんで攻撃をしかけてくる。それに対しフェリシアはいったん距離をとる。
(くそっ!このままじゃやべーぞ…!)
フェリシアは追い込まれていた。
素早い攻撃を仕掛けてくる魔女、離れた場所からしかけてくるアリナ。
攻撃をあてることの難しい二人の敵。せめてどちらかならまだ戦いになるが1対2ではかなり厳しい。
(こうなりゃ…!)
今フェリシアが考えていること。それはワルド戦の再現。つまり接近してくる魔女に一撃を叩き込み一気に倒すというものだった。
フェリシアはハンマーを持ち上げ、待ちの構えを取ろうとする。
「うおっ!?」
しかし横から放たれたキューブに妨害される。
「何?ストップしたからギブアップしたのかと思ったんですケド」
(少し遅れてたらやられてた…!)
先程と違い今度の相手は一人ではない。魔女に集中すればアリナに隙を見せることになる。
アリナの様子を見つつキューブを躱しながら待ち構えるという手もある。しかしそれではいざ魔女と一騎打ちになるとき相手より先に攻撃を叩き込めるか、フェリシアは不安を感じていた。
(やるしかねー!オレがやらなきゃ誰があいつを守んだよ!)
アビゲイルは怯えた表情で、しかし目を逸らすことなく、逃げることなく戦いを見守っていた。
それが彼女なりにできる精一杯だった。力になれないならせめて見守るだけでもしなければならない。
そんな想いでアビゲイルはこの場で立っているのだろうとフェリシアは感じた。
ならそれに応えない訳にはいかない。
覚悟を決める中フェリシアはある策を思いつく。
(これしかねぇ…一か八かだ!)
そうこうしているうちに魔女が走り出す。その長い手足を動かし、獲物を追い立てる獣のごとくフェリシアに迫る。
一方フェリシアは動かずボールを待つバッターのようにハンマー持ち構える。
(フーン、先に魔女を仕留めるってワケ?)
見ていたアリナがそう分析する。
「でもやっぱりアリナを無視するのはベリーバッドだヨネ」
アリナは手元にキューブを出現させる。
しかしすぐには撃たない。アリナは狙っていた。フェリシアが最も集中する瞬間を。
そして魔女の腕の射程に入る直前、小さくバラバラになったキューブを解き放つ。
魔女とアリナの二方向からの攻撃。どちらの攻撃も躱すことができない。かと言ってどちらかを防げばどちらかの攻撃を受けることになるだろう。
「これでジ・エンド。バイバイ」
二つの攻撃がフェリシアに迫る。
「それを待ってたぜ!」
フェリシアはキューブの方に向き直りハンマーを振るう。
振るったハンマーはアリナのキューブ達を捉える。
「いっけぇぇぇ!」
そして魔女に向かって思いっきりキューブを打ち返す。
「ワッツ!?」
突っ込もうとしてきた魔女にそれが避けられるはずもなくそれをもろに食らう。
思わぬ攻撃を食らった魔女の体勢が崩れ動きが止まる。
その隙をフェリシアは逃さない。
「りゃぁぁぁ!」
魔女に全力の一撃が叩き込まれる。
結界中に音が響きわたるほど強烈な一撃を受けた魔女は再び立ち上がることも出来ずそのまま消えていった。
「へへ、どうだ…!」
「フェリシア!危ない!」
「あ…?」
アビゲイルの声にフェリシアが振り向くとそこにはフェリシア目掛け飛んでくるキューブ達が目に入る。
「くそっ!」
急いでハンマーで受ける形をとり、どうにか防ぐ。
「っ…!」
「まさかアリナのキューブを利用するなんて…ちょっとしたサプライズだったんですケド」
フェリシアは少し離れた位置にいるアリナを睨みつける。
「まだやんのかよ」
「オフコース。だってアナタもうろくに動くことも出来ないヨネ」
「!」
フェリシアは先程大半のキューブを防ぐことが出来たが一つだけ防ぐことはできず足にダメージを受けていた。
もう走ったりすることもできるかどうか。
「だから弱ってるエネミーを怖がることもないってワケ」
アリナはゆっくりとフェリシアに近付く。
「やめて!」
「アビー!?」
二人の間にアビゲイルが割って入る。
「ウィッチガール…何のつもり?」
「お願い…!私を連れて行っていいから…もうフェリシアを傷つけないで!」
「おいアビー!辞めろ!オレは大丈夫だ!」
思わぬ行動をとったアビゲイルをフェリシアが止める。
「ごめんなさいフェリシア…私がいけなかったわ。私が頼ったせいであなたが傷ついて…その上命まで落としてしまうなんて絶対あってはならないことだわ。だからこれでいいの」
「アナタがこの結界にいる限りエスケープすることはできない。だから別にそこのキンパツを見逃す理由にはならないんですケド」
「私に出来ることなら何でもするわ!だからお願い…!」
もうこれ以上フェリシアを傷つけまいと必死に叫ぶ。
「フーン…じゃあスティールボールを連れて来て。アナタがいるってことは近くにいるってことだヨネ」
アビゲイルは難しい顔をする。
「それは…ごめんなさい…それだけはできないわ。あの人は遠いところに行ってしまわれたもの…私の手が届かないほどに」
「じゃあキンパツはデリートするしかないヨネ。ほら、邪魔」
「キャッ!」
アリナがアビゲイルを強引にどかす。
「まぁアナタがいればスティールボールは必ずやって来る。わざわざ頼むようなことでもないヨネ」
「お願い…!他のことならなんでもやるから…!だからこれ以上フェリシアを傷つけないで…!」
アリナはアビゲイルの声を無視してフェリシアの元へ近付く。
「これでアナタをヘルプできる人間はいなくなった…今度こそデリートしてアゲル」
「やれるもんならやってみやがれ…!」
フェリシアは自身の敗北を悟りながらもまだあきらめていない。たとえ自分が命を落としてもせめてアビゲイルだけでも逃がす。そのためにただで命をくれてやるつもりはなかった。
「アハッ!そう!ただ死なれるだけじゃ大したインスピレーションにならないヨネ!どうせならあがいて!もがいて!命の輝きを見せてから死んでヨネ!」
フェリシアはハンマーを構え、アリナが手の上にキューブを出現させる。
アビゲイルはその勝敗の決まった勝負をただ見ていることしかできない。
(あぁ…あのときと…セイレムのときと同じ…また私のせいで命が失われてしまう)
このままではフェリシアを、自分を守るとまで言ってくれた友達を失ってしまう。
「駄目よ…そんなの駄目っ!」
突如強く何かがぶつかる音がする。そして二人の目の前からアリナの姿が消えた。
「は…?」
一瞬フェリシアには何が起きたか分からなかった。わずかに見えたアリナの残像を目で追うとそこには壁に叩きつけられ血まみれになったアリナの姿がそこにあった。
「なっ…!?一体何が起きたんだよ…!?」
次にフェリシアが確認したのはアビゲイルの様子だった。するとフェリシアの前の眼に飛び込んで来たのはとても信じられないようなものだった。
「おい…なんだよそれ!?」
アビゲイルを見るとそのそばに一本の触手が浮かんでいた。魔女にも匹敵するような巨大で作り物であるかと疑ってしまうほどに生々しい触手。
そのあまりにもグロデスクな形容に吐き気すらこみあげてくる。
「あぁ…やっと見られた」
血まみれのアリナが触手を見つめる。
「ビューティフル…。これが魔女とは違う新しいアート…。そうだスケッチしなきゃ…スケッチブックは…ペンは…」
痙攣させながら何かを探すように腕を動かす。しかしそれらを掴むことが叶わないと理解するとアリナは心底悔しそうな顔をしながら瞳を閉じた。
「あぁ…あぁ…」
一方アビゲイルは震えながら血まみれになったアリナを見つめていた。
「アビー大丈夫か!?」
触手を警戒しながらフェリシアが近づく。
「私が願ったから…?助けたいと思ってしまったからアリナさんは…」
「何言ってんだ!オマエは何もしてねーだろ!」
「ごめんなさい…!ごめんなさい…!ごめんなさい…!」
フェリシアが声をかけてもアビゲイルはまるで聞こえていない。ただごめんなさいと繰り返す。
そしてそれが何度か繰り返された後フェリシアはあることに気づく。
(魔力…!?なんでアビーから…?)
今までに感じたことのないワルドとも違う魔力。だがその邪悪で禍々しさをも感じさせる魔力はフェリシアに何かがやばいと予感させる。
「おい辞めろよ!それ以上いったら戻れなくなる!」
段々とアビゲイルの中でその邪悪な魔力は高まっていく。
「あぁ…やっぱりそうなのね。やっぱり私は…」
魔女なんだ
そのとき邪悪な光がアビゲイルを包み込む。
その結界の端から端まで照らすようなまばゆい光にフェリシアは思わず目をつむり、やむを得ずその場から離れる。
光が収まり目を開けるとそこに先程までいた巨大な触手はなくなりどこかに消えてしまったようだった。
そして先程まで光のあった場所には少女が一人佇んでいた。
「アビー…?アビーなんだよな…?」
その少女はワンピースの代わりに黒いツタを首元から何枚か張り付けた服といっていいのかすら怪しい衣装に、シルクハットの代わりに魔理沙のような、絵本に出てくる魔女のような三角の帽子を被っていた。そしてその綺麗で純粋な青い目は血のような赤い目をした冷たい目へと変わりフェリシアを見つめていた。
しかしその顔立ちやブロンドの髪は紛れもなくアビゲイルのものだった。
「…フェリシア」
「っ!」
少女がフェリシアの名を呼ぶ。それによりフェリシアは目の前の少女が確かにアビゲイルであることを確信する。
「やっぱりオマエはアビーなんだな…!」
目の前の少女が確かにアビゲイルであったこと。
それがフェリシアにとって決して良いことであったかは分からない。
この少女は危険だ。たとえどんなことをしても止めなければならない。
そう本能が訴えるのだ。
「なぁ…オマエ別に何もしないよな…?何か悪りーことしたりしねーよな…?」
アビゲイルはその質問に対して何も答えない。
代わりに返したのは笑みだった。
年相応の無邪気で悪戯っぽい、それでいてその笑みは確かに悪意を孕んでいた。
瞬間フェリシアはアビゲイルに向かって走り出していた。
もしここで止めなければ取り返しのつかないことになる。
その確信にも似た予感が足の痛みをも忘れさせフェリシアを突き動かす。
だが同時にアビゲイルの近くの空間に穴が開き、そこから触腕が現れる。
そして触腕は薙ぎ払うように動き、フェリシアはそれにハンマーを打ち込む。
―――その瞬間フェリシアのハンマーが折れた。
「なっ…!?」
決してハンマーの強度が甘かったわけではない。
フェリシアは一旦下がり、魔法で新たなハンマーを出現させる。
(何だよあの力…!?魔女とか魔法少女と全然レベルがちげーぞ…!?)
「フフ…」
アビゲイルが不気味に笑い出す。
「ねぇフェリシア、あなた勘違いしてるわ。私はただ償いがしたいだけよ」
優しく、それでいて誘惑するような声でアビゲイルが語りだす。
「償い…?」
「そうよ…父なる神は私に力を貸してくださった。罪深き私に。なら私もそれに応えなくていけないわ」
「何言ってんだよ…!神ってのはそのぐにょぐにょした変なやつのことなのかよ!?オマエのやろうとしている償いって何なんだよ!?」
「…言えば必ずあなたは止めようとする。でもこの償いが終われば最後にはみんな救われるわ。もちろんあなたも含めて」
「あん…?」
「あなたは私によく似ている。だから分かるの。あなたも私と同じ救いを求める子羊の一人だって」
「オレに救いなんていらねー!オマエが間違ったことしようとしてんならオレはそれを止めるだけだ!」
「…そう。じゃあしばらくそこで眠っていて。大丈夫。次目覚めるとききっとあなたも救われるから」
そのときフェリシアは後ろからまた感じたことのないような魔力が近づいてくるのが分かった。
「くそ!誰だよこんな時に!」
「誰だとは失礼な。もう私のことを忘れたのか?」
自分を小馬鹿にしてくるようなその声はフェリシアにとってとても聞き覚えのあるものだった。
「魔理沙!」
「悪い。ちょっとトラブルがあってそれで遅れた。あのベラってやつ二度と戦いたくないぜ…。っと今はそんなこと話してる場合じゃないみたいだな…」
「魔理沙さん。ようやくいらしたのね。あなたも私の邪魔をするのかしら?」
「私は平和主義者だからな。無用な争いはするつもりないぜ」
「…ならどうしてそんなに私を睨みつけるのかしら?とても争いを好まない人がする目だとは思えないのだけれど」
「ハハハ!じゃあお前もその魔力はなんだ?放っておいたらろくでもないことになりそうなんだが…間違ってるか?」
あきれたようにアビゲイルはため息をつく。
「やっぱりあなたも私の邪魔をされるのね」
「フェリシア足を見せてみろ」
フェリシアが怪我をした足に魔理沙が触れる。すると足の痛みが段々と引いていった。
「お前こんなこともできたのかよ!?」
「治療魔法なんてあんまり趣味じゃないけどな…。動けるか?」
「おうこれなら…!」
「じゃあそこでじっとしてろ」
「は!?おい!オレはもう戦えるぞ!」
そう言うと魔理沙は帽子をなでる。
(念話の合図…!)
「ってわけでしばらくお前の相手私がやらせてもらうぜ。文句はないよな?」
「いいわ。私の邪魔をするなら皆どいてもらうだけ。あなたも、フェリシアも」
箒にまたがり魔理沙は宙へと飛び立つ。
触手は自らをうならせながら魔理沙を追う。
そして魔理沙に向かって叩きつけるように触腕を振るうが、魔理沙はそれをひらりとかわす。
結界の壁に触手がぶつかり天井から床までヒビが入る。
「おいおいなんて馬鹿力だよ!幻想郷にもこんなのそうはいないぜ…?」
お返しとばかりに触手に弾幕の雨を降らす。
だが触手には傷一つ着いた様子はなく、それを見て魔理沙は眉をしかめる。
(…よし!つながってるよな!?)
そのタイミングでフェリシアは魔理沙と念話を開始する。
(つながってるぜ。それであいつはなんでこうなった!?)
(分かんねー…オレが魔法少女に殺されそうになったらあのタコみてーな足が出てきてそいつをふっ飛ばしたんだ。それでアビーのやつ自分のせいで傷つけたって言ってから様子がおかしくなって…)
(あいつ自身の力が暴走してるってことか…?誰かに洗脳されたりしているわけじゃなさそうだな…)
(どうすりゃあいつを助けられる…!?)
(それ以前にアビゲイルに対して手加減してる余裕はあるのか?少なくとも私にはないぜ)
(あん?どういう意味だよ?)
(つまり本気でやらなきゃこいつは倒せないってことだ。たとえアビゲイルがどうなってもな)
(っ!オマエ何いってんだよ!?)
思わぬ魔理沙の言葉にフェリシアは驚きと怒りがフェリシアの顔は入り混じったような顔になる。
(気づいているか?こいつの魔力少しずつ上昇してる。今でさえこんな触手のバケモノを操るんだ。このまま放っておいたら次何をしでかすか分かったもんじゃないぜ)
(でもだからって…!)
(あの触手が神浜に出ればただじゃすまない。いつまでこの結界がもつか分からないが絶対にあいつはここで止めなきゃならない。分かるよな?)
(でも…)
(もしこいつが外にでれば間違いなく多くの死人がでるぜ。こんなこと言いたくないが今のアビゲイルはもう災害…もっと言うなら同じだぜ。お前が死ぬほど憎んでる魔女とな)
その言葉に一瞬フェリシアの思考が止まる。
「あいつが魔女と同じ…?」
自分たちに対し容赦なく力を振るう少女。
外にでれば邪魔をしようとするもの全てを傷つけ、かつてフェリシアがされたように誰かの大切なものを奪うだろう。
そんな少女と魔女に一体なんの違いがあるのだろうか。
「違う…違う!あいつは魔女なんかじゃねぇ!」
フェリシアが叫ぶ。
「アイツは父ちゃんも母ちゃんも死んで…知らねーところで一人ボッチになって…その上でっかい罪ってやつに苦しんで…今はちょっとおかしくなってるだけだ!だからあいつがこれ以上ひでー目にあうなんて駄目なんだ!」
フェリシアは両親を失う苦しみも、一人になる苦しみも、大きな罪を背負う苦しみまでもアビゲイルが背負う苦しみ全てが分かるようだった。
だからこそ助け出したいと、守りたいと願ったのだ。
「待ってろアビー!オレがオマエを止めてやる!絶対オマエを魔女になんかさせねぇ!」
その言葉にアビゲイルは何も答えない。ただ冷淡な瞳を向けるのみ。
(何か考えがあるんだな?)
魔理沙が問う。
(いつ手遅れになるか分からない。やって欲しいことだけ教えてくれ)
(オレがアビーをぶん殴れるくれー近くに行かせてくれ!それだけでいい!)
(助けたいってやつの言うようなセリフじゃないぜ…。分かった。バケモノは私が惹きつける。だからその隙にあいつの元に行って来い!)
フェリシアがアビゲイルに向って走り出す。それを防ぐため触手はフェリシアの元へ向かう。
「おっとそうはさせないぜ!」
魔理沙が弾幕を生み出し結界の空を埋め尽くす。そしてアビゲイルに向けてそれらが一斉に放たれる。
それら一つ一つはかすり傷すらつけられないハリボテみたいなもの。だが触手を引き付けるには十分。
触手はアビゲイルに覆いかぶさるようにして光弾を防ぐ。
その間にフェリシアはアビゲイルのもとへと急接近する。
「これで…!」
あと少し、というところで想定外のハプニングが起きる。
「なっ…!?」
なんと新たな触手がもう一本フェリシアの目の前に出現したのだ。
「マジか…!」
箒にまたがった魔理沙が全速で向かうが弾幕を防ぎ切った触手がそれを阻む。
「フェリシア!」
「くそっ!」
フェリシアは走った勢いそのままにハンマーを振りかぶり、触手はフェリシアに迫る。
場は触手とフェリシアの一騎打ち。
パワーで敵わないフェリシアはハンマーから触手に絡めとられてしまうだろう。
「フェリシア、こんどこそ眠っていてね。大丈夫。少し痛いかもしれないけどその痛みも最後にはあなたを救ってくれるから」
このとき魔理沙はフェリシアの敗北を、アビゲイルもフェリシア捕らえたと確信していた。
真っ向からぶつかってはフェリシアに勝ち目はない。どう考えてもそれは明らかだったからだ。
フェリシアもそれは分かっていたのだろう。
だからハンマーが衝突する直前その手を離した。
「!?」
思わぬ行動に目を見開くアビゲイル。
そしてハンマーに絡みついた触手はフェリシアを取り逃がす。
触手をかわし再びフェリシアはアビゲイルのもとへと駆け出す。
触手も一瞬遅れて追いかける。
「邪魔させないって言ったはずだぜ!」
目の前の触手をよけるように魔理沙は最後の魔力を込めた一撃をフェリシアを追う触手へ放つ。
その一撃は見事に当たり、わずかに触手の動きが鈍る。
フェリシアが目の前に迫りアビゲイルも手に持った大きな鍵で自分の身を守ろうとする。
あと少しというところまで来たフェリシア。ここを逃せばチャンスは二度と訪れない。
(ここで決める!)
触手もあと数ミリのところまで迫る。一瞬の遅れも許されないこの状況でフェリシアはアビゲイルに向けて手を伸ばす。
「届け!」
伸ばした手アビゲイルの額に触れる。
「っ!」
そしてそのまま強くアビゲイルの頭をはたいた。
「何を…!?」
はたかれたアビゲイルはフェリシアに向き直り鍵を構えようとする。
「…あれ?」
だが突如力が抜けたように鍵を落とし、触手も完全にその動きを止める。
「あぁ…なんてこと…フェリシアあなたまさか…!」
「ごめんな。オマエを止めるにはこれしか思いつかなかったんだ」
このときのアビゲイルの顔はフェリシアにとってとても印象に残るものだった。
まるで解放されたような、でもどこか空っぽになってしまったような不思議な表情。
そしてそのままアビゲイルは膝をつき崩れるようにその場で倒れた。服も元に戻り、周囲を覆っていた結界は消え、周りは裏路地へと戻った。
辺りはすっかり日が暮れ夜になっていた。
「終わったのか…?」
魔理沙の問いにフェリシアがうなずく。
「正直言って私には何が起きたのかさっぱりわからないんだが…お前アビゲイルに何をしたんだ?」
「こいつはずっと苦しんでた。俺と一緒に遊んでる時も、戦ってる時も自分の罪ってやつに。多分その罪から解放されたくてあんなことやったんだと思う。だからそいつを忘れさせたんだ。オレの魔法で」
「つまりこいつの罪悪感を忘れさせたってことか…?」
アビゲイルがここに来る前話した多くの人を殺したという話。
そしてその罪を背負った者の苦しみ。
フェリシアはそれがどういったものなのか、事実なのかさえ分からない。
しかし似たもの同士であるからこそアビゲイルが抱えた苦しみを理解し、忘却の魔法を扱えたからこそフェリシアはアビゲイルを止めることができたのだ。もし違う誰かであればこうはいかなかっただろう。
「ていうか待て、忘れさせたってそれ
固有魔法とは他の魔法少女には使えないその魔法少女だけが使える魔法である。
「オマエいつもガンガン攻撃するから使うとこなかったんだよ!魔女に使えば動けなくなるのによ!」
「そいつはお互い様だぜ…とにかくこいつは罪悪感を忘れたからもうあんな風に暴れないってことでいいんだな?」
「それは…」
そこでフェリシアは顔を曇らせる。
「おしゃべりはその辺にしてしていただけませんか?あなた達にさくような無駄な時間はございませんので」
二人ははっとなって後ろを振り向くとそこには茶色髪に黒いドレスを着た魔法少女がたたずんでいた。
「ベラ…!」
その瞳は追い詰められた獲物を見るかのように確かな殺意をもってフェリシア達を見つめていた。
触手が弱すぎでは?と思う方がいらしゃっるかもしれませんが諸々の事情で弱体化しております。またわかりづらいと思いますが触手は最初の一本と最後の方で出てきたもう一本の二つしか出てきてません。
また他にも突っ込みどころがあると思いますがもしどうしても聞きたいことがある方はぜひ感想などお送りください。