正直最終章の結末がショックすぎて今もまだ引きずってます。
思ってた以上に私はあの子のことが好きだったんだなって終わった後に気づきました。
今回の話は推敲が少し足りてないような気がしますがこれ以上遅くするとまた一年待たせる気がするので投稿させてもらいます。
それではご覧ください。
アビゲイルを止めたフェリシア達の前に現れたのはアビゲイルを狙う魔法少女ベラだった。
「こいつもう追いついてきたのかよ!?」
「流石に空を飛んで行ったあなたの追うのには苦労しました。ですがそのおかげで目的の少女の元へとたどり着けましたわ」
「随分と煽ってくれるな…!」
「魔理沙、こいつ誰だ?」
「話すと長くなるがとりあえず敵だぜ!ここに来る前私はこいつに邪魔されたんだ!」
その言葉でフェリシアは再び臨戦態勢をとり、ハンマーを構える。
「私としてはそこの少女を渡していただけるだけでよいのです。特に争う必要はありませんよ?」
「誰がそんなことするかよ!オマエにやるもんなんて何にもねーぞ!」
「抵抗されるのは構いませんが…本当によろしいのですか?」
「あ?」
「見たところ私がここに来る前に何かあったとお見受けします。魔法少女のあなたはずいぶん疲弊されているようですし、魔理沙さんも私との戦いで魔力を使っていらした。それにここでは空を飛ぶ力の消耗も馬鹿にならないはずですし、実はもう満身創痍といった状態では?」
「…まいったな。ブラフも使えなさそうだ」
魔理沙が困ったような顔をする。その表情からは疲れと焦りも交じっており、本当にまずい状況であるのがフェリシアにも分かった。
「だからってアビーを渡すわけにいかねーだろ!」
フェリシアはハンマーを握りしめ戦意を示す。
「そこまでよ!」
突然上から落ちてくるようにが下りて一人の女が現れる。青をベースにした布に胸部と肩部を守る軽装のようなものをつけたその青髪の女はフェリシア達を守るようにベラの前に立ちはだかる。
「オマエは…七海やちよ!?」
その場に現れたのは神浜一のベテラン魔法少女七海やちよだった。
「あらあら誰かと思えば神浜の最年長たる魔法少女七海やちよさんではありませんか?こんなところまで何を?」
「あなたがどこの魔法少女知らないけどここは神浜。あなたのテリトリーではないはずよ!今すぐここから立ち去りなさい!」
相手を威圧するような剣幕で警告を言い放つ。
「なるほど魔理沙さんたちの応援というわけですか。ふむ…ここであなたに挑むのも一興ではありますね。しかしほとんど残りかすとはいえ
「異能使い?」
聞きなれぬ単語にフェリシアが思わず聞き返す。やちよも気になったのか眉がピクリと動く。
「おっと失言。とにかくこの状況は予想外ですし私も万全ではございません。ここは一時撤退とさせていただきましょう。それでは皆さん、もう会うことのないよう願ってますわ」
あなたたちに会う価値などないといわんばかりのセリフを残し、ベラは建物の屋上までジャンプする。フェリシア達はそのまま数秒警戒を解かなかったが、辺りは静寂に包まれるばかりだった。
「…とりあえずこの場はしのいだみたいだな」
「そうみたいね。あなた達何があったの?ずいぶんとボロボロだけど痛いところはない?」
「お、おう、このとーり平気…痛てっ!」
手足を伸ばしてアピールしようとしたところ足に痛みが走る。
「治療魔法は趣味じゃないって言ったろ?完全には治せないからあまり無茶するな」
「けどアビーのときは全然痛くなかったぞ…」
「やばい状況だったから感覚が麻痺してたんだろ。火事場の馬鹿力ってやつか?少し意味合いが違うきがするけど…」
やちよは地面に寝かせているアビゲイルに目を向ける。
「その子があなたの言ってたアビゲイルね」
「あぁそうだぜ。さっきの魔法少女みたいな変な奴らに狙われているらしい」
「みたいなって…そういえばさっきの子妙な魔力だったけど本当に魔法少女なの?」
「なぁオマエ知達り合いなのか?」
魔理沙とやちよ、二人で話しているところにフェリシアが割り込む。
「あぁちょっとしたな」
「私はあなたのことも知っているわよ。神浜の傭兵さん」
「おお…オレってゆーめーじんなのか!?」
「他の魔法少女に迷惑をかける暴れん坊としてね」
「あ?」
あからさまにフェリシアの顔が不機嫌になる。
「まぁ事情があるみたいだし、今は魔理沙が手綱をにぎっているみたいだから今は見逃しておくわ。でもまた他の魔法少女に迷惑かけるようなことしたらたたじゃすまないわよ」
「なんだと!」
「まぁまぁ、やちよは西の代表として釘さしときたいんだよ。別にお前が嫌いってわけじゃない。そうだろ?」
「…そうね」
けんか腰だったフェリシアは一旦落ち着く。しかし自分を悪者扱いするような発言をしたやちよと素直に打ち解けようとは思わない。
「フンだ」
「おっとやちよ。お前の方が嫌われたみたいぜ」
「別に構わないわ。それより一体あの魔法少女は何者なの?それにその子もなんだか不思議な魔力を感じるけど魔法少女ではないのでしょう?」
「あぁ。アビゲイルは魔法少女じゃないぜ。詳しいことはまた後で…」
「そうだあの緑髪のやつ!」
突然何かを思い出したようにフェリシアが叫ぶ。
「ん?」
「ほらさっきも言っただろ!オレを殺そうとした魔法少女!」
フェリシアはベラの登場によって重傷を負った緑髪の魔法少女アリナのことをすっかり忘れていたことに気づいた。
「そういや言ってたな。どこにいるんだ?」
三人は辺りを見渡すがそれらしき人物は見当たらない。
代わりに決して少なくない血液の跡を見つけた。そしてフェリシア達のいた場所と反対方向にその跡は伸びていた。
「あいつ逃げたのかよ!」
「すごい出血量だけど大丈夫かしら…」
「フェリシア、そいつのソウルジェム割れたりしてなかったか?」
「えっと、多分割れてなかったと思うぞ。どうしてそんなこと聞くんだよ?」
「そうか。ふむ…」
魔理沙が何か考え込むそぶりを見せる。
「とりあえずそれなら大丈夫だろ。魔法少女なら体がある程度怪我してもどうにかなるはずだぜ」
「私が追いかけましょうか。随分物騒な子みたいだけど万が一のことがあったら…」
「ちょっと待ってくれ。フェリシア、才人って奴知らないか?」
「才人?」
「ほら私が言った協力者っていたろ?」
フェリシアは自分達を助けてくれた男のことを思い出す。
「…そうだ!あの兄ちゃん助けに行かねーと!」
フェリシアは才人の元へ走ろうとするが再び足に痛みが走る。
「っ~!」
「だから無理すんなって言っただろ?」
「ねぇその才人って人、男の人みたいだけど…魔法少女でもない人が戦っているの?」
「詳しい事情は後でまとめて話す。やちよ、お前はこの才人って奴を助けにいってくれないか。死ぬようなことはないだろうがそれこそ万が一ってこともある。その魔法少女には悪いが才人の方を優先して欲しい」
「…分かったわ。場所を教えて」
フェリシアはやちよに場所を教える。
「…ねぇここってさっきの魔法少女が向かっていった方向じゃない?」
「おいそれって少しやばくねーか!?」
「あいつと二対一だと流石に分からなくなるな…。やちよ、すぐに頼む!」
やちよ頷きすぐに才人の元へと向かった。
「やっぱりオレも…」
「怪我してるくせに何言ってんだ。行っても足手まといになるだけだぜ」
「…ちぇ」
「まぁ気持ちは分かるけどな。私ももう少し体力と魔力があったらなぁ」
そう言ってため息をつく。
「けどまぁ、あいつなら心配することないぜ」
「…あの兄ちゃんも髭おやじもさ、何者なんだ?」
「ん?」
「魔法少女でもねーのに魔法使うしあんなにつえーし…それにアビーの奴が呼び出したあの変な奴、魔女じゃねーんだろ?オマエは話したくなねーかみてーだけどさ、もう何か教えてくれてもいいんじゃねーのか?」
そう言われると魔理沙は一瞬何か考え込むような仕草を見せる。
すると冗談めかしたような声でこんなことを言った。
「アビゲイルもあいつらも魔法少女と魔女のいない他の世界からやって来た奴だ。で、私もそうだって言ったら信じるか?」
「…そうかよ」
対するフェリシアの答えは素っ気ない。
「本当に信じるのか?いつもは信じてもらうのに苦労するんだけどな」
それからしばらく二人の間に沈黙が流れる。
「なぁ」
「ん?」
「ひょっとしてアビーは元の世界に戻りたがってんのか?」
膝に寝かせたアビゲイルを見ながら尋ねる。
「そういうことになるな。けどそう簡単にはいかないぜ。何せ私だってその方法を探している最中なんだからな」
「オマエも帰りたがっているのか?」
「私にもやり残したことがある。だから絶対に帰らなきゃいけない」
二人はいつか元の場所に帰らなければいけない。フェリシアはそう思うとなんだか寂しくなってしまう。
「ひょっとして寂しがってるのか?」
からかうように魔理沙が尋ねる。
「ち、違げーよ!」
「ハハ、そうか。正直どうすればいいか検討ついてないから当分ここを去るのは先になるだろうけどな」
だが寂しいという感情とは対照的にフェリシアは二人が元の場所に戻る方法を探してやりたいと考えていた。
家族を失ったフェリシアだからこそその大切さが分かっていたし、アビゲイルはそこでなければ救われないと考えたからだ。
「アビーは元の場所に戻らねー限りずっと苦しんだままだ。だから今は帰れなくても方法だけでも見つけてやりたい」
「こいつを苦しめる罪悪感は消したんじゃないのか?」
「あのときは魔力も込められなかったからあんま魔法を強くかけられなかった。だからそのうち罪悪感を思い出しちまう。でももう一度忘れさせてやるべきなのかな?」
「ん?」
「アビーが自分の罪で苦しんでるならずっと思い出せねーようにしてやるべきなのかな?」
「お前はどう思ってるんだ?」
「…あいつが本当に何かしたなら、忘れちまったとしてもいつかそいつと向き合わなくちゃいけねー。そんな気がするんだ」
「でもなんかそれはオレの勝手みてーで…どうすりゃいいのか分かんねーんだよ…」
たとえ逃げたとしても自分のやったことに向き合わなければならないときがいつか来る。
だが苦しみを取り除けるのにそれをしないのは間違ったことではないのだろうか。
そんな迷いがフェリシアの中にあった。
「それは私じゃなく本人に聞くべきなんじゃないか?本当に忘れたいって思うんならきれいさっぱり忘れさせてやれ。でも向き合うことを選んだならオマエが支えてやればいい。元の場所に戻るまで」
「…ありがとな。オレ何すりゃいいのか分かった。それで、頼みてーことがあんだけど…」
夜も更けた広場。本来静かで穏やかな空間であるはずのその場所では一人の少年と男が杖と剣を激しくぶつけ会いながら互いに一歩も譲らない戦いを繰り広げていた。
「ハァッ!」
「…!」
杖で剣を受け止めワルドは後ずさる。
「少しはやるようだな。さすがガンダルーヴを騙るだけはある」
「そりゃどうも。お前のほうこそやっぱり衰えてちゃいないみたいだな」
「知った風な口をきくな。それに貴様のことを認めたわけではない。貴様ではやつには…本物のカンダールヴには到底は及ばない」
「…そうかもな」
何も気にならなかったわけではないのか、才人は少し目を細める。
「だが俺が奴に通用するかどうか、それを確かめる腕試しぐらいになりそうだ」
ワルドが浅く呼吸をする。
「相棒、次全力で来るぜ」
剣のデルフリンガーが警告する。
「じゃあこっちもそれに応えてやる」
お互いに神経を研ぎ澄まし静かな集中へと入る。
一切動きのない、それでいて近づきがたい空気が二人を包む。
「あらあら今日はどうしても水を差してしまう日のようです」
「っ!誰だ!?」
才人はワルドの背後に現れた謎の人影に気づく。
「貴様か、ドクロ」
「これはこれはワルド様いつもお世話になっております」
そこにいたのは先ほどまでフェリシア達と対峙していた魔法少女ベラだった。
「対象の捕縛に失敗しました。騒ぎになると厄介ですし、ここは一時撤退してくださいませ」
「すぐにこいつと決着をつける。邪魔するなら貴様とて容赦はせんぞ」
「正直、私はあなたがどうなろうと構わないのですが…あなたはこの世界で活動できているのは我々の支援によるものだということをお忘れなきをお願いします」
「俺を脅しているつもりか?」
ワルドがベラを睨む。
「いえいえ滅相ありません!ただ私はこのことを上に報告せざるを得ません。そうすると場合によってあなたへの支援も打ち切りということになりかねません。あなたの目的は我々が
「誰が猿だコラ」
「失礼、思ったことをそのまま言ってしまう性分でして」
「もっと酷えじゃねぇか。謝る気ねえだろ」
「…ふん、いいだろう。そのペラペラと回る口に免じて今日のところは貴様の口車に乗ってやる」
「ご了承いただきありがとうございます。ではまいりましょう」
「待て!お前らには聞きたいことが…!」
「あなたがどなたが存じませんがもしかして魔理沙さん達のお仲間ですか?」
「何?」
「もしそうなら彼女たちのもとへと行ったほうがよろしいのでは?随分と消耗されていらっしゃるようですし」
「っ!魔理沙達に何しやがった!?」
「いえいえとんでもない。私は事実を申しただけ。私は特に関わっては…あ、一応魔理沙さんとは戦っていました。がっつり関わってましたわ」
「てめぇ…!」
人をなめたような態度に才人の怒りがふつふつとわいてくる。
「ともかく急いで行った方がよろしいのでは?彼女たちも誰かの助けが欲しいところでしょうし、私たちに構っている暇はないのでは?」
「…くそっ!」
あたかも魔理沙たちに危険が迫っているような物言いだがベラが離れた以上すでに差し迫った状況ではない。
しかし現状を知らない才人は不安をぬぐい切れない。
「それでは今度こそまいりましょうワルド様」
「貴様ことを覚えておくぞ。もう一人のガンダールヴ。次こそは決着をつけてやる」
とたんにあたりに暴風が吹き荒れる。思わず才人が身をかがめるとその一瞬でワルドたちはいなくなり暴風は止んだ。
「…逃げられたか」
ワルド達が去ったあと周りを見渡していると新たに青い髪の女が現れる。
「…あなたが才人よね?」
「そういうあんたは?」
才人は警戒の色が混じった声で尋ねる。
「私は七海やちよ。魔理沙に頼まれて援護に来たの」
「なんだ魔理沙の仲間か。もしかしたらまた敵が来たかと思ったぜ…」
仲間、という部分に反応してやちよの顔が少し怪訝なものになる。
「ん?なんか変なこと言ったか?」
「いえ、何でもないわ。あなた怪我はない?」
「ああ、特に異常なしってやつだ。そうだ!それより魔理沙達は!?無事か!?」
先ほどベラに言われたことを思い出し、慌てて魔理沙達の安否を確認する。
「大丈夫。大分消耗しているけどみんなもう安全よ」
「…良かった」
才人はほっと胸をなでおろす。
「にしてもあいつ脅かしやがって…」
才人は悔しそうに顔をしかめる。
「もしかしてドクロの魔法少女にあったの?」
「あぁ。あいつらに聞きたいことがあったんだが魔理沙達が危ないっていうから追えなかったんだ」
「そう…口が上手いのね。あなたはこれからどうするの?良ければ魔理沙達を運ぶのを手伝って欲しいのだけれど。聞きたいこともあるし」
「…そっか。魔法少女じゃないやつが戦えるのはお前らからしたらおかしいんだよな。でもそういうことは魔理沙に全部聞いてくれ。あいつらには悪いが俺はさっきの奴らを追ってみたい」
「…分かったわ。まだどんな事情があるのか分からないけど無茶はしないでね。まだ高校生でしょ」
すると才人がおかしそうに笑う。
「久しぶりだ!高校生扱いされたの!」
「…変なことで笑うのね」
「いや本当に久しぶりだったからさ、そういうの…。とにかく気を付けるよ」
「あなたも色々苦労してるのね。それじゃあ、縁があったらまた会いましょう」
そう言い残すとやちよは魔理沙達の元へと戻っていった。
「そんじゃこっちも探してみるとするか」
「…そうだな」
黙っていたデルフがしゃべりだす。
「珍しいなお前があんなに黙ってるなんて。何かあったのか」
「いや、さっきのワルドの奴のやつが言ってたことが気になってよ。本当に相棒たちのやったことはなかったことになってんだなって思っちまったんだよ」
「そうだな…やっぱ少し寂しいのか?お前も?」
「俺はいいさ。何百年も主人がいないときもあったんだからな。だがよぉ、その主人が
「いいよ別に。それにワルド言うことだって何も間違ってねぇ。今のカンダールヴはあいつなんだから」
「主人放って、一人旅するようなやつなんかガンダールヴの風上にもおけねぇさ。ルイズを守ってやれるのはサイト、おめぇだけだ」
デルフのその言葉に、才人は何も返さなかった。
コンコンコン
叩いた家の扉が開く。扉から出てきたのは魔理沙の顔だ。
「やちよ!よく来たな!」
「あなた達の方こそよく戻れたわね…飛んできたの?」
「いやガス欠だっただからあれは使えなかったぜ。けど回復した魔力全部使ってあいつの足をもう少しだけ使えるようにした」
「グリーフシードは要らないのよね。正直すごくうらやましいわ」
魔理沙にソウルジェムがないことをやちよは知っていた。
「グリーフシードで回復もできないけどな」
「足を直したって言ったけどそれ大丈夫なの?そんな繊細なことできるイメージないけど…」
「失礼だな。少なくとも痛みは感じてない」
「まぁいいわ。それよりこれ」
やちよは手に持った袋を魔理沙に渡す。
「おっどれどれ…まぁお前が買ってきたなら間違いないか」
「随分と適当なのね」
「何せ作ったことないからな。この紙箱に入ってる奴なんかどう扱うのかさっぱりだぜ」
一瞬やちよは不審なものを見るようなめで魔理沙を見つめるがすぐに元の表情に戻る。
「悪いな、面倒なことに巻き込んだ挙句買い物まで頼んで。そういや才人はどうだった?」
「あなたの言う通り何事もなかったわ。随分と信用してるのね」
「私はあいつの大丈夫って言葉を信じただけだ」
「それはそれで信頼してるってことじゃない?」
「そうか?それよりフェリシアの言ってた魔法少女はいたか?」
「ここに来る途中、あのあたりを見回ってみたけどそれらしき子は見かけなかったわ。無事だといいのだけれど…」
「おい!材料来たんだよな!早く作るぞ!」
いきなり現れたフェリシアは魔理沙に渡された袋を奪うように持って行ってしまった。
「そんな焦んなくてもいいのに…突っ走って何かやらかさないだろうな?」
魔理沙は呆れたような声を出す。
「良ければ私も手伝いましょうか?」
「いいのか?」
「あの子のために作るんでしょう?小さい子に変なものは食べさせられないし、力になれると思うわ」
「じゃあ頼むぜ。私は部屋にいるから終わったら言ってくれ」
「あなたは手伝わないの?」
「疲れた。少し寝る。魔力もすっからかんだしな」
「大丈夫なの?あなたの体の仕組みは分からないけど簡単に魔力がなくなるようなこと前はなかったじゃない」
「今日は色々予想外の事態が起こったからそれで疲れてるんだ。約束の話はまた今度にしてくれ。ってわけで後は頼んだぜ」
そういって魔理沙は自室へと入っていった。
「さてと、やりましょうか」
魔理沙を見送りやちよは台所へと向かった。
「ここは…?」
アビゲイルが目を覚ますとそこはベッドの上だった。
「アビー!起きたのか!?」
様子を見に来たフェリシアが部屋に入ってくる。
「フェリシア…?」
その顔を見てアビゲイルは自分のやったことを思い出す。
「ごめんなさいフェリシア…!私あなたを傷つけて…!」
「へへ、気にすんなよ。あれは変な奴におかしくさせられただけなんだろ?だからオマエのせいじゃねーって」
「…」
アビゲイルは目をそらす。
ふとフェリシアはあの暴走は完全にアビゲイルの意思を離れたものではなかったのではないのかと思った。
あのときのやったことや言ったことはどこかにアビゲイル自身の意思が混ざっていたのではないのだろうか。
(…そんなわけねーよな)
フェリシアはあえてその部分には触れないことにした。
「それより体は大丈夫か?いてーとこないか?」
「うん…大丈夫…」
アビゲイルの声にいつもの明るさはない。
「その、苦しくはねーか?」
「ううん全然…やっぱりあのときあなたは私の罪悪感を忘れさせたのね」
「あぁ。でもそんなに強くかけたわけじゃねーから多分そのうち思い出しちまうぞ」
「そう…」
興味がなさそうな声で言葉を返す。
「…オマエはどうしたい?」
「え?」
「オマエが思い出したくねーなら、ずっと忘れさせてやることもできるんだぞ!…もう苦しまなくてもいいんだぞ」
「…そうね、それならあなたの言う通り私は苦しみから解放されるのでしょう。でも私が苦しみを忘れてしまったら私が不幸にしてしまった人達は永遠に浮かばれないわ。だから償いを終えるまで私はこの苦しみから解放されるわけにはいかないの」
「…やっぱりオマエは逃げないんだな。何をやったのか知らねーけどさ、そうやって自分のやったことと向き合うオマエは強えーよ。でも一人で抱えて無理すんな。力になれることがあったら何でも言えよ!」
その言葉にアビゲイルは頷いた。
「そうだ!ちょっと待ってろ!」
ドタドタとフェリシアは台所へと向かう。すると何かが乗った皿を持って帰って来た。
「これ…パンケーキ?」
「おう!さっき作ったんだんだぞ!」
「どうして…?」
「オマエにかけた魔法が解けたら美味いもんも本当に美味いって思えねーだろ。だからさ、せめて今だけでも好きなもの食えればなって。デコボコだけど味は大丈夫なはずだぞ」
ベッドに座ったまま皿に添えられたフォークとナイフを使い、切ったパンケーキを口に運ぶ。
砂糖の味が強く、少し硬い。一口で初めて作ったのだと分かる出来だ。
だが食べるたびに胸が暖かくなり、優しい何かに包み込まれるようだった。
食べ進めるうちにアビゲイルは涙を流し始める。
「お、おいそんなに不味かったのか…?」
「違うの…!すごくあったかくて…!とても美味しいの…!」
涙を流しながらゆっくりとパンケーキを食べていく。
「ありがとうフェリシア。今まで食べたパンケーキで一番美味しかった」
「本当か!?へへ、オレの自信作だったんだぜ!」
「…一つお願いをしてもいいかしら」
「なんだ?」
「いつか私が罪を償って…全てが終わったら、もう一度このパンケーキを作ってくださらない?」
「…もちろんいいぞ!何度だって作ってやる!」
そう宣言をすると突如フェリシアはベッドに突っ伏した。
慌ててアビゲイルが近づく。どうにも疲れて眠ってしまったようだった。
「話しながら眠ってしまうなんて。私のせいでとても疲れてしまったのね」
アビゲイルは毛布をそっとかけ、穏やかな寝顔を見つめる。
「優しいあなたにいつか救いが訪れますように」
眠りについたフェリシアの横で静かに祈りを捧げた。
翌朝フェリシアが目を覚ますとすでに日は高くなっていた。
体を起こし、伸びをする。ベッドを見るとそこにいたはずのアビゲイルの姿がない。
ベッドの上に一通の手紙があった。
慣れていないであろう日本語で書かれた手紙を読むとそこには謝罪の言葉と感謝の言葉が書かれていた。
そして最後にまた会えることを楽しみにしていると一言添えられていた。
これでこのアビゲイルパートは終わりになります。
一か月ぐらいで終わらせるつもりだったのに全部投稿するのに一年かかっちゃいました。
次投稿するのがいつになるか分かりませんが、今後見て頂ける方はよろしくお願いいたします。
追記
魔理沙が魔法少女はいない発言しましたけど一応幻想郷に魔法少女いましたね…
ものの例えってことでよろしくお願いします。