クロスレコード   作:253

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6話 その少女をめぐって

「おーい魔理沙。いるかー?」

帰るなりフェリシアが呼びかける。

すると魔女のような帽子をかぶり本を持った魔理沙が玄関までやって来た。

「お前まだ本読んでたのか?」

「まあな。それよりそいつは?」

魔理沙が隣にいたアビゲイルに目を向ける。

「こいつはアビー。ちょっと色々あってそこで知り合ったんだ」

「初めまして。私アビゲイル·ウィリアムズ。よろしくお願いします魔理沙さん」

礼儀正しく、けれど子供らしくアビゲイルが挨拶をする。

すると魔理沙が帽子のてっぺんをなでた。

(なんだ?)

フェリシアが魔理沙に念話を送る。魔理沙は念話ができないらしいので帽子をなでたときフェリシアが念話を始めることになっていた。

(魔法少女か?)

(いや違うじゃねーの?指輪もしてねーし、ただのおっちゃんに捕まりそうになってたし)

(なら魔法については黙っとくか)

「アビゲイルか。よろしくな。で、うちに何かようか?」

「あぁ、こいつ何か変な奴らに追っかけられてて困ってるらしいんだよ。だからどうにかしてやろうって」

「ここに連れて来たってわけか。ま、とりあえずあがりな」

家に上がりまず見えるのは廊下に広がる散乱物の数々。流石にこれにはアビゲイルも目を丸くした。

「…悪いな。どうにもこういうのは苦手で」

「い、いえ大丈夫よ。気にしてない、気にしてないから…」

「やっぱ片づけた方がいんじゃねーか?」

「お前の部屋も大概だし、なんならお前がやればいいんだぜ」

「えぇ…オレだってやだよ…」

この二人、どうやら片付けるということを知らないらしい。

足を器用に使いながら3人は未だ足場の見えないリビングまであがる。イスはまだ客用を買ってないため2つしかない。

「イスはお前らが座れ。少し歩き疲れたろ」

「私は大丈夫よ。だから魔理沙さんが…」

「お前遠くから来たんだろ。なら少しでも体を休めた方がいい」

「…ありがとう。フェリシアと一緒で優しいのね」

「いやぁ、さっきまで本を読んでいたからな。単に座り疲れてただけさ。さて、もう少し詳しく話を聞かせてもらおうか」

といってもアビゲイルが話した内容はフェリシアに話した内容と相違ないもので全部話すのに5分もかからなかった。

「じゃあお前は追われる理由に全く心当たりがないって訳だ」

「えぇ…いえあることにはあるのだけど…」

「話したくない?」

アビゲイルは黙ってうなずく。

「分かった。なら言わなくていい」

「ごめんなさい…助けていただくのに…」

「別にいいさ。ちなみに追いかけてくるやつの素性とかどんな手段を使って追ってくるとかの心当たりは?」

「それも…」

やはりいい思い出がないのか追手について語るアビゲイルは少し暗い。

「いまいち手掛かりが掴めないな…。さっきおまえを追ってたってやつは?」

「そいつなら多分もう捕まっていると思うぞ。さっき警察につうほーしといたからな」

フェリシアはアビゲイルを連れて行ったあと魔理沙に買ってもらった携帯でとりあえず通報だけしておいた。本来その場に戻るべきだったのだがアビゲイルの要望でそのまま戻ることはしなかった。

「あーそれでいい。今後も警察にいうときはそんな感じで頼む。関わると少し面倒なことになりかねない」

「ん?いいぞ」

ちょっとした引っかかりを覚えながらもフェリシアは了承する。

「でもそいつからもう話を聞けそうにないな…」

「あの…魔理沙さんは何をやっている方なのかしら?」

「ん?」

「いえ、扉にかけてあった魔法少女店って言うのがよく分からなくて、つい何のお店なのかなって思ってしまって」

「あー、あれは気にしなくていい。うちは大抵のことは何でもやる店だと思えばいいぜ」

あえて魔法少女専門のという部分を省く。大抵の魔法少女は自分の正体を無関係な人々に隠している。なので世間的にその存在が認知されているわけではない。

「だからお前のこともできる限り協力してやるさ」

「…ありがとう。本当に。でもやっぱりあまり長くここにはいられそうにないわ」

「なんだ?危険だからってことか?別にそこいらの奴らなら私達の相手には…」

「そうじゃないの。私を追いかけてくる人には時々魔法みたいな力を使う人達がいるの。もしそういう人が来たらきっと魔理沙さんたちでも危ないわ」

魔法という言葉に魔理沙とフェリシアが顔を見合わせる。

「おい!そいつらもしかして魔法少女じゃねーか!?」

「魔法少女…?」

「えっと…、オレ達と同じぐれーの女じゃねーかってことだ!」

フェリシアはこの質問に絶対yesが返ってくるものと思っていた。当然だが魔法少女は少女しかなれないものだからだ。

「いえ、多分違うわ」

「えっ」

「魔法少女っていうのが何なのか分からないけど私が見た限りでは男の方もいらっしゃったわ」

思わぬ答えフェリシアは面食らう。

「じゃあそいつらは何なんだよ!?」

「何って…私もよく知らないわ」

魔法少女じゃないとするならあと魔法を使えるのは魔女位だがアビゲイルの話を聞く限りどうやら相手は人間らしい。

どうなってるんだと頭に疑問符を浮かべるフェリシアに対し、魔理沙は目を細めまるで何かを察したような目をしていた。

「なぁ、アビゲイル。お前今が何年か言えるか?」

何故か年数を聞く魔理沙にアビゲイルは顔を険しくする。

その表情は意図の分からない質問に対する顔というよりかは、何か図星をつかれたようなものだった。

「それはどういう意味なの…?」

「…なるほどな」

「な、なぁどういうことだ。話がさっぱりわかねぇんだけど…」

あまりに突拍子のない会話にフェリシアは困惑する。

「さてアビー、私はお前さんからもうちょい話が聞きたくなった。帰る場所もないんだろ?しばらくうちに泊まれ」

「でも…」

「何、魔法なら私達にも使える」

「っ!やっぱり…!」

途端にアビゲイルの目つきがこちらを警戒するものへと変わる。

「おっと別に()()()()の仲間って訳じゃないぜ。私があいつらだったらお前をとっと捕まえてるんじゃないか?それにこんなこともわざわざ話さないだろう?」

魔理沙がそう言うとアビゲイルが押し黙る。

「おい、魔法のこと言っちまっていいのかよ」

「問題ないだろ。大体魔法使うやつを相手するならこっちも魔法使わなきゃならんし、知ってるやつにわざわざ隠す必要ないぜ」

「っていうかさっきからお前ら何の話してるんだ?なんかオレだけ置いてけぼりにされてる気がすんだけど…」

「まぁその内分かるように話してやるさ。でアビゲイル、どうする?」

「…泊めていただくことにするわ。あなた達が悪い人だとは思えないし」

「よし、決まりだな。フェリシア、お前の部屋に泊めてやれ」

「なんかまだよく分かんねーけど…いいぜ!よろしくな!」

「改めてよろしくね。フェリシア」

かくしてアビゲイルはしばらくこの魔法少女店で過ごすこととなった。

 

「おお…!」

感嘆とするフェリシアの前に広がるのは散乱物が整理され、すっかりきれいになったリビングだった。

リビングだけではない。今やこの家の中は魔理沙の部屋以外はきれいになっていた。

「どうかしら。とりあえず何かできることはないかと思って掃除をしてみたのだけれど」

「すげーよ!あんなに散らかってた部屋がこんなにきれーになるなんてさ!ここで寝るの初めてだ!」

フェリシアは今まで散らかっていたせいで見えなかった床に寝転がる。

「ふふ、喜んでくれたみたいで良かったわ」

「へぇ、随分ときれいになったみたいだな」

外に出ていた魔理沙が帰ってきた。

「えぇ、これからお世話になるしからこれ位はしないとって思って」

「別に気にしなくてもいいぜ。っていっても私もあいつも片付けが苦手みたいだからなぁ…結構助かるぜ」

するとアビゲイルは魔理沙の両腕に大きな袋がかけてあるのに気がつく。

「あの、ひょっとしてそれは今日の食材なのかしら?随分と大きいけど…?」

「ああ、さっきそこまで行って買ってきたんだ。食材も切れてたし多めになったんだぜ」

「ちょっとごめんなさい」

そう言ってアビゲイルは魔理沙の手にかけてある袋を覗き込む。袋の中には多くの食材が入っており色んなレパートリーの料理が作れそうだった。

「よければ夕食は私に作らせてもらえないかしら?多分悪いものは作らないと思うのだけど…」

「別に無理して作らなくていいぜ。あんだけ片付けたあとじゃ疲れてるだろ」

「いえ、実はしばらく料理はしてなかったからどこかでしておかないと下手になってしまいそうで…不安をなくすためにも今何か作っておきたいの」

「そうか。じゃあ頼む」

こうしてアビゲイルが料理を作ることになった。

そしてその晩、出てきたのはご飯、味噌汁、焼魚、かぼちゃの煮物などアビゲイルの洋風の容姿に反した和風の質素な料理だった。

「意外だな…もっと油っこいのが出てくるのかと思った」

「その方が良かったかしら?」

「いや私はこっちの方が馴染みがあるし構わないぜ」

「なぁ…肉ねーのか?」

「買ってくるとお前が使えってうるさいから買って来なかったんだよ。今日は肉の日でもないしな」

「はぁ!?お前が肉全然出さねーのが悪いんだろ!?」

「週2で出してるしどうせ今日も食べて来たんだろ?我慢しろ」

「嫌だ!肉食いてー!」

「買っても買って来なくても同じか…」

二人が言い合いをしているのを見てアビゲイルは少し困り気味の笑顔を浮かべていた。

「あぁ、悪かったな。いつものことだ。あまり気にしないでくれ」

「いえ大丈夫!ちょっとどうしたらいいか分からなかっただけだから。でもお二人は本当に仲がいいのね」

「そうか?」

「じゃなきゃそんな風に言い合いできないもの」

「そうゆうもんかね…よしフェリシア、せっかくアビーが作ったんだ。早く食べるぞ」

「うぅ…」

流石にこれ以上何か言う気になれなかったのかフェリシア大人しく食べ始めることにした。まずは魚から手を付ける。

「うめー!魔理沙のと全然ちげー!」

「そいつはどういう意味だ?でもまぁ確かにこいつは美味いな…」

「ふふっ、お口にあったみたいでうれしいわ」

「しっかしどこで作り方覚えたんだ?まさかずいぶん長いことここにいるのか?」

「いえ、前までよくお料理を作らせていただいてね、少しでも美味しいものを食べてもらおうとしていろんな本を読んだりしてたら作れるようになったの」

「ん?こっちに来てから誰か一緒に暮らしたやつがいるのか?」

アビゲイルの口振りに違和感を持った魔理沙が尋ねる。

「そうよ。ずっと私を守ってくれた人。その人のためにちょっと頑張っちゃって」

「そういやさっきも言ってたけどよー。そいつは魔法少女なのか?」

興味を持ったフェリシアが会話に入り混んでくる。

「違うと思うわ。えっと魔法少女というのがまだ何か良くわかっていないのだけれど、私たちと同じ年ごろの女の子って言ってたわよね…?だったら多分違うと思うわ」

「あ?そいつ魔法とか使わねーのか?」

「魔法かどうか分からないけど、不思議な力を持っててとっても強いのよ」

少し自慢げにアビゲイルが語る。

「でもよーそいつは何なんだ?魔法少女以外に魔法が使えるやつなんていんのか?魔理沙、オマエ何か知ってんだろ?」

「なんでそう思うんだ?」

「さっきよく分かんねーこと喋ってたじゃねーか。絶対オレの知らねーこと何か知ってんだろ?」

「さぁ、どうだろうな?」

「喋るつもりねーのかよ。あっそうだオマエ何でソウルジェムがいらねーんだ?」

公園でかこと話しているときに出た疑問を訪ねてみる。

「なんでだろうな?」

「おい、答えになってねーぞ。それも喋りたくねーのかよ」

「それより食べ終わったならとっとと風呂入って来な。そしたら冷蔵庫にあるアイス食べていいぜ」

「マジ!?よっしゃ!」

フェリシアはすぐさま風呂場に直行した。

「あいつ風呂苦手なくせに…思ったより効果てきめんだな。次から面倒なことがありゃこれでいこう。…あれ?そういえばアイスなんてあったけ?」

「さっき買い物袋をみたときそれらしきものは見当たらなかったけれど…」

魔理沙が冷蔵庫を開ける。

「ハハハ!まぁいいや!後で適当にごまかそう!…ところでお前がいたところにはこんな便利な箱あったのか」

冷蔵庫に手をかけながら魔理沙は尋ねる。

「いいえ、私のいたところはここほど豊かな場所ではなかったから。初めて見たときはびっくりしたわ」

「私もだ。こんな便利なもの少なくとも里の人間はもってなかったぜ。一体どんな仕組みで動いてんのかねぇ」

「…やっぱりあなたもそうなのね」

「多分お前のいたところとは別のところから来たと思うけどな」

「そう…フェリシアは私達がどこから来たのか知らないの?」

「そうだぜ。お前かなりやっかいな事情を抱えてるんだろ?こっちも中々やっかいな事情を抱えていてな、下手に話して巻き込んでいいのかって思ってな」

「フェリシアが心配なの?」

「本当は面倒見てくれるやつをさっさと見つけてここから出ていくつもりだったんだが…そうはいかなくなったみたいだ」

「ひょっとして私のせい?」

申し訳なさそうな目をしてアビゲイルが尋ねる。

「別に気にすることはないぜ。()()()()が来た時点でこの街の魔法少女はいずれ巻き込まれることになる。どっちにしろ関わる運命だったわけだ。それに私にとってはお前は僥倖なんだぜ」

「僥倖…?」

「お前を追いかけている奴らは私がずっと探してた奴らだ。そいつらを利用して()()()…私の故郷に帰る。だからそのためにお前のこともせいぜい利用させてもらうぜ。」

だから謝ることなんてない、魔理沙がそう言っているようにアビゲイルには感じられた。

 

 

 

 

「じゃあお邪魔させていただくわ。フェリシア」

「おう!好きにしていーぞ!」

あれからフェリシアとアビゲイルは風呂に入った後、二人はフェリシアの部屋まで来た。魔理沙が言った通りアビゲイルはフェリシアの部屋で寝泊まりすることになった。ちなみにフェリシアの部屋もアビゲイルが掃除したので入るのは初めてではない。

フェリシアが寝ているベッドとは別に布団が敷かれている。フェリシアはそこに寝ることになっている。

「誰かと一緒に寝るの久しぶり。ふふ、少し楽しみだわ」

「オレも誰かと眠るのも久々だな」

カーテンを閉めようとフェリシアが窓に近づく。すると点々と夜空に星が浮かんでいるのが見えた。

「おっ、来てみろよ。今日は星が見えるぞ」

「あら、本当。星をみるのも久しぶりだわ」

二人はお互い顔見合せながら話し出す。アビゲイルがフェリシアを見るとフェリシアは牛のぬいぐるみを抱いていた。

「それは?」

「これか?これはさ、父ちゃんと母ちゃんからもらったんだ」

「そういえばフェリシアのご両親はどうなさってるの?」

「お前と同じだよ」

「…っ!ごめんなさい…」

「気にすんなよ。オレもさっき聞いたしな。じゃあ次はオレが聞くんだけどさ、魔理沙のやつ何隠してんだ?おまえも何か知ってんだろ?」

「それは…魔理沙さんから聞いた方がいいんじゃないかしら」

「魔理沙の奴は何も教えてくれなさそうなさそーだしよー、オマエに聞くしかねーんだよ。いいだろ?」

「私が話すのはいいけど、魔理沙さんも色々考えあって言わないでいるみたいだし…」

「あいつが話すのを待てってことか?」

「えぇ、きっといつか話してくれるはずよ」

「そーか?ま、いっか。よく考えたら話したくねーことまで聞く必要ねーしな。あいつから話してくれるのを待つか」

「それがいいと思うわ」

「じゃあさ、じゃあさ、オマエのいたところどんなとこだったか聞かせてくれよ!外国から来たんだろ!?」

日本から出たことのないフェリシアにとって、外国の話はとても興味をそそられるものだった。

「私がいたところ…。そうね…名前はセイレムっていうところでね、大きな港、広いライ麦畑、神様を祀る教会…他にもいろんなものがあるところだったわ」

「へー神浜よりでかいのか?」

「ううん、そこまでじゃないわ。でもあの場所は私が生まれ育った大切な故郷なの」

「だから帰りたいのか?」

「…それもあるけど、あの場所には私にとって大切な人達がいるの。私を育ててくれたカーター伯父様、大好きな親友のラヴィニア、きっと私が帰ってこないのを心配しているわ。それに私にはまだあそこでやらなきゃいけないこともある。だから絶対に帰らなきゃいけないの」

その大切な人たちはアビゲイルがここに来てるのを知らないのか、とフェリシアは聞こうとしたが辞めた。故郷のことを語るアビゲイルの顔が段々と寂しげなものになっていくように感じたからだ。

「なぁ、どうにかそのセイレムってところに帰れねーのか?」

「…詳しくは話せないけど今はまだ帰れないわ。帰れるとしても私は()()()が来るまで待たなくちゃいけないの」

「あの人?」

「この場所に来てから私を守ってくれた人。私を元の場所に帰してくれるって約束してくれたの。今はいないけどいつかきっとここに戻って来てくれるわ。そのときに私がいなかったら困ってしまうでしょう?」

先程とはうって代わってあの人と呼ばれる人物の話をするアビゲイルは少し明るい顔をしていた。

「そのあの人ってのはどんな奴なんだ?お前の故郷の奴じゃないんだろ?」

「優しい人よ。私は初めてここに来たとき右も左も分からなくて…初めて来たセイレムの外がすごく怖くて…どうしたらいいのか分からなくなってたの」

「でもそんな私をあの人は救ってくれた。追いかけてくる人から守ってくれた。他にもいろんなことをしてくれたわ。日本語だってあの人から教わったのよ」

アビゲイルは外国から来た割には日本語がすごく流暢だ。そのことにフェリシアは今更気がついた。

「料理もね、私が最初に作ったのはあまり良いといえるものではなかったの。けれど私が心をこめて自分のために作ってくれた料理が一番美味しいって喜んで食べてくれたのよ。その言葉があったから私は頑張って料理を作れたの」

「いいやつなんだな。そいつ」

「えぇ、そして私の大切なかけがえのないお友達よ。だから私は待たなくちゃいけないの。あの人が帰ってくるまで」

「…じゃあさ、オレがお前を守ってやるよ」

「え?」

「お前そいつと会いたいんだろ?だったら追っかけてくる奴らに捕まるわけにはいかないよな。そんなやつらオレがぶっ飛ばしてやるよ!」

両親を失っているということもあるのだろう。その痛みがよく分かっていたフェリシアはアビゲイルの話を聞いているうちにアビゲイルにもう悲しんで欲しくないと思うようになっていた。そしてそのためにアビゲイルを守ってやりたいと思ったのだ。

「…私は大丈夫よ。無理してそんなこと言わなくていいわ」

「無理なんてしてねーって。オレが守りてーと思ったからお前を守るんだ」

そのときアビゲイルの表情が少し動く。

「ふふっ、今ちょっとドキッとしちゃった」

「ん?なんでだ?」

「だって今のフェリシア、ちょっとカッコよかったもの」

「そーなのか!へへ!」

褒められたフェリシアは嬉しそうに笑う。

「…ありがとね。そういってもらえて私とっても嬉しいわ」

「別に大したこと言ってねーよ」

「でもね、もしフェリシアが私のこと嫌になったならそのときは私から離れていいから」

「さっきも言ったろ。お前を嫌になるやつなんていないって。だからさ、どんなことがあってもオレの側いていていいからな」

「ありがとう。本当に…」

心から感謝しながら、アビゲイルは静かな微笑みを浮かべた。

 

 

 

神浜の誰も寄りつかないような廃ビル。その暗がりに一人の男がいた。

「…またしくじったのか。やはり魔法も使えないもの達に任せるべきではないな」

男は一枚の写真を捨てる。それは昼間フェリシアが殴り倒した男の写真だった。そしてもう一枚の写真を取り出す。

「しかしここまで精巧な絵を作り異様なからくりを作る人間達がどんなものかと思えば…なんら平民と変わりないではないか。所詮()()()には遠く及ばない」

もう一枚の写真、そこに写っていたのはアビゲイルだった。

「しかしこの小娘は何者なんだ…?一体何故奴らはここまで追いかける…?」

男が写真を訝しげに見ていると、コツ、コツ、コツと段々誰かが近づいてくる音がした。

「アレ、まだウィッチガールは来てないワケ?もしかしてまたしくじった?」

そこに現れたのは黄緑の髪をし、シャツにチェックのスカートを履いた少女だった。

「そのようだ」

「ふーん、またスティールボールにやられたってワケ?」

「さぁな。誘拐のプロというから任せてみたがとんだ似非だったということだろう。だがおかげで小娘がこの街にいるのがほぼ確かになった。それだけでもよしとしよう」

「もっとマシなのハイアーしたほうがいいんじゃない?こっちも早くクリエイトをスタートさせたいんデスケド」

「お前は一体彼女を捕まえてどうするつもりなんだ?」

「ウィッチガールがサモンするアートを見せてもらうダケ。そっちに渡しても会わせてもらえるって約束だヨネ。それだけでこっちはOKだカラ」

アートとは何のことか引っかかったが気にしないふりをして話を続ける。

「…では奴の方は?」

そう男が聞くと少女はどす黒く邪悪な笑みを浮かべる。

「…首が欲しいんだヨネ。スティールボールが死んだときにどんな表情をするのか、それを見てみたい。スティールボールなら絶対新しいインスピレーションを与えてくれる!そしてアリナのアートは新たなステージへと進化するってワケ!」

男は思った。こいつは何を言っているんだ、と。

この絵描きらしい魔法少女――――アリナ・グレイは男がアビゲイルを探す途中で出会った。少女もアビゲイルを探しているらしく男は条件付きで手を組むことになったのだが…

(この女…やはり狂っている…)

「ん?どうしたの?そんな面倒くさそうな顔しちゃって?」

「いや…何でもない。貴様と付き合っていくのはいろいろ苦労しそうだと思っただけだ」

「ワッツ?意味分かんないですケド?」

「失言だった。気にするな」

「…まっいっか。それで、ウィッチガールはどうするワケ?」

「まだ遠くには行ってないらしい。明日は俺が直接探してみる」

「遠くにいってないって何の根拠があってそんなこといえるワケ?」

「どうでもいいだろう。ともかく次は俺が直接出る」

「へー。一緒に行く?」

「いや俺一人でいい。見つけたら連絡しよう」

「そ。あぁスティールボールは見つけても手は出さないでね。死んでいくときどんな顔するのか見れなくなるカラ。まぁあなたがウィン出来るとは思えないケド」

そう言い残すとアリナはその場を去った。

「…悪いな。貴様のその望みは叶えられそうにない」

連絡するというのは男の嘘だった。男にはどうしてもアリナ抜きで果たさなければならないことがあったからだ。

「とうとう巡り合うときが来たか…?もしここにいるのなら…ガンダールヴ、今度こそ貴様とケリをつけてやる!」

静寂の夜、ビルを吹き抜ける風の中、男はかつての敵と決着を誓った。

 




アリナ先輩口調といいキャラクターといいやっぱ色々難しいですね…。正直書くのに一番苦労するかも。
追記
クレイジーボール→スティールボールに変更させていただきました。
その他文章をいろいろ修正しました。
冒頭から~目をむけるの文章が消えているのを確認しましたすいませんでした。(5月7日修正)

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