(仮題)とある転生者の異文化体験   作:ピッピの助

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たくさんの感想ありがとうございます。全て拝見させていただいています。また、感想に個別にお答えできずに申し訳ありません。とにかく熱が冷めないうちに早く書かないとエタると思ってるので、走ることに力を注いでます。

世界観はその分野に所属する男女比をざっくり考えて構成してます。〇〇の業界って男ばかり見るよね→女性はその職業にあまり憧れてない→そこの進歩が遅れるってな感じです。ただ、大元の職業男女比をフィーリングで決めてるので、違和感はあるかもです。そこはフワッと書いてる部分になります。申し訳ない。
ガワはマッチョ巨漢です。MMDDFF版です。もう、懐かしいってレベルですよね。
「これはもしや、ウルトラマンもゴジラも無ければ頭文字Dやドラゴンボールも無い、ましてやゼルダの伝説やカービィなんかマリオが爆発的ヒットおよび続編作られてない(そもそも任天堂が虫の息?)ので存在してない。」 にっこり
ゲームは難しいです。流行る作品は女性が好む作品ですけど、それが男性でも楽しめる作品かって言われると……。


9話

初顔合わせで、いきなり演奏することになったが、無事、5バンドによる合同ライブ「ガールズ(&ボーイ)バンドパーティー」略称ガルパの開催が決定した。

 

最初は俺たちの実力次第で出演するか決めると言ってたロゼリアだが、みんなの演奏を聞いて出演を決めてくれた。

 

今では元気にこちらをライバル視する視線を感じる。ロゼリアの2人はすごい美人なんだけど、残念ながらモデル体型だ。俺としては貧乳は基本的に対象外だから、熱い視線をもらっても嬉しくない。燐子先輩とかリサ先輩ならOK。あとは薫先輩でも見ててください。すっごいイケメンですから、目の保養になるんじゃないですかね(適当)。

 

このガルパは、ライブハウスCiRCLEの従業員である月島まりなさん発案のライブだ。まだ出来たばかりで利用者の少ないCiRCLEが、その存在を知ってもらい、あわよくば利用してもらうことが目標のライブだ。

 

そのため、まだ活動拠点が決まってなさそうな新進気鋭のバンドを呼んできたようだ。

 

しかし、現役アイドルでもあるパスパレをよく呼べたものだ。聞いてみると、香澄ちゃんがノーアポで事務所に突撃して、パスパレと直談判したらしい。行動力の化身である。

 

まあ、パスパレもバンドをやっている子のファンがほしいと思っていて、渡りに船だったようだ。数ヶ月前のライブで、録音した演奏を流した口パクステージで停電トラブルが起きるという、神様に嫌わてるんじゃないかって不運に見舞われ、ネットニュースに鮮烈デビューをしたのは覚えている。

 

その後、奇跡の大復活を遂げたものの、当然のように音楽経験者からは嫌われてる。

 

ま、そりゃあね。真剣に演奏している人たちからすれば、アイドルが話題性欲しさにアイドルバンドを始めて、無事ライブをすることになったから見に行ってみたら、実は楽器すら弾けませんでしたって落ち。こんなのリアルタイムで見せられたら、善良な人だってアンチになるよ。

 

そんなわけで、パスパレにはアイドルファンはいるけど、音楽ファンは全くいない状況らしい。この状況を危惧して、渡りに船とばかりにガルパへの参加を決めたらしい。

 

ご健闘をお祈りしています。

 

ガルパは約1カ月後に本番を迎えるのだが、それまで色々とやることがある。

 

まず、2週間後にミニライブをすることになった。

 

ポピパは出来たばかり、アフターグロウは結成して2年は経つらしいがライブ経験はなし。ロゼリアは湊先輩とか氷川先輩は別バンドで活躍していたが、この5人でバンドを結成してからそんなに経っていないらしい。2人の根強いファンがいるものの、バンドとしては、まだ知名度を広げている最中らしい。パスパレは音楽好きに嫌われてる。

 

そして俺たちハロハピは人前で演奏した経験では、5バンドの中では圧倒的に多い。だが、それは病院や保育園など、こちらから出向いて演奏をしているものだ。ライブハウスでやるような人を呼ぶライブをしたことがないので、わざわざ来てくれる人はいないと考えている。

 

これにCiRCLEの知名度の低さを鑑みて、ぶっつけ本番でやったら人が来ないのではと考えたのだ。

 

ミニライブで少数でも人に来てもらえれば、後は演奏で沼に引きずり込める。そういうことだ。

 

突然ミニライブの開催を告げられて周囲がザワつくなか、俺がこのことを確認すると、まりなさんが、そのとおりだよ、と答えてくれた。

 

その隣で、言い出しっぺの香澄ちゃんが、俺の言ってることが理解できないような顔をしているのは、たぶん気のせいだろう。

 

色々やることの2点目として、合同練習をすることになった。

 

みんなの練習を参考にしたい、という理由だが、これはみんな興味があったらしく、すんなりと決まった。

 

とりあえず、都合がついた他のバンドと絡めればいいねってことで実行。バンド練習がなくても、個人が参考のために練習に顔を出すのはいいけど、参加は控えるってことになった。

 

俺はポピパとやれればいいかな。他のバンドの演奏は顔合わせの演奏で充分だし。唯一演奏を聞けてないロゼリアはミニライブのときに聞ければいい。湊先輩と氷川先輩が冗談通じなさそうで、ハロハピのメンバーと相性悪そうだし。

 

いや、ケンカにはならないと思う。ただ決定的にすれ違い続ける未来が見えるだけ。美咲が怒るのが早いか、ロゼリアが呆れるのが早いか。やっぱり一緒に練習しないほうがいいと思う。

 

てか、貧乳のうえに性格がキツイって勘弁してほしい。2人とも薫先輩を見習ってもらいたいものである。あの人は本当に懐が深い。大抵のバカなことは受け入れてくれるし、悪いことしたときは、キッチリとたしなめてくれる。

 

世界にもっと薫先輩みたいな人が増えれば、この世界はもっと住みやすいものになると思った。美咲は全否定しそうだけど。

 

とにかく、ロゼリアの2人は要注意人物ってことだ。

 

美咲? 美咲はいいんだよ。たしかにツンツンしてるところがあるけど、美咲といると落ち着くんだよ。

 

一緒にいて落ち着くし、楽しいし、かわいいし、セクハラできるし、バンド活動で頼りになるし、いい匂いがするし、暖かいし。最高かよ、俺の彼女。

 

 

 

「幹彦ー、ボケっとしてないで、早く行くよ」

 

ガルパ開催の顔合わせで、思いがけず演奏したことで、けっこう時間が押してしまった。

 

細かいバンド間のやり取りは美咲がやってくれることになったが、俺もサポートに回らせてもらうことにした。そんなわけで各バンドの取りまとめ役とも挨拶をかわすことになったのだ。

 

さあ、挨拶に行こうという時に、俺がボーっと考えに耽っていたので呼びに来てくれたのだ。

 

さっきまで、その取りまとめ役の人たちの近くにいたのに、わざわざ近くまで来てくれたようだ。

 

遠くから呼んでくれてもいいのに、こうして近くに来てくれるのは嬉しい。美咲が良く見えて、それだけで気分が良くなる。

 

「……美咲はかわいいな」

 

「? はいはい、わかったから行くよ」

 

なんだか子ども扱いされてる気もするが、別にいい。

 

ペロンと美咲のお尻を触ってみる。

 

「……あんた、時と場所をわきまえろって言ったよね」

 

じと~とした目をする美咲。

 

「すまん、悪気はないんだ」

 

ちょっと構ってほしかっただけだから。

 

「どうしたら悪気がないなんて言葉が言えるのか知りたいけど、行くよ」

 

「はーい」

 

大人しくついていく。が、すぐに美咲が止まり、顔だけ振り向いた。

 

「市ヶ谷さんのことは、後でゆっくり聞かせてもらうから」

 

「はーい……」

 

今日はメン限配信があるから、その後に電話しよう。うん、そうしよう。決して言い訳を考える時間が欲しい訳じゃない。どこまで話すか少し整理したいだけだ。

 

「なに? 言い訳を考える時間が必要?」

 

「そ、そんなわけあるかよ。ただ、話が長くなるとアレだなーって思ったんだよ」

 

「へー、そう」

 

まるで、お前の考えてることは全てお見通しだぞと言わんばかりの表情で、美咲は言った。

 

「……美咲、愛してる」

 

「はいはい。それで誤魔化されるほど、あたしは甘くないよ」

 

「誤魔化すなんてそんな……」

 

「わかってるから。まったく……長くは待たないよ」

 

美咲はもう前を向いていて、どんな顔をしているかは伺いしれない。

 

でも、その声はさっきよりも優しいものだった。

 

「夜には必ず電話する。約束するから」

 

「待ってる。花音さんも混じえてだからね」

 

「もちろん。ありがとな」

 

「あんたと付き合ってどのくらいになると思ってんの。もう慣れっこだよ。さ、行こ」

 

「おう」

 

俺の彼女は慈悲深い。

 

俺がどんなにバカなことをしたって、こうやって理由を聞いてくれる。

 

大切にしないといけない。

 

当たり前だけど、そう思ってる。

 

 

 

 

 

 

 

ガルパというバンドの顔合わせで私は運命的な出会いをした。

 

正確に言うと既に出会っていた人なのだが、顔を合わせることは生涯ないと思ってた相手だ。

 

強く望めば会うことができるかもしれないけど、それはあまりに自分勝手な行いで、同じようにひと目だけでも見たいと思っている仲間を裏切る行為だから、自分がそれをすることはないだろうな、と思ってた。

 

だから淡い思いに蓋をして、大切に閉じ込めて、決して漏れ出さないようにしていた。

 

だというのに、こうもあっさりと出会ってしまった。これが運命ってやつなのか、なんて、らしくもないことを考えてしまう。

 

今だって電話であいつの声を聞いてるけど、これも昨日までは考えられなかった。

 

ネットで聞くよりもクリアで、抑揚を感じる声が私を惹きつける。その声以外が意識の外へと追いやられていく。

 

『まあ、言ったほうがいいよな』

 

電話越しに、乗り気じゃない声であいつが言った。

 

こうして話しているのは私たちのことだ。

 

セントー君の初期勢と呼ばれるファンは、当然のようにリアル接触禁止を暗黙のルールとしていた。

 

それが不可抗力とはいえ破ることになり、それが今後も続くことを他のメンバーに黙っているのはどうなんだ、ということになった。

 

言うか言うまいか。まあ言うしかないよな、と彼が決断したのだ。

 

「幹彦もやっぱりそう思うか?」

 

『そりゃあな。避けることもできるけど、ここで言わないと、後々バレたときにうるさいと思う』

 

「私もそう思うけど……でも、なんて言うんだよ」

 

筋を考えれば言う一択だ。

 

でも、じゃあ切り出せるかといえば、それは難しい。

 

いや、難しくはないな。私が避けたいだけだ。

 

『私たち、偶然リアルで知り合いました。だからなんだってことはないけど報告しときますって』

 

「それ……そのあと、ぜってー燃え上がるぞ」

 

ぜってー、[は?]とか[そのギャグ面白いと思ってんの?]とか[迷惑かけんのは無しって決まってたよね?]とか言われる。

 

考えただけで胃が痛い。

 

『やっぱり?』

 

「ぜってー燃える。てか、私が報告される立場だったら燃やしてる」

 

『あいつら気が短いからなー。すーぐ怒るんだよ』

 

「それも報告するから」

 

私だってそう思うけど、口にしちゃいけない言葉だろ。この命知らずめ。

 

『やめてくださいお願いします』

 

真剣なあいつの声に吹き出しそうになる。群れた女の面倒臭さは2年かけてしっかり学んだのだろう。

 

『怒りを逸らすために新曲を披露するのはどうだ?』

 

「新曲……!? どんなやつ!?」

 

『食いつきいいな。そうだなあ、ハイテンポな明るい英語の歌と、出会いの歌が合ってるかな?』

 

「は? 切れそうな相手に明るい歌を聞かせんの? お前、正気か? それに、その状況で出会いの曲を披露するって完全に相手を煽ってるからな!」

 

こいつはどこを見て、合ってるかな? とか言ったんだろか。

 

『……やっぱり、ダメ?』

 

「わかってんなら止めろ! ……ちなみにどんな歌だよ?」

 

『ほら、やっぱり気になってんじゃん。実は今日、披露したい歌があるんだけどって言えば、あいつらだってぶつくつさ言いながら、歌が気になって怒りどころじゃなくなるから』

 

「お前……天才か!」

 

『だろ?』

 

「そうすると歌の中身だよな。出会いの歌ってのもいい歌なんだよな?」

 

『もちろん。ちゃんと三十路にもわかるような歌詞だから安心してくれ』

 

「どうしてお前は、そんな息を吐くように煽り散らかすのか理解できないけど、その言い方を改めればワンチャンあるな」

 

『おうよ。1曲目で流れが変わらなかったら、2曲目をチラつかせるってことで』

 

「OK、それでいくぞ」

 

『よしきた任せろ』

 

「じゃあ、適当に打つコメ考えとくから」

 

『頼んだ。始まりの挨拶が終わったら、報告があるって続けるから』

 

「分かった。……煽るなよ」

 

振りじゃないから。ただでさえ、今回は私に矛先が向く可能性が高いんだ。

 

こいつに攻撃しても煽られるだけって思われたら、狙いが私に集中しかねない。

 

『煽るわけないだろ。さっきの曲だって、ちゃんと名前を言うからさ。有咲が俺に気づいたことを考えると、他にも気づいてる奴いそうだからな。下手なことは言えない』

 

「あえて黙ってるやつはいるだろうな。それに私、一人心当たりがいる」

 

『あー、アレだろ。CiRCLE』

 

「そう! 私たちが話してたまんまだぞ。ぜってー、あいつらの誰かが絡んでる」

 

まりなさんに聞いてみたけど、「え、オーナー? 普通の人だよ? あまり音楽に詳しくないし、他に本業があるから店長とか私を雇ってるんだ。これでも私、マネージャーを任されてて、ちょっとは偉いんだよ」とのこと。

 

そのあと、香澄が「まりなさんってすごい人だったんですね! 有咲は急に店長を気にしてどうかしたの?」なんて言うから、何でもないって慌てて話を終わらせるしかなかった。

 

香澄、覚えてろよ。しかも店長じゃなくてオーナーだ!

 

『部屋数もカフェも同じだからな。メン限配信だから、誰かが漏らしたんじゃなければ身内の犯行だよな』

 

「社長勢が怪しい」

 

こいつは来ないが、初期勢は登録制のチャットルームを持っている。そこでいろいろ話をすることがあるんだけど、社長勢はこいつが思っている以上にヤバい。

 

ベンチャー企業の社長は、幹彦は3、4人の大学生が卒業を機に会社を起こしたみたいなのを想像してるけど、実際は40人ほど従業員がいて、既に設立後5年は経つ、実績を持った会社らしい。

 

中規模会社の社長だって、節税のために大規模にしないだけで、そっちの方がメリットがあると踏んだら、いつでも大企業クラスに方針を切り替えることができるようだ。

 

大規模会社の社長はわからない。ベンチャー企業の社長と中規模会社の社長が言うには、とんでもなく大きな会社らしい。社長じゃなくて代表取締役では? とか言ってた。

 

まあ、あいつが言ってた「儲かってる会社なら登録者1,000人程度の弱小Vtuberなんか見てる暇ないだろうから、どうせ肩書が先走ってるだけだろ」って言葉もわからなくはない。てか、私はこいつと同じ庶民側だから、想像できないほど大きな会社の人なんて、お伽話と同じだ。

 

うちも一応、自営業の社長になるけど、歴史が長いだけの質屋だ。社長勢とは全く別物だ。

 

まあ潰す気はないし、私が上手くネットを使って繁盛させたいとは思ってるけど。

 

『あの大きさのライブハウスなら、それしか考えられないよな。一応、まりなさんにオーナーのことを聞いたんだけど、あんまり詳しく聞けなかったな』

 

「お前も聞いたんだ。私も聞いたけどダメだったな。あまり詳しく聞きすぎると、まりなさん経由でこっちの情報が漏れる」

 

『なんなら今日の報告前に手を上げさせるか』

 

「報告?CiRCLEっていう名前のライブハウスを見つけましたって?」

 

『そ。怒らないから心あたりがある人は手をあげなさいって』

 

たぶん[ノ]とか[ヘ]ってコメントが流れて、みんなでノを探すことになるんだろう。

 

ちょっと楽しそう。

 

「いいな、それ」

 

『だろ?』

 

こんな、こいつの声を聞きたいだけの雑談から、面白そうな企画が出てきたのは嬉しい。

 

思わず、ふふっ、と笑いをこぼすと、相手が無言になったのに気がついた。呼吸の音は小さく聞こえるから、いなくなったわけではなさそうだ。

 

「……なんだよ、急に黙って」

 

ネット生活が長すぎたのか、或いは性分なのかはわからないが、こういった時は人を疑ってしまう。

 

すると、こいつはなんだか楽しそうに笑った。

 

『ありさにゃんZはこんな声してるんだなって』

 

愛しむような声だった。

 

『コメントは沢山貰ってたけど、声をもらうことはなかったし、姿をみることもなかったから。やっぱり嬉しいよ』

 

「……そうだよな。お前の声しか聞こえないもんな」

 

『想像していたよりも可愛い顔してた。ツインテールにまとめてるのも可愛いし、服もすごい似合ってた。有咲ほどの大きい胸で、あんなに立派に服を着こなしてる人はいないと思う』

 

「む、胸は言うな」

 

『声もすごく可愛かった。今だってもっと声を聞きたいから話を伸ばしてるところもある』

 

「ば、バカ、あんまり褒めるなって……恥ずかしいからさ」

 

『恥ずかしくたって言うさ。俺たちの仲じゃあ、言葉にしないと絶対に伝わらなかっただろ? 顔も声も分からないんだ。だから俺たちは言葉にしてきたんだ』

 

「……私も、ネットで聞くより声が魅力的だって思った。……あと……想像よりずっと格好良かった」

 

『本当に? ゴツいとか思わなかった?』

 

「思わなくはないけど。いつもの配信聞いてて、お前が華奢な甘いマスクをしてるとは思わないだろ。方向は予想通りだった」

 

『フォローしてるようで、まったくフォローしてないな。てか、有咲の好みってゴツい系なんだ』

 

「ちげえよ、お前がそんな感じだと思ってたからだよ。……言わせんなって! 恥ずかしいだろ!」

 

『いや、素直に嬉しいよ。今まで、ゴツくてびっくりしたって言われることはあっても、予想以上に格好良いなんて言われたことはなかったから、かなり嬉しい』

 

「あっそ。……てか松原先輩と奥沢さんは? 付き合ってんだろ、お前ら」

 

『よくわかったな。でも、花音は甘いマスクが好みだから、たぶん俺の顔は好みじゃないと思う』

 

「マジ?」

 

『マジマジ。王子様セリフが似合わないゴツい彼氏でゴメンなって言ったけど、否定してくれなかった』

 

彼のトーンが少し落ちた。どうやら気にしてるらしい。

 

「へー、まあ違和感はないと思うけど、似合うかって言われると、ちょっとな。で、なんて返されたんだ?」

 

『顔の好みは確かに違うけど、それを言ったら、私の胸は好みのサイズに足りてないでしょ? それでも幹彦くんは私が好きなんだから、それと一緒だよって言われた』

 

「惚気かよ……」

 

けっこうイラッと来る。

 

『有咲から聞いてきたんだぞ。美咲は……顔の好みはたぶん無いな』

 

「じゃあ性格か? 奥沢さんはしっかりしてそうだから、常識を持った人が好みとか?」

 

『常識人は嫌いじゃないだろうな。でも、美咲は男に見切りをつけてるからなー、それが好みかって言われると違う気がする』

 

「奥沢さん、お前のこと本当に好きなのか?」

 

『最初はどうだろ? でも今は好きだって。彼氏の俺が言うんだから間違いない』

 

「思い込みじゃねーの?」

 

『悲しいこと言うな。初めて会う男に警戒しない方が珍しいだろ? そういうことだよ』

 

「ふーん、やっぱ難しいんだな」

 

『付き合うまでは気がつかないことも多いぞ。隠してるわけじゃないけど言ってないこともあるし』

 

「ああ、タイミングを逃した的なやつか」

 

『そうそう、目下のところ、セントー君について、どう説明したらいいか悩んでる』

 

「まだ言ってねえの!?」

 

『いやー機会がなくて』

 

「確かに、実はVtuberなんだ、なんて言い辛いけど……言わなきゃマズくね?」

 

『マズい。これからリアルの接触者が増えてくかもだから、その前に説明しないと大変なことになる』

 

「今からでも言っとけって」

 

『とりあえず電話しとく……あーでも、ハロハピ全員には言っときたいな』

 

「いいんじゃね。同じバンドメンバーなんだし、あのメンバーならお前が有名だから何するってこともないだろ」

 

『そこは間違いない。でも、黒服さん経由で弦巻家に知られるのは避けたい……けど、弦巻が本気ならバレてる気もするし……まあでも、調べられたところで、Vtuberとして活動してるから何? てなりそうだけど』

 

「月に1億稼ぐってヤバくね?」

 

『それはヤバいと思う。でも弦巻どころか中規模の会社になれば、そのくらい、もっと短い期間で稼ぐから大したことないだろ。へー、すごいね、くらいに思われるんじゃね?』

 

「マジか。1億をそんな簡単に稼ぐのか……」

 

初期勢の社長らも、そのくらいは稼いでいるのか。なんか、あの3人がよけいにヤバいヤツらに思えてきた。

 

『簡単じゃないと思うけど、会社としてならいくだろ。だから、別に弦巻にバレてても大丈夫。うん。きっとそう!』

 

「現実逃避を始めたな」

 

『始めてないですー。理論的な考えを元に、理想の結論へ辿りついただけですー』

 

「いや、理想とか言っちゃってるじゃん」

 

『だってさー、弦巻だぜ? 主導権を取られたら、パンピーの俺じゃあ何もできないって』

 

「それもそっか。まあ、その辺はわかんないけど、二人には言っとけよ」

 

『ああ、そうする……』

 

そんな会話をしていると、そろそろメン限配信の時間が近づいてきた。

 

『なんか、俺の相談に乗ってもらったみたいで悪かったな』

 

「いいよ。私も楽しかったし」

 

『今度、なにかお礼するよ。なんかほしいものある? 金ならあるぞ』

 

「使いみちに困ってるもんな。でも、物はいいよ。……そうだな、それなら今度うちに来ないか」

 

『え、いきなりお家デート? 俺は望むところだけど。有咲ってけっこう大胆だな』

 

「ちげーよ! おま、そんな会ってすぐ、その……アレするほど私はチョロくねーよ! また会って話したいなって思ったんだよ! でも外で会うと目立つから、うちに来てお茶でもしようかなって思っただけだから!」

 

『なるほど。そういうことならOKだ。お土産持ってくよ。和菓子と洋菓子どっちが好み?』

 

「……和菓子。でも気を使わなくてもいいから。私が誘ったんだから、手ぶらでいいぞ」

 

『そう言うなって。お土産を選ぶのも楽しいんだぞ』

 

「そういうもんか?」

 

『そうそう。それに金も使えるし』

 

「……高いのは止めろよ。私はいいけど、婆ちゃんがびっくりする」

 

常識はあると思うが、月収1億円で金の使いみちに困ってるやつが何するかは予想できない。

 

『婆ちゃんいるんだ。こりゃあいい服来てかないと』

 

「Tシャツ?」

 

『そうそう。キレイ目のTシャツ』

 

「ふふっ。期待してる。あ、お土産じゃなくて服のほうな」

 

『期待を裏切らない服装だけど、期待しててくれ』

 

「なんだよ、それ」

 

彼との楽しい時間が終わった。

 

さあ、これからが本番だ。みんなが納得するような言い訳を考えておかないと!




イメージ曲
ハイテンポな明るい英語の歌:MIND YOUR STEP!(SNAIL RAMP)
出会いの歌:ロマンスの神様(広瀬香美)

前者は、小さいころ家にCDがあって、ずっと聞いてた曲です。意味を理解してなかったんですけど、英語の歌詞はずっと覚えてるんですよね。名曲です。
後者は、語るまでもない名曲です。最近テレビ見ないんでわからないですが、作者の若いころは冬になると、この曲がちょくちょく流れてました。歌唱力は圧巻の一言。


超、難産でした。
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