(仮題)とある転生者の異文化体験   作:ピッピの助

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フレーバーです(断固)。前半飛ばしてもらって、なんの問題もありません。
前半の話は世界観の核心に迫るものなんですが、それだけ扱いが難しい話でもあります。
整合性とか厳しくやってませんよ? 
これをやり始めると、マジで1カ月単位の時間が必要になるので
矛盾があっても、物語を変えるものなら完結するまでいじれません。じゃあ投稿するなって話なんですけど、作者はこういうのが大好きなので……。
俺は近代、現代に詳しいぜ! って方は、前半を飛ばすことを推奨します。
緩い感じで世界観を楽しみたい方は、ほーん(鼻ホジホジ)って気持ちでお楽しみください。


13.5話(若宮イヴ視点)

なぜ男性が減ったのか、それは今もなお研究が続けられている話題です。

 

最初はアジアの一部地域で見られる現象でした。男性の出生率が極端に減る、という現象が発生したのです。

 

当時はインターネットどころか、電話回線すら整備途中でしたので、欧州にその情報が伝わるころには、既に一部の地域では取り返しのつかない状況になっていたと言われています。

 

当時から研究者は精力的に原因の追求をしました。感染病や新種の害虫、神の呪いなど、あらゆる事象を疑い、検証を続けました。

 

なかなか成果は上げられませんでしたが、世界中の研究者が国境を越えて取り組んでいる問題です。このまま続ければ、いつか必ず解明できるはず。研究者の中には、そんな希望があったそうです。

 

でも、残念ながら、その人たちが原因を特定することはできませんでした。

 

その理由は、特定するための判断材料がないことです。

 

この現象は非常に広範囲に及んでいて、どこから発生したかがわかりません。しかも症状といえば男性が生まれにくくなったことだけ。

 

当時はいろんな仮説が飛び交い、大いに議論されたようですが、どれも科学的に肯定することも、否定することもできなかったようです。

 

神の呪いという非科学的なものですら仮説として残っているのは、当時がいかに混乱しているかを示しています。あらゆる可能性を否定しない代わりに、特定することもできない現象。それが第一の問題でした。

 

研究者たちは、それでも懸命に、全世界に広まってしまった現象を止めようと、必死になって研究を続けていました。

 

でも、その研究者たちにも不幸が訪れます。

 

時が経ち、ほとんどの国で、女性が国内人口の多数を占めるようになりました。

 

そして、男性の虐殺事件が起きました。

 

ある国では女性の身分がとても低く、女性が虐げられていました。しかし、この問題で男性の数が減り、男性と女性の力関係がひっくり返ったとき、クーデターが起こりました。

 

クーデターは成功し、その国からは男性がいなくなりました。

 

そして、その国は滅びました。

 

当たり前です。男性の根絶に成功したら、そのときから新しい子が生まれなくなります。当時は人工授精なんて技術はありません。その国は自然の摂理に則り、まるで線香花火が消えるように、フッと消えていきました。

 

当時の社会は驚きに満ちあふれたと言います。そんなことは子どもでもわかるのに、なぜ何の対策も考えないでクーデターを起こしたのかと。

 

欧州や周囲の国は、その国がクーデターを起こした後に、女性しかいない状況をどのように乗り切るつもりなのか注視していたので、こんな結末に終わったことが理解できずに悩んだと言われています。

 

そして、もっと驚くことに、こんなことをする国は他にもありました。

 

最初の国に続くように事を起こした国もあれば、最初の国の滅亡がはっきりした後に事件を起こした国もあり、何故こんなにも物事を考えずに行動するか、そのときの国際問題研究分野では何度も議論が繰り広げられていたようです。

 

一部の政治学者が、教育を受けた国ですら、こんなバカなことをするなんて! と言って、民主主義反対運動を繰り広げたことは、どの国の教科書にも載っています。

 

これらの国とは逆に、女性を優遇していた国も危機におちいりました。

 

女性は男性に優しく接しました。でも同時に、昔を忘れることができず、数少ない男性に対して以前のような扱いを求めたのです。

 

それが男性をストレスによる自殺に追い込むことになりました。

 

周りを取り囲む大勢の女性から注文を受けた男性は、初めはその期待に応えていましたが、段々と疲れを見せ、そして知り合いが自ら命を断つのを見て、自分も後に続いたと言われています。

 

この国が滅亡するときは、残った国民を欧州が受け入れました。元々、欧州の中でも平均的な国力を持っていた国でしたので、他の国も明日は我が身と思い、その国民を受け入れました。ですが、自国民と同じようにはしません。

 

一見すれば女性たちは男性たちの良きパートナーです。滅びた国の民とはいえ、男性と触れ合ってきた彼女たちは、自国の男性から見ても接しやすい相手です。でも、一歩間違えれば、自国を同じ目に遭わせかねない人たちでした。

 

結局、滅びた国の民は外国人労働者という名目で受け入れられました。

 

そうです。今も続く奴隷制度の始まりです。

 

外国人労働者には大きな制限がかけられます。

 

有名どころでも男性との接触禁止、子を産む義務、政府の指定する労働への従事義務、団結の禁止、居住・移住選択の禁止、公用語以外の使用禁止などがあります。選挙権は当然ありません。

 

男性に代わって女性が人権を持つようになったのに、その人権をことごとく否定するこの制度は、政府の奴隷になる以外の何ものでもありません。受け入れられた女性たちも、これには反発しました。

 

しかし、後ろ盾になる国を失った彼女たちは受け入れざるを得ませんでした。

 

幸いなことに、彼女たちはそこまで悪い待遇ではありませんでした。

 

受け入れた国にとっても、人口維持のためであり、ゴミ収集や屠殺場、肉体労働全般において成り手不足が深刻な問題になっていたので、滅びた国の民は大切な労働力でした。

 

外国人労働者が生んだ子どもは、生後2カ月で政府が預かり、孤児院のような政府管理下の場所で育てられます。それでも食事はしっかり与えられますし、体調が悪い場合は医師の診断があれば仕事を休むことができます。休みが続きすぎると、本国送還という名の島流しが待っていますが……。

 

ともあれ、生きていくことはできる環境です。彼女たちは不満を抱えながらも日常を生きています。

 

男性に優しくしても、厳しく接しても国は滅びました。では、今もなお存続している国はどういう国でしょうか。

 

それは、女性の教育水準が男性並に高かったり、丁度いい具合に女性に人権があった国です。

 

アメリカや生き残った欧州の国は女性の教育に早くから手を付けていました。女性の教育水準が高い国では、男性が消えて国がなくなることのデメリットを理解し、男性をより効率的に生かす方法を追求していきました。

 

ストレスの原因を徹底的に取り除いたり、人工授精を確立して精子バンクを実現したり、男性の負担を減らしつつ、精子の提供数を維持することに腐心しました。より効率的に受精まで辿りつく。それが欧州共通の目標でした。

 

こういった国は、その人口を大きく減らしたものの、ある程度、安定した国として成り立っています。

 

無論、先ほどのように教育を受けた女性がいる国が男性虐殺をしたケースもありますので、全ての国でそうだとはいえません。もしかすると、たまたま有能な人がトップに立った。それだけなのかもしれません。

 

次に、日本のような丁度いい具合で女性に人権があった国です。

 

日本は男性上位の国でしたが、女性も役割を持っていて、男女が丁度よく役割分担をしていたと言われています。

 

亭主は家では横柄な態度を取りますが、しっかりと女房、子どもの食い扶持を稼ぎます。それができない人は周りから責められますし、女房だってチクチクと責め立てます。明治時代になる頃には、一部の地域で、かかあ天下なんて言葉もあったくらいです。

 

収入の高い人たちだって、花魁と呼ばれる娼婦に熱を上げ、まるで一国の姫を相手するように貢ぎ、もてはやしました。

 

実際のところは何が良い影響をもたらしたかは、わかっていません。日本の成功例を見て、同じようにしようとする国もありましたが、どこも上手くいってません。

 

事実なのは、男性を恨むでも、以前の待遇が忘れられないわけでもなかった日本では、女性の教育水準の割には男性の維持に成功して、今では世界で一番、人口に占める男性率が高い国ということです。

 

他の国と比べて、日本は男性の割合が高いので、精子バンクに余りがあります。

 

精子は国内では広く普及させる一方で、他国に対しては高値で取引されます。

 

どの国も精子の確保には必死です。

 

一度でも人口維持の限界水準を割ってしまえば、後はもう落ちるだけです。人口減少が進み、外資だけでなく、国内資本も他国の国籍を得るために国外へと逃げ出します。

 

だからこそ、どの国も男性の確保に躍起になり、国内だけでは足りないと判断すれば、高価であっても他国の精子バンクを求めます。

 

かく言う私も、母はヨーロッパの人ですが、父は日本人です。そうです、私は日本から輸入した精子バンクで産まれました。

 

私のような存在はヨーロッパでは珍しくありません。これが原因で虐められたということはなく、普通の父親がいない子たちと同じような扱いをされていました。

 

ですが、やはり心のなかでは、見たこともない父が気になって仕方ありませんでした。

 

会ったことも、話すらも聞くことのない、遺伝子上の父でしたが、それでも父を知りたくて、私は日本に興味を持ちました。

 

ですから、自国で、男性の数が減っているとニュースが流れ、母が私に日本行きを勧めたときに、ハイと返事をしました。

 

もちろん、迷いはありました。仕事があるので母は一緒に行けませんし、友だちともお別れしないといけません。でも、このまま時が過ぎるのを待てば、私たちは取り返しの付かない状況――どこかの国の外国人労働者として、望まない仕事を死ぬまで続ける未来しか待っていません。

 

行くしかないんです。

 

一人は寂しいですが、これが私と母を守ることができる唯一の手段です。

 

留学生なら、留学先の国籍を取ることができます。

 

私のような高校生であれば、高校卒業まで優等生として生活し、国から優良であると判断されれば国籍を取得できます。国籍が取得できれば、海外から親族を1人だけ迎えてもいいことになっています。

 

ただ、当然ですが、難点もあります。

 

優良と判断される基準が複雑なんです。

 

日本語が自在に扱えることや、学校の成績が優れていることは当然です。そのうえで、どんな活動をしていたかが注目されます。

 

日本を良くする人材なのか、頭が良いからといって、日本国内の外国人労働者を扇動したりと、日本に悪影響を与える人物になることはないか、人柄は優れているのか等、客観的にわかるものもあれば、判断する側の主観に委ねられる項目もあります。

 

だから私たちのように日本国籍を取ろうとしている学生はみんな必死です。

 

成績や学校での態度はもちろんですが、それ以外にも秀でたことを見つけなければいけません。そして、それで実績を残す必要があります。

 

私の目標は、無事、高校を卒業して、母を日本に迎え入れること。

 

モデルやアイドルは人の理想となる仕事ですから、国籍取得にはうってつけのものだと思います。

 

モデルのお仕事は楽しさもありましたが、それを目標に孤独に耐えて頑張ってきたところはあります。

 

パスパレも初めはそうでした。でも、仲間と居られるのは、やっぱりいいなと思います。

 

だからでしょうか、パスパレ解散を持ちかけられたときに、優良なモデルを続けるという観点で、私は解散に反対するべきではなかったんです。私が強く出ることで、スタッフに見限られて解雇となれば、積み上げてきた可能性が崩れ落ちます。

 

だから、本来ならば黙っているのが正解でした。でも、このままだとパスパレのみんなと離れてしまうと思うと、黙っていられませんでした。

 

だけど後悔はありません。孤独な心を癒やしてくれたみんなと、どうしても別れたくなかったんです。

 

師匠だって、イヴの好きなことをやれって言ってくれました。

 

優良な学生にならないといけない以上、好き勝手やっていいわけじゃないことはわかっています。でも、譲りたくないものが出たときに、自分の納得できる選択をできたのは、やはり師匠のおかげだと思ってます。

 

師匠は、自分はなにもしてないと言います。自分がなにも言わなくたって、イヴなら同じ結論に辿りついていたと言ってくれます。

 

そうかもしれません。でも、違うかもしれません。

 

もしものことなんて、実際にどうなるかなんて、わかるわけないんです。

 

わかるのは、師匠の言葉で、自分がやりたいことを選べた。その事実だけなんです。

 

だから、私が本当に感謝していることが、どうしたら師匠に届くか悩んでいます。

 

一番わかりやすいのが、体でお返しすることです。

 

以前、合同練習のときは断られてしまいましたが、師匠が私の体に興味を持っていることはわかります。特に一緒に海に行ったときは胸とお尻に視線が痛いくらい刺さっていました。

 

アリサさんはじろじろ見過ぎだって怒ってましたが、男の方が自分に興味を持ってくれるんです。私は嫌な気持ちはしません。むしろ、それを見越して大胆な水着を選びました。

 

だから、これが一番、師匠が喜ぶと思っています。

 

私だって師匠とならば望むところです。

 

武士にあるまじき節操の無さを初めとして、誘惑に非常に弱い師匠ですが、いくつもの尊敬できる点があります。特に「仁」という点において、この世界の男性で最も師匠が優れていると確信しています。

 

師匠との子であれば、すぐにでも作りたいと思っています。

 

私だって男性と結婚できるとは思っていませんが、やはり人工授精に頼らずに子を授かることは憧れています。自分の父親が誰かわかる。それが自分の子どもに与える最高のプレゼントだと思っています。

 

さすがにモデルとアイドルの仕事には少し影響が出てしまいますが、高校生のうちから同意の元で子どもを産んだとなれば、国籍取得は確実です。

 

師匠と交わることは、お互いにメリットばかりなんです。

 

今、私は絶対に叶えたい大きな目標があります。それが達成できるまでは男性にうつつを抜かすことなんてできないと考えていました。でも、師匠と近づくことで、キーボードが上達してアイドルに磨きがかかり、もしかすると子どもを授けてくれるかもしれないとなると、師匠と私は出会うべき運命だったと感じてしまいます。

 

最近は夢で出会う父親は、いつも師匠の顔をしています。エッチですが、すごく頼りがいがあり、私が困っていると優しく寄り添ってくれます。

 

ときどき、師匠のことを、お父さんと呼びそうになるのですが、これはまだ師匠には相談できそうにありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

師匠からパスパレのための曲をもらい、私たちは歌詞の中身や、曲を演奏できるかを早急に話し合いました。

 

最初の話し合いには師匠も参加して、曲のコンセプトを説明してくれて、私たちから意見を聞いてくれました。

 

初めはみんな恐縮して、すごいという感想しか出ませんでしたが、途中で師匠から、意見が出ないとかやる気あるの? という言葉が出たのを切っ掛けに、みんなで多くの意見を出し合いました。

 

師匠はみんなの意見を1つずつ確認して、数日後には修正した曲を送ってくれました。

 

私たちパスパレはそれを元に再び打ち合わせをして、今日は3回目の集まりです。

 

「ふう……だいたい、こんな感じかしら。他になにか意見はある?」

 

チサトさんはまとめ役を買って出てくれました。

 

最初こそ、師匠とトゲトゲした空気を出していたチサトさんですが、曲に触れる度に、どんどん柔らかい雰囲気になってきました。

 

「私はありません」

 

「ジブンもです。これならジブンたちでも演奏できるようになると思います」

 

マヤさんは曲が私たちに演奏可能かを必死に探ってくれました。

 

マヤさんがいてくれるからこそ、私たちはこの曲を演奏することができると前向きに考えられます。

 

「私もないよ……」

 

「彩ちゃん、また泣いてるー」

 

「うう……だって……」

 

「もう3回目の打ち合わせなのに、1回目からずっと泣いてる気がするわね。でも、ちゃんと意見を出してくれたからいいわ」

 

「千聖ちゃんまで~」

 

アヤさんは1回目の打ち合わせどころか、師匠が曲を作ってくれたことをパスパレのみんなに報告したときから泣いています。でも、詩の意見をたくさん出してくれたのもアヤさんです。

 

ヒナさんはずっと楽しそうにしてました。ギターを持ってきて、良さそうなフレーズをサラッと弾いて、ここはこうした方がるんっとするよ! と意見を出してくれます。

 

師匠もそれを聞いて、ああ、こんな感じ? と言ってキーボードで合わせ始めたので、ヒナさんが余計に高ぶってしまい、マヤさんを巻き込んでセッションが始まりそうになりました。もちろん、チサトさんがピシャリと収めてくれました。

 

「ふふっ。とにかく、今日はここまでね。後は各自、家に帰ってもう1度なにかないか考えてみましょう。それでなにもなければ、海堂くんに返事をしましょうか」

 

「いいと思います!」

 

「ジブンも帰ってメロディをもう一度、叩いてみます」

 

「あたしは早くみんなと合わせたいなー」

 

「日菜ちゃん、数日は練習させてね……」

 

「スタッフには話は通しておいたわ。著作権は海堂くんに。ただし、使用料等は一切なし、で良かったのよね」

 

師匠が言うには、どうせ自分がでしゃばってもアンチが湧くだけだ、とのことです。

 

師匠にはファンが大勢いますが、師匠を嫌っている人も少数ですが存在しています。そういう人たちは弱い人に的を絞るので、パスパレが狙われる可能性は充分にあるそうです。それなら、師匠は一切、表に出ない方がいいと考えているようです。

 

私たちと師匠の関係は、すでに噂されているので完全に隠しきれるものではありませんが、大っぴらに公表することでもないし、会社の中だって、師匠の名前が登場するのは極力、避けたいようです。

 

今回の件だって、師匠の周りではハロハピの方たちと、いわゆる初期勢と呼ばれる師匠のファンしか知りません。

 

本当に師匠は私たちのことを考えてくれています。

 

「はい。どうせ1曲の寄付代にすら届かないだろうから、面倒なだけ、と言っていました」

 

「き、寄付ってどのくらいでしたっけ?」

 

「えっと、今は……6,000万円だね……」

 

「ろ、ろくせんっ!?」

 

「おお、すごいねー」

 

いつだったか、師匠とその話をしたことがありますが、本当に使い道に困っているようでした。

 

ライブハウスも先を越されたし、ゲームは資金よりも人が育つ時間が要る、と言ってました。

 

「……寄付の話もそうだけど、こうやって実際に歌が目の前にあると、あの話は本当だったって実感するわね」

 

「はい。海堂さんがイヴさんに話を聞いて、数日後には曲を仕上げて、しかもこの完成度。ジブンは曲作りに詳しいわけではありませんが、これがとんでもないことくらいはわかります」

 

「麻弥ちゃんの言うとおりね。私だって歌に詳しくないけど、これが名曲なのはわかるわ。……それに、本当に私たちのことを書いてくれた詩ね」

 

歌詞は、私が師匠に事の顛末を話した次の日に貰いました。まさしく、師匠が感じた私たちの印象を詩にしてくれたのだと思います。

 

「イヴちゃんが話してくれたんだよね」

 

「はい。パスパレが解散するかもしれない話が出たときに、師匠に相談に乗ってもらいました」

 

「それで、この歌詞ができたんだー。あたしたちのことが歌詞になるって、なんか不思議だね」

 

「うん。初めて見たときは実感がわかなかったよね。嬉しいけど、なんだか恥ずかしいな」

 

「ふふっ、私も同じ気持よ、彩ちゃん。……ところでイヴちゃん、その話を聞いて、彼は何か言ってた?」

 

「いえ、特別なことは言ってなかったと思います。私の悩みを静かに聞いてくれて、どうしたらいいかアドバイスを貰いました!」

 

途中、感情が高ぶってしまったときも、優しく肩を叩いて、私が落ち着くのを待ってくれました。

 

「……少し意外だわ。海堂くんが噂どおりの人なら、嫌味の1つや2つ言いそうだけど」

 

「チサトさん、師匠はとても良い人です! 真剣に悩んでるのに、そんなことは言いません!」

 

「そうよね。そんな人だったら、花音が好きになるわけないわよね。ごめんなさいイヴちゃん。失礼な聞き方をしてしまったわ」

 

「いえ、わかってくれて嬉しいです」

 

「気持ちを切り替えないといけないわね。海堂くんは私が思っているような軽薄で、無責任な人じゃないのよね」

 

そのとおりです。師匠はちゃんと物事を考えて決断します。自分の行動が引き起こす結果を想定して行動します。責任感がない人はこんなことしません。

 

パスパレに被害がでることを懸念して、自分が表に出ないようにしたのだって、きっと自分の影響力に責任を持っているからだと思います。

 

だから、話を聞いてくれたときだって軽はずみなことは……

 

「あ、でも、しきりにマヤさんの様子は聞かれました」

 

「じ、ジブンっすか?」

 

「はい。マヤさんはどんな様子だったかや、どんな服装してたのか気にしてました」

 

少し前のめりになって質問されたのを覚えています。

 

「イヴちゃん、それは……いや、でも」

 

「あはは! 幹彦くんらしいね!」

 

「あの男、やっぱり……!」

 

アヤさんがおっしゃるとおり、たぶん、そういうことだと思います。歌には直接関係ない話かもしれません。

 

でも、パスパレの歌ができるときの様子だから報告しないわけにはいきません。

 

決して私のお尻をチラチラ見てたのに、平然とマヤさんのことを聞いてきた仕返しではないんです。




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