(仮題)とある転生者の異文化体験   作:ピッピの助

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15.7話(北沢はぐみ視点)

すっかり冷えたころの話。

 

はぐみ、みーくん、日菜ちゃん、あこちん、麻弥さんに幹彦くんの6人でスキー場に遊びに行った。

 

スキーが初めての麻弥さんが雪に慣れるために、はぐみたちはゲレンデについてから、まず雪遊び広場で遊ぶことにしたんだ。

 

みんなでミッシェルの雪だるまを作ったり、ミッシェルが突然遊びに来てくれたり、雪合戦したんだー!

 

すっごい楽しかった!

 

その後は、スキーが初めての麻弥さんに滑り方を教えてあげた。

 

はぐみ、教えるのが下手だから、初めは麻弥さんにどうしたら上手く滑れるかを伝えられなかったんだ。

 

でも、なんとかして麻弥さんに伝えたいって思って、必死に考えたよ。

 

そしたら麻弥さん、どんどん滑れるようになったんだ!

 

麻弥さん、はぐみにありがとうって言ってくれた!

 

すっごい嬉しかったなー。

 

そんな麻弥さんは今、ミッシェルと幹彦くんと一緒にのんびりと初級者コースを滑ってる。はぐみと日菜ちゃん、あこちんは上級者コースで滑ってたんだけど、少し疲れたから休憩してるんだ。ちょうどいいから、ロッジで何か食べようってことになったんだ。

 

そこのロッジは店外に席があって、綺麗なゲレンデの景色を見ながら、お食事できるみたい。3人でそこへ向かったんだ!

 

一押しメニューは青空カレーだって!

 

 

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

3人とも、手が動かなくなって数分が経った。

 

「みんな、手が動いてないね……」

 

「そういう、ひなちんこそ、さっきからずっと手が止まってるよ……」

 

「……うぅ」

 

太陽が眩しい。

 

「青空が綺麗だね……」

 

「だよね、すっごくいい天気……」

 

「こんな青空の下でお食事できるなんて、はぐみたち……幸せだなー……」

 

3人で元気なく空を見上げる。青空に1匹、大きな鳥が飛んでいるのが見えた。

 

自由で羨ましい。

 

「実を言うとさ、あたし、けっこうマズいかも……」

 

「あこも。これ以上はちょっと……」

 

「うぅ、残したらもったいないのに、手が進まない……」

 

いくらトッピングが選べるからって、全部乗せはやり過ぎだったみたい。

 

一向にお皿の底が見えないし、トッピングのコロッケやエビフライ、ハンバーグも残ってる。

 

これ以上、食べたら、今日はもう滑れなくなりそう……。

 

そんな絶望的な状況のなか、救世主が現れた。

 

「お、はぐみたち、ここにいたんだ。休憩中か?」

 

「「「幹彦くん!」」」

 

はぐみたちは、声がした方に一斉に振り向いた。

 

「おわ! な、なんだよ、急にそんな大声出して」

 

「幹彦くん、お腹すいてない!?」

 

「たくさん滑って疲れたよね!? あこたちが頼んだカレー、あるよ!」

 

「ここのお店、ちゃんとお肉使ってるんだよ! 幹彦くん、お肉大好きだよね!」

 

幹彦くんは大のお肉好きだ。

 

幹彦くんちの家政婦さんは、幹彦くんがお肉料理が大好きだから、昔からはぐみの家にお肉を買いに来てくれてるんだ。

 

幹彦くんと出会うまでは、当たり前だけど、その家政婦さんが幹彦くんちの人だって知らなかったから、なんだかすごい偶然だねって話したのを覚えてる。

 

「え、え、いや確かに腹は減ってるし、肉も大好きだけど……。カレー? お前たち、もしかして……」

 

「今なら、あーんってしてあげるよっ! アイドルからの、あーんだよ!」

 

「あこも、あーんは得意だよ! お姉ちゃんの看病してるときにやってあげたんだ!」

 

「え、あーんするの!? は、はぐみも恥ずかしいけど、がんばるよっ!」

 

男の人と見つめ合って、あーんってするのは恥ずかしい。

 

こころんや、かのちゃん先輩はよくやってるけど、みーくんは恥ずかしいから断ってる。はぐみもすっごい恥ずかしいって思ってる。

 

「……はあ。わかった、わかったよ。残ってるやつは俺が全部、食べるって」

 

「ほんと!? ありがとー!」

 

「やたー!」

 

「幹彦くんがいて、良かったよ!」

 

幹彦くんは近くのテーブルから1つ椅子を持ってきた。座るとすぐに、はぐみのカレーを食べ始めた。

 

「……うん、美味いじゃん」

 

「だよね! ハンバーグも美味しいよ!」

 

「あこも好きだよ! 疲れた体にちょうどいい味だよね!」

 

「たくさんあるから、どんどん食べてね!」

 

幹彦くんは軽く手を上げて応えてくれた。

 

さすが幹彦くん。すごい頼りになる。

 

そこに、ゆったりとした風が流れてきた。はぐみたちは空を見上げる。

 

「あー、風が気持ちいいー」

 

「だよねー。空が澄み渡って綺麗だなー」

 

「こういうところで、のんびりお食事っていいよねー」

 

さっきまでとは違って、すごく開放的な気分だ。

 

こういう雰囲気ははぐみは大好き!

 

お日様がぽかぽかしていて、なんだか眠くなる。

 

「日菜先輩、皿をください」

 

「オッケー! はい!」

 

「幹彦くん、すごい!」

 

「はぐみの分、もう終わったの!?」

 

驚いて見ると、すっかり空になったお皿が1枚。あんなに底なしに見えたカレーが消えていた。

 

「まあ、腹減ってたからな」

 

「あ、そだ。あーん、してあげるよ?」

 

日菜ちゃんがイタズラそうな顔で言った。

 

「いいですって」

 

「えー、なんでー!」

 

「食べづらいですよ。腹減ってるときはガツガツ食べたいんで」

 

「えー、やりたかったのにー」

 

驚いた顔の後、すねた顔に。日菜ちゃんはアイドルをやってるくらい、すっごく可愛いのに、コロコロと表情が変わっておもしろい。

 

「それは氷川先輩にでもやってあげてください。あこちゃん、皿ちょうだい」

 

「早っ! じゃあ、はい!」

 

「幹彦くん、相変わらず綺麗に食べるよね」

 

2枚に増えた綺麗なお皿を見て、思わず言った。

 

「恥ずかしいから、あまり見るなよ」

 

「あ、ごめんね。でも、幹彦くんがたくさん食べてるところ見るの、はぐみ好きなんだー」

 

学校帰りによくコロッケを買いに来てくれる。買ったその場で、はぐみとお話しながら食べてくれるけど、美味しそうにパクパクと食べてくれるのがすごい好き。

 

あっという間にコロッケがなくなると、次の分を用意してあげたいなって思うんだ。

 

「……まあ、見ててもいいよ」

 

「わーい! ありがとう!」

 

やっぱり、すごい優しい。

 

「じゃあ、あたしも見るー! じー……」

 

「あこも! じー……」

 

「あの、さすがに凝視されると食いづらいんで……」

 

「あはは! ごめんごめん! 幹彦くんといると楽しいから、つい」

 

「あこも幹彦くん見ていて飽きないなー」

 

はぐみもわかるよ!

 

幹彦くんと一緒になにかするのは楽しいけど、幹彦くんを見ていても楽しいんだよ。動きが大きくて、なんでもないことでも、つい目をやっちゃうんだ。

 

まあ、これはハロハピみんなに言えることだけどね。

 

「はいはい、2人とも、ありがとね」

 

「んー、なんか冷たいなー」

 

「りんりんと話すときはもっと弾けてるのに、あことか友希那さん、紗夜さんと話すときはこんな感じなんだよねー」

 

「パスパレだと、麻弥ちゃんと話すときはそんな感じだねー」

 

ハロハピだと、どうかな?

 

こころんやかのちゃん先輩と話すときはイチャイチャしてる感じで、みーくんと話すときはお互いに信頼してる感じ。薫くんと話すときは薫くんを尊敬してる感じがすごいする。

 

はぐみと話すときは……どうだろ? はぐみはなんか、兄ちゃんがいたら、こんな感じなのかなーって思ってる。こんなエッチな兄ちゃんがいたら恥ずかしいけどね。

 

「そりゃあ、その2人と話すときはテンションも変わりますって。でも、今だって別に楽しくないわけじゃないですよ」

 

「それはわかるよ。幹彦くんが楽しいって思ってなかったら、あたしだって一緒にいて、るんってしないと思うし」

 

「うんうん。あこも今みたいな幹彦くん、嫌いじゃないよ。でも、りんりんのときみたいに、興味津津ですって感じもされてみたい!」

 

「あこちゃんは……望みあるかな?」

 

幹彦くんは女性の胸が大好きだ。そしてそれを隠したりしない。

 

でも、別に嫌がることをしてるわけじゃない。

 

はぐみが、そういうのは恥ずかしいことをわかっていて、はぐみには、そういうことはしないんだ。

 

はぐみのことを考えてくれるって思うと、すっごい嬉しい。

 

「あたしはけっこう大きいでしょ? こないだ触らせてあげたよね?」

 

「その節はありがとうございました。日菜先輩はけっこうなものをお持ちだと思ってます」

 

「でしょ? でも麻弥ちゃんとは扱いが違うんだよなー」

 

「ふっ、人と比べても仕方ないですよ。麻弥先輩は麻弥先輩、日菜先輩は日菜先輩。扱いは違えど、別に嫌じゃないならいいじゃないですか」

 

「そうだけどさー、なんか腑に落ちないんだよねー」

 

「その辺は切り替えです。それより、はぐみが恥ずかしがるんで、話題を変えましょう」

 

「え? はぐみちゃん、こういう話、苦手?」

 

「う、うん。だって、恥ずかしいよ……」

 

みんなすっごく大胆だと思う。

 

男の人が女の人に興味を持ってくれるのが良いことなのはわかってる。でも、恥ずかしいものは恥ずかしいよ。

 

みーくんだって、ハロハピ以外の人がいるときは幹彦くんのボディータッチを嫌がってるでしょ。まあ、かのちゃん先輩はどんな状況だって幹彦くんの近くに行くけど。

 

「はぐみは本当に可愛いなあ」

 

「み、幹彦くん! だから恥ずかしいってば!」

 

「心からそう思ってるんだよ。この恥ずかしいは慣れてくれ」

 

「も、もうー……」

 

幹彦くんはいつも可愛いって言ってくれる。

 

はぐみがソフトボールで手がゴツゴツだよって言ったときも、はぐみの手を優しく触ってくれて、すごく温かい手だって言ってくれた。ちょっと豆の痕があっても、はぐみは変わらず可愛いよって言ってくれた。

 

すごい嬉しかった。

 

「幹彦くん、あたし、あたしは!?」

 

「日菜先輩も可愛いっすよ。あこちゃんも微笑ましい」

 

「えー、なんか、はぐみちゃんと違くない?」

 

「微笑ましい? あこは格好いいと思うんだけどな」

 

「みんな同じですよー。はい、ごちそうさまっと」

 

綺麗なお皿が3枚目!

 

「おおっ!」

 

「完食だー!」

 

「幹彦くん、さすがー!」

 

幹彦くんが来てから、あっという間だった。

 

はぐみたちも、なんだかやり切った感があって、すごく嬉しい。

 

「少し冷めてたけど、美味かった」

 

「うんうん。幹彦くんも嬉しい。あたしたちも嬉しい。サイコーだね!」

 

「日菜先輩、あんまり反省してないですね。……まあ、こういうところで楽しくて羽目を外す気分はわかるので、よしとします」

 

呆れた顔もしたけど、幹彦くんも楽しそうに笑ってくれた。

 

 

 

その後、すぐにゲレンデに戻らず、少し休憩することにした。

 

みんな言葉は少ないけど、ゆったりした時間が流れる。

 

「もうすぐ冬休みだねー」

 

「あこはもうすぐ卒業式だよ」

 

「エスカレーター式の学校でも卒業式ってやるんだ?」

 

「うん! 別の学校に行く人もいるし、中学生から高校生になるからね。区切りは大切なんだって」

 

そういえば、はぐみたちも卒業式をやった。仲の良い友だちはみんな残るから、あまり覚えてないけど。でも確かに、これからは高校生だぞーって思ったのは覚えてる。

 

「ふーん。なら、卒業おめでとう、あこちゃん」

 

「ありがとー!」

 

はぐみと日菜ちゃんも幹彦くんに続いてお祝いした。

 

「はは。じゃあ、お祝いにデザートでもおごってやろうか? なんて、今は無理か」

 

おどけたように幹彦くんが言った。

 

「いいのっ!?」

 

「え、食えんの?」

 

「やたー! 実はバナナジュースが気になってたんだ!」

 

「ジュースだったら……いけるのか?」

 

確かにバナナジュースは美味しそうだった。疲れた体に甘いものって最高だよね。

 

「いいなー、あこちゃん」

 

「日菜先輩もいいですよ。はぐみも、もし飲めるんだったら買うぞ?」

 

「え、いいよ。ジュースなら飲めるけど、幹彦くんに悪いし」

 

カレーを手伝ってもらったのに、更に奢ってもらうなんて幹彦くんに悪い。

 

「そんなの気にする仲じゃないだろ? 飲めるなら行くぞ」

 

「……うん、ありがとね、幹彦くん」

 

「おう」

 

ニコッと笑う幹彦くん。

 

幹彦くんのこういう優しさを感じると、心がすごいぽかぽかしてくる。優しい兄ちゃんが出来たみたいで、すっごい嬉しい。

 

いつもありがとう。幹彦くん。

 

 

 

「ねえ、バナナジュースにアイス乗せられるんだって! るんってしない?」

 

「ほんと!? あこ、やってみたい!」

 

「はぐみも! アイス、美味しいよね!」

 

「いや、お前ら絶対それで後悔するだろ!? それは止めとけ!」

 

幹彦くんは断固としてアイス乗せは許さなかった。

 

なんだか父ちゃんみたいだなって思った。




エピソード「青空カレー」の続き話をイメージしました。
あの話の会話が好きすぎて、スラスラ書けました。去年のエイプリルフールとタメを張るカオスっぷりが大好きです。無音は本当に止めてほしい。笑いが止まらなくなるw
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