(仮題)とある転生者の異文化体験   作:ピッピの助

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たくさんの感想ありがとうございます。全て拝見させていただいています。
「···アンダーテール生み出したのなら青鬼、魔女の家、id、マッドファーザー···ゲームの可能性は無限大さ」 ゲームが未熟な環境でも作れる作品を題材にしましたが、やっぱり名作ぞろいですよね。単純にゲームがおもしろい。これがすごいです。
「ヒロイン多いのに元ネタ知らねえから、画像検索とか公式HPチラ見しながら読むの大変だけどな!_(┐「ε:)_」 ギスギスOKなら超名作ですよ。特にアニメ2期がおすすめで、それを見てくれれば雰囲気はだいたい掴めます。時間がないなら2期OPだけでもどうぞ。2期を見終わった後だとマジで泣けます。なんなら曲を聞いただけでもジーンと来ます。ぜひ! ギスギス無理ならガルパピコをどうぞ。1話3分のアニメですが、バンドリ要素が凝縮されてます。ぜひ!!
「リサ姐がただただかっこいい」 ありがとうございます。キャラが好きだからこの小説を書いてるので、彼女の魅力を少しでも表現できたなら、とても嬉しいです。
「もともと4足哺乳類は普通みたいだし」 ナチュラルにケモノ扱いっていうw
「花の慶次のパチンコの曲やねよっしゃあ漢歌 他の曲も名曲揃いよ」 やっぱり他の曲もあるんですね。完結後に調べさせていただきます。ちょっと楽しみです。
白鳥婆さん、人気ですね。難しかったキャラなので、好評なのは嬉しいです。ひめちゃんは気づいたら近くにいましたw
掲示板も好評で嬉しいです。テンポ良い感じを目指してます!


今回からはアニメ2期開始です。飛ばして行きます。


17話

春が来た。

 

春と言えば、出会いに別れ、そして新しいことに挑戦する季節だ。

 

まあ、別に大した出会いも別れもなかったんだけどね。別れはまあ、高校で見たことのある先輩が卒業してくんだなー、みたいな程度だし、出会いに関しちゃあコレと言ったものはない。せいぜいライブをしたときに、新しいお客さんと出会ったり、会場のスタッフと顔見知りになったくらいだ。

 

挑戦。これについても特筆すべきことはない。昨年度は慌ただしい中でも、やりたいと思ったことには片っ端から手を付けていったので、今また新たに始めたいことも思いつかない。

 

いろいろ誘われてはいる。花音には茶道に、はぐみにはソフトボール、イヴには剣道、日菜先輩には天体観測、リサ先輩にはダンス(!?)、変わり種としては、有咲から盆栽はいいぞーって勧められてる。

 

どれも興味はあるんだけど(ダンスは見る専)、部活としてやりたいかって言われると、そうでもない。みんながいるときに、ときどきお邪魔して、軽く楽しめればいいかなって感じ。あと、盆栽はおもしろそうだけど、たぶん枯らすと思うから却下で。

 

有咲が毎日、盆栽の世話に来てくれるならいいぞって言ったら、し、仕方ねーな……って言ってくれた。でも、有咲に家に来られると、毎回ちょっかい出して学校に遅刻しそうだし、有咲は俺の家に毎日くるほど体力がないのでお断りしておいた。

 

有咲は毎朝、香澄ちゃんと一緒に登校してるし、なんと生徒会書記に就いたから、毎日が忙しいだろう。今だけしかできないことに全力を出して、その後、余力があったら俺のところへ来るくらいで良いよ。俺はそれだけで嬉しいから。あ、でも夜は覚悟しておくように。

 

そんなわけで、新しいことないかなってぼんやり考えつつも、なにも始められない状況が続いている。

 

悩んでいると、こころに遊びに行きましょう! って誘われて、ホイホイ付いて行ってしまうのも原因かもしれない。

 

でも、これはすごく幸せなイベントなんで、問題ない。

 

あと、花見はたくさんした。

 

こころの家に見応えのある大きな桜が何本も立っていて、その下でシートを広げて、のんびりと花見をした。家の敷地内だから人目もないし、本当に見頃の桜だった。こころの家って敷地内に噴水があってさ、水面に浮かんだ桜が水面を滑るところも見てて楽しかった。ときどき水に乗って飛び上がってたしね。別日にやった香澄ちゃんとか有咲、イヴなどがいた花見は、打って変わって賑やかなものとなり、それはそれでおもしろかった。

 

あとは桜が散る間際に彩先輩主催の花見にも参加した。参加者は彩先輩、花音、麻弥先輩、リサ先輩、美竹さんだ。さすがにこの面子では花音は大人しかった。みんなで野菜スティックをつまみながら、のんびりとした時間をすごした。いや楽しかったし、悪くなかったけど、野菜スティックか……。

 

なんていうか、ガッツリしたものが食べたくなるよな。久しぶりに三郎系のラーメンが食べたいな……。

 

そういえば、有咲が生徒会書記になったんだけど、実は燐子先輩が生徒会長に就任したらしい。全く予想もしてなかった人選なんだけど、有咲曰く、燐子先輩も燐子先輩の考えがある、とのことだ。

 

よくわからなかったけど、とりあえず応援したいと思ってる。

 

さし当たっては、もうすぐ花女は文化祭が開かれるはず。それに参加して、燐子先輩の勇姿を拝みたいと思ってる。バンド活動と違って湊先輩と氷川先輩も常に側にいるってことはないだろうから、じっくり攻めてみようかな。

 

あ、ちなみに日菜先輩も生徒会長になったらしい。すごいね。

 

音楽の話をしよう。

 

と言っても、ハロハピの活動はいつもどおりなのだが、まあ、少しは珍しいこともある。

 

Galaxy(ギャラクシー)でライブをした。

 

Galaxyは100人定員ほどのライブハウスで、最近リニューアルオープンしたばかりだ。

 

それまでハロハピは全く面識がなかったんだけど、まりなさん経由でイベント出演のオファーがあった。どうやら、Galaxyのスタッフはまりなさんの知り合いらしく、そのリニューアルオープンイベントを迎えた当日になって、出演予定者にどうしても外せない用事ができてしまい、代役がいなくて困っているとのことだった。

 

ハロハピは、困ってる人がいるなら! と出演を快諾。

 

そしてGalaxyで急きょライブをすることになった

 

まりなさん経由だから当然というか、このイベントに参加するバンドはガルパと同じだった。うちとロゼリア、アフターグロウ、少し遅れてポピパの参加も決まった。

 

パスパレは彩先輩、白鷺先輩、イヴに他の仕事が入っていたようで不参加。偶然、仕事が入ってなかった麻弥先輩と日菜先輩が応援に来てくれた。最近はパスパレも大人気だから仕方ない。

 

GalaxyはCircleに比べて、こじんまりしてる印象が強い。でも、人数が少ないってことはお客さん全員との距離が近くなることなので、いつも以上にお客さんは盛り上がっていたと思う。

 

まあ、久々にポピパの演奏を見れたし、Galaxyのスタッフも大喜びだし、まりなさんの顔を潰すこともなかった。満足の結果である。

 

プログラムが全て終わり、最後に出演バンドみんなでお客さんにご挨拶ってところで、ロゼリアから発表があった。

 

今度、ロゼリアの主催ライブをするらしい。すごいね。

 

そして続いて香澄ちゃんが手をあげた。

 

なんと、ポピパもライブをするらしい。マジかよ!?

 

ステージから退出した後で有咲に聞いてみたら、どうやらその場で決めたらしい。香澄ちゃんの思いつきだとか。

 

まあ、でも、ポピパの演奏を聞けるのは純粋に嬉しい。有咲には、共演バンドが必要なら、ぜひ声をかけてくれって伝えておいた。ポピパのためなら、間違いなくハロハピも参加するだろうからね。

 

そんな話をしているとリサ先輩が悲しそうな顔で話しかけてきた。

 

ロゼリアには、そんなこと言ってくれなかったじゃん……。とのこと。

 

いや、ロゼリアの主催バンドにハロハピって……合わなくないですか? そう聞いてみた。

 

悲しそうな顔のまま、上目遣いで、ダメ? と聞いてきた。

 

そう言われちゃあ仕方ない。こころ達も俺がなんとか説得しよう。

 

なんてな。いくらリサ先輩の頼みでも、俺たちの出演はやっぱりどうかと思う。ポピパだったらアクセントになっていいと思うけど、ハロハピは別方向に全速前進してるので、さすがに噛み合わなすぎる。

 

こうしてお願いされること自体は悪くない。それどころか、あざとくても、可愛い先輩に、可愛くお願いされているので、すっごく気分が良い。

 

でも、やっぱりメインのロゼリアが輝けるライブって考えると、俺たちの参加は控えた方がいい。涙を飲んで、お断りするしかないんだ。

 

決して、有咲に睨まれてるからではない。そうだよね。今ちょうど話してたんだから、近くにいるよな。別に有咲を放っておいて鼻の下を伸ばしてるわけじゃないからな。

 

そのことをリサ先輩に伝えた。

 

リサ先輩は、そっか……、と言った。

 

そして嬉しそうな顔をして、ロゼリアのこと考えてくれたんだ、ありがと! と言ってくれた。

 

うん。悪い気しないね。

 

リサ先輩はやっぱりコミュ力が高いなと思った。

 

 

 

そして最後にVtuber関係だ。

 

これに関しては、まあ、いつも通りというか、いつも通りじゃないというか……。

 

チャンネル登録者数は一時期800万人の大台に乗った。そして、その1ヶ月後には700万人になっていた。

 

原因は明快。海外とケンカしてるからだ。

 

発端は向こうだし、許す気なんてサラッサラないんだけど、セントー君のチャンネル登録者は海外の人の方が多いから、このように目に見えてチャンネル登録者が減っているというわけだ。

 

まあ、そのわりには100万人しか減ってないってすごいと思うんだけどね。本来なら300万人くらいまで一気に下ると言われたのに、なにが良かったのか、今のところは下げ止まっている。

 

最初の1カ月以降は、海外ファンがちょっとずつ減る数と、日本ファンが増える数がいい感じにマッチして、チャンネル登録者の増減なしって状況が続いてる。

 

寄付についても、それまであった海外曲用の寄付を削除した。もう、海外に言われて公開する必要もない。海外の歌も嫌いじゃないんだけど、やっぱり日本の歌が好きだ。まあ、気分で英語歌詞の歌を投稿するかもだけど、海外限定で曲を思い返すことは、もうしない予定。

 

でもなぜか、それ以外の寄付が急増した。海外曲用の寄付がなくなって、そっちに寄付してた外人が、別のところに対象を変えたらしいんだけど、そんなことして何になるのか理解できない。一応、正規ルートだと国外からは聞けないんだけどな。

 

当然、動画投稿の頻度も上がったのだが、こいつらがいつ消えるかもわからないので、安易に目標金額の釣り上げもできなかった。

 

でも、さすがに投稿ペースが月3になると忙しいので、そろそろ値上げを検討してる。これで図ったように海外ファンが消えたら、そのときはそのときだ。一本取られたなって動画のネタにでもしよう。

 

たぶん、去年のグランミー賞の頃からだろう。セントー君の名前がテレビに出るようになり、一般にも少しずつ認知されてきた。

 

そのおかげで、セントー君へのオファーは急増したらしい。断ったはずの音楽レーベルから、再びお誘いメールが届いたり(初期勢曰く、あり得ないくらいの高待遇らしい)、テレビ番組からのお誘いはガンガン来てる。昨年末の紅白への参加依頼が来たときは、他に出すヤツいないの? なんて思ってしまった。

 

ちなみに、メールは初期勢にチェックを依頼してる。謝礼出すよって言ってるんだけど、日頃から目にする有名所の、あの手この手で気を引こうとする勧誘メールを見るのが楽しいらしい。ロハでいいから見せてくれって言われてる。しかも複数人にだ。

 

まあ、こいつらが楽しいならOKだ。ヤバそうな情報は回せよって言っておいてある。

 

あ、ちなみに紅白は断ったよ。話題性はあるだろうけど、さすがに日本全国の有名人と肩を並べるのは恥ずかしい。Vtuberの舞台は画面の中だけだからね。

 

そういえば、去年の終わりごろから、男性Vtuberを見かけることがあった。それまでと違って、中身も恐らく男性のVtuberだ。

 

昔ならいざしらず、ある程度、この業界の知識がある今では、リアル男性の参入は理解し難い。

 

前世ならわかるんだよ。好きなゲームをやって、リアクション取って、お金貰って、また次のゲームをやる。実際の苦労は計り知れないけど、ゲーム好きなら誰もが憧れる生活だ。まさに遊びながら暮らしてる感じだ。

 

でも、今世じゃ、ゲームなんて碌なものがない。最近ようやく、おもしろいゲームも出てきたが、これだって俺のところの初期勢のおかげだ。

 

きっかけは、もう2年以上前になるかな?

 

Vtuber開始当初から、おもしろいゲームがないって嘆いていた俺を見かねて、初期勢の社長の1人が、本業の片手間にゲーム会社を立ち上げたんだよ。

 

名前はディアーゲームス。略称ディアゲ

 

なんか潰れた会社のベテラン社員をヘッドハンティングしまくったらしいよ。初期勢の社長の会社から、有能な社員を1人異動させて、立ち上げたゲーム会社のトップに据えたらしい。なんとそいつも初期勢だったりする。

 

お前らの会社どうなってんだよって気もするけど、たぶん俺にとっては良いことなのだろうから、口にはしないでおく。

 

当初、俺はアドバイザーとして参加した。今あるゲームの中でも、わりとスムーズに開発に移れる楽しいゲームの案を出せって。

 

……まあ、俺が言い出したことだけどさ。お前ら、遠慮ないよな。

 

とにかく、低品質のソシャゲはあったので、ネットゲームが良いかなって思った。それで登場したのがNFO。

 

これが爆発的な人気となった。

 

それまでのNPCと恋愛するのがメインのゲームとは異なり、NFOはプレイヤーキャラ同士が協力しあって冒険するものだ。新鮮だったのか、あるいは有能社長の手腕が発揮されたのか、とにかく流行った。

 

俺はどちらかと言ったら、ゲーム内まで人間関係を気にするのは嫌なタイプなので、NFOは初めのころにプレイして、それっきりだった。

 

どちらかと言えば、そこからが本番だ。

 

初期勢と激しい交渉のもと、開発ラインの1つを得ることができた! 

 

赤字を出したら、俺のポケットマネーで全て穴埋めするって非情な条件だが、利益が出ないとダメだからね。仕方ない。

 

それに金ならある。札束ビンタは俺の得意技だ。

 

ゲーム開発の知識はないので、案だけ出して、あとは専門家に丸投げする。ちょいちょい様子を見に来て、あーだこーだとダメだしするのが俺のお仕事。

 

専門家たちには終始、理解できないって顔をされる。しかも、こうした方が無難では……、と修正案を提示される始末。

 

こいつら、自分の元いた会社が業績悪化で倒産したことを覚えてないんだろうか。そこでゲームを作ってたのがお前らだぞ? どの面下げて、こうした方が売れるなんて言葉が吐けるんだよ。

 

まあ、気持ちはわかる。巷で人気のゲームに寄せてった方が、売れる目処がつきやすいってのもわかる。でも、それは俺がやりたいゲームじゃない。

 

なあに、赤字を覚悟すれば、俺が好きなものを作っていい環境なんだ。それなら俺がやりたいゲームを復活させて、それを楽しいって思ってくれるヤツらを探すんだ。そうすれば、そいつらから、俺もゲームを作りたいってヤツらが生まれるだろ? んで、俺はようやく、その初プレイのゲームを楽しめるって寸法さ。

 

これが賢い人間のやり方よ! こんなの売れません、だって? うるせー! お前の案だと男キャラしかいないじゃねーか! それで恋愛ものとかケンカ売ってんのか!

 

真面目な顔してそんな提案してくるので、本当に人材が乏しいと感じてしまう。

 

まあ、これも予想はしてたこと。

 

当初から、経験のある人材はソシャゲ界隈に多くて、そいつらを引っ張ってくれば、似たような作品を作るだろうことは想定していた。

 

だからこそ、俺もゲーム開発を諦めて、人材投資なんてしてたんだけど、そこに社長らから一言。

 

技術は持ってるんでしょ? なら、それをトップが思うように使えばいいのよ。そいつらの意見はいらないの。ただ、私たちの思うように働かせなさい。

 

鬼かと思った。

 

一応、フォローしておくと、社長たちも、これが一時的な対応だと理解している。これが会社を発展させるつもりなら、さっきの社員とは逆の、自分で考えて、想像できる人が必要になると言っていた。でも、それは俺たちの考えを理解するだけの知識が必要。つまり人が育つのを待つしかないってことだ。

 

結局、人材育成から手を付けてると、5年単位の時間がかかると結論が出た。

 

当然、融資はしてる。

 

とはいえ、悠長に人が育つのを待っているのもつまらない。商機もあるように感じるのに、動かないのは性に合わない。なら、やろう。

 

てな感じで、さっきの案が出たらしい。

 

うーん、どちらにしろ鬼畜!

 

なんか使う側と、使われる側の温度差を感じた。経営者って恐いね(小並感)。

 

まあ、それなりの給与を出してるし、このままだとゲーム業界がどんどん衰退していくのも事実だから、早い内に対策を講じるのは間違ってないと思う。

 

だからこそ、俺の好きなゲームも何本か発売にもっていけたからね。感謝してる。

 

嬉しいことに他のゲーム会社も少しずつ息を吹き返してきたように感じる。うちのゲーム会社の有能社長が、他の会社に渡りを付けてくれたんだよ。

 

そんで、いろいろとゲームの話をさせてもらうなかで、前世のようなゲームが少しずつ出てきた。

 

まあ、売れるかはわからないけどね。

 

利益が出ても報酬とかないんだから、そこはお互い様ってことでお願いしたい。

 

だいたい近況はそんな感じ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学年が上がって、私の生活はこれまで以上に忙しくなった。

 

新しいクラスになったり、生徒会に入ったり、文化祭が控えていたりと、学校生活が急に忙しくなったのだ。

 

まあ、後ろの2つは自分が生徒会に入ることを決めたのが原因だから、仕方ないって言えば仕方ない。クラスが変わったのだって香澄と同じクラスになれたから、気心が知れてるって意味ではマシな方なんだろう。

 

だから、それだけだったら問題なかったんだ。

 

そう、もう1つ大きなイベントがある。

 

私たちポピパが、初めての主催ライブを行うことになったのだ。

 

ライブであれば、どこかのイベントや合同ライブに参加したり、Circleのホールを借りて、知り合いを呼んでクリスマスライブとかやったことがある。

 

でも、チケットを売るライブを主催するのは初めてだ。

 

金を払って見に来てくれるんだから、半端なライブはできない。否が応でも身が引き締まる思いだ。まあ、これまでだって半端な演奏してきたつもりはないけどな。

 

幸いなことに、ロゼリアが先に主催ライブをするので、生徒会長の燐子先輩や、生徒会役員兼風紀委員の紗夜先輩に話を聞くことができた。

 

しかも今度、ロゼリアの主催ライブに参加させてもらうことになった。実際にライブの流れを体験できるのは、本当に助かる。

 

生徒会の仕事に、文化祭の準備、バンド練習に、主催ライブの調整。まさに目が回るほど大忙しだった。

 

最近は幹彦も私に気を使ってくれて、デートも控え気味だ。文化祭と主催ライブが終わったら、たくさん遊ぼうって約束してる。

 

嬉しいけど、こいつは放っておくと何するかわからないので、少し心配である。

 

でも今日に限っては安心だ。なんと言っても今日はメン限の雑談動画の日だ。さすがにこの日ばかりは幹彦もバカなことはしないはず。

 

そんな保護者にも似た安心感を抱きつつ、放送開始時刻を待つのだった。

 

 

 

『というわけで、俺が想定したとおり、ゲームソフトの売れ行きは右肩上がりとなっています。思い知ったかお前ら。これまでの暴言を謝罪してくれてもいいんだぞ』

 

[まあ、緩やかだけど、確実に持ち直してきたな。これまでのクソみたいな実況動画に謝罪する気はないけど]

[好みはあるけど、最近、発売してるゲームは確かに楽しい。……あの時間の無駄でしかない実況動画は二度としないで欲しいけどな。むしろ、謝罪して欲しいくらい]

[鹿プロデューサー! 満を持して発売したAmo○g Usが大爆死したわけですが、そこのところは、どうお考えですか?]

 

この日の話題は最近のゲーム話だ。

 

Amo○g Usは、初期勢が設立したディアーゲームスが発売したソフトで、いわゆる人狼ゲームと呼ばれるものだ。最大10人の、全てプレイヤーが操作するキャラで遊ぶゲームで、インポスターと呼ばれる少数の人狼が、クルーと呼ばれる村人に正体がバレないように、村人をキルしていく。

 

村人は相談タイムで怪しいと思うヤツを吊るしあげて、人狼がいなくなれば村人の勝ち。逆に人狼と村人が同数になれば、人狼の勝ちというゲームだ。

 

一見するとシンプル過ぎて単調なゲームと思ってしまうが、ボイスチャットを絡めることで、その人の人間性が色濃く出て、とてもおもしろいゲームだ。

 

『わからん。なんでアレが流行らないんだ。Vtuberにはやりやすい企画になるはずだろ……』

 

[単純明快でわかりやすい。ゲームに疎い、私たちでも理解できるのはいいね]

[キャラも個性が見えてて可愛いよね]

[でも売れてないよね!]

 

『うるせーよ! くそぉ、ここで俺がプレイ動画を見せられたら、ユーザーも増えると思うのに……』

 

[お、ぼっち宣言?]

[Vtuber界一のぼっちは伊達じゃないっすねw]

[落ち込むなよ。一緒にプレイしてやったじゃん。楽しかったぞ。まあ身内ネタっぽくて一般公開できないと思うけど]

 

『それは俺も楽しかった。だから絶対に売れるって思ったんだよ。てか、動画投稿の仕方とか説明書入れてんだから、黙ってプレイしろって話だよな」

 

Amo○g Usが発売した当初、喜び勇んでコラボをしようと発言した鹿に対し、初期勢から友だちがいないことを指摘され、鹿は大いに落ち込んだ。

 

さすがに悪いと思った私たちが、仕方ないから遊んでやると言って、鹿とのプレイを申し出たのだ。

 

初期勢も慣れないボイスチャットを使って、頑張って鹿に合わせた。それが楽しかった。

 

鹿も大いに楽しんで、やっぱりこのゲームはおもしろいって結論になった。

 

ちなみに、はしゃぎすぎて、参加者を片っ端からキルしていった鹿が、他の参加者全員から警戒されて、毎度、何もしなくても人狼と疑われて、一番最初に吊られるという事件が起きた。

 

当然、鹿はブチ切れた。でも、ゲーム開始後、十数秒でキルされていた初期勢たちがキレ返すなんてこともあった。

 

[あの、いかにも動画投稿してくださいと言わんばかりの説明書、嫌いじゃないよ]

[露骨すぎて笑ったw そして誰も投稿してないっていうねw]

[そもそもゲームやるって選択肢がないからな。話題にもなってないから手を出す理由がない]

 

『そうなんだよ。全く話題になってないんだよな』

 

[なんでだろうな? シンプルだけど、おもしろいゲームだと思うよ]

[うーん、知名度が足りてないのかな?]

[広告はどんくらい力を入れた?]

 

『一時期は流行るだろうけど、そんな長生きするとは思えなかったから広告費には金かけてないよ。ゼロって言ってもいいくらいだな』

 

[え?]

[お前、それでどうして売れると思うんだよ……]

[社長勢、コメント]

 

広告が大事なのは私だってわかる。主催ライブのチケットだって、みんなが知ってくれないと売れないんだ。広告に力を入れないって売る気ねーの? って感じだ。

 

『社長、出番ですよ』

 

[ディアゲ社長:直属の上司として言うと、失敗させるのもいいかな? って思った]

 

『マジかよ!? 俺が相談したとき、それもいいかもねって言ったじゃん!』

 

[草]

[確信犯じゃないっすかww]

[鹿のラインって採算度外視だろ? 赤字が出たって鹿のポケットマネーで補填されるから、頭のリソースを別のところに注ぐのは経営者として正しい判断]

 

『いーや! 部下の失敗を黙って見てるだけなんて正しくないね!』

 

[ディアゲ社長:ちゃんとフォローする気だったよ]

 

『嘘くせー!』

 

[これは良い社長ですわーw]

[部下に失敗を経験させてあげようという上司の鑑]

[上司の心、部下知らず、ってか?]

 

『失敗を経験させようって、俺の財布で帳尻合わせする気、満々じゃん。くそ、逆転の目は……やはりコラボか?』

 

[だからお前、友だちいないだろ。今まで散々メール無視してた癖に、都合のいいときだけ相手を求めるなw]

[なぜ、そんなイバラの道を進もうとするのか……]

[マジレスするけど、今は無理だろ。巷じゃあリアル男性Vtuberのヒステリック検挙があったから、男性Vtuberにはみんな警戒してるだろうしな]

 

この事件は、一時期はテレビでも報道されてたので、ネットユーザーどころか、一般人も知ってる。Vtuber業界では、当然、誰もが警戒している。中身が女性の男性Vtuberも、ずっと肩身が狭かったと聞いた。

 

『だよなあ。あいつ、マジで何がしたかったんだろうな?』

 

[動画で楽しそうにしてるから、自分もやってみたくなったんだろ? 子どもかよって話]

[思いつきだろうけど、それで人の人生メチャクチャにするのは止めて欲しい]

[鹿も今はアメリカの問題で不安定だし、しばらくコラボは無理だろ]

 

『え、アメリカの話? もう終わったことだろ?』

 

[終わってねーよ]

[ここからが本番だから]

[放火するほどバカだとは思ってなかった。社会現象になったら、もっと広がるぞ]

 

『まあ、火をつけたのはヤバい。火をつけたヤツは、ことの重大さを理解してない感じはする。火災現場を見たことないのかね?』

 

[アメリカは広いから、日本と違ってもらい火も少ないんじゃない?]

[犯人は未成年だってよ。やっぱり若さ故かな]

[想像力の欠如って言えばそのとおりだけど、それで終わらないくらいには広がってる]

[アメリカにいる友人から、最近はセントー君絡みの話題をよく見るって聞いた]

 

この事件を知ったとき、私たちも少なからずショックを受けた。

 

家に火を放つ。そんな人として絶対にやっちゃいけない事件が起きたことで、思っていた以上にアメリカが不安定な国だとわかったこと、そんな事件が起きてしまうほどセントー君の人気が高かったことに驚いて、急きょメン限の相談タイムが設けられたほどだ。

 

そのときも結局、まあ外国の話だし、で終わったんだけど。

 

『日本もアメリカも、本人が不在でよくやるよな。他に話題がないのか?』

 

[一番、冷めてるのが当人っていうね]

[男が演じるアニメキャラのYoutuberって考えると新鮮ではある]

[国際問題、男、流行ってる歌、ファンの放火、詐欺横行、グランミー賞受賞歌手の尊敬してる人。どれを取ってもネタになるw]

[対話せんの?]

 

良くも悪くも、ひめちゃんのグランミー賞での発言がきっかけになった気はする。

 

『対話って何を話すんだよ。もう海外は知らん』

 

[頑固なんだからー]

[こいつ、へそを曲げると長いぞ]

[私のことは気にしなくていいって。鹿にSP付けてもらったらから無事だったし]

 

アメリカに乗り込んで、裁判吹っかけまくってた初期勢の弁護士は無事に帰国した。帰国時は鹿がジェット機をチャーターさせて、大量のSPに護衛されながら機上するという、一国の首相並の高待遇でアメリカの地を発った。それも現地では大きく取り沙汰されたらしい。これを知って、鹿が本気で怒ってると騒ぐヤツがいたんだとか。

 

ちなみに当事者の弁護士はと言うと、自分のためのジェット機に乗って、超ご満悦だそうだ。それだけでアメリカに渡った甲斐があったとのこと。

 

『気にしなくていいって言われても、気にするだろ。まあ、犯行予告したヤツが捕まったのは知ってるけどさ』

 

[ナイーブじゃん]

[気遣い助かる]

[明確に潰したいヤツもいないから、また同じようなことがあれば、すぐにロックかけるぞって感じで手打ちにするのがベストじゃない?]

 

『手打ちねえ。でも、どうせ次のバカが生まれるだけなんだろ?』

 

[まあ、そりゃあ……ねえ?]

[そういうことするヤツが生まれる土壌があるってことは、ホトボリが冷めたころにまた出る可能性はある]

[根本的なところを直すって、すっごく時間がかかるんじゃないか?]

 

『ここで、俺がリージョンロック解除しても、また海外で詐欺が始まるんだろ? 堂々巡りじゃん』

 

[否定はしない]

[そして片っ端から裁判ふっかけると]

[どうした? 今日、やけに頭が回るじゃん]

 

『そりゃあ、犯行予告されたら、どうしたらいいか頭くらい回すわ。海外の著作権回りの会社に頼むって言われても、どう考えたって、あいつら利益を取りに行くよな』

 

[著作権を主張するヤツは潰すけど、そいつらの代わりに使用料取ってくだろうね]

[まあ、会社として動くなら、利益を出さないといけないから]

[鹿にも著作権料が入るようになる]

 

鹿は公開している歌の使用料は求めない。むしろ好きに歌って、どんどん歌自体を広めてほしいと思ってる。これは当初から変わらない。

 

『いらねえよ。これ以上、金を儲けてどうするんだよ。結局さ、ロハで俺たちが望んでることをしてくれるヤツらなんて、海外にはいないんだよ。それなのに、俺たちが海外のために骨を折るのってどうなんだ?』

 

歌の使用料は払わなくていいと言っても、こうやって詐欺が起きる。私たちの知らないところで、アメリカ人同士が勝手に裁判が起こして争うことになれば、製作者である鹿も参考人として呼ばれる可能性がある。

 

それを裁判が行われる度に繰り返す。

 

確かにそれは手間だ。

 

[それで撤退するって頑固になってるのね]

[まあ、欲しい対価がないのに、労力使うのは無駄ってのはわかる。特に鹿はそれ以外にもやること多いだろうし]

[海外から、かなり寄付が入ってんだろ? それで現地の弁護士を雇って戦わせれば?]

 

『海外からの寄付はけっこう大きいよ。弁護士を雇っても充分すぎるくらいお釣りが出ると思う。でもさ、俺たちが弁護士を探して、報告受けて、調整してーって手間をかけるんだろ? 犯行予告するような国のファンのために? バカじゃん?』

 

[バカって言うなw]

[ファンを大切にしろw]

[こりゃあ犯行予告がトラウマになってますねw]

 

『当たり前だろ! 身内が海外で殺されるかもしれなかったのに、平然としてるバカがどこにいんだよ!』

 

[残当]

[……ああ、うん、嬉しいよ。それはマジで嬉しい]

[嬉しいけど、落ち着けよ、鹿]

 

こいつが私たちのために怒ってくれるのは嬉しい。こういう言葉を聞く度にファンで良かったって思う。私たちだって、その思いに応えたいと思ってる。

 

でも、それで下手を打つのは、巡り巡って鹿のためにならなくなる。私たちが懸念してるのが、それだ。

 

『とにかく! やっぱり海外は放置! 手打ちにして、なあなあがベストなのはわかった。でも俺が納得できない!』

 

[頑固だなー]

[私たちも腹括るしかないでしょ。こいつがここまで言うんだから。ハシゴ外しは女がやることじゃないって]

[アメリカが動く可能性もあるって聞くし、ちょっと不安……]

[いざとなったら、私たちも総力戦で戦う。それでいいじゃん]

 

私だって、他のみんなに比べればなんの力もない学生だけど、こいつの側にいるくらいはできる。私でもできることはあると思うし、なにかあったら、みんなに報告すれば、きっと良い案も浮かぶはず。

 

『大丈夫だって! いくら男が珍しいからって、国が動くわけ無いだろ。お前らは気にしすぎなんだよ! もうちょっと心に余裕を持とうぜ!』

 

イラッとくる。

 

[あ、でも、この伸びた鼻はへし折ってやりたい]

[助けるにしても、ちょっと後悔させる時間は欲しいね]

[自分がどれだけ恵まれた環境にいるかはわからせたい]

[最悪の場合、アメリカに出頭しろなんてことになる可能性はあるんだからな。まあ、そうなっても日本政府が許さないと思うけど]

 

『上等だよ。もう関わりあう気はないけど、どうしても来いってことになったら、乗り込んでやる』

 

[自棄になんなよ]

[落ち着け。いくらお前が男でも、さすがに相手が大きすぎる。有利な形を作らないと、マジで取り返しの付かないことになる。絶対に先に私たちに相談しろ。マジで言ってるからな]

[ガチの事態になるなら政府と足並み揃える必要が出てくるはず。考えんの面倒くさくなって突撃は絶対にすんなよ!]

 

『そうじゃねーって。たとえ、アメリカに行かなきゃならなくなっても、俺は負けないぞってこと。なにごとも心が大事だろ。あ、そうだ。丁度いい流れだな……』

 

[どうした?]

[流れ?]

 

カチカチとクリック音が聞こえる。何かを探しているようだ。

 

『たとえ大きな相手でも、絶対にくじけてなるものか。そんな気持ちを込めて歌いました』

 

[ん?]

[この流れ、新曲か?]

 

『聞いてください。……恨みはらさでおくべきか』

 

[おお! ……ん?]

[なんかタイトル……不穏じゃね?]

[嫌な予感がするんだけど……]

 

私も嫌な感じがする。この曲名はあまりにも不安だ。

 

『ちなみに、DMCシリーズです』

 

[ちょ、おまっ]

[ふざけんな、またこのシリーズかよ!]

[お前、だからDMCはダメだって言っただろ!]

 

やっぱりコレか。まさかまさかと思っていたが、続きの歌を作っていたのか。そんな頭が痛くなる思いと、みんなの悲鳴がリンクする。

 

まあ、もしかして、万が一、まともな歌の可能性もあるしな。DMCだからって歌も聞かずに否定するのは良くないよな。

 

 

 

……数分後、現在置かれている状況を考慮して、満場一致でこの曲はお蔵入りとなった。




イメージ曲
恨みはらさでおくべきか(デトロイト・メタル・シティ)

満を持して「スラッシュキラー」の登場だと思いましたが、話の流れ的にはこっちかな? と思い、選択しました。あの娘を〇〇〇も軽いノリで笑えますよ。絶対に外じゃ歌えないですけど。
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