(仮題)とある転生者の異文化体験 作:ピッピの助
ちなみに分割後の19.6話(松原花音視点)は加筆なしです。
初めてテレビや雑誌以外で男性の笑顔を見た。
私はすっかり、その笑顔に見惚れてしまった。
近づくと思った以上に大きい彼に、不安と嬉しさが混じったドキドキを感じてしまい、ふぇぇ、という言葉しか出なかった。
ほんの少しだけ離れたところでキーボードを設置して、準備完了と佇む姿が格好良くて、ついチラチラ様子を伺ってしまった。
やがて、こころちゃんが歌い出した。慌てて私もドラムを叩く。ただ一定のリズムで叩いてるだけだったけど、こころちゃんは嬉しそうに歌い続ける。
そして、彼のキーボードの音が入った瞬間、演奏に一気に色が付いた。
演奏が終わった後、こころちゃんが黙ってしまった。
まるで、自分がどこにいるのか確かめるように、不思議そうに周りを見渡していた。
私と彼が、こころちゃんの様子を不審に思って近づいた。
こころちゃんが私たちに気づいた。
パッと満面の笑顔になった。そして、そのまま私たちに飛び込んできた。
急に飛びつかれて、私はなすすべもなく後ろに倒れこんでしまう。でも痛みはなかった。
彼が私を抱き寄せるように倒れこんでくれたのだ。
包み込まれるように抱きしめられる。初めて感じる男性の温もり。顔が赤くなる。
ドキドキする気持ちを抑えられない。
ふえぇ、という声を出しながら、彼を見る。
……彼は、こころちゃんを見つめていた。
痛いくらいに心臓が鼓動を打つ。さっきのドキドキとは違う、嫌な感じのドキドキが混ざってきた。
焦りも感じる。頭が少し痛くなってきた。
抱きついてきたこころちゃんは、まるでキスしちゃうんじゃないかってくらい彼との距離が近い。見つめ合う2人。
そして、こころちゃんが言った。
「好き。大好き。あたしと結婚してください」
彼は突然の告白に驚いた顔をした。
でも、ゆっくりと嬉しそうな笑みを浮かべる。
今にも口を開くという、そのとき。一瞬だけ先に、私の口が開いた。
「あ、あの! ……ば、場所を……変えませんか?」
その言葉が彼――幹彦くんとこころちゃん、そして私の人生を変えた。
高校3年生になり、高校最後の文化祭の準備が始まりそうな頃、急きょ羽女との合同文化祭を行うことになった。
正直に言うと、それがどういうことか、いまいち想像できなくて、燐子ちゃん大変だなーって印象しかなかった。でも、日菜ちゃんに文化祭合同記念バンドに誘われて、それに参加させてもらうことになり、初めて大きなイベントになるんだと実感した。
メンバーは彩ちゃん、リサちゃん、モカちゃん、つぐみちゃんに私。みんな良い人だし、きっと楽しい思い出になると思う。
今日は合同記念バンドのメンバー5人に日菜ちゃんを入れた6人で顔合わせをした。担当楽器の確認や、当日はどんな曲を演奏するか話し合った。日菜ちゃんの鶴の一声もあり、大まかな形が整い、後はライブに向けて準備を進めようという事になった。
その後、私と彩ちゃんはクラスの出し物の手伝いがあったので、他の4人と別れて、花女へと一緒に戻ることになった。
「ライブ楽しみだね!」
花女の最寄り駅まで向かう電車を待っているとき、彩ちゃんが楽しそうに言った。
「うん。……ふふ、彩ちゃんと一緒にバンドをやるって、なんか新鮮だな」
「私も花音ちゃんと一緒に演奏できて嬉しいよ! きっと、とびっきりの思い出ができると思うんだ!」
「とびっきりの思い出……なんか良いね。私もすごく素敵な思い出になると思うな」
何かに挑戦しようと思って誘いに応じたけど、それが素敵な思い出につながるのなら、すごく嬉しい。
「うん! 高校最後の文化祭だもん。一緒に頑張ろうね!」
「高校最後か……そうだね、いろんなことがたくさんあったけど、あと1年で卒業なんだよね」
1年は慣れない生活にバタバタして大変だった。2年はハロハピに出会うことができて、1年生のとき以上に楽しくも忙しい毎日を送っていた。そしてもう、最後の1年になった。
あっという間だったな。
「うん……。私ね、去年はいろんなことが充実して、すっごく楽しかったんだ! アイドルを本格的に始められて、忙しい毎日だけど、楽しくてしょうがなかった」
「テレビにライブで彩ちゃん大忙しだったよね。それなのに学校行事にもしっかり参加してて、すごいなって思ってたよ」
年度も後半になるにつれ、パスパレをテレビで見る機会がすごく増えた。それまでも練習で忙しかったと思うけど、テレビで見るようになってからは輪をかけて忙しかったと思う。でも彩ちゃんは、それに疲れる様子はなくて、それどころか毎日が楽しくて仕方ないって言ってる。
他にもガルパで新年会や、つい最近やったお花見の幹事だってしてるし、薫さんのところの演劇部の監督補佐もしてた。
素直にすごいなって思う。
「えへへ。忙しかったけど、楽しい楽しいイベントだもん。やっぱり両立させたいなって思ったんだ」
「うん。普通の人よりずっと頑張ってたと思うよ。彩ちゃん、すごく楽しそうだった」
「ありがと、花音ちゃん。1年の頃も頑張ってたけど、やっぱり去年が一番、充実してたなー。去年の文化祭もバタバタしながらも楽しめたし、スポーツ大会も体育祭も楽しかった!」
「去年は1年生の頃とは違ったの?」
「そうだね。やっぱりアイドルになって、自分がやりたいこと、楽しいことを、思いっきり楽しまないといけないと思ったんだ。……うん、そう思えるようになったから、2年の学校生活がみんな輝いていたんだと思うよ」
「そういえば、ガルパで合同練習をしたときにイヴちゃんも言ってたよね」
バタバタした思い出のある合同練習のとき、イヴちゃんが彩ちゃんに教えてもらったって言ってたはず。
「うん。実はこれ、セントー君から貰った言葉なんだ」
「え、それって……幹彦くんってこと?」
「うん。高校1年生の3月くらいにセントー君の動画を見るようになったんだけど、それからすっかりハマっちゃって、雑談動画で質問をしたこともあったんだ。そのときに貰ったの」
「へー。彩ちゃんが幹彦くんの活動に詳しいことは知ってたけど、そんなことがあったんだね」
初めて聞いた。意外と幹彦くんの活動がガルパのみんなに影響を及ぼしていることは聞いてたけど、彩ちゃんもそうだったんだ。なんだか、幹彦くんがみんなの助けになっていたと聞くと、誇らしい気持ちになる。
「いざ本人を前にすると恥ずかしくて言えないんだけどね。実はすごい助けられてるんだ」
「そうなんだ。彩ちゃんと幹彦くん、よくメールしてるんだよね。去年の体育祭あたりから、頻繁にメールするようになったって幹彦くんから聞いてるよ」
彩ちゃんがテレビやライブで泣いたり、変わったことをすると、必ず幹彦くんが感想を送っているらしい。
今日もキレッキレでしたよ、とか。彩先輩はいつも全力だから見ていて楽しいです、とか。あ、もちろん可愛いですよ、とか送っているらしい。
……最後のは、フォローしてるつもりなんだと思う。たぶん。
今度、彩ちゃんに送ってるメールの内容を確かめた方がいいかもしれない。
「うん。それまでも、もちろん仲は良かったんだけどね。体育祭から話すことは多くなったかなー」
「幹彦くん、体育祭で彩ちゃんのことを見直したって言ってたよ」
「それって跳び箱のことだよね……ちょっと複雑かも……」
思い出すのは、障害物競走で跳び箱を飛べずにショックを受けてる彩ちゃんの姿。ちなみにその姿を偶然、幹彦くんが激写してしまい、彼のスマホからPCへと移動し、現在も大切に保管されているらしい。幹彦くんはこの写真を、神が与えた最高の一枚と呼んでいた。
ちなみに写真は外部に出さないことを条件に、彩ちゃんから保管を許可されている。そのときの彩ちゃんはすごい複雑な顔をしていたけど。
「そ、それだけじゃないよ。チアガール姿も可愛くて、すっごく可愛かったって言ってたよ」
打って変わって、チアガール姿はまさにアイドルと呼ぶに相応しいものだった。彩ちゃんの元気な姿と、可愛くツインテールに結んだ髪が相まって、敵も味方もつい目を向けてしまう程の魅力を放っていた。
いつもは親しみやすくて、すごく仲の良い友だちって思うけど、やっぱり彩ちゃんはアイドルなんだって思った。
「うん……確か、彩先輩がアイドルだってことを久しぶりに思い出しました! って言われたよ……」
「み、幹彦くん……」
気持ちはわかるけど、それを彩ちゃんに伝えるのはちょっと……。
そういえば、幹彦くんが彩ちゃんと連絡を取り合ってると聞いて、彩ちゃんのことをどう思ってるか聞いてみたことがあった。
他のアイドルには興味ないけど、彩先輩は別だ! とか。
こんなおもしろ――目が離せないアイドルは他にいないって! とか。
そんな、思い返してみれば褒めてるのか判断に迷うことを言っていた。まあ、幹彦くんの顔は純粋な笑顔だったので、本当に彩ちゃんがおもしろいって思っているのだろうけど。
「で、でも可愛いって言ってくれたからね。うん。男の子にそう言われるのってすごいことだよね」
「うん。幹彦くんがアイドルを褒めるって珍しいんだよ。あんまり芸能人とかアイドルは好みじゃないみたいだからね。あんなに素直に可愛いってアイドルを褒めるのは初めてだったな」
「だよねっ! うん、ポジティブに考えることにする。体育祭はほんっとーに楽しかったし、これで良かったんだよ!」
「うん。私も運動は苦手なんだけど、すごく楽しかったよ」
競技に参加するときは楽しいというより必死だったけど、お友だちがたくさん活躍しているところが見れて楽しかった。彩ちゃんだけじゃなくて、はぐみちゃん、こころちゃんに香澄ちゃん達も大活躍していたし、どの競技もおもしろかった。
「そうだよね! 一つ心残りがあるとすれば、千聖ちゃんが参加できなかったことかなー」
「お仕事だったんだよね。仕方ないことだけど、残念だったね……」
千聖ちゃんは体育祭当日にお仕事が入っていて、前もって体育祭不参加が決まっていた。とても残念だけど、千聖ちゃんはアイドルであり、人気女優でもあって、ロケで1週間も学校に来ないことも珍しくないので、仕方ない気持ちもあった。
ちなみに、それを知って、幹彦くんもなんとも言えない顔をしていた。残念そうな顔だけど、何やら考えこむような顔だった。
幹彦くんと千聖ちゃんの仲は独特だ。
知らない人から見ると、常に一触即発の会話をしているように思える2人だが、実は仲が良い。
お互いを厳しい目で見てるけど、同時にお互いを認め合っている。男であることや、有名な女優という立場にとらわれず、お互いの本質を理解し合ってて、それに素直な気持ちで接している。
2人に言わせれば、ただのマウントの取り合いらしいけど、そんな冷めた言葉で済ませられないほどの信頼関係が2人にはあると思ってる。
こころちゃんや私、美咲ちゃん、有咲ちゃんを除けば、ガルパの中で幹彦くんを最も理解しているのは千聖ちゃんだと思う。
千聖ちゃんと仲が良い私から見れば、キツイ言葉だって、アレは千聖ちゃんが幹彦くんに少し甘えてるところだって思ってる。
冷たい顔で幹彦くんに当たるときだって、千聖ちゃんの目か声はいつだって弾んでいる。千聖ちゃんは本当に嫌いな人には笑わない。笑顔で接するけど、絶対に笑わない。だから一目見れば、千聖ちゃんが楽しんでいることくらい気づける。
まあ、本当にヒヤヒヤする言い回しをする2人だから、それでも時々、やっぱり仲が悪いんじゃないかって思うこともあるけど。
あんまり一緒に要る時間は多くないようだけど、そんな独特な関係の2人だから、2人にしかわからない部分もあるみたい。お互いにドキッとするほど核心を突く言葉を言ったりもする。
幹彦くんに至っては、千聖ちゃんに自分の行動や考えが全て読まれてる気がするとさえ言っていた。……ごめんね。幹彦くんのことはたくさん千聖ちゃんに話してるから、たぶん私のせいだと思う。
千聖ちゃんは幹彦くんに興味を持ってるから、世間話で話した内容だってほとんど覚えてるんだと思うな。私との会話で出た話だってそうだし、もちろん幹彦くんと直接、話したことだってそう。
少し前に千聖ちゃんから、こころちゃんと幹彦くんと初めて会ったときのことを改めて聞かれたけど、これも幹彦くんとの会話で確信を得たらしい。
もう。まだ気を緩める段階じゃないと思うな。
千聖ちゃんは偶然とはいえ、私たちの計画の元を考えた人だから、事情を話して相談に乗ってもらいたい気はするけど、それを誰に聞かれるかわからない。
確かに、今はもう黒服の人が私の行動を監視してることはないみたいだけど、私が気づいてないだけかもしれない。私から漏れるなんて、絶対にダメ。
たぶん千聖ちゃんとお話するのが楽しくて、つい漏らしてしまったんだと思うけど、まだダメだよ。
そんな変な信頼関係もある2人だから、幹彦くんが、体育祭に千聖ちゃんが出れなかったことを、あの先輩のことだから確信犯だと思う、なんて言ってたのも、きっと幹彦くんだから気づけた何かがあるんだろうなと思う。
……うん、やっぱり2人ともすごく相性良いよね。
「今年は千聖ちゃんと一緒にチアガールできると良いなー。そうだ、花音ちゃんも一緒にやらない?」
「わ、私!? 私は……」
人前で踊りながら応援するなんて恥ずかしくできない。だから断ろうと思った。
でも考えてみれば、ハロハピでいつも知らないみんなのことを応援してる。それなら一緒なのかな?
何より、私がチアガールの格好をして応援したら、幹彦くんが喜んでくれるかもしれない。ううん、絶対に喜んでくれるはず。
「……うん、やってみようかな」
「本当! やったー! じゃあ、3人でチアガールやれるね! うわー、楽しみだなー!」
「そうだね。ちょっと緊張するけど……楽しいといいね」
「絶対に楽しいよ! それに幹彦くんも絶対に喜ぶと思うよ!」
「あ、やっぱり、わかる?」
「わかるよー! だって幹彦くん、花音ちゃん達の体操服姿を見て、うんうんって頷いてたよ。すっごい嬉しそうな顔してたもん」
「うん。すごく幸せそうな顔をしてたよね」
「イヴちゃんも視線に気づいて、可愛くポーズ取ってたよ。幹彦くんもそれを見て、イヴちゃんに親指をグッと立ててたなー。私は慌てちゃって上手くできなかったけど」
「あはは……迷惑かけてたら、ごめんね。私からそれとなく注意しようか?」
私たちはいいけど、彩ちゃんたちが居心地が悪いようなら言っておかないとね。そんなことで彩ちゃんとの間にしこりが残るの嫌だし。幹彦くんもそんなこと望んでないと思う。
「ううん、大丈夫だよ。上手く返せなかったけど、ああやって素直に行動する幹彦くんを見てると楽しいんだー」
「彩ちゃんもそう思ってくれるの?」
「思うよ! なんていうかさ、ネット上の落ち着いた人柄も素敵だなって思うけど、幹彦くんのああいう好きなことを楽しそうにやってる姿はいいなって思うよ!」
彩ちゃんはセントー君のファンだけど、セントー君と幹彦くんを同じとは見ない。
あくまでもセントー君はセントー君。幹彦くんは幹彦くん。それぞれを区別している。彩ちゃんもアイドルだから、切り替えることに理解があるんだと思う。
どっちの幹彦くんも好意的に受け入れてくれるのは、すごく嬉しい。
「私たちはアイドルだから見られるのが仕事なんだよね。でもその視線は好意的なものばかりじゃなくて、厳しかったり、そもそも私たちに全く興味がないものだって少なくないんだ。特に男の人の視線はいつも冷めてることが多くてね。そんな中で、あんなに嬉しそうにしてくれるのは、やっぱり嬉しいよ。イヴちゃんは当然として、日菜ちゃんや千聖ちゃんもそう思ってるんじゃないかな? 麻弥ちゃんは恥ずかしがってそうだけど」
「そうだよね。あんなに多くの人から見られていたら、そういう視線だってあるよね」
目に入るということは、それだけ様々な人の視線を集めることでもある。好意の有無に関わらずだ。
当たり前だけど、アイドルはそんな視線に真っ向から向き合わなければいけない。やっぱり彩ちゃんはすごいなって思う。
「アイドルは視線には敏感だよ。いつだってどう見られてるか気になっちゃうし……。でもだからこそ、幹彦くんみたいに、私たちのことを好意的に見てくれる人は嬉しいんだ。話していても楽しいし、すごく良い人だって思うよ!」
そういう彩ちゃんの顔には幹彦くんへの好意的な感情が見て取れた。
歌や音楽に対する尊敬の念、その人柄に対する信頼と安心の念、そして、ほのかに感じる心惹かれる思い。
少し前に、美咲ちゃんがリサちゃんから、彩ちゃんが幹彦くんに気があるみたいなことを言われて驚いていた。私も驚いた。美咲ちゃんと有咲ちゃん、気づいてなかったんだって。
美咲ちゃんや有咲ちゃんはあまり彩ちゃんと話す機会がないけど、こうやって話をしていれば、彩ちゃんが幹彦くんをどう思ってるかなんてすぐにわかる。
彩ちゃんはすごく素直な子だから、少し仲良くなればすぐにわかる。
だから、2人もきっと気づいてると思ったけど、そうじゃなかった。意外と彩ちゃんは隠し通せてるのかな?
間違いなく千聖ちゃんも気づいてるはずなんだけどな。それについては何も言わないんだよね。
まあ、千聖ちゃんも幹彦くんが他の男の人とは違うってわかってるから、あえて放って置いてるのかも。アイドルにとって、彼氏がいるということは、男性も放っておけない魅力がある証明になる。
パスパレの話題性を考えて、もしかしたら、あえて触れないようにしてるのかもしれない。
さすが千聖ちゃんだなって思った。
みんな幹彦くんのことを考えている。正直に言えば、ムッとする気持ちもある。でも嫉妬なんてしていられない。言い出しっぺの私が、こころちゃんを置いて、嫉妬でほかの女の子を遠ざけるなんて筋が通らない。
こころちゃんに一生、頭が上がらないくらい迷惑をかけてるのに、自分だけ感情のまま振る舞うことなんて、できるわけがない。
それに彩ちゃんみたいな良い人が仲間になるなら、すっごく運が良いことだって思う。明るくて、一緒にいて楽しくて、すごく前向きで諦めない。これ以上ないってくらい、求めていた人だ。だから嫉妬をして、幹彦くんとの関係に待ったをかけるなんて絶対にできない。
むしろ私は、それとなく2人がいい雰囲気になれるように動かないといけないんだ。
少しだけ引っかかる気持ちは、今度、幹彦くんにたくさん甘えて解消しよう。最近は有咲ちゃんが忙しくて、夜は欲求不満気味だから、とことん付き合おうかなって思ってる。これまでのテクニックをフル動員しないとダメかもしれない。
でも、カフェにも一緒に行きたいな。ひと駅先にオシャレなお店ができたらしいから、そこに行きたいな。うん。あとで誘ってみよう。有咲ちゃんが忙しいってことは夜もだけど、昼も時間があるってことだからね。ふふ、楽しみだな。
そういえば、さっきの合同記念バンドの打ち合わせで香澄ちゃんが来てた。どうやら新曲作りで悩んでるみたい。
今度、幹彦くんに相談したらどうかって勧めてみようと思ってる。