これが私からのバレンタインです。
漆月篦日 天気:雨
日記を変えた。前回のものと全く同じものだ。正直前のものは血まみれで書きにくかった。
それはそうと着々と脱出の準備は進行中だ。まぁ、脱出するのは大本営の返事が返ってきてからになるが……どうせ碌でもないだろう。
脱出の仕方を忘れちゃあいけないから、一応ここにも書いておくか?
バレないように常に持ってるから誰にも見られるはずがないし。
外出願いを出してそのまま帰ってこないだけだから書く必要もないか。俺が姿を眩ませた後の提督の為に引き継ぎ書でも作っておこう。
漆月坡日 天気:雨
大本営からの返事はまだない。しかし準備は着々と進んでいる。お金はほとんど使ってなかったから10数年は大丈夫だろう。
………戸籍とか消されてないよね? 大丈夫だよね? なんか怖いな……。
今日の秘書艦は朝潮。何でもかんでも指示を欲するので幾つか仕事を与えた後に座って見てろと言った。穴が空くほど俺を見つめていた。怖かった……。この指示はほんとに失敗だった……。
漆月緋日 天気:台風
(ビリビリに破れていて読めない)
漆月祔日 天気:豪雨
やらかした……。
もう寝よ。
漆月舳日 天気:晴れ
うん。もう吹っ切れた。
向こうがそういう態度なのだから仕方ない。俺はできる限り譲歩したのだ。
だからもういい。
それに、予想していたことだった。
ふはははははは!!!!
これで俺は自由になる!
艦娘たちには申し訳ないが、
俺は君たちの命を背負える器じゃない。
あの日、あの時。
彼女がその身で俺を救ってから、艦娘に対しての意識が変わった。どんなことをされても。どんなことを言われても。俺はあの時立てた信念を曲げはしない。
そう、たとえ────、
俺はできる限り君たちへ恩義に報いたと思う。
あの時助けてもらった。
国を守ってくれている君たちに。
だから渋々提督になることを了承した。
ほとんど無理やりだったが。
俺は提督を辞める。
勘違いしないで欲しいのが、俺は君たちを嫌いになったわけではないということだ。
恨んでも、恐れてもいない。
ただ感謝している。
俺が今現在生きているのは、君たちが救ってくれたおかげだ。国を守っているおかげだ。俺はそれを忘れるつもりはない。
君たちは尊い存在だ。そんな君たちの命を俺如きが背負っていいはずがない。
だから辞める。
さようなら。我が横須賀鎮守府よ。
さようなら。我が艦隊の皆よ。
さようなら。
どうか、君たち艦娘に幸多からんことを。
暁の水平線に勝利を刻めることを
祈っている。
「嘘……」
日記帳を持つ手が震える。思わず口から声が零れた。
日記帳を手放し、頭を抱える。
いつから。いつからバレていたの。ううん。今はそこじゃない。
日記はいつも万年筆で書かれてるから、インクの乾き具合を考えてこれが書かれたのはついさっき。ならばまだ間に合うかもしれない。
───私が? 私が止めるというの? 今まで1番辛く当たっていた私が? そんなの筋違いよ。私が止めていいはずないじゃない。
でも、でも。ここには彼が必要よ。彼にいてもらわなきゃいけない。そうじゃないと────壊れてしまう
なら、どうするか。
決まっている。
他の子を頼ればいい。
彼に1番近くて、1番お話している子。
────夕立。
提督:複数人で読んでいると予想。
艦娘:実際に読んでいるのは1人。共犯者あり。