雪風は陽炎型八番艦駆逐艦雪風です! 雪風が所属しているのは横須賀鎮守府と呼ばれる場所で、雪風以外にも多くの艦娘が在籍しています!
雪風はしれぇと話したことがありません。遠くから見たことはあっても、廊下ですれ違うことはおろか、執務室に近づくこともありませんでした。と言うのも、陽炎お姉ちゃんに止められてたからです。何でか聞いてみたら、きっと見てはいけない光景があるからと言ってました!見ちゃいけない光景ってなんですかね?
みんなはしれぇのことがあまり好きではなかったみたいです。それは行動を見てればわかりました。何でかわかりませんが、執務室に近寄ることがほとんどなかったです。私が出撃しても、旗艦の人だけが報告に行って、極力しれぇの所に行かせないようにしてました。
雪風はずっとずっとそのことを疑問に思っていました。
しれぇは悪い人なのかな?なんてことも考えました。でも、しれぇはみんなの為に力を注いでました。
ご飯は毎日3食食べれるし、美味しいです!お風呂も冷たい水風呂じゃなくて、あったかくて大きなお風呂です!
しれぇが来てから、環境が段々と良くなっていきました。なのにみんなの態度は良くなるどころか更に一層悪くなっていきました。
休みの日、雪風は日課の日向ぼっこをする為に中庭に行きました。
中庭には色々なお花があります。薔薇や向日葵、カーネーションなんかもあります!駆逐艦のみんなで持ち回りで世話をしているんです!また、一日中日が照っている場所なので、お昼寝や日向ぼっこに最適な場所です!
その中庭に向かっている途中で、歌声が聞こえてきました。
音源を探してみると、中庭の方から聞こえてきました。
透き通る、とは言えないけれど、とっても上手な歌声でした!
歌を聴きながら中庭に行くと、なんとしれぇがいたんです!
歌の名前は知りませんが、楽しそうに歌っていました! 雪風は遠くから眺めるしかできませんでしたが、また聴きたいと思いました。
それから一週間ごとにしれぇのお歌を聴けるようになりました!
しれぇ。しれぇは何でボロボロになっても雪風たちの為に頑張ってくれるのですか?
雪風にはわかりません。わからないから、しれぇをお手伝いすることができません。しれぇを守ることができません。
雪風は、一週間毎に窶れていくしれぇを見るのが辛いです。
お歌も元気がないものになってしまいました。お声も小さくなって、聞き取りづらいです。
しれぇ。どうか体を大事にしてください。
嫌です!嫌です!嫌です!
死なないで!死なないで!死なないで!
雪風は声が出る限り叫びます。
背中に小さな穴がありました。そこから血が溢れてきます。
しれぇといつか、お話しした日を思い出しました。
優しげな顔で、しれぇはこうして会話することが楽しいと仰っていました。
雪風はあなたの声が好きです。
雪風はあなたの優しげな顔が好きです。
雪風はあなたとの会話が好きです。
なにより。なにより。
あなたの歌う姿が好きです。
だから、どうか。
どうか。
もう一度。
雪風に、雪風の為に。
歌ってください。
しれぇ! 雪風、強くなりました!
「お、本当かい?」
はい!これで今度はしれぇを守ることができます!
「ははは。それは嬉しいな」
えへへ。雪風も嬉しいです!
「うん。じゃあこれで雪風がいればこの鎮守府は大丈夫だな」
はい! 死神って呼ばれることもありますけど、雪風はしれぇの為に頑張ります!
「あぁ、頑張れ。応援してるから」
はい! 雪風頑張ります! だから、あの……。
「ん?どうした?」
その……また、聴かせてくれませんか?
「……あぁ、歌か。聴いていたのかい?」
はい。その、盗み聞きしてしまってごめんなさい。
「いいさ。減るもんでもないしな。恥ずかしいけど」
良かったです。でも、その。今度はちゃんと聴きたいなぁって。
「そうか。うん。ちょっとばかり恥ずかしいけど」
やったぁ! えへへ。
「そんなに喜んでくれるとは思わなかったよ」
しれぇ。私、今が一番幸せです。
しれぇ。どこにも、行かないでくださいね。