後半は大変読みにくいでしょうが……頑張って読んでください。
まぁ……本編には関係ない話ではあるんですけど。
春、と聞くとよく『別れの季節』や『出会いの季節』と言われていた。
俺にとってその年は、『出会いの季節』だった。
入学式にイヤに落ち込んでいる顔をしている奴がいた。ブツブツと呟きながら制服である海軍帽を深く被っていて、顔がよく見えなかった。
すごく目に付いていて、目が離せないやつだった。だから話しかけに行った。
これがアイツ───春人との出会いだ。
正直、ブツブツと呟いている姿は関わり合いになりたくない人物に映る。それは誰も彼もがそうで、見た目危険な人に映るからだ。
俺が話しかけたのは、コイツと関われば灰色の青春が彩るかもしれないと感じたからだ。まぁ、端的に言うなら面白そうだったってことだな。
ソイツの近くによって呟きを聞いてみると、すべて大本営への恨み言だった。後偶に「絶対逃げ出してやる」って言ってたくらいか。もうその時点で笑ってしまった。
そしたらソイツは俺に気づいて、胡乱気な目で俺を見た。
「ハハッ。すまんすまん」
「んだよ……」
俺は訝しげな目で俺を見るソイツに自己紹介をした。
「へぇ……じゃあ俺も。俺は瀧川春人。難しい方の「たき」だ。後民間からの引き抜き。強制だったから絶賛大本営を恨んでる」
これが後に英雄と呼ばれるやつとの始まりだった。
学校が始まってからも俺はアイツに絡みに行った。座学も体育も、奴はそつなくこなしていく。見ていて面白かったな。
それから艦隊指揮練習という授業で、完全勝利を何度も叩き出していた。これには多くの教官も驚き、アイツを褒め称えた。まぁ、そのせいでより過酷な訓練に身を投じることになったんだが。
アイツは宣言通り何度も校舎から抜け出した。その尽くが失敗に終わる訳だが、アイツは諦めなかったんだ。本当にずっと楽しかったよ。色々な罠にかかって、優秀なくせに懲罰房に入れられたりとか。俺の想像していた通りに、楽しい学校生活を送れた。
アイツは物語の主人公みたいだった。
知らぬ間にハーレムを築くし、いつの間にか強くなっている。
俺は言うなれば親友ポジだっただろうか。間近でアイツの物語を見るのが好きだった。
もちろん、妬みや嫉みは当然あった。だが、俺はアイツが誰よりも努力しているのを知っている。確かに才能はあっただろう。だけど、それに上乗せする努力をアイツは欠かさなかったのだ。だから誰よりも強くなり、誰よりも優しくあれるのだ。
人を惹きつける力も持つ。正しく、主人公だ。……まぁ、国民を守ろうという意思が薄いのは、周りから見れば怒りが湧くのだろうが。
だが果たして、アイツがそうなるのは仕方のないことだった。
私が彼と出会ったのは入学式の後だったかしら。かの有名な一条家の坊ちゃんが誰かと楽しそうに話していると言う噂を耳にして、一目見てみようと思って円形の人集りの場所に行った。
そしたら名も知らぬ一般的な体型の男と一条家の坊ちゃんが楽しそうに会話(一方的に見えた)をしていたのだから驚いたわ。あの一条家の坊ちゃんがってね。
それから彼を射止めた男の方に興味が出て、話しかけに行ったのよ。そしたらなんと言うか暗い顔をしていたわね。何か粗相をしたのかと思ったけどどうやら大本営への恨み言らしくて、思わず笑ってしまったわ。
一条家の坊ちゃんも一緒に笑って、彼自身は困惑していたわね。それがより一層笑わせてくれたわ。
これが彼───のちに英雄と呼ばれる春人くんとの出会いね。
それからは毎日が楽しかったわ。訓練や勉強は真面目にする癖に逃げ出そうとして懲罰房に入れられるんだもの。それに何度入れられても今度はこうして抜け出してやるって言って諦めたりしなかった。……私には、それが眩しく写った。
後は色々とおかしかったわね。矛盾している言葉と行動。彼は常々「自分には国を背負えるほどの力は無い」「自分には艦娘の命を背負える力は無い」そう言っていたわ。だと言うのに、訓練も勉強も常に1番だった。演習をさせれば常勝無敗だし、その後の艦娘のケアまでしている。在学中には大勢いた「艦娘兵器派」の意見を裏返す程の論理と証拠を叩き出したし。見ていて楽しかったわね。
……それを行える度胸も、勇気も、知識や知恵も。尚且つ身体能力まで。「作られた」私たちと比べても、一般人と比べても大分おかしかったわ。
───まるで、物語の主人公のように。
彼は言っていたわ。「艦娘は艦娘。人間か兵器かとか二元論で片付けるのがいけないんだ。そもそも人間爆弾も兵器と言えるだろう。頭が硬いんだよ。兵器は感情を持たない。死を恐れてしまうからだ。だから無機質で、尚且つ戦果も一定だ。……使う人間によって程度の差はあるが。その点艦娘は自ら判断し、気分によっては最高の戦果を叩き出す。効率も求める。これを『人』と言わずしてなんと言うんだ?」
これを聞いた時、すごく納得してしまった。艦娘は兵器であると刷り込まれてきた私たちでさえ、何一つ反論することができなかった。反論ができたとしても、こじつけでしかなくて。論破されてしまっていた。
あんなにも艦娘のことを想っているのに。彼は指揮することを嫌っていた。俺は艦娘の命を背負える程の人間じゃない。そう言って。
お酒の席でその理由が判明した。それに対して、私は何も言えなかった。
彼、と言う人間は正直嫌いでした。初めから逃げ出そうとしていてやる気を感じませんでしたもの。だと言うのに勉学も体力も訓練も演習も。全て上をいかれました。
悔しくて悔しくて仕方がありませんでした。だから試験の度に勝負を仕掛け……負け続けました。
何故。何故。何故。どうしてわたくしは彼に勝てないのか。優秀な遺伝子を掛け合わせ続けた最高傑作なのに。
妬ましくて、妬ましくて、羨ましい。
わたくしには期待と責務がのしかかっているのに。彼には何の柵も無い。それが、何よりも羨ましい。自由に己の道を決められる彼が。期待も何も無いのに全てを持っている彼が。妬ましくて妬ましくて羨ましい。
だから何度も何度も彼に当たる。酷いことをしているのは分かっている。人としてダメなことをしている自覚はある。それでも、それでもわたくしのこの気持ちは……彼以外には、ぶつけられないのだ。
だけれど……面白い人でした。楽しい学生生活でした。わたくしのこの行き場の無い気持ちも、彼と過ごすことで薄れていきました。勝負事も楽しめるようになって。偶に勝つことが出来て。その時は本当に嬉しかったですわ。優秀なだけでは楽しむことも、幸せになることもできないと教えられました。
ただ、彼はわたくしよりも人生を制限されていました。嫉妬なんてすべき相手ではありませんでした。
彼が歩んできたその生は、何人たりとて侵害するものでは無い。誰が羨んでいいでしょうか。誰が嫉妬していいでしょうか。その背景も知らずに、どうして罵ることが出来るのでしょう。
わたくしは猛省し、彼に直接謝りました。
彼はキョトンとした後、笑って許してくださいました。むしろ嫉妬されてるなんて思ってもみなかったと。
ふふっ。本当に、面白い人ですね。
先輩と出会ったのは……あの時、ですかね。私が軍学校に入学してすぐの時に、いじめにあったんです。いじめと言っても本格的なものではありません。無視や陰口などのものが主でした。恐らく、元帥の娘だからと直接手を出すのが怖かったのでしょう。だとしても、嫉妬や憎悪は抑えられなかった。それがいじめに発展した。正直国を守る軍人が、どうしてそんなことができるのか。不思議で不思議でなりませんでした。私はいつも独りぼっちでした。辛くはないと強がっても、やはり精神的な攻撃は徐々に徐々に私の心を蝕んでいきました。そんな時です。先輩と出会ったのは。1人でお昼の食事をしていた時です。突然警報が鳴りだしました。深海棲艦が攻めてきた際の警報ではなかったので、私だけでなく他の同級生も困惑していました。当然、私もその1人でした。数分もせずに廊下がバタバタと騒がしくなり、大勢の上級生が走っていきました。上級生はほとんど全力疾走のような状態で、至る所にいました。彼らは何かを叫んでいて、どうやら誰かを探しているようでした。それから数分もせずに多くの上級生に担がれ、ある場所へと連れられて行く人が廊下を通りました。彼が通った後、教室で彼に関する噂を耳にしました。曰く、去年は毎日のように脱走しようとしていた。曰く、今年はそれほどの頻度ではないが、捕まえにくくなった。曰く、天才である。曰く、演習で負けたことは一度も無い。曰く、一般人である。曰く、女性を多く侍らしているハーレム野郎である。曰く、鬼のような訓練にも耐え抜いた人外である。などなどです。多くが尾ひれはひれ付いた噂なのでしょうが、火のない所に煙は立たぬと言います。なので多少は真実も混ざっているのでしょう。私が一番興味がひかれたのは……一般人であるという噂でした。現代の軍学校では上級国民と呼ばれるような人間しか入ることはできません。特例として「妖精さん」が視える突然変異のみです。恐らく彼は特例だったのでしょう。一気に興味がひかれました。恐らく、僻みや妬みを一番受けていた人でしょう。それなのに、何故彼は未だにこの学校を辞めていないのか。強いのか。それが気になって、彼の後を追いかけました。そうして知っていくうちに段々と惹き込まれていったんです。先輩の性格も、考えも、何もかも。先輩を追いかけている内に周りのこともどうでも良くなりましたし。だから私は先輩に救われたんです。あの人は私を他者からの評価という呪縛から解き放ってくれたんです。それが嬉しくて嬉しくて、先輩のことを好きになっていました。先輩の全てが知りたくて、先輩の何もかもが欲しくて。でも先輩には踏み込めないところがありました。それが家族に関することです。いつも家族の話題を出すと早々に話を切ってどこかへと去っていきます。それがとても悲しかったです。寂しかったです。でもちゃんと理由があったんです。それはとても悲しくて、おぞましいものでした。正直私だけに話して欲しかったし相談して欲しかったのですが、お酒の席の事ですし仕方ありませんよね。
「仕方ありませんよね?
「えっ……あ、はい」
オタクのような早口で語っていたのと、瞳に光が灯っていなかったので、正直ドン引きしたし、とても怖かったと後に青葉は語った。
提督が抱えている事情をここで語ろうかと思ったのですが、提督本人もしくは横須賀の艦娘たちに語らせる方がいいかと思いまして、急遽主人公と関わった人たち(鹿島除く)となりました。
楽しんで頂けたら幸いでございます。
後ほど区別がつきやすいよう字体を変えようと思います。
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圧倒的な強者ムーブ展開