提督を辞めたい提督   作:神楽 光

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 お待たせ致しました。
 段々と謎が明かされていきますね……。


繋がる記憶、繋がる想い

「待っ!」

 彼は踵を返した夕立の左手を掴む。左手を左手で掴むという少し変な形になってしまったが、逃さないようにとしっかりと掴む。

 その瞬間、バチッと音が鳴り、夕立の脳に多量の電気が走る。まるで頭を殴られたような感覚だったと後に語った。そして、その現象によって夕立は意識を失った。

 ふらりと一瞬だけ頭を抑え、提督の方に倒れ込んだ。

「ちょぅお!?」

 夕立を掴んだ影響でまさか倒れてくるとは思わず、変な声を出す彼。しっかりと抱きとめられたのは、彼が学校時代に嫌々ながらも訓練に従事し鍛えられたためか。

 幸い夜中のため変な声を出しても訝しげな目で見られることは無かった。

「ど、どうしたんだ夕立……? ……っ」

 彼は夕立に声をかけるが返答はない。静かな寝息を立てるのみだった。

 どうしたのだろうかと顔をよく見ると、夕立の整った綺麗な顔には涙の跡が残っていた。それを間近で見た彼。心の奥底にある記憶の一部が蘇った。

 

 思い出す光景。硝煙の立ち込める潮と血と鉄が混ざった臭い。焼け焦げた金属。血みどろの自分と、ニヤけた面の……。

 

 そこまで思い出してから頭を振って現実(いま)を見る。夕立はどうやら気絶しているようだった。

(考察や思い出は後でいい……まずはこの子を寝かせないと……あっ)

 夕立を背負い、いざ宿へと足を向けようとすると、気絶しているもう1人の夕立が目に入った。

 悩む。頭を搔く。悩む。悩む。頭を搔く。悩む。

 長考の末彼はもう1人の夕立を脇に抱え、急ぎ宿へと向かった。

 

 同時刻。横須賀鎮守府。

 鎮守府に所属している全艦娘に、一瞬電撃が走った。

 それは大きなものではなく、静電気が走ったようなもの。人によっては気にしないかもしれない程度のもの。だがしかし、彼女たちはそれを無視できなかった。何故か、それは電撃が走ったと同時にある効果が現れたせいだ。

 

 ──────記憶の解放。

 

 まるで電子ロックが電気信号によって開けられたように。一部の記憶が横須賀に所属する全ての艦娘に開放された。

 

「っ! ……何だ、今のは」

 頭を抑え、ワナワナと震える長門。提督の執務机に手を付き、先程過ぎった記憶を見返す。

 全体的にボヤけているが、どこかの海域を攻略している最中の場面だ。誰の視点か、チラリと見える艤装で長門は己だと確信した。そして今とは比べ物にならない上位の武装を持っていることに驚いた。見たことの無い武装まである。

「……な……と……なが……長門!」

 己を呼ぶ声に長門は気づいた。どうやら体も揺さぶられていたようで、傍には心配げな表情で妹の陸奥が長門を見ていた。

「! ……すまない陸奥。どうした?」

「……長門も、見たのよね?」

 陸奥はポツリと言葉を漏らす。

「……あぁ。もしかすると全員に……?」

「そうね。後で全員を集めて聞いてみましょう。それと、私が見たのは部屋の一室だったのだけど、長門も同じものを見た?」

 眉を八の字にして長門に問う陸奥。長門はそれを聞いて目を見開いた。

「……いや、私は海上で隊列を組んでいた。どういう事だ? 全員違う光景を見ているのか?」

「後でそれも聞いてみましょう。さて、これはどういうことなのかしら……」

「さぁ、な……」

 先程の光景が何を示すものなのか。

 それはまだ、誰にも分からない。

 

 

 

 

 

 ───────ただ2人を除いては。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……提督? 何かあったの?」

 

 以前とは比べ物にならない程明るくなった部屋で、1人。顔を濡らしていた者。

 体育座りの体勢から顔を上げ、虚空を見上げた。

 そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「すぅ……すぅ……」」

「これからどうしよう……」

 もう1人は頭痛を抑えるかのように頭を抱える青年の傍で、静かな寝息を立てていた。




 ちょっと短い……?
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