提督を辞めたい提督   作:神楽 光

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 おまたせすますた。
 アニメ延びちゃいましたね……。
 これはアニメ完結までに終わらせろということですね?
 そういうことなんですね?


 今回は轟沈描写(実際に描写はしていませんが)がありますので苦手な方はご注意ください。
 前半すっ飛ばして後ろの方だけ読むのもアリです。


捷号作戦、レイテ沖海戦 前哨戦 下

 宿毛基地から出撃した日向は、緊張で体を強張らせていた。

 現在日向及び艦隊旗艦の伊勢、初春、霜月、子日、長良は九州の真下を航行していた。

「レイテってそこそこ遠いと思うんだけど……」

「仕方がないだろう。それに……我々は威力偵察の部隊だ」

 ため息をつきながら日向は伊勢に言う。宿毛基地にいる提督から、日向たちに下された命令は、レイテ沖にて集結している敵深海棲艦の威力偵察だ。そしてその命令を下した提督はブラックといって差し支えない人物だった。

「それって……」

「あぁ、使い捨てだ」

 だからこそそれを直接言われた日向の体は緊張に固くなっていた。反抗する気が失せていたとはいえ、それでも直接的に『死ね』と言われて体が強張らない者などいないだろう。いるとしたら命令を下したものに心底心酔しているか、理解していないものだけだ。

「私たち……沈むんですか?」

 子日が恐々とした顔で聞く。それに対して日向はできるだけ沈ませないようにすると答えた。

「望むところです!」

 対して霜月は絶対に生き残るといった気概を発した。霜月は戦闘狂の気質がある為、ある意味その考えはありがたいが、敵に吶喊していくこともあるので中々に難儀していた。日向はそうかとしか言えなかった。

 それから数時間ほどかけて移動し、レイテへと到達した。結果。

 

「敵潜水艦発見! 距離2000! 方角7時方向! 数……にひゃ……く」

「嘘……」

「なんだ……これは」

「こんなの……」

 日向たちの目前には、多種多様の深海棲艦と、数多の敵航空機が空を舞っていた。

 誰もが思う。これは無理だ、と。威力偵察なんてできない。それ以前の問題である。日向たちは呆然と見つめるしかなかった。

 そして。

「回避運動ーー!!!」

 日向は見た。敵戦艦の方向が輝いたのを。

 敵の砲撃が海面を抉る。幸い一度目の砲撃は全員無傷だった。しかし、敵は戦艦だけではない。潜水艦も、航空機だっている。

「避けることだけ考えて! 撤退よ!」

「了解!」

 伊勢が通信で呼びかけ、日向たちは反転して来た道を引き返す。しかし深海棲艦はそれを許さない。

「魚雷跡発見! 面舵一杯!」

「きゃあ!?」

「伊勢!」

 大型駆逐艦の魚雷跡を子日が発見し、艦隊に知らせるが、低速戦艦である伊勢日向は回避は間に合わなかった。幸運にも日向は当たらなかったが、伊勢は小破した。

「大丈夫! まだいける!」

「よかった……」

「日向さん! 安心してる暇は無いです!」

 長良はホッと安堵の息を吐く日向に忠告した。その厳しい視線の先には、大量の敵航空機が。

「っ! 対空砲撃用意! てぇっ!」

 パパパッと音が鳴り、銃弾が機銃から発射される。いくつかの艦爆や艦攻を撃墜するが、焼け石に水のようなありさまだ。

「輪形陣! 日向は私の隣に!」

「「「「「了解!」」」」」

 すぐさま陣形を変更して空からの攻撃に備える。そのすぐ後に、銃弾の雨が降り注いだ。

「きゃあ!」

「くっ!」

「対空射撃を続けるのじゃ!」

「速力あげて!」

「っ!?」

 全員が叫ぶ。機銃を動かして敵機を撃ち落とそうとし、爆撃から避けるように回避運動をし、全速力で逃げ惑う。しかし、敵は航空機だけではない。

「カッハ!!」

「霜月!」

 子日が悲鳴を上げる。霜月が敵戦艦からの砲撃を受けた。

「ま、だ戦え、ます!」

 中破どまりは果たして幸運だったのだろうか。航行に怪しさがあったが、霜月は気力を振り絞って回避運動をし続けた。

「……! 伊勢! 瑞雲航空隊の発艦許可を!」

「っ! 許可します! 私も発艦するわ!」

 伊勢及び日向は航空甲板を水平に持っていき、甲板まで出てきた妖精に瑞雲の発艦を伝えた。妖精たちは敬礼して了承の意思を伝えると、すぐさま発艦の準備に取り掛かる。それから時間をおかずに瑞雲を発艦させた。伊勢も同じように発艦させ、瑞雲は敵機が埋め尽くす大空へと飛び立った。

「っ! 魚雷跡発見! 敵艦砲撃光視認! 回避運動!!」

「グッ!」

 長良が叫び、全員が回避運動を行う。水柱が複数立ち上り、砲撃が当たる。魚雷は何とか避けたが、航空機からの攻撃と戦艦の砲撃は避けきれなかった。

「被害報告! 急げ!」

「日向、小破!」

「長良大破!」

「霜、月。大破……ぁ……!」

「初春小破未満!」

「子日中破!」

 被害は甚大だと言えた。長良は砲塔がやられ、魚雷を出すか航行する能力しかない。霜月はさらにひどく、航行できるかも怪しい。

「霜、月……!」

 初春が形のいい唇を嚙む。その瞳には深海棲艦への憎悪の炎が燃え滾っていた。子日は霜月が沈むかもしれないという恐怖に、顔を青ざめさせ、体を震わせていた。

「だい、じょうぶ、です。あ、わた、しが、しんがり、を」

「無理だよ! 無理だよ霜月! そんな状態じゃ……!」

 至る所から血を流しながら、霜月は息も絶え絶えに伊勢に進言する。しかし子日が声を震わせてそれを否定した。

「ええ。霜月の状態もあるけれど、どうやら私たちはここで沈む運命のようね」

「えっ……?」

 伊勢が子日に同調しながら、諦観が強く籠った声を吐き出した。

「多数の戦艦。多数の巡洋艦、空母、駆逐艦、潜水艦。航空機も」

「そして……上位種、じゃな」

 日向がつぶやき、初春が確定的なことを話す。

「……ねぇ日向」

「なんだ?」

「来世は、平和な世界に生まれたいわね」

「……そうだな。そういう世界に、生まれたいものだな」

 伊勢と日向はしんみりとした顔で話しだし、

「は、初春……」

「なーに。心配はいらん。また海に還るだけのことよ」

「……」

「……」

「また、来世で姉妹になれると、いいな」

「……うん!」

「はい……」

 初春と霜月、子日は絆を確かめ合い、

「私も、いっぱい走れると良いなー!!」

 長良は朗らかに笑って来世を夢見た。

 別れの挨拶は済ませた。ならばもう進むのではなく戦うのみ。

「第三艦隊、遊撃偵察部隊!」

 全員が顔を引き締める。そこに諦観は無く、決意のみがあった。

「全艦─────突撃!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────報告します。第三艦隊遊撃偵察部隊の旗艦伊勢、随伴艦日向及び長良、初春、霜月、子日が轟沈しました」

「情報は?」

「ここに」

「ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に、無理だな。これは」

 掠れた声が響く。

「こんな多数の敵に、我々が勝てるわけがない」

 乾いた笑いが出てしまう程に敵は圧倒的だった。

「ハハハ! もう、日本は終わりだな……」

 諦観の思いが強く表出する。

「でも、できるだけ足掻いてはみせるか。彼女らの死を無駄にしないためにも。彼女らが命を懸けて調べたこの情報を、価値あるものにするために」

 しかし決意をもって見据える。その先に見えるのは果たして絶望的な未来(いま)か。

 それとも別の何かか。

 受話器を取り、ポチポチとボタンを幾つか押す。

 数回のコールの後、目的の場所に繋がった。

「────取引をしないか?」

『────取引だと?』

「あぁ。私から情報を提供しよう。その代わり、君たちの戦力を貸してくれないか?」

『────貴様。そちら側の人間か』

「いやぁ、違うさ。半分突っ込んでるようなものだけども、私はアイツにあてられた人間だからね」

『────? どういうことだ?』

「気にしなくていいさ。で、どうだい?」

『────条件がある』

 男と受話器の向こう側の人物との話は、夜遅くまで続いた。




 最後の人は佐世保の提督とは別の人ですのであしからず。(盛大なネタバレでは?)
 やはり戦闘描写は難しいですね。特に第三者目線は。濃い戦闘を書くとしたら一人称の方が描きやすいかもです。
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