提督を辞めたい提督   作:神楽 光

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 お待たせしました。『がっこうぐらし!』のRTA小説読んでたらいつの間にか時間が……。
 そして書いてみたいという欲が出てしまっています。
 それは兎も角どうぞ。


捷号作戦、レイテ沖海戦 前編 上

 海底から響く怨嗟の声。

 恨み、辛み、叫び声を上げる。

 ただ壊す。

 目についたものから壊し、潰し、砕く。

 求めるものはただ一つ。

 

 

 ─────ウミヘカエレ

 

 

 

 

 人類が深海棲艦と戦争を始めてから、最大規模の戦闘が幕を開ける。

 

 

 

 

 

 海を行く。今はまだ静かな海だが、先を行くときっと硝煙が至る所から見え、血と潮と異臭が臭う場所になる。

 憂鬱だ、なんて言っていられない。日本を、ひいては世界の危機なのだ。怠けてなんていられないだろう。まぁそもそも私自身怠けるような艦娘ではないが。

 それにしても、なんて数奇な運命だろうか。かの大戦、レイテ沖海戦と同じようになるとは。歴史は繰り返すということだろうか。その場合、日本は負けてしまうな。

「そんな弱気でどうするのよ。提督代理でしょ? しゃんとしなさい」

 むぅ。わかってはいるのだが……。改めて思ったんだ。

「? 何を?」

 提督は、強い人なんだ、と。

「……それは」

 あぁ。私たちがしてきた行いを耐え抜いてきたこともそうだが、提督はいつも私たちを慮っていた。その証拠が私たちの私物の多さだ。

 私がこの地位に就いてからようやくわかった。理解したんだ。

「……」

 あの人はいつも、こんなにも苦しい気持ちを耐えていたのかって。

 艦娘が出撃するたびに生きて帰れるか不安になる。艦娘が被害を受けるたび沈まないか怖くなる。もし間違いでも起きれば、もしそれで誰かを亡くしてしまったら。そんな思考がずっとずっと頭の中を廻る。いつもいつも発狂してしまいそうだったよ。

「……長門」

 だから改めて考えたんだ。あの人がそんな思いを感じてまで何故私たちを見放さなかったのか。今はまだ答えは見つかっていないが。あの人に出会えたら、聞いてみたいな。

「ええ。そうね。でも長門」

 なんだ?

「それ、死亡フラグっぽいわよ」

「!?」

 

 

 段々と戦場に近づいてゆくことで肌を刺すような殺気に気づく。未だ戦場に到達していないというのにも関わらず、死の気配がゆっくりと肩に手を置こうとしているように感じられた。しかし、進まないわけにはいかない。ここで撤退してしまえば、きっと日本は滅亡するのだろう。朧気ながらも理解せざるおえなかった。

「暁。怖いなら下がっててもいいよ」

「は、はぁ!? こ、怖くなんてないわよ! 立派なレディは恐怖に打ち勝つものよ!」

「結局怖いんじゃないの」

「はわわ! 私も怖いのです……」

 ゾワゾワと鳥肌が立つ。一向に気が休まらない。

「なんつーか……死地って感じがするな」

「あら~。天龍ちゃんも怖いの~」

「……そうだな。アイツに『ありがとう』って言えずに死ぬのは、怖いな」

「……そうねぇ。私はもう一度『ごめんなさい』って言いたいわね~」

 団欒とはいいがたい空気。張り詰めた息苦しい空気。段々とその空気が重く絡みついてくる。

『───ピ。聞こえますか』

「あぁ。聞こえてる」

『残り1時間後に作戦海域到達です。敵艦が潜んでいる可能性があるので気を付けてください』

「了解。他はどうなんだ?」

『今のところ順調です。強いて言えば宿毛基地の提督が我々の指揮権を得ようとして、長門さんが反対したことによるもめ事があったくらいですね』

「はぁ? 十分大事じゃないか? それ」

『いえ、長門さんの"契約を切る"で沈黙しましたので……』

「プッ! 情けねぇな! おい!」

 天龍が笑う。そのおかげか、ほんの少しだけ艦隊の空気が和らいだ。

『それでは、引き続きお願いします』

「あぁ」

 通信が切れ、艦隊に静寂が戻る。もう誰も口を開かなかった。

 彼女たちの目の前には、暗雲立ち込める空と、赤黒く染まる海が見えていた。

 

 

 戦艦の砲撃が飛んでくる。それを間一髪で躱しながら、矢矧はル級に砲撃をお返しした。

「対空警戒!」

 誰かが叫び、それぞれ通信で了解と承諾した。特徴的な飛行音が矢矧の耳に入る。すぐさま機銃を上に向け、掃射を開始する。

「右弦より新たな艦隊を発見!」

 妖精の通信手段によってすぐさま情報が共有される。数は六隻。戦艦を旗艦に重巡や空母などの重量編成。対して矢矧たちは矢矧を旗艦とした水雷戦隊。絶望的と言ってもいい状況だが、誰も苦言漏らすことなくむしろ果敢に挑んでゆく。戦艦の砲塔が狙う。空母が航空機を発艦させる。重巡が魚雷の狙いを定める。全て、全て、致死の攻撃。だが、誰もが笑っていた。

 

 

 沈めてみせろ、と。

 

 

 砲弾が飛んでくる。半身を逸らして避ける。

 銃弾が降り注ぐ。瞬間的に速度を出してその場を離れる。

 魚雷が飛んでくる。海を蹴って意図的に波を発生させ、遅くなった魚雷を避ける。

 

 軍艦の頃にはできなかった、人間の体を持つからこそできる芸当を存分に使ってゆく。

 数分もせずに敵艦隊は壊滅した。しかし、すぐさま別の艦隊が現れる。

 戦闘は、絶え間なく行われていた。

 

 

 

 

「何よ……これ」

「なんなのよ……」

 明らかに強さが違う。宿毛基地に所属する艦娘達は、横須賀から来たという彼女たちに戦慄していた。明らかに宿毛基地の艦娘と、横須賀に所属する彼女たちとでは練度も、技術も、そして気概までも異なっていた。どうすればそんなにも強くなれるのか。どうしてわんさか湧いてくる深海棲艦を、いとも簡単に倒すことができるのか。まるで分らなかった。

 

 作戦が開始される前。宿毛基地には大勢の艦娘が港にて待機していた。それは日本を脅かす大規模な深海棲艦艦隊を撃滅するために基地の全戦力が集められたからだ。そこで、作戦の概要が説明され、部隊ごとに整列した。そんな折に、海からの来客があったのだ。それも港に集合した艦娘達よりも2倍はいるだろうほどの。

 当然、誰だ。という話になった。揉めることまではいかなかったが、それなりの溝はできた。同じ艦娘でも、今までいた環境が異なる故の溝だった。そして横須賀から来たという艦娘達と艦隊を組み、それぞれの作戦開始地点へと赴くことになった。道中、会敵することは無かったが、重くなっていく空気に顔色を悪くする艦娘が少なからずいた。しかし横須賀から来た艦娘達は誰もが前を向き、警戒し続けていた。その違いが、戦闘でも現れた。突撃していったはずなのに一切被弾することなく敵を葬り続ける。

 一見無策で突撃しているように思えるが、しっかりと連携を取っている。誰かが沈め、誰かが狙われ、誰かが補助をする。その立ち位置は入れ代わり立ち代わりし、誰もがそれぞれの役割をしっかりとこなす。宿毛基地の艦娘達にとって、横須賀から来たという彼女たちは圧倒的だった。

 これなら、作戦は順調に進み、誰も沈むことなく作戦を完遂できるのではないだろうか。そんな思いが彼女たちに芽生え─────潰えた。

 

 

 宿毛基地の艦娘達は、圧倒的な横須賀の彼女たちに敵の掃討を任せ、対空射撃や対潜警戒などの補助を行っていた。できる限りのことをしようと、1人の艦娘がソナーを使って潜水艦の位置を探ろうとした─────その時だった。

 弾け飛んだ。

 突如として周囲の"圧"が増した。動くことさえ億劫になるほどの"圧"。

 そして圧倒的な恐怖。全神経が警鐘を鳴らし、今すぐその場から離れろと頭が命令する。だが動こうとする前に頭が何かに当たる。いや────頭に何かが当たった。反応できない速度、視認できない何かにただ蹂躙される。例外だったのは横須賀から来た艦娘。しかし彼女たちでさえ中破している。

 海底から湧き上がるような殺意。()()が場を支配した。

 

 ─────その名は、『海峡夜棲姫』。

 2人で一個体の深海棲艦。位置づけは航空戦艦で、雷撃さえも撃つことができる強大な姫級だ。

ココハ……トオサナイワヨォ!!

 怖気が走る、深海からの唸り声が、辺りに響き渡った。

 

 

 別の場所では戦艦棲姫2体、重巡棲姫、防空棲姫、駆逐古姫、空母棲姫が至る所で確認された。そして─────、

 

 

ワタシガ……オアイテ、シマス……

 

 

 『海峡夜棲姫』と共に現れた"姫"級と思われる深海棲艦────『防空埋護姫』。

 

 

 日本の終焉は、刻一刻と迫っていた。




 もうそろそろ提督出した方が良いかな……?
 艦娘の数が多く、他鎮守府との合同作戦の為ゲームでは一つ一つ攻略していくところを全面作戦形式にしました。
 やっぱり戦闘描写は難しい……。
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