提督を辞めたい提督   作:神楽 光

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 大変遅くなりました。申し訳ございません。
 アニメ終わっちゃいましたね……。最後のは無理矢理感がありましたがまぁコロナとかでできなかった部分があるのでしょう。
 それはともかく次で最終話です。


捷号作戦、レイテ沖海戦 決戦

 陸奥は必死に手を伸ばす。ここまで何度も何度も何度も何度も何度も沈みそうになった。その度に周りに支えられ、、何より姉妹艦の姉である長門に守られてきた。この世に、人としての形をとって生れ落ちてから。数えきれないほどの手助けがあった。それなのに。

 だというのに、何故私の時は間に合わないのか。どうして。どうして。何故こんなことになったの。何故こんなことになってしまったの。私は、どうすれば─────。

 

 その時。ふと頭に何かが聞こえた。

 

 

『おっしゃ! ありがとう陸奥! イベントクリアだぁぁぁあああ!!!』

 

 

 

『やっぱ長陸奥カットインは格が違うなぁ……大和型ほど資材消費しないし』

 

 

 

『おねぇさんだけどポンコツ……ふふふ、胸が熱いな……!』

 

 

 

『……皆、ありがとう』

 

 

 

 徐々に鮮明になっていく記憶。封じ込まれていた()()が胸の、魂の奥底からあふれ出してゆく。

 

 いつか、アナタに触れたいと思っていた。

 たまにイライラしているけれど。それでも私たちに当たることなく我慢するアナタに強いと感じた。

 大破しても、敵に打ち勝てば喜んでくれるアナタが好きだった。

 子どものように喜ぶアナタが可愛いと思った。

 憔悴した顔のアナタを癒したいと思った。

 朗々と少し外れた歌を楽しそうに歌うアナタに教えてあげたかった。

 言いたいことがいっぱいあった。伝えたいことが、想いが、たくさん、たくさんあった。

 この体が、データで構成されず、アナタの元へ行けるのならばと、何度思ったことか。

 分厚い『ナニカ』に阻まれていることが、どれだけ、どれだけ悔しかったか。

 あぁ、カミサマ。

 もし、もしも叶うならば。

 どうか、どうか。

 私たちと、彼を引き合わせてくださらないでしょうか。

 ただ、伝えたい。この思いを。この気持ちを。アナタに知っていて欲しい。ただ、それだけ。

 でも、アナタはいつからか現れなくなった。

 どうして。何故。何度も思った。何度も考えた。

 それでも答えには辿り着かなくて。アナタに会えない日々がとても辛くて。

 

 

 そうだ。私は。彼は。あぁ。そうか。そうだったのか。

 とめどなく溢れる。頬を濡らす涙が。忘れていた、いえ、()()()()()()()記憶が。

 暖かく私を包み込む。

 もう一度。そう、もう一度。

 

 これはカミサマが下さったチャンス。ならばつかみ取りましょう。何をしてでも。どんな手を使ってでも。

 

 願いは想いに。

 

『名称確認。長門型戦艦二番艦"陸奥"』

 

 想いは希望に。

 

『要請確認。精査、完了』

 

 希望は夢に。

 

『第二次改装、承認』

 

 そして────夢は力に。

 

『陸奥改二、実装』

 

 ただ願う。

 

 アナタと共に生きたいと。アナタの為に生きたいと。

 

 さぁ─────始めましょう。

 

「陸奥─────改二」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 佐世保の至る所で確認された光。それは特定の鎮守府に所属する艦娘のみに現れ、たった数秒でその現象は終了した。そして多くの艦娘は制服や艤装までが様変わりしていた。

 その現象の後、新たに艦隊が再編成され、横須賀鎮守府所属の瀧川提督によって作戦が発令され、鹿屋基地及び宿毛基地等々の基地及び鎮守府と連携し、レイテ沖へと出撃。変化した艦娘達の強力な攻撃によって敵艦隊は壊滅にまで追い込まれた。残るは深海棲艦艦隊の指揮を行っていた海域最深部に存在する姫級の深海棲艦のみとなった。

 

 

 

「さしずめ、最終海域、と言ったところか」

「海が荒れてるっぽい!」

 道中、少々攻撃を受けたのか、所々に煤がついた艦隊が荒れ狂う海を進む。澱んだ空気。渦巻く暗雲。押し返すような荒波。轟々と吹きすさぶ風。偶に顔をのぞかせる雷。この世の地獄と言ってもよかった。

 場所はエンガノ岬沖。最後の決戦の場である。

「提督。聞こえているか」

『通信───安定しな───そっちに任せる』

「了解した。それでは現時刻をもって戦闘指揮は連合艦隊旗艦、改装長門型戦艦一番艦長門改二が務める!」

『了解!』

 声を張り上げて宣言すると、通信機に加えて周囲からも覇気のある声が届く。

 これから行われるは過去最大の決戦。強大な敵と相対し、勝つか負けるかの大一番。

「燃料及び弾薬確認開始! 足りない者は給油せよ!」

 最大規模の艦隊で迎え撃つ敵。その準備に不備があっては負けてしまうと、無駄なく準備を進める。

「時刻確認! 各艦、時刻を合わせよ! 一○○○まで、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、今!」

全員が妖精と時刻合わせを開始する。

「これより、作戦を開始する! 連合艦隊・水上打撃艦隊前進せよ!」

 

 火蓋は切って落とされた。

 

『空母機動部隊、発艦はじめ!』

 赤城が声を張り上げ、赤城、加賀、飛龍、蒼龍が上空へ矢を放つ。中空で矢は戦闘機や爆撃機、攻撃機に変化して敵の大群へと飛び去って行った。

「レーダーに感あり! 10時方面、距離4000!」

『偵察機より入電! 敵空母機動部隊発見! ヲ級flagship級改2隻、ヌ級flagshipⅡ2隻、駆逐ニ級2隻! 連合艦隊へと進撃中!』

「チッ! 前衛部隊は水上艦へ攻撃、後衛艦は対空射撃用意! 陣形は第三警戒航行序列! 急げ!」

『了解!』

 素早く陣形を変え、後衛艦は砲口を上向きに、前衛艦は砲雷撃の用意をする。

「戦艦及び重巡級は砲弾を三式弾に変更! 甲標的を積む者は先制雷撃の準備!」

「敵機確認!」

 遥か先の雲の隙間から見えたのは大量の航空機。

「……なるほど。だから三式弾なのか」

 長門は笑う。そして己の提督の考えを悟り、納得した。

「大量の航空機がいるから、三式弾。そして制空権を得るための──」

『第二次戦闘機隊、発艦始め!』

 長門達連合艦隊後方から次々に制空権を確保せんと熟練の戦闘機が飛んで行く。それは連合艦隊の後方に陣取る、大量の空母たちで形成された空母機動部隊だった。

「────大規模な空母機動部隊か」

 長門達の頭上では、敵艦載機と味方の戦闘機が入り乱れ、互いに一歩も譲ろうとしていなかった。傍から見れば拮抗状態に見えるそれは、しかし徐々に徐々に味方の艦載機が敵を落としていっているように見える。

『確保までは難しいですね。優勢にまで持っていけました』

「了解。このまま対空射撃で敵機を落とし続けろ!」

『了解!』

 砲弾が空を舞う。空中で分散し、まるで雨のように敵機へと降り注いだ。

「敵空母機動部隊目視確認! 砲雷撃戦用意!」

 吹雪が叫ぶ。前衛を構築する水雷戦隊が、砲撃と雷撃の準備を開始した。

「了解! 砲雷撃戦用意! 間合いに入り次第開始せよ! 後衛艦は弾着観測射撃を行う! 用意!」

「了解! 先制雷撃の許可を求む!」

「許可する!」

 甲標的を積んだ艦が、一斉に魚雷を放つ。高速で敵に迫るそれは、狙い違わず多数の駆逐ナ級を轟沈せしめた。

 矢矧は思い出す。彼の提督と言葉を交わしたその時を。

『駆逐ナ級……特に目が大きいやつは優先して倒せ』

『……? 何故?』

『奴らは駆逐でありながら先制雷撃を行ってくる。陣形によっては戦艦であっても中破大破は免れん。通常のナ級でさえ雷撃を許せば被害は大きなものとなる。しかし我々は敵主力を撃滅しなければならない』

『それは……』

『敵主力を叩くのに、大破者が出てはいけない。それでは逆にこちらの方が倒されてしまう』

『……』

『だからこそ真っ先に空母と敵の主力を叩くのだ』

 ふっと息を吐き、胸いっぱいに潮交じりの空気を吸う。

「敵残存勢力を確認! 駆逐ナ級Ⅱe2隻! 先制雷撃確認! 回避運動!!」

 誰かの声が聞こえてくる悲鳴のような叫び声だった。すぐさま周囲を確認する。生き残ったナ級はぱっと見は中破。しかしそれで先制雷撃は止められなかったようだ。だが、幸いにも全員すべてを避けられたようだった。しかし、奴らの脅威は未だ存在する。先制雷撃の次は────砲撃だ。

『長距離砲撃───来ます!』

 戦艦の砲撃。その一撃は、とてつもなく重い。ル級だけでなくタ級、戦艦棲姫までいる。正しく砲弾の雨と言えた。しかし彼女たちはそれを搔い潜る。避けきれず、掠ることもあるが、全てを小破以下に留める。熟達した技術があるからこそなしえる技だった。

『偵察機より再度入電! 敵主力艦隊発見!』

「座標を我々と─────基地航空隊へ送れ!」

『了解! 敵主力部隊は敵空母機動群、水上打撃艦隊の後方に存在を確認!』

 いまだ彼女らの上空で直掩機が航空格闘戦(キャットファイト)を続けている最中。矢矧たちが先制雷撃を行っている際に空母機動部隊は第三次戦闘機隊を発艦していた。同時に、彩雲も。

 連合艦隊は進む。敵を撃ち滅ぼし、海上を。地獄と化したその海を。

 駆逐艦を塵に変え。軽巡を撃ち抜き。重巡を爆散させ。戦艦を穴だらけにし。空母を燃やし。潜水艦をも屑にし。集積地はせっかく資源を集めたのにと泣き喚く。

 数多の屍を築き、踏み越えた先に、それは待っていいた。

ノコノコトキタノ……? ハッ……。バカ…ネ……。ワザワザ…シズミニ……シズムタメニ…キタンダネ!

 邪悪な笑みを浮かべるソレは。地獄の底から響くような喜色に富んだ声を連合艦隊に投げかけた。

「はっ! やれるものなら、やってみろ! 貴様を斃して、我々は暁の水平線に勝利を刻む!」

 敵も味方も、その場にいる全ての者が威勢よく声を上げ─────砲門を開く。

「一斉射、開始!!」

 

 それは、閉幕の音だった。

 

 

 止めどなく砲撃が放たれる。その一撃は直撃すれば大破する。良くて中破と言った所だった。それ故に連合艦隊は押され気味となる。たとえ味方の砲雷撃が命中したとしても、厚く硬い装甲に阻まれる。

「アハハハハハ! ドウシタノォ!? ソンナ砲撃アタラナイワヨ!!」

「くっ! 被害報告!」

「吹雪中破!」

「時雨小破!」

「山城大破!」

「金剛小破!」

 それから続々と被害報告が上がる。無傷の艦は1人としていなかった。どこから見ても、ジリ貧に相違なかった。

「Hey! 長門! ドウシマスカー? このままでは……」

「……あぁ、負けるな」

 苦々しい顔をする長門に、金剛は口を閉ざす。長門は今葛藤している。恥を忍んで撤退するか。それとも無理を通して続けるか。それを察して金剛は長門を守るように砲撃をする。

 だがしかし、悩むことは無かった。

『こちら、榛名。姫級と思わしき敵艦を討伐しました』

『こちら利根じゃ。こっちも倒した』

『こちら青葉です! 私達も倒しました!』

 続々と寄せられる謎の報告に長門は訝しむ。榛名や利根、青葉は別の艦隊を編成し、別々の場所へと出撃した。場所に関しては長門は分からないが、何故今になってと。すると突如、敵の旗艦が苦しみ出した。

「ナッ……! グアアアア! ナゼ! ナゼダ!」

 そして。

『これより、支援砲撃に入る!』

 彼方より放たれる数多の砲撃が敵を穿った。

「ギャアアアアアア!!!!」

「はっ……?」

 長門、いや連合艦隊艦娘たちには何が起こっているのか分からなかった。

 別の作戦に従事していた艦隊からの報告。突如として攻撃が通じ始めた敵の姫。遠距離からの支援砲撃。まるで訳が分からない。しかしそれはチャンスでもあった。何故か攻撃が通るようになった敵─────よく見ると姿が少し変わっている。そう、まるで─────()()()()()()()()()()()()

 長門はハッと気づく。そして連合艦隊に大声で告げた。

「全艦! 一斉射!!!」

「ウミノソコハネ……? ツメタクテ……。ヒトリハ……サミシィィ゛ィ゛ィ゛……ッ!!」

 それでも沈められなかった。深海鶴棲姫の状態は─────中破。そして、夜戦へと突入する。

「下関基地友軍艦隊、到着しました!」

「は……?」

 またしても混乱が訪れる。下関。エンガノ岬から程遠い場所にあるところから、何故友軍が、と。そして悟る。提督は、()()()()()()()()()()()()()。装甲破砕に決戦支援砲撃。更には友軍。狙っているとしか思えなかった。そう。あの激戦を。最後の戦いを。うっすらと視界がぼやけてゆく。しかし、足を止めるわけにはいかない。敵は友軍艦隊のおかげで虫の息だ。しかしそれでも油断ならない。だからこそ。

「頼んだぞ。矢矧」

「ええ。任せて頂戴」

 魚雷が、砲撃が、深海棲艦へと向かう。それらは全て、必殺の一撃だった。

「フウゥ……モウ…イイヤ。ヤルダケ ヤッタカラ……。ソウダ……ワタシハ…ヤルダケ ヤッタンダ…! アノヒ、アノウミデ…!」

 沈みゆく言葉はその場にいた艦娘の心を震わせた。赤黒く変色していた海の色が青くなってゆく。

「大丈夫よ。私はここにいるから。沈んでなんかいないわ」

「…エッ…?」

「あぁ。そうだ。私たちはここにいるんだ。彼のおかげで、また、会えたのだ」

「あなた……あなたは、ワタシ? そう、か…。……っ、よしっ!」

 荒れた海は鎮まり、暗雲は消え去った。徐々に空が白み、それはまるで彼女たちの勝利を祝福しているかのようだった。

「全艦に告ぐ。

 

 

 

 

 我々の、勝利だ!」

 

 

 日本を、世界を左右する戦いは、

 艦娘達の声を勝利の鐘の音として、

 終わりを告げた。




 はい。難産でした。人対人だったら色々書けるんですけど艦隊なので基本遠距離なんですよね。
 あ、潜水艦ももちろんいたのですが、今回はいつの間にか処理されていましたね。後ついでにゲームの様々な要素を踏襲させていただきました。現実なのでゲージとかは皆無です。なので装甲破砕自体そのままできるわけなんですね。因みに何故装甲破砕があるのかというと、装甲に関係する深海棲艦を深海鶴棲姫が生み出したからです。だから霊的な繋がりがつくられ、対象の深海棲艦を撃滅することで霊的繋がりを断つ。これによって装甲が弱体化するというわけです。友軍は皆さま既に忘却の彼方かもしれませんが主人公の友人にお嬢様がいましたね? その人がいる場所が下関です。代償は奢り1回だけだったとか。さらりとデートの予約をするとは……流石ですね!
 支援砲撃は普通に出してました。多方面同時攻略作戦のような感じになっていたので、多くの艦娘を作戦に投入していたので、道中支援なし決戦支援のみとなりました。

 現在大改良中なので最終話はもう少し先になります。それまでお待ちいただければと思います。
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