提督を辞めたい提督   作:神楽 光

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 拾月が飛んでいるのは間違いではないです。仕様です。理由は日記を読めばわかります。


拾壱月

 拾壱月○■日 天気:晴れ

 目が覚めた。どうやら一月以上も眠っていたらしい。腕を捲るとガリガリの腕が現れた。点滴もしている。

 記憶の障害はない。名前もちゃんと覚えているし、今まで起こったことも全て覚えている。

 あの後どうなったのだろうか。彼らに背中から銃で撃たれて……彼女らが無事であることを祈ろう。……彼は?

 

 拾壱月◇○日 天気:曇りのち晴れ

 起きてからすぐ様々な検診を行った。ストレスによる心労と眼精疲労。加えて体力の低下と免疫力の低下。更に腰痛や肩凝りなどなど。まぁ色々な症状があるみたいだ。

 髪の色も完全に真っ白になったし……。

 この日記帳が手元に戻ってきただけでもよしとするか。せめて誰にも読まれていないことを願おう。

 

 ……すまない。すまない。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。もう、大丈夫だから。安心していいから。もう、大丈夫、だから。ちゃんと、いなくなるから。

 

 拾壱月$○日 天気:晴れ

 今日は見舞いがたくさんきた。友人に同僚に後輩。鹿島教官も。みんながみんな心配してくれたようで、とてもありがたい。うん。直接言うだけでなく、ここでも述べておこう。みんな、ありがとう。

 

 ……どうして?

 

 拾壱月→○日 天気:曇り

 昨日は書く余裕が無かったが、どうやら俺を撃った奴とそれに加担した奴、静観していた奴らは全員処分対象になったようだ。どんな処分があったかはわかってない。友人が言うには「お前は知らなくて良い」そうだ。怒ってくれるのは嬉しいがなんだか少し怖く感じてしまった。

 何故? 謝る必要なんかない。

 

 拾壱月☆*日 天気:雨

 まだ退院できていない。体を元に戻すのに時間がかかるそうだ。最近はリハビリもやっているので段々と筋肉がついてきている……はずだ。

 

 何か、返してくれ。

 

 拾壱月+*日 天気:晴れ時々曇り

 今日は艦娘らが来た。訪れたのは榛名と時雨、夕立、雪風、赤城、不知火、川内、神通の8人。全員多少なりとも関係が良好とも言えなくもない仲だ。俺だけがそう感じているのかもしれないが。

 神妙な顔で全員黙りこくっていたので、助けてくれてありがとうとお礼を言った。そしたら全員泣き出した。何で?

 理由を聞くと、「私たちが今まであなたにしてきたことを考えると、感謝なんてとてもではないが受け取れない」と帰ってきた。うん。まぁ、うん。恐怖心が少しあったのも確かだから俺から言えることは無い……が。命の恩人なのに誰が彼女らを貶すことができると言うのだろうか。

 と言うか普段からこちらは守られてばかりなのだ。それなのに彼女らに害を成した奴らがいる。そんな彼女らが耐えきれずに手を出してしまった。誰が咎められる?彼女らは精一杯我慢したのだ。それが自分に来ただけ……とは少し割り切れないが、全面的に悪いのは腐った奴らなので、これから仲良くできれば特に言うことはない。

 そんな風に伝えたら号泣した。嘘だろおい。俺慣れてないんだけど。看護師さんに見られて訝しげな目で見られて俺まで泣きそうになった。ついでに忠誠を誓われた。要らないからそういうの。

 

 もっと会話をしたいんだ。

 

 拾壱月%*日 天気:晴れ

 大分筋力も付いてきて、支えなしでも歩けるようになった。

 あの日から彼女らは度々来るようになった。今まで関わりが無かった娘も、俺に嫌悪感丸出しだった娘も。一様に謝罪しにきた。笑って許すことはできないが、これから仲良くできれば、という意思を伝えると泣く。そして忠誠を誓われる。これが一連の流れ。何なの?台本でもあるの?何で全員おんなじ言葉話すの?もう泣かれるのも慣れてきたよ。

 

 俺は、君に何度も救われている。

 

 違う。違うんだ。そうじゃない。これは俺が、俺のせいなんだ。

 

 拾壱月○=日 天気:曇りのち雨

 今日は辞職願を提出してきた。北方海域を攻略したのだ。大本営が指定してきたミッションをクリアしたぞ!さぁ、約束の報酬を!ってな感じで。返事は取り敢えず待ってだった。いや、まぁ現状退院できてないから別に良いんだけどね。……なんか嫌な予感がする。

 

 何の話だよ!? なんで!? 教えてくれよ! 何が! 何が君を追い詰めたんだ……。

 

 知らなくていい。いや、知って欲しくない。俺の。俺だけの問題だから。

 

 拾壱月+$日 天気:晴れ

 そう言えば、何故あそこまで艦娘らは人間を憎んでいたのだろうか、と考えた。

 どれ程酷い目にあったのだろうか。どれ程惨めで悔しかっただろうか。本能とも言うべき護国の精神と反撃したいという悔しさに挟まれていた筈だ。そんな状態が何年も続けば憎く思うのも仕方がない……のか?

 

 何でだよ……何でなんだよ……。

 

 拾壱月→%日 天気:雨

 検査結果、異常なし。と言うわけで、リハビリは必要だが退院しても良いことになった。PTSDも無く、健康になったと。まぁ出血とストレスによる異常だけだったからな。戦いから離れられればそんなもんだろう。でも丸一月って長い気がする。そんなにヤバかったのだろうか。

 

 あの日、あの時決めたじゃないか。俺と君は、一心同体だって。君の問題は、俺の問題でもあるんだ! ここまで来て、何で隠し事するんだよ!

 

 それは……。でも、でも! 君を巻き込みたくない! 君に死んでほしくないんだ!!

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