提督を辞めたい提督   作:神楽 光

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拾弍月

 拾弍月■■日 天気:晴れ

 久々に鎮守府に戻った。リハビリの為にまた病院に行かなきゃならないが。まだ一応提督だから見にきたのだ。ついでに書類仕事も。

 鎮守府に入ると、全員が全員心配気な表情をしながらも声をかけてくることはなく、むしろよそよそしかった。どした。

 前と随分違うみたいだが、なんて榛名に聞くと「皆提督のお帰りをお待ちしておりました。心配も、しておりました。しかし、榛名たちがしてきたことを振り返ると、とても話しかけるなんてことはできないのです」なんて返ってきて、確かに気まずいし相手からどう思われてるかなんて分かりきってるから話しかけるなんてできないか。と言うか前にも言ってたねその言葉。

 正直気軽に接することはできないが、会話ぐらいは楽しみたい。まぁ、もうそろそろでお役御免になる筈だけど。……なってくれるよね?信じてるよ?大本営。

 

 何もわからないじゃないか! 教えてくれなきゃ、何も力になれない! わからないままは嫌だ!

 

 教えたくない。知って欲しくない。知られたくない。これは俺だけがやらなきゃいけないことなんだ。

 

 拾弍月■○日 天気:曇り

 リハビリ期間も終了して、鎮守府に帰ってきた。このリハビリ期間が終わるまで度々鎮守府へ向かっていたので、それなりの数の艦娘と会話ができている。良きかな良きかな。このまま行けばいずれ彼女らは元の調子(糞提督着任前)に戻れる筈だ。そうなったら俺がいなくてもこの鎮守府は回っていけるだろう。安心だな。

 

 毎回毎回同じ言葉をっ! ならもういい! もう知らん!

 

 あぁ……そうしてくれ。俺のことは……忘れてくれ

 

 拾弍月◇○日 天気:曇りのち晴れ

 手紙が来た。中身を読んでみると、現在俺の処遇について協議中だと言う。壱月の中頃まで待って欲しい、と。そんなに長いの?俺何かした?

 

 拾弍月☆○日 天気:晴れ

 今日は何回か電話がかかってきた。一人目は俺の親友。どうやら提督になることになったそうだ。凄いじゃないか!って褒めたら、一斉に提督の首を切ったからその穴埋めだ、と返ってきた。それでも多くはないが少なくもない候補生がいた筈だ。その中の一人に選ばれたのだ、誇って良いと思う。俺はそもそも提督目指して無かったからな。ちょっと後ろめたい。

 二人目は同僚(女)。こちらも提督昇級の連絡だった。親友は呉、同僚は舞鶴らしい。同じ理由で昇級したらしかった。もしかして首切られたのって北方海域に来てた彼らなのだろうか。咎めていた人もいるので、その人らはどうか無事であって欲しい。というか2人ともデカい鎮守府なんだな。俺が言えた義理ではないけど。

 三人目は高飛車。上二人と同じで、下関鎮守府に着任したらしい。理由も同様。その他多くの鎮守府に候補生が着任したとか何とか。良かったなって言ったら、これで漸くあなたの横須賀鎮守府を超えることができますわ!と言われた。まず、艦娘の数が違うので超えることができるか不明だ。ついで俺はそもそも競っていない。だって辞めるもん。それを言ったら烈火の如く怒鳴られるから言わなかったけど(2敗)。

 

 拾弍月○$日 天気:雪

 まさか雪が降るとは思わなかった。都心部に近いので、あまりここには雪が降らない。駆逐艦の娘らは、その多くが外に出て遊んでいた。執務室の横にある自室では、遂に炬燵を出した。途端ににゃ〜と言いながら多摩が自室に突撃してきて、炬燵に入り丸まった。まんま猫だった。口に出ていたのか「猫じゃないにゃ」と言われた。猫じゃん。いつの間にか初雪と望月が炬燵に潜り込んでぬくぬくしてたのには驚いた。

 

 拾弍月%☆日 天気:晴れ

 昨日降った雪が微かに積もって、少し溶けた。その為表面が凍り、滑りやすくなっていた。執務の休憩ついでに鎮守府を見て回っていると、滑って転んだ娘が多数いた。特に暁型のネームシップとか……。

 

 拾弍月〒○日 天気:曇り

 明日はクリスマスだ。と、彼女らが騒いでいた。ふむ。用意した方が良いだろうか?

 

 拾弍月+$日 天気:雪

 今日はホワイトクリスマスとなった。朝はザワザワしていて、企みが成功したみたいで嬉しい限りだ。全員の分を買うのは骨が折れたが、要望していた品が安くて助かった。誰がサンタさんに扮したのかと、食堂に行くと協議していたので聞き流しながら朝食をいただいた。間宮さんに「はい、サンタさんどうぞ」と言われたが、「え?何の話?」って咄嗟に切り返しができたのは褒めてもいいと思う。「そうですか……じゃあどなたなのでしょう」なんて言われたので知らないと答えて執務室に戻った。本当に危なかった。

 その後は通常通り……とはならず、一日中パーティをしていた。哨戒任務の娘らは残念ながら参加できなかったが。

 

 拾弍月→■日 天気:曇りのち晴れ

 昨日の騒動がひと段落して、鎮守府は落ち着きを取り戻した。まだ誰がサンタなのか協議中みたいだが。このまま一生黙らせてもらおう。

 久々に銀行の口座を覗くと桁がヤバくて驚いた。これなら自分の財布から出さなくて良かったじゃんとも思った。

 

 拾弍月4○日 天気:晴れ時々曇り

 哨戒任務中の部隊から深海棲艦発見の報告が来た。はぐれらしく、構成は駆逐イ級3と軽空母ヌ級1だった。そのまま撃破できたので帰港するとのことだった。報告してきたのは吹雪で、他の娘らは休ませていた。編成を変えて吹雪にも休ませ、待機していた娘らを哨戒任務に出した。

 北方海域を攻略したからか、ここ最近は緩い雰囲気が漂っている鎮守府だが、緩くなったのは強くなったからで、戦闘態勢は即時取れるようだった。うーん。凄い(小並感)。

 

 拾弍月3☆日 天気:曇りのち晴れ

 遂に年越し。この一年は濃かった。と言うか暴力と暴言の嵐が一番多かったように思う。ただ、そんな中で段々と彼女らと心を通わすことができて良かったとは思う。思い残すことはもう無いので、後は辞職願いが通るまで待つだけだ。轟沈者も誰一人出ていない。色々なことに目を瞑れば、本当に良い一年だった。目を瞑れば。

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