スーパーロボット大戦OG 無限のフロンティア 異世界からの依頼者 作:ダス・ライヒ
連邦軍制圧下にある惑星サジタリウスのモスバサシティにおける戦いは、攻め側のワルキューレの勝利に終わった。
戦闘は数時間余りで終了となっている。連邦から見て、兵力に劣るワルキューレがこの都市を僅か数時間余りで占領できたのは、現地の連邦軍部隊の士気と、練度不足のおかげであろう。それか敵の指揮官が部下よりも先に逃げ出してくれたおかげだ。
そのおかげで、ワルキューレは連邦の制圧下にある惑星での目標を遂行することが出来た。
さて、なぜワルキューレがこの惑星を攻撃、それも大都市の一つを攻撃したのかは、現地に居るメガミ人やノンダス人ゲリラの支援でもあるが、もう一つはプローディネンス博士が調査を行っていた遺跡にある。
その遺跡は魔術関連の物であり、戦局を左右しそうな魔力を秘めた書物が眠っているとされている。
それに目を付けた戦乙女たちが、魔術や様々な超常現象を排除する専門家たちであるサイキックハンターが破壊しようとする前に、こうして攻めて占領したわけだ。
数時間余り、それも約四時間余りで街を占領したワルキューレの部隊は、直ぐに街の周囲一帯に防御線を築き、遺跡の呪物や魔法関連の書物を回収しきるまで防御の構えを見せた。
これに対する連邦軍は、先ほどの醜態を敵方である同盟軍には見せまいと、地上と宇宙で膨大な数の部隊を集め、自分等が反乱軍と表するワルキューレに対しての反攻作戦に打って出ようとしていた。
「お前たち、乗らなくて良かったのか?」
先の戦いでこの街の悪徳警察署長、キズラーを自分の正義の剣「霊式斬艦刀」で斬ったゼンガーは、残って居る連邦軍の捕虜達に、先ほど市民と負傷兵を乗せて出発した列車になぜ乗らなかったかを問うた。
「そりゃあ、負傷者に席を開けねぇとな。俺たちは元気だからよ」
「ほぅ、俺が思っていた連邦兵とは違う返答だな。てっきり、負傷兵を捨ててまで逃げると思っていたが」
「それ、偏見過ぎるだろ。俺たちUNSCの海兵隊は、自分が残りたいと思う奴以外、救うヒーローなんだぜ?」
答えを聞いたゼンガーが、自分等に対するイメージを口にすれば、それは偏見だと海兵隊員は豪語する。彼らが何故ワルキューレの捕虜となったかは、自軍の助けを待っているからだ。
UNSCの海兵隊を初めとする連邦軍の中で優等生に当たる勢力の将兵達の他に、同勢力所属の陸軍や空軍、海軍、ISA全軍の将兵達、COGの将兵達、ヘリック共和国の将兵らは自軍の助けが来るまで捕虜となってここに残ると決めている。
だが、優等生では無い地球連邦や地球連合、他の勢力の者達は市民権や選挙権を得るために志願入隊や徴兵を受け入れた者ばかりなので、自分等を消耗品扱いする自軍に対する忠誠心は無く、更に自分等を見捨てて街から逃げ出した指揮官たちを恨み、ワルキューレに志願しようとする者達さえ居る程に、自軍に対する誇りや名誉も無かった。
そんな劣等生組の勢力の将兵達のように、ゼンガーはこれらの志願兵を受け入れる反巨大勢力同盟軍と言う名の義勇軍に、海兵隊員などの優等生組に問い掛けた。
「で、お前たちはワルキューレの反連邦・反同盟十字軍に志願するつもりはあるか?」
「馬鹿言え、俺はマリーンズだ。十字軍に志願してエルサレムに遠征はしない。遠征するとしたら海兵隊員としてだ」
「そうだ。俺は厳しい訓練を受けて来た戦略惑星同盟軍の兵士だ。エルサレムにはISAとして行く」
「俺たちCOG、いや、ギアーズはローカスト共を全員、血祭りにしてから行く」
「俺はゾイドで行ってやる。ただし、戦争が終わってからな」
「中々、元気のある奴らじゃないか。連邦軍も勿体無いことをしたな」
その問いは愚問であったが、敵ながら元気のある連中とゼンガーは彼らを褒め称えた。
「よう、エンジョイ侍。捕虜との会話は楽しいかい?」
そんなゼンガーの元へ、ハーケンが煙草を口に咥えながら近付いてくる。
「おぉ、ハーケンか。シディーはどうしている?」
「今、ロイヤルレディが慰めている所だ。なにせ母親を知らぬ間に殺され、それを自慢げに見せ付けられたからな…ありゃ、トラウマになりかねないぜ」
「サイキックハンターめ、残された者の気持ちなど分からんのか」
「連中、血も涙も無さそうだしな。多分、あいつ等の方が異端者じゃねぇかな。何でもかんでも自分等が優先で正しいと思ってるやがるんじゃねぇか?」
声を掛けて来たハーケンに、ゼンガーがシディーの様子を問えば、彼は彼女の身を案じつつ、顔を暗くしながら答える。
これにゼンガーとハーケンは、彼女の母を殺したサイキックハンターの事を皮肉る。
暗い話はうんざりしているのか、ハーケンはゼンガーに、自分が去ってからの新西暦の世界について聞き始めた。
「さて、ダークな話はここまでにして、明るい話題と行こうか。ジャスティスサムライ、新西暦のメンズは元気かな? 元の世界を追い出されて、鬱病になってなきゃ良いが」
「そうだな。連邦軍は暫く攻めてこないだろう。宇宙のレーツェルも交えて話そう」
「おっと、ダークホースも一緒か。こいつは良いぜ」
ゼンガーがレーツェルも宇宙に居ることを伝えれば、ハーケンは喜び、早速、ワルキューレの通信施設へと向かった。
一方でマリ達が何をしているのかと言えば、マリはシディーでも慰めるためなのか、将校用の茶席を占領して紅茶を嗜み、ヴァンは相変わらずに提供された軍用レーションに様々な調味料を掛けて食し、アシェンは自分に話しかけて来たワルキューレの将兵等に、毒舌をかましていた。
そんな彼女たちを置いて起き、ハーケンとゼンガーは通信本部として使われている一室に入り、レーツェルを交えての新西暦組の面子がどう過ごしているのかを聞く。
「よぅ、ダークホース。愛馬のトロンべは元気かな?」
『その格好にその口調、ハーケン・ブロウニングか。私の愛馬、トロンべは元気にしているぞ。それに私と妻以外に懐かないトロンべが、別の者に心を許している』
まずは他愛のない身の上話をしてから、新西暦の面子がどうなっているのかを問う。
「そいつは良い知らせだ。なんせ俺は門前払いだったからな。で、新西暦のメンズの様子はどうだい?」
『あぁ、元気にしている。みな強いばかりに、ギリアムなどの鋼龍戦隊のリーダー格は新設された部隊の指揮官となり、他の面子はそれぞれの戦線の火消し役として使われて散り散りになってしまったが、定期的に手紙が私の元へ来ている。ゼンガーも一枚か二枚の手紙を持っている筈だ』
「OK、ヒーロー侍に見せて貰おう」
新西暦の世界で戦った戦友達がワルキューレの部隊指揮官となるか、切迫した状況である戦線に派遣されてバラバラになっていると聞かされたが、手紙だけは届いているとレーツェルに伝えられれば、あの面子の強さを知るハーケンはホッと胸をなでおろす。
それに手紙はゼンガーの元へ届いているので、後で読ませて貰うと同じく正義を断つ剣を携える男と同じ部隊指揮官となっているレーツェルに返す。
『さて、いきなりで済まないが、ハーケン・ブロウニング、君もワルキューレに来ないか? 君の世界も連邦や同盟に支配されている。悪い話では無いと思うが』
「ここで勧誘かい? ブラックホース。まぁ、ヴァルキリーアーミーズの女将校とベッドで夜を共にしたことはあるが、初めて新西暦の世界に俺が来た時の状況とは違い過ぎるしな…」
『まぁ、いきなりの物だ。返答には困る物だろう。答えが出たら言ってくれ』
戦友達の無事を聞いて安堵するハーケンに、レーツェルはエンドレス・フロンティアが連邦や同盟の支配下に置かれていることを知ってか、彼をワルキューレに勧誘し始める。
これにハーケンは、連邦は嫌いであるが、友人が何名か居る上、ロストエレシアは完全に連邦軍の勢力下にあるので迷い始める。
いきなりであったのか、レーツェルは返答を待つことにして、別の話題へ変えようとしてか、ハーケンたちが新西暦の世界からエンドレス・フロンティアに戻ったことを問う。
『少し話題を変えよう。で、新西暦の世界から無限の開拓地に帰った後に何があった?』
「プリンセスたちからの質問攻めさ。みんな楽し気なパーティーに参加できなかったことに、かなり怒っていたよ。俺とアシェンからすれば、零児達と同じようにエトランゼな気分だったがな」
新西暦から無限の開拓地へと帰った後、レーツェルに知り合いの姫たちからの質問攻めにされたと返し、置いて行かれたことに怒られたとも告げる。
それにハーケンは四度目の世界の命運をかけた戦いをパーティーとも評する。これには幾度か世界を救って来た流石のゼンガーとレーツェルも驚きを隠せないでいた。
「あの戦いをパーティー呼ばわりとは…流石は無限の開拓地だ。短い間にしか居なかったが、あの場に居る者達はみなただ者ではなかったからな」
『ゼンガーの言う通り、あの世界の命運をかけた戦いをパーティーと表するとは、まことに恐ろしい世界だな。無限の開拓地とは』
「なに、新西暦の世界ほどにないにしても、バトルが日常茶飯事だからな。あんた等も来ると良いさ、中々楽しいワールドだぜ。エンドレス・フロンティアは」
『無限の開拓地と聞く通り、飽きはし無さそうだな。では、私は書類整理などがある。先ほどの話、考えておいてくれ』
「あぁ、考えておくさ」
無限の開拓地に行ったことがあるアクセル・アルマー、アルファミィ、コウタ・アズマより聞いていたが、改めて無限の開拓地の凄さを知ったゼンガーと、経験者より聞くよりも、現地の人間より直接聞いたレーツェルは、その世界へ行ってみたいと思った。
仕事が立て込んでいるのか、ハーケンに勧誘の件を考えておいてくれと告げた後、通信を切った。
「で、ワルキューレに入るつもりは?」
「ヴァルキリーアーミーズにね、さっき話した通り、連邦は嫌いだが、知り合いのジェネラルを裏切るのは、あいつみたいで嫌なんだよ」
「あいつ?」
「あぁ、そうか。ジャスティスサムライは聞いてなかったのか。マークハンターさ。あいつはトンデモねぇ守銭奴だったな」
ゼンガーに勧誘の件を聞かれ、ハーケンは助けた連邦軍の将軍を殺したくない気持ちと、二度目の世界を救う戦いで悩まされた賞金稼ぎの事を彼に話した。
「金さえ積まれれば、どんなこともする男か…」
「薄汚い男さ。だが、実力はかなり高い。実際、あいつは連邦や同盟に金を詰まれて、勇者ガール一行を襲ったようだ」
マークハンターの金さえあればどんな仕事でもする賞金稼ぎと知り、ゼンガーは薄汚い男であると評した。そんなゼンガーに、ハーケンは彼が自分たちの世界を侵略している連邦や同盟に金を詰まれてルリ達を襲っていたことも話す。
「勇者ガール?」
「おっと、それも話して無かったな。では…」
『連邦軍が来たぞ!』
またハーケンは、ゼンガーが知らないルリ達のことも話したため、それを伝えようとしたが、連邦軍が反撃に出たことを知らせる怒号で遮られた。
「これがママの調査していた遺跡…?」
ハーケンとゼンガーがレーツェルと思い出話に盛り上がっている頃、マリは二人に黙ってシディーと共にサイキックハンターの隊長によって殺されたプローディネンス博士が調査していた遺跡に来ていた。
目前にそびえ立つ地上の未来の都市群とは違い、神聖的なデザインの遺跡をマリは見詰める。
ここにルリの行く先に関する手掛かりがあるかもしれない。
そう思ったマリは、即座に行動に移し、遺跡へと歩み寄る。当然ながら、遺跡に先に着いていた調査隊の護衛である警備兵に阻まれる。
「許可の無い者は立ち寄れません。直ぐに…あれ?」
出入り口へと迫るマリを追い返そうとする警備兵であるが、瞬きした隙に、目の前に居た彼女はいつの間にか遺跡まで入っていた。
これに何が起こったのか理解できず、首を傾げる警備兵たちであったが、その間にシディーにも抜けられ、あっさりと侵入を許してしまう。許可の無い進入にも関わらず、マリは遺跡の奥までシディーと共に進む。
「止まりなさい! 貴方は不法侵入…」
途中、幾人かの障害と出くわしたが、その都度に魔法などを使って鮮やかに突破する。
「あぁ、私たち不味い事しちゃってるかも…」
これにシディーは少し心配になったが、それをやっているマリは一切気にも留めなかったようだ。
奥まで辿り着けば、マリは祭壇らしき場所に向けて手を翳し、遺跡に居るとされる人物を呼び出そうと声を上げる。
「遺跡に残留する精霊よ、我の声に従い、その姿を見せよ!」
「あれ、あんたってそんな話し方だっけ…? それに、周りになんかオーラが…」
シディーはマリの声を余り聞いたことが無かったが、威圧的な言い方を初めて聞き、それに全身が碧いオーラに包まれていることに驚く。これには追い出そうとして近付いた研究員たちも同様で、何が起こったのか分からず、混乱している。
そんな彼女たちの事を気にせず、マリに呼ばれた遺跡に残留する精霊は、呼び出した彼女の前に、霊体でありながらも姿を現した。
その姿とは、壁画などで見るような女神そのものであり、人間離れした美しさで見惚れてしまいそうな物であった。呼び出された精霊は、呼び出した者であるマリに対し何の用であるかを問う。
『我は聖なる力を持つ者のため、この遺跡を守護するために残留した精霊なり。して、何用で呼び出した? 神を殺した堕天使の祖先よ』
「神を殺した堕天使の、祖先…!?」
精霊が放った神を殺した堕天使の祖先と言う言葉に、シディーは強く反応してマリを見たが、彼女は何の反応もせず、ただルリがこの場に訪れ、何所へ行ったのかを問う。
「ルリちゃんって娘が居たでしょ? その娘がここに来たはず。何所に行ったか知らない?」
先ほどの口調とは違うが、威圧的なのは変わらず、マリは精霊にいつもの口調で問えば、精霊は浮遊しながらその問いに答えた。
『ルリ…数多の世界を救うため、神に選ばれた勇者の事か。彼の者はここで我が守りし聖具を受け取るためにここへ立ち寄った。行く先についてだが、分からず仕舞いだ。同行するライデンと呼ばれる雷神は行く先を話さず、それを手にしてからはここを去った。わざわざ遠いところを済まんな』
「…役立たず」
「え、それ聞いて終わり? ちょっと!」
結局のところ、行く先は分からず仕舞い。それを聞いたマリは、精霊に向けて小声で悪口を言った後、何の礼も無しに、シディーを置いて去って行く。
『何所へ行く? 他に用は無いのか?』
「無いわ。これでまた振り出しね」
役に立たなかった精霊の問いに、マリは無いと答えながらその場を後にしようとする。そんなマリに対し、精霊はある言葉を投げ掛ける。
『彼の者をお前は取り返そうとしているが、それは叶わぬ願いかもしれんぞ』
その言葉に反応してか、マリは精霊の居る方向へ振り向き、ルリは絶対に自分の元へ連れ返すと断言する。
「叶わない? あんた本気で言ってんの? 私に不可能なんて無いの! その為に、人間辞めたんだから」
自分に不可能何て無い。
そう断言するマリに対し、精霊は両手を組みながらやれるものならやってみろと告げた。
『そうか…なら、精々運命に抗うと良い』
マリに向けて告げる精霊であったが、彼女は無視してその場を後にした。役目を終えたところで、元の場所へ帰ろうとする精霊であるが、この遺跡を調査していた研究者の娘であるシディーに声を掛けられる。
「あ、あの…私の母について、何か知りませんか…?」
『ただの人間? あぁ、この遺跡を調べ回っていた研究者の娘か。あ奴なら覚えておる。我を見付けぬことは出来なかったが、少女のような眼でこの遺跡を調べ回っていた。だが、我ら精霊の類を異端とする者達によって殺されてしまったようだが…』
「そうなんですか…」
母の事を精霊より聞き、シディーは暗い表情を浮かべる。そんなシディーに気付いてか、精霊は母の遺言を告げる。
『それと死ぬ間際に遺言を聞いた。シディー、私が居なくとも強く生き、幸せになれと。最期までお前の写真を握り締めながら息を引き取った。だから敵討ちをするゼンガー・ゾンボルトなる霊力を込めた剣を携えし剣士に力を貸した』
「あのお侍さんみたいなことをママは最期に言ったのね…それ聞いちゃうと、何が何でも強く生きなくちゃ…!」
母の遺言とゼンガーに力を貸したのは、精霊のであることを聞いたシディーは、強く生きる決心を付け、母の遺体があるラボへと向かおうとした。
「ありがとう、精霊さん。ママを遺言書の場所へ埋葬してくるわ」
『うむ、精一杯、お前の母の分まで生きよ。応援しておるぞ』
マリとは違って礼を言ってから去ろうとするシディーに、精霊はエールを送る。そんな彼女はこの場を後にしてから、連邦軍が攻撃を仕掛けて来た地鳴りが起こる。
『やれやれ、地上の愚か者共め。また無辜の民を巻き込むか』
また民間人を巻き添えにしようとする連邦軍に、精霊は呆れた言葉を呟いた。
「MS隊、ならびPT隊はデータセンターへ突っ込め! 連中に聖域の場所を探らせてはならん!!」
そのころ地上では、周りを巨大な氷河の塊に偽造した連邦軍の宇宙戦闘艦、それも一隻の巡洋艦クラスの艦艇がその偽装外装を外し、モスバサシティにいるワルキューレの部隊に強襲を仕掛けていた。
目標は巡洋艦の艦長が言った通り、自軍の機密情報が保管されているデータセンターの破壊だ。周囲にはまだ避難民のテントがあるが、連邦宇宙軍は民間人の安全よりも、自軍の機密情報の方が優先らしい。
「まだ民間人が居ますが!?」
「まだ民間人だと? ふん、その程度の犠牲など、聖域の場所を知られて起こる惨事に比べてば安い物だ!」
副長からの問いに、艦長はそう返せば、随伴機と共にデータセンターへ突っ込む。これを阻止せんと、ワルキューレの機動兵器部隊が集中砲火を浴びせるが、全速力で空中を航行しているがため、致命傷を与えられない。
「データセンターを射程内に収めました! 砲術長からの返答で照準は既に完了しております!!」
「よし、撃てぃ!」
「っ!? 十時方向よりPTが一機接近!!」
「なにっ!?」
副長からの返答で、射撃命令を出そうとした艦長であったが、レーダー手からの報告で出せなかった。即座に対空砲で接近してくるPTを撃墜するよう怒号を出す。
「邪魔者めが! とっとっと撃墜せんか!」
「やっていますが早過ぎます!!」
向かって来るPT、それも自軍で採用されている量産型ゲシュペンストMk-Ⅱよりも高い機動力を持つゲシュペンストが、対空砲火の弾幕を避けつつ時間に向かって来る。
余りにも早いために照準が追い付かず、味方機を誤射してしまう。そればかりか懐までに、そのPTに接近される。
「き、来た!」
「ぐわぁぁ!?」
データセンターへ突撃を仕掛けた巡洋艦は、突如として現れたゲシュペンストの胸部のビーム砲でブリッジを吹き飛ばされ、主砲を撃つことも無く無力化された。
そのゲシュペンストは、H型でS型をベースに作られたタイプだ。
頓挫した計画通りに製造されたコピー機である。コックピット内部には、メインパイロットのサポートを考慮してか、副座が設けられている。この機体に乗っていたのは、ハーケンとアシェンだ。いわば、H型はハーケン達の運用のために設計されたと言っても過言では無い。
頓挫した設計に作った本人は、彼らのために設計された機体とは知る由も無いだろう。
では、何故ハーケンたちがこの機体に乗って連邦軍の巡洋艦を攻撃したのか?
それは時を数十分前に戻す必要がある。
「なに、連邦軍だって? ボス、あんたの読みじゃ…」
連邦軍の襲撃の方を聞いたハーケンは、近くに居るゼンガーに問うた。
「あぁ、どうやら連邦軍が反撃に出たようだ。直ぐに反攻作戦に出ることは出来ないはずだが…これは、残党による襲撃と捉えて良いだろう」
これにゼンガーは、連邦軍が反攻作戦に出たと思ったが、制圧してからまだそれほど時は経っていないので、反攻では無く残存戦力による襲撃と捉える。
「やれやれ、諦めの悪い連中だぜ。まだ街を壊したりないようだな」
「お前の言うとおりらしいな。では、俺が直接奴らを…」
『待て、ゼンガーよ。少し前にゲシュペンスト・タイプハーケンを地上へ送った。もう直ぐそこに運び出されている筈だが』
諦めの悪い連邦軍に悪態をつくハーケンに反応して、ゼンガーは愛機であるダイゼンガーで襲撃してきた連邦軍の残存部隊を迎撃しようとしたが、再び通信が繋がり、レーツェルが新西暦の世界でハーケンらが使っていたゲシュペンスト・タイプHを送ったとの知らせを出す。
「ナイスタイミングだ、ダークホース。早速悪党退治とさせてもらうぜ」
『あぁ、この日のためにと思って調整は済ませてある。肩慣らしにでも思ってくれ』
「OK、ウォーミングアップとしゃれこむか」
「ハーケン、なるべく街には被害を出さぬようにな」
「そう言う事は、百も承知だぜ、ボス」
いいタイミングでH型を持って来てくれたレーツェルに、ハーケンは感謝の言葉を掛ければ、その場を後にしようとする。出て行く間際に、ゼンガーより街に余り被害を出さないように忠告を受けたが、そのことはハーケンも分かっているので、笑みを浮かべながら返し、この場を後にする。
彼が出て行ってから数分余り、レーツェルが事前に連絡でも付けていたのか、近くに新西暦の戦いで愛機として搭乗していたゲシュペンスト・タイプHが駐機されていた。運び込めと言われて言われた通りにここに運び込んだ黒光りの機体を見て、やや首を傾げる整備班長に対し、ハーケンは声を掛けることなく自分の愛機に近付く。
「お、おい。それはお前の…」
「かっこつけ野郎と私の愛機でヤンス」
「えっ? あのキザ野郎とお前って…ちょっ!?」
いきなり運び込んだ機体に乗り込むハーケンに声を掛けた中年の整備班長だが、聞こえてないのかコックピットのハッチを開けたまま機体を起動しようとしていた。
そんな班長に答えようとしてか、同じくこの知らせを受けていたアシェンがそれを告げてから、恐ろしく飛翔してコックピットへと乗り込み、ハーケンと共に起動準備を始める。これを止めようとした班長であったが、機体は既に起動状態であり、完全な稼働状態となったゲシュペンスト・タイプHは、街中でデータセンターを目指して突っ込む巡洋艦の迎撃に向かった。
「暴走族が乗った巡洋艦は、北西の方向にいやがります」
「OK、そっちか。飛ばすから掴まってろよ!」
「シートベルト着用なんで心配ご無用なのです」
アシェンから巡洋艦の位置を聞けば、ハーケンは操縦桿を動かしてその方向へと向かう。向かっている最中に、辺り一面にビームを撃ちまくる連邦軍機を発見した。機種はPTの量産型ビルトシュバインであり、空中浮遊しながらワルキューレの機動兵器に向けて撃っている。
「こっちに気付いていないようだな。ナイトファウルのセーフティーは解除! ぶっ放すぜ!」
こちらに気付かない量産型ビルトシュバインに向け、単発でPTサイズのナイトファウルの弾丸を放つ。放たれた弾丸は敵機に吸い込まれるように命中し、それに当たった量産型ビルトシュバインは道路の上に墜落した。
「第一射目、命中しやがりました」
「OK、感覚は覚えているな。じゃ、続けて行くとしますか!」
敵機の命中を確認し、新西暦での戦いの感覚を思い出せば、ハーケンは続けさまに自分に気付いて向かって来る敵機との交戦を始める。
『ゲシュペンスト!? S型か!?』
『なんでS型が! 鹵獲されたのか!?』
「まっ、似てるしな」
「このHタイプは、艦長と私のために作られた物。お前たちの知るSタイプでは無い」
ゲシュペンスト・ハーケンを見た連邦兵たちは、外見がタイプSに似ているためにそれを勘違いする。これにハーケンとアシェンは答える形で、動きの悪い一機の敵機を撃ち落とした。
『この野郎!』
「背後より敵機!」
「おっと! 背中は、美女以外はお断りだぜ!」
背後よりジェットストライカーパックを背中に付けたダガーLが右手に持ったビームサーベルで斬り掛かって来たが、アシェンのサポートで気付いたハーケンは、ナイトファウルを背後に向け、銃口下に搭載されたパイルバンカーで突き刺した。
パイルバンカーをコックピットに突き刺されたダガーLはそのまま機能を停止して下へと落下して行く。
「スラッシュリッパー!」
次に背部のウェポンラックより投降武器であるグラン・スラッシュリッパーを二つほど飛ばし、二機の敵機を一度に撃墜する。
それから自分に攻撃してくる敵機を撃墜しつつ、対空砲火で弾幕を張る巡洋艦に近付く。対空砲火を避けながら巡洋艦に近付く最中、足元より量産型ビルトシュバインが近接武器で串刺しにしようと上がって来た。
「足元より敵機が来ちょります」
「おいおい、下品な奴だな!」
これもアシェンが察知したため、直ぐにハーケンは機体の近接武器を収めている左手のグラン・プラズマカッターを引き抜き、下から突き刺そうとして来る敵機の胴体にビームソードを突き刺して無力化した。
爆発に呑まれる前にビームを消してソードを引き抜いてから元の位置に戻し、弾幕を避けつつ敵艦へと接近する。
途中、自分に突っ込んで来る敵機が居たが、味方の対空砲火の誤射に遭って撃墜された。そのおかげか、それともタイプHの機動力のおかげか、容易にブリッジまで接近に成功する。
「ジ・エンドだ!」
このままブリッジまで近付けば、機体胸部に搭載されているビーム砲を撃ち込んで巡洋艦を無力化した。
「敵艦沈黙。ブリッジを失った巡洋艦は主砲をぶっ放すことなく降参したっちゃ。搭載機も戦闘止めて白旗上げちょります」
「OK、これで良い。これ以上のバトルは街の復興を遅らせるだけだ」
アシェンが解析して巡洋艦の残りのクルーがワルキューレに投降したことを知らせれば、ハーケンは操縦桿から手を放して両手を後頭部に組んで楽な姿勢を取る。そんな二人の元に、あることを知らせる無線が繋がる。
『おい、あの赤い地上戦艦は!? 我が軍の認証コードを発してるけど!』
「赤い地上戦艦…? おい、撃つなよ! そいつは俺の地上戦艦だ!」
赤い地上戦艦と聞いてか、ハーケンは直ぐに自分の地上戦艦であるツァイト・クロコディールであると分かれば、発見した将兵に撃たないように怒鳴る。
直ぐにツァイトの元へ向かうため、操縦桿を動かし、その方向へと全速力で向かう。その途中、ツァイトより通信が入った。
『艦長、艦長でありますか? 副長のリィ・リーです! ワルキューレの連中がこちらに大砲を向けておりますが…』
「副長か! 大丈夫だぜ、さっき撃たないように告げた。で、なんでこっちに来たんだ? あのバトルマシンの墓場に隠れていろと告げた筈だが」
通信を入れて来たのは副長であるリィ・リーだ。そんな副長にハーケンは安心しろと告げてからなんでモスバサシティに来たのかを問う。
『それが大変なことになりまして…』
『連邦軍の大部隊が、その街を包囲してるんだ!』
「なんだって!? 今のは余興ってことか! ボス、聞こえるか!? さっきの戦闘はその余興だ。メインパーティーはこれから始まるようだぜ…!」
リィが来たわけを話そうとすれば、ミカルが途中で割って入り、街が連邦軍の大部隊に包囲されていることを知らせる。
先の戦闘がその余興であると分かれば、直ぐにゼンガーに知らせた。通信よりそれを知ったゼンガーは、宇宙でも同様の知らせを聞いたとハーケンに告げる。
『やはりそうか…今し方、レーツェルより報告が入った。宇宙にも連邦軍の大艦隊が反攻のために集結しつつあるようだ…!』
「地上と宇宙の同時攻撃か…OK、地上の方は俺たちに任せな! ボスは宇宙に行ってダークホースを助けな!」
ゼンガーの知らせを聞いてか、ハーケンは自分等に地上波任せろと告げた。
『助かる! 宇宙の方が片付けば、直ぐに助けに入る!』
「あぁ、その前に地上が片付いちまうかもな!」
宇宙への救援に向かうゼンガーが、宇宙の方が片付くまで持ち堪えろと告げたが、ハーケンはこれに冗談交じりで返した。それからハーケンらは地上の大部隊の迎撃に向かい、ゼンガーはダイゼンガーに乗り込み、宇宙へと救援へと向かった。
一方で宇宙では、連邦宇宙軍と宇宙海軍が先程の醜態を晴らすためか、凄まじい数の艦艇を集めて連合艦隊を組み、反攻の準備を進めていた。
数はワルキューレの宇宙艦隊の約十倍、およそ二千隻とやり過ぎとも言える程の数の艦艇だ。艦載機も含めれば、膨大な数であろう。そんな物量が今にもサジタリウスを襲撃したワルキューレの宇宙艦隊を呑み込もうとしている。
そんな大規模な連邦艦隊に対し、ワルキューレは地上の味方を守るために迎え撃つ準備を行った。