スーパーロボット大戦OG 無限のフロンティア 異世界からの依頼者   作:ダス・ライヒ

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誰か誤字脱字、修正してくれよぉーっ!


Rocks! 前編

 ハーケンが地上でスーパーロボット大戦の開幕を宣言した後、ゼンガーやレーツェルが死闘を繰り広げている宇宙でもその大戦が始まっていた。

 

「斬艦刀・電光石火!!」

 

『ランツェ・カノーネW発射!!』

 

 ゼンガーが乗るダイゼンガーとレーツェルのアウセンザイターは、操縦者が放った技名と共に、突然現れて連邦軍やワルキューレに対して無差別に攻撃するネオ・ムガルと呼ばされる謎の勢力の機動兵器や宇宙艦艇を次々と沈める。

 地上に現れたネオ・ムガルと同じく、連邦でも同盟でもなく、ワルキューレも保有していない機動兵器や艦艇を多数投入しており、中には人員不足を解消するためか、MSの無人型や無人戦闘機などの無人機も投入していたが、ダイゼンガーとアウセンザイターの敵では無かった。

 50m級の特機、スーパーロボットが暴れる中、それと同等の強さを持つ、ネオ・ムガルの特機とも言える機体がダイゼンガーに斬り掛かる。その機体は斧をモチーフとした機体であり、形は違うが、ヴァンが乗るダンと同じタイプの機体のようだ。

 

「むっ? あの機体は…!」

 

 その機体に乗るパイロットの殺気を僅かに感じ取ったゼンガーは、そちらの方向へダイゼンガーを振り向け、斬艦刀を構えて攻撃を防いだ。

 

『ほぅ、この一撃を受け止めるとは、中々の剣士と言える…!』

 

「何奴?!」

 

 斬艦刀の刀身で巨大な斧を受け止めれば、斧を持つ機体に乗る老人より感心の声を伝える映像通信が入る。

 通信映像に映るその老人は、数々の修羅場を潜り抜けて来た顔つきをしており、ゼンガーやレーツェルよりも技量は高そうだ。ヨロイに乗っている時のヴァンと同じようだが、老人は胡坐を組んで右手の操縦桿らしき物を握っている。そんな老人に感心の声を頂いたゼンガーは、映像に映る老人に何者かを問う。

 

『これは失礼した。私の名はガドヴェド・ガオード、咎人としてこの世に呼び出された物だ。この機体は月曜日の名を持つヨロイ、ディアブロ・オブ・マンデイ。それで貴様の名は?』

 

「我が名はゼンガー・ゾンボルト、悪を断つ剣! そして我の機体はダイゼンガー! 我が魂の甲冑なり!」

 

 名を問われてガドヴェドと名乗った老人に対し、ゼンガーも名乗り上げる。

 

『ゼンガー・ゾンボルト、悪を断つ剣か…フフフ、面白い! 私は生前に大罪を犯した咎人。その剣で咎人である私を断てるかどうか試してみよ!』

 

「咎人か…! 良かろう、ご老体の罪、このゼンガーが断ち切る! 行くぞ!!」

 

 ゼンガーの名を聞いたガドヴェドは、悪を断剣と聞いて少し馬鹿にしたが、彼の目を見てそれが事実であると確信し、決闘を申し込んだ。決闘を申し込まれたゼンガーは、ガドヴェドの顔を見て罠が無いと判断し、決闘を申し入れた。

 

『ゼンガー、罠である可能性は? あの老人が嘘をついている可能性が…』

 

「いや、あのご老体は嘘をつかん。それに自分の罪を悔いている。それが嘘であるなら悪として斬るまで…!」

 

 レーツェルよりガドヴェドが嘘をついている可能性があると言ったが、ゼンガーは決闘を申し込んだ老人が嘘はつかないタイプと言えば、それに負けて決闘の邪魔立てしようとする輩を排除すると告げて承知する。

 

『そうだと良いが…では、私は決闘の邪魔をしようとする輩を排除しよう』

 

「助かる、我が戦友よ。向こうも邪魔立てしようとする輩も排除する様子だ」

 

 決闘を許してくれたレーツェルに礼を告げれば、ゼンガーはガドヴェドが駆るディアブロに接近する。

 

『ヒャッハー! 纏めて死ねぇ!!』

 

『っ!? 外道共め!!』

 

「決闘の邪魔立てをするとは…! 許せん!!」

 

 ゼンガーが決闘相手に近付こうとした時、罪を悔いてない咎人と言う事か、無法者らが駆る様々な機動兵器が襲い掛かって来た。

 それに気付いたゼンガーとレーツェルは、即座に無法者達が乗る機動兵器群を次々と撃破して行く。ガドヴェドが誘い込んだと思っていたが、当の本人がこれに激怒しており、彼も味方である無法者達を二機の特機と共に巨大な斧で斬り捨てる。

 

『この馬鹿共め! これは神聖なる決闘だ! 貴様らのような生前の罪を悔いらん連中が邪魔をするな!!』

 

『ひっ!? や、止めてタボっ!?』

 

 無線機より無法者達の断末魔が響き渡る中、決闘の邪魔をした味方機を次々と仕留めるガドヴェドのディアブロを見て、二人は感心の声を上げる。

 

『中々に騎士道精神溢れる老人のようだ』

 

「俺の見込んだ通り、あの老人は正々堂々とした戦士! 相手にとって不足無し!!」

 

 レーツェルが邪魔をした友軍機を片付けるガドヴェドを見て言えば、ゼンガーは不足の無い相手と判断して、彼と共に邪魔をしたネオ・ムガルの機動兵器を排除する。

 

『ほぅ、中々の太刀筋。相当鍛えているな!』

 

「ご老体こそまさに現役の動きです。まるでわが師のようだ。何故、咎人として呼び出されたかは、私には分かりません。その動きは英雄の物です」

 

『なに、道を誤っただけのこと。では、始めようか!』

 

「例えご老体でも手加減はしません! このダイゼンガー、押して参る!」

 

『その正義の剣とやらで私を断罪して見せよ!!』

 

 二人が言葉を交わす最中、決闘の邪魔をした無法者達を全て片付けたので、二人は遠慮なしに各々の得物をぶつけた。

 ダイゼンガーとディアブロの差は一目瞭然であり、巨大なダイゼンガーの方が勝っているように見えるが、ディアブロには歴戦練磨のガドヴェドが乗っており、ダイゼンガーを駆るゼンガーと互角に渡り合っている。

 双方の機体は特機、つまりスーパーロボットであり、斬艦刀と巨大な斧の刃が交わることによって斬撃による凄まじい衝撃が巻き起こった。

 それをゼンガーとガドヴェドが互いの得物をぶつけ合うことによって何度も巻き起こされ、その衝撃に巻き込まれた連邦軍機が斬撃によって斬れる。

 

『あの二機から離れろ! 巻き込まれるぞ!!』

 

 双方とも討ち取ろうとした連邦軍機であるが、激しい打ち合いの衝撃波は凄まじい物であり、近付けずに離れる。

 そんな時に、現世に蘇り、悪事を働く陰となる咎人に対抗するために、同じく冥府より甦らされた陽となる者、英霊たちがこの宇宙におけるスーパーロボット大戦に参戦した。

 

『この不死身のコーラサワー様が悪党退治に来てやったどわっ!?』

 

 ワルキューレが採用している疑似太陽炉と言うエンジンを積んだMS「ジンクスⅣ」に乗る英雄の男が、堂々と名乗り上げようとした瞬間にゼンガーとガドヴェドの戦いの余波で巻き起こる衝撃波に巻き込まれて吹き飛ばされた。

 

『全く、コーラサワーの奴め。周囲は注意しろといつも言われてるだろうが』

 

 そんなコーラサワーと言う英雄に対し、古い可変戦闘機であるVF-1Sバルキリーの専用カラーに乗る英雄の一人が、キャノピー越しより見えた吹き飛ぶ彼の機体に向けて注意する。

 他にも様々な英雄が駆る機動兵器たちも戦場に現れ、咎人の集団と無人機で構成されたネオ・ムガルに攻撃を仕掛ける。英霊たちの機体の中には、ダイゼンガーやアウセンザイター並の特機も含まれていた。

 その集団に気付いたゼンガーは、指揮を執っているであろうVF-1Sに乗るパイロットに直接通信を掛ける。

 

『突然の無線連絡を失礼。私の名はレーツェル・ファインシュメッカー。君たちはこのスーパーロボットウォーズと言うパーティーに呼ばれた者達かな?』

 

『す、スーパーロボットウォーズ? 馬鹿言え、ヘンテコグラサン野郎。俺たちは蘇った悪党共がこの世で暴れ回っているからって、神様に冥府から叩き起こされて悪党退治してんだ。祭りに来たんじゃない』

 

『そうか。ならば、私もそれに動じさせてもらおう』

 

『おぅ。あんたが乗ってる馬鹿デカいロボットがもう一機加われば、百人力だぜ』

 

 スーパーロボット大戦に参加しに来たと冗談交じりで問い掛けたレーツェルだが、映像通信に映る男は真面目に返した。

 そうと聞いてか、レーツェルも動じれば、相手は心強いと返答してから大量に迫って来た10m級の無人兵器型の機動兵器を、機体の追加装備であるミサイルやビーム砲で次々と勢い良く片付ける。

 

『ほぅ、中々の腕前だ。流石は英霊と言った感じかな? この私とでかつての英霊たちには負けられんな!』

 

 僅か数秒ほどで数十機の敵機を撃墜した英霊のVF-1Sを見て、レーツェルも負けられないのか、アウセンザイターの機動力と火力をフルに生かして有象無象に群がるネオ・ムガルの部隊を蹂躙する。

 英霊たちの参戦により、宇宙におけるスーパーロボット大戦は本格化し、連邦軍艦隊対ワルキューレから、ワルキューレと英霊対ネオ・ムガルと言う構造に変わった。ネオ・ムガルの戦闘介入によって混乱に陥っていた連邦軍艦隊は、スーパーロボット大戦に参戦することなく、突然の謎の勢力の襲撃で大損害を被り、地上の攻撃部隊と同じく敗走を始めた。

 

 

 

『こちらアルファ1、データセンターの制圧完了。現在、機密データの回収に移行中。オーバー』

 

「アルファリーダー了解、データの回収が完了次第、即時撤収せよ。アウト」

 

 一方の地上、モスバサシティでは、連邦宇宙海軍情報部の特殊部隊によって、データセンターは呆気なく制圧された。

 流石は特殊部隊と言った所で、他の連邦軍とは大違いで装備も練度も高く、旧式な装備ばかりなワルキューレの部隊を早期に制圧して見せた様だ。データセンターを制圧した実行部隊より連絡を受けた本部に居る部隊長は、自分の上司である女性士官に報告する。

 

「デア中佐、データセンターの制圧、完了いたしました! 機密データは目下回収中であります!」

 

『予定通りね。データ回収が終わるまで、データセンターと撤収ルートは死守よ。私はPT隊、ODSTの部隊と共にルートの維持に努めるわ。貴方はデータ回収が完了次第、即時に撤収しなさい』

 

「はっ!」

 

 報告が終われば、映像通信に映るデアと呼ばれた女性士官の映像が切れた。

 

「撤収だと? 大佐殿、撤収の必要性は?」

 

『今のところは無いな。強力な敵兵器は、全て包囲している地上軍の対処に当たっている。それと正体不明の敵が現れ、我が軍とワイルドキャットを見境なく攻撃しているらしい。用心に越したことはないぞ、大尉』

 

「そんな連中、我々ONIのゲシュペンスト・タイプMの改良型の敵ではありません。それに練度は海軍や海兵隊より上回っております。返り討ちにして…どうした?」

 

 近くの映像通信に映るODSTのPT連隊の連隊長に問えば、彼はネオ・ムガルの介入を知らせた。

 だが、この大尉はネオ・ムガルの事を単なるテロ組織と過小評価しており、自分等が保有する機動兵器と練度さえあれば返り討ちにしてみせると豪語する。そんな彼の元に、部下がハンドサインで敵の襲撃を知らせに来る。

 

『どうした?』

 

「大佐殿、少しお待ちを」

 

 言い切る前に黙ったONIの大尉に、連隊長は問い掛けたが、彼は待つように告げてから部下が投げ渡したライフルを受け取り、通信担当やレーダー担当、警備兵三名を残して四名の部下を引き連れて外へ出る。

 外へ出た先では、強力な装甲服に身を包んだ機動歩兵と[[rb:機動降下兵 > ODST]]らが何者かと交戦していた。

 彼らの足元には、この街を占領していたワルキューレの将兵の屍が転がっている。彼らが撃っている方向には、金髪碧眼の北欧系の長身美女が居た。銃弾は目前で何かに守られている様に弾けているが、大尉は気付いてない。

 

「おい、なんで美女を撃ってる?」

 

「ありゃ魔女だ! あのビッチは魔法を使ってる!」

 

「はぁ?」

 

 近くに居るODSTの隊員に聞けば、彼は撃っているのは魔女だと口汚く答える。これに何か理解できない大尉であったが、重機関銃以上なら防げることが出来る装甲と、単独で戦車中隊を相手に出来る機動力を持つ一人の機動歩兵が急に爆散した。

 

「おい、あの女は何をした!?」

 

「だから魔法だって言ってるだろ! あんたも伏せるか逃げろ!」

 

「駄目だ! 退却しろ!」

 

「な、何を!? 逃げるな貴様ら!!」

 

 急に爆散した機動歩兵を見た大尉は、直ぐに近くに居るODST隊員に問い掛けたが、彼は先ほど言った通りだと怒鳴り付けながら答えた。それから一人の指揮官が他の隊員や機動歩兵らに退却を命じる。

 ライフルを向けて逃げようとする将兵らを止めようとしたが、彼らは情報部の将校の言う事を聞かず、女一人に背を向けて逃げ始める。

 

「一体何が…」

 

 機動歩兵とODSTの双方の精鋭部隊がたかが一人の女一人に逃げ始める将兵らを見て、大尉は何が何だか分からないでいたが、一言発した直後にその女が放った氷の刃に頭を突き刺されて即死した。

 

「た、大尉!? くそぉぉぉ!!」

 

 残った部下は、その女に向けて手にしている銃を撃つが、目前に迫った所で何かに弾かれるばかりであり、部下たちも上司の後を追った。仮設の本部施設に居た本部要員たちは、何の抵抗もせず、逃げて行く機動歩兵やODST等の後へ続いた。

 敵を全て殲滅した金髪の女は、上司が持っていた端末を魔法の力で取り、それで位置を確認してからそこへ向かった。

 

 

 

「ツァイトは…そこね…」

 

 宇宙でゼンガーらが戦い、地上でハーケンらが戦う中、遺跡より出たマリは、遭遇する降下してきた機動歩兵やODSTを倒しつつ、ツァイトに向かっていた。端末で位置を確認すれば、自分を見て短機関銃やライフルを撃ってくるODSTの隊員を排除しながら向かう。

 

「なんだあの女は!?」

 

「とにかくだ! 撃て、撃て!!」

 

 自分に銃を撃ってくる隊員らは、マリに銃弾を弾かれて恐怖するが、何処かに弱点があるかと思ってひたすら撃ち続ける。

 だが、銃弾は彼女に届くことなく、彼女が手にしているSIG SG551自動小銃を撃ち込まれて全滅する。

 

『こいつ!!』

 

 次に背後より強力なパワードスーツを纏った一人の機動歩兵が襲い掛かって来たが、彼女が何所からともなく取り出したバスタードソードと同じタイプの剣をヘルメットに突き刺され、一瞬の内に息絶える。それを引き抜いたマリは、刀身に付いた血を吹き払い、急いでツァイトの元へ魔法を使って向かう。

 ツァイトには物の数分で着き、艦内へ入ろうとしたが、周囲は既に機動歩兵とODSTに包囲されていた。他にもODST所属の量産型ヒュッケバインMK-Ⅱも居り、船体が傷付いている。そう長くは持たないだろう。

 やられてしまっては困るので、まずはビルに隠れているPTを茨の魔法で無力化する。

 

『わっ、ワァァァァ!? た、助けてくれぇぇぇ!!』

 

「あの女だ!!」

 

「畜生、ここは雑魚ばっかじゃねぇのかよ!?」

 

 コックピット内で突如となく茨が生え、呑み込まれるパイロットが悲鳴を上げる中、彼女の存在に気付いた敵部隊は標的をマリに切り替えたが、一瞬の内に蹴散らされていく。

 

「お、俺たちが…」

 

「たったの三分で…」

 

 一人の女に、精鋭であるはずの自分たちが三分で殲滅されたのを実感した隊員等は、そのまま息絶えた。

 

『ヴァセレートか!』

 

『早く中に! 鞠音さんがヒュッケバインを準備してる!』

 

 精鋭部隊を三分で全滅させた者を、マリだと直ぐに分かったVF-25の狙撃仕様に乗るミカルは、ツァイトに乗るように告げれば、同じVF-25系統だが、早期警戒型に乗るリンダは、鞠音が彼女のヒュッケバインを準備していると告げた。それを聞いた彼女は、直ぐに艦内へと入り、自分のヒュッケバインかVF-25Fメサイアがあるハンガーへと走る。

 

「あら、来たわね。貴方のヒュッケバイン、直ぐに発進できますわよ」

 

 マリの到着を待っていた鞠音は、白いヒュッケバインに手を翳しながら直ぐに出撃の準備は出来ていると告げる。それに乗り込もうとしたが、何か変わっていることに直ぐに気付き、足を止める。

 

「おや、どうしました? 私が手を加えたヒュッケバインに何か文句でも?」

 

「大あり。なんで変わってるの?」

 

「ほぅ、私が改良したメカに文句を付けるとは…別に乗らなくて結構ですよ。そこの予備の機体に乗れば良いですわ。でも、あれは無重力地帯で真価を発揮する機体。重力下の戦場で自由に飛び回れますかね…?」

 

 二度見して自分のヒュッケバインが勝手にいじられていることに気付けば、自分の許可なく少々の改良を施した鞠音博士に問い詰め、別の愛機であるVF-25Fに乗り込もうとしたが、彼女にその機体での重力下の戦闘はほぼ不可能だと言われる。

 

「さぁ、乗ってみてください。そこらの連邦軍機や突然現れたネオ・ムガルなどと言う奴らなどと比較になりませんわよ…!」

 

 自分の改良でパワーアップしたヒュッケバインなら圧倒的だと怪しげな笑みを浮かべる鞠音博士の言葉を信じ、マリは自分の白いヒュッケバインに乗り込んだ。あらゆる装置を起動させて行く中、改良された部分を見ると、自分の知らないシステムが組まれていることに気付く。

 

「これ、何?」

 

『あぁ、それですか。元の保有者の連邦軍が封印していたようなので、解除させて頂きましたわ。全く、連邦はこの機体を殺し過ぎですね…本来のエンジンであるブラックホールエンジンを取り外すなんて、勿体なさ過ぎですよ…!』

 

「そ、そう…じゃあ、ぶっつけ本番で試してみるわ」

 

『えぇ、是非ともそうしてください。機動兵器がウジャウジャしている方へ行っても構いませんわよ。その機体の本来の力と、この私の改良があれば物の数ではありませんわ』

 

 マリの問いに答えた鞠音は、システムの封印解除でヒュッケバインの本来の力を知り、それに近い力を発揮させたと興奮しながら答える。

 博士のこの表情には流石のマリも引いていたが、何とか持ち直して専用のライフルを手に取って戦場へと出撃する。

 ハッチを開けて外へ出て行く最中に、何か変な物を仕込んでいるのではないかと疑って調べると、様々な物が追加されていることに気付いた。

 どうやら鞠音博士は、暇を持て余してこのヒュッケバインを改良して居たようだ。しかし過ぎ去ったことなので、文句を言うのは後にし、操縦桿を動かして白き凶鳥を空へ舞えさせる。

 

「へぇ、操縦桿は動かしやすい…」

 

 変な改造を施されていたので、心配していたが、中々扱い易くしてくれたようだ。

 そう思いながら、友軍機と交戦している同じ機体だが、後継機の量産型であるMk-Ⅱや量産型ビルトシュバインを手にしているライフルで撃墜する。

 

『白いヒュッケバイン!? 敵か!』

 

 一瞬の内で三機の友軍機が撃墜されたのを見たODST所属の量産型ヒュッケバインMK-Ⅱに乗るパイロットは、マリが乗る白いヒュッケバインに向けて攻撃を始めたが、放った全ての攻撃は躱され、ロシュセイバーと呼ばれる刀身が重力波で形成されている非実体剣に切り裂かれて撃破される。

 

『な、なんて奴だ!』

 

『怯むな! 撃て、撃て!!』

 

 一瞬の内に四機の味方が撃墜されたので、残る連邦軍機は攻撃を始めるが、それらも全て躱され、瞬く間に全滅させられる。

 

「なんか精鋭って聞くけど、弱く感じる」

 

 機体性能が良すぎたのか、それとも自分の腕が遥か上なのか、海兵隊の精鋭であるODSTの隊員等が乗るPT部隊ですら、マリは物足りないと感じた。そんな彼女の元へ、ネオ・ムガルの機動兵器部隊が大挙して押し寄せて来る。

 

「あいつ等は確か…なんだっけ? まぁ、良いや」

 

 その昔に自分の帝国が存在していた時に滅ぼした国家の残党であるが、当時の女帝であったマリは全く知らなかったらしく、気にすることなく破壊し回る。

 彼らもマリに取っては手応えが無さ過ぎ、それに有人機に勝るはずの無人機ですら呆気なく落とされてしまう。

 この場に彼女を止められる者は、エース位の技量を持つパイロット位な物だろう。彼女は連邦軍機やネオ・ムガルの敵機を駆逐しながら凶鳥と共に街を舞い続けた。

 

 

 

『や、奴だ! 奴が!! グワァァァ!!』

 

「一体何が起こってるのよ?」

 

『どうやらサイキックハンターが騒いでいる例の女が現れたようです…』

 

 データセンターに近付くワルキューレやネオ・ムガルの機動兵器を駆逐していたデア中佐は、ゲシュペンスト・タイプMのコックピット内で友軍機のパイロットが上げる悲鳴を無線から聞いていた。何が起こっているのかを部下に問い質せば、彼はそれがマリであると答える。

 

「まさかあの女がここに居るとはね…これはちょっと、何人か死ぬわよ。心して掛かるしかないわ」

 

 部下からの情報で相手がマリだと分かったデアは、部下たちに心して掛かるように告げる。その物の数秒後に、マリが駆る白いヒュッケバインが本来の機体性能が持つ機動力で待ってくる。

 

『は、早い!?』

 

「全員気を引き締めなさい! 相手は人だと思わないで!!」

 

 余りの速さに驚く部下に、デアは飛んでくるビームを咄嗟の判断で躱し、部下たちに相手を人だと思うなと言ってから反撃に移った。

 

「マジで人間離れしてるわね! あれじゃあ、中はスクランブルエッグ状態だわ!」

 

 どの攻撃もまるで来るのが分かっていたかのように避け、更に人間離れした動きを見せるので、デアは通常の状態ならミンチのような状態になると叫び、ひたすらにゲシュペンストが持つODST専用の短機関銃をPTサイズにした機関銃を撃ち続けるが、これも当たらず、味方機の一機を落とされる。

 

『畜生、良くも!!』

 

「待ちなさい! あいつに接近したら…!」

 

 味方を落とされて憎しみを抱いた一人の部下が乗るゲシュペンストが左腕のサーベルホルダーからプラズマカッターを引き抜き、マリの白いヒュッケバインに斬り掛かったが、あっさりと避けられ、逆にサーベルで胴体を切り裂かれて撃墜された。

 

『モギア!』

 

「さっきの二人みたいになりたくなかったら下がりなさい! こいつの相手は、私がするわ…!」

 

『あいつは危険すぎます…! 六機で掛かれば…』

 

「馬鹿言いなさい! 全員あの世に送られるのがオチよ。それよりあんた等はアンノウンの対処をしなさい。味方がそいつ等の所為で混乱してるわ」

 

『りょ、了解…!』

 

 二人の部下の命を一瞬にして奪われ、激情する残りの部下たちを黙らせたデアは、一人でマリに挑むと告げた。

 そんな彼女に危険すぎると部下は共闘しようとするが、かえって損害を増やすばかりなので却下され、乱入者のネオ・ムガルの対処を命じられる。これに部下たちは自分たちでは歯が立たない悔しさに負け、その命令に応じて上官を一人残し、命じられたとおりにネオ・ムガルの対処へ当たる。

 

「はぁ、あの時の事を思い出すわね…」

 

 一人でマリと戦うことになったデアは、かつて死闘を繰り広げていた戦争の事を思い出した。

 あの時は頼りになる仲間たちが大勢居て、強力な敵に立ち向かえたが、今はそんな仲間たちは居らず、たった一人で大部隊を殲滅する女が相手だ。絶対的な強敵を相手に死の恐怖に捉えられながらも、彼女はそれを抑え付け、マリが駆る白き凶鳥に単独で挑んだ。

 マシンガンを撃ちながら近付くが、これも全て避けられ、反撃のビームが凄まじい速さで来る。それを死線で培って来た反射神経で躱し、背部のウェポンラックに搭載されているミサイルを空かさずお見舞いする。

 

「はぁ、それも全部避けるつもり…?」

 

 避けられない距離でミサイルを撃ったつもりだが、マリはその全てのミサイルを自分の肉体を破壊するような機動を行って迎撃していた。それを見ていたデアは、驚くしか無かった。

 物の数分程で全てのミサイルを迎撃したマリのヒュッケバインは、直ぐにデアのゲシュペンストへ向けてビームを連続で撃ち込んで来る。デアも臆せずに飛んでくるビームを避けるが、全てを避け切れるわけが無く、胴体や左脚に被弾する。

 

「左脇腹に左脚に被弾! PT操縦には自信があるけど、相手は化け物クラスね…!」

 

 PT操縦には自信があるデアだが、相手をしているのが化け物クラスだと分かれば、少しばかり恐怖が湧いてくる。今すぐにでも逃げ出したい気分であるが、相手はそれを許さず、直ぐにでも背中にビームを撃ち込んで来るだろう。

 

「消耗戦と行こうかしら…!」

 

 覚悟を決めたデアは、マリに近接戦闘を挑むため、マシンガンを左手に持ち替え、左腕のサーベルホルダーよりプラズマカッターを引き抜き、マシンガンで牽制しながらマリのヒュッケバインに接近した。

 

 

 

「邪魔だ! 退け!!」

 

 主戦場で戦うヴァンはと言えば、自分のヨロイであるダンを駆り、群がるネオ・ムガルの敵機を蹴散らしながら、かつて自分が倒した敵のヨロイであるメッツァ・オブ・チューズデイに単独で向かった。

 そのヨロイは逃げ回る連邦軍機を容赦なく手にしているレイピアで切り裂いており、風貌とは似つかない虐殺者かに見えた。

 そんなこと馬鹿には関係ない。倒した筈の敵が生きていることが気になるだけだ。ネオ・ムガルの集団を蛮刀で斬り捨てると、かつて倒したヨロイの前に立ってここに立っているのかを問う。

 

「テメェ! なんで生きてる!?」

 

『そ、その声は…!? 欠番メンバーだと!? 何故貴様がここに居る!? 英霊? 否! 咎人として転生したのか!?』

 

「何言ってんだテメェは!? 俺は生きてここに居んだよ!!」

 

 使い慣れない映像通信を使ってメッツァに問えば、自分に初めて敗北を認めさせ、殺した筈である男が映った。

 その男は、ヴァンがこの世界に来ていることに驚いており、死んで英霊、自分と同じ咎人として蘇ったのかと問い返せば、それを知らないバカは知らんと返してから自分は生きてこの世界に居ると突き返す。

 

『生きているだと…!? それに異世界転移まで!? 馬鹿な! 貴様のような輩がそんなことを…! はっ!? ど、同志はどうしたのだ!? 貴様のような奴が同志を殺せるはずが無い! 殺されて咎人として転生されたはずだ!!』

 

「同志? カギ爪の野郎か! 俺がぶっ殺してやったよ!! この蛮刀でズバッとな!!」

 

『なんだと…!? そんなはずが無い…! 同志が貴様如きに…!!』

 

 突き返せば、ヴァンはメッツァに乗る騎士のような男が敬愛する同志と呼ばれる男を殺したと告げた。

 それを聞いた男は凄まじく動揺を覚え、怒っているのかそれとも悲しんでいるのかを分からない程であり、ヴァンにその顔を見せないためか、表情を下に向けていた。それから暫く声を押し殺して黙っていれば、不気味に笑い出し始めた。

 

『フハハハ、そうか、同志は貴様に殺されたのか…! 分かったぞ…私が再び現世に転生した理由が! 私が現世に呼び戻された理由は、貴様、ヴァン! 同志の仇である貴様を殺す為だ! このウィリアム・ウィル・ウー! 同志の仇を遂行するため、貴様を我が剣にて殺す!!』

 

「何の理屈が分からねぇが、もういっぺんぶっ殺してやるまでだ!!」

 

 不気味に笑い出し始めた後、蘇った理由が自分の敬愛している同志の仇を思い込めば、ウィリアム・ウィル・ウーと呼ばれた咎人は、自身が駆るヨロイであるメッツァの猛り立つレイピアで突き刺そうとヴァンが駆るダンに突撃した。

 これにダンは真っ向から挑み、突き刺されるレイピアを蛮刀で防ぎ、蹴りを入れ込もうとする。

 

『そんな小細工は効かん!!』

 

 相手は三度ほど手合わせして動きを読んでいたのか、避けられてメッツァのレイピアの突きが来る。素早い突きだが、ヴァンは数々の死線を潜り抜けて来たので、それを避けて刀を叩き付けるも、それを戻したレイピアの刀身で塞がれてしまう。

 

『どうした! それで私と戦うつもりか!?』

 

「一々うるせぇ野郎だ! 直ぐに黙らせてやる!!」

 

 自分の攻撃を防いだウィリアムからの挑発には乗らず、ヴァンは連撃を仕掛けたが、一度目に死んだときに動きを読んでいたのか、幾度も防がれ、逆に胴体に一太刀を浴びた。ダンに一太刀を浴びせたウィリアムは、この程度の奴に自分の敬愛する同志が殺されたと知って呆れたのか、それとも怒りを感じたのか、その怒りをヴァンにぶつける。

 

『それで同志を殺しただと? 嘘をつくな! 貴様如きに同志が殺されるはずが無い!!』

 

「黙れってつってんだろうが! このゾンビ野郎が!!」

 

 罵倒には罵倒で返しつつ、ヴァンは冷静となって相手の攻撃を読んで遂にメッツァに一太刀を浴びせることに成功した。

 

「へっ、どうだ!」

 

『おのれ、調子に乗るな!』

 

 相手の機体を傷付けることに成功したヴァンは子供のような笑みを浮かべたが、それがウィリアムの逆鱗に火を点けたのか、更に攻撃を強め、ダンの背後に居る味方機を切り裂いてしまうほどの斬撃すら飛ばして来る。

 

『や、ヤベェ! あいつ等から離れろ! 巻き込まれるぞ!!』

 

 ウィリアムが周りを気にせず斬撃を飛ばしてくるので、周囲に居たネオ・ムガルの機動兵器群が離れ始めた。

 

「おい、お前! 味方を巻き込んでるぞ!!」

 

『そんなもの知った事か! 奴らは咎人だ! 殺して何が悪いか!?』

 

「お前も悪いことやって生き返らされた奴じゃねぇか!」

 

 味方機を巻き込むウィリアムに注意するヴァンだが、彼は巻き込んだのは過去に罪を犯した咎人なので、殺して何が悪いと怒鳴り付ける。

 しかし、ウィリアムも過去に罪を犯した咎人であり、バカであるヴァンでも彼が罪を犯したことを元の世界に居た仲間に聞いた事があったので、それに関してツッコミを入れながら蛮刀を叩き付けた。

 

『野良犬の分際でほざくな!』

 

 この指摘もとい、ツッコミが更にウィリアムの怒りに火を注いだのか、更に攻撃が激しくなった。

 その攻撃をヴァンはダンを必死に動かして高速の突きを避け、反撃の糸口を見付けては直ぐにそこへ蛮刀を叩き入れる。こうした攻防戦が続く中、ヴァンとウィリアムの戦いは周りを巻き込む膠着状態へと発展した。

 

 

 

「さて、向こうもあっちもスーパーロボットウォーズって所だな。俺のところにも、お客さんが来たようだ」

 

「ちいちゃいのと中くらいなのがわんさかこっちへ向かってきてるでやんすよ」

 

 各々がそれぞれの強敵と死闘を繰り広げる中、ハーケンとアシェンが乗るゲシュペンスト・タイプHの元へも、ネオ・ムガルの強敵が乗る機動兵器群が迫りつつあった。

 地上や宇宙の者達が戦っている間、ハーケンらも指を咥えて見ているわけでは無い。彼らもワルキューレの部隊を守る為、ここでネオ・ムガルの侵攻部隊を彼女らと共闘して食い止めていたのだ。

 他の方面へは対処できなかったが、先の連邦軍と同じくここに戦力を集中してくれていたために、敵本隊への街の侵入を拒むことが出来た。そんなハーケンらの元へは、水陸両用タイプのATと、空中を自由に舞う10m級の機動兵器が大勢の部下を引き連れて向かって来る。その後ろからは、バギーなどに乗ったモヒカンの集団が続いていた。

 

「更にモヒカンの大軍団が接近中。こりゃあ英霊さんたちにも手伝ってもらわなきゃ、全員地獄へ送り返すことは出来ないでやっちゃ」

 

「OK、ヒーローズと一緒に協力してレイダー共を含めて地獄へ送り返そうか!」

 

 それをアシェンに知らせれば、ハーケンは飛んできたミサイルを回避し、有象無象に突っ込んで来る敵機をナイトファウルで次々と破壊する。乗っているパイロットの腕がお粗末すぎたのか、それとも何も考えていない馬鹿なのか、まるで的のように撃たれて破壊されるばかりだ。流石のハーケンも、これには呆れ果てる。

 

「おいおい、まるで的当てゲームだな。これじゃあ、赤ん坊でも当てられそうだ」

 

「あんたの射撃の腕がヤバ過ぎってことよ」

 

「おっ、毒舌シンデレラがこの俺を褒めてくれたぞ」

 

「いや、別に褒めて無いっす。つか、自惚れすんな、ナルキモ」

 

「いつもの毒舌アンドロイドか…まぁ、いつもの事さ!」

 

 アシェンに褒められたと思ったハーケンであるが、その後いつもの彼女に戻ったため、引き続き操縦桿を動かしつつ、敵機を撃破し続ける。

 その時、ハーケンはワルキューレの少数の歩兵部隊がネオ・ムガルの歩兵隊、ではなく無法者の集団に追い回されているのが見えた。ワルキューレの歩兵隊は全員女性であるので、女性のために命を張るハーケンは、直ぐにアシェンに救出を命じる。

 

「アシェン、レディ・アーミーズがレイダーズ共に襲われている。行けるか?」

 

「アイアイサー、艦長。世紀末救世主伝説、行くでザンス!」

 

 ハーケンに問われれば、アシェンはコックピットから飛び出し、無法者の集団に飛び降り、女と見て舌を出しながら下品な笑みを浮かべるモヒカンの男を自慢の両足であるグラスヒールで踏み潰した。

 

「ボギャッ!?」

 

「な、なんだこの女ぁ!?」

 

 踏み潰した男が変な断末魔を上げて息絶えた後、アシェンを見た無法者達は驚きの声を上げた。

 

「私の名はアシェン・ブレイデル。この名、死んだ後もとくと覚えておくが良い」

 

「ふざけやがって! ぶっ殺してやる!!」

 

「ヒャッハー! 女だァ!!」

 

「食ってやるぜ!!」

 

 アシェンが無法者達に向けて名乗り上げれば、無法者達は一斉に拳を構える彼女に襲い掛かった。

 これに彼女は何の恐れも抱かず、次々と飛び掛かって来る無法者達に硬い拳を打ち込む。一人、二人、三人、四人と連続で打ち倒していけば、本の数秒ほどでアシェンに向かって来た無法者達は全て地面の上に転がっていた。

 

「こ、このアマぁ…! ぶっ殺…あ、あべし!?」

 

 殴られて上がろうとした一人の無法者が立ち上がろうとした瞬間、頭が急に爆発して即死した。その物の数秒後で、アシェンに殴られた無法者達が次々と爆死して行く。

 

「な、なんだこりゃあ!?」

 

「拳を打ち込む瞬間にこの炸裂弾を撃ち込んだ。ツッコミどころ満載だが、ようは時限信管みたいでもんをぶち込んだって所よ」

 

 急に爆発した仲間を見て驚きの声を上げる無法者らに、アシェンは拳を打ち込むのと同時に炸裂弾を撃ち込んだと解説する。だが、どうやって痛みも与えずに撃ち込んだ理由は不明だ。

 

「このアマ! 訳の分からねぇことをほざきやがって! 死ねやぁ!!」

 

 意味不明な返答をしたアシェンの答えに怒りを感じたのか、無法者達が更に大勢で挑んで来る。

 

「おい、雌豚共。機関銃を二挺ほど寄越せ。四十秒以内にだ」

 

「えっ? あっ、は、はい…!」

 

 これにアシェンは、近場に居るワルキューレの女性兵士たちに持っている銃を寄越すように言えば、彼女らは指示に応じて手にしているL85A2突撃銃やFNミニミ軽機関銃を投げ渡した。

 その二挺の銃を受け取ったアシェンは、雄叫びを上げながら突っ込んで来る無法者達に向けて乱射する。雨のような弾丸を浴びた無法者達はバタバタと薙ぎ倒れされていく。

 

「このアマ! 吹き飛べ!!」

 

「危ない!」

 

「っ!?」

 

 大多数の仲間たちを殺された怒りか、3mはある大男がロケットランチャーをアシェンに向けて撃ち込んだ。女性兵士の叫びで気付いたアシェンであったが、ロケット弾は早く、避け切れずに当たってしまう。

 

「へっへっ、どうだ!?」

 

 強敵であるアシェンを倒したと思った大男であったが、煙が晴れた場所にはコードDTDを発動した彼女の姿と子供のような無邪気な笑みがあった。

 

「キェェェ!? い、生きてるぅ!?」

 

「世紀末救世主の如くに覚醒! じゃなくてコードDTD発動! 僕ちんのラッシュ&オーバーキルタイム、始まるよ~!」

 

 無邪気に恐れおののく無法者達に語りながら、アシェンは通常状態の倍の速さで周りに居る無法者達を殴るや蹴るなどして一掃した。掃討に掛かった時間は僅か二十秒辺り。彼女に殴られるや蹴られた者達は時限信管式らしい炸裂弾でも撃ち込まれたのか、謎の爆発を起こして息絶える。

 

「ちくしょ~! このハンマーでも、くらぇい!!」

 

 大勢の仲間を謎の技で殺し、自分に標的を向けたアシェンに対し、3mの大男は巨大なハンマーで彼女を叩き潰そうとしたが、振り下ろすよりも早く懐に飛び込まれ、無数の拳を打ち込まれた。

 

「アシェンパンチ、連打、連打! おーっ、アッタタタタ!!」

 

 放たれる拳の速度は一秒間に十六発。その機関銃のように放たれる拳は十秒も続き、男の腹は何度も硬い大槌で打ち込まれた鉄板のようにボコボコになっていた。

 

「くっ、くぇ~!? な、にゃんだこりゃあ~!?」

 

「そんでとどめのストライキン! オゥーワッチャー!」

 

「プゲェ!?」

 

 自分の腹が恐ろしく信じられない状態になって恐怖している大男に、何の慈悲も無しにアシェンはとどめのグラスヒール、散弾による蹴りを入れ込み、相手の巨体を空中高く上げた。強力な蹴りで空中高くまで上げられた大男は、断末魔を上げながら謎の爆死をする。

 

『ひっで、ブッー!!』

 

「Yes! オーバーキル!!」

 

 断末魔を上げて空中爆発した大男を背に、アシェンは決め台詞とポーズを取った。

 

「シンデレラは張り切っているな。さて、こっちもダンスと行こうか!」

 

 カメラに映る映像でコードDTDの状態のアシェンが派手に暴れ回っているのを、戦いながら見ていたハーケンは負けずに、向かって来る敵機を落としながら地上戦艦を機体の胸部にあるニュートロン・ブラスターを撃ち込んで撃沈させる。

 

『な、何だあいつらは!? あんな奴がワルキューレに居たなんて聞いてないぞ!?』

 

『おのれ、客将を取り入れたか! メガミ人共め! このわしが叩き潰してくれるわ!!』

 

「おっと、このルーキーな俺は大人気なようだな。だが、サインはレディ限定だぜ!」

 

 二人の異邦人の圧倒的な強さに、乱入してきたネオ・ムガルの咎人らが混乱する中、ネオ・ムガルの正規兵が乗る識別不能な機動兵器が一個中隊分向かって来る。これにハーケンは、自信満々な笑みを浮かべて正規兵等が乗る敵部隊を単独で迎え撃つ。

 最初に仕掛けて来るのは正規兵等が乗る一個中隊分であり、約六機の見事な連携攻撃だ。その連携攻撃を見事に全て避け、一機目をナイトファウルに搭載されている剣で切り裂く。

 

『な、何!?』

 

『こちらの攻撃を避けて撃破しただと!?』

 

「ちょっと、強くなりすぎたかな?」

 

 驚きの声を上げる五機に対し、ハーケンは自分が強過ぎたと自惚れする。

 そうしている間に残る五機が仕掛けて来たが、またもハーケンはそれらの攻撃を掻い潜って、スラッシュリッパーで一気に二機も仕留める。

 

『ば、バカな!? こんな訳の分からん奴に三機も!?』

 

「俺が相当な場数を踏んで来たからだぜ、おっさんたち。そう言うのは慣れっこなのさ」

 

 三機もの味方がどこの馬の骨か分からない男が乗るゲシュペンストに撃破されたため、残る三機が混乱する中、ハーケンは今までに経験した死線を自慢げに語る。そんな三機を仕留めようとした時に、空と地上から自分に向けての攻撃が来た。それも三機を巻き込むような勢いだ。巻き込まれた三機のうち二機の敵機は味方の誤射によって撃墜される。

 

『な、何をするんだゴステロ大尉!? それにカン・ユー大尉も!?』

 

『ちっ、もう少し足止めしてくれりゃいい物を!』

 

『全く口ばっかりな奴らだぜ! おかげで仕留めそこなっちまったじゃねぇか!』

 

『き、貴様ら! 咎人の分際で!!』

 

「おっと、なんだ? 仲間割れか?」

 

 その攻撃を察知して避けていたハーケンは、ネオ・ムガルの咎人と正規兵が仲間割れを起こしたのを見て疑問に思ったが、逆に好機と捉えて空で味方機諸共自分を攻撃した10m級の機動兵器に向けて攻撃した。

 

『ちっ、攻撃されたじゃねぇか!』

 

『うわっ!? や、止めてくれぇ!!』

 

 標的にした敵機は近くに居た同じ10m級、一般機型を盾にして攻撃を避けた。盾にされた敵機は頭部にコックピットがあったためか、パイロットは確実に死亡し、機能を失った機体は地面へと落下して行く。この行動を見ていたハーケンは、繋がっている無線機で味方を盾にしたパイロットに抗議する。

 

「おいおい、マジでヴィランって奴だな。それじゃあ、背中からいつ撃たれてもおかしくないぜ。おっさん」

 

『なんだぁ、このチャラいのぁ? いきなり説教してきやがって! こいつが偶然、近くに居たのが悪いんだよ! ムカつく面の野郎だ! おい、カン・ユー! 協力しろ! このいけすかねぇ野郎をぶっ殺すんだ!』

 

『貴様! 同じ大尉だからと言ってこの俺に命令するな! 貴様だけでやれ!!』

 

『この咎人風情が! ここで…!』

 

 抗議したが、相手は味方を盾にした罪悪感など微塵も無く、逆に起こり始めた。地上に居る自分よりもマシな悪人面の男に、ハーケンを共に殺すように物を頼むようでは無い態度で命じるが、流石に断られる。

 そんな二人の元に、二人の部下を殺された正規兵の隊長が銃殺刑にしようと、手にしている主兵装で二名の咎人に刑を執行しようとする。だが、それを悟られて地上と空の攻撃を同時に受けて返り討ちにされた。

 

「ちょっと待て。お前らに仲間意識とかあるのか? 例え仲が悪くても、殺すのは無しだろ?」

 

『ふん、対した指揮能力も無いくせにこの俺に銃を向けたからやったまでだ』

 

『俺たちを勝手に蘇らせて、いい気になって顎で使おうとするからぶっ殺したまでだ! テメェも殺してやるぜ!!』

 

 自分等を勝手に蘇らせ、顎で使おうとする奴らだから殺したと返す二人の悪党に対し、ハーケンは怒りを覚えたが、激情せずに冷静になってアシェンを呼び戻す。

 

「OK、あんた等が根っこからの悪党だって事は分かった。アシェン、戻れ!」

 

『了解なり、艦長』

 

 地上の歩兵の掃討を終えた通常状態に戻ったアシェンをコックピットへ呼び戻してから、悪党が乗る二機の機動兵器に挑む。

 

「さて、ヒーロー・ガール。悪党退治と行くか!」

 

「イエッサー、泣くまで殴り続けてやんよ」

 

『ほぅ、一機で我々に歯向かうと言うか! 返り討ちにしてくれるわ!』

 

『コックピットから引き摺り出して嬲殺しにしてやるぜ!!』

 

 そう宣言すれば、アシェンもそれに同意する。この宣言に二名の悪党は乗り、ゲシュペンスト・タイプHとの死闘を始める。

 開幕早々に空と地上からの同時攻撃晒されるハーケンであるが、その攻撃を潜り抜け、地上にいる小隊規模で行動するAT部隊の攻撃を避けながら一機ずつ確実に仕留めて行く。

 

『ぬっ!? く、クソ!』

 

 味方機を次々と撃破され、少し焦るATの方の悪党は、ハーケンの攻撃を避けつつ反撃に出る。

 

「ちっ、腕の方はピカイチか」

 

「空より殺人中毒者が接近中!」

 

「空のキリングマンも相当な腕前だぜ!」

 

 あのAT乗りの技量の高さに舌を巻くハーケンだが、空よりもそれと同等の技量を持つ男が駆る機動兵器が襲い掛かる。

 アシェンの報告で攻撃を避けることは出来たハーケンは、地上のAT乗りと同様に褒め、攻撃を避けながらナイトファウルを撃ち込む。だが、敵機の機動力は高く、放った全ての弾丸が避けられてしまう。

 

「地上は強力な火力を持つ水陸両用型AT、ダイビングビートル。そんでお空はさっき解説して分かったSPTってちゅう10m級機動兵器タイプのブルグレン。前も言った感じで言っちゃいますけど、サンドイッチじゃんよ」

 

「やれやれ、サンドイッチは食べる方が好きなんだけどな。挟むハンズは面の酷い悪党二人じゃ無くて、美女二人だけにして欲しいぜ」

 

「艦長、それマジでスケベ過ぎっす」

 

「下品な発言、ソーリーだ」

 

 こう危険な状態に晒されて居るにも拘らず、ハーケンとアシェンはコックピット内で軽口を交わしながら強敵が乗る地上のダイビングビートルと、空の強敵が乗るブルグレンと死闘を繰り広げた。

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