スーパーロボット大戦OG 無限のフロンティア 異世界からの依頼者 作:ダス・ライヒ
ハーケンのゲシュペンストの次に、ビームライフルと大型の盾を持ったヒュッケバインに出撃する。
「ヒュッケバイン? 乗っているのは、ブロンドのお嬢さんかな?」
『そうだけど、何?』
「ビンゴ、やっぱり風格クイーンか」
後から出て来た白い塗装のヒュッケバインに乗っているのが、マリと当てたハーケンは、的中していることに感激し、映像通信で出た彼女に向けてウィンクを送る。
このウィンクに、マリは不快な表情を浮かべたが、先攻して単独で敵陣に突っ込んだダンの討ち漏らした数十機ほどの敵機が攻撃してきた。
その敵機は戦闘機に手足が生えたような外見であり、左側に装備している兵装で弾幕を浴びせて来る。
「あいつは、新西暦の世界で見た奴だな。形はちと違うが…」
「魔改造されまくっちゃってますね、ありゃあ」
異世界でPTに乗って戦っていたハーケンとアシェンは、その敵機に見覚えがあった。
敵機の名はリオン。ロボット工学者、フィリオ・プレスティによって開発されたアーマードモジュールシリーズの一つ、リオンシリーズの元祖だ。
全シリーズに小型のテスラドライブを標準装備し、優れた空戦力と宙間戦闘能力を有している。数多くのバリエーションやカスタム機もあり、陸戦仕様や海戦仕様も存在する。構造も単純で製造コストも安いため、その上に通常兵器に勝る機動力を持っているため、多くの新型機が導入されて居るにも拘らず、様々な組織、勢力によって生産され続け、運用がなされている。
新西暦の世界では、連邦軍や開発と製造元のディバイン・クルセイダーズ、通称DCに運用されていたが、何故か異星人勢力が多い惑星同盟軍によって運用されていた。その生産力の高さ故だろうか。各勢力によって改造されたリオンが、統合連邦軍の敵方であるPTと戦火を交えているようだ。
後継機である人型に近くなっているレリオンも、他のリオンシリーズ同様に惑星同盟軍で運用され、破壊される度に増産が成され、連邦軍との果てしない消耗戦へと順次投入されている。
そんな傑作大量生産機動兵器に対し、改造したゲシュペンストMk-Ⅱを駆るハーケンと、ヒュッケバインを駆るマリは、手持ちの主兵装で対空射撃を行い、次々と撃墜する。
乗っているパイロットは、連邦軍と同様に前線にパイロットを送り込むために、短い期間の訓練しか受けていない様子であり、元々PT操縦技術を持っているハーケンと、人間離れした操縦技量を持つマリの相手は不可能なようだ。我武者羅に暴れ回るヴァンが駆るダンにも敵わず、ただ延々と撃墜されるばかりだ。
『な、なんて強いんだ!? 俺たちは数で圧倒してるんだぞ!?』
たった三機の機動兵器相手に、苦戦する味方の部隊を見たレリオンに乗る士官級のパイロットは、驚愕して拡声器で声を出してしまう。
それを聞いてか、配下の兵たちは動揺を覚え、戦意を損失し始める。
『お、おい…勝てるのか…?』
『俺が知るか! でも、数の上ではこっちの方が上なんだ…! 撃ちまくれば、問題は無い!』
動揺する将兵らであったが、相手はたったの三機だ。数の上ではこちらが勝っており、数を撃てば幾ら強力な敵とで、一瞬で蒸発するだろう。
そう思った将兵達は、自機の火器を目前で味方を次々と刀で切り捨てて行くダンに向けて放った。
「うぉ!? やべぇ!!」
自分に攻撃が集中してきたので、ヴァンは即座にダンを数分ほど前に破壊した大型指揮車両の残骸に身を隠して弾幕を避ける。
「畜生、こう数が多いと、幾らダンでも骨が折れちまうな…」
残骸から見える自機に集中砲火を浴びせる無数の敵機を見て、流石のヴァンも、あの数の敵には骨が折れる様子だ。現にダンの背後には、無数のリオンやレリオン、陸戦型のリオンの残骸が無残に転がっているが、それを上回る数の敵が目前に居る。散々無茶をしてきたヴァンでも、あの数の敵に単独で挑むのは多少の無茶があると言う事だ。
だが、無謀な者はヴァン一人だけじゃない。後方より無数のミサイルが飛来し、自分に向けて弾幕を浴びせていたリオンシリーズに命中して多数を撃墜した。驚いたことに放った分のミサイルの分まで敵機が墜ちていた。パイロット達がダンを浴びる出すことに夢中になり過ぎた所為だろう。
『よぅ、ブラックガイ。さっきの勢いはどうした?』
「お前、かっこつけのカウボーイ。あれをやったのはお前か?」
『いや、ビューティホーウーマンだぜ。同盟軍のパイロットが弱すぎるのか、あのお嬢さんが凄いのかどっちか分からねぇな』
通信チャンネルが繋がり、視界に邪魔にならない範囲でハーケンが映っている映像通信が表示された。
先ほどの多数のミサイルでその分の敵機を撃墜したのはハーケンと思っているヴァンは、それを問うが、彼はマリのヒュッケバインのミサイルであると答えつつ、器用に回り込んで来た敵機をゲシュペンストの手持ちの兵装で撃破する。
「そうか。じゃあ、あの女に伝えろ。俺を援護しろ! そんで余計な事すんなってな!」
『おいおい、女性に対してその頼み方は無いだろう、ブラックタキシード。もうちょっと丁寧に…』
マリに余計なことはせず、ただ援護しろと告げれば、ハーケンはこれを女性に物を頼む態度ではないと言って反対し、もう少し丁寧に物の頼みことをしろと言ったが、ヴァンは通信を切ってダンを遮蔽物から飛び出させ、多数の味方が撃破されて混乱している同盟軍の機動兵器群を斬り始める。
逃げる者も居れば、勇敢に機体の固定兵装で戦おうとする者も居たが、ヴァンが駆るダンに敵うはずも無く、一瞬で先ほど散って行った戦友達の元へ送られる。
ヴァンが討ち漏らした敵機や無視した敵機は、ハーケンやマリによって次々と始末されていく。その後をツァイトが続き、向かって来る敵機に対しては、対空機銃で追い払うかハエ叩きのように撃ち落とす。
「ひっ、ヒィィィ!!」
何名か生き残った者が居たが、戦意を損失しており、予備の機体に乗り込むことなく逃げ始める。もはや、同盟軍機の中でヴァンが駆るダンに敵う機体は無かった。
「派手に暴れてるな、ブラックタキシード。こっちも羽目を外すとしますかな!」
「こっちも準備万端でヤンスよ」
「OK、一気に飛ばすぜ!!」
自分等の前で、無数の敵機を相手に暴れ回るダンの姿を見て、テンションが上がって来たハーケンは、アシェンに本気を出すと告げれば、彼女はそれに応える。
アシェンも乗る気であると答えれば、ハーケンは操縦桿を巧みに動かしつつ、ダンの右方より迫り来る敵機群に向けて単独で突っ込む。
『ひっ!? き、来たぁ!!』
怯える敵機のパイロットの声が通信機から聞こえて来たが、この世界を荒らし回る勢力の一つである同盟軍の将兵に情けをくれてやるほどの優しさを、ハーケンは持ち合わせていない。
「ビビってやがるな…だが、殺しはしないが容赦しないぜ!」
殺しはしないが、死ぬほど痛い目に遭わせるつもりだ。
そのつもりのハーケンは、敵機に乗るパイロットの恐怖が分かるほどの弾幕を躱しつつ、的確に動き回る敵機に向けて一発程の主兵装のライフルを撃ち込む。
狙いは正確であり、一発で完全撃破とはいかないものの、戦闘力を奪いことに成功する。
「もう終わりか。弱すぎるな」
「お前の言う通りだな、シンデレラ。これが最強の軍隊って言うなら、今すぐその名は返上すべきだぜ」
撃っている内に、自分に対処しようとした敵機は全滅してしまったようだ。呆気なく全滅した同盟軍のリオンシリーズに対し、ハーケンとアシェンは呆れ果ててしまう。だが、二人の期待に応える程の機体が直ぐに現れた。
その敵機は巨大な浮遊砲台のような風貌を持つバレリオンだ。最初から長距離火力支援を目的としており、駆逐艦の主砲に耐えきれるほどの重装甲を誇る。それが三機も一気に前線へと数十機の護衛のリオンと共に現れたのだ。
三機のバレリオンはハーケンのゲシュペンストを見るなり、直ぐに巨大な巨砲を撃ち込んで来る。
「おっと、ボスのご登場のようだな。だが、そんな大砲を持ち込んでも、俺たちは止められないぜ!」
それを難なく避けたハーケンは、重戦車のような機動兵器を投入してきても、自分等は止められないと告げてから、周りのリオンを撃墜しながらバレリオンに接近する。
「ちっ、やっぱり硬ぇな! こいつじゃ貫けねぇ…」
周りの敵機を撃破しつつ、一気にバレリオンの懐に飛び込んだハーケンのゲシュペンストであるが、手持ちの兵装では重装甲を歯が立たないようだ。だが、倒しようはある。
「だったら、こいつだ!」
重装甲を持つ敵機に対し、ハーケンは機体を回転させながら距離を取り、ゲシュペンストが持つある必殺技を行う。
それは「究極! ゲシュテペンストキック!!」。整備士泣かせと言われるほどの荒業であり、その攻撃はなんと、機体の右足で相手に飛び蹴りを食らわせると言う物だ。そんな大胆不敵な技を、ハーケンはこちらに向けて砲身を向けるバレリオンに向けて行った。
「究極! ゲシュペンストキック!」
その掛け声と共に、ハーケンはバレリオンに蹴りをかました。
凄まじいけりを受けたバレリオンの装甲はへこみ、バランスを崩して倒れた。
荒野の上に倒れたバレリオンの主砲であるビックヘッド・レールガンは既に発射態勢にあり、倒れた瞬間に、ちょうど射程内に居た味方のバレリオンに向けて撃ってしまう。
このビックヘッド・レールガンの威力はすさまじい物であり、重装甲のバレリオンの装甲を意図も容易く貫通し、撃破してしまった。
「うまく言ったようだな」
「偶然としか思えんばい」
ハーケンはこれを狙っていたようだが、偶然であるらしく、それをアシェンに見透かされる。
「さーて、残る一機はどうしますかね…?」
一気に二機ものバレリオンを仕留めたハーケンだが、残る一機に対して対抗できる装備が無いので、どうするか悩む。
そんなハーケンの元に、マリのヒュッケバインが現れ、バレリオンに難なく取り付き、ロシュセイバーと呼ばれる刀身を重力波で形成する非実体剣でコックピット辺りに突き刺し、乗っているパイロットを殺して無力化した。
『ヒュー、俺が苦労したデカ物をあっさりと…お嬢さん、あんた何者だ?』
苦労して撃破したバレリオンを、難なく撃破したマリを見たハーケンは、何所で操縦を覚えたのか、それと何者であるかを通信で問うてくる。
「別に。ただ説明書読んでやっただけ」
『説明書を読んでね…俺もその位できるつもりだが、あんたのようには出来ねぇよ…』
説明書を読んでやっただけだと答えるマリに対し、その答えにハーケンは人間離れしている彼女を技量差に驚きを隠せないでいる。
そんな彼の事を気にせず、マリは多数の護衛機と共に前に出て来る数隻の陸上戦艦に向かう。
無数の火砲が火を噴き、マリが駆るヒュッケバインに飛んでくるが、彼女は驚くことなくこの雨のような砲火を軽やかに避け、手近な距離に居るリオンに向けてビームライフルを撃ち込む。これを見て回避行動を取るリオンのパイロットであったが、放たれたビームはそこに吸い込まれるように当たり、その機体に乗っているパイロットは機体と共に運命を共にする。
マリは先読み射撃を行ったのだ。と、言うより敵機の動きは全てマリに見えている。同盟軍のパイロット達は、マリにとって的でしかないのだ。幾ら高性能な機体へ乗り込もうと、彼らがエースのような技量を持たなければ、一瞬の内に彼女が持つ死神の鎌で命を狩り取られる
「何それ。連邦と同じじゃん」
少し連邦の敵方である同盟軍に期待していたマリだが、連邦軍と似たようなパイロットの質に、落胆して目に映る敵機に向けてビームを撃ち込んで撃墜する。
もうシューティングゲームに出て来る雑魚敵のようで、マリの視界に入った瞬間にビームを撃ち込まれて火達磨となって荒野の上に落下して落ちる。
呆れるほどに、連邦も同盟のパイロット達も、マリにとって的同然でつまらない相手なのだ。
『撃ち落とせ! 来るぞ!!』
彼女のヒュッケバインが地上を走るリオンの陸戦型であるランドリオンを踏み台にして破壊してから空中高く飛躍すれば、陸上戦艦の艦長の叫び声が通信機より聞こえて来る。
陸上戦艦の乗員たちは艦長の声に合わせ、ハリネズミのように対空砲を無茶苦茶に撃って弾幕を張る。だが、これもマリには見えているようで、弾幕の隙間を掻い潜りながら一気に陸上戦艦の艦橋まで接近する。
ビームライフルの銃口を向けた時、艦橋の風防ガラス越しより見えるクルーたちが、我先へと逃げ出そうとする瞬間が見えた。これからビームを撃ち込まれて蒸発する異星人たちの姿が見える。
並の人間なら多数の命を奪ったという実感を受け、衝撃を受ける物だが、マリはこれよりも残虐な行為を幾度かした経験があり、これより蒸発させる異星人たちの将兵達に対し、なんの同情も抱くことなくビームを撃ち込むトリガーを引いた。ビームが放たれた瞬間、カメラに見えていた異星人の将兵達は一瞬の内で蒸発し、艦橋そのものは巻き起こった爆発で消し飛んだ。
「つまんない。っ!?」
陸上戦艦を無力化してから、背後よりガーリオンと呼ばれるリオンの指揮官専用型が現れ、手持ちの携帯火器でマリのヒュッケバインを撃とうとしたが、携帯火器の砲口を向けた瞬間に彼女は背後より迫る敵機に気付き、ビームライフルを背後に居る敵機へ向けて放ち、敵が撃つ前に撃墜する。
恐ろしい反射神経であり、ビームを自機の胴体に撃ち込まれたパイロットは、何が起こったのか分からぬまま炎上する機体と共に運命を共にして爆散した。
一隻の陸上戦艦を無力化したマリであるが、敵はまだまだ居り、損害に気にせず闇雲に数の多さに任せて突っ込んで来る。
「ちょっと多いわね。ブーメラン使おっと」
ヴァンのダンやハーケンのゲシュペンスト、弾幕を張りながら前進するツァイトも奮闘しているが、敵の数は衰えることない。
そればかりか、襲撃の知らせを前線基地にでも報告したのか、同盟軍の勢力圏内がある方向から増援が次々とやって来る。早いところ、同盟軍の転移装置に取り付いて、何処かの世界へ逃げた方が良いだろう。
そう考えるマリは、今は進路上の邪魔になる敵を片付けることに専念し、機体の背中に付いてある扇形のパーツを幾つか射出させる。それが引力に惹かれるが如く円盤を形成した。
マリはその円盤を操作するコンソロールを動かし、敵の集団に円盤を向かわす。
円盤は速度を上げ、やがて周りの敵機を切り裂くほどの速さとなり、周囲の敵を切り裂きながら周囲の敵を破壊して行く。陸上戦艦も同様であり、艦橋に突っ込んで中の者達を熱で蒸発させれば、艦内中を暴れ回って撃沈する。
十数機の敵機を落とせば、ブーメランのように機体の元へ戻り、再び扇状に戻って背中の専用ユニットの元へ戻る。この攻撃により同盟軍は更に混乱し、統制が乱れ始めた。
『艦長、敵が混乱しています! 今がチャンスですぞ!』
『OK、この隙に一気に目的地へタッチダウンだ!』
リーとハーケンの通信が聞こえれば、敵が大勢を立て直す前に、一気に突入して目的地である同盟軍の大型の転移装置を目指す。それは門に近く、異世界からかなり大型な物を容易にこの世界へ送り込むことが出来る程の大きさだ。ツァイトも余裕で入ることが出来る程の面積がある。そこに入り、転送装置を動かせば、ルリが行ったとされる世界へ行くことが出来るだろう。
このチャンスを逃さず、一行は混乱する同盟軍を押し退けながら前進した。
『こちらツァイト、クロスゲートに取り付きました!』
混乱した敵部隊を押し退けながら、ようやくの所でツァイトがクロスゲートへ取り付くことに成功する。
取り付いたツァイトから、ミカルの通信が全員に聞こえるように入ってくる。
『よし、リンダと僕が制御装置を動かし、ルリの行く先を調べる。君たちはその間に敵を食い止めてくれ!』
『OK、アシェンを援護に回す! 行けるな!?』
『了解でさ、艦長』
『よし、行け! お客さんたちは俺たちで対処する!』
ミカルの通信の後に、ハーケンは助手席に居るアシェンを援護に回すと皆に聞こえるように通信で告げた。冗談交じりの会話が交わされた後から、ハーケンのゲシュペンストからアシェンが飛び出て、クロスゲートの制御装置のある部屋へと、全力疾走で向かって行く。ミカルとリンダがクロスゲートの制御装置に続く通路へと突入すれば、内部を守る警備兵たちが凄まじい銃撃を浴びせて来る。
暫し銃撃で足止めを食っていたが、アシェンが到着して内部に居る警備兵たちを攻撃すれば、一瞬の内に片が付く。 彼女に殴られたと思われる警備兵が、窓を突き破って外へ吹き飛ばされたのが見えた。アシェンは完全なる戦闘型アンドロイドのようだ。
だが、クロスゲートに取り付いても、敵は何が何でも取り戻そうと、更に増援部隊を送り、数に物を言わせて押し寄せて来る。
『おい、幾ら倒してもキリがねぇぞ!』
『あいつ等、必死だな。そんなに取られたことを根に持ってんのか?』
ヴァンが幾ら倒してもキリが無いと文句を言えば、ハーケンはこれ程の大部隊を送り込む理由を、二度もクロスゲートを自分等のような者達に奪われると言う雪辱が嫌なのかと勝手に考察する。
ハーケンの言った通りなのだが、他の答えを考える程の余裕は無く、敵は大挙して押し寄せて来る。
「なんでブラックホールとか持ってないのかな、こいつ」
『それは危ないからじゃないの?』
マリはヒュッケバインに本来搭載されているはずのブラックホールエンジンが搭載されていないことに腹を立てたが、リンダがその理由が危ないと言う簡単な理由であるのではないかと告げる。
確かにそれが搭載されている状態でヒュッケバインが破壊でもされたら、マリはブラックホールにより、ハーケンたち諸共消滅してしまうだろう。押し寄せて来る敵の大群を排除していれば、同盟軍の背後で戦闘らしく物が行われているのが見えた。どうやら第三勢力が参戦してきたようだ。その知らせが直ぐにリーから全員に告げられた。
『艦長、大変です! こんな時にISAの連中が追って来ました!!』
『何っ!? 畜生、こんな時にかよ!』
やって来たのは、彼が駆るゲシュペンストの元の所有しているISAのようだ。
クロスゲートを取り戻そうと躍起になる同盟軍を排除しつつ、ISAの同じ連邦兵よりも良く訓練されたパイロット達が乗るPT群が三隻の巡洋艦と共に向かって来た。
中にはATやMSも居り、少々型が古いが、前の世界で散々な醜態を晒した連邦兵とは嘘のような動きをして、連邦兵と同レベルな技量の同盟軍のパイロット達が駆るリオンシリーズを潰しながら向かって来る。
クロスゲートに向かう前に、連邦軍の哨戒任務に就いている陸上戦艦を振り切ったが、この際に向かった先は分から無い筈だ。どうやらISAの勘の良い指揮官が、自分たちの目的地を割り出したようだ。
その証拠に、自分等の目的地を割り出したとされる指揮官の降伏勧告を告げる声が聞こえて来る。
『私はISAの機動部隊隊長、ジャン・テンペラー大佐である! ハーケン・ブロウニング、君が盗み出した量産型ゲシュペンストMk-Ⅱを大人しく我々に返せば、君らに攻撃を加えている同盟軍から保護しよう。随分と追い込まれている様子じゃないか。この提案は受けた方が良いと私は思うが?』
テンペラーと言うISAの追跡隊の指揮官より、ゲシュペンストを返すように拡声器で言われるハーケンだが、ここまで来て大人しく盗んだ物を返す彼では無い。
直ぐに周りの戦闘音に負けないくらいの音量で、他にやる事があると言って返すつもりは無いと返答する。
「この地獄から救ってもらえるのはありがたいが、ミスター・テンペラー。それは出来ない相談だぜ。この通り俺は依頼を受けているんでな、ここで降りるわけには行かないんだ。第一、この世界を我が物顔で好き放題やってるあんた等に、従うつもりは無いぜ。それにこいつも返すつもりも無い。あんた等も俺たちの世界から様々な物を盗んでる。お互い様だぜ」
得意げに啖呵を切ったハーケンであるが、その返答は直ぐに来る。
『ジャン! こいつは正真正銘の悪党だ! 盗んだ物も返さないクソッタレカウボーイを縛り首にしようぜ!』
『おい、聞こえてるか悪党! このガーザ保安官様がお前を豚箱に入れてやるってんだよ!!』
『へい、悪党カウボーイ調子付いていられんのはそこまでだぜ! ご先祖様にインディアンが居るナッコ様がご先祖様の仇を取ってやっからな! 覚悟しろ!!』
『おい、そこのキモキザ野郎! この前の借りを返してやる! テメェの調子づいた顔面に一発ぶち込んでな!! そこを動くなよ!!』
返答はむさ苦しい男達による数々の罵声であった。
それを何所で聞いていたのか、アシェンの何のフォローにもならない毒舌の通信が来る。
『気にしなさんな、いつものことなのですよ。キモキザ野郎』
「…アシェン、そいつは何のフォローにもなってないぜ」
『あっ、失礼。むっつりスケベカウボーイ』
「…」
これには流石のハーケンも気付いたようだ。
そんなことはさておき、ルリの行く先が分かったと言う通信が入って来た。
『報告よ、ルリちゃんの行く先が分かったわ! 連邦軍の勢力下にある惑星サジタリウスよ!』
「よし、ならはやいとこ向かおう。こっちにおっかない追手が来てることだしな!」
朗報を聞いてか、ハーケンはISAの追手から逃れられるチャンスと捉え、携帯兵装のマシンガンを撃ちながら同じく朗報を聞いて一目散に戻るマリのヒュッケバインと共に後退した。
それと同時に混乱した同盟軍は、高い統制力を誇るISAを抑えきれなくなったのか、ISAの突撃部隊をハーケンたちの元に送り込んでしまう。
『居たぞ、例の盗人だ!』
『ヒュッケバインも盗んでるぞ!』
『退け! ここは俺がやる!!』
突撃部隊は十二機の量産型ヒュッケバインMk-Ⅱであり、携帯兵装で邪魔なリオンを片付けながらハーケンたちに向かって来る。外見はもう別物であり、唯一ヒュッケバインの物であるとすれば、胴体だけである。
戦闘に邪魔になりそうな物は全て剥ぎ取られ、代わりに実弾やビームパックなどの予備弾倉やミサイルが搭載され、目立たないカラーリングに施されている。実に実戦的なデザインに改造されまくっている。俗に言う量産型ヒュッケバインMk-Ⅱ ISA仕様だ。
「クソッ、銃身が焼けるまで撃ち尽くしてやるぜ!」
近付いてくる数十機の精鋭のパイロットが乗るヒュッケバインの量産型に対し、ハーケンはゲシュペンストのマシンガンの銃身が焼け付くまで弾幕を張りつつ後退する。
『よし、ルリが行った世界に繋がるように調整した! みんな、早くツァイトへ!!』
「OK、勇者ガールパーティの向かった先に、行くとするか!」
銃身が焼けつくすまでマシンガンを撃ち続けた後、通信でミカルが行く先を設定してくれたので、ハーケンはその言葉に甘え、銃身が熱で曲がって使い物にならなくなったマシンガンを捨て、ツァイトへ全力で退き返そうとした。
だが、ここに来て問題が起こる。
「っ!? なんだ、どうしたんだブラックボーイ? ここに来てエンストか?」
スラスターの具合がこの戦闘で受けた数々の被弾によって調子が悪い様子だ。度々点かなくなったりして、背後より追撃してくるISAの追跡隊に落ち着かれそうになる。
「シット! もう少しだって所でお縄になるのは嫌だぜ! 頑張ってくれ、ブラックガイ!」
もうガタが来ているゲシュテンペストを応援しつつ、操縦桿を動かしながらツァイトを目指すハーケンであるが、後もう少しで辿り着くと言うところで、ゲシュペンストのバックパックが爆発して地面に叩き付けられた。
「クソッ、おいおい冗談だろ!? ここまで来てこんな目に遭うなんてな! ナンバーテンだぜ、全く!!」
乗っているハーケンは無事であったものの、もうゲシュペンストは限界であり、乗り捨てる他なかった。
直ぐにコックピットにある装備品を全て回収してから外へ出て機体から飛び降り、徒歩でツァイトまで向かおうとしたが、直ぐにISAの追跡隊に追い付かれてしまう。
「おいおい、そこまで俺の運が無ぇとな…もう覚悟するしか…」
自分を大きな手で捕まえようとして来るゴーグル顔のヒュッケバインを見て、ハーケンは一瞬覚悟したが、まだ彼に捕まっては困る者がその巨人を破壊した。
「おっと、俺に惚れたかな? マリ・ヴァセレート」
『良いからさっさっと乗って。あんたが居なきゃあいつ等従わないから』
「それが理由かよ、コールドビューティ。全く、俺の周りにはポイズンガールしか集まらないな」
数機の同型機の量産型をビームやブーメランで牽制しつつ、マリはハーケンを救出した。
それと救出した理由を、ツァイトクルーを従わせる物であると答えれば、期待した答えで無い事に落胆するハーケンが左手に乗ったのを確認してから、ツァイトまで飛び立つ。
「アディオス、エンドレス・フロンティア。それと当分の間はお前らの顔を見ずに済むぜ、ワイルドアーミーズ」
ヒュッケバインの掌の上で、ハーケンはこのエンドレス・フロンティアに暫しの別れを惜しみ、追ってくるISAの追跡隊に対しては、中指を立ててマリとヴァン、それとツァイトのクルーたちと共にルリが向かった世界へと旅立った。
果たして、向かった先にルリは居るのか?
その答えは、向こうの世界へ行ってみなければわからない。
今までの世界とは違う全く別の世界に対し、どんな物が待ち受けているのかを、そこで何があるのかと言う期待を抱きつつ、彼らは見知らぬ異世界へとクロスゲートを潜って向かった。