スーパーロボット大戦OG 無限のフロンティア 異世界からの依頼者 作:ダス・ライヒ
マリのルリを探して欲しいと言う依頼を受け、異世界よりやって来たバカであるヴァンと共に彼女が向かったとされる世界は、連邦軍の勢力圏内にある人が住めるほどの環境が整った惑星「サジタリウス」であった。
そこはかつて、メガミ人やノンダス人が主権、即ち支配権を巡って血で血を洗う闘争で血に塗れた星であり、メガミ人の大帝国「神聖百合帝国」が滅んでも、ワルキューレによって統治されても尚、男と女の闘争は続けられ、大地は血で赤く染まり果てていた。
そんな闘争に終止符を打ったのは、惑星同盟との領土拡大競争に明け暮れる統合連邦だ。
彼らは領土拡大に向けての競争でこの星で殺し合いを続ける男と女を排除したに過ぎないが、現地で争いに怯える者達に取っては解放軍にも見えた。
絶え間ない争いのおかげで進まなかった技術は連邦の統治下によって驚異的な発展を遂げ、今日に至って暮らしは先進国の物と同様になり、大変豊かな暮らしとなっていた。
誰も連邦の植民地になっていることを気にせず、その豊かで優れた科学力の暮らしを甘受し、時には笑い合い、時には涙を流し合い、時には殴り合ったりすることもあるが、男や女だけの種族の争いに怯えることなく比較的平和な時を過ごしている。
もう何も文句は無い見事で豊かな惑星であるが、経済格差が見え隠れしている。だが、誰もそのことを気にせず、この豊かな暮らしに夢中になって誰も見向きなどしなかった。
この後、誰もがやって来るマリやハーケンたちの所為か、それとも駐屯している連邦軍の宇宙艦隊の所為で、恐怖へと変わることに誰も気付かなかった。誰もがこの生活がいつまでも続くかと信じて…。
「…ここが、勇者ガールパーティが行った世界か…」
自分の育った世界であるエンドレス・フロンティアからルリ達が向かったとされる世界へ、ゲートを潜り抜けてこの世界に来たハーケンは、辺りを見渡してそこがこの世界であるかどうかを、ツァイトの艦橋より確かめた。
ここに来るまでに、ゲートを守る同盟軍の強固な防衛線を突破し、ISAの追撃を受け、新西暦の世界の愛機の代用品である量産型ゲシュペンストMk-Ⅱを失った。それだけの苦労をして来たこの世界に来たが、当初から期待していた物よりも違った風景が広がっていた。
「本当に勇者ガール一行はこの世界に来たのか? 周り中、数年前にお釈迦になった残骸ばかりじゃねぇか」
ゲートを潜り抜けてマリとハーケンら一行を出迎えた異世界の物とは、連邦軍がこの惑星「サジタリウス」に侵攻した際に破壊された現地軍や連邦軍の兵器類の残骸であった。
あちらこちらに残骸が転がり、星から敵勢力が一掃されても一切の処理が行われた形跡が無い。
戦時中に仕掛けられた地雷やブービートラップを怖がっての事だろうか?
人が出は入りした形跡も、金目の物を目当てに残骸漁りをする野党も見当たらない。周囲が変に静まり返っているので、まるで墓場のようだ。
「OK、とにかくツァイトの中に籠りっきりじゃ何も始まらない。外へ出ようか」
「あぁ、賛成だ。こんな墓場のような場所を目的として彼女たちは来たわけじゃ無さそうだ」
「あんたの言う通りだな。兎に角、人が住んでそうな場所を探そうぜ」
「賛成。ちょっと漁りたいけど、こうも片付けられてないとね…」
ツァイトの艦内に居たところで何も分かりはしないので、ハーケンは外へ出ると環境に居るマリやヴァン、ミカルらに告げた。
これにミカルは賛同の声を上げ、ヴァンもそれに応じる。リンダも同じく同意したが、マリは無返答である。だが、賛成はしているようで、装備を整えてからハーケンらと共に船を降りようとする。
ツァイトから降りる際に、リーらが出迎え、細心の注意を払って行動するように釘を刺す。
「艦長、気を付けてくださいね。ここら一帯に人気が無いとすれば、地雷がたんまりと仕掛けられている可能性がありますから」
「心配性だな、副長。なーに、
「このアシェンが居るからバッチグーでございまするよ」
「はぁ、ちょっと心配ですな」
そんなリーに対し、ハーケンはアシェンと護衛に付くゲシュペンストに似た全高3mはある護衛のロボットを指差しながら心配はいらないと告げる。
だが、双方とも過去に問題を起こしたこともあるらしく、艦長の身を案じるリーは余計に心配になる。でも、同じクルーでツァイトの最高のメカニックである鞠音(まりおん)博士は違う様子だ。
「そう言えば、ここは連邦軍の支配地域でしたね」
「あぁ、確かインフォメーションガイが言ってたが…」
「今度はタイプSを盗んでくださいね。量産型ではオリジナルに出来ませんから。それに他のタイプでは駄目ですからね。どうもタイプSじゃないと駄目なんです。タイプHを忠実に再現するにはね」
「OK、あったら是非、頂いて行こう。ただし、あればの話だがな」
「…盗むの前提なんだ」
この惑星サジタリウスが連邦の支配下と聞いて、鞠音からタイプHに近いゲシュペンスト・タイプSを盗んで来いと言われたので、ハーケンはあったらと言う条件でそれを承諾した。小さい声でリンダがツッコんだが、マリとミカル、ヴァンは何も言わなかった様子だ。
「OK、エブリワン。さて、地雷に気を付けつつ、人気のある場所へ行こう」
ハーケンが仕切れば、皆はそれに応じ、ツァイトを降りて地雷原である兵器群の墓場の地へと足を着けた。
ここは連邦軍の支配下にある惑星なので、残された乗員達に取って可哀想ではあるが、ツァイトはこの兵器らの墓場に隠しておくことにする。幸い、連邦軍もここを気味悪がってか、それとも地雷が怖いのか、残骸の撤去を拱いている様子だ。それに哨戒機の一機も送ってこない。まさに絶好の隠れ場所だ。
「うっかりしたら、地雷を踏んでジョニーになっちまいそうだ」
「いや、最近の地雷は、踏めば一気にこの世からさようならさ。注意して進まないとな」
「ちょっと! 物騒なこと言わないで!」
「そんなにヤバいのか。地雷って」
「あぁ、朴念仁が良く踏む地雷並にな」
「へぇ、そうか」
細心の注意を払いつつ、ハーケンらはもう地雷原か分からない地へと一歩一歩、慎重に歩きながら進む。
その際、ハーケンは緊張をほぐすためか、冗談を口にする。だが、ミカルは最近の地雷、特に連邦制の地雷は踏んだ瞬間にこの世から召されることを告げる。これに少し怯えているリンダが叫び、地雷の事を余り知らないヴァンは、改めて地雷の怖さを理解した。
これにアシェンが余計なことを吹き込めば、バカのヴァンはそれをうのみにする。一行は注意しながら進んでいけば、先行しているファントムが地雷を踏んでしまい、爆発に呑まれた。
「伏せろ!」
地雷が爆発した瞬間に、ミカルが叫んでマリ以外の者は全員地面へと伏せる。
「どうやら対人地雷のようだ。君の護衛のロボットは無傷だ」
「対戦車用とか機動兵器用じゃ、一瞬で粉々だったな…」
踏んだ地雷の種類は対人地雷であったらしく、ファントムの装甲には傷一つ付かず、あるじの指示があるまでそこで待機していた。もし、戦車や機動兵器用の地雷であったなら、ファントムは粉々に吹き飛んでいることだろう。
それにマリ以外の者達は肝を冷やしつつ、墓場を抜けて人気のある場所へと進む。
「はぁ…! ようやく出られた…!」
「そこ、地雷かもしれないっすよ」
「変な事は言わないの。私が作ったこのマインセンサーに反応は無いから」
緊張しながらあるくこと数十分、一行は地雷原から抜け出すことに成功した。
ようやくの所で出られ、緊張が解されたのか、リンダはその場で仰向けとなる。これにアシェンが軽いノリで冗談を告げたが、リンダは地雷を探知する機器を持ち合わせていたのか、それを見せびらかしながらその手には引っ掛からないと告げる。
「よし、帰り道も同じような歩き方はしたくないからな。念のため、安全なルートをメモしておこう」
また同じように歩きたくはないので、ミカルは安全にツァイトへ戻れるルートをメモに示しておく。
「OK、安全なルートはメモしたようだな。さて、人気のありそうな場所、特に町とか村とかを探すか」
ミカルがメモを書き終えたと無言で合図を送れば、ハーケンは皆を仕切って村か街を探すと告げて再びこの広い平野を歩き始める。
墓場から離れても少なからずの残骸が目に入り、更には腐敗した双方の将兵の死体まであったが、地雷やトラップが仕掛けられた様子も無く、素通りして街道を探す。歩くこと小一時間ほど、ようやくのところで、一行は整備された街道を見付けることに成功した。直ぐにその道に沿って、村か町らしき場所へと進む。
「艦長、ファントムが向こう側から車が来ると言っておりまする」
「車? やべぇな、この辺にミスターブラックみたいなナイスガイは居るわけが無い。ファントムを見られたら厄介なことになりそうだ。済まないが、近くに隠れていてくれ」
先行するファントムが自分等の行く先から車が近付いてくることを報告したので、喋れない彼の代わりにアシェンが告げれば、ハーケンは見られれば確実に問題になるファントムに何処かへ身を潜めるよう指示を出した。
ファントムはそれに応じて、近くの茂みへとその巨体を隠し、主が良いと言うまでじっと茂みの中で息を潜める。
「OK、この辺に町は無いかと向こう側から来るドライバーに聞いてみるとするか」
「それが良い。僕たちはこの辺の地理には皆無だからな」
向こうから来る車の運転手に、この辺りの地理を聞いてみることにすれば、ミカルはそのハーケンの提案に賛同する。マリはこれに賛同では無いのか、車と運転手が連邦軍の物と分かれば、即座に射殺できるように腰に隠してある拳銃に手を伸ばす。
車は物の数十分ほどで、ハーケンらが見えるところまで来た。車種はトラックのようであり、連邦の手によって近代化された物では無く、四駆のようであった。
直ぐにハーケンはヒッチハイクで行うジェスチャーを、トラックを運転する男に送り、止めようと試みる。それを見たトラックを運転する男、それも中年の男性は文句でも言い付けてやろうかと思ったのか、一行の近くで車を止め、窓を開けて何用かと問う。
「兄ちゃんら、どうした? 迷子か?」
「まっ、そんなところさ。所で、この辺に町は何所にあるか教えてくれるかな? ミスター」
ハーケンの言葉遣いに、少し苛立ちを覚えた男だが、余所者である彼らに文句を言えば言い争いに発展しそうなので、自分が来た方向を指差して走り去ろうとする。
「俺が来た方向からだ。分かったらさっさっと行け。俺ぁ忙しいんだ」
「サンクス、ドライバー。手間を取らせて済まなかったな」
町へと道を教えたトラックの運転手は忙しいのか、礼を言うハーケンの言葉も聞かず、自分の目的地へと走り去った。愛想の無い男を見て、アシェンは一瞬、マリの方へと視線を向けたが、彼女に睨まれたので、視線を前に戻す。
「愛想の無いおっさんでしたな。今度一発ブチかましますかぃ?」
「止せ、バトルジャンキー。余所者にはみんなあぁなのさ。では、町へと行くとするか」
アシェンの提案に、ハーケンは却下を立てて、運転手の男が教えてくれた手順に従い、街道に沿って町へと続く方向へと走り出した。それと同時に身を潜めているファントムにも忘れずに指示を送り、人目を避けて移動するよう指示を出しておく。
そう数十分ほど街道に沿ってあるいていると、自ずと町が目に入った。賑わいは見えないが、少しばかり大きく、それなりの情報は入りそうだ。
「OK、嘘は言っていないようだ。さて、休憩としますかな、エブリワン?」
「賛成。もう二時間以上も歩いてるわ…」
「俺はまだいけるぞ」
「よし、ここは民主主義で行って、酒場辺りで休憩だ」
運転手が嘘を言っていないことを確認すれば、ハーケンは全員にその町で休むかと全員に提案すれば、歩き疲れているリンダはそれに賛同した。ヴァンを除く皆も同意しており、ハーケンは民主主義に則って休息を取る事にし、町へと向かった。尚、ファントムは近くで待機している。
「さて、大衆酒場で疲れを癒すとしますかな」
歩くこと数分ばかり、それほど賑わってない町へと着けば、近くに酒場などがあるかどうか探し始めた。
「ブロウニング、酒場は案外、近くにあった。だが、僕ら全員は連邦の通貨は持ち合わせていない。どうする?」
「参ったな。何所へ行くにも、連邦後任のマネーが必要か…」
ミカルは直ぐに酒場を見付けたが、生憎と全員がこの惑星、それも連邦政府公認の共通通貨は持ち合わせいない。それを聞いてハーケンはどうするのか悩み始めれば、マリの姿が何所にも居ないことに気付いた。
「おい、あのミステリアス・レディは何所へ行った?」
「そこら編でカツアゲでもしとるとでもちゃいまっか?」
ハーケンがそのことを口にすれば、マリが近くの人間に金を巻き上げているのではないかとアシェンが言う。
実際、彼らの近くに歩いている連邦軍の二名の憲兵に対し、マリは色仕掛けなどで路地裏に誘い込み、彼らを伸してから財布を拝借して大量の通貨を入手した。
「これがあれば良いんでしょ?」
「おい、そいつは何所から頂戴したんだ?」
戻って来たマリは、連邦軍の憲兵より巻き上げた紙幣を見せながら問う。これにハーケンらは質問で返し、何所で手に入れたのかを問えば、彼女は路地裏の方を無言で指差す。
「まさかな…」
それでマリが何をしたのか分かり、ハーケンは頭を抱えた。何をしたのかを確認するため、ヴァンが調べに行けば、彼は正確に見たことを一行に報告した。
「路地裏に制服着た二人の男が倒れてる。結構な力で伸されたようだな」
「おいおい、カツアゲレディ。まさかやったのはユーか?」
「えぇ。でも、お金は入ったでしょ」
ヴァンの報告を聞き、ハーケンはやったのかと再び問えば、マリは包み隠さずに自分がやったことを告げた。
「はぁ、取り敢えず、騒ぎになる前に酒場に入るとしよう」
気絶させられた憲兵二人が見つかって騒ぎになる前に、一行は早々と町の出入り口付近より去った。歩いて数分程で酒場に着けば、二人組となって我が物顔で歩く憲兵を気にしつつ、一行は酒場へと入った。
酒場に入れば、既に数十人ほどの先客が居り、殆どが酒を飲んでいたが、何名かはアイスコーヒーを飲んで喉を潤し、雑談を交わしていた。
「昼間から酒を飲んでいる奴は居るが、殆どはコーヒーぐらいだな。それもアイスの」
「まぁ、ここは少し熱いからな。アイスコーヒーかアイスティーぐらいが妥当だろう」
酒場の客が飲んでいる飲料を確認したハーケンが口にすれば、ミカルはアイスの類の物がさほどと告げる。
歩き続けているので、一行は空いている席へと座る。ハーケン、アシェン、ヴァン、ミカルはカウンター席へ座り、マリとリンダは空いているテーブル席へと座って脚を休ませる。
「お客さん方、ご注文は?」
「ミルク…」
「あぁ、俺たち四人はアイスコーヒーで頼む。お嬢さんは何にする?」
酒場の店主からの注文に対し、ヴァンが何かを言い出す前に、ハーケンはカウンター席の全員はアイスコーヒー一択で頼む。それとマリとリンダに何を頼むか振り向いてから問う。
「私はアイスティーで」
「ホットティ一つ」
「ほ、ホットティ…? こんなクソ熱い時に…?」
リンダはアイスティーを頼めば、マリはホットティ、それも普通の熱い紅茶を頼んだ。それを聞いてか、マスターは強面の眉間にしわを寄せ、注文したマリに問い質す。
「それ以外に無し」
「変わったお嬢さんだな。そんな物を熱い時期に頼むの、昔ここを治めてたメガミ人の貴族だけだったよ」
マリが熱い時期に関わらず、紅茶を頼んだ時に、店主はまだこの惑星がメガミ人かノンダス人によって統治されている頃のことを思い出し、それを口にした。
「へぇ、この惑星は昔メガミ人とかに治められてたのか。マスター、それよりこのお嬢ちゃんは何所かな?」
そのことに感心しながら、ハーケンは懐より写真を取り出す。その写真に写っているのは、ルリが写っている写真だ。マリからもらった物をコピーした物である。それを見た店主は、首を傾げながら思い出そうとする。
「可愛い嬢ちゃんだね。あんた、なんでも屋か何かか?」
「まぁ、そんな所さ。で、何所に行ったのか分かるか?」
「さぁね、こっちに来たのは来たが、パフェとか頼んで来てから喫茶店に行けと言って保護者共も一緒にここから追っ払ったよ」
「なにぃ!? 追っ払った!?」
店主は写真を見て、ルリのことを思い出せば、自分の店から追っ払ったと答えた。それを聞いたハーケンは驚き、思わず声を上げる。
「あぁ、うちは酒場だ。お子様が来るような所じゃない。だから追っ払った。行った先は喫茶店で聞けば何とかなるだろう」
「おいおい、メイデン相手に失礼じゃないのかぃ。相手は子供なんだぜ? もう少し言い方を優しくしてだな」
「うちは喫茶店とかファミレスとかじゃないんだ。それに看板にも書いてある。未成年はお断りだとな! あんたがそれ以上、文句を付けるなら、この店から出てって貰うが?」
「そいつは勘弁だ。確かにこのアダルティな店で、パフェを頼むのはあの勇者ガール、いや、プリティガールくらいなもんだろう。兎に角、有益な情報をありがとよ。マスター」
「なーに、あんた等のような余所者に早く出てって貰いたいだけさ。ほれ、注文の品だ。おい、サーム! 向こうのテーブルにアイスティーとレモンティーの注文したお客さんに持っていけ!」
喫茶店に行けば、ルリ達の行く先が分かると教えてくれた店主に、ハーケンはお礼を言えば、彼は四人が注文したアイスコーヒーを出して礼は要らないと答えた。それとバイトの男に、アイスティーとレモンティーを注文したマリとリンダの座る席へ持っていけと命じる。
これに応じてバイトの男は、少し不機嫌な態度で二人の女性の元へ注文した品を持っていき、二つをテーブルの上に置いてから去る。
「なんか態度悪いわね」
去って行くバイトの店員に、リンダもこれに不機嫌となったが、気にしては問題になりかねないので、ここは敢えて見逃しておく。
「あの、俺はミルク…」
「アホブラック、‟ここ‟は乗りだ。お前もノーマルで飲め」
「そうだ、‟ここ‟はこれに限る」
「…すみません」
一方で、カウンター席に座る四名のうち、ヴァンが他の飲料も頼もうかとしたが、アシェンらに止められる。ここでヴァンは、自分の飲み方が彼らや店主の気に触れる物であると分かり、敬語で謝罪し始める。
テーブルに四つのアイスコーヒーの入ったガラスコップが置かれれば、四人は同時にコップを取り、一気にそれを飲み干してテーブルに音を立てながらコップを置く。
「何やってんの、あいつ等?」
「…」
この四人の謎の飲み方を、リンダは呆れた様子で見ていたが、マリは優雅にティータイムに行っていた。
「さて、喫茶店へと向かうとしようか」
休息が終わった所で、一行は再びルリを行く先を探す旅を再開した。尚、マリが一番飲み終えるのが遅かったらしく、実に二十分以上は待たなくてはならなかった様子だ。
酒場を追い出されたルリ一行は、喫茶店へと向かったのは確かであるが、ここは町なので、喫茶店の一つや二つ、それも五つ以上はあるだろう。だが、彼女らは集団で行動しているので、派手に目立つはずだ。聞き込みを行って、何所の喫茶店に入ったのかを確かめる。
「OK、向こうの喫茶店だな。サンクス、レディ。エブリワン、聞こえるか? 勇者ガール一行が行ったのは…」
聞き込みを続けること数十分、通りすがりの女性に、ルリ一行が何所の喫茶店に行ったのかの確認が取れれば、ハーケンは一同に通信機で知らせた。それを聞いてか、一同はその喫茶店前に集合する。
それから何所に行ったのかを確認したのは、ここでは普通の服装しているミカルであった。物の数分程で、彼は店から出て来てルリ達が何所へ行ったのかを知らせた。
「ルリ達の行き先が分かった。ここから南東にあるモスバサシティらしい」
「そうか。モスバサね…そこまでの電車代はあるようだな。OK、モスバサシティまでエクスプレスでレッツゴウだ!」
ミカルよりルリ達の行く先が分かれば、ハーケンは一行を仕切ってモスバサシティ行きの特急のある駅へと向かった。
「早くしなくちゃ…!」
それから数時間後、彼らの目指すモスバサシティにて、一人の少女がこの巨大で高度な都市より逃げ出そうとしていた。
彼女は慌てた様子で、財布より取り出したカードを使って切符売り場で街を出られる列車の切符を買おうとしたが、保護者の計らいなのか、カードは使用不能であった。
「げっ、カードまで差し押さえちゃったの!? もう、小銭、小銭…!」
保護者の計らいでカードが使えないことに更に慌てたのか、彼女は小銭を取り出し、それでモスバサシティを出る列車の切符を買い込み、改札口を通ってホームへと出て、追手を気にしながら電車が来るのを待つ。
「追ってきてないわね…?」
そこで数秒後に止まった電車へと乗り込もうと、降りる客が皆降りたのを見計らって、近くのドアへと駆け込む。
「キャッ!? わっ!? ご、ごめんなさい!!」
「おいおい、お嬢さん、駆け込み乗車は厳禁だぜ?」
慌てて駆け込んでしまった所為か、そこに居た女性の胸に顔をぶつけてしまう。
その場に居た女性は、もうこの街へと着いていたマリであった。その証拠に近くにはハーケンらが居たが、ミカルとリンダはツァイトに戻ったのか、何所にも姿は無い。ぶつかった少女が慌てて謝罪すれば、近くに居るハーケンは、駆け込み乗車は危険だから止めるよう注意する。胸に飛び込んで来た少女に対してマリは、満更でもない様子で頭を下げる彼女の頭を撫でる。
「あ、あの…これは…?」
「ラッキーガール、素直に喜べ。お前はゲスの意味での90クラスの物にぶつかった」
「は、はぁ…?」
自分の頭を撫でるマリに対し、少女は何なのかと問うが、彼女は黙ったままぶつかった部分を撫でるだけだ。それを見ていたアシェンは、マリの大きな胸にぶつかった少女に対し、幸運だと思えと告げる。無論、そう言われた少女は混乱する。
そんな少女に対し、この場の空気を変えるためか、ハーケンは今乗っている列車で合っているかどうか問い始めた。
「所で、聞きたいんだが…街の奥まで続く路線はここかな? ただいま定刻通りに目的地に到着しているんだが、この辺の地理には詳しくないんで余り良く分からないんだがね」
「あ、あの…」
「なんだい、お嬢さん?」
「…この路線、逆ですよ。それに、この列車は町を出る方向に向かって走ってますし…」
「…」
少女からの問いに、自分等が逆方向の列車に乗っていると分かったハーケンは、帽子を深く被って自分の表情を隠す。
どうやらマリ達は、ハーケンの当てずっぽうで、危うく街から出そうになったようだ。この少女に質問しなければ、間違いなくモスバサシティから出てしまっただろう。