スーパーロボット大戦OG 無限のフロンティア 異世界からの依頼者 作:ダス・ライヒ
「あ、あれは…!」
「だ、ダイゼンガー…!」
上空より現れし巨大な鋼鉄の武人、その名もダイゼンガーを見た連邦兵たちは、噂に聞く破壊神の姿を見て、恐れおののき始める。 その巨大な剣、参式斬艦刀を携えし破壊神に乗る男、ゼンガー・ゾンボルトは、堂々と拡声器を使い、コックピットから名乗り始める。
『我が名はゼンガー・ゾンボルト、悪を断つ剣なり!』
「や、やっぱり…」
「ぜ、ゼンガー、破壊神ゼンガーだ…!」
ゼンガーの名を聞いた連邦兵たちは、宇宙軍の将兵達がもたらした仇名を聞いて震え上がり、思わず手にしている銃を手放しそうになる。 そんな自分の姿に、別世界であるが、DC戦争以上の時に恐れを抱く連邦軍の将兵達に対し、ゼンガーは人質にしている子供たちを解放するよう警告する。
『貴官らのしていることは軍隊の風上にも置けぬ鬼畜の所業! 即時に人質にして盾にしている子供らを解放すれば、このゼンガーは一切の手出しはせぬ! 応じぬ場合は、貴様らを悪と断定し、この参式斬艦刀で貴様らを断つ!』
そう恐れを抱く連邦軍の将兵らに警告するゼンガーであったが、シディーらを人質に取る連邦軍将校がこれに応じるはずが無かった。理由は他のワルキューレの部隊が手を出して来ないと言う保証が無いからだ。
例えゼンガーが見逃しても、仮面を着けたパイロットが駆るバルキリー部隊に駆られるか、街中で待ち伏せ攻撃を行う空挺部隊にやられる可能性がある。
「黙れぇ! お前が見逃そうとも、他のワイルドキャットの部隊が見逃すはずが無いだろうが! ふざけたことを抜かしやがって! おい、お前ら、餓鬼を盾にしたまま脱出だ!」
『はっ!』
自分の警告に応じず、子供を盾にしたまま逃げようとする連邦軍部隊を見たゼンガーは、彼らを悪として断罪するしか無いと判断した。
『愚かな…! 外道へと進むか…! ならば!』
「あーぁ、ボスを怒らせちまった」
戦闘能力が無くなった戦車から、近くでそれを見ていたハーケンは、子供らを解放しなかった連邦軍部隊の事を気の毒と思った。
何故なら、幾ら子供を人質に、それも盾にしたとはいえ、ゼンガーに勝てる保証が連邦軍部隊に何一つ無いからだ。 ゼンガーは操縦桿、剣型の操縦桿を動かし、ダイゼンガーのロケットパンチとも言える攻撃を行った。
『ダイナミック・ナックル!』
そう叫んだ瞬間にダイゼンガーの両手が標的に向かって飛び、二機のMS、ヘビーガンとGキャノンを無力化する。
それも周囲の建造物に被害を出さず、道路のみに被害を最小限にとどめさせての芸当だ。 これを見た連邦軍将校は、シディーを近くに居る部下に向けて投げ付け、彼女らをもっと前に出すように怒号を飛ばす。
「奴め、本気か!? 餓鬼をもっと前に出せ! 連中が前に出ないようにしろ!!」
指揮官の指示に応じ、代わってシディーのこめかみに拳銃の銃口を突き付ける兵士は前に出て、スコープドックに乗る操縦者も、左手に掴んでいる男児を高く上げてから前に出てゼンガーを威嚇する。
「おいおい、そいつはボスの怒りを逆なでするような行為だぜ?」
『おのれ、そこまで腐っているとは! 我自らが貴様らを斬る!!』
そんな行動に出る連邦軍の部隊に対し、ハーケンはもう手遅れだと言えば、それを現すかのように、ゼンガーはコックピットのハッチを開き、単身生身で子供らを解放しようと、日本刀一本を携えてダイゼンガーより飛び降りる。
飛び降りた高さは、並の人間なら死んでもおかしくない程の物だが、ゼンガーは何事も無かったように着地し、全力疾走で連邦軍部隊の元へ向かう。
「お、おぉ…!?」
「飛び降りた!?」
これに驚く連邦軍の将兵達であるが、そんな彼らに向けて指揮官は射撃命令を飛ばす。
「貴様ら! 何をクズクズしているか!? さっさっと撃たんか!」
その怒号で我に返った連邦兵たちは、手にしているライフルや軽機関銃の類を、全力疾走で向かって来るゼンガーに向けて放つが、あり得ないことに、彼は鞘から引き抜いた日本刀の刀身を凄まじい速さで振り回し、自分に当たる銃弾を全て弾いたのだ。
「ひっ、ヒィィィ!?」
「銃弾を斬りおとしたり、弾いてる!?」
「もみ上げの大将、人外差に磨きが掛かっちょりますね」
「どうなってんだありゃあ…まぁ、俺の世界やあの連中たちにも出来る奴が居るが、まさか新西暦の世界にも居たとはな…」
これには連邦兵達も驚愕せずにはいられず、流石のハーケンたちも驚くほかなかった。 銃弾を弾きながら連邦兵達に近付いたゼンガーは、手近な兵士たち数名を素早く斬り捨て、シディーを人質に取る兵士たちの前へ目にも止まらぬ速さで近付く。
「ひっ!? こ、こいつがどうなっても…」
瞬く間に数名の味方を斬り捨て、自分の目前まで来たゼンガーに向け、シディーのこめかみに銃口を強く押し付け、拳銃の引き金に指を掛けた兵士であったが、言い終える前に、片名の鞘を額に強く当てられ、脳震盪を起こして気絶してしまう。
「きゃっ!?」
この際に、シディーを抑えていた手の力が抜け、彼女は解放される。 ゼンガーは解放されたばかりの少女を銃弾より守るべく、即座にシディーの背後に立ち、彼女に向けて飛んでくる銃弾を弾く。
「おっと、ボスだけじゃないぜ!」
ゼンガーに続き、ハーケンもステークの発射口とリッパーを取り付け、大型銃剣の付いた先代より受け継いだ武器、ナイトファウルを取り出し、ゼンガーに向けて銃を撃つ兵士達に銃弾を放つ。
放たれた弾丸は全て命中、ゼンガーに向けて銃を撃っていた連邦兵たちはバタバタと倒れていった。その間にアシェンがシディーに近付き、ゼンガーに彼女は自分に任せろと告げる。
「むっ、お前は確か…」
「お久しぶりーつ、もみ上げ野郎。このちっぱいは任せてショタを救いに行け」
「助かる」
新西暦の世界でハーケンと共に戦ったアシェンを見たゼンガーであったが、それを懐かしんでいる暇は無いので、シディーを彼女に任せ、男児を抱えるATに向けて走り出す。 ゼンガーに向けて銃を撃つ連邦兵たちはまだ居たが、ハーケンの援護射撃によって全滅し、後はAT部隊のみであった。
「通常の刀身では斬れんか…ならば…!!」
ゼンガーはATの装甲は斬艦刀では斬れぬと判断し、それを断ち切るための刀身にするため、手にしている日本刀に力を込めた。
「霊式斬艦刀!!」
『か、刀が!?』
『馬鹿デカい大剣に変わったぁ!?』
ゼンガーが力を込めれば、刀身はたちまち大きくなり、ダイゼンガーが持つ斬艦刀を人間サイズにまでした物と変わり果てる。それを見たATのパイロット達は驚きの声を上げたが、その直後に機体ごと斬られ、斬艦刀の錆となる。
僅か数秒ほどで、二個分隊程居たAT部隊は、男児を抱えているスコープドック一機のみとなった。
「う、うわぁぁぁ!!」
次は自分が斬られる番だと思った連邦兵は、機体を捨てて逃げ去った。この時、ATの左腕は男児を抱えたままであったが、ゼンガーの素早く、そして正確な斬撃で左腕ごと斬りおとされ、男児が拘束より解放される。
「大丈夫か?」
男児は斬りおとされた腕と共に宙を舞ったが、ゼンガーに受け取られて無事に済む。
『生身のゼンガーはこの俺が…!』
だが、油断は出来ない。戦意を失っていないパイロットが乗る中型のオオカミ型ゾイド「コマンドウルフ」が大きな口でゼンガーを噛もうとしたが、ヴァンの蛮刀で頭を斬りおとされて無力化される。
『今度は俺が…うわぁぁぁ!? なんだこれは!?』
次に偶然にも近くに居たダガーLがビームを撃とうとしたが、マリが唱えた魔法なのか、機体全身から茨の根が生え、数秒も経たないうちに植物の一部となったかのように動かなくなった。
「あ、あぁ…」
一瞬の内に、自分の部隊と他の部隊を排除したマリとハーケン、ゼンガーらの人知を超える程の力を見た指揮官は、 自分一人だけでも逃げようとしたが、後からやって来たワルキューレの歩兵部隊に銃口を向けられ、先ほどの威勢が嘘のように彼女らに投降した。
戦闘が終わった後、ゼンガーは男児を抱えながらハーケンらと合流する。 ハーケンらの姿を、新西暦の世界を同盟軍によって追われて以降に見たゼンガーは、本当に本人たちであるかどうか問う。
「ハーケン、ブロウニングか…?」
目前の良く知る武人のような人物に名を問われたハーケンは、はぐらかすことなく素直に答える。
「あぁ、俺だぜ。スーパーサムライ。偽物だと答えてほしかったかい?」
「その口調、まさしくハーケンのようだな。一体この世界で何をしているんだ?」
答えように本人であることを確認すれば、ハーケンたちがこの世界に来た事情を知らないゼンガーは、彼に何をしに来たのかを問う。
「そいつはこっちの台詞だぜ、ミスターブシドー。なんであんたがガールズアーミーズのゲストジェネラルなんかになってんだ?」
「そうだったな。実はこれには事情があってだな」
ハーケンはゼンガーがワルキューレになぜ属しているのかを問い返して来たので、まずは自分が何故にワルキューレに属している理由を語った。
「なるほど、そっちの世界にここのファッキン・アーミーの敵方であるライアー・アーミーに侵略されて、仕方なくガールズアーミーズのお世話になってるってことか」
新西暦の世界が惑星同盟軍の侵攻を受け、世界より脱出する他なかったと訳を話せば、ハーケンはそれに納得して頷く。自分の世界も、新西暦程とは行かない物の、双方の巨大勢力から徐々に侵略されつつあるのだ。
「そうなる。で、お前たちはこの世界で何をしてるんだ? 次元転移装置の誤作動にでも巻き込まれたのか?」
「いや、違うぜ。そちらのエレガント・ウーマンの依頼で、この世界に来たのさ。依頼内容は人探し。シーのプリティガールを探してる」
「ほぅ、中々気品に溢れる女性だ。何所の王族か、それとも貴族か財閥の令嬢か?」
次に問われたハーケンは、この世界に来た理由をマリの依頼、それもルリの探索を手伝っているとゼンガーに彼女を指差しながら答えた。マリの姿を見たゼンガーは、その美貌さに何処かの王族か貴族、財閥の令嬢と勘違いした。
「いや、そういう話は聞いていない。まぁ、俺たちの世界のような人間であるだけは分かるな」
「そうか。では、この子の母親か父親は何所だ? ずっと抱えているのは少々な…」
マリがそのような家系の類の人物だとは分からないとハーケンが答えれば、ゼンガーは抱えている男児の親は何所なのかを問う。男児の母親の最期を知っているハーケンは、少し表情を暗くして、母親が亡くなっていることをゼンガーに告げた。
「あぁ、そのボーイのマザーは…」
「戦闘に巻き込まれて死んだか…誰か、この子を避難所まで連れて行ってやってくれ!」
男児の母親の最期を知ったゼンガーは、近くを歩く兵士に男児を最寄りの避難所まで連れて行くように指示した。命令に応じた兵士が男児を代わって抱えれば、ゼンガーはまだ物事も分からないであろう男児に、これからも強く生きるよう告げる。
「幼子よ、君の母は死んだが、父か親戚と共に強く生きろ。何事にも屈してはならんぞ」
自分の言っていることは、男児は理解してないだろうが、それでも気持ちだけは伝わっただろう。男児は命じられた兵士に抱えられたまま、避難所へと消えて行った。
「さて、そこの少女も…」
「私は良い。これから迎えに行くんだから」
シディーにも避難所へ連れて行くように兵士に指示を出そうとしたが、彼女は母親を迎えに行くためにそれを断る。
「迎えに行く…? 君の身内は動けないのか?」
「いえ、ラボに居るのよ。この近くの発掘現場のね」
「それは危険だ。俺が迎えに行く。君は…」
シディーの母親が居る場所が、激戦区であると知ったゼンガーは、危険だから自分が代わって行くと告げたが、ハーケンより愚問であると告げられる。
「おっと、善意サムライ。そいつは愚問だぜ。彼女は自分で迎えに行くと言ってるんだ。それに、さっきは人質に取られていたのに、行く気が失せてない」
「確かに一切の恐れを抱いてないな。では、俺も同行しよう。同行者は多い方が良い」
あれほどの事が遭ったにも関わらず、シディーが母親を迎えに行くことに、何の後悔もしていない表情をしていることをゼンガーが見れば、自分も同行したいとハーケンに告げる。
「OK、ボスが行くなら百人力だ。それに車もある。これでエビフィングだ」
流石にダイゼンガーは不要だが、ゼンガー本人が同行するなら力強いので、彼の同行を即座に許可する。発掘現場まで行く乗用車もあるので、これで万全の状態だ。
「では、一個分隊程を…」
「いや、兵隊の同行は撃たれる可能性がある。それに連邦の占領地域も通る。だから、降伏の印であるホワイトフラッグを立てて行く」
「うむ、これで避難民の車と捉えられて怪しまれずに行けるな。では、行くか」
「OK、全員乗車だ!」
一個分隊ほどの歩兵も同行させようとするゼンガーであったが、それでは撃たれるので、ハーケンは白旗を立てながら向かうと告げれば彼は納得し、先に戦闘力を全て剥ぎ取ったT-34中戦車に乗り込んだ。それに続き、ハーケンらも中戦車に乗り込み、避難所まで向かう。
白旗を立てあるので、これで撃たれることなく進むことが可能だ。戦車に乗りながら、一行はシディーの母、プローディネンス博士が避難している発掘現場のラボへと向かった。
発掘現場にあるラボに通じる地下通路まで向かうまでは、激戦区を通るしかなかったが、白旗と装甲のおかげか、なんとか連邦軍の支配下にある地下通路まで到着することが出来た。
「後はここを通れば…」
キューボラから上半身を出し、地下通路へと入ったのを確認したシディーは、母の元まで後一歩だと口にした。
ちなみに、戦車を動かしているのはアシェンであり、彼女の余り信用ならない性能差とは裏腹に、安全運転を行っている。そんなシディーの元に、増援として外に出撃する三機のジェガンR型のパイロットが、開きっ放しのコックピットから声を掛ける。
「おい、譲ちゃん! 列車ならもう出ちまったぜ!」
「えっ? 私達を置いて…!?」
「とにかく、ワイルドキャットが入って来れば、手を挙げて降参するだな!」
通り際に列車は出たと告げる連邦のパイロットに対し、その訳を問うシディーであるが、彼は適当に答えてから地下通路への出入り口へと僚機と共に向かった。
「おい、止めようぜ」
「どうしてだよ? 行かなきゃ、俺たち銃殺刑で殺されちまうんだぞ?」
出入り口までもう少しの所で、先頭の機体に乗るパイロットが機体を立ち止まらせ、援軍に行くのは止めようと告げた。これに同僚は、銃殺刑で殺されると言って何とか行かせようとしたが、もう無駄であると言われる。
「お偉いさん方は、とっくに逃げ出してるさ! それに最後の列車はこの町一番のクソッタレのキズラーとサイキックハンター共が占領して、誰かを待ってる。あんな奴らのために死ねってか?」
「そりゃそうだな。じゃあ、トンネルを通って、隣町まで逃げるか」
行くのが無駄な理由が、キズラーらが無理やり占領した避難列車の発進までの時間稼ぎが無駄であると告げると、二機目の機体に乗るパイロットはそれに納得して、隣町までトンネルを通って逃げると発言した。
これは立派な敵前逃亡だが、負け戦に行くほどの戦意は彼らにはないと言う事だ。
いざ、逃げ出そうとした時に、彼らの三機のジェガンが居る地下通路の物資運搬用のエレベーター近くに、ワルキューレの機体、それもVF-31Jが現れた。小型クラスの機動兵器しか入れないスペースをVTOLのように飛行できるガウォーク形態で侵入し、こちらの侵入に驚いている三機のジェガンを捉える。
「なんだよ…!」
現れた敵機に、先頭のジェガンのパイロットはコックピットのハッチを閉め、頭部側面のバルカン砲を撃ちながら後退した。背後の二機も、飛んでくる破片から身を守るために、ハッチを閉めてバルカン砲やシールドのミサイルを撃ちながら奥へと後退し始める。
無論ながら、避難中の避難民にも飛び火し、何名かの犠牲が出たが、三機のジェガンは民間人を守りもせず、自分たちだけトンネルを通ってこの街から逃げ出した。
民間人を置いて逃げ出したジェガンを追跡せず、VF-31Jのパイロットはキャノピーを開け、自分の目で周囲を確認し始める。それから出入り口より、ガウォーク形態のVF-25メサイア三機が入ってくる。同じくキャノピーを開けており、先頭のVF-25Sにはあの仮面を着けたパイロットが乗っている。
「奴らめ、ジークフリートを見るだけで逃げて行ったぞ」
「追います?」
VF-31Jを見るだけで逃げた三機のジェガンを気にして口にした仮面に、VF-31Jのコックピットの中でチョコスティックを食す少女のパイロットが、追わないのかと問う。
だが、彼らには逃げた臆病者を追う時間も暇も無い。
「放っておけ、それより我々には優先すべき任務がある。敵わぬと知りながらも民間人を守るために戦わない連中の相手をしている暇は無い」
少女にそう告げると、後続の歩兵部隊に民間人の保護と避難所に逃げた連邦兵の拘束を命じる。
「歩兵部隊は先に突入し、民間人の保護と逃げている連邦兵を拘束しろ! 我々はここを確保する!」
「イエッサー!」
L85A2ブルパップライフルを持つ士官に命じれば、仮面は出入り口を確保した。ここに居ても出番が無いのか、VF-31Jのパイロットはキャノピーを閉め、機体と共に自分を必要とする部隊の元へ飛び去って行った。
先の逃げ出した三機のジェガンのことは知らず、マリとハーケンらは脱出用の列車があるホーム近くまで来ていたが、出入り口に群がる人々が道を塞いだため、ハーケンは手近な男に問う。
「人だかりが凄いな。へい、ミスター。ここを通り過ぎてったソルジャーは、列車はもう行ったとか言ってたが、あるように見えるが?」
問われた男は、向こう側で起こっている騒ぎの要因を、聞いて来た奇妙な格好の男に語った。
「クソッタレのキズラーの悪徳警官共と、サイキックハンターの連中が脱出用列車を占領してるんだ。連邦軍の負傷兵や兵隊共も追っ払ってるぜ」
「…マジの悪徳ポリスチーフだな」
「警官とは思えん行動だ。市民や負傷者を締め出すなど」
キズラーとサイキックハンター達が脱出用の列車を占拠していると分かれば、ハーケンは呆れ、ゼンガーは警官にあるまじき行動をする警察署長に怒りを覚える。
この問題を解決して、プローディネンス博士が避難している発掘現場のラボまで向かうには、キズラーの前に自分を出すしかないと思ったシディーは、ここは自らあの警察署長の前に出ると告げる。
「きっと、私を捕まえるまで列車から出そうも無さそうね。ここは私が行くしかなさそうね」
「あの変態野郎のとこに行くのか?」
あの男の所まで行くと言ったシディーに、ヴァンはまた誘拐されに行くのかと問う。
「えぇ、行ってガツンと言ってやるわ。それに私が行かなきゃあいつはここが戦場になるまで占拠し続けるわ」
「ほぅ、随分と強気な事を言う。随分と肝の据わっているようだな。俺も同行しよう、市民を守る警官とは思えぬこの行動、許すわけにはいかん」
違うとヴァンにシディーが答えれば、その勇気に感化されたのか、それともキズラーに一言いいたいのか、ゼンガーもついていくと言った。
「じゃあ、みんなで悪徳署長に文句を言いに行くか」
「えぇ、街のみんなに私達が代わって言いに行かないとね!」
「ついでに顔面にパンチとキックすっぜよ」
そうと決まれば、ハーケンが仕切り、シディーが賛同すれば、最後にアシェンが殴り付けることも忘れずに言えば、一同は人を掻き分けてキズラーとサイキックハンター達が占領している列車まで向かう。
群衆の中には連邦軍の将兵達が混ざっており、その殆どが先に逃げ出した指揮官たちに置き去りにされた者と負傷兵たちだ。最終列車を占拠するキズラーとサイキックハンター達に対し、群衆と共に非難している。
列車の守備には数名の警官とハンター達の他に、スコープドックや、連邦軍の最強の兵科である機動歩兵が四人ほど着いていた。機動歩兵はスパルタンのミニュルアーマーとは違って余り小回りが利きそうにないが、戦闘力はスパルタンより少々上回っており、スパルタンよりも危険とも言える。
「俺たちを先に乗せてくれんじゃないのか!?」
「ふざけんじゃねぇぞ!」
「失礼、失礼、通るよ」
「おい、何すんだ!?」
そう怒りを露わにする群衆たちを掻き分けつつ、シディーたちは最終列車を占拠するキズラーたちの元へ向かう。人だかりを掻き分けながら進むシディーを発見した武装警官の一人は、上司であるキズラーに報告する。
「ん、署長! 例の少女です!」
「来たか。よし、その子だけを通せ。ハンター共にも協力させろ」
「はっ!」
キズラーがサイキックハンター達にも協力するように武装警官に言えば、彼らは言われた通りに、シディーだけを誘導しようと、手にしている銃を群衆や負傷兵たちに向けて怒鳴り付ける。
「そこの少女を前に出せ!」
ハンターは群衆や負傷兵たちに向け、高圧的な態度でシディーだけを前に出すように命じたが、これが彼らの怒りを焚き付けてしまったようだ。怒りに燃える群衆と連邦兵たちは、一気に武装警官やサイキックハンター達に襲い掛かる。
「ふざけんな!」
「てめぇらが降りろ!!」
怒りに燃える群衆が列車へ殺到すれば、それに合わせてか、ワルキューレの部隊が出入り口を死守する連邦軍部隊に攻撃を仕掛ける。
「出入り口からワイルドキャットの部隊が!」
「これ以上は群衆を抑えられません!!」
「駄目です! 発車しましょう!!」
群衆と敵部隊の侵入に対し、部下たちはキズラーや隊長に指示を請う。これに安全圏とも言える列車の中に居るキズラーは、ハンター達の隊長にどのような対処が効果的なのかを問えば、彼は冷酷な指示を出す。
「これはどう対処して良いですかな?」
「射殺だ、列車に近付く者全て射殺しろ。我が軍の兵も含めてだ。それから守備隊には死守命令を出せ」
「だ、そうだ。直ぐに伝えろ」
この冷酷な指示に、キズラーが直ぐに実行しろと命じれば、部下たちは友軍の兵士が混じっている群衆に向けて手にしている銃を撃とうとした。だが、その銃弾は群衆を掻き分けて来たハーケンやアシェンに、手にしている銃を弾かれる。
「な、なんだ!?」
「フン!」
「ぐぁ!?」
何が起こったのか理解できず、混乱した警官やハンター達に、ヴァンとゼンガーは一気に群衆から抜け出して、各々の得物で銃を撃とうとする者達を瞬く間に制圧する。
「な、何が起こっている!?」
「わ、分かりません! 突然、変な連中が…!」
この騒ぎは、列車の中に居るキズラーらにも聞こえており、慌てて出て来た彼は、部下に何が起こっているのかを問うた。
彼も何が起こっているのか理解できなかったが、ハーケンらの存在を告げようとした時に、マリに魔法の力で群衆の中へ引っ張られる。
「し、シディー、あ、あいつ等は…!?」
「あんたの言う通りに来たわよ、警察署長。さぁ、列車を市民や負傷している兵隊さんたちに明け渡しなさい」
「ふん、何を今さら。こちらにはまだ、ATと機動歩兵が居る!」
一瞬の内で、ATや機動歩兵以外の部下とハンター達が全滅させられたので、映画や漫画、ゲームでしか見られない光景を現実に見て呆然としている群衆たちの中より出て来たシディーに問えば、彼女は列車を市民や負傷兵たちに明け渡すように告げる。
これにキズラーは、まだ負けを認めず、待機しているATや機動歩兵に武器を撃つ構えを見せさせるよう顎で指示を出す。機動歩兵を見たゼンガーは、厄介な敵を相手に自分等だけでは群衆やシディーたちは守り切れないと判断し、刀を鞘に納める。
「むっ、機動歩兵か…厄介だな」
「連邦軍最強の兵科って奴か。ちっ、これで対等になったつもりか? ファッキンポリスメン」
ゼンガーが重装備なアーマーを着込んだ機動歩兵を見ながら言えば、その存在を知っているハーケンも銃をホルスターに収め、対等になったつもりなのかをキズラーに問う。
この問いにキズラーは勝ち誇った笑を見せながら、自分等が戦力さで勝っていると答え、シディーに自分の列車に乗るように告げる。
「我々が勝っている様に見えるがな。では、シディー。私と共に来てくれるかな?」
「…っ! 最低ね、あんた」
「何とでも言え。それに私は…」
シディーに非難されれば、キズラーはそれに乗らず、あることを喋ろうとした。だが、それはサイキックハンターの隊長に取られる。
「君の母は我々サイキックハンターが殺害した。魔法の類に関わった罪でな」
「おい、そいつはジョークにしちゃ、コールすぎないかい? もうちょっと洒落たジョークを言わなくちゃ、パーティーのスピーチは出来ないぜ」
「そうよ、突然、何を言い出すかと思ったら、私のママを殺した? バカじゃないの?」
ある事とは、シディーの母であるプローディネンス博士を殺したと言う物であったが、シディーとハーケンらは冗談と受け取る。
馬鹿にされたと思ってムキになった隊長は、それが事実であることを告げるため、自分の左腕の上に装着された端末を動かし、プローディネンス博士の遺体が映った映像をシディーらに見せつけた。
「これが証拠だ! この女は発掘現場で発見された遺跡に魔力反応があるにも関わらず、我がサイキックハンターに通報せず、我々に黙って無断で調査を行った! 我々は一度遺跡の調査の停止命令を出し、その後に遺跡を爆破するように忠告したが、あの女はそれを無視し、調査を続行した! これに我々は規定に則り、魔力に取り付かれた者と断定して処分を下した! ただし、消火装置による窒息死であるがな。だが、言い様だ!」
「そう、つい先刻な。私が止めろと言ったんだが、法律は守らねばな」
「ま、ママ…? うそでしょ…そんな…!?」
ラボの消火装置が撒き散らされた消火剤で窒息死した母親の遺体を、映像越しに見たシディーは、何が起こったのかを信じられず、両膝を着いた。
それを得意げに、キズラーは止めたが法律には逆らえないと告げる。これにハーケンは、アシェンにあの映像が本物であるかどうかを問う。
「おい、フェイクならフェイクだと言ってくれ…」
「残念ながら、あの映像は本物です。加工された形跡はなく、遺体も彼女本人であります」
「卑劣な…!」
偽の映像であることを信じたかったハーケンであるが、解析したアシェンは、映像を本物であると特定し、更に遺体まで本人であると申し訳ない表情で告げた。
それを聞いて、ゼンガーは刀の鞘を強く握ったが、周りに居る機動歩兵の所為か、下手に動けない。もし動けば、この場に居る全員が、殺されてしまうだろう。
「てめぇ! なんで嬢ちゃんの母ちゃんを巻き込んだ!? 俺たちと関係ないだろうが!!」
「喧しい! この女は我々に黙って調査していたんだ! 法律や規則を守らん者の当然の末路だ!!」
「お前たちみたいな危険な奴らが居るから、俺たち普通の人間の生命が脅かされてるんだよ!」
『そうだ、そうだ! 化け物は死ね!!』
ヴァンもシディーの母を自分たちで勝手に作った法律や規則で殺したハンター達に怒りを隠せず、直ぐに隊長にぶつけたが、自分たちが絶対であると信じる彼らには通じず、逆に反論される。
彼らからしてみれば、ハーケンやヴァン、ゼンガーのような化け物染みた強さを持つ者達は、化け物と同じなのだ。母親の死を現実に受け入れるしか無かったシディーは、泣き崩れ始める。
「そんな、ママ…私は…」
「今の内に涙が枯れるまで泣いておくと良い。だが、列車の中で泣き続けられるのは勘弁願いたいがね」
泣き崩れる少女を見ながら、キズラーは酒瓶を開け、中身をガラスコップに注ぎながら飲む。そんなキズラーに合わせるように、隊長も紙コップを取り出し、同じく中身を注いで飲み始め、遺跡の付近と機密データ保持のためにデータセンターの破壊に向かわせた部隊の状況はどうかを近くの部下に問う。
「で、データの回収はどうなっている? それにデータセンターの破壊はどうした? 流石に遅すぎやしないか?」
「サー、地下まで侵攻してきたワイルドキャットの部隊に阻まれ、多数の犠牲者が出ております。データセンターの部隊も同様であり、どちらとも撤退したいと言っておりますが…」
その報告を聞いた隊長は紙コップを投げ捨て、部下の胸倉を掴みながら怒鳴り付ける。
「馬鹿者! 遺跡のデータはいいとしても、データセンターには連邦軍の全軍の機密データが幾つか入っているんだぞ!? それが反乱軍共に漏れたらどうするつもりだ! 死んでも破壊するまで戻って来るなと伝えろ!!」
「さ、サー!」
「部下を消耗品のように扱うなど、指揮官失格だな」
部下を消耗品としか思っていない隊長に、ゼンガーは両腕を組みながら一言告げる。これに反応してか、隊長は拳銃をゼンガーに向けながら怒鳴り付ける。
「黙れ! まず貴様から死にたいか!?」
「フン、このゼンガー・ゾンボルト。鉛球程度などでは俺は殺せん」
拳銃を向けながら怒鳴り付ける隊長に対し、ゼンガーは何の動揺もせず、ただ武人として立ち続け、卑劣な行為しか出来ない隊長を睨み付けながら、その程度では死なないと告げる。これにますます怒り、引き金に指を掛けようとした。だが、撃とうとした瞬間に拳銃の隙間から茨が生え始める。マリの魔法だ。
「い、茨…!? うわぁ!?」
茨が生え始めた拳銃を、隊長は慌てて投げ捨て、無線機で待機している狙撃兵や機関銃兵、機動歩兵とAT部隊に攻撃を命じる。
「こ、攻撃だ! 抵抗した奴らを攻撃しろ!!」
「お、お前たちもだ! 奴らを殺せ!!」
それに慌てて合わせたかのように、キズラーもハーケンたちに攻撃を命じた。頼りの狙撃兵と機関銃手は茨に呑まれ、AT部隊はハーケンのカード爆弾、機動歩兵はシディーがエイジャに命じたのか、火器管制システムと歩行制御装置をハッキングさせて停止させた。
「ど、どうした!? 何故動かん!?」
「歩行制御装置と、火器管制システムが動きません!!」
「なにぃ!? このままではやられてしまう!」
「おのれ、シディー! 早くハッキングを解け!!」
この場で唯一ハーケンらと対等に戦えそうな機動歩兵が使えなくなってしまったのを聞いて、キズラーと隊長の顔が青ざめ、直ぐにシディーにエイジャのハッキングを止めさせるように怒鳴ったが、母親を殺した者達の指図を彼女が聞くはずが無かった。
「シンデレラ、派手に暴れて良いぜ!」
「了解。コード、ファンタズム・フェニックス発動!」
その間に、武装警官やハンター達は、ハーケンたちに一掃されていく。
ハーケンが必殺技の解放を許可すれば、アシェンはそれに応じてそれを発動し、周囲に居た武装警官やハンター達を一掃し始めた。数名を殴りや蹴りで無力化した後、コードDTDを発動して、更に数名を纏めて倒し続け、ハッキングの影響を受けないATの元へ向かう。
「ワァァァ!!」
「あぁ、なんか怠いな~! これで、フィニュッシュ!」
パイロットが乗り捨てたスコープドックに向け、アシェンは早く終わらせるためか、近接用爆発技であるグラス・ヒールを食らわせて破壊した。ヴァンもかなりの数の敵を倒しており、更にATにまで生身で破壊しようと、蛮刀を突き刺そうと、ATに飛びつく。攻撃を躱しつつ、ATに張り付けば、蛮刀を突き刺して無力化する。
「クソッ、これでも…!」
ロケットランチャーを持つハンターは、周りが次々とやられ、後は自分だけになるのではと思い、ゼンガーに向けて手にしている対物火器を撃とうとしたが、ハーケンが持つリボルバー、「ロングトゥーム・スペシャル」を撃ち込まれる。
「ど、どうして起動しない!? うわっ!?」
「おら、出ろ!」
戦っているのはハーケンたちだけでは無い。市民や負傷兵たちも彼らに協力し、共に戦っているのだ。彼らは機動歩兵のアーマーの中に居る操縦者を、ハッチを開けて叩き出す。
近くの警官やハンターらにも襲い掛かり、キズラーや隊長の恐怖を仰ぐ。更にはエイジャが列車のドアを全て開いたのか、列車の中にも群衆が雪崩れ込む。残りのAT部隊や機動歩兵部隊は、全てマリの魔法でやられるか、ハーケンたちや群衆に潰された。
「だ、駄目だ…ここにも奴らが…!」
「わ、我々だけでも…!」
そう自分等だけで逃げようとするキズラー達であったが、その前に怒りに燃えるゼンガーが立ちはだかる。
「この悪を断つ剣、ゼンガー・ゾンボルトが、シディーに代わり、彼女の母の仇討ちを取る為、貴様らを斬る!」
「ふ、ふざけやがって! 正義の味方気取りか!? 死ねぇ!!」
「冥府への案内つかまつる!」
立ちはだかったゼンガーに対し、隊長は中半怒りながらも右腕のガントレットにある隠し剣を出して斬り掛かったが、最強とも言える剣士である彼に挑むなど、愚の骨頂であった。一瞬の内に突きを躱され、腹を斬られて息絶える。
「う、うわぁ…!?」
隊長が斬り殺されたのを見て、キズラーは尻餅をついて後退さる。ズボンの股間の辺りは、失禁でもしているのか、濡れ始めていた。
これを見ていた部下がゼンガーに向けて一発の銃弾を放ったが、彼が持つ刀が再び霊式斬艦刀となり、一振りするだけで銃弾が砕け散り、放った本人も風圧に斬られたかのように、血を吹き出して列車から落ちる。
「ま、待て…! 金なら幾らでも出そう! わ、わしは様々なコネを持っている! お前を連邦軍の将軍だって出来るんだぞ!?」
必死に自分のコネが凄いと命乞いをするキズラーであったが、これが逆にゼンガーを怒らせてしまったようだ。
「自らの信じる物以外を信じず、それ以外を異端と見る貴様らに、掛ける情けは無い! この霊式斬艦刀で、貴様が今までその欲望で死んでいった者達に、詫びると良い!!」
「ひぇぇぇ!?」
目前の巨悪に怒りを燃やすゼンガーは、手にしている霊式斬艦刀に更なる力を込めた。すると、この刀を斬艦刀へと作り上げた霊力を操る巫女と同等の力が伝わって来た。
「(この力、
そうプローディネンス博士が調査していた地下遺跡が、霊力に関する物であった事が分かれば、その巨大な刀身を振り下ろした。
「チェストォォォォ!!」
掛け声を上げながら霊力がこもった巨大な刀身を、掛け声を上げながら振り下ろせば、キズラーは左右に両断され、霊力によってその肉体は消滅した。
この街の警察署長でありながら、汚職に塗れ、更に自らの欲望で数多くの人間を苦しめたか、殺して来たキズラーを斬ったゼンガーは、彼を斬り殺した霊式斬艦刀を肩に担ぎ、決め台詞を吐いた。
「我が名はゼンガー・ゾンボルト、悪を断剣なり!」
彼がその言葉を放った頃には、ホーム内における戦闘は終わっていた。勝敗はもちろん、シディーが出会った変わった友達であるマリとハーケンたちであった。