飛んで火に入るインデッハの火葬式   作:つヴぁるnet

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第10話

帝国歴1180年

 

 

「才能の塊と言うべきかな、お前みたいなやつを主人公って言うんだろうな」

 

 

「?」

 

 

「なに、こっちの話さ。 ほら、右足の軸ズレている」

 

 

 

灰色の悪魔を掴み、足払いを掛けながらふさふさの草原に投げつける。 地面に投げつけられた事で若草が月明かりに舞い、そこで一戦が終了した。

 

 

 

「強いね、ユーク先生」

 

 

「だから先生はやめろ、ベレス」

 

 

 

ガルグ=マク大修道院から出て一週間が経過した。 フォドラの春風を感じながら数日間、ゆっくり南へ進行していると出くわしたのはなんとジェラルト傭兵団だった。 昔と変わりないジェラルト本人は直ぐに分かったが、あれから成長したベレスも一目でわかった。 何せシベリアンハスキーの尻尾が似合いそうな姿をしていたから。

 

さて、そんなジェラルト傭兵団はお世話になっているルミール村を襲おうとしてる賊と戦闘中だった。 俺は横槍ではなく、横投げナイフで賊頭のアキレス腱を切って地面に沈黙させる。 突然の横槍に驚きながらもベレスが首を落として事は終えた。

 

そして、投げナイフの正体を知ったベレスは数年ぶりに出会う俺に対してシベリアンハスキーの尻尾をブンブン振るいながら久しい再開を果たした。

 

 

そしてさらに!

驚いた事がある。

 

ジェラルト傭兵団の中に知る顔がいた。

 

それは演劇団のメンバーだった。

 

主に弓を使った演劇を行うメンバーだったが、噂通りに旅団の解散後はフォドラをしばらく放浪していた。 しばらくして出会ったのがジェラルト傭兵だったらしく、当時の武芸を活かして今は傭兵をやってるらしい。

 

それから他の者たちも聞いたが団長や両親を含めてその消息は取れない。 しかしまた集われて復活した噂も出ているが、その名を使った偽物の可能性もあるようだ。 ジェラルト傭兵団もまた後に帝都まで向かうようだから、その時に確かめるとか。

 

そんな俺も帝都に向かう予定ではある。

 

 

そう言う訳だから… …お世話になりまーす! って感じにジェラルト傭兵団に付き添うことにした。 ジェラルトも知っているが、お世話係ゆえに旅のサポートは慣れてる一家の長男な訳だから加入はすんなり行えた。 同行は帝都までであるが懐かしの顔からも歓迎されて、なによりも料理が楽しみにされた。 俺の母は料理上手だったからとても期待されてる。 材料と器具さえあればポテチを振る舞おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ジェラルト傭兵団に加入してからニ週間が経過した。 俺はその間にジェラルト傭兵団で昼と夜の料理担当になり、あと細かな雑用くらい。 そこそこ暇は出来る。 その度にユーク先生とからかってくる生意気なベレスを格闘でわからせる……じゃなくて、格闘を教えながらの生活を送っていた。 昔も旅団にいた頃は時々格闘を教えていたがそれほど時間も取れなかった訳もあり、今は時間は沢山あるので貪欲に学ぼうとしていた。 なので隙あらば講習を受けようと訪ねてくる。 当時よりも時間は多いが、あの頃よりも彼女の身体つきはぷにぷにどころかむちむちした身体つきにエロティックな魅惑のストッキングを履いてた訳だからやや長めの講習は些かやり辛かったのが素直な話。 だってマジで美人さんになった訳だからこっちも変に気を使ってしまう。 あと傭兵故に逞しさも備えてるから女性にもモテるだろうと想定した。 間違いない。

 

そんな感じにそこそこ大変ながらも楽しい時間を過ごしてる中、ジェラルト傭兵団はルミール村から動く予定を立てた。 向かう先は帝都アンヴァルであり、明日か明後日には動くと言われていた。

 

そしてこの頃、一つここでベレスから変な話を聞いた。

 

 

 

「え? 体の中に何かいる? 少女の夢?」

 

 

「ベレスの体の中ぁ? おいユークリッド? もしやお前さんは俺の娘に手を出したとか言わねぇよな?」

 

「手は出されてるけど」

 

「…なんだと?」

 

 

「いや、ベレスのそれは格闘戦的な意味だろ? ジェラルトの言うような事は一つもやってねーぞ。 別に彼女に魅力がないとかそんな意味は無いがとりあえず俺はそんなことしてない、断じて」

 

 

「そうかい」

 

「ちなみに足も出た」

 

 

「ストッキング的な意味で足出してんのはお前の方だろうが、とりあえずベレスは一旦口チャックな? それで同じ夢が何度も起こって、それで何度も見たことある少女が出てくるとしたら、何か霊的な者がベレスに宿ってるとかそんな感じじゃないか?」

 

 

「霊的な何か…か…」

 

「……………まだ、喋っちゃだめ?」

 

 

「おすわりして待てだ、ベレス」

 

 

 

やや無垢なシベレスリアンハスキーの彼女だが、嘘を言うような子ではない事は確かだ。 冗談自体もたまには言うが身内を本気で心配させるような事は言わない。

 

そんな訳だから夢の中云々は俺も心配になってきた。

 

なんせ数週間前までガルグ=マク大修道院にいた身だ。 霊的なモノに関しては理解もあり、嘘偽りない彼女の言葉は厄介だった。 もしや神様とか、聖霊様とか、そんな感じの類なんだろうかとそちらに思考が向いてしまう。

 

しかしここはそう言う世界(FE)だからオカルトチックも強ちあり得ないことは無いため、俺は大きな何かが彼女の中で起きるのでは?と、余計な考察をしていると…

 

 

外が騒がしい。

 

 

そして一人の傭兵がやってきてジェラルトに報告する。

 

 

どうやら賊がやってきたようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お主、お主、お主! 小童のために身に投げ出すなど儂ごと殺す気か!」

 

 

「?」

 

 

 

 

あ、ありのままに起こったことを話すぜ?

 

ベレスが身を呈して少女を守ったと思ったら不思議空間の中で怒られていた…

 

何を言ってるかわからないと思うが俺も何が起きてるのかわからねぇ。

 

唐突な展開に頭がどうにかなりそうだ…

 

ファンタジー故に起きた不思議(当たり前)かも知れないが頭が追いつかねぇ…

 

死の片鱗を味わったぜ…

 

 

 

いや、死の片鱗を味わいそうになったのはベレス本人なんだけどね。 さて、ベレスとのじゃロリが漫才してる間に状況整理をしよう。

 

ええと、いま俺は恐らくベレスの精神的空間にいる…かも知れない。 ファンタジーなら良くあるパターンだろう。 しかしそうなったのはベレスが助けを乞いた少女を、賊の斧から守ろうとした時に世界がガラリと何かが変わった。

 

殺されそうなったベレスに叫んだ俺の声はその場で止まり、視界には目の色悪そうな世界がドバッと広がった。

 

そして、真っ暗になり、吸い込まれた。

 

 

ここまでは良い。

 

全部理解できないけど、少しは理解できる。

 

 

それで……

 

目の前にいるのじゃロリはなんだ?

 

 

 

 

「てかお主も何者じゃ!? 何してここに来られたと言うのか!?」

 

 

「知らん。 ところでベレス、この、のじゃロリと知り合い?」

 

「うん」

 

 

「知り合いも何も、儂はそこの小童を昔から存じてる」

 

 

「年単位のストーカかよ、怖っ」

 

 

「ストーカの意味は分からぬがなんだかコケにされた気分じゃな。 こほん、それでお主はどうやってここに来たのじゃ?」

 

 

「それは俺が聞きたい。 なんかブワッと世界が止まって、吸い込まれて、気づいたら一緒に説教食らってるし。 わけわからんのは俺も同じだぞ」

 

 

「ふむ…しかし、おかしい事じゃな。 儂の力に"干渉"し、天刻たる時のよすがに従えるのはこの子娘にだけじゃが? お主にもその権利があるとでも言うのか?」

 

「いや、俺に聞かれてもな…」

 

 

 

しかしのじゃロリの耳長いな。

 

人間では無いとなると、エルフとか?

 

いや、FEにエルフなんてのは出ないな。

 

そうなると………龍族??

 

 

 

「ま、今はこんな異物はどうでもいいのじ! ……っ、それよりもお主! この後どうするつもりじゃ! 時が動けば背中に斧を受けて我も共々終わりじゃぞ!」

 

「なら時間を止めたまま動けない?」

 

「無理じゃな! そんな摩訶不思議なこと出来んわい!」

 

 

 

いや、時間を止めてる時点で摩訶不思議超えてんですがそれは。

 

 

 

「なら…時間を戻してやり直しできない?」

 

「!! なるほど…」

 

 

 

どうやら可能なようで、のじゃロリは魔法陣的な何かを展開して時を戻そうとした。 たしかに空間が動いてるように感じられ、戻るような気がした。

 

そして視界が徐々に暗くなる……が、完全には真っ暗にならず、のじゃロリだけの姿が見えていた。

 

 

 

「さて、まだ儂とお主の対話は終わらぬ。 もう一度問おう。 お主は何者じゃ?」

 

 

「俺が異物ならば、幽霊とか、邪神とか、その辺りじゃないのかな?」

 

 

「からかうではない。 儂はお主が人間であることを理解しておる。 その上この天刻を認知して意識を持つなどおかしな話じゃ。 ……それで? 何か隠しては無いのか? 例えば過去にこのような現状に似た何かに関わっておろう。 そうでもなければ儂と対面するなど望めぬと言うのに」

 

 

「時のよすが、か……まぁ、あるとすれば、俺は前世を持ってるとか、そんな感じかな?」

 

 

「なぬ?」

 

 

「ベレスに内緒にするなら詳しく教えるけど」

 

 

「良かろう。 始まりの者として、誓おう」

 

 

 

え?

 

始まりの者?

 

それって女神ソティスの事だよな?

 

始まりの者に関しては書庫でも目を通したことあるし、レアさんが狂信と言ってもいいレベルで語っていたのも覚えている。

 

 

だとしたら目の前にいるのは……マジか。

 

ベレスの脳内友達は始まりの女神だった訳だな。

 

 

 

 

「質問に答える。 まず俺は転生者だ。 前世を持ち、そしてこの世界に新たな時間と人生を得た人間。 このフォドラに流れる時のよすがに招かれたんだろう」

 

 

「なるほど、転生の過程で時間を飛んできたわけじゃな。 聞くだけだと嘘くさく感じるが、こうなってる以上その言葉は証拠になろう。 しかし、お主は時のよすがに従わず、むしろ力強く逆らっておる。 いや、正しくは受け付けないと言ったか?」

 

 

「そうなのか? 実際のところ自分でも良くわかってないんだが」

 

 

「だが世界が止まったとその理には逆らえぬ。 お主も肉体が止まっておろう? お主の肉体はフォドラから受けた賜物。 じゃがお主の精神は前世から持ち込んだモノじゃ。 その精神はフォドラに流れる時の縁と並走するだけで別の枠で生きてるのかもしれん。 それ故に時間の制動の有無を認知するのじゃろう」

 

 

うーん、話が難しいな。

 

理解はできるけど表現が難しい。

 

でも俺は転生者と言うステータスがあるから天刻の影響が半分程度で済んでるのか。

 

でもこれ、転生者によってはザ・ワールド(天刻)の中を動けんじゃねーのか? 魂がとか言うけど、肉体もフォドラの世界から受けた代物じゃ無い何かになれば天刻を受け付けないんだろ?

 

だとしたらちょうど投げナイフ持ってるし、どこぞの人間やめた吸血鬼か紅い屋敷のメイド長の真似事できるぞ。

 

 

しかし…

 

本当に転生者ってことが理由なのか?

 

 

 

「やれやれ、今回は儂と小娘の対話の中にすら招かれてしまったりと、転生者と言うのはとても危険じゃな…」

 

 

「いや、俺は知らずして招かれただけだからな? 危険だとか勝手に認定されても不可抗力なんですがそれは…」

 

 

「ともかく、お主も戻るのじゃ! ほら! 行った行った!」

 

 

 

のじゃロリにシッシと追い払われると視界は真っ暗闇の中。

 

だが、それも一瞬だけで…

 

 

 

「あ、戻った。 おっと? ベレスは敵大将を打ち払ったか。 なるほど、迫りくる出来事に対してやり直したか」

 

 

 

そして賊の頭は敗走。 下手に追いかける意味も無いので放っておいたらセイロス騎士団が現れ、賊を追いかけ始めた。

 

 

 

「あれ? てか、あんたアロイス?」

 

「ぬおっ!? これはユークリッド殿ではないか! いやはや、数週間前のユークリッド殿のお見送りは出来ずに申し訳ないと思ってたのだが、ここで出会えるとは! はっはっは! 世間は狭いですなぁ!ジェラルト殿!」

 

「はぁ…やかましくなる」

 

「三人とも、大丈夫?」

 

「ええ、先程はありがとう」

 

「ああ、問題ない。 恩にきる」

 

「いやー、怖い怖い肝試しだったぜ」

 

 

 

 

どうやら無事に騒がしい夜は終え、いつのまにか朝日が昇っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学級の子供達が賊に襲われていた騒動から早くも1ヶ月が経過していた。 まずジェラルト傭兵団がガルグ=マク大修道院に向かうことが決まった。 その中で元旅団の仲間もジェラルト傭兵団に付いていくことを決め、ガルグ=マク大修道院に同行していった。 ある意味これは好都合であり、ガルグ=マク大修道院は旅団を再集結させる良い目印となったので好きにさせた。 もちろん俺がこの先に連れて行くのもアリだが、帝国領の内政を知らない今、あまり大人数で行動するのは好ましくない。

 

そんなわけで俺一人で向かうことを決めた。

 

皆に別れを告げると、寂しさを表したシベレスリアンハスキーの尻尾が垂れ落ちる幻影になれながらも、また「何処かで会おう」彼女に約束を告げる。

 

少し元気になってくれた。

 

それからフォドラの大地潤す雨水を啜りながら旅を続け、途中村の困り事を助け、ささやかな報酬をもらいながら旅をしてミルディン大橋に到達。 適当な荷台に忍び込み、アポ無しで大橋の通過した。

 

それから近場の街に入り、情報収集。

 

しかし旅団の足取りは取れず、数年前に解散した以来足跡が掴めてないでいた。 もう話題にもならないくらい寂れたんだろう。 寂しい限りだ。 数年前はあんなにも人気で、どこの街でも有名で、色んな客が足を運んできてくれたのに。 賑やかだったあの日はもう話題にならず、過去の栄光だけが俺の記憶に刻んでいた。

 

 

 

「………ヴァーリ伯、暗殺しようかな」

 

 

 

今になってドス黒い感情が出てくる。

 

でも優先順位を履き違えるな…

 

そうやって感情の処理を済ませると俺はとある場所に目が入る。 それは傭兵ギルドだ。 主に街から街への護衛を受ける仕事が多く、そこらの賊に負けない腕前を必要としているため金回りは悪くない。

 

登録金、また契約金は高いが、仕事をこなせばこなすほど仕事を得やすいからメリットはでかい。 代償は命一つだけであり、信頼=仕事の定義はどの時代も変わらないことを知らせていた。

 

 

 

「まぁ、ギルドに登録するつもりはさらさらないけど」

 

 

 

お金はガルグ=マク修道院のお世話係として沢山稼いだので懐は温い。 改めて稼ぐ必要性は薄かった。

 

 

 

「とりあえず通りすがりに懐からくすねるお前は関心できないのでCQCな」

 

 

「ふぁ!?」

 

 

 

地面に叩きつけて奪い返す。

 

このご時世、盗みは珍しくない。

 

むしろ盗んで生活を賄う人間が15%以上。

 

セイロスの信仰心では人を救えない現実だ。

 

 

 

「いやいや、相変わらず流石の腕前だねぇ、君」

 

 

「?」

 

 

 

盗人を空っぽの樽の中に打ち込むと、後ろから声がかかる。

 

それは聞き慣れた声だった。

 

 

 

 

「もしやアケロン?」

 

 

「お久しぶりだねぇユークリッドちゃん」

 

 

「あんた確か同盟領の者だよな? なんで帝国にいるんだ?」

 

 

「人脈ってのは広げておくもんだよね。 悔しいけど僕ちんは小領だから長い物に巻かれる努力はしないと生き残れないし?」

 

 

「なるほど、賢い」

 

 

「だるるぉぉ?」

 

 

 

うざい。 喋りも相まってうざい。 けれど生きる術を日々模索して、領地の繁栄を望むアケロンはたしかに貴族である。 でもうざい。 だがコネを作るのは大事なのでそこらの貴族よりはたしかに行動力が高い。 しかしうざい。 でもあまり嫌いにはなれない人なのは俺も知っているし、こう見て知人には良い奴。 けれどうざい。 そしてガルグ=マクでも手入れを欠かさないその髪型はいつ見てもすごい。 なかなかうざい。

 

 

 

「しかしユークリッドも帝国まで何用だい?」

 

 

「数年前の仲間を探しに来た。 前に旅団の事を話しただろ?」

 

 

「ああ、昨年の舞踏会の時に話してたね。 僕ちゃん記憶力いいから覚えてるよ。 しかし君は数年前の出来事を求めて来たということかい? 観光地なら季節が流れても動かないが、人は動いてしまうからその足では難しいんじゃないの?」

 

 

「あてがないからとりあえずここを目指した感じだよ」

 

 

「ふーん? それならこれから僕ちゃん同盟に戻るけど、付いてくるかい?」

 

 

「え?」

 

 

「学生生活中はお世話になったからね、細やかな恩返しとして誘うけど? もちろん馬車での移動だから快適よぉん?」

 

 

 

 

 

 

おっとこれは、どうしようか?

 

せっかく帝国領まで来たが…

 

なるほど同盟諸国か。

 

 

 

 

 

 

つづく




《転生者 と 天刻》
作者のゴリ押した独自解釈。 生きてきた時間枠が違う事が理由で天刻の認知が可能と解釈。 あとベレスと一緒にソティスが住う空間に飲み込まれたのはノリです。 深くは考えてない


ではまた
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