飛んで火に入るインデッハの火葬式   作:つヴぁるnet

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第14話

帝国歴1180年

 

 

 

フォドラの大地を蒼色に落ち着かせる夜空の下で出会えたのはベルナデッタ。 俺は前世を含め、これまでの人生の中でおそらく一番と言える感動の再開を果たした。

 

もちろん旅団の仲間と出会えた喜びもそれぞれ大きいが、彼女と久しい再開はまた違う喜びがあり、それは想像よりも大きく情動的だった。 何せ今まで出会った人間の中であそこまで気にかけ、そして命張った相手は彼女が初めてである。 だから特別な思いがあり、ただ会いたいだけの感情では収まらない。

 

後悔と共に数年抱え続けた想いは、彼女を強く強く抱きしめる事で理解する。

 

 

ああ、彼女は俺の中でこんなにも特別だったのか。

 

 

フォドラの暁風はイタズラ好き。 まるで俺の人生を笑うかのように彼女とこのタイミングで合わせた。 呆れる程に気まぐれなフォドラの夜風を浴びながら、胸の中でこちらの名前を呼んで泣きつく彼女の声。 砦を覆い尽くす美しい月明かりの下で嬉し涙を流して「ありがとう」と繰り返す。

 

 

やっと、尊き友…

 

いや、友達以上の存在に出会えた。

 

 

だから、もう離すまいと、強く、強く、強く、彼女の体を抱きしめる。

 

 

 

さて、心が落ち着いた頃、ふと冷静になる。

 

同じタイミングだったのか互いに視線を合い、しばらく静止する。

 

 

 

そして、理解する。

 

 

いまこの状態を。

 

 

 

 

「………」

 

 

「………」

 

 

 

 

 

抱きしめている。

 

または抱きしめられている。

 

 

それだけを理解して自然と頬が熱く染まり始める。

 

 

 

「ぁ、ぁぅ、ゆ、ゆぅぅ、く、さ、ま…」

 

 

「っ!! ああ、す、すまん! だ、抱き心地良かったからつい!」

 

 

 

 

 

いや、俺は一体何を言ってんだ?

 

 

 

 

 

「あー! そ、そうじゃなくて! ええと…その、悪い、強く抱き…いや、その、い、痛かったか?」

 

 

「ふぇ? い、いえ…だ、大丈夫ですよ、ベルは」

 

 

「そ、そうか、良かった」

 

 

 

いや、何が良かったのか分からないがとりあえず俺はベルナデッタを解放して、互いに話しやすい位置に離れる。 やや彼女を見下ろすような身長差だが昔出会った頃と変わりない。 彼女も背は伸びたが、俺も同じように伸びたのだ。 だから成長した彼女をマジマジと見つめて時の流れを再確認する。

 

するとベルナデッタは…

 

 

 

「その、本当にご無事で良かったです…」

 

 

「え? ああ、そういうことか。 まぁ、結構大変だったけど、人間どうにかなるもんだな」

 

 

「っ……やはり、やはり、ベルが! ベルがユーク様を!!」

 

 

「いや、待て、そうじゃない。 ベルナデッタ、君は悪くない。 悪いのはヴァーリ伯で君は関係無い。 なんなら俺が悪い」

 

 

「なぜです!?」

 

 

「俺がヴァーリ伯の対談で挑発したんだ。 そしたら武力的な報復を受けた訳で、俺自身悪いところもある。 けどあんな奴に使われたいとは微塵とも思わなかったからさ、言葉突き立てて突っぱねたんだ。 その結果がコレ」

 

 

「でも、あなたが! あなたの仲間が散り散りになったのは! 紛れもなくベルが平民と仲良くなろうとして!」

 

 

「それは違うな。 俺も貴族が平民と仲良くなるのは難しいことを知っていた。 特に貴族主義の激しい帝国ならばそれは普通だ。 それでも理解して俺はベルナデッタと仲良くなりたかったんだよ。 そうじゃなきゃ、あの演劇の裏方に連れても行かなかった。 ポテチを振舞わなかった。 コンパスを渡さなかった。 ベルナデッタの事を友達と言わなかった。 俺は覚悟を持った君と接した。 だからこんな事になったとしても、俺はベルナデッタと会えて良かったと思わない日は無いんだよ!」

 

 

「!!」

 

 

 

負い目を持つ彼女は俺から後ずさりそうだったから、両肩を掴み逃がさないようにして、伝える一言一言を取りこぼさせ無いよう自分の意思を浴びせる。

 

本当に、そこに後悔なんて無かったと。

 

 

 

「俺は、たしかに…あの出来事に対して怒りを捨てた事なんてない。 理不尽を恨まなかったこともない。 不自由を苦しまなかったこともない。 けど、ベルナデッタに抱える感情は負ではない。 むしろ、あれよりも酷くなる前に君は父の目を盗んでまで屋敷を飛び出して俺たちに危険を知らせた。 だとしたら君は恩人なんだよ? 俺の家族と仲間を守ろうとしていた。 そうでなきゃ、俺は旅をして集わせれなかった」

 

 

「でも、旅団はバラバラに…」

 

 

「ああ、バラバラになった。 でもそれは、また集うために散ったんだ。 そのためには、俺が生きてる必要がある。 そう考えている。 ならばベルナデッタが俺を生かした事で旅団はまた息を吹き替えせる。 君は俺達を救ったんだ」

 

 

「!」

 

 

「ありがとう。 そして、辛かっただろう…? あんな父親の元に、残して…俺は、心配した」

 

 

「っ…」

 

 

「わかるよ。 俺は、多分恐らく、分かる。 あの後、君は見つかったんだよな。 多分、あの父親ならば……君は…」

 

 

「ぅぅ…べるは、だいじょうぶです…なれてますから……だから、ゆーくさまの、いたみにくらべたら…わたしのいたみなんて…いたいなんて…ぁぁ、ぅぅっ、っ、こ、こわかった、ゆーく、さまぁ…すごく、いたかったんだ…」

 

 

「ああ、本当に……」

 

 

「ぅぅ、いたかった……ムチで、わたしを…っ、椅子に、しばって、わたしを…っ、コンパスを、ケリこわして…それで…ッ、それで…! ぅぅ、ゆーくさまぁ、を…ふ、ふぇぇぇえん!!」

 

 

 

ああ、なんでこんなひどい事になるのだ。

 

彼女が何をしたと言うんだ。

 

ひとりの少女をこんな思いにあって良いのか?

 

 

 

 

「ありがとう、ベルナデッタ…」

 

 

「ごめんなさい、ユークリッド…!」

 

 

 

あの頃から溜まった涙はまだ収まらないようだ。 だからこの数年間の痛みを受け止めれるなら、いくらでもその涙で濡らしてくれて構わない。 その量に溺れるほど弱くは無いつもりだから、今こうして居させてほしい。 俺のためにも、俺の代わりに泣いてほしいから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまり、君は極度の引きこもりになってしまったと…?」

 

 

「は、はい……」

 

 

 

あらかた泣き終えた彼女を解放して、互いに話しやすい位置に……って、さっきも同じ流れをやらなかったか? まぁいい。 立ちっぱなしも疲れたので砦の壁を背もたれにして、彼女も隣に座る。 それから色々と話し合い、俺もガルグ=マク大修道院に居た話などを教えた。 ベルナデッタもガルグ=マクで俺の名前と話を聞いてたようだから、生きてる事を確信していた。 でも、士官学校に入学する前の境遇が彼女の心と人格を歪ませていたことで、その名を聞くたびに痛々しく震えていたらしい。 その度にドロテアって女の子に良く慰めてくれたとか。 友達らしき人はいるようなので聞いてて安心した。

 

しかし引っ込み事案で、臆病で、弱っちくて、情けない引き篭もりな自分が嫌で嫌で仕方ないらしい。 しかし「それ、あんまり昔と変わんないんじゃ無い?」と茶化したら「そんなこと無かったですよぉ!」とアワアワしていた。 まぁ、昔に比べて酷いっちゃ酷いけど、もうそれは仕方ないとしか言えない。 そんな家庭に生まれ、そんな親元に生まれて……あかん、やはりアケロンについて行かず帝国領に残ってヴァーリ伯でも殺しておけば良かったか? 今の俺なら夜の屋敷に侵入して暗殺もできそうだ。 ドス黒い感情を潜めつつ、今のベルナデッタを考える。

 

士官学校に無理やり編入させられながらもなんとか生きてきた彼女だが、見ていて危なっかしく感じる。 もちろん昔からどこか危なっかしい雰囲気を抱えていた彼女だけど、それをひそめる感じも無く、余計に引きずっているんだろう。 しかし鷲獅子戦に参加してる辺りそこまで錆びれてる訳でも無いようだ。 なんか安心した。

 

 

 

「ベルナデッタ、そろそろ天幕に戻らなくて……?」

 

 

「すぅ…すぅ…」

 

 

「泣き疲れたのか? こんな外で? 本当に君は引き篭もりかよ…」

 

 

 

ベルナデッタの頬を指で突くと「ぅぅ…」と言うだけで目覚める気配は全くない。 こちらに寄りかかり、彼女の手のひらはこちらの服を握りしめていた。 とてもつよくだ。

 

しかしここでは風邪を引いてしまう。 日中はまだ夏の熱さを引きずる季節では有るが、夜は一気に冷えてしまう。 俺は姿勢を変えてベルナデッタを背負う。

 

 

 

「……これちゃんと食べてんだよな?」

 

 

 

可憐と言うべきか? しかし年相応な軽さよりも軽い感じだろう。 17歳にしてはちょっと食べてなさすぎだ。 ガルグ=マクに戻ったら少し食わせよう。

 

 

 

「さーて、側からみたら俺は子供を連れ去る悪党みたいなもんだ。 セイロス兵に見つからずベルナデッタを黒鷲の学級まで送り届けれるかな?」

 

 

 

 

 

こちらユークリッド。

 

スニーキングミッションを開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、お届けモノです」

 

「すぅ…すぅ…」

 

 

「ベ、ベルちゃん…」

 

 

 

立ち会ってくれたのはドロテアと言う娘だ。 同じ天幕で過ごすベルナデッタが珍しく抜け出していることを察して探そうとして、今出たところらしい。 そこでばったり出会う。 ベルナデッタが大事にしてるコンパスが無くなってたことが決め手となり、どこかでまた『妄想』に浸ってると思ったようだ。

 

 

それより妄想ねぇ。

 

たしかにコンパスの針はヴァーリ伯から蹴り壊されて狂ってしまっている。 それでも本当にギリギリ辛うじて機能してはようで北を指していた。 手作りにしては良く出来ている。 ただやはり軽い衝撃で簡単に定まりがおかしくなるみたいで、あっちこっち動いたり、とある方向に静止したり、しかしちゃんと赤い針が北に戻ったりを繰り返していた。 お陰でベルナデッタにとって居るのかもわからない俺の居場所を示してるかのように針が動くものだから希望を持たせてしまった。 そのためイコール『妄想』としてベルナデッタの心の支えになってしまうが、これを良しとするのかは判断に迷うところである。

 

まぁそれが偶然重なり合う妄想だとしても結果的に出会えたのだから良しとしよう。 それにグロンダーズ平原の砦にて夜空の下で示されるコンパスの針が俺たちを会わせるなんてロマンチックだしなかなかいいじゃないか。

 

いいセンスだ。

 

 

 

「ところであなた、昔どこかで会わなかったかしら?」

 

 

「え? …どうだろう? どこかで会ったか?」

 

 

「そうねー? どこかで出会ったんだけれども思い出せないわ。 良くしてくれた記憶はあるんだけれども」

 

 

「あ、もしくは演劇を観に来た時に出会ったとかそんな感じか?」

 

 

「演劇…? ……あ! そ、そうよ! 思い出したわ! 確かあなたがいた旅団! わたしを裏方に連れてくれた親切なお兄さんじゃない! ねぇ、覚えてないかしら? 私が舞台の熱を知りたくて、そしたらあなたが気を利かせて招いてくれたことを」

 

 

「舞台裏?……ああ、そういえば、そうか。 君は次期歌姫の候補として選ばれた娘か。 思い出したよ。 ドロテアってどこかで聞いたことあるとか思ってたが、そういえば数年前に立ち会ったな。 懐かしい。 てか当時はまだ兄さんと言われる歳でも無かった気がするけど?」

 

 

「あらら? あなたは4歳ほど年上じゃ無かったかしら? おにぃちゃん?」

 

 

「あ、残念ながら旅団の他のご家族のお子さんたちお守りしてた経験あるので、可愛くイタズラっぽくお兄ちゃん呼ばわりしても慣れてるので動じないぞ」

 

 

「ちぇぇ、面白くないひと。 まぁ、良いわ、懐かしくも親切なお兄さんに久方出会えたもの。 しかもそれがベルちゃんの赤い糸なんて世の中は素敵な部分もあるのね」

 

 

「繋げたのは赤い糸じゃなくてコンパスの針なんだけどな」

 

 

「ふーん? でもそういった関係なのは否定しないんだね?」

 

 

「……さぁ、それは…まぁ、そのうち明らかにするさ。 俺自身も…色々あるし」

 

 

「そう? でもお節介にひとつだけ言わせて。 私は私を見てくれる人を探してるわ。 そこに貴族も平民も関係ないとしてるつもりよ。 だからベルナデッタを理解してくれるあなたが、ベルちゃんをベルナデッタとして見てくれるなら、ベルちゃんは本当に幸せと思うわ。 あんな父親よりも見てくれてるあなたなら…ね」

 

 

「ベルナデッタの事情を知ってるんだなドロテアは。 ああ、わかったさ、その言葉覚えとくよ」

 

 

「ふふ、じゃあそこの寝床に寝かせて。 あとはそのお姫様を何とかするから」

 

 

「了解したよ。 そんじゃおやすみドロテア。 やばくない程度に鷲獅子戦を頑張れよ」

 

 

「ええ、おやすみなさい、ユー君」

 

 

「その呼び方、久しぶりに聞いたよ」

 

 

 

 

何気に女性だけが活用する天幕の中に入ってたが、そこから出てその布扉を閉じ、そそくさとこの場所から抜け出す。 香水のほのかな香りが纏うな。 ほんのり甘い。

 

 

しかしベルナデッタの理解者か。

 

俺は理解してる"つもり"の程度だけどドロテアが言うほどの人間かと言うと分からない。

 

ベルナデッタとは今日久しぶりに出会い、これまで起こった現状を話し合った。 彼女は謝りながら。 俺は感謝しながら。 互いに再会を喜んだ。 でも本当にベルナデッタの全てを理解したかと言うならそれは全てではない。 もちろん彼女の味方であることはこれからも変わりないから、ベルナデッタは俺に信頼を寄せれるのなら構わず寄りかかって欲しい。

 

今の俺なら彼女を守ることが出来るから。

 

 

 

「……でも、それがlikeになるかと言うとなんか違うよな」

 

 

 

前世の事も含めて、俺はそう言った事をしっかりと知らない。

 

でも……

 

もし、おれがベルナデッタにそうなのなら…

 

それは恐らく…

 

 

 

「今日は戻って寝よう。 ホルストが心配するだろう」

 

 

 

 

彼女と出会って別の悩みが膨れ上がる。

 

それはほんのりと熱を染める頬と頭。

 

フォドラの涼風では冷えきれない夜を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホルスト、鷲獅子戦が終わったら俺は旅団の仲間を連れてガルグ=マクに向かう。 だから傭兵業はここで終わりだ」

 

 

「ああ、そう言うと思ってた。 それに丁度今週が更新日だからな。 ここで契約を終わらせよう。 ありがとうユークリッド、助かったよ」

 

 

「俺もありがとうホルスト。 楽しかったよ」

 

 

「途中死ぬんじゃないかって思ったけどな。 お前のあの戦いを見てるとな」

 

 

「でも死ななかった。 それだけ俺が強いって事だから、多分これだけ強ければひとりの人間も守れる筈だよな…」

 

 

「…どうした? なんかあったのか?」

 

 

「いや、なんでもない」

 

 

「そうか。 まぁ、ユークリッドみたいな異質ならどうにかなるだろうよ。 お前のことは数年前から理解してる"つもり"だ」

 

 

「! ……そうか、ホルストが言うならそうかもな」

 

 

「なんだなんだ? 今日は随分と考え込むな? お前らしくもない」

 

 

「俺は慎重派だよ、これがデフォルトだっつーの」

 

 

「慎重派が敵の飛竜に乗り込んで攻撃するかよ」

 

 

 

朝食を食べながら今後の歩み方を話し合う。

 

半年働いた傭兵業は終わりを告げ、レアさんから同行の許可を貰い、同盟領で集わせた旅団の仲間をガルグ=マクまで連れて行く。

 

その後をどうするかを決めてはいないが、俺はとりあえず落ち着きたいと思っていた。 本当は早歩きして仲間を集わせるために動かないとならないが、焦ることはできない。 まずはジェラルト傭兵団に参加してる一部の旅団の仲間からこの半年で収集させた情報を得て、今後の方針を決めればいい。

 

どうせあれから数年経過した。

 

もう数ヶ月くらい待ってくれても良いだろう。

 

ガルグ=マク付近、同盟領と生きていた仲間たちが居たんだ。 なら残りの帝国や王国でも強く生きている筈だ。 家族想いが激しい止まらない団長はどこかで無茶してるだろうけど、そう簡単に死なない……と、希望観測な思いだが、生きてることを願うだけ。

 

そして俺の親二人。 父と母は弱くないからそこまで心配さていない。 いや、子供()を産んだことで元ソードマスターの母は少し体が衰えてしまったが、それでも昔の風習なのか腰には常に小さめの倭刀を装備してる。 アクセサリー感覚なんだろうけど、その倭刀を引き抜けばそこらのゴロツキには負けないだろう。 母が戦うところは見たことないが父は今も俺の母は「強い」と言っていた。 母は強し…か。

 

そんな父も元傭兵で伝説だと言われている。 このフォドラで言われるくらいだから相当強かったんだろう。 実際にCQC(接近戦技術)の技術を叩き込んでくれて、俺がそれを元に強くなれたんだから父は強いに決まってる。

 

この二人が死ぬとしたら事故死以外ありえないと思う。 ヴァーリ伯の手で殺される展開もあり得なければ、旅団からは死んだ姿は見てないと言っていた。 生きてる姿も見てないが、俺は信じて探すだけ。

 

残りは【王国領】と【帝国領】だ。

 

 

 

「ところでユークリッド、おまえ鷲獅子戦に出されるとかそんな話聞いたけど本当なのか?」

 

 

「あー、それか。 実はちょっと違うな」

 

 

「?」

 

 

「俺が参加するのは生徒と戦うためじゃなくて、戦う以上のことをしてしまう生徒を止めるために戦わなければならなくなる立場として働くんだ」

 

 

「あー、もしかしてあの役割か?」

 

 

「御察しの通り、今回は『監督兵』として参加することになった」

 

 

「おいおい、資格なしで参加かよ」

 

 

「いや、去年筆記試験は済ませて免除受けてる」

 

 

「マジか、友人のスペック高すぎ問題」

 

 

「お前が言うかホルスト」

 

 

 

これでも強くてニューゲーム的な状態だからスペック差は生まれつき有ると見てるが、ホルストのスペックも大概だと思う。 学科も悪くなかったし、強いし、優しいし、イケメン。 さすが同盟領の大貴族。

 

 

 

「しかし唐突だな」

 

 

「監督兵は知識があっても実力が追いつかないと無理な役柄だ。 それでこの瞬間俺にも白羽の矢が立ったと言うことはそれだけ務まる人間がガルグ=マクに居ないって事だ。 だからレアさんとセテっさんの二人声揃えて、タイミングが良かった!と言ってくれやがりましたとさ」

 

 

「頼られすぎだな、ユークリッド」

 

 

「てか"アイツ"が居ないせいで俺がやることになったんだよな」

 

 

「アイツ?」

 

 

「ホルストは知らないと思うけど、士官学校にイエリッツァって奴がいるんだよ。 去年に武術師範としたセイロスに来た奴でな、俺の配置はあのクソ野郎の代わりだ」

 

 

「お、おう…なんか、嫌なことあったんだな」

 

 

「色々面倒だったんだよ! なんなら血も流したし! はぁ……それはともかくガルグ=マクまで同行させてもらう分、今回の働きで前払いとするつもりでやるさ」

 

 

「いいように使われてんなぁ」

 

 

「もう慣れたよ」

 

 

 

さて、監督兵とは鷲獅子戦で使われる戦場の各エリアに配置され、そして戦う生徒を見守る役割だ。 またそれぞれの学級どれだけ活躍したのかを現地で見て、最後に報告する役割も承る。

 

だが本命は『競技内で戦う以上の事をやってしまう生徒を止める』事が本当の目的だ。

 

 

鷲獅子戦はあくまで" 競技" である。

 

 

当然ながら安全性が約束されなければならない。

 

 

まず使用武器は訓練用の木製までを制限とし、傷薬の持ち込みを強要されてる。 また魔法は殺傷力を半分以下にできるものだけを使用可能とされる。 ファイアー、サンダー、ブリザー、ウインド、ドーラΔ、リザイアとかその辺りだ。 防具は最低でも心臓を保護する装備を付けることが絶対とされる。

 

しかし木製の武器でも人を殺そうと思えばできないことはない。 もちろん力加減を理解して全力を出せる生徒の方が断然多いが、やりすぎる者も稀に現れる。

 

例えば去年は一人現れてしまって、監督兵を務めていたセイロス兵とマヌエラ先生に抑えられてたのは今でも覚えている。 その生徒は戦いになると抑えが効かなくなるタイプで、競技中は既に要注意人物としてマークされていたから対応は早かった。

 

この競技は命の奪い合いのためでは無い。

 

だったら「血が騒ぐぜ!」と言い放ちながらブルーフレイムしそうな厨二病剣士の設定を楽しんだりと、過去の英霊に憧れて心で武器を振るう方がまだいいだろう。 楽しい記憶になる。

 

それでも本当に本気で血を騒がして、生徒を殺めることに躊躇いをなかった生徒も過去に一人か二人はいたらしい。 こうなると鷲獅子戦を楽しもうとする生徒が不憫でしかない…

 

 

しかもそれが去年起こったばかりの話だ。

なんなら俺が丁度見に行った年。

 

確か『モニカ』って子が被害者だったな。

 

元々引っ込み思案な子が被害者とかマジで可愛そう過ぎて笑えなかった。 横腹刺されて倒れたところを更に追撃を行う生徒が「君の命の輝きを見せてくれよ!」と近くで見ていた者が言ってたらしい。 その生徒は元からやばい性格だったのは覚えていて、要注意人物としてレッテル貼られていたが、鷲獅子戦でそれが起きたわけだ。

 

そして今回の獅子鷲戦には俺が止める役割としてそこに加入する形。 ヒヤヒヤもんだ。

 

 

 

「今年はそう言った生徒はいないようで、みんな良い子らしいから案外俺の出番無いかもな」

 

 

 

てか本来はそんな事が無いのが普通だ。 そもそも未成年の癖に、性格は狂いに狂い、殺しに快楽得てしまうとか、士官学校に来る前に何やってんだよソイツは。 血を求める殺し合いが好きなら学業を送らずサッサと傭兵にでもなってしまえば良いのに理解できない。

 

 

 

おう、イエリッツァ。

 

テメェの事も言ってんだよ。

 

何が「今回こそ"は"死合うか?」だ、オイ。

 

職務忘れたようにあまりにもしつこいからCQCで利き手へし折ってやった癖に元気よく再戦望むとかテメェ絶対サイヤ人だろ。 ちなみに武術師範をしばらく機能停止させたから俺は始末書案件だった。 だからアイツあまり好きじゃない。 イエリッツァも始末書だったけど利き手が使えないから書くことに苦戦したらしい。 ざまぁみろ。

 

しかも今年はなんか色々と面倒な事情があって居なくなったらしいし。 その上、セテスがどこか嫌な顔してた。 マジで何があったんだ? イエリッツァは元々危なっかしいところあったけど本当に何が起きた?

 

 

 

「さーて、あと鷲獅子戦は2時間後だ。 その前に打ち合わせだな」

 

 

 

 

ちなみ俺の配置させられるポジションは地上なのでマンディは高台から旅団と仲良く観戦である。

 

 

 

 

 

 

つづく





なんとなくだけど、ベルナデッタは抱き心地が良いと思う。
てか抱きしめて甘やかして依存させたいです。


《ドロテア》

噴水で水浴びしてた生活から脱した頃、帝国アンヴァルに旅する演劇団が滞在していた話を聞いて足を運ぶとユークリッドに出会う。 歌姫として一皮剥きたい想いもあったため「今後歌姫として活動するにあたって見学したい」と無理半分で尋ねたら「邪魔しないならいいよ」と了承を受けて舞台裏に招かれたのが始まり。 またユークリッドの親からも「未来有望な可愛い歌姫ね」と可愛がられ、そこらの貴族よりも好印象なラライヤ家に好感を得てユークリッドには『ユー君』と甘えていた事がある。
あとユークリッドはマヌエラの事は知ってたいがちゃんとした顔合わせは士官学校である。 でも互いに劇団の事は聞いていた。 どちらも有名だから。


あとこれは裏話。

実はドロテアがラライヤ家に拾われて旅する演劇団の中で人生を歩む設定もあったが、ベルナデッタのためのユークリッドなのでお蔵入りになった。 ちなみにラライヤ家の妹ポジションなんだけど義兄のユークリッドを誘惑してドギマギさせるのが好きな魔性なドロテアだった。 彼女自身もユークリッドに満更では無いとか、色々とかなりベルナデッタより目立つのでやめて正解でした。


ではまた
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