飛んで火に入るインデッハの火葬式   作:つヴぁるnet

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第16話

帝国歴1180年

 

 

 

士官学校には大きな訓練所が存在し、一つの学級が丸々参加できる広さであり、それは印象に残りやすい…が、しかし、俺にとっては苦い思い出が最初に思い浮かぶ。

 

 

主な原因はイッツェリアだ。

 

 

毎度ながら「死合うか?」を挨拶にして戦いを好む好戦剣士と言ったところか。 そんな俺はイエリッツァの死合いの申し出を毎回拒否しており、その度にすごく不満げにする。 イエリッツァは目元に仮面を付けることで周りから寡黙なイメージを浸透させるが、実際のところそこら辺にいるやや面倒な性格の男性と変わらず、雰囲気に見合わず猫が好き、人に剣を教えるのが好き、元気に遊ぶ子供を眺めるのが好き、甘い紅茶や菓子が好き、そんで極度の甘党である。 なんだコイツ。

 

バランス取れてるのかよく分からん奴だが、安全性を確保した上での戦闘訓練ならよく付き合ってやり、加減が効く程度に本気でやりあった。 それで満足してもらう事にした。

 

だがいつしか夢中になり過ぎたある日のこと、本当に本気で死合うところまで発展してしまった事がある。 まず歯止めはイエリッツァが効かなくなり、相手をする俺はその危機感からイエリッツァに制止を言いかけるが止まらない。 しかもイエリッツァが握るのは木刀ではなく鉄の剣だ。 より実戦に近づけるためにその日はそうしていた。 当然ながら剣先や刃の部分には安全のためカバーをつけていたが、激しい交戦にてカバーが外れてしまい、それがイエリッツァに火をつけたんだろう。 結果としてそのまま死合う事になり、戦闘訓練である事を忘れて制止すら効かないイッツェリアが襲い掛かる。

 

コンバットナイフ(鋼の剣)で抵抗するが、イッツェリアの剣技にコンバットナイフが追いつかず、武器を握る右腕が縦に切り裂かれ、右の頬に軽く切目が入った。 訓練所で血を垂らす羽目になり、俺は徐々に怒りが満ちて行く。 本気で掛ろう…

 

隠しナイフ(鉄の剣)で喉元を狙いつつ間合いを詰め、俺も本気で抵抗することを決意。 しかし剣術で劣る俺は隠しナイフすら弾かれ、非武装となった。 そして振り落とされるイッツェリアの斬撃に対して俺は構えを取り、その刃を白刃どり。仮面越しに目を見開くイエリッツァは印象的だった。 刃を受け止めた手の皮が荒く裂けたが、ファイアーの熱でコーティングする事で手の皮を厚く(熱く)して受け止めたカラクリ。 本来なら白刃どりのタイミング次第では指ごと切り落とされる結末もあり得た。 しかしそのくらいに追い込まれていたからこそ俺は憤怒する。

 

冗談を含まない本気の死合いを望むイッツェリアの精神に俺は激しい憤りを持っていた。

 

パルミラ戦線の時と同じ感覚である。

 

俺も完全に躊躇いを捨てると熱によって痛みを忘れたその手を伸ばし、イッツェリアの胸ぐらを掴んで引き寄せると顎の下から重たい一撃。 上に視界が飛ぶイッツェリアの脳天に空かさず鋭い回し蹴りで地面に叩きつけ、その胴体はタイルにヒビを入れながら跳ね上がる。

 

重苦しく「かはっ」と仰向けに息くイッツェリアの足を掴み、ズルズルと柱の近くまで引きずると、真横に振り抜く。 その胴体をバットのように振り抜き、柱にぶつけられたイッツェリアの体からは鳴ってはならない音がした。

 

CQCとはかけ離れた暴力。 俺は親から教えてもらった戦闘術を忘れてただ身体能力の高さだけで圧していた。 しかしそれは父親の教えを裏切るやり方。 常に心を落ちつかせ、淡々と討伐対象を沈黙させるのが父の教え。 けれど地面に横たわるイッツェリアを見ても俺自身その愚かさを感じずにいた。

 

全く静まる事ない憤りを抱え、訓練所の床に一滴ずつ落ちる血と共に俺はユラユラと足を進める。 落ちているコンバットナイフを拾い、動かないイエリッツァの頭を掴み上げ、その喉元を引き裂こうとした時だ。

 

 

 

 

 

 

___ ユークリッドォォオ!!

 

 

 

 

 

 

 

これまでに聞いたことないハンネマンの怒り声で止められ、その声の方向を見た。 ひどく心配したマヌエラ先生の表情を見て冷や水を浴び、やっと正気に戻った。

 

俺は危うく、ひとりの人間を殺しそうになったらしい。

 

 

 

 

「……」

 

 

 

ホルストには腕をへし折ったと冗談で説明したが、実際のところへし折る以上の事をしている。 そしてこの件については黙秘されることになり、見ていた少数の生徒を口止めしたが、その代わりとても怯えられてしまった。

 

それから俺はセテスとハンネマンから説教を受けた。 あまりにもやり過ぎだと。 そして子を育てる士官学校でそれはあってはならないと。 俺はあらためて後悔した。 士官学校を2年近く支えてた筈の俺はその事実に大いに恥じたんだ。

 

最初に仕掛けたイエリッツァが一番悪いが、正当防衛の範疇に収まらない交戦を行った俺も悪いのだ。 だからこの件によって、大修道院からお世話係を剥奪されてしまい、流石に追い出される……かと思ったがレアさんが両成敗と言い渡す。 俺は追い出されずに済み、イエリッツァも師範の役割を剥奪されることはなく、共にとある罰を課せることでこの件は終了した。

 

その後、複雑骨折で動けないイッツェリアに頭を下げに行き、両成敗食らった事になったイッツェリアもこちらに謝罪。 それでも俺はしばらく自身の愚かさに気持ちは沈んでいたが、ツィリルとフレンが心配して慰めてくれていつまでも沈んでいる事はなかった。

 

俺は懺悔するかのように反省文を書き、提出を受けたセテスから「若さ故の誤ちとして覚える事だ。 ここは士官学校だ。 君もまたその日にその事を学んだ」と励ましをもらう。

 

そのままハンネマンからは「親の教えは世界に一つだけの授業だ。 その財産を忘れずに大事にしなさい」と優しく説かれ、後悔と共にその場で泣き崩れた。

 

またマヌエラ先生は「未熟を知るのは成熟する証よ。 涙の酸っぱさはいずれ熟して甘さに変わり、その彩りを知って大人になるのよ」と優しく背中をさすられるあの感触はまだ覚えている。

 

俺は自分の年齢すら忘れて泣き崩れ、優しき大人たちに支えられたあの時間を心に刻んだ。

 

そのお陰でパルミラ戦線で対するパルミラ人の精神に嫌悪を抱くだけで、心に憤りも無ければ、戦いで荒む事は無く、常にマンディと冷静に事を成せるようになっていた。ただ友人(ホルスト)のために粛々と(傭兵として)役割を進める冷静さを確かに士官学校で学んだ。

 

 

それから数日で気持ちを入れ替え、ベットの上で動けないイッツェリアの隣でお茶会を開始。

 

久々に仮面を外して生活するイッツェリアと一緒に甘いものを嗜みながら「お前の負けだ」と煽りながらその件は和解した。

 

 

それが苦くて痛かった記憶。

 

 

 

 

「このタイルのヒビが俺の傷跡でもある。 何度もこれを見て忘れない」

 

 

 

正直な話としてイッツェリアはあまり好きでは無い。 でも悪い思い出が強いだけで、憎んでる訳ではない。 しかしそんな奴は今は『死神騎士』であり、フレンを攫った犯人と言われている。

 

もし俺は彼と出会ったどうするだろうか?

 

恐らく時と場合によっては死神騎士と戦うだろう。 だがそれは俺がイエリッツァに死神騎士を止めてほしいから動くのかもしれない。 ほんの一年程度かもしれないが、士官学校でフレンと過ごしてきた日々と想い出を大事にしたいために、俺は振るうかもしれない。 それともただのリベンジとしてだろうか? だが背を向けて逃げるなんてやらないだろう。 そんな気がしてならない。

 

 

 

「今日は雲が多いな。 もうすぐ晴れそうではあるが」

 

 

 

少し長くなった。

 

まぁ、つまりだ。

 

この訓練所の一角にあるタイルのヒビを見るたびに自分の誤ちを思い出すからあまり良い思い出として受け止めれてない。

 

でも実際には悪いことだけじゃ無くて、良いことも多い。

 

ここには過去の栄光も刻まれている。

 

例えば訓練所で開かれる武術の大会にはよく参加していた。 俺は拳部門で2年半近く全勝無敗を記録していたこともある。 剣術部門では投擲を禁止されない限りは勝率は5割超えて、年齢制限無い大会ならカトリーヌと毎回優勝争いをしていた。 そんな感じに士官学校ではめちゃくちゃ強いお世話係として名を馳せて、そこから有名になった。 あの頃はとても楽しかった。

 

しかしイエリッツァとの件で何かしら気まずくなってピタリと参加は辞めてしまった。 もう過去の栄光だから自慢も何も無いが、懐かしさはある。

 

 

 

 

「おい」

 

 

「?」

 

 

 

 

思い出にふけてると後ろから声をかけられる。

 

声からしてまだ幼さを感じ、振り返るといたのはひとりの生徒だ。

 

まだそれぞれの学級は授業中の筈だが?

 

 

 

「ユークリッドと言ったな? 少し付き合え」

 

 

「ああ……なるほど、サボりか」

 

 

「ふん」

 

 

 

制服からすると青獅子の学級。

 

そしてこの青年はフェリクスだ。

 

 

 

「随分と体育会系な奴だな」

 

 

「体育会系?」

 

 

「気にすんな。 それで手合わせか? 別に構わないがもし負けてしまったらベレス先生の元に引きずって授業中の放り投げてやるよ。 その辱めを受ける覚悟があるなら今その場から襲ってみろ」

 

 

「……なに?」

 

 

「来いよ、雑に相手してやる」

 

 

「……ちっ」

 

 

 

そこそこの挑発を投げるが、フェリクスは冷静だ。

 

不快感を示した顔をするも怒り塗れた訳でも無く、訓練所に持ち込んだ訓練用の剣で綺麗に構えを取り、こちらを見計らう。

 

だから俺は感心した。

 

 

 

「なるほど、剣士として必要なモノを持ってるらしいな」

 

 

「そんな挑発紛い、俺に投げかけたって意味なんて無い」

 

 

「よろしい。 ならちゃんと相手しよう」

 

 

 

俺はそこらに放置されている訓練用の剣を取る。 訓練道具を仕舞わずに放置されてる事に関心は持てないが、この瞬間役立つので黙ってやる事にした。 士官学校の元お世話係としてあるまじき対応だが今は関係無い。

 

 

 

「土俵を合わせなくても良い。 お前の全力が見たい」

 

 

「気にするな。 ただ敢然とかかって来い」

 

 

 

そう言ってとある構えを取り、フェリクスも剣を強く握りしめて…

 

 

 

「そうか、なら遠慮は要らないな…!」

 

 

 

 

力強く踏み込んだ。

 

動きがとても鋭い。

 

しなやかに速く、乱れなくまっすぐだ。

 

鷲獅子戦でもベルナデッタを打ち倒した時に見せてもらったがこれは正面から向かわれると怯まざるを得ない。 しかし一度見せてもらってる速さだ。 対応できなくは無い。

 

俺は木刀でソードマスターの構えを取る。

 

フォドラのソードマスターは口元に剣を持ち、剣先は敵に向けて、今にも斬りかかるような構え。 それはどんな敵も凌駕する威勢の現れであり、静かに集中力を高める口構(くちかま)えからは即座に斬撃を繰り出しやすく、それはアーマーキラーのような長い剣も効果的だ。 軽い木刀ならば、より速く、よりしなやかに、攻撃を振える。

 

 

 

 

「はぁぁぁぁあッッ!!」

 

 

 

 

これでどんな攻撃にも対応可能であり!

 

 

 

 

敵に優勢を譲らない!

 

 

 

 

それがソードマスターである!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

って、勝手なイメージ。

 

 

残念ながら俺に達者な剣術なんてねーよ。

 

 

 

「そぉい」

 

 

「!?」

 

 

 

フェリクスの斬撃を防ぎながら体を横にいなすと、流れるようにフェリクスの木刀を脇に挟んだ。

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

フェリクスの動きは素早かったけど、目に見えない訳でも無い。 上から斬りかかる事が分かったので受け止めるフリをして誘う。 木刀と木刀が打ち合う瞬間に斬撃を斜めにそらし、そしてクルリと回ってフェリクスの木刀を脇に収めた。

 

 

 

「そらっ!」

 

 

「ぐぅぅっ!!」

 

 

 

驚いて一瞬固まったフェリクス。

 

武器を抑えられて使用不可能にも関わらず手を離せない剣士はただのカカシですな。 木刀を脇に挟んで固定したままドロップキックをお見舞いし、フェリクスを蹴り飛ばした。

 

しかし手ごたえを感じれない。 どうやらドロップキックは完璧にお見舞いできなかったようだ。 フェリクスは最後の方でなんとか反応して片腕を犠牲にドロップキックを防いだのだ。 その上体をそらしてダメージを抑えようとしていた。 コイツなかなかやる。

 

 

 

「よく反応したな!」

 

 

「チッ…」

 

 

 

けれどフェリクスの片腕は使い物にならない。

 

それでも片手で木刀を構え、まだ交戦する事をやめないようだ。

 

 

 

「こっちから行くぞ、不良剣士!」

 

 

「ふん! 鈍い(のろい)!」

 

 

 

踏み込んで木刀で雑に攻撃。 フェリクスに容易く受け止められると回し蹴りが返ってくる。 俺は顎を引いて回し蹴りを回避すると、イタズラ心が芽生えたので手を伸ばしてとあるものを盗んだ。

 

 

 

「うぉ!?」

 

 

「靴もらった」

 

 

 

指で引っ掛けてフェリクスの靴を回収。

 

そのせいでバランスを崩すが、無理やり体勢を整えてフェリクスは怒りを表情に染める。

 

 

 

「おい! 貴様!」

 

 

「相手のペースに飲まれてんじゃねぇよ」

 

 

 

俺はニヤニヤと笑いながら少し腰を屈み、木刀を自分の首元にコンコンと刻んでフェリクスを煽る。

 

 

 

「ちっ!」

 

 

「曇り空は多いけど、この後いい天気になるなぁ!」

 

 

 

叫びながらフェリクスの靴を空高く投げて、俺が使用する木刀も上に投げる。

 

靴と木刀は緩やかにクルクルと空を舞う。

 

そんな俺の奇行に驚くフェリクスの視線は素直に上へ向いた。 俺は後方にある柱に向かって跳び付き、そして柱を蹴って斜め上に跳んだ。 俗に言う壁キックだ。

 

投げた靴と木刀に手を伸ばして、まず靴をフェリクスにぶん投げる。

 

回避が間に合わないフェリクスは木刀で靴を受け止めて防いだが、そのタイミングで雲から太陽が元気よく顔を出した。

 

 

 

「!!」

 

 

 

先ほどまで曇り空で周りは少し薄暗い訓練所だったが、急に元気よく照らすお日様に目が眩んでしまう。 あまりの眩しさに視界を狭めたフェリクスは俺の姿をしっかり捉えきれず、その場で止まる。

 

俺は空中に舞う木刀も掴み、縦にクルクルと回りながらまっすぐフェリクスに落下。 重力×回転力×両手剣の力を集約した一撃を振り下ろした。

 

 

 

(てん)!!」

 

 

「!?」

 

 

 

真横に受ける構えをしていたフェリクスの木刀を半分に叩き割る。 バキバキとへし折れた木刀にフェリクスを目を見開き、そして体勢を崩す。 着地した俺は空かさず両足に込めると次はバク転の要領で木刀を下から斬り上げた。

 

 

 

(くう)!!」

 

 

「ぐえっ!」

 

 

 

フェリクスの顎下に木刀の剣先が直撃。

 

パコーン!っと顔は上に打ち上げられ、定まらない視界と共にヨロヨロと後ろに数本下がる。

 

どうやらアドバンスの傭兵の真似事と、蒼炎の勇者の真似事は綺麗に決まったようだ。

 

 

 

「ぐっ、ぐぐっ…!」

 

 

 

崩れ落ちそうになる膝だがなんとか持ち堪えたフェリクスはギギギっと顔を下に戻してこちらに視線を合わせる。

 

 

 

「ぬるぽ」

 

 

「ガッ………はっ…」

 

 

 

水平に木刀を振るい、フェリクスの首筋に強烈な一撃をお見舞いする。 綺麗に打ち込まれた衝撃でフェリクスは息を吐き切りながら、とうとう膝から崩れ落ちて気絶した。

 

 

 

「はい、お疲れさんっ」

 

 

 

金鹿の級長の口調で木刀をぶんぶんと左右斜めに数回振い、左の脇に柔らかく構え、そして口元の正面をスッと切る。 そして先ほどのソードマスターの構えに戻し、一連の流れをなぞり終えた。

 

 

 

「さて、公開(後悔)処刑だ」

 

 

 

沈黙してるフェリクスを担いで訓練所の外を出る。 青獅子の学級までフェリクスを担いで歩き、扉を数回ノックする。 夏なら学級の扉は開封されてるが、秋風が寒いことで閉ざされていた扉を開いて授業中に訪問する。

 

 

 

 

「やぁ」

 

 

「「ユークリッドさん!?」」

「「あとフェリクス!?」」

 

 

「いらっしゃい、ユーク」

 

 

「おうベレスてんてー、授業放っぽり出してフラついてたフラフラダリウスをお届けに参った。 ところでコイツの席どこ?」

 

 

「あの、ぼ、僕の隣です」

 

 

「おけー、アッシュ。 フェリクスの椅子借りるよ」

 

 

 

フェリクスを担いだままフェリクスの使う椅子を引きずり、そして黒板の前に立つベレスてんてーの隣に椅子を備える。 そしてフェリクスもそこに座らせ、ちょうど良く持ち込んだ木刀でフェリクスをまっすぐ固定。

 

 

 

「「「??」」」

 

 

 

そして張り紙に『敗北者じゃけぇ』と書いてフェリクスの頭に引っ付けた。

 

 

 

「「「ぶっ」」」

 

 

 

シルヴァンとアッシュとアネット、その他の生徒は吹き出して、級長のディミトリは呆れている。 イングリットは不謹慎ながら少し怒っていたがジワジワと幼馴染の醜態に笑い堪え始めた。 ドゥドゥは表情変えることはなく俺の奇行を眺めている。 メルセデスはあらあらと微笑んで、フレンは俺を見てクスクス笑う。

 

 

 

「じゃあこのまま授業をどうぞ」

 

 

「わかった」

 

 

「「「いや、ベレス先生!?」」」

 

 

 

結局そのまま授業を続けた平和なひと時と青獅子の学級。

 

授業が終わる鐘の音で目覚めたフェリクスはディミトリに解放されて状況説明を受ける。

 

言葉通りたしかに負け姿晒して授業中に放り込まれた事を知ったフェリクスは「そうか…」と何やら意気消沈していた。

 

その姿を見たディミトリは今回のお説教やらをお流れにしたらしい。

 

 

 

 

そんな俺はベレスと半年振りににお昼ご飯。

 

フェリクスを返り討ちにした話になり、周りの生徒と盛り上がる。 ベルナデッタは食堂が静かになるまでは引き篭もっていなかった。

 

そんなフェリクスの話だが、ベレスてんてーからは『じつは良いひと』補足を加えられて俺はこんな絵を想像する。

 

 

 

 

 

 

  \ 助けてフェイリークス!/

       敵

     敵 ベ 敵

       敵

 

 

  

 

 

 

 

「ごほっ! くっ、くくっ…あははは!」

 

「!?」

 

 

 

 

俺は喉詰まらせながら笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、マイクラン」

 

 

「なっ!? てめぇ!? 帰ってたのか!?」

 

 

 

セイロス兵の装備をするマイクランとすれ違う。 少し鎧が汚れており、どうやら任務を終了した後のようだ。 そして副隊長の腕章を付けているということはつまり、この一年でここまで上り詰めたんだろう。 やるじゃん。 紋章とかいらねぇな。

 

 

 

「どこかで戦闘してきたということか?」

 

 

「ああ? まぁな。 かと言っても俺は参謀役でな、直接な戦闘はあまりないがな」

 

 

「やはり頭は良いよな。 強くないけど」

 

 

「最後のは余計だこのガキ!」

 

 

「おっとっと! 俺用事あるんだわ! じゃあなー!」

 

 

「うお!??」

 

 

 

掴みかかったマイクランの手を取り、力を活かしてクルリと回す。 仰け反りそうなったマイクランを支え、最後はドンっと軽く背中を押し出す。 一歩、二歩とよろけるマイクランを放っておいて俺はそそくさと退散。

 

彼の怒り声を背中に俺は演劇団の元まで走る。

 

 

 

「遅くなった!」

 

 

「遅いぞ! もうすぐ予行演習が終わるからユークも準備進めろ!」

 

 

「りょうかーい!」

 

 

 

今日は演劇団の公演日。

 

メンバーの数は全盛期の半分程度だが、あらゆる部門の人員が揃ったのでそこそこマシな演劇が可能であり、今日から久々にお披露目を実行する。

 

この場所ガルグ=マクから名を売って仲間を集めるのだ。

 

 

 

「投げナイフはそこのカゴに入れて。 立ち台はそこに立てかける。 あとその魔法陣は消すなよ。 あとタオルの数が足りない!」

 

 

「「は、はい!」

 

 

 

ああ、懐かしいな。

 

この感じの忙しさを裏方で毎日勤しんで仲間を支える。

 

この生き方を親と協力してきた。

 

今は大体俺一人でやってしまえるけど…

 

やはり家族揃ってやりたいものだ。

 

 

 

「……父さん、母さん、あなたたちはどこにいるんだ…?」

 

 

 

演劇団の団長もいないが、お世話係のリーダー的存在の親二人がいない。

 

あの三人はそう簡単にくたばるとは思えないけど、でも本当にどこにいるんだろう?

 

嫌な噂が立ち込める帝国領か?

 

それともまだ足を踏み込んでいない王国領か?

 

 

 

「演劇開始まもなくだ!最終準備!」

 

 

「「「はーい!!!」」」

 

 

 

今はこちらに集中しよう。

 

さて、温かいお絞りでも作るか。

 

 

 

「ユークリッド? それどうやって蒸しタオルにしたんだ?」

 

 

「これ? ファイアーの熱だ」

 

 

「…は?」

 

 

「コイツにウインドの魔法と合わせて……ほら、熱風」

 

 

「!!?……き、器用だな、お前」

 

 

「これでも士官学校に三年近くいた訳で、学べることは多いし、やれる事は沢山だ。 お手本となる先生や師範、または生徒と沢山を学べた訳だからな。 主に"理"の分野に力を入れたよ」

 

 

「それを3年間も無料で学べた訳か。 恵まれてるな」

 

 

「ああ、ガルグ=マクに流れ着いて良かったよ…」

 

 

 

けれど…

 

もしあの時、帝国領の隅の方で雲隠れする事を決めたらどうなってたのか?

 

もしあの時、王国領に逃げ込んで環境が厳しい寒さの中でどう過ごしてたのか?

 

もしあの時、同盟領まで彷徨ってたのならマンディと出会わず誰と出会ってたのか?

 

 

 

「これも時のよすが、って奴かな」

 

 

 

沢山のお客様に演劇を披露する光景を、役四年ぶりに裏方から眺めてこれまでを考える。

 

 

俺はここまで順調と言えるのか?

 

もっと早く仲間を集わせれたのだろうか?

 

 

いや、わかるわけがない。

 

そんなのその時の選択でしか理解できないものだから、今考えても仕方ない。

 

でもやはり何度も考えてしまう。

 

 

別の展開があったんだろうか?

 

 

 

「あったかもしれないな。 演劇も多彩なんだから、お客様の喜ばせ方も、終演の流れも様々だ」

 

 

 

でもゴール地点は変わらない。

 

それだけを理解して、俺は成そう。

 

 

 

 

「父さん、母さん。 俺はここにいるよ。 もしどこかにいるなら俺が向かいに行く。 だから…」

 

 

 

 

フォドラの風が残酷で無いよう祈る。

 

 

いまはしばらく演劇を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく





《黒歴史》
イエリッツァもユークリッドもどちらもまだ若い。
だから若さゆえの過ちなんて普通である。
年齢に関してはセテスの400分の1くらいだ(ネタバレ)
だから気にせず人生を桜花しましょう。


《ぬるぽ》
NullPointerException の意味を待つ。

つまり↓↓



  ∧_∧   
 ( ´∀`)< ぬるぽ

____


  ( ・∀・)   | | ガッ
 と    )   | |
   Y /ノ    人
    / )    <  >__Λ∩
  _/し' //. V`Д´)/ ←>>1
 (_フ彡        /




である。





ではまた
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