飛んで火に入るインデッハの火葬式   作:つヴぁるnet

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第28話

帝国歴1181年

 

 

「わーい!」

「こっちこっち!」

「フェー!」

 

 

「もみくちゃだな、マンディ」

 

 

「ぶるる…」

 

 

 

フラルダリウスに来て1日が経過した。

 

相変わらず元気な子供たちのパワーに押しつぶされる人気者のマンディ。 天馬と言う存在はそう簡単に触れる事は出来ない生き物であり、子供達はそれを知ってるからこそマンディを珍しがって群れる。

 

あと子供達に対して大人しくできるマンディだからこその光景だ。

 

微笑ましい。

 

 

 

「ねーねー、あれ何?」

「誰か沢山来るよー」

「あ、本当だ!」

「なんか荷車や馬車もあるよ」

 

 

「…んぁ?」

 

 

 

半分寝ていた。 それで気分良く黄昏ているとマンディに興味を示していた子供達は別の方向に騒ぎ出す。 指差する方向に目を向ける。

 

そこには…

 

 

 

「え?…………っ、なんだと!?」

 

 

 

俺は慌ただしく起き上がる。

 

脳を覚醒させて目を凝らすと見たことある顔達。

 

「どう言う事だ!?」

 

 

 

こちらに向かってくる団体…

 

それはガルグ=マクで滞在していた旅団であり、その場所まで迎えに行ったブリギッド諸島の者達も同行していた。 ひどく疲れたような顔をしてフラルダリウスの拠点地までやってくる。

 

俺は駆け寄って先頭にいた者に声をかけた。

 

 

 

「先輩!? どうしたんだコレは!?」

 

「ユークリッドか、っ」

 

「ガルグ=マクからヌーヴェル領に向かう予定だったろ!? 何があってフラルダリウスに!?」

 

「ッ、ユークリッド、よく聞け…」

 

 

 

それはフォドラ全体を揺るがす話。

 

帝国がガルグ=マクに宣戦布告を起こした。

 

ガルグ=マクの兵士達は来たる帝国兵に向けて編隊を組み、戦いに備え始める。 そして戦場となるだろうガルグ=マクからは早々に始まった民間の避難が呼びかけられ、旅団も急いでガルグ=マクを出たらしい。 しかし向かう先は侵略を目論む帝国のヌーヴェル領ではなく、旅団がもう一つ拠点として滞在する王国領側のフラルダリウスまで急いだらしい。

 

 

「なんだよそれ……戦争って事なのか?」

 

 

 

噂に聞いてたとは言え早すぎる。

 

約一年前にアケロンから帝国の怪しい話を聞いていたの俺は覚えている。 軍力の増幅に、とある人体実験の話。 穏やかとはかけ離れた帝国の話。 だが今この瞬間ガルグ=マクに宣戦布告を起こしたと言う事は、帝国はかなり前から準備していたんだろう。 ガルグ=マク侵攻まで2週間と言う短い時間は準備が整っているから出来ることだ。

 

しかもアドラステア皇帝のエーデルガルトは卒業式で士官学校が忙しくなるだろう時期を狙っていた。 ガルグ=マクが大混乱になるのも当たり前だ。

 

 

「帝国はもしかしなくともガルグ=マクを乗り越えて王国領にまで来るかもしれないよな…」

 

 

「充分あり得る話だ」

 

 

「……戻らないと」

 

 

「戻るって……まさかガルグ=マクにか?」

 

 

「いや、ブリギッド諸島だ。 早めに船を出してもらわないと動けなくなるぞ!」

 

 

 

その後、ガルグ=マクから来た旅団はフラルダリウスに滞在していた仲間達と再会。 しかし喜びも束の間、支度の準備を呼びかける。 向かう先は王都フェルディアの港であり、満月の次の日を目安にして全員と合流。

 

そこから船に乗り込んでフォドラを出る話だ。

 

 

 

「ユークリッド、また行っちゃうのね?」

 

 

「母さん。 ああ、そうだよ」

 

 

 

寂しそうな顔をする母。

 

俺だって早々に離れたくなんかない。

 

しかし急ぐ必要がある。 何せブリギッド諸島は帝国の属国扱い。 もし戦時体制が広がれば王国側は帝国側の属国に値するブリギッド諸島に対して警戒心が高まる。 そしたら港を貸してくれるどころか攻撃される可能性すらある。 そうなる前に船を寄せなければ俺たちはまたバラバラのままだ。

 

 

 

「大丈夫、またすぐに会えるから、母さん」

 

 

「ええ…そうね。 頑張って、ユークリッド」

 

 

 

マンディを呼びかけようとしたら既にマンディは手綱を加えて俺に渡してくる。 本当に人間並みに賢すぎる。 そんな感想を抱きつつ俺はマンディの首元に装飾品と手綱をつけ、自分自身の装備品も確認。

 

すると…

 

 

 

「行くんだ?」

 

 

「ああ」

 

 

 

昨日初めて出会った褐色肌の無気力系な女の子。

 

 

 

「昨日ココに来たばかりなのに、もう出てしまうなんてね。 休む暇も無く、私ならため息出てしまいそうだ」

 

 

「生きるために自分で勝手に背負った使命だ。 ため息なんて付けないさ」

 

 

「そう。 なら私は応援するよ」

 

 

「ありがとう___"ハピ"」

 

 

「どういたまして」

 

 

「じゃあまた近いうちに会おうな、ハピ」

 

 

「うん、またねー。 ……え?また?」

 

 

「なんだ? 君はもう旅団の一員だろ? なら一緒に動くと思ってたが? それともフォドラは出たくない?」

 

 

「外か。 うーん、それはその時に答えを出すよ」

 

 

「じゃあまた会えたらその時は改めてだな」

 

 

「そだね」

 

 

 

緊張感って言葉が似合わない感じのゆる〜い女の子、ハピと会話を終えると皆に手を振ってマンディを飛ばす。 皆から見送られながらフラルダリウスを出て、ロディ海岸側を目指した。

 

そこからヌーヴェル領まで海岸沿いを目印に道を作り、最終目的地はブリギッド諸島だ。 大凡の方角は覚えているので迷うことは無いが、道中で海賊がいない事を祈る。

 

まぁ、弓さえなければ怖くもなんともないが。

 

 

 

「しかし一体このフォドラはどうなるってんだ。 何を考えての戦争だエーデルガルト? お前の野心は何を正当化しようとしてる?」

 

 

 

ここで尋ねても分かるわけない。

 

だが分かるとするならば、それは間違いなく悲しい時代の始まりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、早くもあれから数日が経過。

 

無事にブリギッド諸島に着き、俺は団長と親父に事情を説明する。

 

フラルダリウスからブリギッド諸島まで伝達にやってきた王国のペガサスナイトの話を聞いて、いつでも船を出せる準備を済ませていた。

 

そして俺の話によって出航を決断する。

 

満月の日に合わせてフラルダリウスまで船を出した。

 

海賊は現れることなく、天気の荒れ模様も無く、数日で到着した。

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

 

 

「メルト!」

 

「ソルテッ!」

 

 

 

俺の親父と母親は抱きしめ合い、再会を喜びあう。 他にも懐かしの仲間達同士も再会を喜び、団長の元に戻れた事を大いに喜んでいた。 しかしモタモタして居られない。 王国領は緊張状態が高まっており、異国の船が長々と王都フェルディアに停泊してるのは頂けないだろう。

 

その事を当然ながら理解している団長は仲間達に大声で呼びかけて直ぐに船に乗るように言う。 そして一時間も経たないうちに船を出し、王都フェルディアを離れた。 正直観光とかしたかったけどそんな状況下は許されない。

 

あー、そもそもな話。

 

これも全部ヴァーリ伯から始まったんだよな。

 

あー、やはりアイツぶっ殺してやりたい。

 

 

 

「……はぁ」

 

 

まぁ、そんな事したら困る人が多いし、何よりベルナデッタの肉親だから手出しはできないけど……もし"あの日"から俺の歩み方(ルート)が変わり、その時の性格が何事も見境なくなっていたら、それをやってた可能性は高い。 あの出来事からガルグ=マク大修道院に導かれてたからそんな俺にはならなかったが、もしあのまま帝国領を彷徨ってたらあり得た話。

 

俺はそんなビジョンが浮かぶ。

 

だが、周りを見ればあの時の仲間達が皆無事に集っているではないか。 古い顔だけではなく当時は居なかった新しい顔も居て、腕の中で小さかった幼子は元気よく子供にと成長して、遊んであげてた子供はあの時より青年へ近づき、先輩達はほんの少し老けたけど頼りになる背中はまだ健在で、団長の声はまだ奮い立たせる強さを保っている。

 

こうして5年近くの奔走は幕を終えたんだと、揺れる船の上でやっと…噛み締めた。

 

 

これで【仲間は全員集まった】のだから…

 

 

 

 

「ユークリッド、お前は本当にここまで良くやった。 親としてお前を誇りに思う…」

 

「ユークリッド、ああ、私の子…っ、ありがとう…ありがとうね、ユークリッド」

 

「父さん、母さん…」

 

 

 

二人から抱きしめられる。

 

そして父は肩を震わせながら母と俺を抱きしめ、涙を流す母は俺を抱きしめ、俺も母を抱きしめる。

 

 

ああ、久しぶりの温もりだ。

 

これだ…

 

俺はこれを取り戻したかった…

 

 

 

「ユークリッド」

 

 

「団長…」

 

 

 

団長の声が館内に響く。

 

みなの視線が俺と団長に集まる。

 

 

 

「お前の奔走は旅する演劇団の命を繋げた。 ここにいる皆の命と繋がりを元の場所に戻した。 手のひらから容易く零れ落ちる理不尽にお前はめげなかった、挫けなかった。 誰もお願いした訳でもなく、誰もお前に助けを求めた訳で無い。 だが、まだ未成年だったユークリッドはやってくれた。 これは誰にでも出来ることではない。 だから俺は団長としてお前に言う。 ひとりの人員として、またお前と同じ仲間としてユークリッド・ラライヤを讃え、そして感謝を述べたいっ!!

だから…ッ、ユークリッド、っ、本当にありがとうッッ! オレの家族を守ってくれて、本当に感謝するッッ! 」

 

 

「!!!」

 

 

 

団長は"土下座"をする。

 

 

フォドラには無い礼儀を見せる。

 

 

___地べたに頭を付ける?

___土足の床の上で膝を付ける…?

 

 

見たことない団長の礼法に驚く人達。

 

 

だが中にはそれを理解して深々と頭を下げる数名の仲間。 それは団長と共にしてきて長かった人達だ。 ___事前に打ち合わせをしていたのか? いや、たしかに同じタイミングで頭を下げたがそれは団長が何に礼を尽くそうかを見て聞いて理解してるからだ。 知らぬ者はその事に思考が追いつかない。

 

だが、団長のソレは一体何かは雰囲気で伝わった。

 

それほどの誠意と感謝が込められている。

 

それは見て捕らえられた。

 

 

 

「団長っ…」

 

 

 

俺も、足を折り曲げ、姿勢を正す。

 

それは正座だ。

 

 

 

「…団長、そもそも、まず、俺がヴァーリ伯との対話を間違えたからこんな事になってんだ。 あと、その領地の娘(ベルナデッタ)と安易な接触も交えた結果、俺が皆を危険に晒したようなもんだ。 だから、団長は頭を下げないでくれ。 俺も悪いからさ…っ」

 

 

「…」

 

 

「だから団長!! そして皆さん!! 大変申し訳ありませんでした!!」

 

 

 

 

地面に痛々しく音が鳴り響く勢いで深々と頭を下げる。 額から血が流れ落ちる。

 

 

そして何度も怒りに染まりながらそこで後悔する。

 

 

もっと巧みにうまく、ヴァーリ伯と言う貴族に対話を出来ていたらこうならなかった筈。

 

 

賢く立ち回っていたのなら、こんな未来は無かった筈。

 

 

ブリギッド諸島まで船に乗るなんて苦労は無かった筈。

 

 

もっとフォドラで楽しく演劇をしていた筈。

 

 

苦しむ必要なんて無かった筈。

 

 

その筈…なんだ。

 

 

 

「ユークリッド、頭を下げる必要はねぇ。 みんなは知っている。 そして誰もそんな事気にしていない。 そもそも団長の俺がヴァーリ伯の屋敷にお前を連れて行ったのが間違いだった。 判断を誤った。 守ってやらなければならなかった。 だがユークリッドなら大丈夫と思って、それで大変な思いをさせてしまった。 すまない」

 

 

「……」

 

 

「あと、覚えてるか? ユークリッドは演劇を見にきた人々に、笑顔と思い出の味を刻むために作った【ポテトチップス】を利益のために使わないその心は本当に嬉しかったとオレは言った。 お前はオレ達旅団の誇りだ」

 

 

「……俺も、団長が皆んなの団長である事を、誇らしく思います」

 

 

「そうか。 ありがとうな、ユークリッド」

 

 

 

 

 

全部俺が悪いかと言うとそうではない。

 

そもそも皆はそんな事を気にしていない。

 

誰も俺を咎めず、誰も俺を責めなかった。

 

それに皆は覚悟の上で貴族の領地で活動していた。

 

理不尽な出来事も起こるだろう事を想定していた。

 

今回はそれが上回っただけ。

 

だから俺が額から血を流す勢いで土下座なんてする必要は無かった。

 

だからホッとしたし、申し訳なさも背中に張り付く。

 

 

だが、今日この日まで奔走を、認めてくれた。

 

許してくれた。

 

 

俺は、本当に、ここまで頑張れたんだと…

 

 

 

 

 

「……やっと、終わったんだな」

 

 

 

 

 

涙の味はポテチの塩味だと誤魔化す。

 

 

フォドラの潮風はその味によく似ていたから…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、いま通っている海路でお騒がせしていた海賊達を討伐して、ここを確保したのが約1週間前の話。 その目先に見えるロディ海岸で西方教会を叩きのめしたのは記憶に新しい。 そしてこの海路から向かう先はブリギッド諸島であり、その島を降りてからダグザに向かう事でフォドラとは関係ない場所まで進行する予定……なんだけど、ハピはもう旅する演劇団に命託した感じ?」

 

 

「んー、命託した感じ、かと言われたらそこまでとは言わないけど、でもここは居心地良いからねー、付いて行こうと思っただけ」

 

 

「そ、そうか、随分と緩いな…」

 

 

「まぁ、私に失うモノは無いからね。 なら、この訳アリの身を旅団に預けようかな」

 

 

「それは、それで良いんじゃない? 追わず拒まずな旅団だからそこら辺は好きにして行けば良いさ。 しかしダグザの言葉学ばないとな?」

 

 

「うわー、それはまた面倒だねー」

 

 

「生きるため故致し方無し」

 

 

「……それで、リッドはどうするの?」

 

 

「俺?」

 

 

「うんー、だって君は仲間を集めるために旅していたんでしょ? それでその目的は達成されたじゃん? そうなると…リッドは自由?」

 

 

「ああ、そう言う事。 たしかに俺は自由だ。 でも、旅団は皆これまでのことで疲れているし、誰かが支えてやらないと。 俺のことは…それからでも遅く無い。 でも、遅すぎるのはちょっとあれかな」

 

 

「?」

 

 

「『また逢いに行く』って約束があるんだ」

 

 

「おおー? それってときめく感じのやつなんだよね?」

 

 

「もちろん」

 

 

「ほぇー、気になるねー」

 

 

「まぁ、まずは皆をダグザに送ってからだな。 それまではまだお世話係を辞めない。 俺は旅団の一員で、みんなをサポートする役目があるんだ。 それが落ち着くまではね? でも、その時が来たら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

___俺だけの物語を始めよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フォドラの大陸で培って来た5年間の奔走は暁風となり、追い風となってフォドラの外に消える俺を見送る。

 

 

だがいずれ、俺はその場に戻るだろう。

 

 

情動と共に取り付けた約束を果たすために…

 

 

インデッハの小紋章が込められたその手を引いて、息苦しい砦の外へ彼女を連れ出すために…

 

 

 

 

 

「ベルナデッタ…」

 

 

 

 

 

彼女の名を最後に…

 

フォドラの大陸は見えなくなった…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第1部 〜 完 〜





これにて原作ゲームの第一部は終了。
旅する演劇団を全員集めてフォドラを出ました。

よくがんばった。



《ハピ》
ガルグ=マク大修道院にドナドナされなかったルート。 一応中央教会がハピの捜索に出たが旅団が匿ってハピを助けた。 それから宛てもない彼女は流れで旅団に加入する。 ユークリッドの母メルト・ラライヤを気に入っているらしい。 ダグザに向かった後ダークペガサス乗りになり、ため息つくなら空でため息ついて、エクスカリバーで飛行系の魔物を屠れば安全ではないかとユークリッドのアドバイスもありそれ実行。 結果的に週に一回は込めに込めたため息を吐いてストレスと戦っている。 本当の意味でも戦っているがそこは気にしない。


ではまた
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