飛んで火に入るインデッハの火葬式   作:つヴぁるnet

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第30話

「結局ここは半壊して誰もいなくなったと?」

 

 

「ええ、そうですよ。 帝国に制圧されてしまい、安全と引き換えに大司教様も連れ去られ、卒業式も開かれぬまま生徒は元の領地まで帰され、そして殆どの職員は逃げるよう大修道院を去りました。 しばらく帝国の拠点地として扱われましてが半年も経たないうちにこの場を放棄、はっきりとした管理者も居なくなり今に至ります」

 

 

「でも時折誰かが掃除に来てるらしいな」

 

 

「そうですか?」

 

 

 

荒れていたが人の手が施されているところはちらほらあった。 施された回数はそう多く無いが、お世話係だった身としてそこらへんは分かる。

 

 

「まぁ、もしその話が本当なら恐らくこの場に住んでいた民が勝手に手をつけているのでしょう。 でも盗賊に荒らされて近寄れないのだ現状ですね。 あとセイロス兵が時折来てるみたいですけど、来たところで意味の無い…」

 

 

「ふーん。 で、リシテアは何しにここへ?」

 

 

 

 

彼女は確か同盟諸国だったはず。

 

こんなフォドラの縮図に居るはずなく、北の方に居るはずだが?

 

 

 

「私は帝国に向かう途中に寄っただけです。 当時はドタバタして忘れでしたが、必要な魔道書をガルグ=マク大修道院へ取りに戻りに」

 

 

「そうなんだ。……帝国に向かう?」

 

 

「ええ、わたしはこれから"帝国側"に付きます」

 

 

「え? 何が理由で?」

 

 

「教える義理は無いです……と、言いたいところですがあなたには数年前のスコーンなど、比較的美味しい時間を頂きました。 それに今のところあなたはこの乱世とは無関係である事を理由にして一つだけお伝え出来るとすれば、わたしはあの皇帝の思想に賛同できたからですね。 まぁ、それ以外にも色々とありますが……」

 

 

「ふーん。 で、皇帝の思想とは?」

 

 

「ここがフォドラだから…と、だけヒントは上げます。 あとは自分で考えてください。 では私そろそろ行きますので」

 

 

「あ、はい。 …いや、待て、行く? 帝国にいまから? いやいや、外はまもなく夜だぞ?」

 

 

「………ふえ?」

 

 

 

そう言うと動きがピシッと止まるリシテア。

 

 

 

「危ないからここを発つなら朝方にしたら?」

 

 

 

わざわざ危ない時間単に歩く必要も無い。

 

ただでさえ治安が悪い状態なのだ。

 

彼女はソレも理解しているだろう。

 

 

 

「……そ、そうね…ええ、そうですね。 確かにその通りです。 わざわざ歩き辛い夜に出ることありませんね。 それが利口でしょう。 その方が間違いありません。 だから、だからですよ? 決して…っ、けっっっして!!夜が怖いからとか、そう言う理由じゃ無いですからね!」

 

 

「自分で墓穴掘るなし」

 

 

「怖くなんかありませんから!!」

 

 

 

それから俺はリシテアを置いて寮を出る。 外に出れば日はそろそろ落ちそうになっているのを確認。 今から向かう訓練所を見たら、次は俺が使っていた部屋を見に行こう。

 

そう考えて足を進める。

 

 

 

リシテアと二人で。

 

 

 

「リシテアの寝床はこっちじゃねーぞ」

 

「いえ、ちょうど訓練所に用があるので」

 

「いや、向かったところで何するんだよ」

 

「別にあなたには関係無いじゃないですか」

 

「はいはい」

 

「子供扱いしないでください」

 

「はいはい」

 

「『はい』は一回です!」

 

 

 

俺がリシテアと会わなければ彼女は一人で布のない寝床で夜を明かしていたのだろうが、俺と会ったことで余計(孤独)なものを自覚してしまう。 ダークスパイクの罠も消したりと完全に彼女の空間を邪魔してしまった。

 

 

 

「……なぁ、訓練所の門なんて開いてたか?」

 

「え? いや、私は部屋で休んでたので外の事は…」

 

「そうか…」

 

 

 

大修道院に続く廊下を歩くとき、横目で訓練所も眺めたが、その時は空いてなかった…筈。

 

しかし、ひとりの人間がギリギリ入れるくらいの不自然な開き方。 だが追い込まれた時は即座に退路として潜り込める広さでは無い開き方なので、恐らく訓練所に入っただろう者は盗賊じゃない誰かだろう。

 

 

まぁ、それよりも…

 

入り口に何か生き物がいた。

 

 

 

「ブルル」

 

 

 

「く、黒い鎧を纏った馬っ…!?」

 

「明らかに騎馬だな。 しかも騎馬の腰に予備として備えられてる武器が銀の剣だ。 使い手は手練れだぞ」

 

 

少し近づいてみるが大人しい。

 

いや、違う。

こちらから視線を外さず目で牽制している。

 

あまり露骨に近付きすぎると何かしらのアクションが起こるだろう。

 

安全な距離からして大股三歩位か?

 

これ以上近づくのは得策じゃないな。

 

 

 

「見た目だけだと間違いなくセイロス兵の騎馬じゃないですね…」

 

「馬の鎧には何も刻まれてないから所属不明のどっかの流れだろう。 自由騎士かは分からんが…」

 

 

 

しかし真っ黒の鎧を付けた騎馬だ。

 

刺々しく、禍々しい印象。

 

気味悪さを引き立てるコレはまるで…

 

 

 

「どこか引っかかりますね、この騎馬」

 

「奇遇だなリシテア。 俺もだ」

 

 

 

訓練所の門を眺める。

 

嫌な緊張感が漂うのは夜になるからでは無い。

 

勘…と、言うべきだろうか、俺は無意識に武器へ手を伸ばして確認する。

 

"勇者の剣"はマンディのところに置いてきてしまったようだ。

 

 

さて…

 

 

「リシテアは部屋に戻った方が良い。 安全は保証できない」

 

「なっ!」

 

「賊程度ならリシテアも遅れは取らないだろうけど、この奥にいる奴は絶対にそうではない。 それに君は帝国に向かう途中なんだろ? なら変な厄介事に関わらない方が良い。 今なら見て見ぬ振りは許される」

 

「……あなたはどうするおつもりで?」

 

「俺は……」

 

 

 

 

 

 

___確かめる

 

 

 

 

リシテアにそれだけを告げて訓練所へ。

 

彼女に見送られながら足を進める。

 

 

 

 

 

「…」

 

 

 

 

穏やかとは言えない雰囲気が漂うその奥へ進み、一つの学級の生徒全員が丸々入れそうな広間まで出る。 訓練所を支える柱と年季の入ったタイルはまだ顔を出している夕日に照らされてオレンジ色の空間に。

 

 

しかし…

 

それとは対照的な色をした者がひとり。

 

 

 

 

 

「…」

 

 

 

 

 

 

漆黒の鎧を待とう騎士が立っていた。

 

 

 

 

ソイツはこちらを振り向き、こう言う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______ 逸楽が来たか

 

 

 

 

 

 

 

「!」

 

 

 

 

威圧感。

 

それが一番最初に感じたもの…

 

 

 

 

「お前、その鎧…もしやと思うが、何者だ?」

 

 

 

 

確信は得ていた。

 

 

だが俺は敢えて尋ねる。

 

 

するとその者はこう答えた。

 

 

 

 

 

「皆は、私を見てこう呼ぶ…」

 

 

 

 

 

 

 

______【死神】が来たと

 

 

 

 

 

 

「…」

 

 

 

こいつが…

 

 

 

「それよりも貴様は______」

 

 

 

 

「______お前イエリッツァだな?」

 

 

 

 

 

 

「…」

 

 

 

 

死神騎士の言葉を被せるように名を吐いた。

 

 

次にくるのは静寂。

 

 

その言葉が相応しい時間が流れる。

 

 

段々と落ちて征く夕日は俺たちを照らす。

 

 

 

 

「……この"身"は死神騎士、それだけだ」

 

 

「そうかい、その"身"をイエリッツァと名乗らないのならば…」

 

 

 

 

姿勢を低く、コンバットナイフを取り出して…

 

 

 

 

「ここで殺してやるよ、死神」

 

 

「『死合う』か…」

 

 

「死ぬのはおまえじゃい! 悪友(フレン)を傷つけやがって!」

 

 

 

ウィンド入りの短剣を水平に投げるとカマイタチが発生。 短剣がウィンドの面積を埋めることで攻撃範囲は広がり、鋭さは増す。 もし回避せず武器で受け止めるようなら簡単に裂かれてしまうだろう。

 

 

 

「……」

 

 

しかし動揺する素振りを見せない死神騎士はその大鎌を振り下ろすと、刃の根元をピンポイントで叩き落とし、投げナイフは簡単に砕けた。 ウィンドの余風は死神の鎧にダメージを与えることはできない。

 

あとその鎌の名前は『サリエルの大鎌』だったよな? 情報として聞いたことあるが、見た目禍々しいな。

 

 

 

「戯れか…」

 

 

「小手調べと言えよ。 小手調べと」

 

 

 

死神騎士の呟きに愚痴りながらコンバットナイフを片手に、そして投げナイフを数本投擲しながら死神騎士へ突撃する。 しかしあの鎧を貫通させる威力は無いことを悟った死神騎士はサリエルの大鎌を大振りに風を起こす。 投げナイフの威力は落とされ、刃は容易く鎧から弾かれる。

 

しかしその防御力に怯まず、両腕がでガッシリと掴んだ大型のコンバットナイフを死神騎士に向けて剣先を鋭く光らせる。

 

真っ直ぐと愚直な攻撃に対して死神騎士はサリエルの大鎌を振り下ろすが、振り下ろされる間合いギリギリで俺は急停止して…

 

 

 

「風を…光を!」

 

 

「!?」

 

 

コンバットナイフを掴んだまま、両手にとある魔法を纏い、それを刃の根元から解き放つ。

 

 

"セスリーンの血"が体の中で共鳴した。

 

 

 

「エクスカリバー!」

 

 

「!?」

 

 

 

コンバットナイフの先から光の剣が伸びる。 数年前にブリギッドの海賊戦にてバーサーカに撃ち放ったやり方そのままを死神騎士に向けた。 光となって伸びる剣に対して流石の死神騎士も驚きが隠せないようで、仮面の中で怪しく光る赤い目は大きく見開く。

 

それでも死神騎士は鎌を変則に奮って光の刃を遮ろうとする。

 

それは無理だ。

 

これ武器攻撃では無く魔法攻撃だ。

 

受け止めれる訳がない。

 

 

だが…………キンッと、音がなる。

 

 

 

「ッ!?」

 

 

 

弾いただと??

 

本来なら武器や鎧をすり抜けてそのまま肉体に刃を通す初見殺しの技なんだが、死神騎士の持つ鎌はその光の刃を抑えた。 聖水やマジックシールドによって防護されているならエクスカリバー(光の刃)が防がれるのもわかるが、最初に投擲した投げナイフにはなんの反応もなかった。

 

実はあの投げナイフ、特殊な細工をしていて、もしアイテムや魔法で魔防を上昇させた者の鎧や武器に刃が触れるとその効果に反応して先端から根元まで半分ほど青く染まる。

 

しかしその反応は無かった。

 

故にバフ(強化)は一つもないと認知した。

 

だからエクスカリバーで初見殺ししてやろと思ったがあの大鎌、恐らく素材が普通じゃないな。 いや、サリエルの大鎌と言われるくらいだから玉鋼なんて普通の素材では無いのは確かだ。 とりあえずアレは魔法に反応する素材で生成されたのか、または光とは正反対の闇属性の力が交えられた武器なのか…

 

どっちにしろ光の刃に干渉できる武器のようだからエクスカリバーの攻撃は失敗した。

 

 

 

「小細工は効かん…!」

 

 

「ちっ…!」

 

 

 

武器をすり抜けて斬り裂いたと思ったがそうならない現象に驚いた俺に死神騎士はその隙を逃さずサリエルの大鎌を水平に切り裂く。 見た目より早く振るわれるサリエルの大鎌に何とか反応しながら後退、顎を引いてギリギリ回避するが死神騎士が持つもう一つの武器"銀の剣"も構えられていた。

 

ガラ空きの胴体に振るい落とされる銀の剣は腰から"アサメイの短剣"を取り出して受け止める…が、受け止めが浅い故に右腕が縦に切り裂かれた。

 

 

 

「ッ!!?」

 

 

もう一撃迫り来る銀の剣の斬撃をまたアサメイの短剣で受け止めてる。 痛みにこらえながらガチガチと刃が擦り合う中、俺は歯を食いしばった全身の力を利用して地面のタイルを思いっきり踏みつける。 不安定なへこみ方をしているタイルはテコの原理でガタン!と動き、短剣が真上に飛び上がる。

 

 

 

「このぉ!」

 

 

「!」

 

 

足の裏で短剣を捉えて一気に死神騎士の腹に押し込んだ。

 

直撃を免れるために死神騎士は横に飛び引き、足の裏で押し込まれた短剣は鎧に一つの切り傷を入れただけ。 ファイアーの魔法で地面に叩きつけて爆炎を起こして間合いを取る。

 

そして爆炎の中でアサメイの短剣と投げナイフを投擲。 弾かれる音と共に爆炎を手で払いながら俺自身も死神騎士に突撃。 迎撃で振るわれる銀の剣の斬撃をスライディングで回避するが、次にサリエルの大鎌が迫る。 ファイアーを放った余熱に更に(ファイアー)を重ねて"エルファイアー"の魔法を防御として展開。 闇魔導師が得意とするバリアと同じ容量で手を厚く(熱く)して死神の鎌を傷ついた右手で受け止める。

 

死神騎士に足払いを掛けて怯ませると、両足で死神騎士を蹴り上げ、弾かれて地面に落とされたアサメイの短剣を拾いながら最速で構えて足に力を込める。

 

飛びつくように腹を斬り裂いた。

 

 

 

「ぐぬ…!?」

 

 

死神騎士の痛みに耐える声を拾いながら横をすり抜ける。 俺はタイルの上を転がりながらアサメイの短剣で軽く残心、間合いを取りながら態勢を整えて、右腕の痛みを再確認した。

 

 

 

「ぐっ…痛ぇ……」

 

 

「……貴様…」

 

 

 

死神騎士は裂かれた横腹を抑える。 仮面の下は見えないがそうと痛い顔をしてるだろう。 なんせアサメイの短剣の切れ味はジェラルトの剛体を斬り裂けるからな鎧もまた別ではない。

 

 

しかし俺も無事ではない。 右腕は肩から肘に、肘から腕首まで、銀の剣で斬り裂かれたことで血があふれ落ちる。 三本の指先からポタポタと垂れ落ちる。

 

 

だが……俺はくつくつと笑う。

 

 

 

 

「懐かしいなイエリッツァ、まるであの時みたいだぞ。 覚えてるか?」

 

 

「……」

 

 

 

イエリッツァと名を吐くが死神騎士は反応しない。

 

だが『あの時』の言葉を理解してるならわかるだろう。

 

今から5年ほど前で、まだ俺がガルグ=マクのお世話係だった頃の出来事を。

 

 

 

「こうしてお前に斬られたっけな?」

 

 

「…」

 

 

 

イエリッツァと戦闘訓練の時に歯止めが効かずに本当の死合いと化した苦い思い出。 俺の技量でイエリッツァの剣戟を捌けず、結果として右腕を深く斬り裂かれた。

 

そして今回も同じだ。

 

この訓練所で、このガルグ=マクで、この温度と緊張感で、俺はまたイエリッツァに右腕を斬り裂かれた。

 

しかし今回は腹に一撃をお見舞いしてやった。

 

成長したんだな、俺も。

 

 

 

「お前の剣を見て、イエリッツァなんだと直ぐにわかった。 あの時よりも早かった。 でも見たことある軌道だから、お前の斬撃を逸らせた。 右腕だけが傷ついた」

 

 

「……」

 

 

「懐かしい痛みだよ、本当に。 だからさ…」

 

 

 

 

痛みに堪え、再びコンバットナイフに構える。

 

 

 

 

「その仮面、また俺が剥がしてやるよっ! イエリッツァァァ!!!!」

 

 

「……ッ! ユークリッドォォ!」

 

 

 

ウインドの魔法を重ねたアサメイの短剣を投擲。 目に止まらぬ速さに死神騎士は回避を選べず、反射神経だけで動かした銀の剣で受け止めるが、根元から破壊する。 衰えを知らないアサメイの短剣は銀の剣を破壊しながら死神騎士の方の鎧を砕き、肉も裂いた。

 

 

 

「グっ!?」

 

 

「エクスカリバー!」

 

 

 

放ったウインドの余力を更に高め、コンバットナイフは再びエクスカリバー(光の刃)を作り上げて…

 

 

 

「放て!蛇腹剣!」

 

「!?」

 

 

 

ベレスが使う"蛇腹剣(天帝の剣)"をイメージしてエクスカリバー(光の刃)を捻じ曲げる。 もとよりエクスカリバー(上級風魔法)は遠距離攻撃で、一定の長さで留まる訳がない。 放たれたのならば魔力が尽きるまでそのカマイタチは突き進む。

 

 

 

「小癪…!」

 

 

 

とある名言如く『蝶のように舞い、蜂のように刺す』のがエクスカリバーなら『風のように舞い、嵐のように裂く』のが俺のエクスカリバーだ。

 

しかし、死神騎士は蛇腹剣に対応していた。 恐らくベレスとの戦闘経験が活かされているのだろう。 先端に気をつけながら武器が巻き込まれないように小刻みに打ち払い、蛇腹の部分を深くねじ込ませないようにしている。 正直に言えば死神騎士の捌き方が上手い。 伊達に異名を持ってない。

 

 

 

 

故にこうなるのは予想していた。

 

 

 

 

 

だから最大の【切り札】を使う。

 

 

エクスカリバーと同じくらい素敵な魔法を。

 

 

技量なんかではどうにもならない裏技を。

 

 

ただ便利な魔法では終わらせない荒技を。

 

 

俺とセスリーンだけしか考えない凄技を。

 

 

それは…

 

 

 

 

「【リブロー】」

 

 

「!?」

 

 

 

 

遠距離回復魔法の"リブロー"を放った。

 

 

あまりにも場違いな魔法に死神騎士の仮面の中の赤い目は見開かれるが、俺はリブローをエクスカリバー(蛇腹剣)に上乗せする。

 

 

 

 

「狂っタカ……!」

 

 

 

 

そうとも、そりゃ狂っているとも。

 

 

そうでなければ狂っているお前を倒せない。

 

 

だが残念ながら回復魔法のつもりなんかない。

 

 

殺し合いに敵を癒すなんて狂った行為は無い。

 

 

だが知る必要も無いだろう。

 

 

これから見せるのは反則技だから。

 

 

 

「捌けるなら捌いて見ろ死神騎士! 俺の『必殺技』でお前を威殺(いや)してやる!」

 

 

「!!??」

 

 

 

動きが格段に変わったエクスカリバー。

 

サリエルの大鎌を強引に捩伏せながら死神騎士にエクスカリバーが強引に伸びる。 信仰の魔法力が高いセスリーンの力だからこそサリエルの大鎌を握る死神騎士の腕力を超えていた。

 

 

 

「グッ!?」

 

 

 

ただの攻撃なら回避されてしまう現実。

 

しかし、エクスカリバーは死神騎士へ絶対に当てようと動く。 それはまるで回復魔法としての指名の如く、対象の傷を『必ず』癒やして回復しようとするリブローの魔法だから、深い傷を負った死神騎士にエクスカリバー(リブロー)は迫り続ける。

 

 

絶対対象の回復魔法(必ず当たる)と言うバフ(悪強化)を得た蛇腹剣(エクスカリバー)は、死神騎士を癒す(威殺す)ために降り注ぐ信仰の光魔法を防ぐことはできない。

 

 

マジックシールドや聖水も貫通する。

 

 

障壁や大盾すらも貫通させる。

 

 

どんなに【速さ】や【技】が高くても回避すら許さない【100HIT(命中)】と書かれた恐ろしい数字を叩き出す。

 

 

どんなに【幸運】や【LV】が高くても意味をなさない【100CRT(必殺)】と刻まれた恐ろしい攻撃を編み出す。

 

 

これを、必ず、殺す、技と、書いて…

 

【必殺技】と言わなくて何と言えるだろうか?

 

 

 

「これはッ、防ッ…!!」

 

 

 

故に【絶対防御貫通攻撃(必中クリティカル)】と化したエクスカリバー(光の刃)イエリッツァ(死神騎士)を斬り裂いた。

 

 

 

「グォォア"ア"ア"!!?」

 

 

 

鎧は大きく切り砕いた。

 

 

血を浴びて汚れてしまった蛇腹剣は『物理攻撃』に変化する特徴を持つ。

 

肉体の一部の血が干渉しているため。

 

 

だから鎧をすり抜けずに蛇腹剣は死神騎士を斬り砕いた。

 

 

 

「グッ…ぐッ……ぐぐっ…ぅ」

 

 

 

 

だが、奴は倒れない。

 

 

 

「モっと…だ、もっと…死合…え!」

 

 

「相変わらずだな、本当に…」

 

 

 

セスリーンの血が体に入ってるとは言え魔力も尽きた始めた。 正直辛いところだがそれでも体はイエリッツァの闘争を求めて動く。

 

右腕の痛みも分からなくなったが奴を葬るまではその痛みを抱えて行けるだろう。

 

 

 

「終わらせようか、イエリッツァ…」

 

 

「来い…!」

 

 

 

魔法に耐えきれなくなってきたコンバットナイフを真上に投げ捨てながら死神騎士に二度目の接近。 最後の隠しナイフ(銀の剣)を腰から引き出して姿勢低くサリエルの大鎌を警戒する。

 

死神騎士は鎌を下から掬い上げるような反撃だが、先程よりも速さは落ちている。 攻撃。横に回避して、再び隠しナイフは死神騎士の喉元を斬り裂こう突くが、サリエルの大鎌の側面がそれを防ぐ。

 

一進一退の攻防の中で俺は痛む右手でサリエルの大鎌を掴んだ。

 

 

 

「この、ぉぉ!!」

 

「っ、ッッぐ!!」

 

 

 

互いに傷つき、腕力は互角。

 

いや、違う、コチラが不利。

 

掴む力の強さがわからない。

 

お陰で血は溢れ出し、脳が揺れる。

 

視界が眩んで、寒気がする。

 

でも、まだ終われない!

 

 

 

「サンダー!」

 

 

「ッ!!」

 

 

 

鎌を掴んだまま魔法のサンダーを放つ。 感電させるには弱すぎる威力だが、痛んだ腕の握力に集中させながら魔法を放つにはこのくらいまで。 だが死神騎士を怯ませるには丁度良く、俺は足腰に力を入れて、渾身のサマーソルトを放つ。

 

 

「がッ…はっ…!」

 

 

 

つま先を守る安全靴の鉄が、死神騎士の顎を、そして仮面を下から蹴り上げた。

 

痛烈な打撃と、男の声が音が響き渡る。

 

 

 

そして…

 

 

 

 

「!!」

 

 

 

 

下から蹴り上げられて外された死神騎士の仮面。

 

 

寂れた訓練所の中で、あの頃の懐かしい顔が見える。

 

 

それは間違いなく…

 

 

 

 

「やっぱり、お前だよな…!」

 

 

「がっ…貴様…ッ!!」

 

 

 

 

真上に投げたコンバットナイフは重力に従って落ちてくる。 サマーソルトの着地の反動を活かしてもう一度俺は上に飛んだ。 仮面を外した男よりも高く、いつもよりも高く飛脚しながらコンバットナイフを掴み、最後の力を振り絞って握りしめて…

 

 

 

 

 

 

___ぶっ飛ばして差し上げやがれですわ!

 

 

 

 

 

憤怒する悪友の気持ちも乗せて…

 

 

 

 

 

 

「エクスカリバー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

皮肉だな。

 

 

数年前に狙った禁忌(セスリーンの血)から斬られてしまうなんて。

 

 

 

 

 

 

 

___ 夕陽の中で刃が光った。

 

 

 

 

 

つづく

 




《イエリッツァ》

ガルグ=マク大修道院の働き手としてはユークリッドの2年後輩で、互いに年は近い。 時間があれば訓練所で演習する仲であり、授業の手伝いや逆賊の討伐に向かうなど共にする事は度々ある。 もちろんお茶会に参加させられてり、お菓子作りの試食を任せられたり、夜間警備で夜空を眺めながら話し合ったりと、そこそこな関係を築き合い、そして会うたびに「死合うか?」と尋ねるのはお約束。 ユークリッドの機嫌が悪いときは脛に強烈に一撃がお見舞いされるらしい。 嫌いじゃ無いけど、別に好きでもない。 これと言って仲良しでも無いが、そこまで仲は悪くない、そんな二人の関係である。


ではまた
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