劣悪な環境下、紋章の有無、偽物の愛情、人権無き扱い、そして…私を愛してくれた愛する母と姉を追い出したバルテルス家のゴミ共を斬り捨て、最後は全ての元凶である父親を殺害した。
それから死神騎士としての人格がハッキリと生まれ、
年数を重ねることで多少なり抑えることできた死神騎士としての情動だが、それでも唐突に狩場を求めて昂るもう一人の自分自身を隣り合わせにしながらも、武術師範として士官学校の生活を始めた。
そこにはとある青年がいた。
其の者は【ユークリッド・ラライヤ】
私よりも先に士官学校、また大修道院の関係者として働いていたお世話係。 年齢は種違いの姉と同じであり、私よりも一つ年上だったがどこか更に年数を重ねて来たような貫禄は気のせいだとは思わなかった。
それから時間を作れば彼と模擬戦を行い、互いに指南し合う。 師範として教える側の私だったが彼から学ぶ事は多かった。
だが彼との関わりは訓練所だけでは終わらず、元貴族だったとしてもあまり嗜み事は無かったお茶会や食事会、そして釣りもその一つ。 また彼が魚に使う醤油の開発で味見担当として半分ほど無理やりやらされたがあの味は何とも言えなかった。 あれは苦手だったが手作りのシュークリームやポテチと言った茶菓子は好物になった。 特に前者は良きモノだ。 そのため最初はあまり乗り気では無かったお茶会も楽しみの一つとなり、私好みのスイーツが必ず出してくれたりと、彼と言う人間性は私の中で大きな興味につながる。 そこには後に血を狙って攫うことになる
だがそれでも、私の中では『死合える者』がこんなところにいた喜びが大きかった。 甘い茶菓子よりも渇きを癒す彼の強さ。 しかし彼は私との『死合い』断り続ける。 それでも私は死合いを求める。 だが彼が不機嫌な日に間違って誘ってしまうのならば脛を狙って強引に黙らせてくる。 反応出来ないあの蹴りは何とも言えない痛みに襲われた。 しかしあれは彼が致し方ない故に手に入れた力。 命の輝きを敵にぶつけるために強くなった訳ではない。 命を燃やして絶やすために大きくした訳でもない。 でも彼が果たすべき使【命】のために強くするソレはとても大きかった。
だから、私はそれに触れてみたかった。
そして実戦に近い模擬戦を行ったある日。
刃を保護した鉄の剣で打ち合っていた時だった。
本気で奴の命を狙えば、奴は命を取らせまいと本気になる。 求めていた時間が訪れ、私はこれまでにないほど昂ぶっていた。 だから奴もこれまでに無いほど殺意の込められた眼を持ち、その姿に私と剣は闘争に奮え、命の削り合い求める。
剣を振るえば、彼はどう動く?
剣を落とせば、彼はどう払う?
剣を裂ければ、彼はどう凌ぐ?
その一つ一つが、次と次を求める。
だが、楽しみはいずれ終わりが来る。 ユークリッドは振り落としたその剣を両手で挟んで押さえ込み、剣の刃に斬られて垂れ落ちる血を見て激しく憤る。 無力化のための使われていた拳は敵を滅殺するために握られ、気づけば剣を振るう事が叶わないほどに私を死に追い詰めた。 砕くような威力で地面に蹴り落とされ、仮面は耐えれず割れてしまう。 こちらの片足を掴んだユークリッドの拳には似合わぬ暴力の言葉が備わり、その単語に相応しい力で訓練所の柱に打ち付けられ、自分でも聞いたことない酷い音がなる。 命が壊れ始める音だ。
ユークリッドは愛用するコンバットナイフを拾い上げ、血の色に染めた眼を揺らせながらゆらりと動く姿はまるで本当の【死神】のように映る。
___私の命が殺される
随分と味わっていなかったその感覚が恐怖と錯覚する直前、ハンネマンが静止するその大声によって『死合い』は終わった。
それから半殺しだった私はしばらく床の上で治療となり、彼が謝罪と共に持ってきた蜂蜜漬けの果実茶とシュークリーム、私も謝罪を送った。 どこか狂っている私ならばまた『再戦』を望んでしまうのが普通だったが、それを告げる事は出来なかった。 なんせ、本気で彼が死合うことを嫌がっていたあの表情を思い出したから。 のちに気づいたが彼はこんな私を少なからず友人として見ていてくれたらしい。 彼にはセテスやフレンを始めとして生徒ならばホルストやアケロン、翌年にはモニカや士官学校の門番となった生徒など親しい関わりを持っている。 当然のように私もその枠に入っていた。
お世話係と師範の立場は大きく違い、後者の方が目の上であるが、働き先での先輩と後輩の関係を指すならばまた少し複雑になってしまうだろう。 だが私に対して躊躇いのない彼の行動は既にそれが答えだった。 脛を蹴ったりとやや攻撃的な対応もあったが、ユークリッドはイエリッツァを嫌っていなかった。
だから、死合うことを望まなかった。
けれど彼の性格からして床の上で動けない私の状態を良いことに死合い結果で私の敗北をネタにその日はずっとバカにしてくれた。 彼なりのささやかな反撃だろう。 甘んじて受ける他なかったが、完全に打ちのめされたその敗北は悪い気分ではなかった。 最後のあたりは鬱陶しくなったが。
それから私も動ける程度に落ち着き、大司教からは両成敗としてガルグ=マクの地下に盗賊退治として送られ、その後は死合い事は二度となくいつも通りの時間を過ごし、私にも
そして……あれから四年。
不意にあの時の『死合い』を思い出す。
死神騎士を追い込むために死神へと映った彼を思い出し、ガルグ=マク大修道院へ赴く。
___逸楽が来たか。
武器を構えたユークリッドは"イエリッツァ"ではなく"死神騎士"を「殺す」と言ってくれた。
また『死合え』る喜びが、それが
死合う。 死合う。 死合う。
その血が
その癒しは光の刃となって
その斬り裂きは
訓練所から完全に落ち始めた筈の夕陽の中で光る。
まるで、まだ命を絶やすことを受け入れない彼そのものが表していた。
死神ではなく眼を血の色に染めるのではなく、人間としての眼を命の色に染めていて…
ユークリッドは
死神騎士は…
死んだ……
…
…
「モッツァレラチーズ、モッツァレラチーズ、モッツァレラチーズ、モッツァレラチーズ、モッツァレラチーズ」
「じゃあ倒れてるコイツは?」
「モッツァレラ!!……………はっ!?」
「イエリッツァだるぉぉ? 十回ゲームはリシテアの負け」
「な、な、なっ…」
「………なんだ、この状況」
うるさいその声に目を覚ます。
「はいリシテアが間違えたので罰ゲームとしてイエリッツァの脛を蹴ります。 ふんっ!」
「ッ!?!?」
冗談なく本気で蹴りやがった。
あまりにも酷すぎる待遇だが懐かしい脛を蹴られた痛みが意識を覚醒させる…
……待て………痛み…?
「体が、痛いという事は……?」
「生きてる証拠だるぉ!!」
「ッ!?!?」
また蹴られた。
しかも別の足にだ。
あまりにも酷い目覚めの一撃だ。
痛みはしっかりと伝わる。
だから疑問を持つ。
なぜだ?
なぜ生きている?
痛覚はあるが視界はまだはっきりしない。
「酷い目覚めをお見舞いしますねこの人は……呆れた」
もう一人の声を横を見る。
白に近いクリーム色の髪を持った女性が一人。
もしかして…
「メル…セデス…?」
「なっ、なっ!? ……ぅ、こほん、わたしはメルセデスって人ではありません。 わたしはリシテアです。 回復魔法を使ってあげたのに失礼な人ですね」
違うのか…
メルセデスでは無いのか…
「な、何ですか、そのガッカリオーラは!? 勝手に間違えておいて、ま、まるでわたしが悪いみたいですね…」
「いや、むしろメルセデス並みに大人の色香を兼ね備えた女性だと思われたと言う事は、リシテアはそれ相応なんだという事だな。 いやー、成長したんだね」
「!!! ……ふ、ふん、そ、そんな風な煽てに、わ、わたしが喜ぶとは、随分と子供的な考えですね。 別に、そんな事言われて嬉しいとか、全然思ってないですからね。 大人の女性と思われて、いやいや、全然ですよ。 勘違いしないでください」
「ははは、ちょろい」
「聞こえてますよ!? あんたハデスΩでも受けてみますか!?」
「ただ高火力だけの魔法が
「うぎぎぎっ!!!」
「…」
腕も動く、足も動く、頭も動く。
戦いの痛みはまだあるが、命はまだ動く。
「なぜ、私は生きている?」
この二人に聞いたわけでは無いが、私の呟きに二人は応酬を止めてコチラを見る。
いや、メルセデスと勘違いしてしまった少女の方はユークリッドに視線を向けた。
「聞きたい?」
「ああ…」
素直に答えてしまった私だが、彼は「そうか」と言って少女に掴みかかれてシワになった上着を整えると…
「ならお茶会でも開きながら話さない?」
「……」
「……」
訂正する。
脛だけではなく、どうやら頭も痛いらしい。
「あんたこの空気と流れでお茶会はバカですか?」
「あ、夜のお茶会が怖いなら別に参加はしなくていいですよ」
「はぁ!? 上等です!参加してやるから美味しいの淹れやがれですね!」
「よかろう、携帯しているアップルティーを淹れてやろう。 しかもダグザ製の茶葉だ、フォドラからしたらレアだぜ〜?」
「あ、アップルティー!? っ、ゴクリ…」
少しやかましい。
だがそう思えるという事は生きてると思える感覚がハッキリしているのだろう。
「…」
死神はどうやらもう居ないらしい…
♢
さて、食堂から使われてなかった茶器を取り、それを洗って使える状態にすると、ダグザのアップルティーを淹れる。
庭園の中に二人を招き、リシテアが闇魔法でテーブルと椅子に絡みつく雑草を枯らし、軽く掃除して、お茶会の舞台の完成。
月明かりの下で会話が始まる。
そして…
「あー、それ紋章がお前を生かしたんだよ」
「紋章だと?」
「まずイエリッツァが持つラミーヌの紋章は回復に関する能力が高いだろ? 確か魔力消費を抑えて使用回数を増やす力。 そにて癒し手に纏わるラミーヌの紋章は"とある力"に反応した」
「とある力…?」
「セスリーンだよ。 いや、もうこの場合【セスリーンの『紋章』】と言った方が良いかな。 ほら、俺の手の甲に浮かんでるだろ? これセスリーンの紋章だぜ。 因みにお前と死合った時になんか備わっちまった」
「ぶっ!? けっほ、けっほ……はぁ!? 生まれ付きじゃ無いんですか!? と言うより紋章が後付けで備わるのですか!? まさか秘められていたものが開花した…??」
「いや、違うぞリシテア。 俺は紋章なんて持たずに生まれた平民だとハンネマンから調べられている」
「な、なっ、なっ! い、意味がわかりません! なぜです!? 紋章と言うのは生まれつきの……っ! ま…まさかあなたも私と同じ!?」
「落ち着けってリシテア。 何がリシテアと同じか知らないが、俺はこれがどうしてあるのかも理解してるし、周りからしたらそれはかなりレアケースな話であることも存じてる。 だから後でゆっくり教えたてやるからまずは落ち着け。 それよりもセスリーンの紋章だけど、イエリッツァはセスリーンの事を思い描いて何に行き着く?」
「セスリーン……」
「あ、イエリッツァ、わかってると思うけど五年前の辺りから変化したあのビジョンは抜きにして考えろ。 そうでなければセスリーンのイメージがぶっ壊れてしまいますわ!」
「……」
「本当、訳がわかりません…」
ちなみにイエリッツァはフレンがセスリーンであることは知っているだろう。 何せあのガバガバセスリーンの事だ、イエリッツァなら察してもおかしくない。
「セスリーン……なるほど、慈悲…か」
「その通り。 セスリーンの紋章に纏わる説明文の中には『慈悲』の言葉が強く刻まれている。 つまりセスリーンの慈悲によりイエリッツァの命を奪う事はなかった。 またイエリッツァが持つラミーヌの紋章も関わり、似たような資質を備えた紋章だから命を削り合わなかったし、なんなら干渉すらもした」
「……ラミーヌが」
「待ってください。 何が干渉ですか?」
「俺の【リブロー】だよリシテア。 敵意を持つ対象に回復魔法なんて効果がある訳ないのに、その効果を受け止めたのは紛れもなくセスリーンの慈悲から生まれてる。 てか俺の魔法の大半がセスリーンが得意とする魔法ばかりでな、しかもそれらはセスリーンの貰い物だ。 ならセスリーンの性格や属性が魔法に備わるのもおかしくない。 だからセスリーンが使う『エクスカリバー』もイエリッツァの命を奪う事は無かった。 むしろ斬ったのは死神騎士の方だ。 イエリッツァではない」
「……ユークリッド、それはどっちも私だ」
「だとしてもセスリーンはイエリッツァの命を残した。 まぁ器を殺しきれなかったから死神騎士の方のお前もいずれまた膨れ上がるだろうか、セスリーンはイエリッツァに『生きろ』って答えを残した。 あ、もちろん俺は殺すつもりでエクスカリバーを振り下ろしたぞ」
「そうか」
「いや、その感性で良いんですか?」
「コイツは狂ってるから今頃だよリシテア。 はい、おかわりのアップルティーだ」
まぁ、説明はしたが実は少し嘘ついている。
俺が殺すつもりで刻んだのは死神騎士の方であり、イエリッツァを殺すつもりはなかった。
どちらも同じイエリッツァの体だけど、俺はその死神のような鎧と逸楽に乾く命に向かって
しかし、まさか『
かつてロディ海岸でフレンがやっていたピンポイントでリザイアをぶつける
もちろんそのやり方は俺から提案したものであり、当事者である俺もセスリーンの力を利用してマインドブレイクの精度を高めた。 結果的にセスリーンが使う魔法に物理的な干渉を消し去ることができた。 だから俺が使うエクスカリバーは鎧をすり抜けて肉体に攻撃を与えることが出来る技になった。
ちなみにすり抜け関係の有無はまず生命や魔法が宿らないモノに対してすり抜ける。 ようは金属製の鎧とかだ。 その逆を表すなら光と対象的な力を持つモノに対してはすり抜けずに干渉する。 これは闇や濃度の高い魔力に対してのイメージ。 あの先ほどのイエリッツァ戦では血液を付着させて常時干渉可能状態にしていたから、敵に干渉して物理的な斬撃になった。
これがどうなるかというと要するに【攻撃】が【魔防】にダメージ計算を行うわけだ。
アーマーナイトは確実に死ぬ。
因みに、エクスカリバーが無干渉状態で敵を斬った場合はリザイアと似た攻撃になる。 ダメージを与えるのはもちろん、敵の体に刃を食い込ませ、魔力や精神をズタズタに傷つけて魔力障害や精神障害を与える。 つまり
そもそも魔導師系はエクスカリバー使わなくてでも倒せるし、わざわざ大技に頼らなくともなぁ…
あ、
そもそも俺の使える攻撃魔法は全部下級だ。
この3年間中級以上の攻撃魔法は何一つ覚えなかった。
殆どダラダラしてたハピはハデスΩまで覚えたのにね? やはり俺はとことん理学がダメらしい。 その分、浅くて広いから色々とやりくりできるのでそこまで気にしてはいない。 そもそも信仰は得意だから魔法関連はそう困っては無いけどな。
「あの、やはり気になるんですが、なんであなたが突然紋章を手に入れたのですか? しかもさっきの戦闘で」
「待て、先ほどのは戦闘では無い。 死合いだ」
「そこはどうでもいいですイエリッツァさん。 ダークスパイクしますよ?」
「…」
「唐突な力関係に茶葉生えるわ」
思わず笑ってしまった。 いや、まぁ、ただでさえ鎧は斬り壊されてイエリッツァの魔防が絶望的に低いのにリシテアの魔力で騎馬特攻でとかマジ可愛そうなイエリッツァ可愛い。
てか、この三人の中の力関係だと多分イエリッツァが一番弱いんだろうな。 おいおい、お前どこかしら中ボスのような立ち位置だったのにそれでええんかよ? このままだと事実上「___逸楽が来た」ってイキってた厨二病じゃねぇか。
あかん、俺の友人が案外大した事なかった件について。
やっぱりお前って脛蹴られてる程度が丁度いいな。
「それで、なんでユークリッドさんは紋章を?」
「ただのメシマズ案件だよ」
「…は?」
「まずフレンの事についての話から始まるんだが…」
それから説明。
頭の良いリシテアをはぐらかすのも面倒なのでフレンがセスリーンである事をブチまけ、そしてメシマズ案件までの流れを説明した。 最初はフレンの正体に驚いていたが、あまりにも斜め上過ぎた展開を聞いてめちゃくちゃ呆れられた。 うん、その反応間違い無いよな。
それで紋章が浮き出るとか頭おかしいわ。
「……しかし、やはり血、ですか…」
「……それってリシテアも?」
「え?」
俺の言葉に表情が固まる。
そしてイエリッツァは…
「その髪の色、儀式の類だな…」
「!?」
口を滑られせてしまったリシテアにイエリッツァが確信を付いた。 そういやイエリッツァは死神騎士として裏方で動いてたからソレ関連は何となくわかってんだろう。
それよりも…
「なるほど、リシテアも俺と同じ感じか。 しかし俺なんかよりも穏やかとはかけ離れた所業…かな?」
「……っ」
「…」
先ほどまで感情豊かにコロコロ変えていた表情は一瞬にして影の中に退いてしまい、リシテアは目を伏せる。
やはり彼女はそういう事らしい。
そしてそれは望まぬして手に入れた産物。
その想像はとても容易かった。
イエリッツァも黙ってそれを察する。
「ええ、そうです……そうですよ。 二人の考えてることは合ってますよ。 望まずして無理矢理体に埋め込まれたような忌々しい紋章の力によって、髪の色は寿命を早く迎えているように白く変わった。 まるで老婆のように。 時間もなにもかも紋章に食われてしまったッッ…!」
「必要無い産物なんだな」
「ッ!! こんなの要りませんよ!!!」
八つ当たりするかのように叫ぶリシテア。
アップルティーがカップから溢れる。
そして「ハッ」となり大人しくなる。
「すみません……声を荒げました。 あと…」
「いや、気にするな。 俺も下手に触れた、ごめん。 イエリッツァも反省してる」
「……ああ、無神経だったな」
「いえ……もう、昔の話ですから…」
「……」
悲しく告げるが、乗り越えたような表情。
そしてイエリッツァはそんなリシテアに何かを写し描いたのか、少し表情を強張らせていたが、すぐに冷静を装った。
イエリッツァも紋章関係で何か深いところを思い出したらしい。
「…なるほどね」
リシテアは紋章を忌々しい呪いのように捉えていた。
寿命を短くしてしまう後遺症付きでだ。
なら…
それを聞いてしまったのなら…
一つ、助けを出してみようか。
「その紋章、無くせるなら、無くしたい?」
「…………ええ、そりゃ……」
「じゃあ、その紋章を消しちゃうか」
「…………………え?」
たっぷり時間を使って何とか返事をするリシテア。 イエリッツァは残りのアップルティーを飲みながら大人しくしている。 しかし耳は立てた。
「俺のエクスカリバー、もしかしたら紋章を破壊出来るぞ?」
「ッッ!!!?」
目を見開くリシテア。
紋章を無くす…
いや、破壊する。
その言葉に酷く驚いていた。
「俺ね、エクスカリバーに関して一つ隠してたけどリシテアが心の内を聞かせてくれたら特別に明かす事にするよ」
「な、なにを…」
「俺が開発したエクスカリバーってフォドラで強敵と出会っても良いための技なんだ。 で、なぜフォドラを限定してそれを述べたのかと言うと、ここって紋章持ちが溢れる大陸じゃん? 士官学校でも3割の生徒がそうだ。 そのくらいにフォドラは紋章主義の社会で成り立つ」
「何が言いたい…?」
「わからないかイエリッツァ? 紋章持ちの多い大陸を意識して、俺が扱うエクスカリバーをとある方向に開発した。 それはだな…」
「そ、それは…?」
「……」
「『紋章持ちに対して特攻』を与えるエクスカリバーって事だ」
「!?!?」
「なるほど……通りで…」
イエリッツァをエクスカリバーの一撃で葬ったのは魔防が低いからではない。
"紋章持ち特攻"のダメージがあるから倒しきたのだ。
俺も実際、苦し紛れな最後の力だったからイエリッツァにしっかりエクスカリバーが届いたのかも不明な威力。
でも倒し切ったのはイエリッツァが紋章持ちとして"特攻ダメージ"が入ったからだろう。
「そんな訳で紋章を
「!」
「で……どうする? やってみるか? リシテア・フォン・コーデリア」
ティーポットの中は空っぽになった。
このままお代わりも淹れようと思ってたが…
「……もう、生き急がないで良いのなら…」
「…」
「もう、時間に追われなくて良いのなら…」
「…」
「っ、わたしはッッ!!」
やることは、決まったようだ。
ティーポットの中身の茶葉袋を取り出してファイアーの魔法で燃やして処理する。
残りのリンゴの香りを楽しみながら、ニヤリと俺は笑い、席を立つ。
そんな俺にイエリッツァも飲みきったティーカップを置いて尋ねてきた。
「やるにしてもどうやるのだ?」
「まず色々と安定させる必要があるから、ここ大修道院で必要なモノを集めて、とある場所に向かう」
「?」
「ここガルグ=マクには500年以上のありとあらゆるモノが仕込まれている。 そんでだイエリッツァ、四年前に両成敗として地下に派遣させられたあの時を覚えてるか?」
「ああ」
「その時"あの部屋"を覚えてるか?」
「…あの部屋………ああ、なるほど、あそこか」
「うん、あそこだ」
「…………おい待て、私も行くのか?」
「ああん? そんなの当たり前だるぉぉ? 回復魔法でイエリッツァの傷を治したのは彼女だぞ? それで今もピンピン生きてんだぞ? それとも女の子に恩を作ったままでええんか?」
「………ユークリッド、お前は厄介な奴だな」
「お前ほどじゃねぇしお前に言われたかねぇよバァーカ!! ……まぁ、報いるなら用心棒でついて来いよイエリッツァ。 今だけでも悲劇の
「……」
「あ、騎士は騎士でも、死神騎士の方はもう要らないからな?」
「………今回だけだ」
「よし、決まりだな。 じゃあ……行こうか」
「え? ど、どこにですか?」
「そりゃ…」
ガルグ=マクの地下だよ。
つづく
(悲報)エーデルガルト終了のお知らせ。
紋章特攻のエクスカリバーの攻略はヒューベルトくらいしか出来ないでしょう。 魔防が高く、光をも喰らう闇属性を持ち、紋章を持たない。 単体を得意とするユークリッドに対して、集団を得意とヒューベルトなので、ユークリッドをどうにかできるのは彼くらい。 それでも周りのキャラが相手するよりマシな程度で、マンディに乗られたら魔道士系は既に勝てるわけがないのでやはり無理ゲーに近いところ。
《エクスカリバー》
紋章特攻効果を手に入れた攻撃魔法であり、攻撃が【防御】か【魔防】のどちらかでダメージ計算できるブッ壊れ性能。 しかも蛇腹剣とリブローの合わせ技で必中クリティカルにしたりとフォドラ最強で最凶な技と化した。 更に魔力回路的なモノに傷害を与えるため魔法を封じたりもできる。 夕陽に重なるとオレンジ色に染まるらしい。
ではまた