飛んで火に入るインデッハの火葬式   作:つヴぁるnet

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第35話

ジェラルト・アイスナーを殺したモニカもどきのクロニエを覚えてるだろうか? 最後は捨て駒にされたとは言え闇に蠢く者の一員であり、フォドラの闇の中で蠢き続ける異常者達。 またトマシュに化けていたソロンもその一人である。 俺とベレスで奴らを討ち倒した。

 

しかしそれは解決にはない。 悲劇の断片に過ぎず、まだ他にも危険な奴らが潜んでいる。 だが奴らの居場所は誰にも分からず、まさに闇の中で蠢いてようなだった。

 

その居場所をアケロンは知った。 さらに帝国のバックアップを務める組織であることもアケロンは知ってしまった。

 

アケロンはこんな奴だが、帝国の貴族達との伝手を持ち情報網は確保している。 その中でアケロンは最初に"人体実験"の話を得ていた。 これは3年前の話であり、俺もアケロンから聞いていた事だ。 出所は帝国だが根源は闇に蠢く者の組織であり、その組織の居場所は領土問題を起こすアケロンだからこそ不幸にも知ってしまう。

 

その組織がどれだけ危険であるかを調べ終えたアケロンは、呼び起こしてはならない大厄災の一つであることに戦慄する。

 

だから彼は覚悟した。

 

 

 

 

___誰もこの領土に手を出せないよう僕が確保して見張る。

 

 

 

 

助けは求めない。

 

いや、求めることは出来ない。

 

大貴族に力を借りた時、それを引き金に闇に蠢く者が表に出て現れ、帝国と共に同盟領全てを蹂躙する未来をアケロンは怖がる。 だから風見鶏の異名を利用する事で周りからは『また問題児』かと非難されなれた世間評価で事実を隠し、アケロンは一人闇に蠢く者を抑える計画を立てた。

 

そうやって過去の汚点を活かしたアケロンはゴネリル家の真下にあるフリュム領西側の領土に手を伸ばし始めた。 昔のように『ここは僕ちんのだ』と言ってその領土を支配し、帝国と手を組みながら闇に蠢く者と対立を避け、他領に刺激させないように政策を企てる。 またアケロンはミルディン大橋と言う生命線を多少なり握っているので帝国と手を組む闇に蠢く者はアケロン側に手を出し辛いだろうとミルディン大橋で後ろ盾も作る。 効果は高く無いだろうが無いよりはマシだ。 それほどに準備をしていた。

 

当然ながら他領はそれを良しとせず、アケロンの制圧に取り掛かる。 だが乱世の時代で兵はあまり他所の戦線に割くことは出来ず、睨み合いを続けて現状を維持を決めたコーデリア側。 アケロンにとって好都合だ。 しかしローレンツ本人の援軍と、イレギュラーでユークリッドが参戦する事態に急転。 疲弊してたアケロン側はそもそも戦力をあまり持ってない故に抵抗も虚しく、容易く制圧されてしまう。

 

 

そしてこの有様だった。

 

 

彼は、一人で戦って居た。

 

 

 

「相談に乗れないのは分かるさ。 だが意思を伝えるくらいは出来ただろうに」

 

「君はそれができる相手じゃないから出来なかったんだよローレンツくん。 これはただ事じゃないんだよねぇ。 僕達同盟国の領土が脅かされる危険は昔からあって、それで戦乱の時代にてその動きも活発になりやすい。 そんな訳で僕ちんは帝国と一緒に潰される事を恐れた。 だからこうして動いたのさ。 まぁ……小領国の僕程度の働きなんて無駄だったけどねぇ。 だれか一人でもこの危機を察してくれたらって……望み薄で挑んだのさ……」

 

 

 

自虐気味にアケロンは悲しく笑う。

 

でもやっと誰かに明かせる話だったから、その表情は少し軽い。

 

 

 

「……ローレンツ、どうするんですか?」

 

「どうする何も、アケロンの話が本当ならば闇に蠢く者と言うのは愚劣極まりない! 貴族としてこのローレンツ・ヘルマン・グロスタールは見逃せないね!」

 

「待ってください、もしや槍を突きつけると言うのですか…!? それはつまり帝国に楯突くのと同じですよ!? 奴らは外道の集まりですが、あの帝国と繋がりを持ち___」

 

「そんなの関係ない! 其奴らは人体実験を行い、平民達を弄んできた畜生の塊だ! アケロンが帝国からその情報を入手したと言うことは、帝国自身も手を組んでいるその組織がどれほど危険かを理解してるはず! なのに帝国はそんな奴らと手を組んでいると言うことは正義とは程遠い外道の集まり他ならぬ! …ぐぬぅ! 僕はそんな連中と手を組むなど御免被る! ……フェルディナント君には悪いけど…っ、僕はこの話を聞いた以上、帝国側に付けないね…!!」

 

 

 

貴族としての判断。

 

いや個人としての判断か。

 

ローレンツは今此処でそれを決める。

 

 

 

「だけど……もし槍を突きつけるにしても戦力は私達は心持たない……」

 

 

 

リシテアの言うことはごもっともな話。

 

このままローレンツの判断でコーデリア領だけ動くには少な過ぎる。

 

いや、そもそも同盟諸国は戦力が一番少ない領土だ。 王国の3分の2。 また帝国の半分以下。 紋章持ちも少なければ英雄の遺産の使い手すらあまり存在しないこの領土で、一体なにが出来ようか?

 

…ってのか、リシテアの考え。

 

 

 

俺ならば…

 

 

 

 

「いや、むしろこの戦力で行こう」

 

 

 

「「「!!??」」」

 

 

 

驚く三人からは「なにを考える!?」言う視線が集まる。 俺の狂言と言える内容にローレンツが噛みつこうとするが俺はそれを手で静止する。

 

 

 

「敵は未知数かもしれないが、俺の予想ならば奴らのアジトに保留してる人員は少ないと見てる。 それなら早期決戦が正解だと考えるな」

 

 

「なぜそう思うのだ?」

 

 

「帝国が戦線を広め過ぎてる故、闇に蠢く者達は幅広くバックアップに勤しんでる筈だ。 ならアジトに控えてる奴らは少ない計算。 もしこの仮説が当たるなら奥で踏ん反り返ってる親玉の首も取りやすい」

 

 

「しかしそれが事実にしろ、敵のアジトの規模が想像よりも大ければ制圧どころじゃ…」

 

 

「誰が制圧すると言ったローレンツ? そのアジトを破壊するんだよ」

 

 

「なに!?」

 

「いや、ユークリッドさん、それはかなり難しいのでは? 破壊するための火薬なんて無ければ、時限爆発系の魔法での破壊活動に手掛けれる人は居ません。 コーデリア魔導隊の領民達でもそこまでの力は…」

 

「無茶だよユークちゃん…」

 

 

「いや、無茶では無い。 可能な話だ。 そもそもソイツらはどこにアジトを構えてるか考えたことあるか? 俺はホルストとパルミラ戦線(フォドラの喉元)で戦って来たし、マンディで幾度なく空を飛んで来た。 しかしそれらしき建物は見当たらなかった。 魔法で姿を隠してるとかならわかるが、それを見つけれ無いほどこのフォドラは広いとは思わない。 なら、そのアジトはどこにあるのか? 残りは"地下世界"だ」

 

 

「地下…? ……どうなんだ、アケロン」

 

「ユークちゃんの推測は当たってるよ。 僕ちんもその存在と大まかな拠点地だけの情報は手に入れたけど、地上の表にある話は聞いたことない。 何せ同盟諸国の者達からは見かけた情報すら無いからねぇ。 ならどこかの次元にあるのか、または地下なのか……闇に蠢くと言うくらいだから大凡予想はついてたけどねぇ…」

 

「じゃあ、破壊と言うのはもしかして…」

 

「生き埋めか…」

 

 

「正解だ!……と、言いたいけどあくまでそれは可能ならばの話。 でも敵地に配置された人員は多く無い事を予想しての制圧だ。 でも地上を支えてる柱とかぶっ壊せるなら生き埋めも計画に入れておく。 もしそれで闇に蠢く者達が全滅させれないにしろ活動くらいは止めれる。 何よりまもなく冬が訪れる。 …どうよ? 極寒の季節でお家(アジト)が無いとかもう分裂するしか無いじゃん? なんならそのまま凍え死なすか、コーデリア領に逃げ込んで来たら残党を狩り合わせるか、フォドラの喉元まで追い込んで魔物の生き餌にするか、色々とマジで可愛いそうな運命を辿らせてやろうよ」

 

 

「「「うわぁ……」」」

 

 

 

外道たる連中には、外道で対抗してやろう。

 

 

命を命と思わない生き物は殺しつくしてやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、まずアケロン側とコーデリア側は"まだ戦争を続ける"ことにした。

理由は簡単。

 

カモフラージュのためだ。

 

領土の割譲の処理を進めると闇に蠢く者も別の動きを始める。 場合にやっては隙を突き辛くなるので、まだ戦争継続を表向きに希望した。 ただし先ほどのように睨み合うだけで、戦線を急いで引き直してその現状を領民達に任せて続行しただけ。 ごまかせる時間はそこまで長く無いだろう。

 

 

 

だからバレる前に…

 

 

 

「よし! このローレンツに続け! 下郎どもを一気に叩くぞ!」

 

「「「うおおおー!!!」」」

 

 

 

「おいおい…」

 

 

バレる前にって俺たちの侵入がすぐバレそうだな。 まったく。 比較的ステルス行動中だったのにローレンツが士気をあげて盛り上がるから存在感出してしまったじゃねーか。 ああもう滅茶苦茶だよ。

 

 

「しかし…ここ、近未来的な空間だな。 シャンバラとか言ったか? これは予想外だろ…」

 

「え? なにか言いました?」

 

「いや、なんでもないリシテア。 まず入り口は制圧した。 あと予想通り敵の数は少ないから一気に蹂躙してやろう。 リシテアは広範囲で撹乱頼むよ」

 

「任せてください! 立て直しが効かせない勢いで殲滅します! さぁ! みなさん! 行きますよ! 聖水は持ちましたか!」

 

「「「持ちましたー!!」」」

 

「ではコーデリア魔導隊! 進撃です! 魔法は有りっ丈を放ち、ローレンツ達の援護を努めながら建物の破壊工作を抜かりなく!」

 

「「「おおおー!!」」」

 

 

 

感覚が『丸太(神器)は持ったか!』だけど頼もしいのでなにも言わず見送る。 因みに聖水を沢山持ってるのは集団で範囲魔法攻撃を放つためだ。 敵も含めてここの建物の柱を爆撃の魔法でぶっ壊す勢いだ。 そのためフレンドリーファイアーの危険性があるからそれを減らすための聖水である。

 

 

まぁ、一つ不安要素があるとすれば…

 

 

 

「マンディ、平気か?」

 

「ぶる…る…」

 

「無理して来なくても良かったんだぞ?」

 

 

 

このアジトの入り口に侵入する前からマンディが何かに怯えて落ち着きがない。 勘の良い天馬だから何か察知して怯えている…とはまた違い、マンディは何かを拒んでいるように見えた。

 

こんなの初めてだ。

 

 

 

「マンディ、今なら自分で外に戻れるだろ? 俺は一人でも行けるから…」

 

「ぶるる!」

 

 

 

しかし気丈に振る舞おうと頑張る。

 

俺はそれが心配で仕方なかった。

 

 

 

「わかった、そこまで言うなら行こう。 でも情状不安定言い訳にして無様を晒すなよ…良いな?」

 

「ぶるる!」

 

 

 

マンディを信じて背に乗る。 それがペガサスライダー(天馬の乗り手)であり、命の半分を任せてるのだからマンディにはしっかりしてもらわないと困る。 そう遠回しに言うがマンディは理解してるのでその言葉に気持ちを入れ替えて目付きが変えた。 良い子だ。

 

 

 

「!?」

 

 

 

すると真上から稲妻のようなエネルギーの攻撃が降り注ぐ。 だがマンディは俺が指示を出す前に即座に回避する。 俺は少し振り落とされそうになるが、情状不安定に囚われないマンディの心の強さを再確認しながら先ほどの攻撃に思考を巡らせる。 自衛式のダークスパイク的な奴か? あの天才(リシテア)なら今のを一眼見てそのカラクリを暴きそうだが彼女はここにいない。

 

でも、俺はここが近未来要素の具合を測りながら答えを探す。

 

 

 

「見た目は機械の様なもので多いがここは中世だ。 完全に機械的なモノじゃないな。 何せマンディが感知するのだから今のは魔法の類だろう。 もし誰かが遠隔で供給してるならマジックシールドで遮ってもいいが…」

 

 

 

さっきからエネルギー砲の銃口がこちらに狙い定めて放とうとしている。 しかしその動きまるで人が操作しているように見える。 だとしたら…

 

 

 

「範囲外の場所か! さっき見逃した小さい建物が怪しい!」

 

 

マンディに指示して来た道を戻らせる。 すると厳重に鍵がかけられた部屋を見つけた。 近くに行けば暗証番号でも入力しなければ開かないくらいのセキュリティーが施された扉が備え付けられた部屋だ。 関係者以外がこれを開くことは叶わないだろう。 また盗賊を使って開けるかくらいは必要だが…

 

 

 

「俺には関係ないな。マンディ、そこで待ってろ」

 

 

 

俺はマンディから飛び降り、戦いで放置されてた鉄の剣を拾い上げて魔法を放つ。

 

 

 

「エクスカリバー!!」

 

 

 

鉄の剣を使ってエクスカリバー(光の刃)を作り上げる。 セスリーンの紋章がその魔法と共鳴し、その力は増すと刃どこまでも伸びる。

 

そして壁に向けて水平に斬り払った。

 

汚れのないエクスカリバーは非干渉状態であり、そのため鉄製の物質などはスルリとすり抜ける事ができる。

 

 

故に…

 

 

 

___ぐぁぁあ!!

___ぎぃぃあ!?

 

 

 

壁の奥から悲鳴が上がった。

 

 

 

「おっと、これは可愛そう」

 

 

「ひ、ひひん…」

 

 

 

 

次に扉が開く。

 

エクスカリバーの一撃で部屋のロックが空いたらしい。

 

 

 

「お前か、遠隔操作してる奴は」

 

 

「なっ! なぜすぐここが分かった!? 貴様は初めてこの場に来たというのに!? もしや魔力完治能力が高いというのか!? ダークマージでも無い癖に!!」

 

 

「違うな、俺が特別少し賢いだけだ」

 

 

「小癪! 地獄で死に晒せ! ライナロック!」

 

 

 

さりげなく最上級職のグレモリィと対面、ライカロックの炎が俺の周り渦巻く。 最初は小さな炎達だが、中央の敵へその炎は集まる。 そして集った炎からは超高火力の火柱に一変。 まさに豪炎の一言に尽きる。 しかもそれをグレモリィの魔法と来たらその人間は一瞬で灰になるだろう。

 

だが何もせず焼かれてやるほど俺は優しく無い。 懐から聖水を真下に落とし、先ほどの鉄の剣で聖水を砕きながら地面に突き刺す。 次にエクスカリバーを放った時に余力として片手に余ったウィンドは、エルウィンドに底上げを行い、もう片方の手はセスリーンの紋章を活かしてマジックシールドを展開、それをエルウィンドに乗せた。

 

すると俺を中心にマジックシールドの効果を保った暴風が広がり、ライナロックの炎をかき消した。 聖水を含んだ風が炎を弱め、マジックシールドの効果で炎を鎮圧させた。

 

 

 

「なっ、なッッ!? なんだと!? そんなバカな荒技があるのか!? 魔法を二つ同時に使うなど!?」

 

 

「それはあの世で考えてろ」

 

 

「がっ…はっ…」

 

 

 

動揺して隙だらけだったので投げナイフで頭に投擲して一撃だ。 それからエクスカリバーで壁越しから斬られて地面に倒れていたウォーリアーとアサシンにもトドメを刺して部屋を出る。

 

 

 

「マンディ、さっきの場所に戻るぞ」

 

 

「……」

 

 

「……どうした? そんなに紋章が嫌か?」

 

 

「………」

 

 

 

先ほど、セスリーンの紋章を使った技をマンディは後ろから見ていた。

 

初めて見たのだろう。

 

だからその表情は、穏やかではない。

 

 

 

「……お前が、紋章の何かを嫌がってるのかは知らない。 別にはそれは構わない。 嫌なことがあったんだろうけど」

 

 

「…」

 

 

「でもこの戦いの場にいちいち嫌悪を起こすなら……このアジトから出て行け、邪魔だ」

 

 

「ぶるるっ、ぶるる!」

 

 

「………そうかい。 ならとっとと行くぞ! 親玉はすぐそこだ!」

 

 

「ひひーん!」

 

 

 

 

 

エクスカリバーで使った鉄の剣を捨て、最後の部屋を目指した。

 

 

 

 

 

つづく





エクスカリバーがチート性能でヤバい。


《電撃戦》
ユークリッド達のはかなり小規模だけど、どこぞの王子様はソシアルナイト二人だけを連れて敵の城を攻略してしまうその大胆さは、ある意味本当の猪はディミトリよりも聖魔の光石の方の王子様だろう。


ではまた
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