飛んで火に入るインデッハの火葬式   作:つヴぁるnet

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第44話

 

その国を治める王が自らが武器を持ち、軍の戦線に出る必要性は…まぁ、分かる。 武器を振るうことで戦争の中で意思を示すは誰もがやってきた事だ。 その代表が英雄王(マルス)であり、ファルシオンがそれに応えてくれた。 でも俺は理解し難い。 戦線に出て、それで討たれてしまい、そして敗北を許してしまうのは愚かじゃないのか?

 

……こんな回答をしてる時点で俺は戦争ってのがあまり分かってないのかもしれない。 ただ"勝利性"を求める故か、エーデルガルトが武器を持って出てきた事に少し呆れた気持ちもある。 長が討たれたらそれで国は終わりなのに戦いに身を投じるのは軽率だと感じるのは間違いだろうか? その危険性も省みないとしたら正直バカだとも思ってしまう。 それを進行形で行なっているディミトリも紙一重であり、もしかしたらエーデルガルトじゃなく、討たれたのがディミトリだったら……なんて考えもあるけど、ベレスの信頼が大きいからエーデルガルトよりは、って気持ちは大きい。

 

……平和ボケなのかな俺。 転生者だし、中世を理解してるようで理解してないのだろう。 俺も結局はベルナデッタだけのためだけにこの戦争を動いていて『成したい』を独りよがりにフォドラで戦っている。 そうやって闇に蠢く者も轢き殺した。 王国の奪還ではコルネリアや敵の位置を暴くために天刻で巻き戻すなんて非道も平気でやってきた。 それをFEでリセットボタンを押すように淡々と…

 

…ああ、なるほど。

俺は戦争の意味とか、過程とか、終結とか、多分恐らくどうでも良いのだろう。 勝てば勝者、負ければ戦犯。 俺の考えはただ単純なんだ。

 

ただ、フォドラが平和だったらベルナデッタと無事に出会えただろう、そんな怒りが戦争を起こしたエーデルガルトに向いている。 だから戦争の根源がグロンダーズの戦いに身を投じて来た時はバカな奴だと思った、これで戦争が終われると。 同じ学級だった仲間のベルナデッタを囮にするような覇道を突いたのに結果負けてしまい、それはもうなんとも言えない。 けれどそうまでしたのなら、これまでのために命を踏み付けて来たのなら、そこは勝つべきだろうに、何故か敵である彼女に失望している。 そして苛立ちがある。 ベルナデッタをそう扱ったことに。 個人的な怒りがエーデルガルトに止まらない。 これが一番大きいのだろう。 ……優れない。

 

しかもその彼女はいまだに気絶していて、ヒューベルトはそのご容態を心配しながらも残った帝国軍を指揮してメリセウス要塞まで撤退する。

 

俺はこのため息を最後にして、マンディを飛ばす。

 

 

 

「しかし、レイドボスなんて聞いてねぇぞ…」

 

 

 

生き残った連合軍と巻き添えにした同盟軍も帝国軍に続き、フォドラの悪夢として再び君臨したネメシスから逃げている。

 

流石に消耗した状態で迎え撃つほど連合軍は強く無い。 これがゲームなら全回復からの連戦で何の問題もなく戦うだろうが、一人一人のバイタリティを考えたら地獄だ。 そうとも、ゲームのように次のチャプターで元気に戦えてたまるものか。 そもそもアレは聖魔とか覚醒とかの連中がヤバすぎるだけだ。

おうテメェらの事(エフラム とか クロム)だよフィジカルお化け共め、元気ありすぎだろ。 妹の方(エイリーク)も大概だけど周りの仲間もおかしい。 お城を制圧したら即座に防衛戦のため表に出て連戦とか体力持たなくて死ぬわ普通。 やはりアレはあの兄妹がおかしい。 まだ蒼炎の方が現実味あった。

 

で、このように他の作品と比べたが、結局のところ帝国倒したらレイドボス突入して現在ルナティックで済まないレベルに俺もため息しか出ない。 ベルナデッタを奪い取って、帝国を落として、それで終わりかと思ってた。 なんなら影武者でも何でもなく本体(エーデルガルト)そのまま戦線に出てきた覇王の情報にて勝ち確を味わってたくらいだ。 ボスを倒しておしまい!…と、思いきや裏ボス枠みたいなのが出てくる始末。 解放王ネメシス? ストレスフリーという意味で解放王か? 喧しいわ。

 

いや、解放したのは俺か。

 

シャンバラを崩壊させたのはタレスなレタスなんだけど、その引き金を引かせてしまったのは俺なわけで、その衝撃で封印とか多分そんな感じのが解かれてしまい、ネメシスが復活したのか? 責任は取るべきだよな。

 

 

 

「あー、イライラする。 闇うご死ねよマジで」

 

 

「闇、うご?」

 

 

「闇に蠢く者を短縮して"闇うご"だよクロード。 何気に長ったらしいあの名前いちいちフルで呼んでられっか。 てかクロードは何しに武装してんのさ? もしかして漁夫の利?」

 

 

「それは最終手段だろ。 今回グロンダーズの戦いに関しては無関係のつもりだ。 そもそも俺たちは崩れたあの跡地を調べに向かったんだ。 本当なら派遣させたいところだったが、リシテアの奴が何かとんでもない魔力の歪みを感じたと言うからな、それで残党が居ると思ったから俺も動いたんだ。 ローレンツの奴の話を聞いて放っておくにも行かない。 帝国とのパイプも切れてしまい、王国との衝突に気が取られてると思って向かった矢先だ。 まさかのまさかだ。 解放王ネメシスがいると思うか??」

 

 

「思わん」

 

 

「最初は迎え撃ったさ。 だが強すぎた。 それでまだ領内が無法地帯な東側のグロスタール領を南下しながらパルミラから離した。 橋でも挟撃したが戦力が足りなくて撤退。 だが途中でネメシスのやつは帝都に真っ直ぐ進んでる事を知った。 その先に俺たちが居るもんだから轢き殺すように奴らは進んでな、気付くのが少し遅すぎだ。 仲間は犬死だ……クソ…」

 

 

「……それで、同盟軍は必死に南下してたらグロンダーズ平原に行き着いて、俺たちを頼ろ……いや、ネメシスをぶつけようとしたな?」

 

 

「………」

 

 

「…なるほど、考えは上手いと思う。 それで連合共々帝国を倒せたらラッキーな訳か。 だから"最終手段(漁夫の利)"だった訳か」

 

 

「……否定はしないさ。 俺は同盟国を守らないとならない。 だからコレが俺の中での最善策だ」

 

 

「……」

 

 

 

何というかフォドラの皇女と王子と王子は似たような感じだな。 少しだけ王子がまともに見えるくらいか? でもナンセンスの皇女、有情を被る猪、キレるけどお粗末、と言った三人に大差は無い。 こんなのでフォドラはまとまるだろうか? いや、だから戦争が起きたのか? てかそもそもエーデルガルトの戦争理由がハッキリ分からない。 理由はあるからこんな大戦になったんだろうけど、正当化しようにも勢いが衰えて泥沼化寸前だったりと無茶苦茶だ。 これではイタズラに厄災を広めたに他ならない。

 

人々の苦しみが長くてフォドラが衰退してしまう。

 

 

 

「でもクロード、お前は悪くない。 アレは俺が起こした悪夢だ。 闇うごを滅ぼした事で少なからず平和が訪れるかもしれないが結果的に俺が始動となり、事態は別の方向に悪化した」

 

 

「なら…! お前が責任を取るとでも言うのかよ?」

 

 

「ああ、取るよ」

 

 

「!!?」

 

 

「取るに決まってるだろ。 アレを倒さないと、俺の生まれたフォドラは本気で悲しみの世界になる。 そんなの許すわけがないだろ」

 

 

 

俺はこのフォドラで生まれ、それで沢山を得てきた。

 

しかもこれは第二の人生で、死んだらユニットは蘇らない手強いシミュレーションゲームな世界を持った星の中で彩り豊かな人達に溢れ、その中でベルナデッタって女の子に出会った。 もしこの世界がゲームになって、彼女にスポットライトが当たるのなら恐らく人気を集めるだろう、そんな女の子に出会った。

 

だがそれを抜きに俺は彼女が好きだ。

 

ここがフォドラだから彼女に出会えた。

 

そんなフォドラの暁風はイタズラ好きで、時には残酷な縁へと平気に落とし込む。

 

けど、そんなフォドラで俺は生きてきた。

 

なら…今回も同じだ。

 

 

 

「マンディ、もしかしたら次は最後の戦いになるかもな…」

 

 

「ひひーん!」

 

 

「ああ、なんとかしてみるさ、いつも通りな」

 

 

 

メリセウス要塞へと撤退するクロードの飛竜と並走するマンディは人間味深いアクションで応える。 ああ、いつだってマンディは俺に応えてくれるよな。 本当、俺にはもったい相棒だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解放王ネメシスの進軍は遅く、すぐに振り切ることができた。 いや、奴らはわざと足を遅めて俺たちを逃しように思えた。 遊んでいるのか? いや、それとも追いかけることができない理由でもあるのか? それとも息切れ? あり得るな。 解放王もマラソンはキツかったか。 そもそも同盟軍と数日間休みなく戦いを繰り広げていたから消耗はしているのだろう。 頭の切れるクロードの地の利を活かした戦いの結果だろう。 同盟軍の兵の減少量もそう多くない…と、いうよりかは同盟軍はそこまで兵士を揃えていなかった。

 

同盟国は元々シャンバラの調査のためにクロードそこそこの兵を集めた訳だが、リシテアが「何か密度がおかしい…」と察知したらしい。 どうやらシャンバラを遠隔操作で倒壊させるために色々と細工したリシテアの魔力がネメシスの復活の際の魔法力に触れた事で察知した。 嫌な予感がしたリシテアがグロスタール家にその話を通して同盟国に警戒を呼びかける。 しかしタイミングが良いのかゴネリル家とリーガン家が調査に向かうと言うのである程度の武装して倒壊したシャンバラを目指したら、ネメシスが復活して、戦いが始まってしまったらしい。

 

そして戦いながらも南下し俺たちにぶつけようとしたクロードの策だった。 もし帝国とまだ戦っていたら大混戦じゃ済まないレベルの惨事が引き起こさせれていただろう。 だから早めに決着つけれてよかった。 これものうのうと戦場に出てきてくれたエーデルガルトのお陰。 彼女はMVPだな。

 

 

 

「いま、何やら我が主人をバカにしたような気がしなくも無いですが…?」

 

 

 

そう言うヒューベルトの圧倒的な殺意はこちらに向けられる。

 

招かれたメリセウス要塞の中でヒューベルトの威圧感が充満する。 ただでさえ解放王ネメシスが向かってくる緊張の中でそれは激烈する。

 

しかし俺にはその威圧感は無意味だった。

 

 

「どうでも良いからお前のところのポンコツ姫をさっさと起こせよ、いつまで倒れてんだ」

 

 

 

「起きたわよ。 それにしては随分な物言いね…」

 

主人(あるじ)!……ご気分は…?」

 

「最悪ね、色々と」

 

「…」

 

「ねぇ、なぜ私とヒューベルトは生きてるの?」

 

 

 

エーデルガルトの言うことはごもっとも。

 

戦争の火種である首はすぐそこにある。 それを討ち取って戦争の終結を示さなければならない。 しかしそうなってない現状が理解できないのだろう。 覚悟は出来てるのに、死は迫りくることはない。 もどかしさがエーデルガルトに残っていた。

 

 

 

「ディミトリがエーデルガルトを殺さないってさ」

 

 

「!?」

 

 

「付き添っていたベレスもディミトリに全て託していて、エーデルガルトを殺すことはしなかった。 なんか考えがあるんだろ。 でもまぁ、その話は追々にして、いまの騒ぎは聞いてるな? 敵同士だった帝国と連合におまけで同盟が協力態勢を組み、メリセウス要塞で新しい戦いの準備を済ませようとしている。 どうしてかわかる?」

 

 

「解放王ネメシス……だったわよね? うっすらとだが聞いてるわ」

 

 

「正しくは、解放王ネメシスとその他愉快な仲間たちだな。 それでアレに詳しい者(セテス)が『あの正体はただの薄汚い盗賊集団だ!』と言ってた。 それなら俺たちと認識は大差無く、そして敵勢は今回の連合軍より少ないくらい。 しかし一部の奴らが持つ武器は一つで100人分の力を持つと言われて…まぁ"英雄の遺産"って奴だな。 それぞれレプリカなんだろうが交戦経験があるクロード曰くまんま英雄の遺産並みの力を持ってるとか。 それで何故か帝都アンヴァルを目指している」

 

 

「帝都アンヴァル……なるほど、そう言うことね。 狙いはそうなのね」

 

 

「?」

 

 

 

簡潔に説明を受ける。

 

エーデルガルトはレアさんを捕らえているが、それはあのセイロスでは無いかとの話。

 

レアさん=セイロスの確信は無かったが今回のネメシスの件でその解答に行きつき、エーデルガルトの中でその信憑性が高まる。 そうなると討たれたネメシスはセイロスに復讐すると決めているのだろう。

 

しかし…

 

 

 

「さらりとレアさんがアンヴァルに捕まってる重大報告も気になるけど、なんでネメシスはアンヴァルに直行してんだ? そこにいるのを知ってるのか? ……あ、闇うごか」

 

 

「自己完結が早いわね…」

 

「しかしその可能性は充分に高いですな」

 

 

「なら進軍コースはアンヴァル確定か…」

 

 

「そうなると通り道のメリセウス要塞で迎え撃つの?」

 

 

「もちろん…と、言いたいが、こちらから出向くつもりだ」

 

 

「何故?」

 

 

「まず要塞を重点に置いた防衛戦なんかで倒せる伝説じゃない。 中身は盗賊集団でも強いのは確かだ。 セオリー通りに要塞があるからそこで迎撃なんて安直過ぎる。 死を恐れない連中達が英雄の遺産を振り回しに来るんだぞ? 立て篭もってるのはベルナデッタだけで良い。 だからメリセウス要塞は利用するだけで俺たちは挟撃を行う。 それでまっすぐネメシスを狙うんだ」

 

 

「……短期決戦のつもりね?」

 

 

「あいつらは生まれたてだ。 フォドラの空気に馴染む前に倒す。 だからエーデルガルト、お前も協力しろ」

 

 

「……」

 

「主人…」

 

「ねぇ、ユークリッド。 一つ教えて」

 

 

「どうぞ」

 

 

「私は、あなた達にとってフォドラを統一しようとした悪女よ。 それにベルナデッタを囮にしてあなたを矢の雨の中で焼き殺そうともした。 覇道のために踏み潰そうとした私に何故力添えが出来るの?」

 

 

「それはフォドラを脅かしている覇王に頼んだ時の認識だろ? 俺は覇王に頼んでんじゃなくて負け犬のエーデルガルトって奴に『協力しろ』と言ってんだ。 お前の覇道に価値はない。 自惚れんな」

 

 

「貴様…!」

 

「…ふふっ、あっはっはっは!!」

 

「エーデルガルト……様??」

 

「ふふ、そう。 負け犬のエーデルガルト、ね。 それに、覇道には価値も無くて、わたしを覇王とは思ってないのね。 本当に、散々な評価ね」

 

「主人……」

 

「ええ、わかったわ。 協力する……いえ、協力させてくれるかしら?」

 

 

「ああ、協力させてやるよ」

 

 

 

それからエーデルガルトとヒューベルトを連れて作戦会議室まで向かう。 ちょうど集まったディミトリとベレス、ロドリグにセテス、クロードにヒルダ、あと数名ほどの帝国の将軍だ。 俺はともかくエーデルガルトが来たことで緊張感が漂う。 本来なら生きてここに顔を出すことはあり得ないからだ。 でも時の縁はこの場に三つと一つを集めたのだ。

 

 

「ディミトリ、あとクロード…」

 

 

懐かしい級長の顔合わせ。

 

 

「目を覚ましたか、エーデルガルト」

 

「おやまぁ、美人になっちゃって」

 

 

何処かほっとしたようにするディミトリと、昔みたいに茶化すクロードに向かい入れられながら「あなたは変わらずね、クロード」とエーデルガルトが返せば「それはお互い様だろ? 背負う物もな」と頭に腕を組むクロードからは緊張感が感じられない。

 

それとは正反対に感情を穏やかにしないセテスは静かに睨みつけているが、ここで一悶着起こすほど理性がないわけでは無い。 しかし後でレアさんのご無事を確かめるために問うだろう。 いや、今にでも動かしそうだから俺は扉を閉めて

 

 

「ロドリグさん、始めましょう」

 

「そうだな」

 

 

頼れる大人筆頭のロドリグさんに話を投げて場を動かした。

 

 

さて、作戦を再確認。

 

 

まずメリセウス要塞に突撃するだろうネメシスは正面から帝国軍が押さえ込み、足が止まった隙に左右から連合軍と同盟軍が挟み撃ちで包囲殲滅を決行。 そして一気にネメシスの首を討ち取る流れ。 また帝国には…と、言うよりかは闇うごの技術を握っているヒューベルトの便利なワープ機能を活かして懐に入る形だ。 しかしワープするにも人数が限られており、ワープする人間の数が多いほど精度は乱れる。 でもほんの数名なら正確なワープが可能だ。 だからネメシスには2、3名程で向かい討って倒す話になった。

 

ネメシスの強さは未知数だが、天帝の剣と同じ蛇腹剣を使うとクロードが情報をくれたので同じ戦法を使える者で相殺しながらネメシスと戦う。 蛇腹剣ならベレス、と…言いたいところだがベレスはディミトリと他の英雄の遺産持ちのヤベー奴らと戦ってもらうことになった。

 

ベレスじゃないなら誰か? 簡単だ。

 

蛇腹剣(エクスカリバー)は俺も使える。

 

 

そして…

 

 

 

「エーデルガルトは俺と一緒にネメシスを討ちに向かう」

 

 

「「「「!!???」」」」

 

 

「わかったわ」

 

 

 

ネメシスを討つのは、俺とエーデルガルトの二人になった。

 

 

 

「理由を聞いて良いか?」

 

 

 

セテスが聞く。

 

彼はてっきり俺とベレスが向かうと思っていたのだろう。 自他の認識上この軍内で1番の強さを争うのは俺とベレスの二人だ。 ならネメシスには一番強い者をぶつけたい。 しかし俺は…

 

 

 

「ベレスではダメだ。 天帝の剣が劣化してネメシスと対抗できない可能性が高い」

 

 

「そうなのか?」

 

 

「ええ、ユークリッドの言ってる事は当てはまるわ。 戦うなら天帝の剣じゃ無くても良いけど、今のわたしのパフォーマンスを最大限に活かすなら蛇腹剣の使用が必須になる。 でも蛇腹剣の変えが容易く行えるユークリッドならネメシスと互角以上は保証される。 そこに少しでも決定打を増やすならわたしが一番。 それに…」

 

 

「…?」

 

 

「わたしと肩を並べて戦っても普通にして居られるのはユークリッドの一人だけ。 心情的にも、体力的にもね」

 

 

「「「「………」」」」

 

 

 

周りから否定の声は上がらない。

 

当然だろう。

 

だってエーデルガルトだ。

 

被害者と加害者。

 

俺は数ヶ月程度だが周りの人たちは数年単位の傷を負う。

 

割り切れるわけが無い。

 

 

 

「だから私はユークリッドとエーデルガルトがネメシスを確実に倒せるように、私たちは周りの英雄の遺産持ちを倒して支援する。 これが一番近い道だと考えてる」

 

 

本当はベレスにもネメシスの首を取るために来て欲しかった。 肩を並べてほしかった。 俺と同じくらい強いから彼女なら間違いなかった。 けど、戦いで劣化した天帝の剣で事故を起こしても仕方がないから、ベレスには別の役割を頼んだ。

 

 

 

「…」

 

 

 

ああ、本当に……悔やまれる。

 

ベレスほど使い手はなかなか居ない。

 

同じ剣士のフェリクスやカトリーヌでもネメシス相手に足りない。

 

だから、俺はエーデルガルトと二人でやる。

 

 

 

「ユークリッドとエーデルガルトの運用に異論は無い?」

 

 

「無い。 君自身もそう決めたのなら、私達もそうしよう。 それに、私が信頼する(ベレス)が、最も信頼できる男(ユークリッド)に託せるなら、私からは何もない」

 

「同意ですね。 私も多大に信頼を寄せていたあの伝説の傭兵の、その息子ならば文句はありません」

 

 

 

セテスもロドリグもうなずき、ディミトリやクロード、他の将軍からも否定はない。

 

そしてヒューベルトは「主人を頼みますよ…」と一言だけ残した。

 

 

 

 

「……」

 

 

 

 

皆は知らない。

 

 

フォドラの命運が掛かっているのに、俺は"嘘"をついた。

 

俺がエーデルガルトと戦う理由をここで述べたことは"建前"に過ぎない。

 

 

情けないがこれは私情を交えた理由。

 

俺とエーデルガルトがネメシスと戦うのは。

 

 

 

「ケジメだからな…」

 

「ケジメを付けるためね…」

 

 

 

闇うごは俺が壊滅させて、この展開まで追い込んだ。

 

エーデルガルトは闇うごを利用して、ここまで動かした。

 

これが原因でネメシスと言う厄災が生まれた。

 

悪夢の引き金を引いたのは俺とエーデルガルトの二人だ。

 

なら、俺とエーデルガルトで決着を付けるべきだ。

 

それはこの作戦会議に来る途中に二人で決めたこと。

 

あと従者のヒューベルトは足手纏いになる。

俺はそう切り捨てた。

 

正直に言えば彼はボロボロだ。

 

俺がトドメを刺したのが原因だが、グロンダーズ平原の戦いに参加する前も凡ゆる戦いに奔走している。 はっきり言って働きすぎだ。 強い魔道士は集中力が大事だから疲労があるのは大問題。 体力面の根性云々は接近して戦うものだけの特権だ。 魔道士はそうはいかない。 ヒューベルトにはエーデルガルトが助かるようにバックアップを務めてもらう。

 

 

 

「偵察の情報によればネメシスは進行を止めている。 いつ動き始めるか分からないがあの感じだと明るくなってから動きたいのだろう。 だからそれまで皆は休まるよう。 まともに動けるのは4分の1程度だからな」

 

「じゃあ作戦会議は以上で」

 

「解散だ」

 

 

 

最後はセテスとベレスの進行役によって終わる。

 

それぞれ元の定留置に移動して戦いに備える事にした。

 

 

 

「ユークリッド」

 

 

「どうしたベレス?」

 

 

「ありがとう」

 

『……すまんのじゃ』

 

 

「気にするな。 お前は女神の記憶かもしれないけど、だからと言って完璧じゃない」

 

 

『じゃが、儂は…』

 

 

「ソティス、俺はお前の事は嫌いじゃない。 むしろ好きな方だ」

 

「うん、わたしも」

 

 

『!! ……全く、何を唐突に生意気を言うか。 けど儂もお主らのような小童は嫌いじゃないわい』

 

 

「それだけ俺たちは案じてる訳だ」

 

「うん、その通り。 だからソティスの中の最善を尽くそう。 わたしを救ったように、自分を失わず、皆を失わせず、皆を導いて」

 

 

『っ、女神らしいことなんか、なかなかに出来なくて、すまないな、お主ら…』

 

 

「女神じゃなくても良いさ」

 

「ユークリッドの言う通り」

 

 

『っ、ほ、本当に生意気共め! 可愛くない奴らだ! ふん!』

 

 

 

ソティスは…

 

ネメシスに苦しみ始める。

 

その苦しみは記憶から。 それは原初の女神ソティスから受けていた記憶。 ネメシスによって全てを葬られた悲劇を彼女は記憶している。 それを告げられた時に俺とベレスは慰めの言葉を掛けるかを迷ったが、ソティス自身はあくまで原初の女神の記憶から作られた形。 でも「気にするな」とは言わずに「気にしすぎるな」と言った。 もしかしたらそれは偽りの記憶かもしれない。 だが無関係だと切り捨てしまえるほどじゃない。 だからその痛みは忘れてやらないことが原初の女神のためかもしれない。 それが正しいかはともかく、ソティスをネメシスの前にだすのはベレスも気が引けた。 天刻は重要な武器だ。 ソティスが埋めつけられた記憶に狂乱せず、まともで無ければならないから遠ざけることにした。 天帝の剣が劣化していることを理由にして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「?」

 

 

 

「あ、ユークリッド様…」

 

「ひひん」

 

 

 

ベレスと別れたあとマンディが待っている場所までやってきた。

 

そこにはベルナデッタもいた。

 

 

 

「マンディにお礼を言ってました。 ユークリッド様を連れてきてくれてありがとうって」

 

 

「そうだな。 マンディが居なければ俺はここに居ないかもしれないな」

 

 

「ひひーん!」

 

 

「うおお、お? ちょ、ちょちょ、ど、どうした!」

 

 

 

マンディが俺の袖を噛むと引きずる。

 

そしてベルナデッタの隣にポイッと投げて、鼻先で俺の背中をグイグイと押して顔で「あっちに行け」と言う。 しかしその目は穏やかで、譲る気持ちが伺える。

 

 

ああ、そう言うことか。

 

 

 

「…行こうか、ベルナデッタ」

 

「え?」

 

「ありがとうな、マンディ」

 

「ふるる〜」

 

 

 

どうやらマンディは俺とベルナデッタが二人っきりになれるように気を利かせてくれた。 だからそれに甘えて俺はベルナデッタの手を引いてこの場を去る。 マンディの事を気にするベルナデッタだが「二人っきりにしてくれたんだよ」と教えるとベルナデッタは理解して、ほんのりと頬を熱く染める。

 

 

二人で落ち着ける場所までやってきた。

 

 

 

「ユークリッド様…」

 

 

「待てベルナデッタ。 まずその『ユークリッド様』はやめようか? ガルグ=マクで言ったよな? 様って付けるなと」

 

 

「あ、ぅ……わ、忘れてました」

 

 

「じゃあ覚えなおそうか。 俺の事は『ユーク』と呼ぶ。 親しい人は皆そう呼んでいて、ベルナデッタにもそう呼ばれたい」

 

 

「わ、わかりました…………ユ、ユーク」

 

 

「ああ、バッチリだ」

 

 

「……ふふ、なんか、満足気ですね」

 

 

「ああ、そりゃな。 やっと君に出会えたんだ。 約束を果たせた。 これほどに嬉しい事は無い…のに、出会いが燃えた砦の中ってどうなんだよ? 俺は感動の再会を考えていたんだぞ」

 

 

「そうなのですか?」

 

 

「ああ。 まず春の陽気か、それとも秋の木漏れ日の中でか、ベルナデッタと感動の出会い方を。 もしくは夜の屋敷に忍び込み、夜闇に紛れてベルナデッタに会うのも良かった。 それで久しい再会を喜び合い、抱きしめ合い、そして何度でも口付けを交わし合い、それで『貴族を捨てて俺のモノになれベルナデッタ』と告げて、有無言わさずにマンディに乗せて旅立とうと思ったんだ」

 

 

「!?」

 

 

「そのくらい熱い出会いを考えてた矢先、まさか本当に熱い中で出会うとかフォドラのイタズラは過激すぎる。 マンディと砦まで飛んで入ろうと思ったらベルナデッタにはバリスタを撃たれるし、魔法壁で囲われてから矢の雨と炎の嵐は殺意満点。 魔法糸とフレンのレスキューが無ければ危うく二人で"火葬式"になってたぞ? どうせ引き篭るなら砦じゃなくて普通の部屋にしてくれたら良かったのにな、ベルナデッタ?」

 

 

「そ、それは……でも、わたしには……」

 

 

「飛んで火に入る夏の虫でも無く、今の季節は茶色に焼ける秋。 飛んで入る引き籠り(インデッハ)火葬式にしては冗談が悪い展開だ。 でもそうさせたのは互いに落ち度は無い。 俺も、ベルナデッタも、そうなってしまうくらいに待ち焦がれていたんだぞ。 だから嬉しさもある」

 

 

「!」

 

 

「俺に会うために生き残ろうと闘ってくれたベルナデッタが嬉しい。 君に危ない事はして欲しく無いけどそうしてまで果たそうと、成そうとした君に俺は感無量なのは間違いない。 ありがとう、ベルナデッタ」

 

 

「わ、わたしはただ、ユークが、約束を果たそうとしてくれる事を信じてたから…」

 

 

「ああ、わかってる、ベルナデッタ」

 

 

「ぁ…」

 

 

 

目の前の彼女を抱きしめて、今一度そこにいる事を感じる。 彼女の体温を、心臓の音を、息遣いを、ほのかなベリーの香りを、この腕で覆えないほどに愛おしく、逃すまいとしっかり抱きしめる。

 

彼女は少し驚きながらも力を抜き、全てを預けて確かめてくれる。 夜の秋空がフォドラの寂しさを引き立てるがそれが今は心地よい。 そして自然と眼が向き合い、触れ合う心臓の鼓動が大きくなる。 でもそれをそのままにしていられるほど理性が強くない。 右手で彼女の後ろ髪に触れ、それを上から下に撫で下ろす。 昔はボサボサだったその髪も整えられ、綺麗に手入れされている。 ベルナデッタは女性になった。

 

撫でていたその手は彼女の後ろ髪から耳元にゆっくりと撫で動き、夜風に揺れる彼女の髪の毛を耳(たぶ)にかぶせ、ほんのりと赤く染まる彼女の表情が良く見える。 互いに眼は離さず、そして通じ合う。 ベルナデッタは期待するように揺れるその目を閉ざし、全てを預けきった。 それが合図となり俺は彼女の頬に手を添えて、顔を近づける。

 

 

 

「んっ…ちゅ……ん、ふっ…んん」

 

 

 

月明かりの下で彼女の唇と重なり合う。

 

一気に湧き上がる幸福感に身を任せ、しばらく彼女の存在を口付けて啜り、共に確かめ合う。

 

果たされた約束と報酬が、共に成された再会と達成が、満たされた幸福と愛情を、1秒でも多く紡ぎ合わせようと無意識に必死になる。

 

 

「ユーク、リッド……」

 

 

恍惚に染まる彼女は満たされたように名前を呼ぶ。

 

こちらも彼女の名前を呼ぶべきだろう。

 

 

でも、俺はそうしなかった。

 

 

 

「……ファンタジーに良くあるようなお決まりなやり取りなんて、俺はしないよ。 これ以上は死亡フラグになるからね」

 

 

「ふぇ…?」

 

 

「それとも……言葉にしないと、不安か?」

 

 

「!」

 

 

 

そう言って笑う。

 

死亡フラグなんか怖くない。

 

散々立ててきて生きてきたんだ。

 

なら、今頃それを気にしても仕方ないだろう。

 

俺が怖いのは、ここでベルナデッタ以外全てどうでも良くなって、この場所から二人で逃げてしまいたくなる気持ち。

 

 

ああ、そうか…

 

 

これがあの騎士(ゼト)と同じ感覚なのか。

 

可憐な姫君(エイリーク)を抱きしめてそのままどこまでも逃げ行きたい気持ちは確かにわかる。 こんなにも弾けてしまいそうなんだ。 そうしたくて、そうだったら良くて、そうなったら良くて、そうで有れば良くて、そうであるならばどれだけ良かったか、何度も気持ちを繰り返す葛藤する考える想像するイメージする思い描く望みたくなる奮える震える慄える振える顫えるふるえるフルエル…………奮えて、納まりなど効かないだろう。

 

 

 

でも、身勝手はこの口付けまで。

 

 

俺は、戦う。

 

 

 

「言葉にしなくても大丈夫。 あなたはユークリッドだから」

 

 

「そうか。 なら、お前が好きになった男は大丈夫だって証明するさ」

 

 

「はい、わたしは待ってますから。 約束してくれたVIPの席に案内されるまで、わたしは待ってますから」

 

 

 

 

誓う。

 

 

 

 

最後の戦いに勝つ事を。

 

 

 

 

 

「まかせろ」

 

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

インデッハの小紋章は…

 

フォドラの暁風と共に、秋空へ淡く光った。

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 




フォドラの三国とセイロス軍。
ボロボロなんだけど敵も時間も待ってくれない現実。
援軍も望まれず、戦力は大凡五分五分。
しかし敵側は英雄の遺産のバーゲンセール。
ぶっちゃけユークリッドからしたらクソゲーな状態。
それでも1日あるだけが有情だった。

そして、ユークリッドは想定していた3人のうちの一人、ベレスを諦めてエーデルガルトと二人でネメシスを伐ちに命を掛ける事になったとさ…

アイムール持ちのエーデルガルトは強いけど…
さーて、ユークリッドは勝てるかな? どうかな?

あとユークリッドのエーデルガルトに対する当たりがキツいのは純粋に「え?何やってんの?」とか「お前マジ?」的なことばかりだったのでエーデルガルトの評価は高くない。 むしろ低い。 カリスマだけではどうにもならない現実。 ただ勘違いしてはならないのは、それで覇王を名乗るエーデルガルトの情けなさにユークリッドは苛立ちを持っている。 結果的にベルナデッタが戦場に駆り出されたからね? そりゃユークリッドも嫌になるさ。



ではまた
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