飛んで火に入るインデッハの火葬式   作:つヴぁるnet

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第45話

あたらしい〜

 

あさがきた〜

 

きぼうの、あ〜さが〜

 

 

 

 

 

「希望な訳あるか。 むしろ目の前の群勢は絶望だろ」

 

 

「え?」

 

 

「なんでもないエーデルガルト。 夜は寝れたか?」

 

 

「気絶していた時間を含めてそこそこね。 戦いに支障は無いわ」

 

 

「そりゃ頼もしい」

 

 

 

希望の朝ではないが、朝日が登る。

 

そしてネメシスの群勢が見える砦の高台で俺とエーデルガルト、下の方ではヒューベルトやその他の魔道士達がワープのための術式の準備を始めていた。 この静けさが戦いの引き金になるだろう。

 

 

「もうすぐね…」

 

「……ああ。 現状かなり無茶苦茶だけどな」

 

 

俺はエーデルガルトと軽口を叩きながら装備している武器を確かめる。 まず愛用している鋼のコンバットナイフ。 二回攻撃という意味で双剣タイプの勇者の剣。 投げナイフは残り8本だが充分。 銀の隠しナイフはまだ使えるが、小型のデビルソードと毒の仕込みナイフはネメシス相手に使えないだろうから置いていく。 そのかわりそして切り札の"とある短刀"を背負った。 俺は問題無し。 仮に問題があるとすればマンディと戦えない事だろう。 でも今回は移動力を必要としないのでマンディには待っていてもらおう。

 

さて、ネメシスと正面から打ち合う事になったエーデルガルトは鎧を着こなすとアイムールを軽々と回す。 その小柄によくそれだけの力が備わっているものだ。 正直に言えば彼女の腕の筋肉とアイムールの重さに見合わない。 斧に関しては少しだけ持ってみたが普通に重かった。 あと俺自身両手持ち系の武器が苦手なのは知ってたがアイムールはあまりにもバランスが取りづらい形だった。 なのに彼女は「そんなに扱い辛いかしら?」と首を傾げながら片手でひょいっと持ち上げる。 たくましい。

 

士官学校時代のエーデルガルトを見たことあるが彼女のバトルセンスは恐らく級長の中で一番高い。 ディミトリも相当だがエーデルガルトはそこらの男性の体力に引けない能力を持ったり、アーマー系にしては攻撃速度……いや、攻撃から攻撃に移るまでの間が狭く、多数の敵に強いスタイルは俺自身CQC使っている身としてエーデルガルトのその巧みさがよく分かる。 しかも武器が斧であることが恐ろしい。 正直後ろで政策を回したり、作戦を企てて後方で戦闘背景を見守るよりも、彼女自身の戦闘能力でモノを言わせた方が彼女らしい力だろう。

 

……その方が充分に覇王では?

 

王国と同盟を落としきれず、1年どころか3年近くも戦線を拗らせ続けて、何が覇王だと思った。 その燻り具合に「そんな覇道の価値はない」とエーデルガルトに対しての苛立ちも込めて言ったが、彼女自ら前線へ赴きそのアイムールを振るえばどうなっただろうか? 命賭ける戦場に立つことはヒューベルトが止めたのだろうけど、戦線に赴いた時のエーデルガルトの指揮能力は悪くないのだから全体的生存率は高いはず。 それで蹂躙したのなら覇道としての価値は出てくる。 だとしたらその方がまだイタズラに民草が苦しまずに済んだだろうか? 帝国の方が圧倒的に兵力で勝っていたんだからフォドラ統治の未来は充分にあった。 だがそれでもエーデルガルトにはヒューベルトだけじゃない、もっと大きな発火剤が必要だった。

 

例えば………ベレスだ。

 

彼女がエーデルガルトの隣にいたら相当面倒だったと考える。

 

これはあくまであり得たかもしれない世界線だが、3年前にベレスが黒鷲の先生を承っていた可能性はある。 その場合闇うごと手を組んでた帝国に加担するベレスを亡きジェラルトが何を思うか知らないが、あのパッパなら娘の意思を尊重するだろう。 まぁ、こればかりは結果論に過ぎないが、ベレスもディミトリにそうした様にエーデルガルトの"成したい"を後押しできるその強大な力で帝国を導いて見せただろう。

 

 

でも、それを言ったら俺だってベルナデッタの事を考えて帝国側に付いた未来も充分にあり得た話だ。 いまこうしてるのはリシテアが最後の仕事のために俺を傭兵として雇い、そしてアケロンから闇うごの件に発展し、そのまま帝国を潰す流れに収まり、現在は空気の読めないレイドボス中だ。 まったく、フォドラはよく分からない時の縁を送らせてくれる。 今回のは特に迷惑だ。

 

 

 

「ねぇ……あなたは私が憎くないのかしら」

 

 

 

装備の確認が終えたのか唐突に尋ねる元覇王。

 

コンバットナイフを納刀しながら反応する。

 

 

「憎いよ。 なんなら殺してやりたい。 ベルナデッタの件も含めれば報復のために振るうこの腕すらも容易く動くだろう。 でも、俺はお前の不甲斐なさがなによりも許せない」

 

「どういうことかしら?」

 

「俺は思うんだよ。 覇王を名乗るエーデルガルトがめちゃくちゃ強くて、それで王国や同盟すらも即座に落とし、君の成したい目的を早々に付けれて、戦争は三年も経たない程度に終わる。 そうすれば戦争による被害は広まり過ぎず、失う量も少なく、民草の屍も増えない。 なのに泥沼化寸前まで戦線を引きずり、戦いに疲弊し、兵は削られ、その結果としてベルナデッタが戦場に出された。 …最低かよ」

 

「そう………個人的な恨みね」

 

「ああ、本当にそう思う。 でもさ、これは俺にとって初めてじゃないんだよ。 いまから三年程前、戦争が始まるから巻き込まれない様に旅する演劇団はフォドラの外に逃げなければならなかった。 すごい苦しかったし、すごく怖かったし、すごく疲れた。 愛する家族や仲間がそれだけ不安に落され、似た様にベルナデッタも戦争に落された。 もうね、何というかさ、一人の被害者としてエーデルガルトの事をすごく恨んだよね」

 

「…」

 

「今回はさ、短期決戦のためワープを使ってネメシスに直接殴り込むために俺とエーデルガルトが組んだ。 心情的にも戦力的なも問題無いと思われる者で組むようにした。 ……本当に問題無しか?」

 

「問題大ありね」

 

「まったくだ。 本当にまったくだよ。 ……俺はな、お前の事が嫌いだ。 戦争で弱かったお前が大っ嫌いだ。 戦争で勝ってくれなかった覇王が嫌いで仕方ない。 3年も戦争が流れ、進むべき覇道は削れ切って、それに価値が無くて、ああもうバカだと思ったよ。 でもさ、感情的から少し考えたんだ。 そして気づいた。 これってどうしようもない"同族嫌悪"じゃないかってさ」

 

「どういう事? あなたが私と…似る?」

 

「何と言うかさ、似てんだよ……独りよがりな感じが」

 

「!」

 

 

 

秋の風が冷たい。

 

朝だからすごく寒い。

 

でも心の冷え具合は、なぜだろう。

 

彼女が隣にいるから?

 

 

 

「俺はエーデルガルトの全てを知ってるわけでもない。 理解度なんてヒューベルトの半分以下だと思う。 けど、何か似ている気がしてたまらない。 方向性は別なのに、見ている眼が、覚悟が、高慢さが、己の中の正当化が、善玉を飲み込んだ悪玉のような命が、過程が濁っても終わりが思い描いた理想ならそれで良いとか、なんか……でも、飲み込みきれてない喉元のえぐみを抱えても達観している"つもり"の眼が、腹立たしくて、気持ち悪い。 俺もお前も」

 

「!!…………それなら、もしそれがあなたもだと言うなら、あなたは何を怯えて、それを打ち払いたいの?」

 

「……」

 

「……」

 

「………恐怖、かな」

 

「………そう」

 

 

 

メリセウス要塞の門が開かれる。

 

ソシアルナイトやパラディンの騎馬隊がネメシスの群勢に正面突撃を行う。

 

戦いは始まった。

 

 

 

「……なぁ」

 

「何かしら?」

 

「【フォドラの暁風】ってさ、怖いよな…」

 

「…どうして?」

 

「イタズラってさ、果たせばそれは成功なんだ。 例えその過程がどれだけ汚れても、無残でも、血に染まっても、自分の中でのゴール地点にたどり着けるならイタズラ心には躊躇いがない。 そう【成す】ために平気になれる。 フォドラの暁風って俺はそんなものだと考えている。 だから……恐怖かな」

 

 

 

 

 

フォドラの暁風が吹いた…

 

 

_家族や仲間と逸れた。

 

 

 

 

 

フォドラの暁風が吹いた…

 

 

_ベルナデッタを苦しめた。

 

 

 

 

 

フォドラの暁風が吹いた…

 

 

_ベレスの父が死んだ。

 

 

 

 

 

フォドラの暁風が吹いた…

 

 

_戦争で皆が疲弊した。

 

 

 

 

 

 

フォドラの暁風が…吹いた…

 

 

 

フォドラの暁風が………吹いた…

 

 

 

フォドラの暁風が……………吹いた…

 

 

 

フォドラの暁風が…

 

今も吹いている…

 

 

 

「フォドラの暁風は、(過程)に残酷である。 でもそれは俺だけじゃない。 皆が理不尽に会う時、やはりフォドラの暁風が吹いている。 でもフォドラで生まれた以上はその残酷を呼吸して心臓を動かすんだ、必死に。 息苦しくても必死に。 すると苦しくて眼が見開く。 開いた眼はフォドラの残酷に染まるんだ。 弱くなく、強くなろうと、周りに恐れず、成そうとするために。 覇王であろうとしたお前みたいになる。 そうやって危なくなって、そうなってしまう人が、可哀想で……耐えていて、苦しそうだ」

 

 

「…」

 

 

「この世に生まれた(転生した)俺からしたら、フォドラは苦しすぎるんだよ。 でもそれ以上にフォドラが嫌いだ」

 

 

「……同感ね。 わたしもフォドラは嫌いだわ」

 

 

「それでもフォドラは生きていくのに必要な場所だ。 だから俺はネメシスを殺す。 歪んだ鏡を隣に添えてでもな」

 

 

「ゆ、歪んだ鏡って……はぁ、どこまでわたしが嫌いなのかしら? そんなに命を取りたいならネメシスの後にすれば良いわ」

 

 

「しないよ。 どうしようもない同族嫌悪から来ているけど、それをしてしまうほど俺は感情的じゃない。 それに連合がエーデルガルトを倒したんだ。 なら連合に任せるさ。 だから潔く死ぬなり、無惨に逃げるなり、生恥を晒すなり、勝手にすると良いさ。 でも、今は……」

 

 

「ええ、そうね。 わたしも、こんな奴らにフォドラを"任せられない"わ」

 

 

「なるほど、だから覇王だったんだな。 ………なぁ、エーデルガルトはフォドラをどうしたかったの?」

 

 

「あなたが言ったじゃない。 危ない正当化だって」

 

 

「それは何に対する正当化さ。 対象がセイロス教団ってのはわかるけど………あー、あれか? 秩序の破壊とかそんな感じか?」

 

 

「あら、鋭い」

 

 

「"教団"を狙うってそう言うことかなって。 でも答えになってないな。 で、理由は?」

 

 

「言ったら協力してくるかしら?」

 

 

「…………ベルナデッタと成せるなら、考えなくもない」

 

 

「ふふふっ、危ない人ね」

 

 

「お前に言われたくねぇよ、バーカ」

 

 

 

魔法陣が光る。

 

準備は出来た。

 

 

 

「来たか」

 

「来たわね!」

 

 

 

俺とエーデルガルトは緊張感を漂わせる。

 

 

でも恐怖は無い。

 

 

だって…

 

 

 

その眼はフォドラの極色(残酷)を染めてきたから。

 

 

 

その肺はフォドラの暁風(残酷)を呼吸してきたから。

 

 

 

その脚はフォドラの大地(残酷)を踏み締めてきたから。

 

 

 

その敵が解放王だとしても…

 

 

怖さなんて今更だ。

 

 

 

 

「ユークリッド・ラライヤ! ラストミッションに入るッ!」

 

「エーデルガルト・フォン・フレスベルク! いざ参るッ!!」

 

 

 

 

 

こちらが勝手に思っているだけだが、眼だけは似たような彼女と肩を並べる。 しかしそこに友情は無い。 ただ今は方向性が同じだから気持ち悪いくらいに進むべき方向が重なっているだけ。 敵だった奴と平常に事を進めれる心情に慣れてしまったその感覚をワープに乗せながら、飛ぶ。

 

 

空から一瞬で目的とする場所に降り立った。

 

 

目の前には…

 

 

ネメシスがいた。

 

 

 

「群れる事でしか強く慣れない、弱気者が揃ったか。 それも小童ときたか…」

 

 

 

「あなたからしたらみんな小童だと思うけどね」

 

「解放王か、老害王か知らんが、さっさと隠居して、どうぞ」

 

 

 

「来い…!」

 

 

 

こちらを小童と言うがネメシスは手加減無用で蛇腹剣を伸ばす。 俺もコンバットナイフを引き抜きエクスカリバーを蛇腹剣にして伸ばす。 互いの蛇腹剣がぶつかり合うが、蛇腹剣の技量はネメシスが上。 リブローによる絶対追撃は敵が傷を負ってなければ不可能な裏技。 そんなネメシスに傷を入れるのは難しいだろう。

 

 

「はぁぁぁぁあ!」

 

「!」

 

 

アイムールが赤く光る。

 

エーデルガルトの踏み込みに反応したのか彼女の脚力は普段よりも高まり、オノ使いとは思えない速度でネメシスの間合いを詰める。 まるでドラゴンマスターのような突進だ。 普通に怖すぎる。

 

 

 

「炎の紋章…!? ぬぅう!」

 

 

「ちっ…!」

 

 

ネメシスは何かを感じ取り、一瞬だけ怯むが蛇腹剣で阻害しつつ後方に飛んでアイムールを回避する。 エーデルガルトは舌打ちするが、いや充分すぎる。 俺はネメシスの着地先に投げナイフを置き、さらにエクスカリバーを伸ばすが、いつのまに蛇腹剣が全てを弾く。

 

 

 

「蛇腹剣に意思が宿ったような動きだな。 妙だ…」

 

「英雄の遺産、厄介ね」

 

「それならアイムールも一撃必殺だろ? なかなかだと思うが」

 

「当たらなければ意味ないわ」

 

 

 

傷さえ負わせたら次は俺が隙を作れるが、それまでが長い。 やはりベレスくらいの者がもう一人いたら状況が変わっていただろう。 こりゃ上半身消し飛ばされる覚悟でCQCに入るか? だが元気なお爺ちゃんの介護は根気がいるからな、もう少し見極めないと突撃でも意味がないだろう。

 

再びエーデルガルトが接敵。 ネメシスは天帝の剣でアイムールを凌ぎつつ回し蹴りを放つがエーデルガルトは大楯で直撃を回避する。 するとアイムールを逆手に持ってエーデルガルトの指先から魔法が放たれる。

 

 

 

「ドーラΑ!」

 

 

「なに!?」

 

 

「うおりぁぁあ!!」

 

 

 

ドーラを放つ小さな衝撃で手を引きながらアイムールを手元でクルリと回しながら握り直すとそのまま叩きつける。 ネメシスは天帝の剣を横に倒してアイムールを受け止め、重心を安定させながらその一撃に耐える。 そして俺はエーデルガルトの真後ろから高く跳び、体をひねりながらアイムールにかかと落としを放った。

 

 

「ぐぬぅ!!?」

 

 

ただでさえ重たいアイムールへ更にのしかかる。 天帝の剣はギチギチと音がする。 俺はアイムールを踏み台に更に飛び上がり、体をひねって二度目のかかと落とし…だったが、落ちる方向を変えながらウインドを織り交ぜてエーデルガルトを蹴り飛ばす。

 

 

「!?」

 

 

エーデルガルトが立っていた場所にバンシーの魔法が襲いかかる。 エーデルガルトは目を見開きながらも一度転がり、アイムールを支えにして受け身を取る。 そしてバランスを崩しながら倒れ込んだ俺にネメシスは天帝の剣でこちらの腹わたを裂こうと斬り裂いてきた。 コンバットナイフで逸らしながら転がって逃げて、再び斬撃が襲いかかり、再びそれ凌ぎ、転がりながら立ち上がると蛇腹剣が襲う。 しかし蛇腹剣の先端は急激に落下。

 

バシャりと泥水を叩き、目の前の視界を奪った。

 

 

「ッッ!!?」

 

 

 

すぐ様、俺は後方に飛び引きながら地面に伏せて両手を叩きつける。 右手にライブ、左手にファイアー。 意識を魔道に乗せると巨体が接近している事を察知。 それもかなり近い。 そして蛇腹剣が右脇から強襲してきたのもギリギリ認知すると両腰に備え付けられた勇者の剣を手に取り、正面と右側に備える。

 

 

 

「うおらぁぁあ!!!」

 

 

「がッ…」

 

 

 

巨体によるショルダーチャージ。 ブレーキの無い大型トラックにぶつけられたような衝撃に片腕が折れる……瞬間に腕を外した。 それでもかなり痛い。 そして蛇腹剣は無抵抗に吹き飛ばされる俺の喉元に目掛けてトドメを刺そうと伸びる。

 

 

 

「ユークリッド!!」

 

 

 

エーデルガルトの声が聞こえる。

 

 

 

ああ、これ、死ぬのか?

 

 

 

いや、なんとか腕は動かせるが蛇腹剣を完全に逸らすことはできない。 片目を犠牲にして体を捻ればまだなんとかなるか??

 

戦闘が続行できるなら何がなんでも心臓と頭は取らせてならないっ!

 

片腕だけになろうが、片目だけになろうが!

 

 

 

「っ!!」

 

 

 

俺は蛇腹剣の機動を読みながら勇者の剣を喉元に置く。

 

助かる確率は五分五分だ。

 

 

っ、ベルナデッタ! 俺は!!

 

 

 

 

 

 

「やらせん」

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

一人の 剣士 が割り込んだ。

 

 

 

一瞬だけ、騎士かと思った。

 

 

 

 

しかし俺には" 死神 "にも見えた。

 

 

 

だから、割り込んだ" ソイツ "が分かった。

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

ネメシスは蛇腹剣の機動を変えて割り込んだ剣士を狙う。 しかし、その剣士は蛇腹剣の対策がこのフォドラの中で一番取れている者であり、その腕に比例して強い。 ガキン!…と、弾く音が聞こえる。

 

 

 

「…」

 

 

 

剥がれた仮面は無くても、その剣士が振るう斬撃は自分のため。

 

そして今は誰かのためにあるように見えた。

 

 

 

 

「立てるな…?」

 

 

「…立てるッ!」

 

 

 

 

勇者の剣を支えにして起き上がり…

 

 

助けてくれたその剣士は手を伸ばしてくれた。

 

 

 

「助かったよ__イエリッツァ」

 

 

「……ああ」

 

 

 

すると肩の痛みが無くなる。

 

 

 

「!」

 

 

 

回復魔法だ。

 

俺は回復魔法を浴びている。

 

 

更にこの回復魔法の肌触りを俺は知っている。

 

一度か二度だけ体験したが、知っている。

 

それも最近の事だったから。

 

 

この回復魔法は…

 

 

 

「まさか」

 

 

「ええ、そのまさかですよ、ユークリッドさん」

 

 

 

彼女は"メルセデス"…………と、イエリッツァが勘違いした一人の女性。 それはつい最近まで紋章に人生を苦しめられていた女の子。 今こうして姿を現した彼女の格好は大人っぽさを引き出している。 言うならば"グレモリィ"と言われる最上級職の魔法使いであることがわかる。

 

 

その子は…

 

 

 

「あんたも来たのか__リシテア!!」

 

 

「ええ、微弱ながら助太刀にイエリッツァと来ましたよユークリッドさん。 でもこれまで私とイエリッツァはあなたに助けられたので、だから今回はわたしが助けます」

 

 

 

 

何が微弱なモノか。

 

 

天才と天才が助けに来たんだぞ?

 

 

これほどに頼もしい味方がそういるだろうか?

 

 

 

 

「イエリッツァ、今までどこに居たの?」

 

 

 

するとエーデルガルトはイエリッツァに声をかける。

 

 

 

「あなたの放浪癖を知ってる。 でも大事な戦いに来ないのはおかしいと思ってたわ。 目撃情報が無いからてっきり何処かで討たれたの方も考えたけど案外元気なようね?……あと、死神騎士の装衣はどうしたのかしら? 随分と穏やかに見えるのも気のせいじゃ無さそうだけど」

 

 

「死神は……もういない」

 

 

「そう。 なら死神騎士ではなく、イエリッツァに手を借りるわ」

 

 

「ああ」

 

 

 

普通の好青年になった…ようなイエリッツァ。

 

でも、今は一人の剣士として肩を並べてくれる。

 

それがすごく嬉しかった。

 

 

「あとそうだ、バンシーの魔法が何処からか襲ってきた。 敵はネメシスだけじゃない」

 

 

「ネメシスが放ったのでは?」

 

 

「あの筋肉ゴリラがバンシーなんて魔法を使えそうに見えるリシテア?」

 

 

「使えませんね。 魔法による適性が無く見えます」

 

 

「そう言うことだ。 とりあえず……ライブラリー!」

 

 

「協力します!」

 

 

 

俺が地面に両手を付けてライブラリーを放つ。 するとリシテアも両手を俺の手に重ねて同じようにライブラリーを使った。 え、マジか。 リシテアもできるのか。 これはセスリーンの紋章があるから魔法を同時に二つ使えるわけで見た目よりも容易くない。 しかしリシテアはそれを可能にしている。 天才なんかの一言で済ませていいのかこの小娘は? 味方で良かった。

 

 

 

「居た! 2時の方向だ!」

 

「確認した! "アロー"!!」

 

 

 

リシテアは重ねていた手を離すと光の魔法を展開する。 リシテア自身の攻撃速度も早いが俺のライブラリーの光魔法を摘み取ってからのアローは初級魔法を放つくらいに手早い。 またアローは命中率が非常に高く、それを選択するあたり頭の回転が良いことが伺える。

 

そして高速に放たれる光の矢印は目に見えない標的に向けられ、途中で軌道を変えながら目標を追跡する。 攻撃が当たったのか弾けた。

 

 

 

「ちっ!」

 

 

「っ、ミュソン!! あなたが!!」

 

 

 

エーデルガルトはその魔道士を知っているのか、驚きながらも怒りを露わにすると、自分の両肩を叩き、鎧の一部がパキンと外れる。 大盾を捨てると一気にミュソンと言われる者に突撃する。 肩の鎧が外れて大いに腕を動かせるようになったのか振りかぶる勢いは強く、そしてエーデルガルトが持つ紋章が身体能力を後押しする。

 

闇バリアとアイムールが衝突した。

 

 

 

「何をする! お前に用は無い! その男を殺してフォドラを統治しろ覇王! お前の覇道はまだ…!!」

 

 

「残念だけど! 覇王は負けたわ! 勝てなかった! 罵倒も泥水も被った!地に伏せてしまった覇道に価値はない!」

 

 

「そ、それを受け入れるのか!?」

 

 

「頭に付けていた大角の兜は折れ、意味も象徴も無くしたわたしはただのエーデルガルト! 元覇王だった!」

 

 

「我らの最高傑作がフォドラを統べなくて何の価値があるのだ!」

 

 

 

何かギャーギャーと吠えている闇魔道士だが、エーデルガルトの一撃を闇バリアで防ぐ事叶わず、ミュソンは胴体を砕いた。 鳴ってはならない音がミュソンから聞こえる中、イエリッツァはネメシスと対立。 そして蛇腹剣を捌いていた。

 

 

 

「!!」

 

 

「…」

 

 

 

ネメシスの蛇腹剣は大蛇が噛み砕くように荒々しく舞い狂うが、見えないことはない。 しかし凌ぎ方一つ間違えるとそれだけで致命傷になる。 それに対してベレスの蛇腹剣は丁寧な剣戟であり、ネメシスほど威力が高いわけではないが視認しての防御は困難だ。 俺が使う蛇腹剣は説明要らずだろ。 そもそも蛇腹剣に似せたエクスカリバーだ。 それを曲げる練習をしたまで。

 

 

そのため一人一人の蛇腹剣には個性がある。

 

だが"うねる斬撃"の事実は変わらない。

 

イエリッツァはこれまでの経験を活かしてネメシスの蛇腹剣を攻略していた。

 

 

 

しかし、ネメシス自身の攻略では無い。

 

何故なら…

 

 

 

「ネメシスは異様に防御力が高い…と、思ったけど、何かがネメシスを守り、こちらの攻撃を阻害している。 まぁ、なんとなく原因はわかるが」

 

 

「何かに繋がれ…いや、共有と言うモノでしょうか? とりあえずそれらしき何かが見えますね。 10本程……いや、いまは7本ですが」

 

 

「そうなると周りの十傑絡みか」

 

 

「では十傑の掃討から始めますか?」

 

 

「セオリーとしてならそうするけど、短期決戦が好ましい。 何せ戦ってる皆、疲弊しきっている。 メリセウス要塞にいた帝国の兵士は元気だろうがそれでも解決できる人数を揃えてる訳では無い。 だからいつ崩壊するか分からない。 ジリ貧だな」

 

 

「では、この場でネメシスを討つのですね?」

 

 

「ああ、この場で殺す。 例え、防御面が強化されてたとしても俺には関係ない。 どうとでもしてやるさ」

 

 

 

ネメシスとの戦いは熾烈を極める。

 

 

ここに四人集まってやっと有利になった。

 

 

それでもネメシスを攻略した訳では無い。

 

 

だがしかし、希望は見える。

 

 

フォドラの残酷の中でそれは始まろうとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あと…

 

 

俺はあの意味を履き違えていた。

 

 

 

 

 

 

 

一つの光が彗星如く流れて落ち。

 

凶星に向かって弾けた光景を夢の中で見た。

 

三つの色とりどりな星々が並び。

 

そこにもう一つ大きな星が襲いかかる。

 

 

 

それをベレス、エーデルガルト、ディミトリ、クロードの事かと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いや、違った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは…

 

 

 

 

ユークリッド

 

エーデルガルト

 

リシテア

 

イエリッツァ

 

 

 

 

この四人の事だった。

 

その意味を理解してフォドラの残酷に立ち向かう。

 

 

「…」

 

 

まだ吐く息は濁っている。

 

 

 

 

 

つづく




ベレス?

残念!! イエリッツァでしたぁぁ!! あとエーデルガルトと近しいリシテアも添えて、ネメシス戦は後半につづくぞ。



あとエーデルガルトは理を極めると闇魔法使うゾ(ネタバレ)
だからドーラくらい余裕なんです。
闇抱えてんなぁ……
あとエーデルガルトは戦争の相手が悪すぎただけで本人は頗る強いです。 さんすくみ抜きにしても、炎の紋章効果でディミトリと互角かそれ以上な設定…なんだけど心の闇を克服して自身の安定を備えたディミトリに死角は無いのでエーデルガルトとはやはり互角くらい。

あとこの小説は紋章の有無でキャラの身体能力の上昇が激しいのです。 その中でセスリーンの紋章はユークリッドとの相性が物凄く良すぎて、ユークリッドはめちゃくちゃ強いんですね。 エクスカリバーがチート。







-おまけ-


エガちゃん「(死神騎士)ある戦いを忘れたの!?」

イエリッツァ「(死神騎士)は浜で死にました! ユークリッドの首を取るために!!」

エガちゃん「ッ、怒りに任せておって!」キッ



ユーク「(死神騎士)でも食ってろ」

リシテア(ある意味食ってますけどね…)



本編でそれらしき会話を言わせてみたかった。

※ネタはゴーストオブツシマ。



ではまた
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