飛んで火に入るインデッハの火葬式   作:つヴぁるnet

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第6話

帝国暦1177年

 

 

帝国領を抜け、同盟諸国を北に歩き、そしてガルグ=マク修道院の管理下に置かれた街に到着してから2日目が経過した。 セイロスの信仰が熱いのか至るところでセイロスのマークや文字が書かれている。 修道院の近くだから影響力が高いんだろう。

 

なんか、少し怖い…

 

 

 

「それはともかく、財布抜き取るのは関心ならないのでお前CQCな」

 

 

「なっ!?」

 

 

 

今さっきスリ野郎の首袖掴んで引き寄せ、次に肘打ちで頬を殴る。 そうして怯んだ隙に背負い投げを味あわせ、地面とキスが完了する。 そのまま地面に押さえつけて財布を取り返した。 全部うまく決まったので下手に怪我はさせずに済んだ…が、道端の中央でそれを行ったから注目を集め、セイロス教の兵が何人かやってきた。

 

自分は兵に対して多少トラウマがあるが、帝国領ではないことを思い出し、なんとか騒がしくなる感情を抑える。 そしてセイロス兵に事情を説明。 騒ぎを起こしたにも関わらず俺は盗人を捕まえたことで感謝される。 更にその盗人はここら辺でよく盗みを働いていたようで、捕まえるのに苦労していたらしい。 手癖の悪さはピカイチだが相手が悪かったな?

 

 

そもそも俺から財布盗んだところで全然無いので無問題。

 

金は全然入ってないからな。

 

でもどこかで食い扶持稼がないと…

 

 

それから事情聴取のために時間を取られていたが、しばらくしてセイロス兵から解放された。 そのタイミングで街が少し騒がしくなる。 どうやら礼拝の時間がやってきたらしい。 そのため信仰に熱い庶民は門をくぐり、礼拝堂まで足を進める。 俺もこの辺の情報収集の目的でついて行き、礼拝堂を目指した。

 

 

 

「学生多いんだな…」

 

 

 

フォドラの縮図であろうこの士官学校には子供が多くいる。 秋風凌ぐために厚着をした学生は次々と教会に向かっていた。 中には信仰に関心ないようで足を運ばない者もいたが、強要する場所では無いのだろう。

 

しかし実際に足を踏み入れたガルグ=マク修道院の中はなかなか大きい場所であることがわかった。 マジでデカイ。 士官学校として機能させるための寮と教室の備えは分かる。 そこに風呂と食堂も分かる。 訓練施設的なものは体育館的要素なんだろからそれも分かる。 しかしここの教会がとてつもなくデカイ。 見上げると首が痛くなるほどに。

 

前世で海外旅行なんかしたことない俺は教会がそもそもどのくらい大きいのかも知らないが、これはすごい場所だ。 ちなみに教会は行ったことある。 ここまで大きなものは初めてだ。

 

何か隠されてそうでワクワクする雰囲気に心躍らせながら足を進めた。

 

それから礼拝が始まった。 このフォドラに浸透するセイロス教の教えに興味があったので側面に開かれた扉の近くで立ち聴きすることにした。ちなみに椅子には座らない。 俺自身は少々薄汚いからね。 そして1時間経った頃くらいか、牧師の説教が終わると賛美歌が始まり、最後は献金だ。

 

 

「…」

 

 

献金袋にお金が貯まっていく。

 

あの中に100人以上の人間が入れた硬貨が沢山だ。

 

それを独り占め出来たのなら一体どれだけ食いつなげるか? または何人のも女に貢ぐこともできる欲望の袋詰め。 それを考える卑しい者はいるはずだ。

 

 

それは現れた。

 

 

 

「それはともかく、献金袋を盗み取るのは関心できないのでお前CQCな」

 

 

「ふぁ!?」

 

 

 

牧師の説教は終わり、全体の緊張感は解かれた。 その気の緩みから投げられた煙玉は効果的であり、牧師を始めに学生や兵士、一般人も含めて混乱が起きる。 しかしまたまた運が悪かった本日二人目の盗人。 俺は側面の扉付近に立つ柱の陰にいた。 盗人は俺の存在に気付いてなかったようでその真横を通る。

 

そしてやることはいつも通り。

 

お得意のCQCで地面とキスをさせて、宙に舞う献金袋を受け止めて回収した。 それから補導される盗人は哀れだとして、何故かおれも補導された。 抵抗する勇気も気力も無いため俺は連れ去られて行く。 途中途中で学生などから注目を集めていたが、それよりも今後のことに心配を膨らませていた。 場合によっては全力で逃げなければならないが、騎兵もいるセイロス騎士団から逃げれる気がしない。

 

 

マジどうしよう…

 

 

 

しかし、その気持ちは杞憂で終わる。

 

 

 

 

「ありがとうございます。 我が教会の献金を取り返してくださって」

 

 

 

とある場所に案内され、そしてひとりの女性が待っていた。

 

 

目の前には『大司教』と言われるお方がいた。

 

 

名前は"レア,と言われており、不思議な雰囲気を漂わせていた。

 

 

 

「ところで、あなたは冒険者のようですが、何かこの修道院にて刺激されるものはありましたか?」

 

 

「短時間で盗人を二人捕まえれた刺激なら」

 

 

 

ただの冗談で言ったつもりであり、別に皮肉でも何でも無いが、治安が悪いと言う意味で伝わったようで大司教は謝り始めた。 おれも慌てて補足を加え、そして変なことを言ってしまったことを謝る。 日本人ならではの斜め45度と斜め90度垂直に頭下げた。

 

 

 

「ほっっっんとに!!ごめんなさい!! あなたに対して少しホッとしたからつい癖でッ!!」

 

 

「いえ、もう大丈夫です。……あなたもここまで大変だったんですね」

 

 

「!」

 

 

「わかります。 あなたは近い時期に何か多くを失ったのでしょう。 それは恐らく家族に近しいものを」

 

 

「…なんで分かるんですか?」

 

 

「私も同じ気持ちを抱えて生きて来ましたから。 だからその瞳から溢れる痛みと悲しみ、私にはよくわかります。 ここまで辛かったでしょう」

 

 

「っ、いえ……まだ家族は生きてる…はず。 だからそう悲しく思わない。 けど、当然のように近くにいた存在と出会えない事は不安で仕方なかった。 だから…なんでしょうね……ははは」

 

 

 

それから流れそうになる涙は止める。 女性の前で涙なんて流せない意地があったんだと思う。 そして名乗ってなかったことを思い出して自己紹介を済ませた。

 

それから大司教にこれまでを打ち明けた。

 

とある厄災から逃げて来たこと。 不本意ながら一人旅をしていること。 最後になんとなくこの場を訪れた事を話すと、これも主の導きだと言っていた。 大司教がセイロス教に対して信仰が熱い事を再確認しながら「自分は導かれたんですか?」と聞けばしばらくは女神様の話。 そして『ソティス』と言う名の女神が居たらしく、このフォドラを作り上げたとか色々聞かされた。

 

 

 

そして…

 

 

 

「あなたの身の上を聞く限り、この修道院で豊かな刺激と影響力を与えられる人だと私は見ました。 恐らくまだ、あなたには語られる以上の力を持っているんでしょう」

 

 

「……え、ええと?」

 

 

「私に考えがあります。 ラライヤさん、このガルグ=マク修道院で働きませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

…………はい??

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ありのままに起こった事を話すぜ?

 

女神ソティスのお導きと説かれたら、衣食住を得た上に職が決まった…

 

何を言ってるかわからないと思うが、俺も何が起こっているのかわからねぇ。

 

これも女神ソティスのお導きとらしい。

 

女神の片鱗を味わったぜ…

 

 

てか、導きって言葉が便利すぎてむしろ怪しいくらいだ…

 

 

 

「拝啓、どこかにいるだろう父上と母上と団長とその他諸々様。 いま自分はガルグ=マク修道院の職員になりました。 この突拍子も無さはまるで初見殺しの封印の剣ハードを思い出します。 後ろからの援軍ソシアルナイト許すまじ。 だから荷車(マリナス)を犠牲に……あ、これ関係ねーか」

 

 

 

てかどこに手紙を出せば良いんだよ。

 

 

園芸の剪定をしながら考えていた。

 

 

 

「しかし本当に唐突だよなぁ…」

 

 

 

たしかに食い扶持稼がないとと思ったが、まさか大司教直々にこの場で働く提案を出してくれるとは思わなかった。 その上、俺から不思議な力を感じるとか、学生に何かしらの影響力を与えてくれるだろうとか、怪しさを見え隠れさせながら雇ってくれた。

 

それもセイロス教の兵とかではなく、修道院内の"お世話係"的な存在。

 

もちろん身の上話として俺は冒険者になる前は旅団の御世話だったことを話したので、大司教レア様は経験上問題ないと言ってそこに俺を設けた。 しかしはっきりとした役職は無く、このガルグ=マク修道院を支えてくださいとの事だ。 故に修道内の清掃員だったり、食堂の料理番だったり、騎馬の飼育員だったり、または教師の補佐だったり、俺の出来る事は色々とやらされる羽目になった。

 

案外ブラックじゃね?

 

まぁ、美味しいご飯と安心して眠れる場所があるだけ全然釣り合いが取れる。 それに大凡の同年代の学生たちがいる事で心の安定も取れた。 中身の年齢おっさんなんだけどな。 それでも授業ではたまに先生の補佐をしながら学生に混じって教学を受けれたのはでかい。 このご時世で学びをタダで受けれるなんて相当やぞ? ちなみに俺が補佐する先生は新人でややコミュ症だから良く助ける事になった。 この感じはベルナデッタを思い出すがこの先生は男性で大人だ。 それと比べると少し情けなさが伺える。 教鞭の力はたしかだけど、生徒に舐められるような立ち振る舞いはダメだ。 その分"ハンネマン先生"とかは慣れてるようで貫禄を感じさせる。 年を重ねるだけでは無く、肌身を持って世間を長生きしてる人間はやはり違うな。 あと紋章オタクなのは個性として扱おう。

 

ちなみに俺の家系に紋章はないから当然浮き上らなかった。 どうでも良いけど。

 

さて、俺がガルグ=マク修道院で働くのは構わない。 しかしあまり修道院の外には出さず、内側の事ばかりさせられる。 別に不満とそんな気持ちは無いが、外で何かあっては困るんだろう。 少し保護過ぎやしないか? でもここは大司教の同情があってそうさせてもらってるわけだからあまり考えないことにした。 別に不満でもないから。

 

それはともかく、俺の職務のだいたいは整理整頓、清掃を行っている事が多い。 書庫や浴槽を始めとして食堂に室園にも手を出し、手が空いた時は礼拝堂に馬小屋と大きなところもほかの職員と混じって手伝っている。 週に一回は訓練所にも手を付け、武器の手入れや新調したりもしている。

 

もちろん自由時間はある。 夕方を過ぎればそこそこの自由時間が出来上がり、鍛錬を行なっている。 釣りの趣味もできた。 で、生徒との関わりも多い立ち位置にいるわけだからいろんな人から顔や名前を覚えてもらっていた。

 

 

例えば…

 

 

 

「ユーク! ここにいたか!」

 

 

「んー? ああ、ホルストか」

 

 

 

こいつはホルスト=ヴァレンティン=ゴネリルって名前でありゴネリル家の貴族だ。 仲間思いの豪快な男だが妹の話になるとうるさいのが特徴。 でも家族に対して愛情いっぱいなのは良い事だ。 ちなみに食堂を借りて久しぶりに作ったポテチを最初に食べてくれた生徒であり、伝説の宝刀であるのり塩味を再現させるため調味料の調達を手伝ってくれた優しき人。

 

 

 

「ユーク、やはり何もしてないと鈍りそうなのか?」

 

 

「たまに訓練所で動いてないとそりゃな…」

 

 

「そうか。 しかし……その、なんだ? 表現し難いのは申し訳ないが、目の前に存在しない相手に戦闘を行うと言うのは、なんというか不思議な感じだな? しかしユークがそれをすると不思議と本当にそこに敵がいるように見える」

 

 

「これでも演劇団の中で生まれたからな。 それっぽいことは得意でね…よっと、そらっ!」

 

 

 

いま握ってるのは訓練所の剣。

 

まぁ木刀的なモノを握って無き存在と打ち合っている。 しかし側からみたら演舞を行ってるように見えるらしい。 中にはとある貴族からは賞賛を受けた。 見せてもらった褒美に紅茶をご馳走してもらったりとなんか嬉しかった。 あと美味しかった。 これが貴族が嗜む紅茶なんだと理解した。

 

 

 

「ユーク、夕食の前に一戦付き合ってくれないか?」

 

 

「軽くなら良いよ。 その前に水を飲ませて」

 

 

「よし! なら早速始めようか!!」

 

 

「いや、まずは水飲ませろって」

 

 

 

そう言ってホルストは上着を脱ぎ、斧を構える。 俺は軽く水を飲み、改めて準備運動を済ませてホルストと対立する。 もちろん素手で。 すると俺たち以外にも訓練所にいた他の生徒達はフィールドから逃げるように離れる。

 

ちなみにこの男は"金鹿の学級"の"級長"である分、なかなかの訓練好きで強くなることが好きらしい。 家族のために強くなるんだって。 まんま男の子だ。 しかしこの士官学校の中では武芸において今年度最強の生徒らしい……が、俺はそんなことは最近まで知らず意識をした事もない。

 

働いて日が浅い事もあり、生徒の一人一人を理解している量が少ない俺はこの男との戦闘訓練を行う事がどれだけ周りに恐れられてるのかまだ知らないでいた。

 

 

 

「ぐぅ! これをうまく捌くかユークリッド!」

 

 

「顎引かないと一撃で終わらすぞホルスト!」

 

 

 

 

そんな奴と互角とは、俺も相当らしい。

 

 

 

 

今日もフォドラの風は士官学校を彩る。

 

 

 

 

 

つづく





*分かると思いますが、セスリーン(フレン)は作者のお気に入りです。


《ホルスト》
原作通り、ゴネリル家の長男でビジュアル無しのキャラだがメインキャラの話に出るくらいに滅茶苦茶のくちゃくちゃに強く、格闘戦を除いてユークリッドよりも武術に長けている。 この小説では金鹿の学生時代として好青年で登場。 ヒルダが気になって仕方ないシスコン。


ではまた
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