やはりこの世界は間違っている。   作:フラットテスト

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十六話

数日後、局に着くと随分と騒がしかった。何があったのだろうか?取り敢えず近くの人間に話を聞いた。その答えに俺は声を失った。

あの、梟を討つだなんて。そんな事が急に起こるとは信じられなかった。確かにアオギリ戦で、梟が出たらしいから、捜査はしていると思った。しかし、こんなに早く戦う事になるとは。

梟は20区の[あんていく]という喫茶店にいるらしい。おかしな事では無い。喰種は人間に紛れて生活している者も多いのだ。そこら辺の通りですれ違う人はもしかしたら、喰種かも知れない。しかも、喰種は珈琲が飲める。珈琲を提供する喫茶店は恰好の隠れ家なのかもしれない。

それにしても梟か、真戸上等から何度も話を聞いた事がある。真戸上等は亡くなってしまったが、悲願の時がやって来たのだろう。これで梟を倒せるかもしれない。

そして、俺が一番気になるのは俺が参加するかどうかだ。参加、するんだろうなぁ。

雪ノ下上等の事だ、必ず参加しようとするだろう。梟単体と戦うとは限らない。梟の仲間がいる可能性もある。そいつらだって相当強いだろう。俺は参加して生きて帰って来れるのだろうか?

そんな事を考えつつ雪ノ下上等の所へ向かう。

部屋の前へと着いて扉を開ける。すると、雪ノ下上等がこちらを見てニコニコ笑っていた。なにあれこわい。

「比企谷君も聞いたでしょ?梟討伐戦、もちろん参加するからね」

予想通りだ。雪ノ下上等は遊園地に遊びに行く子供のようにはしゃいでいる。

「ヒキタニ君、これ書いとけってよ」

葉山から紙を手渡される。

「なんだ葉山、借金の保証人にでもする気か?その顔なら何でも許されると思うなよ」

「遺書だよ。ヒキタニ君わざと言ってるだろ」

ヒキタニ君とか言ってるお前が言うなとツッコミたくなってしまったが、その言葉を飲み込む。時間の無駄だろう。俺は時間の大切さの分かる尊い人間なのだ。だから、残業で調べ物とか勘弁して欲しい。

「それじゃあ、梟戦前にある程度仕事に区切り付けちゃおっか」

うぇぇ......ペース上がるじゃん。

そうして俺達は仕事を片付けた。あー働いた。社畜レベルがどんどん上がっていくぜ。

すると、雪ノ下上等が何かを取り出した。

「はい、これ梟戦の資料ね」

雪ノ下上等から紙の束が渡される。そこには、今回の作戦の参加者と概要が書かれていた。俺達は第十八体だそうだ。雪ノ下は今回本部との連絡用にうちの班に来るようだ。どうせ雪ノ下上等がなんか言ったんだろう。流石シスコン魔王だ。妹に発信機付けてる可能性も捨てきれないからな。

小町や亜門さんの名前を探していると二人の名前は近くに書いてあった。小町と亜門さんは同じ班のようだ。亜門さんがいるなら小町は安心だな。あの人の強さは何度も目にしている。信頼は十分すぎる程だ。

一通り目を通した所で雪ノ下上等が声を掛けてくる。

「今日はもう帰ろっか。遺書、しっかり書いてくるんだよ」

「はい、お疲れ様です」

今回の喰種はSSSレートだ。生きて帰れる保証は常より無いが相手が相手だ。本当にこの遺書を使う事になるかも知れない。遺産は全て小町に与えるとは書くとして、俺は何を書き残せば良いのだろう。

 

✕ ✕ ✕

 

家二帰ると小町が先にいた。

「お兄ちゃんも、梟戦行くんだね!」

小町は楽しそうだ。しかし、今回ばかりは簡単に倒せるような喰種では無い。

「お前は、亜門さんと一緒の班だろ?しっかり見とけよ凄いから」

せっかく亜門さんの戦闘が近くで学べる機会だ。是非活かして欲しい。

「うん!亜門さんって強いんでしょ?楽しみ!」

この笑顔は幼い頃ころから変わらない。きっと喰種を殺す事に罪悪感など無いのだ。だが、親が喰種に殺されているならむしろこの方が正しいのだ。きっとこの世界にとって俺が異常なんだ。

亜門さんには電話をしておこう。小町をよろしくお願いしますとか、小町を頼みますとか。......小町の事ばっかだな。どんな事を話そうかと携帯を持ちながら悩んでいると、電話が掛かってきた。亜門さんから任せろと電話をする前から来たのかと思ったが、どうやら違うらしい。

電話の主は雪ノ下だった。

「もしもし、比企谷八幡ですが」

「比企谷君?雪ノ下雪乃よ」

「どうしたんだ?」

弱々しい声だった。少し沈黙が生まれる。

「怖いの。死にたくないわ」

泣きそうで消え入りそうな声だった。名前の通りの雪を俺はイメージした。

「どうして俺に......」

そんなことを?と続けようとすると

「遺書を書いていたら急に怖くなってしまって。ふと貴方の事が浮かんできて、電話を掛けていたの。迷惑だったかしら。あまり気にしないで」

「まぁ、俺が死んだらお前も殺されちまうだろうが、俺が生きてて戦ってるうちは多分大丈夫だろ。俺は死ぬつもりはないしな」

そう死ぬつもりはない。生きている自信も無いが。

「なら、私を守ってくれるということ?」

雪ノ下を守ること、そんな事が出来るのだろうか?あの時は、何も考えずただ前に出ただけだ。喰種にとって俺が少し動いた事など関係ない。羽赫の喰種が止めなければ雪ノ下ごと普通にやられていた。あの行為はほとんど意味が無い。あんなものは到底守るとは言えないだろう。ただ、それ以上に俺に何が出来たとも思えない。俺には守る力など無いのだ。肯定は出来ないが、否定もしたくなかった。だから、俺は何も答えられなかった。

俺が答えないのを察したのか雪ノ下の息を吐く音が聞こえる。

「次会うのは梟戦かしら?お互い頑張りましょう」

雪ノ下はそのまま電話を切ってしまった。何か答えた方が良かったのだろうか?いくら考えても正解なんて思い付く気がしなかった。正解は無いのかも知れない。答え合わせなんてものは学生のうちしかして貰えないなんてそんな当たり前の事を改めて認識した。




次から梟戦に入ります。
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