やはりこの世界は間違っている。   作:フラットテスト

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十九話

暫くすると救急隊員が来た。俺の方にも救急隊員が向かって来る。雪ノ下は姉の方へ向かったのだろうか?俺は救急隊員の担架に乗るのを断り救急車の方へ歩く。腕がめちゃくちゃ痛いが、慣れてきた。この腕では亜門さん達の増援にも行けないだろう。

「比企谷君、梟を倒したと先程連絡が入ったのだけれど、その途中でもう一体梟が現れたと聞いたわ。この作戦はもう少し続きそうよ」

は?梟を倒したけど、梟が来た?分身でも出来んのかよ。NINJA?意味が分からず、俺が呆然としていると雪ノ下が補足してくれる。

「どうやら、梟は二体いるようよ」

あんなヤバいの二体とかどうなってるんだよ。というか、何処から入ってきたんだ。他にも援軍が来るかも知れない。

......小町、大丈夫か?

俺は走り出した。病院なんて言ってる場合じゃない。ここから行くなら第一隊がいる。所を通るのが一番近いか。梟と特等方が戦っているが、巻き込まれずに行くしかない。

「比企谷君待ちなさい!どこへ向かう気なの!」

雪ノ下が俺の右腕を掴む。左手で離そうと思ったが、左手は俺に無い。右腕を振り雪ノ下を突き飛ばす。

「痛っ」

雪ノ下が尻もちをつくが、俺は振り向かずに再び走り出す。雪ノ下すまん。雪ノ下から俺を止める声は聞こえて来なかった。

第一隊のもとへ着くと、喰種は梟しか居ないようだった。多くの捜査官がいるが、辺りを血の匂いが包んでいて気持ちが悪い。今まで嗅いだ中で一番強い匂いだ。その匂いで、少し減速してしまう。

「そこの人、どこへ行く?」

近くにいた、女性の捜査官が聞いてくる。一刻も早く向かいたいのに。

「第三隊の援護に行く!」

俺がそう言うと、彼女は驚いた顔をして頭を下げた

「滝澤が、同期の仲間が向かっている。私の上司が戦っていて、その援護に向かったのだ。どうか頼む」

そうか、彼女が真戸上等の娘で、亜門さんの部下か。しかし、そんな事を言われても俺には助けられる力などない。だから、期待などしないで欲しい。そんなに頭を下げられても俺の力は増えたりしない。

そして、俺は返事をせずにそのまま走り出した。足下は血が溜まっており、走れば血がはねる。だが、そんな事も気にならない。勝てなくても行くしか無いのだ。また、間に合わないなんてもう、嫌だ。

右も左も捜査官と喰種の死体ばかりだ。だが、音がしなくなってきた。怖いくらいに静かだ。第一隊のところからも離れ、第三隊がいるはずの場はすぐそこだと言うのに、戦闘が終わって休憩なのだろうか。そして俺は角を曲がる。亜門さん......小町......無事か?

そこには人が居なかった。ただ、喰種と捜査官の死体は今まで通った道と同じように転がっている。小町や亜門さんの死体は見当たらない。安心して息を吐こうとして目線を下げる。そこで俺の息が止まった。俺の足下には小町に俺が与えたクインケ、プラグが落ちている。俺は数を数える。1、2、3、4、全部ある。クインケを持たずに他の場所へ向かったのだろうか?まさか、欠片も残さずに......そう思うと、俺の体は動かなくなった。

暫くすると、人が周りにいた。どのくらい経った?俺は第三隊がどこに行ったのか聞いてみる。

「第三隊はずっと、ここに居たはずです。恐らく全滅でしょう」

嘘だ......ろ?小町も亜門さんももう居ないのか?亜門さんが勝てない相手が来ていたのか......また、戦う前に奪われたのか。また、間に合わなかったのか。仇の顔を見ることも叶わなかった。先程の真戸上等の娘さんが言っていた、滝澤という捜査官はどうなったのだろうか?

「ここへ向かったという滝澤捜査官は?」

「恐らく彼も死亡でしょう。破損したクインケが見つかっています」

彼女の願いは返事をしなかったと言え1パーセントも叶えられなかった。

すると、その捜査官は俺の腕を見て騒ぎ出す。

「というか、あなた左腕が!早く病院へ!」

確かに俺はここに居たってどうしようもない。言われるがままに俺は救急車へと乗せられ病院へと運ばれた。

俺はいつの間にか意識を手放していたようだ。俺の部屋でも、CCGでもない。ここは病院のベッドの上らしい。

「う」

随分眠っていたようで体も重い。点滴も付けられているようだ。一体どのくらい眠っていたのかと時計を見ようと体を起こそうとすると、倒れかける。

「......左手ねぇじゃん」

傷が塞がっていて、痛みも無かったので忘れていた。しかたがないので右手だけで体を何とか起こし首を傾けると、ベッドの隣のイスで雪ノ下が眠っていた。

「はぇ?」

思わず間抜けな声がでる。その声で雪ノ下が起きたようだ。

「ん、比企......谷君?起きたのね?」

雪ノ下が涙を浮かべて前のめりに顔を覗き込んでくる。めっちゃドキドキするからやめて欲しい。

「あなた三日も眠ってたのよ。医師を呼んでくるわ」

そう言って部屋を出ていく。おーいナースコールで良くない?それにも気付かない程だったのだろうか?それにしても三日とは、随分眠ったものだ。

暫くすると、医師がやってきた。体調はどうだの、痛みは無いかだのと、俺は一通り医師に聞かれた後、医師は部屋を出ていき、雪ノ下と二人きりになる。その時、雪ノ下と最後に別れた時の事を思い出す。

「すまん。突き飛ばしたりして」

俺は深く頭を下げて謝罪した。雪ノ下が起きた時に思い出して謝るべきだっただろう。

「いえ、あなたが小町さんの心配をしていたのは分かるから。気にしないで、尻もちをついただけで怪我もしていないから」

まだ俺は謝り足りないとは思ったものの聞くべき事がある。俺の上司にしてこいつの姉、雪ノ下上等のことだ。

「雪ノ下上等の容態は?」

「一命は取り留めたわ」

俺は安堵の息を吐く。しかし、雪ノ下の顔は嬉しくなさそうだ。どうしたのだろうと、怪訝な顔をすると、それを見て雪ノ下が話し出した。

「でも......もう意識が戻らないかも知れないわ」

それでは本当に一命を取り留めただけでは無いか。

「私、アカデミーに行くわ」

雪ノ下が唐突にそんなことを言った。

「なんでだ?」

「もう決まってたの。私は姉さんのスペア。姉さんが使えなくなれば私の番。私が全線で戦う事になる」

雪ノ下の説明は悲しいものだった。雪ノ下姉妹の父は千葉の県議だ。千葉は東京で生活している者も多く住む。本来大事な筈の娘をその東京を守る為に戦わせる。それが雪ノ下姉妹の父の売りだ。娘ですら票の為の駒でしかないのだという。

「だから、比企谷君。私が喰種捜査官になるまで待っていてね」

そう言い残して雪ノ下は俺の病室を去った。

その後局員がやって来て、姉弟喰種の姉の方の所有権があるがどうするか聞いてきた。俺は雪ノ下のクインケをこれで作ることに決めたため。とっておいてくれと伝えた。

暫くして退院出来るようになった。安静にするように言われているので、俺の仕事はデスクワークだ。暫くは雪ノ下上等のデスクを使うように言われた。しかし、まだ雪ノ下上等の私物も残っている。下手に動かすのもと思うと、何となく使いずらく俺はいつもの席で誰も居ない部屋で仕事をした。

帰る時二真戸上等の娘さんとあった。

「すまない。間に合わなかった。誰一人助けられなかった」

「いや、いいんだ。もとより無理難題だとは思っていた。きっと有馬特等でも無ければ同じ結果だろう」

そう言って目を逸らしてしまった。

「すまない」

俺はもう一度謝るとCCGを後にした。

誰も向こうには居ない扉を開きただいまと呟く。電気を付け、何も無い食卓に鞄を置き、その中から自分の使わなかった遺書取り出してを見つめる。俺はいつも間に合わない。失ってばかりだ。失っても失っても再び失わないように力をつけるが、俺は強くなりきれない。強くなっていない訳ではないのだ。しかし、俺から大切なものを奪う力はいつも俺の遥か上を行く。もし、喰種がいなかったら......なんて何度も考えてきた。親のときも小町がおかしくなっても、平塚上等や真戸上等が殺されても、そして今回も。何度も何度も。でも、原因はきっと喰種だけじゃない、人も同じだ。喰種も人も恨み合いそれは終わることがない。互いに自分だけでなく、家族や仲間を守る為に強くなり、相手を殺す。そして、奪われれば奪い返そうとする。俺たち人も、奴ら喰種も間違いを生み出し続ける。喰種が間違っているだけでも、人が間違っているだけでもない。全てが間違いだらけだ。だから、俺は何度でもこう思うのだろう。大切なものを失い、後悔する度に。

やはりこの世界は間違っている。

と。




無印は終わりです。Reの前にReとの間の話とちょっとした話を入れようかと思います。
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